(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114407
(43)【公開日】2023-08-17
(54)【発明の名称】空圧機能付きボイスコイルモーター
(51)【国際特許分類】
H02K 33/18 20060101AFI20230809BHJP
F15B 15/14 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
H02K33/18 B
F15B15/14 365
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022027252
(22)【出願日】2022-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】516204974
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】岡田 薫
【テーマコード(参考)】
3H081
5H633
【Fターム(参考)】
3H081AA03
3H081AA15
3H081BB03
3H081BB12
3H081CC25
3H081CC26
3H081DD06
3H081FF47
3H081HH04
5H633BB02
5H633GG03
5H633GG09
5H633HH02
5H633HH07
5H633JA10
5H633JB05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】超低圧から高圧までの広レンジと、高精度、及び高速加圧を加圧する加圧駆動装置を提供する。
【解決手段】VCMユニット18は、VCMボビン12にVCMコイル11を接着する。VCMヨーク9には、中空形状のVCM磁石10を接着する。VCMボビン12には、シャフト3が取り付けられ、反対側に空圧制御をするための1枚のダイヤフラムが、ダイヤフラム引き込み防止リング14を介してブッシャー5により取り付けられている。加圧室6と自重保持加圧室7は、ダイヤフラムで分離密閉されており、加圧バルブ2からエアーを充填させることで、シャフトに結合されているVCMボビン、及び治具取り付け部材13に圧力が伝わる。VCMコイルに電流を流すことにより、VCMコイルの推力が発生してエアー圧力に合成される。VCMコイルを設定圧力になるように制御することにより、エアー加圧による高圧設定でも、高精度に圧力制御が実行される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
VCM(ボイスコイルモーター)ボビン12に取り付けられたシャフト3の先端に、1枚のダイヤフラム1とダイヤフラム引き込み防止リング14を取り付け,密閉した加圧室6と自重保持加圧室7を設け、加圧バルブ2と、自重保持バルブ4によりエアーを充填し、シャフト3を軸方向に加圧し、更に、シャフト3に取り付けられたVCMの推力に、エアー空圧を加算して、軸方向の圧力を生成する構造。
【請求項2】
請求項1で、ダイヤフラム1の下部に自重保持加圧室7を設け、自重保持バルブ4からエアーを充填することにより、治具取り付け部材13以下に取り付けられる治具などの部材を含む重量をシャフト3の移動距離に関係なく一定に軽減する推力を持つ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
半導体同士、半導体とプリント基板、またはFPC基板とプリント基板など、主に、電子機器部品のプリント基板端子部への接合搭載用の装置に使用される加圧用駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体などをプリント基板に実装する装置の加圧ユニットは、接合材の種類によって圧力の大きさや精度が違っており、接合材料に対応した装置が必要になる。例えば、ハンダ材料であるマイクロバンプ接合では、数グラムから数十グラムの圧力を加えて加熱接合が行われるが、他の接合、例えば、ACFやACP接合では、圧力が数Kgから数十Kgといった高い圧力が必要になってくる。
【0003】
圧力が数十Kgの推力の加圧ユニットを持つ装置では、一般にシリンダーやモーターが使用されるが、加圧移動軸として使用されるボールねじや、シリンダー内のピストン摺動により、数g~数十gの低圧対応は出来ない。
【0004】
数g~数十gまでの超低圧領域の加圧は、従来VCM(ボイスコイルモーター)による電流制御が用いられているが、最大でも5Kgまでの推力のため、高圧の対応は出来ない。
【0005】
プリント基板への実装はマウンタが主流な実装になっているが、ベアチップの半導体や、FPCを直接実装する方式の対応は出来ていない。実現するには、接合対象に最適な接合方式が必要になってくるため、1台の接合装置で、数g~数十Kgといった超低圧~高圧まで対応可能な実装装置が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-43336号公報
【特許文献2】特開2001-225200号公報
【特許文献3】特開2008-57663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のシリンダーによる加圧では、シリンダー軸の摺動抵抗変化や、圧力変動により数十gの加圧変動は避けられない。
【0008】
モーターでの加圧方式は、加圧軸であるボールねじの摺動抵抗があるため、数g以下の制御は出来ない。
【0009】
VCMによる圧力制御は、定電流で行うことにより、数gでの加圧制御が可能ではあるが、加圧力は最大でも5Kgまでのものに限られており、それ以上の圧力については、コイルや磁石が大きくなり、コスト的も問題がある。
【0010】
様々な接合方式を使った基板実装への量産対応や試作対応のために、装置の低コスト化や、生産性向上の面から、数g~数十Kgを数gの精度で加圧実装するための装置を実現できる加圧駆動装置が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
図1に基本構成を示す。VCMヨーク9,VCMコイル11,VCMボビン12,VCM磁石10から構成されるVCMユニット18の上に、自重保持加圧室7及び加圧室6で構成することを特徴とする。(請求項1)
【0012】
図2において、VCMボビン12にはシャフト3が取り付けられており,シャフト先端には、ダイヤフラム1が取り付けられている。加圧バルブ2と自重保持バルブ4にエアーを充填することで、シャフト3に圧力が加わる構造を特徴とする。ダイヤフラム引き込み防止リング14はダイヤフラム1の先端部がシャフト3が移動時に上方に引き込まれる事をを防止する。(請求項1)
【0013】
自重保持加圧室7は、メタルシール8とダイヤフラム1により密閉され、自重保持バルブ4からエアーを充填することで、治具取り付け部材13以下の構成部品の重量を、軽減又はゼロ補償することを可能にする。この機能により、VCMユニット18が重量を保持する推力は軽減、もしくは0になる。(請求項2)
【0014】
上記のエアーによる重量軽減又は、ゼロ補償は、例えば、バネによる補償も可能ではあるが、バネの延びや、環境温度変化により補償は変動する。エアーの場合、精密レギュレター16を使用することで、調整した後の自重保持圧力は、一定で変動しない。
【0015】
加圧室6には、加圧バルブ2にエアーを充填することにより、加圧室6内部の圧力が上昇しダイヤフラム3に固定されたシャフト3と、シャフト3に固定されたVCMコイル11及び治具取り付け部材13は下降する。この時、この下に加圧対象物があれば、加圧室6の空圧で加圧される。
【0016】
加圧室6のエアー圧力により、目標とする圧力(エアー設定圧力44)に近づいた時に、シャフト3に結合されたVCMコイル11に電流を流し、エアーによる圧力と、VCMコイル11で作られた圧力が合成されて、シャフト3及び治具取り付け部材13に加わる。
【0017】
VCMユニット18による圧力は、最大推力の1/65536の分解能で出力され、例えば、最大推力が1Kgの場合は、0.015gの圧力精度を持つ。エアー圧力とVCM推力の併用では、加圧力はエアー圧力にVCM推力が加算されるが、VCMユニット18の制御推力が高分解能のため、エアーのみの制御よりも、高精度の圧力制御が可能になる。
【0018】
図3は圧力を縦軸、時間を横軸とした場合の特性で、エアー設定圧力44をエアーで加圧し、目標圧力であるVCM設定圧力43は、VCMの加圧量と、エアー加圧量を加算して生成する。
【0019】
VCMユニット18は、例えば、
図7のように圧力センサー23が、治具取り付け部材9以下に設置されている場合、VCMユニット18を制御するコントローラー17は、圧力センサー23の値が設定圧になるように加圧制御を、最大推力の1/656536の分解能で加圧するため、高圧設定でありながら、高精度に設定圧力で加圧することが可能である。
【発明の効果】
【0020】
以上の構造により以下に記述する効果がある。
・数gから数百Kgまでの加圧を、1台の加圧ユニットで実現出来る。
・低圧は数g、高圧荷重も十数gの高精度で加圧可能である。
・シリンダーエアー加圧に比べて、昇圧の高速化を実現出来る。
・モーターによる加圧に比べ電力が1/10~1/20になる。
・最大加圧でも加圧時間の制限はない。
・自重保持にレギュレターで設定される空圧を使用する事でVCM軸の移動に関係なく保持力は一定でVCM推力への影響はない。
・自重保持に空圧を使用する事で最大空圧設定による重力部材の保持が可能である。
・自重保持にレギュレターを使用する事で保持推力の数値化が可能である。
・低圧、高圧兼用加圧ユニットの使用で、装置のコストダウンが可能である。
・VCMの設定のみの調整のため、利便性がある。
・駆動部の摩擦が無いため、無塵埃化と、潤滑油を使用しないため、滅菌化が可能である。
・発熱が小さく小型化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【発明を実施するための形態】
【0022】
空圧機能付きボイスコイルモーターを使用した圧着装置ユニットの実装例を
図7に記述する。圧着装置ユニットの取り付けベース33には、空圧機能付きボイスコイルモーターと、移動軸受け22とリニヤセンサー26が設置されている。リニヤセンサー26はリニヤセンサーベース取り付け27により固定されている。
【0023】
加圧前の待機状態では、治具取り付け部材13以下圧着ツールヒーター29までの取り付け部品は、リニヤセンサーゲージ25と、リニヤセンサー26により±1μmの精度で位置制御が行われ、一定位置に静止している。
図9のリニヤセンサー配線31と圧力センサー32は、コントローラー17に接続されている。
【0024】
被圧着物30と圧着ツールヒーター29の間隔は十数mmである。圧着動作を開始すると、リニヤセンサーゲージ25と、リニヤセンサー26による位置制御が行われ、被圧着物30に接触するまで、VCMコイル11、VCMボビン12、及び治具取り付け部材13以下圧着ツールヒーター29までの部分が下降する。
【0025】
図10は被圧着物を加圧する時の位置制御特性と圧力制御特性である。
図10の特性図で、被圧着物30に対して接触検出36が行われると、コントローラー17から比例電磁弁制御配線21で結線された比例電磁弁15により、エアー設定圧44を目標圧力として空圧センサー54によるPID制御で、加圧室6を高速に昇圧する。エアー設定圧44に達成すると、VCM加圧制御42が開始され、VCM設定圧43までコントローラー17は、VCM駆動配線20にて電流駆動を実行する。コントローラー17は、VCM設定圧43と圧力センサー23の差を、PID制御にて0になるように電流駆動を実行する。VCM設定圧43達成後も、加圧設定時間45の期間は制御が継続される。
【0026】
加圧設定時間45完了後、VCMは圧力制御から位置制御に切り替わり、無荷重で静止する。そのときコントローラー17は、フィードバックセンサーを圧力センサー23からリニヤセンサー26に切り替える。
【0027】
その後、待機位置46に上昇のため、上昇位置制御期間40に移り、VCMは上昇して待機位置46で静止する。
【産業上の利用可能性】
【0028】
図11の様に、プリント基板上にICチップを実装する場合、ICチップの種類や接合方式で、様々な接合圧力が必要になる。又、
図12の様なLED実装では、量産時のLEDの多数個一括接合の場合と、
図13のような試作時の個片接合の場合があり、場合によって加圧力が、数十g~数十Kgの差がでるが、本発明によりすべての圧力を含む実装装置が1台で実現できる。
【0029】
更に、モーターを使用していないため、発塵が無くクリーン化に対応出来ることと、潤滑油を使用しないことから滅菌化が可能、又騒音が小さく、且つ発熱が少なく小型化出来ることから、医療分野での応用にも適している。
【符号の説明】
【0030】
1 ダイヤフラム
2 加圧バルブ
3 VCMシャフト
4 自重保持バルブ
5 ブッシャー
6 加圧室
7 自重保持加圧室
8 メタルシール
9 VCMヨーク
10 VCM磁石
11 VCMコイル
12 VCMボビン
13 治具取り付け部材
14 ダイヤフラム引き込み防止リング
15 比例電磁弁
16 自重保持圧レギュレター
17 コントローラー
18 VCM(ボイスコイルモーター)ユニット (9~12で構成)
19 エアー配管
20 VCM駆動配線
21 比例電磁弁制御配線
22 移動軸受け
23 圧力センサー
24 移動軸
25 リニヤセンサーゲージ
26 リニヤセンサー
27 リニヤセンサーベース取り付け
28 圧着ツール取り付けベース
29 圧着ツールヒーター
30 被圧着物
31 リニヤセンサー配線
32 圧力センサー配線
33 空圧センサー
34 位置制御特性
35 荷重制御特性
36 接触検出
37 下降位置制御期間
38 エアー加圧期間
39 圧力センサーフィードバック期間
40 上昇位置制御期間
41 エアー加圧量
42 VCM加圧量
43 VCM設定圧力(目標設定圧力)
44 エアー設定圧力
45 加圧設定時間
46 待機位置
47 COC マイクロバンプハンダ接合 圧力=数g
48 導電性接着剤 圧力=十数Kg
49 数個Auバンプ 圧力=数g
50 数千個ハンダバンプ 圧力=十数g
51 FPC 導電性接着剤 圧力=数十Kg
52 LED基板
53 LEDチップ
54 空圧センサー
55 元圧レギュレター