(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114332
(43)【公開日】2023-08-17
(54)【発明の名称】シートベルトリトラクタ
(51)【国際特許分類】
B60R 22/40 20060101AFI20230809BHJP
【FI】
B60R22/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016641
(22)【出願日】2022-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】角中 智
(72)【発明者】
【氏名】井尻 昂辰
(72)【発明者】
【氏名】藏内 紀子
【テーマコード(参考)】
3D018
【Fターム(参考)】
3D018HA07
3D018HB03
3D018HC04
3D018HD04
3D018HE01
(57)【要約】
【課題】1つのセンサーホルダで調整可能なセンサー取付角度を従来よりも多くすることができるシートベルトリトラクタを提供する。
【解決手段】一実施形態に係るシートベルトリトラクタは、車両加速度センサー4と巻取ドラムを含む。車両加速度センサー4は、慣性質量体41が載置される載置面51を有するセンサーホルダ5と、センサーホルダ5が結合される取付部材8を含む。取付部材8は、センサーホルダ5が第1姿勢と、前記第1姿勢に対して載置面51の中心線回りに反転した第2姿勢のどちらか一方となる状態でシートベルトリトラクタのハウジングに取り付けられる。センサーホルダ5は、回転軸50周りに回転した位置である、複数の角度位置のいずれかで取付部材8に結合可能である。前記第1姿勢と前記第2姿勢とでは、前記複数の角度位置に対応する、前記ハウジングに対する載置面51の中心線の角度である複数のセンサー取付角度が異なる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の加速度が所定値以上となったときに検知状態となる車両加速度センサーと、
ハウジングにウエビングの引出方向と巻取方向に回転可能に収容され、前記車両加速度センサーが検知状態となったときに、前記ウエビングの引出方向への回転が阻止される巻取ドラムと、を備え、
前記車両加速度センサーは、
球状の慣性質量体と、
前記慣性質量体が載置される載置面であって、その中心線に対して対称な断面形状からなるすり鉢状の載置面を有するセンサーホルダと、
前記センサーホルダに揺動可能に支持されたセンサーレバーであって、車両の加速度が前記所定値以上となったときに、前記載置面上を転動する前記慣性質量体によって押し上げられるセンサーレバーと、
前記センサーホルダが結合され、前記ハウジングに取り付けられる取付部材と、を含み、
前記取付部材は、前記センサーホルダが第1姿勢と、前記第1姿勢に対して前記載置面の中心線回りに反転した第2姿勢のどちらか一方となる状態で前記ハウジングに取り付けられ、
前記センサーホルダは、前記第1姿勢と前記第2姿勢のそれぞれで、前記載置面の中心線と直交する方向に延びる回転軸周りに回転した位置である、複数の角度位置のいずれかで前記取付部材に結合可能であり、
前記第1姿勢と前記第2姿勢とでは、前記複数の角度位置に対応する、前記ハウジングに対する前記載置面の中心線の角度である複数のセンサー取付角度が異なることを特徴とするシートベルトリトラクタ。
【請求項2】
前記センサーホルダには、前記回転軸を中心とする径方向外向きに尖る少なくとも1つの外向き突起を含む外向き係合部が設けられ、
前記取付部材には、前記回転軸を中心とする径方向内向きに尖る少なくとも1つの内向き突起を含む、前記外向き係合部と係合可能な内向き係合部が設けられ、
前記少なくとも1つの外向き突起と前記少なくとも1つの内向き突起の一方または双方は、前記回転軸を中心とする周方向に並んで複数設けられており、
前記外向き係合部と前記内向き係合部との係合状態が変更されることで、前記センサーホルダが前記複数の角度位置のいずれかで前記取付部材に結合されることを特徴とする、請求項1に記載のシートベルトリトラクタ。
【請求項3】
前記センサーホルダは、前記取付部材に結合されるときの向きが反転されることで、前記第1姿勢と前記第2姿勢のどちらかとなり、前記第1姿勢と前記第2姿勢の双方で前記外向き係合部と前記内向き係合部とが係合することを特徴とする、請求項2に記載のシートベルトリトラクタ。
【請求項4】
前記内向き係合部は1つであり、
前記外向き係合部は、前記第1姿勢で前記内向き係合部と係合する第1外向き係合部と、前記第2姿勢で前記内向き係合部と係合する第2外向き係合部を含み、
前記第1外向き係合部と前記第2外向き係合部とでは、前記回転軸の延在方向から見たときに、前記少なくとも1つの外向き突起の位置が異なることを特徴とする、請求項3に記載のシートベルトリトラクタ。
【請求項5】
前記外向き係合部は1つであり、
前記内向き係合部は、前記第1姿勢で前記外向き係合部と係合する第1内向き係合部と、前記第2姿勢で前記外向き係合部と係合する第2内向き係合部を含み、
前記第1内向き係合部と前記第2内向き係合部とでは、前記回転軸の延在方向から見たときに、前記少なくとも1つの内向き突起の位置が異なることを特徴とする、請求項3に記載のシートベルトリトラクタ。
【請求項6】
前記内向き係合部は、第1内向き係合部と第2内向き係合部を含み、
前記外向き係合部は、前記第1姿勢で前記第1内向き係合部と係合するとともに前記第2内向き係合部と係合せず、前記第2姿勢で前記第1内向き係合部および前記第2内向き係合部と係合しない第1外向き係合部と、前記第1姿勢で前記第1内向き係合部および前記第2内向き係合部と係合せず、前記第2姿勢で前記第2内向き係合部と係合するとともに前記第1内向き係合部と係合しない第2外向き係合部を含むことを特徴とする、請求項3に記載のシートベルトリトラクタ。
【請求項7】
前記取付部材は、前記ハウジングに対する向きが反転されることで、前記センサーホルダが前記第1姿勢となる状態と、前記センサーホルダが前記第2姿勢となる状態のどちらかで前記ハウジングに取り付け可能であることを特徴とする、請求項2に記載のシートベルトリトラクタ。
【請求項8】
前記外向き係合部は、前記回転軸および前記載置面の中心線を含む面に対して非対称であることを特徴とする、請求項2~7の何れか一項に記載のシートベルトリトラクタ。
【請求項9】
前記センサーホルダは、前記第1姿勢で前記センサーレバーを揺動可能に支持する第1支持部と、前記載置面の中心線に対して前記第1支持部と反対側に位置し、前記第2姿勢で前記センサーレバーを揺動可能に支持する第2支持部を有することを特徴とする、請求項1~8の何れか一項に記載のシートベルトリトラクタ。
【請求項10】
前記センサーホルダの形状は、前記第1支持部と前記第2支持部との離間方向に垂直かつ前記載置面の中心線を含む面に対して非対称であることを特徴とする、請求項9に記載のシートベルトリトラクタ。
【請求項11】
前記センサーホルダの前記第1支持部と前記第2支持部とでは、前記載置面からの前記中心線に沿う方向の高さが異なることを特徴とする、請求項10に記載のシートベルトリトラクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、シートベルトとしてのウエビングの引き出しおよび巻き取りを行うシートベルトリトラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の加速度が所定値以上となったときに検知状態となる車両加速度センサーを含み、その車両加速度センサーが検知状態となったときにウエビングの引き出しを阻止するシートベルトリトラクタが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、
図19に示すようなシートベルトリトラクタ100が開示されている。このシートベルトリトラクタ100は、一対の側板および背板を有するハウジング110と、ハウジング110の側板間にウエビングの引出方向と巻取方向とに回転可能に収容された巻取ドラム120と、ハウジング110の一方の側板に取り付けられた車両加速度センサー130を含む。
【0004】
車両加速度センサー130は、球状の慣性質量体140と、慣性質量体140が載置される載置面151を有するセンサーホルダ150と、センサーホルダ150に揺動可能に支持されるセンサーレバー160を含む。センサーレバー160は、車両の加速度が所定値以上となったときに、載置面151上を転動する慣性質量体140によって押し上げられる。これにより、巻取ドラム120の、ウエビングの引出方向への回転が阻止される。
【0005】
さらに、車両加速度センサー130は、センサーホルダ150が結合され、ハウジング110の一方の側板に取り付けられる取付部材170を含む。
【0006】
シートベルトリトラクタは、車両の前後方向および/または幅方向に傾いた状態で車両に搭載されることがある。特許文献1に開示されたシートベルトリトラクタ100は、巻取ドラム120の軸方向が水平面に対して傾いた状態でも、センサーホルダ150の載置面151を水平に近づけることができるように構成されている。すなわち、センサーホルダ150の傾きが、ハウジング110の背板に平行な面に沿って調整される。
【0007】
具体的に、センサーホルダ150は、ハウジング110の背板と直交する方向に延びる回転軸152回りに回転した位置である、複数の角度位置のいずれかで取付部材170に結合可能である。取付部材170には、回転軸152を中心とする周方向に並ぶ複数の係合歯を含む固定側係合部171が設けられ、センサーホルダ150には、回転軸152を中心とする周方向に並ぶ複数の係合歯を含む、固定側係合部171と係合可能な可動側係合部153が設けられている。そして、可動側係合部153と固定側係合部171との係合状態が変更されることで、センサーホルダ150が前記複数の角度位置のいずれかで取付部材170に結合される。
【0008】
また、特許文献2には、上述したシートベルトリトラクタ100と同様の係合構造で、巻取ドラムの軸方向が水平面に対して傾いた状態(特許文献2では、シートベルトリトラクタが車両の幅方向に傾いた状態)に対応できるように構成されたシートベルトリトラクタ100が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】中国実用新案公告第201856732号明細書
【特許文献2】特許第5515180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1のシートベルトリトラクタ100のように、複数の係合歯を有する係合部171,153同士の係合では、係合歯のピッチ(間隔)でしかハウジング110に対する載置面151の中心線の角度であるセンサー取付角度を調整することができない。従って、センサー取付角度を係合歯のピッチの間の角度に調整したい場合には、係合歯のピッチをずらした別のセンサーホルダ150を準備する必要がある。
【0011】
そこで、本発明は、1つのセンサーホルダで調整可能なセンサー取付角度を従来よりも多くすることができるシートベルトリトラクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、本発明は、車両の加速度が所定値以上となったときに検知状態となる車両加速度センサーと、ハウジングにウエビングの引出方向と巻取方向に回転可能に収容され、前記車両加速度センサーが検知状態となったときに、前記ウエビングの引出方向への回転が阻止される巻取ドラムと、を備え、前記車両加速度センサーは、球状の慣性質量体と、前記慣性質量体が載置される載置面であって、その中心線に対して対称な断面形状からなるすり鉢状の載置面を有するセンサーホルダと、前記センサーホルダに揺動可能に支持されたセンサーレバーであって、車両の加速度が前記所定値以上となったときに、前記載置面上を転動する前記慣性質量体によって押し上げられるセンサーレバーと、前記センサーホルダが結合され、前記ハウジングに取り付けられる取付部材と、を含み、前記取付部材は、前記センサーホルダが第1姿勢と、前記第1姿勢に対して前記載置面の中心線回りに反転した第2姿勢のどちらか一方となる状態で前記ハウジングに取り付けられ、前記センサーホルダは、前記第1姿勢と前記第2姿勢のそれぞれで、前記載置面の中心線と直交する方向に延びる回転軸周りに回転した位置である、複数の角度位置のいずれかで前記取付部材に結合可能であり、前記第1姿勢と前記第2姿勢とでは、前記複数の角度位置に対応する、前記ハウジングに対する前記載置面の中心線の角度である複数のセンサー取付角度が異なることを特徴とするシートベルトリトラクタを提供する。
【0013】
上記の構成によれば、センサーホルダが第1姿勢となる状態と第2姿勢となる状態とでセンサー取付角度が異なるので、1つのセンサーホルダで調整可能なセンサー取付角度を従来よりも多くすることができる。このため、所定の角度範囲でセンサー取付角度を調整可能とする場合に、準備すべきセンサーホルダの数を低減することができる。
【0014】
例えば、前記センサーホルダには、前記回転軸を中心とする径方向外向きに尖る少なくとも1つの外向き突起を含む外向き係合部が設けられ、前記取付部材には、前記回転軸を中心とする径方向内向きに尖る少なくとも1つの内向き突起を含む、前記外向き係合部と係合可能な内向き係合部が設けられ、前記少なくとも1つの外向き突起と前記少なくとも1つの内向き突起の一方または双方は、前記回転軸を中心とする周方向に並んで複数設けられており、前記外向き係合部と前記内向き係合部との係合状態が変更されることで、前記センサーホルダが前記複数の角度位置のいずれかで前記取付部材に結合されてもよい。
【0015】
前記センサーホルダは、前記取付部材に結合されるときの向きが反転されることで、前記第1姿勢と前記第2姿勢のどちらかとなり、前記第1姿勢と前記第2姿勢の双方で前記外向き係合部と前記内向き係合部とが係合してもよい。この構成によれば、取付部材に結合するときのセンサーホルダの向きによってセンサーホルダを第1姿勢とするか第2姿勢とするかを選択することができる。
【0016】
前記内向き係合部は1つであり、前記外向き係合部は、前記第1姿勢で前記内向き係合部と係合する第1外向き係合部と、前記第2姿勢で前記内向き係合部と係合する第2外向き係合部を含み、前記第1外向き係合部と前記第2外向き係合部とでは、前記回転軸の延在方向から見たときに、前記少なくとも1つの外向き突起の位置が異なってもよい。この構成によれば、第1外向き係合部の外向き突起と第2外向き係合部の外向き突起との位置の相違によって、複数のセンサー取付角度を容易に設定することができる。
【0017】
前記外向き係合部は1つであり、前記内向き係合部は、前記第1姿勢で前記外向き係合部と係合する第1内向き係合部と、前記第2姿勢で前記外向き係合部と係合する第2内向き係合部を含み、前記第1内向き係合部と前記第2内向き係合部とでは、前記回転軸の延在方向から見たときに、前記少なくとも1つの内向き突起の位置が異なってもよい。この構成によれば、第1内向き係合部の内向き突起と第2内向き係合部の内向き突起との位置の相違によって、複数のセンサー取付角度を容易に設定することができる。
【0018】
前記内向き係合部は、第1内向き係合部と第2内向き係合部を含み、前記外向き係合部は、前記第1姿勢で前記第1内向き係合部と係合するとともに前記第2内向き係合部と係合せず、前記第2姿勢で前記第1内向き係合部および前記第2内向き係合部と係合しない第1外向き係合部と、前記第1姿勢で前記第1内向き係合部および前記第2内向き係合部と係合せず、前記第2姿勢で前記第2内向き係合部と係合するとともに前記第1内向き係合部と係合しない第2外向き係合部を含んでもよい。この構成によれば、第1内向き係合部と第1外向き係合部との係合構造と、第2内向き係合部と第2外向き係合部との係合構造とを異ならせることができる。
【0019】
前記取付部材は、前記ハウジングに対する向きが反転されることで、前記センサーホルダが前記第1姿勢となる状態と、前記センサーホルダが前記第2姿勢となる状態のどちらかで前記ハウジングに取り付け可能であってもよい。この構成によれば、ハウジングに取り付けるときの取付部材の向きによってセンサーホルダを第1姿勢とするか第2姿勢とするかを選択することができる。
【0020】
前記外向き係合部は、前記回転軸および前記載置面の中心線を含む面に対して非対称であってもよい。この構成によれば、取付部材を、対称的な単純な形状とすることができる。
【0021】
前記センサーホルダは、前記第1姿勢で前記センサーレバーを揺動可能に支持する第1支持部と、前記載置面の中心線に対して前記第1支持部と反対側に位置し、前記第2姿勢で前記センサーレバーを揺動可能に支持する第2支持部を有してもよい。この構成によれば、第1姿勢と第2姿勢とでセンサーレバーを同じ向きで設計することができる。
【0022】
前記センサーホルダの形状は、前記第1支持部と前記第2支持部との離間方向に垂直かつ前記載置面の中心線を含む面に対して非対称であってもよい。この構成によれば、センサーホルダを見るだけで、センサーホルダが第1姿勢であるか第2姿勢であるかを判定することができる。
【0023】
前記センサーホルダの前記第1支持部と前記第2支持部とでは、前記載置面からの前記中心線に沿う方向の高さが異なってもよい。この構成によれば、センサーホルダが第1姿勢であるか第2姿勢であるかの判定を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、1つのセンサーホルダで調整可能なセンサー取付角度を従来よりも多くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係るシートベルトリトラクタの斜視図である。
【
図2】
図1に示すシートベルトリトラクタを一方の側面側から見た分解斜視図である。
【
図3】
図1に示すシートベルトリトラクタを他方の側面側から見た分解斜視図である。
【
図4】センサーホルダが基準角度位置で取付部材に結合された状態の車両加速度センサーの斜視図である。
【
図5】
図4に示す車両加速度センサーの分解斜視図である。
【
図8】
図4のVIII-VIII線に沿った断面図である。
【
図10】(a)および(b)はそれぞれ
図9のXA-XA線およびXB-XB線に沿った断面図である。
【
図11】(a)はセンサーホルダが基準角度位置の隣の角度位置で取付部材に結合された状態の車両加速度センサーの斜視図、(b)はそのときの内向き係合部と外向き係合部の係合状態を示す断面図である。
【
図12】(a)はセンサーホルダが基準角度位置の隣(
図11(a)とは逆)の角度位置で取付部材に結合された状態の車両加速度センサーの斜視図、(b)はそのときの内向き係合部と外向き係合部の係合状態を示す断面図である。
【
図13】(a)は取付部材に対する向きが反転されたセンサーホルダが基準角度位置で取付部材に結合された状態の車両加速度センサーの斜視図、(b)はそのときの内向き係合部と外向き係合部の係合状態を示す断面図である。
【
図14】(a)および(b)は前記実施形態で用いられる車両加速度センサーにおけるセンサーホルダを反転する前後の状態を模式的に示す図である。
【
図15】(a)および(b)は第1変形例の車両加速度センサーにおけるセンサーホルダを反転する前後の状態を模式的に示す図である。
【
図16】(a)および(b)は第2変形例の車両加速度センサーにおけるセンサーホルダを反転する前後の状態を模式的に示す図である。
【
図17】(a)および(b)は第3変形例の車両加速度センサーにおけるセンサーホルダを反転する前後の状態を模式的に示す図である。
【
図18】第4変形例の車両加速度センサーにおけるセンサーホルダを模式的に示す図である。
【
図19】従来のシートベルトリトラクタの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1~3に、本発明の一実施形態に係るシートベルトリトラクタ1を示す。このシートベルトリトラクタ1は、車両に搭載され、シートベルトとしてのウエビングの引き出しおよび巻き取りを行うものである。
【0027】
具体的に、シートベルトリトラクタ1は、一対の側板21,22および背板23を有するハウジング2と、ハウジング2の側板21,22間にウエビングの引出方向と巻取方向とに回転可能に収容された巻取ドラム3と、ハウジング2の側板21に取り付けられた車両加速度センサー4を含む。
【0028】
ハウジング2の側板21,22は巻取ドラム3の軸方向で互いに対向しており、背板23は巻取ドラム3の軸方向と平行である。以下、説明の便宜上、巻取ドラム3の軸方向を左右方向というとともに、背板23の厚さ方向を前後方向(側板21,22側を前方、その反対側を後方)という。また、
図1の作図通りに、左右方向および前後方向と直交する方向の一方を上方、他方を下方という。
【0029】
ハウジング2の側板21,22の前辺の上部同士は連結バー25で連結されている。側板21,22には、巻取ドラム3が挿通される開口21a,22aがそれぞれ設けられている。また、背板23には、巻取ドラム3を露出させる開口24が設けられている。
【0030】
ハウジング2の側板21にはメカニズムカバー11が取り付けられ、ハウジング2の側板22には巻取バネユニット15(
図2,3では省略)が取り付けられている。メカニズムカバー11および巻取バネユニット15は、巻取ドラム3を回転可能に支持する。なお、巻取バネユニット15の構成は公知であるため、詳細な説明は省略する。
【0031】
巻取ドラム3は、略円柱状のドラム本体31と、ドラム本体31よりも大径の略円盤状の端部32,33を有する。端部32はハウジング2の側板21の開口21a内に嵌まり込む部分であり、端部33はハウジング2の側板22の開口22a内に嵌まり込む部分である。
【0032】
ハウジング2の側板21の開口21aの周縁には、内歯21bが形成されている。一方、図示は省略するが、巻取ドラム3の端部32内には、内歯21bと係合可能なパウルが保持されている。また、端部32には、パウルを操作するためのクラッチ35が取り付けられている。
【0033】
クラッチ35は巻取ドラム3の端部32よりも大径の略円盤状であり、クラッチ35の外周面には、車両加速度センサー4との係合用の外歯が形成されている。クラッチ35は、通常は巻取ドラム3と一体的に回転し、非常時に回転が阻止されて巻取ドラム3と相対回転する。
【0034】
ハウジング2の側板21には、開口21aの下方に、車両加速度センサー4(正確には、後述するセンサー蓋14)との干渉を回避するための開口21cも設けられている。本実施形態では、車両加速度センサー4がメカニズムカバー11を介して側板21に取り付けられる。
【0035】
メカニズムカバー11には、クラッチ35を収容する第1収容室12と、車両加速度センサー4の大部分を収容する第2収容室13が形成されている。さらに、メカニズムカバー11には、センサー蓋14がヒンジを介して取り付けられている。センサー蓋14は、第2収容室13に車両加速度センサー4が挿入された後に車両加速度センサー4に被せられる。
【0036】
車両加速度センサー4は、車両の加速度が所定値以上となったときに検知状態となる。車両加速度センサー4が検知状態となると、後述するセンサーレバー7A(または7Bもしくは7C)の係合爪74がクラッチ35の外歯と係合する。これにより、ウエビングの引出方向へのクラッチ35の回転が阻止され、巻取ドラム3がクラッチ35と相対回転する。この相対回転によってパウルが巻取ドラム3の端部32から飛び出して内歯21bと係合し、ウエビングの引出方向への巻取ドラム3の回転が阻止される。
【0037】
ただし、ウエビングの引出方向への巻取ドラム3の回転を阻止するための構造は、本実施形態に限られず、適宜変更可能である。例えば、図示は省略するが、パウルが巻取ドラム3の端部32の代わりにハウジング2の側板21に揺動可能に取り付けられ、ハウジング2の側板21の内歯21bの代わりに、パウルと係合可能なギヤが巻取ドラム3に取り付けられてもよい。
【0038】
次に、
図4~
図11(b)を参照して、車両加速度センサー4の構造を説明する。車両加速度センサー4は、球状の慣性質量体41と、慣性質量体41が載置される載置面51を有するセンサーホルダ5と、センサーホルダ5に揺動可能に支持されるセンサーレバー7Aを含む。車両加速度センサー4が検知状態となると、載置面51上を転動する慣性質量体41によってセンサーレバー7Aが押し上げられる。さらに、車両加速度センサー4は、センサーホルダ5が結合され、ハウジング2の側板21にメカニズムカバー11を介して取り付けられる取付部材8を含む。
【0039】
センサーホルダ5の載置面51は、
図8および
図9に示すように、当該載置面51の中心線51aに対して対称な断面形状からなるすり鉢状である。載置面51の断面形状は、直線であっても曲線であってもよい。また、載置面51の断面形状は、どの方向の断面でも同じ(すなわち、球対称)であってもよいし、前後方向の断面と左右方向の断面とで異なってもよい。
【0040】
本実施形態では、車両加速度センサー4が、巻取ドラム3の軸方向が水平面に対して傾いた状態に対応できるように構成されている。すなわち、センサーホルダ5の傾き(載置面51の中心線51aの傾き)が、ハウジング2の背板23に平行な面に沿って調整される。
【0041】
さらに、本実施形態では、取付部材8が、センサーホルダ5が
図4、
図11(a)および
図12(a)に示す第1姿勢と、
図13(a)に示す第2姿勢のどちらか一方となる状態でハウジング2に取り付けられる。第2姿勢は、第1姿勢に対して載置面51の中心線51a回りに反転した姿勢である。本実施形態では、センサーホルダ5が、取付部材8に結合されるときの向きが反転されることで、第1姿勢と第2姿勢のどちらかとなる。
【0042】
より詳しくは、センサーホルダ5は、
図5および
図6に示すように、上面が載置面51を構成する板状の支持部52と、前後方向において支持部52の両側に位置する第1側壁53および第2側壁54を含む。
【0043】
取付部材8は、
図5および
図7に示すように、センサーホルダ5の支持部52と対向する、上下方向と直交するフラットな上面を有するベース81と、前後方向においてベース81の両側に位置する、ベース81よりも上向きに張り出す第1端部82および第2端部83を含む。
【0044】
センサーホルダ5は、第1姿勢と第2姿勢のそれぞれで、前後方向に延びる回転軸50周りに回転した位置である、複数の角度位置のいずれかで取付部材8に結合可能である。上述したようにセンサーホルダ5の傾き、つまりハウジング2の側板21に対する載置面51の中心線51aの傾きは、ハウジング2の背板23に平行な面に沿って調整されるので、前後方向は載置面51の中心線51aと直交する方向でもある。
【0045】
本実施形態では、
図9,10(a),10(b)に示すように、センサーホルダ5に第1外向き係合部61および第2外向き係合部63が設けられるとともに、取付部材8に第1内向き係合部86および第2内向き係合部88が設けられている。第1内向き係合部86および第2内向き係合部88は、第1外向き係合部61および第2外向き係合部63に係合可能である。第1外向き係合部61はセンサーホルダ5の第1側壁53に設けられ、第2外向き係合部63はセンサーホルダ5の第2側壁54に設けられている。第1内向き係合部86は取付部材8の第1端部82に設けられ、第2内向き係合部88は取付部材8の第2端部83に設けられている。
【0046】
図14(a),(b)は、センサーホルダを反転する前後の状態を模式的に示す図である。
図14(a)に示すように、第1姿勢では、第1外向き係合部61が第1内向き係合部86と係合し、第2外向き係合部63が第2内向き係合部88と係合する。
図14(b)に示すように、第2姿勢では、第1外向き係合部61が第2内向き係合部88と係合し、第2外向き係合部63が第1内向き係合部86と係合する。
【0047】
センサーホルダ5の第1側壁53および第2側壁54には回転軸50を中心とするシャフト部55,56がそれぞれ設けられ、取付部材8の第1端部82および第2端部83には把持部84,85がそれぞれ設けられている。シャフト部55,56は、第1側壁53および第2側壁54から互いに反対向きに突出している。シャフト部55,56が把持部84,85に把持されることで、センサーホルダ5が取付部材8に結合された状態(外向き係合部61,63と内向き係合部86,88とが係合した状態)が維持される。
【0048】
第1外向き係合部61は、
図10(a)に示すように、回転軸50を中心とする径方向外向きに尖る少なくとも1つの外向き突起62を含む。同様に、第2外向き係合部63は、
図10(b)に示すように、回転軸50を中心とする径方向外向きに尖る少なくとも1つの外向き突起64を含む。本実施形態では、複数(図例では7つ)の外向き突起62が回転軸50を中心とする周方向に並んで設けられており、複数(図例では7つ)の外向き突起64が回転軸50を中心とする周方向に並んで設けられている。
【0049】
一方、第1内向き係合部86は、
図10(a)に示すように、回転軸50を中心とする径方向内向きに尖る少なくとも1つの内向き突起87を含む。同様に、第2内向き係合部88は、
図10(b)に示すように、回転軸50を中心とする径方向内向きに尖る少なくとも1つの内向き突起89を含む。本実施形態では、複数(図例では6つ)の内向き突起87が回転軸50を中心とする周方向に並んで設けられており、複数(図例では6つ)の内向き突起89が回転軸50を中心とする周方向に並んで設けられている。
【0050】
本実施形態では、外向き突起62,64のピッチおよび内向き突起87,89のピッチが18度である。ただし、外向き突起62,64と内向き係合部86,88のどちらか一方の数は1つであってもよい。
【0051】
第1姿勢では、第1外向き係合部61と第1内向き係合部86との係合状態、および第2外向き係合部63と第2内向き係合部88との係合状態が変更されることで、センサーホルダ5が複数の角度位置のいずれかで取付部材8に結合される。同様に、第2姿勢では、第1外向き係合部61と第2内向き係合部88との係合状態、および第2外向き係合部63と第1内向き係合部86との係合状態が変更されることで、センサーホルダ5が複数の角度位置のいずれかで取付部材8に結合される。つまり、隣り合う角度位置の間の角度差は、外向き突起62,64のピッチおよび内向き突起87,89のピッチと等しい。
【0052】
上述したように、本実施形態では、外向き突起62,64の数が7つ、内向き突起87,89の数が6つであるため、第1姿勢の角度位置の数も第2姿勢の角度位置の数も、基準角度位置とその両隣の2つの合計3つである。第1姿勢での基準角度位置では、
図10(a)および(b)に示すように、外向き突起62,64のうちの両端の外向き突起62,64が内向き突起87,89の外側に位置する。第1姿勢での基準角度位置の隣の角度位置では、
図11(b)および
図12(b)に示すように、外向き突起62,64のうちの端から2つの外向き突起62,64が内向き突起87,89の外側に位置する。第2姿勢での基準角度位置および基準角度位置の隣の角度位置も同様である。
【0053】
本実施形態では、
図10(a)および(b)に示すように、第1外向き係合部61および第2外向き係合部63のそれぞれが、回転軸50および載置面51の中心線51aを含む面S1に対して非対称である。このため、第1姿勢と第2姿勢とでは、複数の角度位置に対応する、ハウジング2に対する載置面51の中心線51aの角度である複数のセンサー取付角度が異なる。
【0054】
なお、上述した非対称は、外向き突起62,64の数が奇数である場合は、中央の外向き突起62,64の頂点が回転軸50および載置面51の中心線51aを含む面S1上に位置しないことと同義であり、外向き突起62,64の数が偶数である場合は、中央の2つの外向き突起62,64の間に形成される溝の底が回転軸50および載置面51の中心線51aを含む面S1上に位置しないことと同義である。
【0055】
本実施形態では、センサー取付角度について、載置面51の中心線51aが側板21と平行であるときをゼロ度、載置面51の中心線51aが側板21から内向きに倒れる方向を正、外向きに倒れる方向を負と定義する。つまり、本実施形態では、センサー取付角度は、ハウジング2の側板21に対する載置面51の中心線51aの角度である。
【0056】
第1姿勢では、センサー取付角度が、
図4,10(a),11(b)に示す基準角度位置で-12度であり、
図11(a),11(b)に示す隣の角度位置で-30度であり、
図12(a),12(b)に示す逆隣の角度位置で6度である。一方、第2姿勢では、
図13(a),13(b)に示す基準角度位置で12度であり、隣および逆隣の角度位置で-6度および30度である。
【0057】
第1姿勢では、
図4,10(b)に示すようにセンサー取付角度が-12度のときはセンサーレバー7Aが用いられ、
図11(a),11(b)に示すようにセンサー取付角度が-30度のときはセンサーレバー7Bが用いられ、
図12(a),12(b)に示すようにセンサー取付角度が6度のときはセンサーレバー7Cが用いられる。また、第2姿勢では、
図13(a),13(b)に示すようにセンサー取付角度が12度のときはセンサーレバー7Cが用いられ、図示は省略するが、センサー取付角度が-6度および30度のときもそれらに専用のセンサーレバーが用いられる。
【0058】
センサーレバー7A,7B,7Cのそれぞれは、揺動シャフト42(
図5参照)に貫通される中空の支点部71と、支点部71から前後方向に延びるアーム部72と、アーム部72の先端に設けられた、載置面51と反対側で慣性質量体41に被せられる皿部73と、皿部73から上向きに突出する係合爪74を含む。
【0059】
より詳しくは、センサーレバー7A,7B,7Cのいずれでも、係合爪74がクラッチ35の外歯と係合可能にするために、係合爪74の中心線が取付部材8のベース81の上面の垂線(すなわち、側板21)とほぼ平行となっている。なお、係合爪74の先端は湾曲しており、本実施形態では、係合爪74の中心線が取付部材8のベース81の上面の垂線に対して±3度の範囲内にあれば、その係合爪74を含むセンサーレバーを使用可能である。なお、本実施形態では、隣り合う角度位置の間の角度差がセンサーレバーを使用可能な範囲を超えるため、上述したように、第1姿勢、第2姿勢のそれぞれにおいてセンサー取付角度を変更する際には、センサーレバーの組み換えが必要となっている。
【0060】
センサーホルダ5は、第1姿勢でセンサーレバー(7A,7Bまたは7C)を揺動可能に支持する第1支持部58と、第2姿勢でセンサーレバー(基準角度位置ではセンサーレバー7C)を揺動可能に支持する第2支持部57を含む。第2支持部57は、載置面51の中心線51aに対して第1支持部58と反対側に位置する。
【0061】
本実施形態では、第1支持部58が第2側壁54の両端部から載置面51の中心線51aと平行に突出する一対の支柱58aで構成され、第2支持部57が第1側壁53の両端部から載置面51の中心線51aと平行に突出する一対の支柱57aで構成されている。すなわち、第1支持部58と第2支持部57は前後方向で互いに離間している。
【0062】
図5に示すように、双方の支柱58aには、第1姿勢で揺動シャフト42の両端部と嵌合する嵌合穴58bが設けられ、双方の支柱57aには、第2姿勢で揺動シャフト42の両端部と嵌合する嵌合穴57bが設けられている。
【0063】
センサーホルダ5の形状は、第1支持部58と第2支持部57の離間方向(本実施形態では、前後方向)に垂直かつ載置面51の中心線51aを含む面S2に対して非対称である。本実施形態では、第1支持部58と第2支持部57とでは、載置面51からの中心線51aに沿う方向の高さが異なる。第1支持部58の高さは、第2支持部57の高さよりも小さい。
【0064】
以上説明したように、本実施形態のシートベルトリトラクタ1では、センサーホルダ5が第1姿勢となる状態と第2姿勢となる状態とでセンサー取付角度が異なるので、1つのセンサーホルダ5で調整可能なセンサー取付角度を従来よりも多くすることができる。このため、所定の角度範囲(例えば、±30度の範囲)でセンサー取付角度を調整可能とする場合に、準備すべきセンサーホルダの数を低減することができる。
【0065】
例えば、センサーホルダ5に交換可能な、基準角度位置でセンサー取付角度が-3度のセンサーホルダを準備すれば、第1姿勢ではセンサー取付角度を-21度、-3度、15度のいずれかに調整することができ、第2姿勢ではセンサー取付角度を、3度、21度、-15度のいずれかに調整することができる。
【0066】
また、本実施形態では、取付部材8に対するセンサーホルダ5の向きが反転されるので、取付部材8に結合するときのセンサーホルダ5の向きによってセンサーホルダ5を第1姿勢とするか第2姿勢とするかを選択することができる。
【0067】
さらに、本実施形態では第1外向き係合部61および第2外向き係合部63のそれぞれが回転軸50および載置面51の中心線51aを含む面S1に対して非対称であるので、取付部材8を、ハウジング2の側板21に平行かつ回転軸50を含む面に対して対称的な単純な形状とすることができる。
【0068】
また、本実施形態では、センサーホルダ5が第1姿勢でセンサーレバー(7A,7Bまたは7C)を支持する第1支持部58と、第2姿勢でセンサーレバー(基準角度位置ではセンサーレバー7C)を支持する第2支持部57を含むので、第1姿勢と第2姿勢とでセンサーレバーを同じ向きで設計することができる。
【0069】
さらに、本実施形態では、センサーホルダ5の形状が第1支持部58と第2支持部57の間の面S2に対して非対称であるので、センサーホルダ5を見るだけで、センサーホルダ5が第1姿勢であるか第2姿勢であるかを判定することができる。
【0070】
しかも、第1支持部58と第2支持部57とでは高さが異なるため、センサーホルダ5が第1姿勢であるか第2姿勢であるかの判定を容易に行うことができる。
【0071】
(変形例)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0072】
例えば、前記実施形態では取付部材8がメカニズムカバー11を介してハウジング2の側板21に取り付けられたが、取付部材8は側板21に直接取り付けられてもよい。また、取付部材8は、メカニズムカバー11と一体に設けられてもよい。
【0073】
センサーホルダ5は、必ずしも2つの支持部57,58を含む必要はなく、第1姿勢と第2姿勢のどちらでもセンサーレバーを揺動可能に支持する1つの支持部を含んでもよい。
【0074】
また、シャフト部55,56および把持部84,85が省略されて、第1姿勢または第2姿勢で取付部材8の内向き係合部86,88にセンサーホルダ5の外向き係合部61,63を係合させた後に、内向き係合部86,88と外向き係合部61,63とが接着または溶着されてもよい。
【0075】
また、隣り合う角度位置の間の角度差が、同一のセンサーレバーを使用可能な範囲を超えないようにして、第1姿勢、第2姿勢のそれぞれにおいてセンサー取付角度を調整する際に、センサーレバーの組み換えを不要にしても良い。
【0076】
さらに、
図15(a),15(b)に示す第1変形例の車両加速度センサー4Aが採用されてもよいし、
図16(a),16(b)に示す第2変形例の車両加速度センサー4Bが採用されてもよいし、
図17(a),17(b)に示す第3変形例の車両加速度センサー4Cが採用されてもよい。
【0077】
図15(a),15(b)に示す第1変形例の車両加速度センサー4Aは、1つの内向き係合部91を含む以外は前記実施形態の取付部材8と同様に構成された取付部材8Aを含むとともに、第1外向き係合部61および第2外向き係合部63以外は前記実施形態のセンサーホルダ5と同様に構成されたセンサーホルダ5Aを含む。
【0078】
車両加速度センサー4Aでも、前記実施形態と同様に、センサーホルダ5Aが、取付部材8Aに結合されるときの向きが反転されることで、
図15(a)に示す第1姿勢と
図15(b)に示す第2姿勢のどちらかとなる。
【0079】
内向き係合部91は、前記実施形態の内向き係合部86,88と同様に、回転軸50を中心とする径方向内向きに尖る少なくとも1つの内向き突起92を含む。第1変形例では、内向き係合部91が取付部材8の第2端部83に設けられ、第1外向き係合部61がセンサーホルダ5Aの第2側壁54に設けられ、第2外向き係合部63がセンサーホルダ5Aの第1側壁53に設けられている。このため、第1姿勢で第1外向き係合部61が内向き係合部91と係合し、第2姿勢で第2外向き係合部63が内向き係合部91と係合する。
【0080】
ただし、内向き係合部91が取付部材8の第1端部82に設けられ、第1外向き係合部61がセンサーホルダ5Aの第1側壁53に設けられ、第2外向き係合部63がセンサーホルダ5Aの第2側壁54に設けられてもよい。
【0081】
前記実施形態と同様に、内向き突起92の数と外向き突起62,64の数は複数であってもよい。あるいは、内向き突起92の数が複数であり、外向き突起62,64の数が1つであってもよい。逆に、外向き突起62,64の数が複数であり、内向き突起92の数が1つであってもよい。また、第1変形例でも、前記実施形態と同様に、第1外向き係合部61および第2外向き係合部63のそれぞれが回転軸50および載置面51の中心線51aを含む面S1に対して非対称であってもよい。
【0082】
前記実施形態では、
図10(a),10(b)に示すように、第1外向き係合部61と第2外向き係合部63とで、回転軸50の延在方向から見たときに、外向き突起62,64の位置が同じであった。本実施形態では、第1外向き係合部61と第2外向き係合部63とでは、回転軸50の延在方向から見たときに、外向き突起62,64の回転軸50を中心とする周方向での位置が異なる。このため、第1姿勢と第2姿勢とで、取付部材8Aにセンサーホルダ5Aが結合されるときの複数の角度位置に対応する複数のセンサー取付角度が異なる。
【0083】
第1変形例でも、前記実施形態と同様に、1つのセンサーホルダ5Aで調整可能なセンサー取付角度を従来よりも多くすることができる。しかも、第1変形例では、第1外向き係合部61の外向き突起62と第2外向き係合部63の外向き突起64との位置の相違によって、複数のセンサー取付角度を容易に設定することができる。
【0084】
図16(a),16(b)に示す第2変形例の車両加速度センサー4Bは、1つの外向き係合部65を含む以外は前記実施形態のセンサーホルダ5と同様に構成されたセンサーホルダ5Bを含むとともに、第1内向き係合部86および第2内向き係合部88以外は前記実施形態の取付部材8と同様に構成された取付部材8Bを含む。
【0085】
車両加速度センサー4Bでも、前記実施形態と同様に、センサーホルダ5Bが、取付部材8Bに結合されるときの向きが反転されることで、
図16(a)に示す第1姿勢と
図16(b)に示す第2姿勢のどちらかとなる。
【0086】
外向き係合部65は、前記実施形態の外向き係合部61,63と同様に、回転軸50を中心とする径方向外向きに尖る少なくとも1つの外向き突起66を含む。第2変形例では、外向き係合部65がセンサーホルダ5Bの第2側壁54に設けられ、第1内向き係合部86が取付部材8Bの第2端部83に設けられ、第2内向き係合部88が取付部材8Bの第1端部82に設けられている。このため、第1姿勢で第1内向き係合部86が外向き係合部65と係合し、第2姿勢で第2内向き係合部88が外向き係合部65と係合する。
【0087】
ただし、外向き係合部65がセンサーホルダ5Bの第1側壁53に設けられ、第1内向き係合部86が取付部材8Bの第1端部82に設けられ、第2内向き係合部88が取付部材8Bの第2端部83に設けられてもよい。
【0088】
前記実施形態と同様に、外向き突起66の数と内向き突起87,89の数は複数であってもよい。あるいは、外向き突起66の数が複数であり、内向き突起87,89の数が1つであってもよい。逆に、内向き突起87,89の数が複数であり、外向き突起66の数が1つであってもよい。また、第2変形例でも、前記実施形態と同様に、外向き係合部65が回転軸50および載置面51の中心線51aを含む面S1に対して非対称であってもよい。
【0089】
前記実施形態では、
図10(a),10(b)に示すように、第1内向き係合部86と第2内向き係合部88とで、回転軸50の延在方向から見たときに、内向き突起87,89の位置が同じであった。本実施形態では、第1内向き係合部86と第2内向き係合部88とでは、回転軸50の延在方向から見たときに、内向き突起87,89の回転軸50を中心とする周方向での位置が異なる。このため、第1姿勢と第2姿勢とで、取付部材8Bにセンサーホルダ5Bが結合されるときの複数の角度位置に対応する複数のセンサー取付角度が異なる。
【0090】
第2変形例でも、前記実施形態と同様に、1つのセンサーホルダ5Bで調整可能なセンサー取付角度を従来よりも多くすることができる。しかも、本実施形態では、第1内向き係合部86の内向き突起87と第2内向き係合部88の内向き突起89との位置の相違によって、複数のセンサー取付角度を容易に設定することができる。
【0091】
また、第2変形例では、第1支持部58の先端が斜めになっている一方で、第2支持部57の先端がフラットになっていることで、センサーホルダ5Bの形状が、第1支持部58と第2支持部57との離間方向に垂直かつ載置面51の中心線51aを含む面S2に対して非対称となっている。
【0092】
図17(a),17(b)に示す第3変形例の車両加速度センサー4Cは、第1内向き係合部93および第2内向き係合部95以外は前記実施形態の取付部材8と同様に構成された取付部材8Cを含むとともに、第1外向き係合部6Aおよび第2外向き係合部6C以外は前記実施形態のセンサーホルダ5と同様に構成されたセンサーホルダ5Cを含む。
【0093】
車両加速度センサー4Cでも、前記実施形態と同様に、センサーホルダ5Cが、取付部材8Cに結合されるときの向きが反転されることで、
図17(a)に示す第1姿勢と
図17(b)に示す第2姿勢のどちらかとなる。
【0094】
第1内向き係合部93および第2内向き係合部95は、前記実施形態の内向き係合部86,88と同様に、回転軸50を中心とする径方向内向きに尖る少なくとも1つの内向き突起94,96をそれぞれ含む。本実施形態では、回転軸50を中心とする径方向において、第1内向き係合部93が第2内向き係合部95よりも外側に位置する。
【0095】
第1外向き係合部6Aおよび第2外向き係合部6Cは、前記実施形態の外向き係合部61,63と同様に、回転軸50を中心とする径方向外向きに尖る少なくとも1つの外向き突起6B,6Dをそれぞれ含む。本実施形態では、回転軸50を中心とする径方向において、第1外向き係合部6Aが第2外向き係合部6Cよりも外側に位置する。
【0096】
第3変形例では、第1外向き係合部6Aおよび第2外向き係合部6Cがセンサーホルダ5Cの第2側壁54に設けられ、第1内向き係合部93が取付部材8Cの第2端部83に設けられ、第2内向き係合部95が取付部材8Cの第1端部82に設けられている。
【0097】
第1外向き係合部6Aは、第1姿勢で第1内向き係合部93と係合するとともに第2内向き係合部95と係合せず、第2姿勢で第1内向き係合部93および第2内向き係合部95と係合しない。第2外向き係合部6Cは、第1姿勢で第1内向き係合部93および第2内向き係合部95と係合せず、第2姿勢で第2内向き係合部95と係合するとともに第1内向き係合部93と係合しない。
【0098】
ただし、第1外向き係合部6Aおよび第2外向き係合部6Cならびに第1内向き係合部93および第2内向き係合部95が設けられる位置は、
図17(a),17(b)に示す位置に限られず、適宜変更可能である。また、第3変形例でも、前記実施形態と同様に、第1外向き係合部6Aおよび第2外向き係合部6Cのそれぞれが回転軸50および載置面51の中心線51aを含む面S1に対して非対称であってもよい。
【0099】
前記実施形態と同様に、外向き突起6B,6Dの数と内向き突起94,96の数は複数であってもよい。あるいは、外向き突起6B,6Dの数が複数であり、内向き突起94,96の数が1つであってもよい。逆に、内向き突起94,96の数が複数であり、外向き突起6B,6Dの数が1つであってもよい。
【0100】
第3変形例でも、前記実施形態と同様に、第1姿勢と第2姿勢とで、取付部材8Cにセンサーホルダ5Cが結合されるときの複数の角度位置に対応する複数のセンサー取付角度が異なる。このため、1つのセンサーホルダ5Cで調整可能なセンサー取付角度を従来よりも多くすることができる。しかも、本実施形態では、第1内向き係合部93と第1外向き係合部6Aとの第1係合構造と、第2内向き係合部95と第2外向き係合部6Cとの第2係合構造とを異ならせることができる。例えば、第1係合構造と第2係合構造とで、外向き突起および内向き突起の大きさやピッチを異ならせることができる。
【0101】
また、第3変形例では、第1支持部58の先端の幅が第2側壁54の厚さよりも細くなっている一方で、第2支持部57の幅が先端まで第1側壁53の厚さと等しくなっていることで、センサーホルダ5Cの形状が、第1支持部58と第2支持部57との離間方向に垂直かつ載置面51の中心線51aを含む面S2に対して非対称となっている。
【0102】
前記実施形態では、センサーホルダ5が取付部材8に結合されるときの向き反転可能であったが、センサーホルダ5が取付部材8に結合されるときの向きが反転不能であり、取付部材8が、ハウジング2に対する向きが反転されることで、センサーホルダ5が第1姿勢となる状態と、センサーホルダ5が第2姿勢となる状態のどちらかでハウジング2に取り付け可能であってもよい。この構成であれば、ハウジング2に取り付けるときの取付部材8の向きによってセンサーホルダを第1姿勢とするか第2姿勢とするかを選択することができる。この場合でも、例えば、第1外向き係合部61および第2外向き係合部63のそれぞれが、回転軸50および載置面51の中心線51aを含む面S1に対して非対称であれば、または第1内向き係合部86および第2内向き係合部88のそれぞれが、ハウジング2の側板21に平行かつ回転軸50を含む面に対して非対称であれば、センサーホルダ5が第1姿勢となる状態と第2姿勢となる状態では、複数のセンサー取付角度が異なるようになる。
【0103】
センサーホルダ5が取付部材8に結合されるときの向きを反転不能とするには、例えば、第1シャフト部55と第2シャフト部56とで直径を異ならせてもよい。また、ハウジング2に取り付けられるときの取付部材8の向きが反転可能である場合、取付部材8が内向き係合部を1つだけ含み、センサーホルダ5が外向き係合部を1つだけ含んでもよい。
【0104】
前記実施形態では、センサーホルダ5の向きが、ハウジング2の背板23に平行な面に沿って調整されたが、巻取ドラム3の軸方向が水平に保たれたままでシートベルトリトラクタ1が傾けられる場合、センサーホルダ5の傾き、つまりハウジング2の背板23に対する載置面51の中心線51aの傾きが、巻取ドラム3の軸方向と直交する面(ここでは側板21)に沿って調整されてもよい。すなわち、
図18に示す第4変形例の車両加速度センサー4D(
図18は、第1姿勢の車両加速度センサー4Dを後方から見た図である)のように、センサーホルダ5Dの回転軸50が左右方向に延びてもよい。
【0105】
この場合、センサーホルダ5Dの第1側壁53および第2側壁54は左右方向において支持部52の両側に位置し、取付部材8Dの第1端部82および第2端部83は左右方向においてベース81の両側に位置する。また、第1姿勢で図略のセンサーレバーを揺動可能に支持する第1支持部58の一対の支柱58aは第1側壁53および第2側壁54の双方の後側の端部に設けられ、第2姿勢で図略のセンサーレバー(前記実施形態と同様に、第1姿勢で用いられるセンサーレバーと同じ場合もあるし異なる場合もある)を揺動可能に支持する第2支持部57の一対の支柱57aは第1側壁53および第2側壁54の双方の前側の端部に設けられる。このため、支柱57a,58aに設けられる嵌合穴57b,58bは、回転軸50と平行である。すなわち、揺動シャフト42は、長さ方向が回転軸50と平行な状態でセンサーホルダ5Dに取付けられる。
【0106】
第4変形例でも、センサーホルダ5Dが、取付部材8Dに結合されるときの向きが反転されることで、第1姿勢と第2姿勢のどちらかとなる。前記実施形態と同様に、センサーホルダ5Dが第1姿勢となる状態と第2姿勢となる状態とでは、複数のセンサー取付角度が異なるので、1つのセンサーホルダ5Dで対応可能なセンサー取付角度を従来よりも多くすることができる。
【0107】
また、第4変形例のセンサーホルダ5Dでも、前記実施形態のセンサーホルダ5と同様に、載置面51からの中心線51aに沿う方向において、第1支持部58の高さが、第2支持部57の高さよりも小さくなっている(第2支持部57の一対の支柱57aは、
図18においてその先端のみが見えている)ことで、センサーホルダ5Dの形状が、第1支持部58と第2支持部57との離間方向(本実施形態では、前後方向)に垂直かつ載置面51の中心線51aを含む面S2に対して非対称となっている。
【符号の説明】
【0108】
1 シートベルトリトラクタ
2 ハウジング
3 巻取ドラム
4,4A~4D 車両加速度センサー
41 慣性質量体
5,5A~5D センサーホルダ
50 回転軸
51 載置面
51a 中心線
57 第2支持部
58 第1支持部
61 第1外向き係合部
62 外向き突起
63 第2外向き係合部
64 外向き突起
65 外向き係合部
66 外向き突起
6A 第1外向き係合部
6B 外向き突起
6C 第2外向き係合部
6D 外向き突起
7A~7C センサーレバー
8,8A~8D 取付部材
86 第1内向き係合部
87 内向き突起
88 第2内向き係合部
89 内向き突起
91 内向き係合部
92 内向き突起
93 第1内向き係合部
94 内向き突起
95 第2内向き係合部
96 内向き突起