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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114361
(43)【公開日】2023-08-17
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 11/04 20060101AFI20230809BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20230809BHJP
   B60R 1/20 20220101ALI20230809BHJP
   B60R 1/29 20220101ALI20230809BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20230809BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20230809BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
B60R11/04
B60R11/02 C
B60R1/20 100
B60R1/29
G09F9/00 351
G09F9/30 365
H04N7/18 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016685
(22)【出願日】2022-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】308013436
【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 和久
(72)【発明者】
【氏名】清水 辰弥
(72)【発明者】
【氏名】田端 隆伸
(72)【発明者】
【氏名】安藤 康幸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 崇裕
(72)【発明者】
【氏名】小野木 文寛
【テーマコード(参考)】
3D020
5C054
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
3D020BA04
3D020BA20
3D020BC04
3D020BC11
3D020BD03
3D020BD08
3D020BE03
5C054CA04
5C054CC02
5C054FE14
5C054FE17
5C054HA30
5C094BA27
5C094DA06
5C094GA10
5C094HA05
5G435EE20
5G435EE50
5G435LL17
(57)【要約】
【課題】前席で運転する乗員が後席の様子を確認する際の負担を軽減することができる車両用表示装置を提供する。
【解決手段】車両用表示装置10は、運転席30の前方側且つ上方側に配置され、車室14内のルーフトリム24から出し入れ可能に構成された表示面42を備える第1表示部38を有している。第1表示部38は、駆動部44によって表示面42を駆動させ、車室14内への展開量を変更可能とされている。また、車両用表示装置10は、第1表示部38と駆動部44を制御する制御部を備えている。制御部は、駆動部44の制御により、取得した車両12の運転状態に基づいて、表示面42の車室14内への展開量を変更する。更に、表示面42の展開量に適合するように、後席用の第2カメラ96により撮影された後席画像を表示面42に表示させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席の前方側且つ上方側に配置され、車室内の内装部材から出し入れ可能に構成された表示面を備える第1表示部と、
前記第1表示部の前記表示面を駆動させる駆動部と、
前記第1表示部及び前記駆動部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
車両の運転状態を取得する運転状態取得部と、
前記駆動部の制御により、取得した運転状態に基づいて前記表示面の車室内への展開量を変更する駆動制御部と、
前記表示面の展開量に適合するように、後席用の車載カメラにより撮影された後席画像を前記表示面に表示させる表示制御部と、
を有する車両用表示装置。
【請求項2】
前記制御部は、車両の位置情報を取得する位置情報取得部を有し、
前記駆動制御部は、取得した車両の位置情報に基づいて、前記車両が位置する国又は地域で設定された所定の範囲内において前記表示面の展開量を変更する、請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記制御部は、後席の乗員の生体情報を取得する生体情報取得部を有し、
前記表示制御部は、所定の生体情報を取得した場合に、前記後席画像を前記表示面に表示させる、請求項1又は請求項2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記駆動制御部は、前記所定の生体情報を取得した際、前記第1表示部が前記内装部材の内側に収容された収容状態である場合に、車両の運転状態に応じた展開量に前記表示面を展開させ、
前記表示制御部は、前記表示面の展開後に前記後席画像を前記表示面に表示させる、請求項3に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、車室内における後席の乗員の位置に対応した前記表示面の領域に、前記後席画像を表示させる、請求項1~請求項4の何れか1項に記載の車両用表示装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、前記表示面において前記後席画像が表示された領域を維持したまま、運転席の乗員を支援する支援情報を前記後席画像と並べて表示する、請求項5に記載の車両用表示装置。
【請求項7】
後席の前方側に配置された第2表示部と、を有し、
前記表示制御部は、前記後席画像を前記第1表示部に表示させる場合に、運転席用の車載カメラにより撮影された運転席画像を前記第2表示部に表示させる、請求項1~請求項6の何れか1項に記載の車両用表示装置。
【請求項8】
車室内における後席の乗員の位置を検出する乗員位置検出部を有し、
前記表示制御部は、検出された乗員の位置に基づいて、後席用の複数の車載カメラの中から後席の乗員を撮影した車載カメラを特定し、特定された車載カメラにより撮影された画像を前記表示面に表示する、請求項1~請求項7の何れか1項に記載の車両用表示装置。
【請求項9】
車室内における後席の乗員の位置を検出する乗員位置検出部を有し、
前記表示制御部は、後席用の車載カメラに接続されたアクチュエータの駆動を制御可能に構成され、前記アクチュエータの駆動を制御することにより、車載カメラの撮影範囲を検出された乗員の位置が含まれるように変更し、当該車載カメラにより撮影された画像を前記表示面に表示する、請求項1~請求項7の何れか1項に記載の車両用表示装置。
【請求項10】
車室内における後席の乗員の位置を検出する乗員位置検出部を有し、
前記表示制御部は、後席用の車載カメラにより撮影された画像の中から、検出された乗員の位置に基づく領域の画像を抽出して前記表示面に表示する、請求項1~請求項7の何れか1項に記載の車両用表示装置。
【請求項11】
前記第1表示部は、有機エレクトロルミネッセンス素子を備えると共に、フィルム状とされている、請求項1~請求項10の何れか1項に記載の車両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両運転中に前席乗員が後席乗員である子供の状態を確認できる車載用表示装置が開示されている。この車載用表示装置では、後席用カメラで後席乗員を撮影し、撮影した映像をインストルメントパネルなどに設置した前席用ディスプレイに表示することにより、前席乗員によって構成乗員の状態を確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-025911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両の走行中に前席のドライバが後席の様子を確認する際は、運転を妨げないために、ドライバにとって負担の少ない方法で確認することが望ましい。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術のように、前席用のディスプレイをインストルメントパネルに設置する場合、ディスプレイを確認するために、ドライバは、車両前方から下方へ視線を落とす必要があるので、視線の移動量が多くなる。従って、このようなドライバの負担を軽減する観点では、例えば、運転席の前方且つ上方側にディスプレイを設けることが考えられる。
【0006】
一方、運転席の前方且つ上方側の領域は、運転中の乗員の視界に含まれる領域でもあり、表示部の大きさによっては、乗員が煩わしさを感じる場合がある。
【0007】
本発明は上記事実を考慮し、前席で運転する乗員が後席の様子を確認する際の負担を軽減することができる車両用表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の態様に係る車両用表示装置は、運転席の前方側且つ上方側に配置され、車室内の内装部材から出し入れ可能に構成された表示面を備える第1表示部と、前記第1表示部の前記表示面を駆動させる駆動部と、前記第1表示部及び前記駆動部を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、車両の運転状態を取得する運転状態取得部と、前記駆動部の制御により、取得した運転状態に基づいて前記表示面の車室内への展開量を変更する駆動制御部と、前記表示面の展開量に適合するように、後席用の車載カメラにより撮影された後席画像を前記表示面に表示させる表示制御部と、を有している。
【0009】
本開示の第1の態様では、運転席の前方側且つ上方側に配置され、車室内の内装部材から出し入れ可能に構成された表示面を備える第1表示部を有している。第1表示部は、駆動部によって表示面を駆動させ、車室内への展開量を変更可能とされている。また、車両用表示装置は、第1表示部と駆動部を制御する制御部を備えている。制御部は、運転状態取得部、駆動制御部及び表示制御部を有しており、駆動制御部は、駆動部の制御により、運転状態取得部で取得した運転状態に基づいて、表示面の車室内への展開量を変更する。更に、表示制御部は、表示面の展開量に適合するように、後席用の車載カメラにより撮影された後席画像を前記表示面に表示させる。これにより、運転席の乗員は、第1表示部を視認することにより、僅かに視線を動かすだけで後席の様子を確認することができる。また、例えば、走行中は、運転者の視界を遮らないように配慮して表示面の展開量を調整することができ、運転中に乗員が煩わしさを感じることを抑制することができる。このようにして、車両用表示装置では、運転席で運転する乗員が後席の様子を確認する際の負担を軽減することができる。
【0010】
本開示の第2の態様に係る車両用表示装置は、第1の態様に記載の構成において、前記制御部は、車両の位置情報を取得する位置情報取得部を有し、前記駆動制御部は、取得した車両の位置情報に基づいて、前記車両が位置する国又は地域で設定された所定の範囲内において前記表示面の展開量を変更する。
【0011】
本開示の第2の態様では、駆動制御部は、位置情報取得部で取得した車両の位置情報に基づいて、車両が位置する国又は地域で設定された所定の範囲内において前記表示面の展開量を変更する。これにより、車両用表示装置では、第1表示部の展開位置を、車両が位置する国又は地域の法令や規則に準じるように設定することができる。
【0012】
本開示の第3の態様に係る車両用表示装置は、第1の態様又は第2の態様に記載の構成において、前記制御部は、後席の乗員の生体情報を取得する生体情報取得部を有し、前記表示制御部は、所定の生体情報を取得した場合に、前記後席画像を前記表示面に表示させる。
【0013】
本開示の第3の態様では、表示制御部は、生体情報取得部で、後席の乗員に関する所定の生体情報を取得した場合に、後席画像を表示面に表示させる。これにより、後席の乗員の変化に応じた適切なタイミングで、運転席の乗員に対して第1表示部を確認すべきことを促すことができる。
【0014】
本開示の第4の態様に係る車両用表示装置は、第3の態様に記載の構成において、前記駆動制御部は、前記所定の生体情報を取得した際、前記第1表示部が前記内装部材の内側に収容された収容状態である場合に、車両の運転状態に応じた展開量に前記表示面を展開させ、前記表示制御部は、前記表示面の展開後に前記後席画像を前記表示面に表示させる。
【0015】
本開示の第4の態様では、表示制御部は、第1表示部が内装部材の内側に収容されている場合であっても、後席の乗員の変化に応じて、積極的に第1表示部を確認すべきことを運転席の乗員に促すことができる。
【0016】
本開示の第5の態様に係る車両用表示装置は、第1の態様~第4の態様の何れか1態様に記載の構成において、前記表示制御部は、車室内における後席の乗員の位置に対応した前記表示面の領域に、前記後席画像を表示させる。
【0017】
本開示の第5の態様に係る車両用表示装置では、表示制御部は、後席画像の表示を、車室内における後席の乗員の位置に対応した表示面の領域に表示させる。これにより、乗員は、第1表示部を見ることで、車室内の空間における乗員同士の位置関係を表示面から直感的に把握して、後席の様子を確認することができる。
【0018】
本開示の第6の態様に係る車両用表示装置は、第5の態様に記載の構成において、前記前記表示制御部は、前記表示面において前記後席画像が表示された領域を維持したまま、運転席の乗員を支援する支援情報を前記後席画像と並べて表示する。
【0019】
本開示の第6の態様に係る車両用表示装置では、表示制御部は、表示面において、後席画像が表示された領域を維持したまま、運転席の乗員を支援する支援情報を後席画像と並べて表示する。これにより、後席画像と支援情報の両方を表示する際に、表示面の明滅を少なくして、乗員が感じる煩わしさを低減させることができる。
【0020】
なお、ここでいう支援情報とは、走行中の支援情報に限らず、車両の停止中に表示可能な支援情報も含む広い概念である。
【0021】
本開示の第7の態様に係る車両用表示装置は、第1の態様~第6の態様の何れか1態様に記載の構成において、後席の前方側に配置された第2表示部と、を有し、前記表示制御部は、前記後席画像を前記第1表示部に表示させる場合に、運転席用の車載カメラにより撮影された運転席画像を前記第2表示部に表示させる。
【0022】
本開示の第7の態様では、表示制御部は、後席画像を第1表示部に表示させる場合に、運転席用の車載カメラにより撮影された運転席画像を、後席の前方側に配置された第2表示部に表示させる。これにより、運転席の乗員と後席の乗員が、互いの様子を確認することができるため、コミュニケーションを円滑にすることができる。
【0023】
本開示の第8の態様に係る車両用表示装置は、第1の態様~第7の態様の何れか1態様に記載の構成において、車室内における後席の乗員の位置を検出する乗員位置検出部を有し、前記表示制御部は、検出された乗員の位置に基づいて、後席用の複数の車載カメラの中から後席の乗員を撮影した車載カメラを特定し、特定された車載カメラにより撮影された画像を前記表示面に表示する。
【0024】
本開示の第8の態様では、例えば、後席が複数ある場合などで、後席用の車載カメラが複数設置されている場合でも、確実に、第1表示部に後席の乗員を表示させることができる。
【0025】
本開示の第9の態様に係る車両用表示装置は、第1の態様~第7の態様に記載の構成において、車室内における後席の乗員の位置を検出する乗員位置検出部を有し、前記表示制御部は、後席用の車載カメラに接続されたアクチュエータの駆動を制御可能に構成され、アクチュエータの駆動を制御することにより、車載カメラの撮影範囲を検出された乗員の位置が含まれるように変更し、当該車載カメラにより撮影された画像を前記表示面に表示する。
【0026】
本開示の第9の態様では、例えば、後席が複数ある場合でも、アクチュエータの駆動を制御して後席の乗員の位置が含まれるように車載カメラの撮影範囲を変更することができるため、車載カメラの搭載台数を増やすことなく、第1表示部に乗員を表示させることができる。
【0027】
本開示の第10の態様に係る車両用表示装置は、第1の態様~第7の態様に記載の構成において、車室内における後席の乗員の位置を検出する乗員位置検出部を有し、前記表示制御部は、後席用の車載カメラにより撮影された画像の中から、検出された乗員の位置に基づく領域の画像を抽出して前記表示面に表示する。
【0028】
本開示の第10の態様に係る車両用表示装置では、例えば、後席が複数ある場合でも、後席用の車載カメラにより撮影された画像の中から、検出された乗員の位置に基づく領域の画像を抽出して表示面に表示できる。従って、1台の車載カメラで複数の後席を撮影することにより、車載カメラの搭載台数を増やすことなく、第1表示部に乗員を表示させることができる。
【0029】
本開示の第11の態様に係る車両用表示装置は、第1の態様~第10の態様の何れか1態様に記載の構成において、前記第1表示部は、有機エレクトロルミネッセンス素子を備えると共に、フィルム状とされている。
【0030】
本開示の第11の態様に係る車両用表示装置では、第1表示部が、有機エレクトロルミネッセンス素子を備えると共に、フィルム状とされており、当該第1表示部を収納するときに、当該第1表示部を曲げて変形させることができる。
【発明の効果】
【0031】
本開示に係る車両用表示装置によれば、前席で運転する乗員が後席の様子を確認する際の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】実施形態に係る車両用表示装置を備えた車両の構成を模式的に示す側面図である。
図2】実施形態に係る車両用表示装置の構成を模式的に示す車両幅方向から見た断面図である。
図3】実施形態に係る車両用表示装置において乗員の視界と第1表示部の展開量との関係を模式的に示す側面図である。
図4】車両の運転状態に応じた第1表示部の展開量のバリエーションの例を示す模式図である。
図5】実施形態に係る車両用表示装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図6】実施形態に係る車両用表示装置に含まれる制御部の機能構成を示すブロック図である。
図7】第1表示部に後方画像を表示する方法の一例を示す図である。
図8】第1表示部に後方画像と支援情報を表示する方法の一例を示す図である。
図9】第1表示部に後方画像と支援情報を表示する方法の一例を示す図である。
図10】第1表示部に後方画像と支援情報を表示する方法の一例を示す図である。
図11】第1表示部に後方画像と支援情報を表示する方法の一例を示す図である。
図12】実施形態に係る表示処理の流れの一例を示すフローチャート図である。
図13】表示制御部の変形例を説明するために示される後席の模式図である。
図14】表示制御部の変形例を説明するために示される後席画像の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図1図12を参照して、本実施形態に係る車両用表示装置10について説明する。なお、各図に適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示している。また、以下の説明で特記なく前後、上下、左右の方向を用いる場合は、車両前後方向の前後、車両上下方向の上下、進行方向を向いた場合の左右を示すものとする。
【0034】
(車両12)
まず、車両用表示装置10が搭載された車両12について説明する。本実施形態の車両12は一例として、自動運転と手動運転とを切替可能に構成されている。なお、自動運転とは、アクセル、ブレーキ、方向指示器、ステアリング等の操作の一部又は全てが自動的に行われる車両の走行態様である。また、手動運転とは、運転者がすべての運転操作(アクセル、ブレーキ、方向指示器、ステアリング等の操作)を実行する車両の走行態様である。
【0035】
図1に示されるように、車両12は、「車室14」の主な部分を構成する車体16を備えており、車体16の車両上方側の部分がルーフ部18で構成されていると共に、車体16の車両下方側の部分がフロア部20で構成されている。
【0036】
ルーフ部18は、車両前後方向及び車両幅方向に延在すると共に車両12の意匠面の一部を構成するルーフパネル22を備えており、ルーフパネル22は、内装部材としての「ルーフトリム24」によって車両下方側から覆われている。このルーフトリム24は、図2にも示されるように、車室14の天井面を構成すると共に車両前後方向及び車両幅方向に延在する天井面部24Aと、天井面部24Aの車両前方側の周縁部から車両上方側に延
出された前壁部24Bと、を含んで構成されている。
【0037】
図2に示されるように、ルーフパネル22は、車両前後方向に間隔をあけて配置された複数のルーフリインフォースメント26で補強されている。このルーフリインフォースメント26は、車両幅方向に延在すると共に、ルーフパネル22と共に車両幅方向から見た断面が閉断面とされた閉断面構造部を構成している。なお、最も車両前方側に位置するルーフリインフォースメント26は、ルーフパネル22の車両前方側の周縁部に沿って配置されている。なお、ルーフリインフォースメント26には、図示しないファスナー等の取付部材によって、ルーフトリム24が取り付けられている。
【0038】
図1に戻り、フロア部20には、運転者である乗員P1が着座する運転席30と、後席の乗員P2が着座する後席31が配置されている。この運転席30及び後席31は、シートクッション32と、シートバック34と、ヘッドレスト35とを含んで構成されている。また、シートバック34は、その下端部がシートクッション32の後端部に対して回動可能とされている。なお、後席の乗員P2は、一例として、チャイルドシートに着座した子供とされている。
【0039】
また、車室14には、運転者である乗員P1を撮影する運転席用の車載カメラとして、第1カメラ94が設置されている。第1カメラ94は、例えば、ルーフパネル22に固定され、運転席30の前方側かつ上方側に配置されている。また、車室14には、後席の乗員P2を撮影する後席用の車載カメラとしての複数の第2カメラ96が設置されている。なお、第2カメラ96の設置台数が複数であることは必須ではなく、車室14に設けられた複数の後席31に着座する全ての乗員を撮影するために必要な台数であればよい。
【0040】
運転席30の前方側、すなわち車体16の車両前方側の部分には、フロントウインドシールド36が配置されている。このフロントウインドシールド36は、透明なガラス板で構成されており、車両幅方向から見てルーフ部18の車両前方側の周縁部から車両前方下側に延びている。
【0041】
なお、フロントウインドシールド36の車両下方側には、内装部材としての樹脂製のインストルメントパネル(不図示)が配置されている。このインストルメントパネルは、図示しないHVAC(Heating Ventilation and Air Conditioning)ユニットを車両後方側から覆っている。
【0042】
(車両用表示装置10)
次に、車両用表示装置10について説明する。車両用表示装置は、第1表示部38、駆動部44、第2表示部98及び制御部40(図2を参照)を含んで構成されている。第1表示部38、駆動部44及び第2表示部98は、制御部40によって制御されている。
【0043】
(第1表示部38)
第1表示部38は、ルーフパネル22とルーフトリム24との間に配置されたディスプレイで構成されている。また、第1表示部38は、運転席30の前方側かつ上方側に配置されて、内装部材としてのルーフトリム24から出し入れ可能に構成された表示面42を有している。第1表示部38は、運転者が車両前方へ視線を向けた状態で視界に入る位置に設けられている。以下、第1表示部38について詳細に説明する。
【0044】
第1表示部38は、有機エレクトロルミネッセンス素子を備えると共に、平面視で矩形のフィルム状とされており、図2等に示されるように、乗員P1に対して情報を表示可能な「表示面42」を備えている。この第1表示部38は、図示しない配線を介して制御部40と電気的に接続されており、制御部40から出力された信号によって表示面42に種々の映像等を表示することができる。また、第1表示部38は、駆動部44及びディスプレイ支持部46によって、車体16に対して支持されており、制御部40から出力された信号によって駆動部44を制御することにより、表示面42の車室内への展開量Lが変更される。
【0045】
(駆動部44)
具体的に、駆動部44は、一対のラック48、一対のピニオン50、一対のマウント52、一対のガイド54、モータ56及び図示しないモータドライバを含んで構成されている。ラック48は、可撓性を有する材質で構成されており、第1表示部38の車両幅方向両側の端部38Aのそれぞれに配置されると共に、端部38Aの車両上方側の部分に車両前後方向に沿って設けられている。つまり、ラック48は、第1表示部38の端部38Aの一部を構成しているとみなすことができる。
【0046】
ピニオン50は、第1表示部38の端部38Aのそれぞれに対して配置されており、ラック48に係合されている。また、車両幅方向一方側のピニオン50は、モータ56の図示しない出力軸に連結されており、制御部40からの制御信号に基づいてモータ56
が作動することで、ピニオン50が車両幅方向に延びる回動軸S1周りに回動し、第1表示部38を車両前後方向に移動させることが可能となっている。なお、モータ56は、車両幅方向一方側のマウント52に支持されており、このマウント52は、最も車両前方側に位置するルーフリインフォースメント26に設けられたウエルドナット58に図示しない締結部材で固定されている。
【0047】
また、マウント52には、ガイド54も取り付けられており、ガイド54によって第1表示部38が車両下方側から支持されている。なお、車両幅方向他方側のピニオン50は、その軸部が車両幅方向他方側のマウント52に図示しない軸受を介して取り付けられている。そして、第1表示部38がピニオン50の回動によって車両前方側に送り出されるときには、第1表示部38がガイド54で案内されることで、第1表示部38におけるガイド54から車両前方側の部分が車両前方下側に延出されるようになっている。
【0048】
一方、ルーフトリム24の天井面部24Aと前壁部24Bとの境界部には、車両上方側に凹んだ凹部60が設けられている。そして、凹部60の車両後方側の部分には、第1表示部38を挿通可能なスリット部62が設けられており、第1表示部38は、スリット部62からルーフトリム24の外側に延出されるようになっている。
【0049】
また、凹部60の車両下方側には、凹部60を車両下方側から覆うことが可能な板状のカバー部64が配置されている。このカバー部64は、蝶番66を介して凹部60の車両上方側の部分を構成する上壁部60Aに取り付けられている。また、カバー部64は、通常時において、蝶番66に取り付けられた捩じりばね68によって、その板厚方向を車両上下方向とされた閉状態で保持されている。そして、カバー部64は、スリット部62から延出された第1表示部38で押圧されることで車両幅方向に延びる蝶番66の回動軸S2周りに回動して、開状態となるようになっている。また、第1表示部38がスリット部62から収納されるときには、カバー部64は、捩じりばね68の復元力によって、閉状態となるようになっている。
【0050】
一方、ディスプレイ支持部46は、主に第1表示部38の車両後方側の部分を支持可能とれており、一対のガイドレール70及び一対のレールマウント72を含んで構成されている。
【0051】
ガイドレール70は、第1表示部38の端部38Aのそれぞれに対して配置されており、車両前後方向に延在すると共に、車両前後方向から見た断面形状が、車両幅方向内側に開放されたU字状とされている。このガイドレール70には、ラック48を含む第1表示部38の端部38Aを挿入可能とされており、ガイドレール70は、第1表示部38を車両前後方向に案内することが可能となっている。そして、ガイドレール70は、レールマウント72を介して、マウント52が固定されたものよりも車両後方側に位置するルーフリインフォースメント26に取り付けられている。なお、レールマウント72は、ルーフリインフォースメント26に設けられたウエルドナット58に図示しない締結部材で固定されている。
【0052】
(第2表示部)
第2表示部98は、後席31の前方側に配置されたディスプレイで構成されており、本実施形態では、後席31の前方側に配置された座席のシートバックの背面に取り付けられている。この第2表示部98は、第1表示部38と同様に有機エレクトロルミネッセンス素子を備えるフィルム状に構成してもよい。又は、液晶ディスプレイで構成してもよい。また、第2表示部98は、図示しない配線を介して制御部40と電気的に接続されており、制御部40から出力された信号によって表示面42に種々の映像等を表示することができる。
【0053】
(制御部40のハードウェア構成)
次に、制御部40の構成について説明する。制御部40は、車両用表示装置10の第1表示部38、駆動部44及び第2表示部98の制御を行う
制御装置を構成している。
【0054】
図5には、制御部40のハードウェア構成が示されている。制御部40は、CPU(Central Processing Unit)74、ROM(Read Only Memory)76、RAM(Random Access Memory)78、ストレージ80、通信I/F(Inter Face)82及び入出力I/F84を含んで構成されている。そして、CPU74、ROM76、RAM78、ストレージ80、通信I/F82及び入出力I/F84は、バス86を介して相互に通信可能に接続されている。CPU74は、プロセッサの一例であり、RAM78はメモリの一例である。
【0055】
CPU74は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU74は、ROM76又はストレージ80からプログラムを読み出し、RAM78を作業領域としてプログラムを実行する。CPU74は、ROM76又はストレージ80に記録されているプログラムに従って、上記各構成の制御および各種の演算処理を行う。
【0056】
ROM76は、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM78は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ80は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。本実施形態では、ストレージ80に所定の国又は地域と、これに対応する第1表示部38の展開量Lの値とが対応付けられた展開量管理テーブル80Aが格納されている。
【0057】
通信I/F84は、制御部40が他の機器と通信するためのインタフェースであり、たとえば、CAN(Controller Area Network)、イーサネット(登録商標)、LTE(Long Term Evolution)、FDDI(Fiber Distributed Data Interface)、Wi-Fi(登録商標)などの規格が用いられる。
【0058】
入出力I/F84は、制御部40が車両12に搭載された各種機器と電気的に接続するためのインタフェースとされている。本実施形態では、一例として、運転制御ECU88、車両状態検出センサ90、生体センサ92、運転席用の第1カメラ94、後席用の複数の第2カメラ96、第1表示部38、駆動部44及び第2表示部98が入出力I/F84に接続されている。
【0059】
運転制御ECU88は、車両12の手動運転と自動運転の切り替えを制御するECU(Electronic Control Unit)で構成されている。また、運転制御ECU88は、車両12の運転モードが自動運転に切り替えられた場合に、位置情報及び車両12の周囲の環境情報を考慮しつつ、予め設定された走行計画に沿って車両12を自動運転させる。
【0060】
具体的に、運転制御ECU88には、GPS(Global Positioning System)装置88A、外部センサ88B及びアクチュエータ88Cが接続されている。GPS装置88Aは、車両12の位置情報を取得する。外部センサ88Bは、例えば、車両12の周辺の所定範囲を撮影するカメラ、所定範囲に探査波を送信するミリ波レーダ、所定範囲をスキャンするライダ(Light Detection and Ranging/Laser Imaging Detection and Ranging)のうち、少なくとも一つを含んで構成されており、車両12周辺の走行環境に関する情報を取得する。また、アクチュエータ88Cは、ステアリングアクチュエータ、アクセルアクチュエータ及びブレーキアクチュエータを含んで構成されており、ステアリングアクチュエータは、車両12の操舵を行うものである。アクセルアクチュエータは、車両12の加速を行うものである。また、ブレーキアクチュエータは、ブレーキを制御することで、車両12の減速を行うものである。運転制御ECU88は、GPS装置88A及び外部センサ88Bで取得した位置情報及び走行環境情報に基づいてアクチュエータ88Cを制御し、走行計画に沿って車両12を自動運転させる。
【0061】
車両状態検出センサ90は、車室14内の異常の検出に用いられる。この車両状態検出センサ90には、例えば、車両12の図示しないドアの開閉状態を検出するドア開閉センサ及び図示しないシートベルトの装着状態を検出するシートベルトセンサ等が含まれる。
【0062】
生体センサ92は、乗員の生体情報を取得するために用いられる。生体情報は、乗員が発した音声、表情、姿勢、身体の動き、体温、心拍、体重等の情報である。生体センサは、例えば、車室14に設けられたマイク、車載カメラ、サーモセンサ、心電センサ、脳波センサ、座席に設置された感圧センサ及び静電センサのうち、少なくとも一つを含んで構成されている。
【0063】
運転席用の第1カメラ94は、運転席の乗員P1を撮影するために設けられている。後席用の第2カメラ96は、後席の乗員P2を撮影するために設けられている。本実施形態では、車室14内に設置された後席の数に対応する複数の第2カメラ96が設けられている。
【0064】
(制御部40の機能構成)
制御部40は、上記のハードウェア資源を用いて、各種の機能を実現する。車両用表示装置10が実現する機能構成について図6を参照して説明する。
【0065】
図6に示されるように、制御部40は、機能構成として、運転状態取得部100、位置情報取得部102、生体情報取得部104、乗員位置検出部106、駆動制御部108及び表示制御部110を含んで構成されている。なお、各機能構成は、CPU74がROM76又はストレージ80に記憶されたプログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0066】
運転状態取得部100は、車両12の運転状態を取得する。具体的に、運転状態取得部100は、運転制御ECU88から取得される情報に基づいて、車両12の各種運転状態を取得する。運転状態には、自動運転及び手動運転を含む運転モードの状態、並びに、車両12の走行状態、一時停止状態、停止状態が含まれる。
【0067】
位置情報取得部102は、GPS装置88Aを用いて車両12の位置情報を取得する。
【0068】
生体情報取得部104は、生体センサ92を用いて後席31の乗員P2の生体情報を取得する。なお、生体情報取得部104は、生体センサ92を用いて運転席30の乗員P1の生体情報を取得してもよい。
【0069】
乗員位置検出部106は、生体センサ92を用いて車室14内における後席31の乗員P2の位置を検出する。例えば、乗員位置検出部106は、後席31を撮影する第2カメラ96の画像を解析して、乗員P2が着座する位置を検出してもよい。また、乗員位置検出部106は、後席31に設けられた感圧センサ又は静電センサで検出された信号に基づいて乗員P2が着座する位置を検出してもよい。
【0070】
駆動制御部108は、車両12の運転状態に基づいて第1表示部38の表示面42の車室14内への展開量Lを決定し、駆動部44を制御して、表示面42を展開させる。なお、図3に示されるように、表示面42の展開量Lとは、第1表示部38のルーフトリム24からの延出長さを意味している。
【0071】
駆動制御部108は、車両12の運転状態が走行状態(走行中)である場合、第1表示部38の表示面42が、運転者の有効視野が含まれる範囲Zに侵入しない範囲内で展開されるように展開量Lを決定し、表示面42を車室14内へ展開する。
【0072】
ここで、図3に示されるように、範囲Zは、車両上下方向において、着席基準点Rから車両上方側に所定の距離H1離れた車両前後方向及び車両幅方向に延在する平面V1と、着席基準点Rから車両上方側に距離H1よりも短い所定の距離H2離れた車両前後方向及び車両幅方向に延在する平面V2との間の領域を意味している。この範囲Zは、車両12が位置する国又は地域毎に法令や規則に基づいて定められており、ストレージ80に格納された展開量管理テーブル80Aには、上記範囲Zに侵入しない範囲内において、所定の国又は地域とこれに対応する展開量Lの値とが対応付けられている。
【0073】
即ち、駆動制御部108は、車両12の運転状態が走行状態(走行中)である場合、取得した車両12の位置情報とストレージ80に格納された展開量管理テーブル80Aを参照して、表示面42の展開量Lを決定する。これにより、走行中、運転者の視界を妨げない範囲で表示面42を展開させることができる。
【0074】
なお、表示面42の展開量Lは、車両12の走行状態、一時停止状態、停止状態のそれぞれについて、異なる値に設定してもよい。例えば、図4に示されるように、車両12の運転状態が走行状態である場合は、展開量LがL1に設定される。また、一時停止状態である場合は、展開量LがL1よりも大きいL2に設定される。更に、停止状態である場合は、展開量LがL2よりも大きいL3に設定される。これにより、運転者が車両12の運転に関与していない場合は、展開量Lを大きくして表示を見やすくすることができる。
【0075】
この場合において、車両12の一時停止状態とは、例えば、車両12の図示しないイグニッションスイッチがONにされた状態で、車両12が所定の時間以上停止している状態である。また、車両12の停止状態とは、イグニッションスイッチがOFFにされた状態で、車両12が停止している状態である。また、これに限らず、例えば、外部センサ88Bから取得した情報によって車両12が信号待ちで停止していることが判断された場合に一時停止状態であると判断してもよい。
【0076】
また、一例として、走行状態及び一時停止状態の展開量L1及びL2は、上述のように、車両12が位置する国又は地域で設定された所定の範囲内(範囲Zの外側)の値に設定し、停止状態の展開量L3は、所定の範囲を越える値(範囲Zの内側)に設定してもよい。更に、車両12の運転モードが自動運転モードである場合にも、表示面42の展開量LをL3に設定してもよい。
【0077】
また、第1表示部38の展開量Lは、運転者が図示しない操作部を操作することにより、車両12が位置する国又は地域で設定された所定の範囲内の任意の値に設定できる構成としてもよい。
【0078】
表示制御部110は、第1表示部38に各種情報を表示させる機能を有する。この場合において、表示制御部110は、第1表示部38の表示面42の展開量Lに適合するように、各種情報を表示する。換言すると、表示制御部110は、表示面42の車室14内側への露出面積に適合するように、各種情報を表示する。
【0079】
一例として、表示制御部110は、表示面42に後席用の第2カメラ96により撮影された後席画像200を表示させる。これにより、運転席30の乗員P1は、第1表示部38を見ることにより、運転中の視線を殆ど移動させずに後席31の様子を確認することができる。
【0080】
ここで、表示制御部110は、乗員位置検出部106で検出された後席31の乗員P2の位置に基づいて、複数の第2カメラ96の中から乗員P2を撮影したカメラを特定し、特定された第2カメラ96により撮影された後席画像200を表示面42に表示する。これにより、第1表示部38に確実に乗員P2の様子を表示させることができる。
【0081】
また、表示制御部110は、車室14内における乗員P2の位置に対応した表示面42の領域に、後席画像200を表示させる。即ち、乗員P2が、車室14内において車両幅方向右側に設けられた後席31に着座している場合は、表示面42の右側の領域に乗員P2が撮影された後席画像200が表示されている。
【0082】
図7には、ルーフトリム24から展開された表示面42に表示された後席画像200の一例が示されている。この図に示されるように、表示面42の右側領域42Rには、車室14内の右側に設けられた後席31の乗員P2を撮影した後席画像200が表示されている。また、表示面42の左側領域42Lには、車室14内の左側に設けられた後席31の乗員P2を撮影した後席画像200が表示されている。このように表示することで、運転席の乗員P1は、車室14内の空間における後席の乗員P2との位置関係を表示面42から直感的に把握して、後席の様子を確認することができる。
【0083】
更に、表示制御部110は、乗員P2の生体情報の中から、所定の生体情報を取得した場合に、後席画像200を表示させる。ここで、所定の生体情報とは、例えば、生体情報の種類に応じて予め設定された閾値を超える生体情報である。一例として、生体情報を乗員Pの音声とした場合は、所定の閾値を超える音量で乗員Pは発話した場合である。また、生体情報を乗員P2の動作とした場合は、乗員Pについて所定の閾値を超える運動量を検出した場合である。なお、これに限らず、乗員P2からの呼びかけや、特定の仕草、乗員P2の特定の表情などを所定の生体情報としてもよい。
【0084】
また、本実施形態では、乗員P1による図示しない操作部への操作により、第1表示部38の表示モードを照明モード、標準情報表示モード、及びミラーモードの中から設定することができる。表示モードが設定されると、表示モードに応じて設定された支援情報300が第1表示部38に表示される。
【0085】
ここで、表示制御部110は、各表示モードの支援情報300を後席画像200と並べて第1表示部38に表示させる。この際、表示面42では、乗員P2の着座位置に対応付けて表示された後席画像200の表示領域(42R,42L)を維持したまま、支援情報300を表示させる。例えば、車両幅方向右側の後席31と左側の後席31の両方に乗員P2が着座している場合には、表示面42の右側領域42Rと左側領域42Lの間に支援情報を表示させる。
【0086】
図8には、表示モードが照明モードに設定された場合の表示例が示されている。この図に示されるように、照明モードでは、表示面42の一部を乗員P1によって設定された光度で発光させることにより、第1表示部38が照明として機能するモードである。表示面42には、右側領域42Rと左側領域42Lの間の表示領域に照明光としての支援情報300Aが表示されている。
【0087】
図9には、表示モードが標準情報表示モードに設定された場合の表示例が示されている。この図に示されるように、標準表示モードでは、第1表示部38に時刻情報や、各種車載機器の設定情報が表示される。一例として、表示面42には、右側領域42Rと左側領域42Lの間の表示領域に現在の時刻と空調装置の設定情報に関する支援情報300Bが表示されている。なお、この標準情報表示モードは、第1表示部38の通常状態に設定することができる。標準情報表示モードを通常モードに設定すると、図示しないイグニッションスイッチがONにされると、第1表示部38が標準情報表示モードとなるようになっている。一方、イグニッションスイッチがOFFにされると、第1表示部38は、全てがルーフトリム24の内側に収容された収容状態となる。
【0088】
なお、図示はしないが、この標準情報表示モードでは、「WELCOME」、「HAPPY BIRTHDAY」等の乗員P1に向けたメッセージを支援情報として表示してもよい。また、車両状態検出センサ90によって検出されたドアの施錠やウィンドウの開閉に関する情報を表示してもよい。
【0089】
図10には、表示モードがミラーモードに設定された場合の表示例が示されている。この図に示されるように、ミラーモードは、表示面42の一部が鏡として機能するモードである。具体的に、ミラーモードでは、運転席用の第1カメラ94で撮影した運転席画像300Cを取得して、乗員P1の鏡像を表示面42に表示するようになっている。図10では、表示面42の右側領域42Rと左側領域42Lの間の表示領域に乗員P1を撮影した運転席画像300Cが支援情報として表示されている。
【0090】
補足すると、このミラーモードでは、運転席画像300Cが表示された表示領域の周縁部のうち、左右の縁部が発光部302に設定され、乗員P1を照らず照明となっている。
【0091】
なお、運転席の乗員P1を支援する支援情報は上述した情報に限らず、車両12の運転に関する支援情報や、危険を回避するための警告情報でもよい。例えば、図11に示されるように、車両12の後方を撮影するカメラ等で構成された外部センサ88Bによって、後方車両の急接近が検出された場合に、後方車両Qを撮影した後方画像300Dを支援情報として表示させることで、乗員P1に警告してもよい。
【0092】
一方、図示はしないが、表示制御部110は、乗員P2を撮影した後席画像200を第1表示部38に表示させると同時に、後席31の前方側に配置された第2表示部98に対して、運転席30の乗員P1を撮影した運転席画像300Cを表示させることができる。これにより、乗員P1と乗員P2は、第1表示部38及び第2表示部98を見ることにより、互いの様子を確認することができる。
【0093】
(作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。図12には、所定の時間的周期で制御部40にて実行される表示処理の一例がフローチャートで示されている。この表示処理は、CPU74がROM76又はストレージ80からプログラムを読み出して、RAM78に展開して実行される。
【0094】
(表示処理)
図12に示されるように、ステップS100で、CPU74は、生体情報取得部104の機能に基づいて、後席31の乗員P2の生体情報を取得し、取得された生体情報の中に、所定の生体情報が含まれるか否かについて判断する。CPU74は、所定の生体情報が含まれると判断した場合は、ステップS101の処理に進む。所定の生体情報が含まれないと判断した場合は、処理を終了する。
【0095】
ステップS101で、CPU74は、運転状態取得部100の機能に基づいて、車両12の運転情報を取得する。
【0096】
ステップS102で、CPU74は、位置情報取得部102の機能に基づいて、車両12の位置情報を取得する。
【0097】
ステップS103で、CPU74は、駆動制御部108の機能に基づいて、第1表示部38の表示面42の展開量Lを設定する。例えば、車両12の運転状態が走行状態である場合は、車両の位置情報と展開量管理テーブル80Aを参照して、乗員P1の視野を妨げない範囲で表示面42の展開量Lが設定される。なお、この際、第1表示部38が、収容状態である場合は、駆動制御部108の機能に基づいて、第1表示部38の表示面42が車室14内に展開される。
【0098】
ステップS104で、CPU74は、乗員位置検出部106の機能に基づいて、後席31の乗員P2の位置を取得する。
【0099】
ステップS105で、CPU74は、表示制御部110の機能に基づいて、乗員P2を撮影した後席画像200を第1表示部38に表示させる。この際、後席画像200は、図7に示されるように、車室14内における乗員P2の位置と対応する表示面42の表示領域に表示される。また、図8図11に示されるように、第1表示部38の表示モードが設定されている場合、CPU74は、後席画像200に並べて支援情報300を表示させる。
【0100】
ステップS106で、CPU74は、後席31の前方側に配置された第2表示部98に、運転席30の乗員P1を撮影した運転席画像300Cを表示させる。その後、CPU74は、表示処理を終了する。
【0101】
以上説明したように、本実施形態に係る車両用表示装置10では、運転席30の前方側且つ上方側に配置され、車室14内のルーフトリム24から出し入れ可能に構成された表示面42を備える第1表示部38を有している。第1表示部38は、駆動部44によって表示面42を駆動させ、車室14内への展開量Lを変更可能とされている。また、車両用表示装置10は、第1表示部38と駆動部44を制御する制御部40を備えている。制御部40は、運転状態取得部100、駆動制御部108及び表示制御部110を備えており、駆動制御部108は、駆動部44の制御により、運転状態取得部100で取得した運転状態に基づいて、表示面42の車室14内への展開量Lを変更する。更に、表示制御部110は、表示面42の展開量Lに適合するように、後席用の第2カメラ96により撮影された後席画像200を表示面42に表示させる。
【0102】
これにより、運転席30の乗員P1は、第1表示部38を視認することにより、僅かに視線を動かすだけで後席31の様子を確認することができる。また、走行中は、運転者である乗員P1の視界を遮らないように配慮して表示面42の展開量Lを調整することができ、運転中に乗員P1が煩わしさを感じることを抑制することができる。このようにして、車両用表示装置10では、運転席30で運転する乗員P1が後席31の様子を確認する際の負担を軽減することができる。
【0103】
なお、本実施形態では、走行中の表示面42の展開量Lは、位置情報取得部102で取得した車両12の位置情報に基づいて、車両12が位置する国又は地域で設定された所定の範囲内で変更される。このため、第1表示部38の展開位置を、車両12が位置する国又は地域の法令や規則に準じるように設定することができる。
【0104】
また、本実施形態において、表示面42に後席画像200を表示させるタイミングは、生体情報取得部104で、後席31の乗員P2に関する所定の生体情報を取得した場合である。従って、後席31の乗員P2の変化に応じた適切なタイミングで、運転席30の乗員P1に対して第1表示部38を確認すべきことを促すことができる。
【0105】
また、本実施形態によれば、第1表示部38がルーフトリム24の内側に収容されている場合であっても、後席31の乗員P2の変化に応じて、積極的に第1表示部38を確認すべきことを運転席30の乗員P1に促すことができる。
【0106】
また、本実施形態では、後席画像200の表示を、車室14内における後席31の乗員P2の位置に対応した表示面42の領域に表示させる。これにより、運転席30の乗員P1は、第1表示部38を見ることで、車室14内の空間における後席31の乗員P2の位置を表示面42から直感的に把握して、後席31の様子を確認することができる。
【0107】
さらにまた、表示面42に支援情報300を表示させる場合は、後席画像200が表示された領域を維持したまま、支援情報300を後席画像200と並べて表示する。これにより、後席画像200と支援情報300の両方を表示する際に、表示面42の明滅を少なくして、運転席30の乗員P1が感じる煩わしさを低減させることができる。
【0108】
また、本実施形態では、後席画像200を第1表示部38に表示させる場合に、運転席用の第1カメラ94により撮影された運転席画像300Cを、後席用の第2表示部98に表示させる。これにより、運転席30の乗員P1と後席31の乗員P2が、互いの様子を確認することができるため、コミュニケーションを円滑にすることができる。
【0109】
また、本実施形態では、表示制御部110の機能に基づいて、後席用の複数の第2カメラ96の中から後席31の乗員P2を撮影した第2カメラ96を特定し、特定された第2カメラにより撮影された画像を第1表示部38に表示する。このため、車室14内に後席31が複数ある場合などで、後席用の第2カメラ96が複数設置されている場合でも、確実に、第1表示部38に後席31の乗員P2を表示させることができる。
【0110】
また、本実施形態では、第1表示部38が、有機エレクトロルミネッセンス素子を備えると共に、フィルム状とされており、当該第1表示部38を収納するときに、当該第1表示部38を曲げて変形させることができる。従って、第1表示部の設置スペースを省スペース化できる。
[補足説明]
【0111】
なお、上記実施形態では、表示制御部110の機能として、後席用の複数の第2カメラ96の中から、後席の乗員P2を撮影する第2カメラを特定し、特定された第2カメラ96により撮影された画像を第1表示部38に表示する機能について説明した。しかしながら、本開示はこれに限らない。
【0112】
(表示制御部110の第1の変形例)
例えば、図13に示されるように、表示制御部110は、第2カメラ96に接続されたアクチュエータ400の駆動を制御可能に構成され、当該アクチュエータ400の駆動を制御することにより、乗員位置検出部106で検出された乗員P2の位置が含まれるように第2カメラ96の撮影範囲を変更してもよい。そして、当該第2カメラ96により撮影された画像を第1表示部38の表示面42に表示する。これにより、車室14内に後席31が複数ある場合でも、アクチュエータ400を制御して複数の後席31を1台の第2カメラ96で撮影することができるため、第2カメラ96の搭載台数を減らすことができる。
【0113】
(表示制御部110の第2の変形例)
若しくは、図14に示されるように、表示制御部110は、後席用の第2カメラ96で複数の後席31を撮影し、第2カメラ96により撮影された後席画像200から、乗員位置検出部106で検出された乗員P2の位置に対応する領域Xを抽出して表示面42に表示するようにしてもよい。これにより、車室14内に後席31が複数ある場合でも、後席用の第2カメラ96で複数の後席を撮影し、撮影された画像の一部を抽出することにより、第2カメラ96の搭載台数を減らすことができる。
【0114】
なお、上記実施形態では、第1表示部を内装部材に対して出し入れする駆動部として、ラックアンドピニオンピニオン機構やボールねじ機構を備えた装置が採用されていたが、駆動部に採用可能な機構は、これに限らない。例えば、車両12の仕様等に応じて、パンタグラフ機構を備えた装置を駆動部として採用してもよい。
【0115】
また、上記実施形態では、第1表示部に有機エレクトロルミネッセンスディスプレイが採用されていたが、これに限らない。例えば、車両12の仕様等に応じて、小型の液晶ディスプレイを第1表示部として採用してもよい。
【0116】
本実施形態では、図面において運転席の後方に1列の後席シートが配備された車両を例として説明したが、これに限らず、後席の数は、車両の仕様により適宜変更することができる。後席が2列以上設けられてもよいし、幼稚園バスなどの大型の車両の車室に上記実施形態及び変形例に係る車両用表示装置を搭載してもよい。
【0117】
また、上記実施形態において、後席31は、車室14内に予め搭載された車両用シートを例として説明したが、本開示における後席の定義はこれに限らず、車椅子の乗員が車室内で車椅子を固定するスペースなども含む広い概念である。
【0118】
なお、上記実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した表示処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、表示処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
また、上記各実施形態では、表示処理のプログラムがROMまたはストレージに予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0119】
10 車両用表示装置
12 車両
14 車室
24 ルーフトリム(内装部材)
30 運転席
31 後席
38 第1表示部
40 制御部
42 表示面
44 駆動部
94 第1カメラ(運転席用の車載カメラ)
96 第2カメラ(後席用の車載カメラ)
98 第2表示部
100 運転状態取得部
102 位置情報取得部
104 生体情報取得部
106 乗員位置検出部
108 駆動制御部
110 表示制御部
200 後席画像
300C 運転席画像
P1 運転席の乗員
P2 後席の乗員
L 表示面の展開量
図1
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