(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114327
(43)【公開日】2023-08-17
(54)【発明の名称】乗り物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/30 20060101AFI20230809BHJP
A47C 31/02 20060101ALI20230809BHJP
B68G 7/05 20060101ALI20230809BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20230809BHJP
B60N 2/20 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
B60N2/30
A47C31/02 Z
B68G7/05 Z
B60N2/90
B60N2/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016635
(22)【出願日】2022-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】富岡 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】人見 翼
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BD01
3B087CB12
3B087DE03
(57)【要約】
【課題】シート本体の隙間を覆うことができ、シンプルな構造からなるカバー部材を備えた乗り物用シートを提供する。
【解決手段】乗り物用シートSは、使用状態と収納状態の間で切り替え可能なシートであって、シートバック1の後面から下方へ延びて、シートバック1とシートクッション2の隙間を覆うカバー部材60を備えている。カバー部材60は、シートバック1の折り畳み動作に応じて変形可能な第1延出部材61と、第1延出部材61の延出端部から下方へ延びて、上記隙間を覆う第2延出部材62とを有している。「使用状態」のときに第1延出部材61がシートバック1と第2延出部材62の間に格納され、第1延出部材61において基端部が延出端部よりも下方に配置される。「収納状態」のときに第1延出部材61が外部に露出され、第1延出部材61において基端部が延出端部よりも上方に配置される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバック及びシートクッションを有するシート本体を備え、
乗員が着座可能な使用状態と、前記シートバックを折り畳んで前記シート本体を車体フロア側に移動させた収納状態との間で切り替え可能な乗り物用シートであって、
前記シートバックの後面から下方へ延びるように設けられ、前記シートバックと、前記シートクッション又は前記車体フロアとの上下方向の隙間を覆うカバー部材を備え、
前記カバー部材は、
前記シートバックの後面から延びており、前記シートバックの折り畳み動作に対応して変形可能な第1延出部材と、
前記第1延出部材の延出端部から下方へ延びており、前記隙間を覆う第2延出部材と、を有し、
前記第1延出部材の基端部は、前記シートバックの下方部分の後面に取り付けられ、
前記第2延出部材の延出端部は、前記シートクッションの後方部分に取り付けられ、又は前記シート本体を下方から支持するベース部材の後方部分に取り付けられ、
前記使用状態のときに、
前記第1延出部材の少なくとも一部が前記シートバックと前記第2延出部材の間に格納され、
前記第1延出部材において前記基端部が前記延出端部よりも下方位置に配置され、
前記収納状態のときに、前記第1延出部材が外部に露出されることを特徴とする乗り物用シート。
【請求項2】
前記第1延出部材は、前記シートバックの後面に当接し、
前記使用状態と前記収納状態の間で切り替わるときに、前記第1延出部材において前記シートバックに当接する当接面が、表面と裏面の間で切り替わることを特徴とする請求項1に記載の乗り物用シート。
【請求項3】
前記第1延出部材の前記基端部は、
前記収納状態のときに前記延出端部よりも上方位置に配置されており、
前記収納状態から前記使用状態へ切り替わるときに、前記収納状態のときにいる位置よりもシート前方位置に移動することを特徴とする請求項1又は2に記載の乗り物用シート。
【請求項4】
前記車体フロア又は前記シートクッションに対して前記シートバックを回動可能に連結するとともに、前記シートバックの回動動作をロックするリクライニング装置を備え、
前記リクライニング装置は、前記シートバックの回動中心となる回動軸を有し、
前記第1延出部材の前記基端部は、前記使用状態のときに前記回動軸よりもシート前方位置に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の乗り物用シート。
【請求項5】
前記使用状態のときに、
前記第1延出部材が前記シートバックと前記第2延出部材の間に格納され、
前記シートバックの後面と、前記第2延出部材とが当接していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の乗り物用シート。
【請求項6】
前記収納状態のときに、
前記第1延出部材が外部に露出され、
前記シートバックの後面と、前記第2延出部材とが当接していることを特徴とする請求項5に記載の乗り物用シート。
【請求項7】
前記シート本体を下方から支持するベース部材と、
前記ベース部材に対して前記シートバックを回動可能に連結するとともに、前記シートバックの回動動作をロックするリクライニング装置と、を備え、
前記第2延出部材の延出端部は、前記ベース部材の後方部分に取り付けられ、
前記第2延出部材は、前記収納状態から前記使用状態へ切り替わるときに、前記ベース部材に対してシート前後方向へ移動することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の乗り物用シート。
【請求項8】
前記第1延出部材は、
前記シートバックの折り畳み動作に対応して変形し、
前記収納状態のときに前記シートバックの後面に沿うようにして配置されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の乗り物用シート。
【請求項9】
前記シート本体を下方から支持するベース部材を備え、
前記第2延出部材は、前記第2延出部材の延出端部に形成され、前記延出端部から上方へ折り返された折り返し部を有し、
前記第2延出部材において前記折り返し部が、前記ベース部材の後方部分に取り付けられることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の乗り物用シート。
【請求項10】
前記第1延出部材は、柔軟性を有する部材からなり、
前記第2延出部材は、プレート状の部材からなることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の乗り物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗り物用シートに係り、特に、シートバック及びシートクッションを有するシート本体を使用状態と収納状態の間で切り替えることが可能な乗り物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗員が着座可能な使用状態と、シートバックを折り畳んでシート本体を車体フロア側に収納させた収納状態との間で切り替え可能な車両用シートが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の車両用シートは、シートバックとシートクッションの間に生じる隙間をカバー部材で覆うとともに、当該カバー部材自体を折り畳むことによって伸縮可能とするカバー構造を備えている。
具体的には、当該カバー構造は、シートバックの下端部とシートクッションの後端部との隙間を覆うように両者に連結されるカバー部材を備えている。そして、シートバック及びシートクッションの相対移動に伴った隙間の寸法変化に対して、カバー部材の中間部を折り形成部によって折り畳むことで、寸法変化に対応可能とした構造となっている。
そのためシート本体の状態を切り替えた場合であっても見栄えを損なうことなく、シートバック及びシートクッションの間の隙間を覆い隠すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のようなカバー構造を備えた車両用シートでは、シート本体の状態を切り替えた場合であってもシート本体の間に生じる隙間を好適に覆い隠すことができるものの、カバー構造が複数の構成部品からなるため、組み立て工数が増加し、コスト及び重量が増加する虞があった。
また、上記カバー構造では、カバー部材を折り畳み可能とすべく、カバー本体(表皮材)に対して複数の樹脂ボードを取り付けており、また引っ張り力を付与する弾性体を取り付けているため、カバー構造が大型化し、ひいてはシートが大型化する虞があった。
さらには、経年劣化、繰り返し使用によって弾性体の弾性力(引っ張り力)が小さくなると、カバー部材が円滑に折り畳むことが難しくなる虞もあった。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、シート本体の状態を切り替えた場合であってもシート本体の間に生じる隙間を覆うことができ、シンプルな構造からなるカバー部材を備えた乗り物用シートを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、シートの見栄えを損なうことなく、シート本体の間の隙間を好適に覆い隠すことができ、カバー部材をコンパクトに配置した乗り物用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明の乗り物用シートによれば、シートバック及びシートクッションを有するシート本体を備え、乗員が着座可能な使用状態と、前記シートバックを折り畳んで前記シート本体を車体フロア側に移動させた収納状態との間で切り替え可能な乗り物用シートであって、前記シートバックの後面から下方へ延びるように設けられ、前記シートバックと、前記シートクッション又は前記車体フロアとの上下方向の隙間を覆うカバー部材を備え、前記カバー部材は、前記シートバックの後面から延びており、前記シートバックの折り畳み動作に対応して変形可能な第1延出部材と、前記第1延出部材の延出端部から下方へ延びており、前記隙間を覆う第2延出部材と、を有し、前記第1延出部材の基端部は、前記シートバックの下方部分の後面に取り付けられ、前記第2延出部材の延出端部は、前記シートクッションの後方部分に取り付けられ、又は前記シート本体を下方から支持するベース部材の後方部分に取り付けられ、前記使用状態のときに、前記第1延出部材の少なくとも一部が前記シートバックと前記第2延出部材の間に格納され、前記第1延出部材において前記基端部が前記延出端部よりも下方位置に配置され、前記収納状態のときに、前記第1延出部材が外部に露出されること、により解決される。
【0008】
上記構成により、シート本体の状態を切り替えた場合であってもシート本体の間に生じる隙間を好適に覆うことができ、シンプルな構造のカバー部材を備えた乗り物用シートを実現することができる。
詳しく述べると、カバー部材が、変形可能な第1延出部材と、第2延出部材とを有するシンプルな構造となっている。そして、乗り物用シートは、シート本体の切り替え動作に伴って第1延出部材を変形させ、使用状態のときには第1延出部材を格納し、第2延出部材によって隙間を覆い、収納状態のときには第1延出部材を露出させ、第1延出部材及び第2延出部材によって隙間を覆うことが可能となる。このようにして、カバー部材が、シート本体の間に生じる隙間を好適に覆い隠すことが可能となる。
【0009】
このとき、前記第1延出部材は、前記シートバックの後面に当接し、前記使用状態と前記収納状態の間で切り替わるときに、前記第1延出部材において前記シートバックに当接する当接面が、表面と裏面の間で切り替わると良い。
上記構成により、シート本体の状態を切り替えた場合であっても、カバー部材の第1延出部材がシートバックの後面に当接した状態が保持され、カバー部材をコンパクトに配置することができる。また、シート本体の切り替え動作時に、カバー部材(第1延出部材)を変形させてシート本体(シートバック)に好適に追従させることができる。
【0010】
このとき、前記第1延出部材の前記基端部は、前記収納状態のときに前記延出端部よりも上方位置に配置されており、前記収納状態から前記使用状態へ切り替わるときに、前記収納状態のときにいる位置よりもシート前方位置に移動すると良い。
また、前記車体フロア又は前記シートクッションに対して前記シートバックを回動可能に連結するとともに、前記シートバックの回動動作をロックするリクライニング装置を備え、前記リクライニング装置は、前記シートバックの回動中心となる回動軸を有し、前記第1延出部材の前記基端部は、前記使用状態のときに前記回動軸よりもシート前方位置に配置されていると良い。
上記構成により、シート本体が収納状態から使用状態へ切り替わるときに、第1延出部材をシートバックと第2延出部材の間に好適に格納することができる。そのため、シートの見栄えを損なうことなく(第1延出部材が意図せずに露出することなく)、シート本体の間の隙間を好適に覆い隠すことができる。また、カバー部材をコンパクトに配置することができる。
【0011】
このとき、前記使用状態のときに、前記第1延出部材が前記シートバックと前記第2延出部材の間に格納され、前記シートバックの後面と、前記第2延出部材とが当接していると良い。
また、前記収納状態のときに、前記第1延出部材が外部に露出され、前記シートバックの後面と、前記第2延出部材とが当接していると良い。
上記構成により、シートの見栄えを損なうことなく、シートの意匠性を確保しながら、シート本体の間の隙間を好適に覆い隠すことができる。また、カバー部材をよりコンパクトに配置することができる。
【0012】
このとき、前記シート本体を下方から支持するベース部材と、前記ベース部材に対して前記シートバックを回動可能に連結するとともに、前記シートバックの回動動作をロックするリクライニング装置と、を備え、前記第2延出部材の延出端部は、前記ベース部材の後方部分に取り付けられ、前記第2延出部材は、前記収納状態から前記使用状態へ切り替わるときに、前記ベース部材に対してシート前後方向へ移動すると良い。
上記構成により、シート本体が収納状態から使用状態へ切り替わるときに、第1延出部材を変形させるとともに、第2延出部材をシート前後方向に追従移動させることができる。そのため、シート本体の間に生じる隙間をより効果的に覆い隠すことができる。
【0013】
このとき、前記第1延出部材は、前記シートバックの折り畳み動作に対応して変形し、前記収納状態のときに前記シートバックの後面に沿うようにして配置されると良い。
上記構成により、収納状態のときにシートの見栄えを損なうことなく、シートの外観性を向上させることができる。
【0014】
このとき、前記シート本体を下方から支持するベース部材を備え、前記第2延出部材は、前記第2延出部材の延出端部に形成され、前記延出端部から上方へ折り返された折り返し部を有し、前記第2延出部材において前記折り返し部が、前記ベース部材の後方部分に取り付けられると良い。
上記構成により、シート本体の切り替え操作時に、シート本体の移動動作に追従させて第2延出部材を好適にシート前後方向へ移動させることができる。また、シート本体の切り替え操作時に、第2延出部材が意図せず反り返ってしまうことを抑制できる。
【0015】
このとき、前記第1延出部材は、柔軟性を有する部材からなり、前記第2延出部材は、プレート状の部材からなると良い。
上記構成により、よりシンプルな構造からなり、シート本体の間に生じる隙間を好適に覆い隠すことが可能なカバー部材を実現することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、シート本体の状態を切り替えた場合であってもシート本体の間に生じる隙間を好適に覆うことができ、シンプルな構造のカバー部材を備えた乗り物用シートを実現できる。
また本発明によれば、カバー部材をコンパクトに配置することができる。また、シート本体の切り替え動作時に、カバー部材を変形させてシート本体に好適に追従させることができる。
また本発明によれば、シートの見栄えを損なうことなく(第1延出部材が意図せずに露出することなく)、シートの意匠性を確保しながら、シート本体の間の隙間を好適に覆い隠すことができる。
また本発明によれば、収納状態のときにシートの見栄えを損なうことなく、シートの外観性を向上させることができる。
また本発明によれば、シート本体の移動動作に追従させて第2延出部材を好適にシート前後方向へ移動させることができる。また、第2延出部材が意図せず反り返ってしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態の乗り物用シートの斜視図である。
【
図2】乗り物用シートの骨格となるシートフレームの斜視図である。
【
図3】「使用状態」のときの乗り物用シートの側面図である。
【
図4】「収納状態」のときの乗り物用シートの斜視図である。
【
図5】収納状態のときのシート本体、ベース部材及びカバー部材の後面図である。
【
図6B】
図5のVI-VI断面図であって、カバー部材の変形例である。
【
図7】使用状態の乗り物用シートの側面図であって、カバー部材の状態を示す図である。
【
図8】使用状態から収納状態へ移動する乗り物用シートの側面図であって、カバー部材の状態を示す図である(その1)。
【
図9】使用状態から収納状態へ移動する乗り物用シートの側面図であって、カバー部材の状態を示す図である(その2)。
【
図10】収納状態の乗り物用シートの側面図であって、カバー部材の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、
図1~
図10を参照しながら説明する。
本実施形態は、「使用状態」と「収納状態」との間で切り替え可能な乗り物用シートであって、シートバックの後面から下方へ延びるように設けられ、シートバックとシートクッションの上下方向の隙間を覆うカバー部材を備えており、カバー部材がシートバックの折り畳み動作に対応して変形可能な第1延出部材と、第1延出部材の延出端部から下方へ延びており、上記隙間を覆う第2延出部材と、を有しており、「使用状態」のときに第1延出部材がシートバックと第2延出部材の間に格納され、「収納状態」のときに第1延出部材が外部に露出されることを主な特徴とする乗り物用シートの発明に関するものである。
なお、乗り物用シートのシートバックに対して乗員が着座する側がシート前方側となる。
【0019】
本実施形態の乗り物用シートSは、
図1に示すように、例えば車両の後部座席に相当するリアシートである。なお、車両前後方向に三列のシートを備える車両において二列目のミドルシートとしても利用可能である。
乗り物用シートSは、
図3、
図4に示すように、乗員が着座可能な「使用状態」と、シートバックを折り畳んでシート本体を車体フロア側に収納させた「収納状態」との2種類の形態のシートアレンジが可能なシートである。
具体的には、乗り物用シートSは、
図3に示す「使用状態」から、乗員がシート本体の上端部にあるリクライニング操作レバー44を引っ張ると、シート本体が前倒れして折り畳まれ、車体フロアに収納された
図4に示す「収納状態」に切り替わる。そして、収納状態から、乗員が手動でシート本体を上方に起こすことで「使用状態」に復帰する。
なお、乗り物用シートSは、シート前後方向において基準位置に位置する「通常状態」と、シート本体をシート前後方向の所定位置にスライド移動させた「スライド移動状態」との間で切り替えることも可能となっている。
【0020】
乗り物用シートSは、
図1、
図2に示すように、シートバック1と、シートクッション2と、ヘッドレスト3とを有するシート本体と、シート本体を下方から支持するベース部材30と、ベース部材30に対してシートバック1を回動可能に連結するとともに、シートバック1の回動動作をロックするリクライニング装置40と、車体フロアとベース部材30の間に取り付けられ、シート本体を前後方向に移動可能に支持するとともに、シート本体の移動動作をロックするレール装置50と、を備えている。
また、乗り物用シートSは、
図3、
図4に示すように、シートバック1の後面から下方へ延びるように設けられ、シートバック1とシートクッション2の上下方向の隙間を覆うカバー部材60をさらに備えている。
なお、カバー部材60は、シートバック1とシートクッション2の上下方向の隙間を覆うだけでなく、シートバック1とベース部材30(車体フロア)の上下方向の隙間を覆うように配置されている。
【0021】
シートバック1は、
図1に示すように、乗員の背中を後方から支持する背もたれ部であって、骨格となる
図2に示すバックフレーム10にパッド材1aを載置して表皮材1bで被覆されて構成されている。
シートクッション2は、乗員を下方から支持する着座部であって、骨格となる
図2に示すクッションフレーム20にパッド材2aを載置して、パッド材2aの上から表皮材2bによって被覆されて構成されている。
ヘッドレスト3は、乗員の頭を後方から支持する頭部であって、芯材となる不図示のピラーにパッド材3aを載置して表皮材3bで被覆されて構成されている。
【0022】
バックフレーム10は、
図2に示すように、シートバック1の骨格となる矩形状の枠状体からなり、バックフレーム10のシート幅方向の外側面においてその下方部分には、ベース部材30と連結するための左右の連結ブラケット11が取り付けられている。
連結ブラケット11は、上下方向に延出する弓形状の板金部材からなり、連結ブラケット11の上端がバックフレーム10に取り付けられ、その下端がベース部材30に取り付けられている。
右側の連結ブラケット11の下端部には、ベース部材30に対してバックフレーム10を回動可能に連結するリクライニング装置40(リクライニング本体41)が取り付けられている。左側の連結ブラケット11の下端部には、シート幅方向においてベース部材30に軸支されたバック回動軸42が取り付けられている。
【0023】
クッションフレーム20は、
図2に示すように、シートクッション2の骨格となる矩形状の枠状体からなり、シート幅方向の側方に配置された左右のサイドフレーム21と、各サイドフレーム21の前方部分を連結する板状のパンフレーム22と、各サイドフレーム21の後方部分を連結するパイプ状の後方連結フレーム23と、パンフレーム22及び後方連結フレーム23にそれぞれ掛け止めされ、蛇状に延びている複数の弾性バネ24と、から主に構成されている。
【0024】
サイドフレーム21は、シート前後方向に延出する板金部材からなり、サイドフレーム21の内側面においてその前方部分には、レール装置50と連結するための連結リンク25が取り付けられている。また、サイドフレーム21の内側面においてその後方部分には、バックフレーム10と連結するためのクッション回動軸26が取り付けられている。
連結リンク25は、シート本体(シートクッション2)を車体フロア側に収納させるために回動する部材であって、クッションフレーム20とレール装置50の間に一対となって取り付けられている。
【0025】
ベース部材30は、
図1~
図5に示すように、シート本体を支持する支持部材であって、上下方向においてバックフレーム10(連結ブラケット11)とレール装置50(アッパレール52)を連結している。
詳しく述べると、ベース部材30は、シート幅方向の左右側方に配置され、アッパレール52の上面に取り付けられる略L字形状のサイドベース部31と、左右のサイドベース部31を連結するパイプ状のベース連結部32と、サイドベース部31及びベース連結部32を外側から覆うベースカバー33と、を備えている。
【0026】
ベースカバー33は、
図3~
図5に示すように、ベース部材30の本体、リクライニング装置40及びレール装置50を上方から覆う樹脂成形品である。
ベースカバー33は、リクライニング装置40及びレール装置50を外部から保護する機能のほか、シート本体が「使用状態」から「収納状態」に切り替わるときにシート本体(連結ブラケット11)の移動をガイドする機能を備えている。
ベースカバー33は、シート幅方向の左右側方に配置され、シート前後方向に長尺なカバー側方部33aと、左右のカバー側方部33aを連結するカバー後方部33bと、を有している。
【0027】
カバー後方部33bは、シート幅方向に延びて、左右のカバー側方部33aの下方部分の後端部を連結しており、バック回動軸42よりも後方位置に配置され、バック回動軸42よりも下方位置に配置されている。
カバー後方部33bには、シート幅方向に所定の間隔を空けて配置され、カバー部材60(第2延出部材62)の一端部(下端部)を取り付けるための複数の取り付け穴34(被取り付け部)が形成されている。
【0028】
リクライニング装置40は、
図2に示すように、シート幅方向において右側の連結ブラケット11と右側のベース部材30(ベース連結部32)の間に配置されている。
リクライニング装置40は、バックフレーム10を回動させるときに駆動するリクライニング本体41と、バック回動軸42と、バックフレーム10をバック回動軸42を中心として前方回転させるように付勢する渦巻きバネ43と、バックフレーム10のロック状態を解除するために操作される
図1に示すリクライニング操作レバー44と、リクライニング操作レバー44及びリクライニング本体41を連結する不図示のリクラ用ケーブルと、から主に構成されている。
【0029】
リクライニング本体41は、公知なロック機構を有し、バックフレーム10の状態を、ベース部材30に対して固定されたロック状態と、ベース部材30に対して回動可能なロック解除状態との間で切り替えることが可能である。
バック回動軸42は、シート幅方向においてバックフレーム10側とベース部材30側とに軸支されており、渦巻きバネ43は、その一端がバックフレーム10側に係止され、他端がベース部材30側に係止されている。
なお、不図示のリクラ用ケーブルは、リクライニング操作レバー44の操作に牽引されてシートバック1をロック状態からロック解除状態へ切り替えるように作用する。
【0030】
上記構成において、リクライニング装置40は、シートバック1を
図3の起立姿勢にロックし、リクライニング操作レバー44が操作されることでロック状態を解除し、渦巻きバネ43の付勢力によってシートバック1を前方側に回転させてシートクッション2とともに車体フロア側に折り畳むことができる(
図4参照)。
【0031】
レール装置50は、
図1、
図2に示すように、シート本体をシート前後方向にスライド移動可能に支持する装置であって、シート本体と車体フロアの間に配置されている。
レール装置50は、車体フロアに固定され、シート前後方向に延びる左右のロアレール51と、ロアレール51に沿って摺動可能に支持される左右のアッパレール52と、ロアレール51に対してアッパレール52を摺動不能にロックするロック部材と、ロック部材のロック状態を解除するために操作されるレール操作レバーと、ロック部材及びレール操作レバーを連結するレール用ケーブルと、から主に構成されている。
【0032】
<カバー部材>
カバー部材60は、
図3~
図10に示すように、シートバック1の後面から延びており、シートバック1の折り畳み動作に対応して変形可能な第1延出部材61と、第1延出部材61の延出端部61bから下方へ延びており、シートバック1及びシートクッション2の間に生じる隙間を覆う第2延出部材62と、を有している。
【0033】
第1延出部材61は、可撓性(柔軟性)を有する部材(例えば表皮)であって、
図7、
図10に示すように、その基端部61aがシートバックの下方部分(下端部分)の後面に取り付けられ、その延出端部61bがシートバック1の後面に沿うように当接して配置されている。
第1延出部材61は、シートバック1の折り畳み動作に対応して変形し、
図7に示す「使用状態」のときにシートバック1と前記第2延出部材の間に格納され、
図10に示す「収納状態」のときに外部に露出されるように構成されている。
【0034】
第2延出部材62は、プレート状の部材であって、具体的には
図6Aに示すように、柔軟性を有する表皮63(第1部材)と、表皮63に固定されたプレート部材64(第2部材)と、を有している。
第2延出部材62は、上下方向に長尺に延びており、
図7に示すように、その基端部62aが第1延出部材の基端部61aと連結されている。また、
図6Aに示すように、その延出端部62bがベース部材30の後端部分に取り付けられている。
第2延出部材62は、
図3に示す「使用状態」から
図4に示す「収納状態」へ切り替わるときに、シートバック1の収納動作に対応して(追従して)ベース部材30に対してシート後方へ傾斜するように移動する。
【0035】
第2延出部材62においてプレート部材64の下方部分には、
図6Aに示すように、シート幅方向に所定の間隔を空けて配置され、ベース部材30に取り付けるための複数の取り付け穴65が(取り付け部)が形成されている。
詳しく述べると、ベース部材30の取り付け穴34と、第2延出部材62の取り付け穴65とを連通させた状態で取り付け部材66(取り付けボルト)を複数組み付けることで、ベース部材30に対し第2延出部材62を固定している。
なお、
図6Aに示すように、取り付け部材66が、表皮63及びプレート部材64の間に配置されており、取り付け部材66が外部から(シート後方から)露出しないように配慮されている。
【0036】
なお、カバー部材60の変形例として、
図6Bに示すように、第2延出部材162が、その延出端部162bに形成され、延出端部162bから上方へ折り返された折り返し部167を有していても良い。そして、折り返し部167が、ベース部材30の後端部分に取り付けられていても良い。
このとき、折り返し部167に形成された取り付け穴165と、ベース部材30の取り付け穴34とが、取り付け部材166によって取り付けられていると良い。
【0037】
<シート切り替えに伴うカバー部材の変形動作>
図7~
図10は、乗り物用シートSが「使用状態」から「収納状態」へ移動する様子を説明する図である。また、そのときのカバー部材60の状態を説明する図である。
図7が「使用状態」の乗り物用シートSの側面図であって、
図10が「収納状態」の乗り物用シートSの側面図である。
【0038】
図7に示す「使用状態」のときに、第1延出部材61がシートバック1と第2延出部材62の間に格納されており、第2延出部材62が上下方向に沿って延びて、第2延出部材62の上端部がシートバック1の後面に当接している。
【0039】
そして、
図8、
図9に示すように、シート本体の収納動作に伴って第1延出部材61が変形し、第2延出部材62がシート後方へ傾斜するように移動する。
言い換えれば、第1延出部材61は、シートバック1に取り付けられているため、シートバック1の収納動作に追従して、シート内部に引き込まれる。また、第2延出部材62は、シートバック1の後端部に押し出されてシート後方へ傾斜するようになる。
【0040】
そして、
図10に示す「収納状態」のときに、第1延出部材61が外部に露出され、第2延出部材62がシート後方へ傾斜した位置となる。第2延出部材62の上端部は、シートバックの後面に当接している。
【0041】
上記構成において、
図7に示す「使用状態」のときに、第1延出部材61において基端部61aが延出端部61bよりも下方位置に配置されている。
そして、
図10に示す「収納状態」のときに、基端部61aが延出端部61bよりも上方位置に配置されている。
そうすることで、シート本体の切り替え動作に追従させて第1延出部材61を円滑に変形させることができる。すなわち、シート本体の切り替え操作時に、カバー部材60(第1延出部材61)が意図しない形状に変形してしまうことを抑制できる。
【0042】
また上記構成において、乗り物用シートSが「使用状態」と「収納状態」の間で切り替わるときに、第1延出部材61においてシートバック1に当接する当接面が、表面と裏面の間で切り替わるようになっている。
そうすることで、シート本体の状態を切り替えた場合であっても、第1延出部材61がシートバック1の後面に当接した状態が保持され、カバー部材60をコンパクトに配置することができる。また、シートの見栄えを損なうことなく、カバー部材60がシート本体の間に生じる隙間を覆い隠すことができる。
【0043】
また上記構成において、
図7、
図10に示すように、第1延出部材61の基端部61aは、逆に「収納状態」から「使用状態」へ切り替わるときに、「収納状態」のときにいる位置よりもシート前方位置に移動する。詳しく述べると、基端部61aは、「収納状態」のときにバック回動軸42よりもシート後方位置に配置され、「使用状態」のときにバック回動軸42よりもシート前方位置に配置される。
そうすることで、シート本体が「収納状態」から「使用状態」へ切り替わるときに、第1延出部材61をシートバック1と第2延出部材62の間に好適に格納することができる。すなわち、第1延出部材61が意図せずに露出することなく、シート本体の間の隙間を好適に覆い隠すことができる。
【0044】
また上記構成において、第1延出部材61は、「収納状態」のときにシートバック1の後面に沿うようにして配置される。
そうすることで、「収納状態」のときにシートの見栄えを損なうことなく、シートの外観性を向上させることができる。
【0045】
<その他の実施形態>
上記実施形態では、乗り物用シートSがシート前方側へ収納移動するものであったが、特に限定されることなく、乗り物用シートSがシート後方側やシート側方側へ収納移動するものであっても良い。
乗り物用シートSがシート後方側へ収納移動する場合には、シート本体が収納されたときにシートバック1とシートクッション2の上下方向の位置関係が逆の配置になることが望ましい。
【0046】
上記実施形態では、
図1、
図2に示すように、リクライニング装置40が、車体フロア(ベース部材30)に対してシートバック1を回動可能に連結するものであったが、特に限定されず、シートクッション2に対してシートバック1を回動可能に連結するものであっても良い。
【0047】
上記実施形態では、
図1、
図2に示すように、ベース部材30がレール装置50を介して車体フロアに固定されているが、特に限定されることなく、レール装置50を不要として直接車体フロアに固定される等、適宜変更しても良い。
または、車体フロア上に固定された不図示の支持ブラケット(支持部材)をベース部材30の代わりとして採用しても良い。
【0048】
上記実施形態では、
図3、
図4に示すように、カバー部材60が、シートバック1とシートクッション2の上下方向の隙間を覆うだけでなく、シートバック1とベース部材30(車体フロア)の上下方向の隙間を覆うように配置されているが、特に限定されない。
例えば、カバー部材60が、単にシートバック1とシートクッション2の隙間を覆うものであっても良いし、単にシートバック1とベース部材30(車体フロア)の隙間を覆うものであっても良い。
【0049】
上記実施形態では、
図3、
図7に示すように、「使用状態」のときに、第1延出部材61がシートバック1と第2延出部材62の間に格納されているが、特に限定されない。
例えば、第1延出部材61の少なくとも一部がシートバック1と第2延出部材62の間に格納されていれば良い。
【0050】
上記実施形態では、
図3、
図7に示すように、「使用状態」のときに、第1延出部材61の基端部61aがバック回動軸42よりもシート前方位置に配置されているが、特に限定されず、必ずしもバック回動軸42よりもシート前方位置にある必要はない。
例えば、「収納状態」から「使用状態」へ切り替わるときに、シートバック1の回動動作によってシート本体内に第1延出部材61を引き込むことが可能な位置関係となっていれば良い。
【0051】
上記実施形態では、具体例として自動車に用いられる収納可能な乗り物用シートについて説明したが、特に限定されることなく、電車、バス等の乗り物用シートのほか、飛行機、船等の乗り物用シートとしても利用することができる。
【0052】
本実施形態では、主として本発明に係る乗り物用シートに関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0053】
S 乗り物用シート(車両用シート)
Sa シートフレーム
1 シートバック
1a、2a、3a パッド材
1b、2b、3b 表皮材
2 シートクッション
3 ヘッドレスト
10 バックフレーム
11 連結ブラケット
20 クッションフレーム
21 サイドフレーム
22 パンフレーム
22a 取り付け穴
23 後方連結フレーム
24 弾性バネ
25 連結リンク
26 クッション回動軸
30 ベース部材
31 サイドベース部
32 ベース連結部
33 ベースカバー
33a カバー側方部
33b カバー後方部
34 取り付け穴
40 リクライニング装置
41 リクライニング本体
42 バック回動軸(回動軸)
43 渦巻きバネ
44 リクライニング操作レバー
50 レール装置
51 ロアレール
52 アッパレール
60、160 カバー部材
61 第1延出部材
61a 基端部
61b 延出端部
62、162 第2延出部材
62a 基端部
62b、162b 延出端部
63 表皮(伸縮部材)
64 プレート部材(樹脂プレート)
65、165 取り付け穴
66、166 取り付け部材
167 折り返し部