(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114443
(43)【公開日】2023-08-17
(54)【発明の名称】切断装置、及び切断方法
(51)【国際特許分類】
B23K 7/08 20060101AFI20230809BHJP
B23K 7/10 20060101ALI20230809BHJP
E04G 23/08 20060101ALI20230809BHJP
B26F 3/06 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
B23K7/08 A
B23K7/10 501F
E04G23/08 H
B26F3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010471
(22)【出願日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2022016656
(32)【優先日】2022-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000150981
【氏名又は名称】日酸TANAKA株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000122689
【氏名又は名称】岡谷酸素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温
(72)【発明者】
【氏名】井戸 康浩
(72)【発明者】
【氏名】奥田 修司
(72)【発明者】
【氏名】山崎 輝士
(72)【発明者】
【氏名】石丸 達朗
(72)【発明者】
【氏名】松岡 明彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 信也
(72)【発明者】
【氏名】右田 周平
(72)【発明者】
【氏名】武田 隆志
(72)【発明者】
【氏名】狩野 智也
(72)【発明者】
【氏名】前田 健作
(72)【発明者】
【氏名】石井 幸二
(72)【発明者】
【氏名】松田 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴置 宗夫
(72)【発明者】
【氏名】小林 英亮
【テーマコード(参考)】
2E176
3C060
【Fターム(参考)】
2E176AA01
2E176DD52
3C060AA14
3C060AA16
3C060CF14
(57)【要約】
【課題】環境への影響を一層低減することが可能であると共に取り扱いが容易な切断装置を提供する。
【解決手段】切断対象物を切断するための切断トーチ11と、少なくとも燃料ガス及びパウダーを切断トーチ11に供給するための供給ホース18と、を備え、切断トーチ11は、管状の本体部14と、本体部の先端部に配置され、少なくとも燃料ガス及びパウダーを噴射する火口16と、を有し、本体部14は、火口16が取り付けられる火口受け51を有し、火口16と火口受け51は、一方のテーパ部を他方のテーパ部に差し込んで接続されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断対象物を切断するための切断トーチと、
少なくとも燃料ガス及びパウダーを前記切断トーチに供給するための供給ホースと、を備え、
前記切断トーチは、管状の本体部と、前記本体部の先端部に配置され、少なくとも前記燃料ガス及び前記パウダーを噴射する火口部と、を有し、
前記本体部は、前記火口部が取り付けられる火口受け部を有し、
前記火口部と前記火口受け部は、一方のテーパ部を他方のテーパ部に差し込んで接続されていることを特徴とする切断装置。
【請求項2】
前記火口受け部には、少なくとも、前記燃料ガスを流通させるための燃料ガス用導入通路と、前記パウダーを流通させるためのパウダー用導入通路と、が形成され、
前記パウダー用導入通路の一部は、前記テーパ部に開口する接続孔となっていることを特徴とする請求項1に記載の切断装置。
【請求項3】
前記パウダー用導入通路が、前記火口受け部に少なくとも1つ形成されていることを特徴とする請求項2に記載の切断装置。
【請求項4】
前記火口部が、前記パウダーを受け入れるパウダー受け入れ部を有し、
前記接続孔が、前記パウダー受け入れ部に面して開口していることを特徴とする請求項2又は3に記載の切断装置。
【請求項5】
切断対象物を切断するための切断トーチと、
少なくとも燃料ガス及びパウダーを前記切断トーチに供給するための供給ホースと、を備えた切断装置が用いられ、
前記切断対象物は、少なくとも、金属製の厚板を含んで構成されており、
前記切断トーチから噴射される火炎により前記切断対象物を切断する切断方法。
【請求項6】
前記厚板は複数の鋼板を積層して形成されている、請求項5に記載の切断方法。
【請求項7】
前記厚板の合計の厚さは100mm以上3m以下である、請求項5又は6に記載の切断方法。
【請求項8】
前記切断トーチは、
少なくとも前記燃料ガス及び前記パウダーを噴射する火口部と、
前記火口部が取り付けられる火口受け部と、を備え、
前記火口受け部に、複数のパウダー用導入通路が設けられ、
前記パウダーは、前記複数のパウダー用導入通路を介して前記火口部に導入され、前記火口部の複数のパウダー用噴射口から噴射される、請求項6に記載の切断方法。
【請求項9】
請求項1に記載の切断装置における前記切断トーチを保持して少なくとも1軸方向に自動的に案内するガイド装置。
【請求項10】
ガイド装置により、前記切断トーチを保持して少なくとも1軸方向に自動的に案内する請求項5又は6に記載の切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、鉄筋コンクリートやその他の切断対象物の切断に用いられる切断装置、及び切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新たな建造物の工事着手前に、既存構造物を除去する解体工事が必要なケースが増加している。既存の構造物の中でも、鉄筋コンクリート造のような堅牢な躯体の解体工事では、大型のブレーカーを用いる工法が一般的である。しかし、作業に伴う周辺環境への工事振動が課題の一つとなっている。さらに、地下部分では、基礎の構造体断面が大きいにもかかわらず、狭い空間での作業となり、大型機械の採用が制限されるなどの課題がある。そして、これらの課題を解決できる工法開発が求められている。
【0003】
現在、断面の大きなコンクリート構造体の解体時に発生する振動を抑制するための工法として、ワイヤーソーイングやコアボーリングによる切断工法がある。しかし、前者はワイヤーソーを切断部位外周に設置しなければならないという課題がある。後者は構造体を構成する棒鋼や鉄骨などの鋼材がコアボーリングの障害となるという課題がある。そこで、発明者等は、地下のコンクリート構造物における解体の効率化を図ったり、周辺環境に及ぼす影響を低減させたりできるよう、水素系混合ガスを用いた切断装置や切断方法を開発した(特許文献1)。
【0004】
また、一般に、放射線を利用する施設では、放射線の照射が行われる部屋の周囲を遮蔽材により囲うことが行われている。放射線を利用する施設としては、放射線治療装置(リニアック)を備えた病院等を例示できる。
【0005】
後掲の特許文献2(段落0025、0026、
図1Aなど)には、門型の遮蔽材(10)により、放射線装置から放射される放射線が室外に漏洩するのを防止することが開示されている。また、段落0038には、遮蔽材(11、12)が、複数の遮蔽層(13、14)により構成され、各遮蔽層(13、14)は鋼板による構成されていることが開示されている。さらに、段落0039~0042には、遮蔽層(13、14)を溶接することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-138303号公報
【特許文献2】特許第6456186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、混合ガスを用いた切断装置や切断方法は、上述のように、解体を効率化したり、周辺環境への影響を低減したりするうえで有効である。したがって、これらの切断装置や切断方法に改良を加え、切断装置を取り扱い易いものとすることが望ましい。また、前掲の特許文献1に開示された切断装置においては、ハンドリング装置や移動台車、或いは、ケーシングやフォークリフトが必要である。このため、騒音や振動が発生し易く、環境への影響を低減することが容易ではない場合がある。
【0008】
また、放射線を利用する施設を解体や改修等する場合、遮蔽材を内包したコンクリート構造物を切断する必要がある。遮蔽材は、鋼板を重ねて構成されていることから、厚板と同様なサイズになっている。このため、一般的なガス切断や、レーザー切断等の工法によったのでは、効率よく切断することが難しい。また、鋼板が積層されていることから、鋼板の間には僅かな隙間存在する。このため、ガス切断した場合の裂開部を奥に進行させることが難しく、このことが、切断に多くの時間を要する要因となっていた。
【0009】
本発明は、環境への影響を一層低減することが可能であると共に取り扱いが容易な切断装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明は、切断対象物を切断するための切断トーチと、
少なくとも燃料ガス及びパウダーを前記切断トーチに供給するための供給ホースと、を備え、
前記切断トーチは、管状の本体部と、前記本体部の先端部に配置され、少なくとも前記燃料ガス及び前記パウダーを噴射する火口部と、を有し、
前記本体部は、前記火口部が取り付けられる火口受け部を有し、
前記火口部と前記火口受け部は、一方のテーパ部を他方のテーパ部に差し込んで接続されていることを特徴とする切断装置にある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、環境への影響を一層低減することが可能であると共に取り扱いが容易な切断装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る切断装置図を説明するための図である。
【
図2】(a)は切断トーチの中間部分を省略して説明する正面図、(b)は(a)のA-A線に沿った断面図である。
【
図3】(c)は
図2(a)の切断トーチを、長手方向を軸にして90度回転させた正面図、(d)は(c)のB-B線に沿った断面図である。
【
図4】(a)は火口の先端面を示す図、(b)は火口の側面を示す図である。
【
図5】(a)~(d)は実施形態に係る火口受けを説明するための図であり、(a)は側面を示す図、(b)は後端面を示す図、(c)は(b)のA-A線に沿った断面図、(d)は(b)のB-B線に沿った断面図である。
【
図6】火口受けに火口を装着した状態を示す部分断面図である。
【
図7】切断トーチによる切断対象物の切断を説明するための図である。
【
図8】切断トーチを裂開部に進入させた状態を説明するための図である。
【
図9】パウダー用導入通路の機能を示す説明図である。
【
図10】(a)~(e)は他のタイプの火口受けを説明するための図であり、(a)は側面を示す図、(b)は(c)のA-O-C線に沿った断面図、(c)は後端面を示す図、(d)は(c)のB-O-D線に沿った断面図、(e)は(d)のE-E線に沿った断面図である。
【
図11】(a)は
図10に示すタイプの火口受けを使用した場合におけるパウダーの通過経路を示す説明図、(b)は実施形態に係る
図5に示すタイプの火口受けを使用した場合におけるパウダーの通過経路を示す説明図である。
【
図12】(a)は実験例における厚板の切断中の画像を示す説明図、(b)は切断後の厚板の画像を示す説明図、(c)は切断後の厚板を(b)とは異なる向きで撮影した画像を示す説明図である。
【
図13】切断トーチの搬送装置を用いた場合の切断方法の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<切断装置10>
<<切断トーチ11>>
以下に、本発明の切断装置について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る切断装置10を模式的に示している。この切断装置10は、切断トーチ11や供給ホース18を備えている。これらのうち、切断トーチ11は、円管状の本体部14を有しており、本体部14の軸方向の長さは、切断の作業者が片手又は両手で把持できる長さとなっている。そして、切断トーチ11の全長、外形寸法、あるいは重量は、作業者が手(安全性を考慮してグローブを装着した手)で把持して機動的に作業が行える程度となっている。
【0014】
具体的には、本体部14の軸方向の長さを、1m弱~2m程度の長さとすることが考えられる。また、本体部14は、直管状のものに限らず、例えば、テーパ状や円弧状であってもよい。さらに、本体部14を、途中の部位で折曲して、くの字状やL字状などとすることも可能である。また、本体部14の断面形状を、三角形状や四角形状などの多角形状とすることも可能である。
【0015】
<<供給ホース18>>
切断トーチ11の基端側(
図1の図の右側)には、複数の供給ホース18が接続されている。各供給ホース18には、ゴム製や樹脂製等の材質が用いられている。供給ホース18の接続先は、
図2及び
図3に示すように、切断トーチ11における本体部14の中に設けられた、燃料ガス供給管20、切断酸素供給管21a、予熱酸素供給管21b、金属パウダー(「金属粉」ともいう、以下では「パウダー」と称する)供給管22、及び、冷却水供給管23の各種の配管である。
【0016】
これらの燃料ガス供給管20、切断酸素供給管21a、予熱酸素供給管21b、及び、パウダー供給管22には、個々に接続された供給ホース18を介して、燃料ガス、切断酸素、予熱酸素、及び、金属パウダーが、図示を省略した調整供給部から供給される。ガスや金属パウダーの詳細については後述する。なお、
図3(c)は、
図2(a)の切断トーチを、長手方向を軸にして90度回転させた状態を一部破断して示している。
【0017】
前述の冷却水供給管23は、本体部14の内部に冷却水(図示略)を循環させるものである。冷却水供給管23には、行き用(往路(IN)用)と、帰り用(復路(OUT)用)がある。そして、冷却水供給管23は、冷却水を切断トーチ11の基端側から先端側(
図1の右側から左側)に向けて案内する部分(以下では「冷却水IN」と称する)23aと、冷却水を切断トーチ11の先端側から基端側(
図1の左側から右側)外へ向けて案内する部分(以下では「冷却水OUT」と称する)23bとを有している。ここで、
図2や
図3において、断面を示すハッチングや網掛けの図示は省略されている。
【0018】
<<火口16>>
図1に示すように、切断トーチ11の先端側に位置する火炎口15は、火口部としての火口16により構成されている。火口16は、後述するように火口受け部としての火口受け51に接続されており、火口受け51を介して本体部14に取り付けられている。これらのうち火口16は、
図4(a)、(b)に示すように、円筒状に形成されている。ここで、火口16は、
図1と
図4(a)、(b)のみに示しており、
図2や
図3には、火口16を取り外した状態が示されている。
図6には、火口16が火口受け51に取り付けられた状態の断面が示されている。
【0019】
図4(a)に示すように、火口16の先端面(火炎口15が位置する面)35には、複数種類の孔が開口している。これらの孔は、切断酸素用噴射口31、燃料ガス用噴射口32、予熱酸素用噴射口33、及び、パウダー用噴射口34となっている。切断酸素用噴射口31は、火口16の中央に配置されており、その外側に、燃料ガス用噴射口32が、切断酸素用噴射口31を中心とした同心円上に配置されている。
図4の例では、燃料ガス用噴射口32の数は4個である。
【0020】
予熱酸素用噴射口33は、燃料ガス用噴射口32の外側に、同じく切断酸素用噴射口31を中心とした同心円上に配置されている。
図4の例では、予熱酸素用噴射口33の数は8個である。パウダー用噴射口34は、予熱酸素用噴射口33の外側に、同じく切断酸素用噴射口31を中心とした同心円上に配置されている。
図4の例では、パウダー用噴射口34の数も8個である。
【0021】
各噴射口31~34の開口の形状は真円状であり、いずれの開口の直径も共通である。各噴射口31~34は、火口16の先端面35において、共通の開口寸法や開口面積を有している。各噴射口31~34について、種類毎の合計の開口面積は、開口の個数によって決まる。そして、先端面35は、各噴射口31~34を含む平坦面(面一の面)として形成されている。
【0022】
なお、各噴射口31~34の数や配置は、
図4(a)の例に限定されるものではなく、種々に変更が可能である。例えば、一部又は全ての噴射口の開口の形状を矩形(正四角形)状とすることなども可能である。また、各噴射口31~34の開口寸法や開口面積を、種類毎に共通とし、少なくとも一部の種類の開口寸法や開口面積を、他の種類と異なるようにすることが可能である。
【0023】
詳細な図示は省略するが、切断酸素用噴射口31、燃料ガス用噴射口32、予熱酸素用噴射口33、及び、パウダー用噴射口34は、火口16の内部において、それぞれ、切断酸素用噴射通路、燃料ガス用噴射通路、予熱酸素用噴射通路、及び、パウダー用噴射通路に空間的に繋がっている。
【0024】
切断酸素用の噴射通路は、火口16の内部において、軸心に沿って延び、火口16の後端面36に開口している。これに対し、燃料ガス用、予熱酸素用、及び、パウダー用の各噴射通路は、火口16の軸心方向と半径方向に延びるようL字状に形成されている。
【0025】
燃料ガス用、予熱酸素用、及び、パウダー用の各噴射通路の数は、前述した燃料ガス用噴射口32、予熱酸素用噴射口33、及び、パウダー用噴射口34の数に対応しており、それぞれ4本、8本、及び、8本である。そして、燃料ガス用、予熱酸素用、及び、パウダー用の各噴射通路は、火口16の外周面に形成された環状溝42~44の底部に開口している。
【0026】
図4(b)の例では、環状溝42は、燃料ガス用噴射通路に割り当てられた燃料ガス用環状溝である。環状溝43は、予熱酸素用噴射通路に割り当てられた予熱酸素用環状溝43であり、環状溝44は、パウダー用噴射通路に割り当てられたパウダー用環状溝44である。燃料ガス用、予熱酸素用、及び、パウダー用の各噴射通路は、環状溝42~44の底部において、ほぼ等間隔で開口しており、対応する環状溝42~44と空間的に繋がっている。
【0027】
ここで、環状溝42~44は、火口16の外周部において、全周に亘り連続したO型に形成されていてもよい。また、環状溝42~44は、円弧状(C字状ともいう)の複数の溝が周方向に断続的に配置された断続型のものであってもよい。
【0028】
環状溝42~44は、火口16の後端側(
図4(b)の図の右端側)に形成されたテーパ部46にO型(又は断続型)に開口している。テーパ部46は、火口16における軸方向の途中の部位に位置する雄ねじ部47よりも、後端側に形成されている。テーパ部46は、火口16の後端側へいくほど細くなる形状を有している。そして、火口16は、後述する火口受け51にテーパ部46を進入させて、後述するように、火口受け51に着脱可能に固定される(
図1)。
【0029】
<<火口受け51>>
次に、
図1や
図5(a)~(d)に基づき、火口受け51について説明する。火口受け51は、全体として円筒状に形成されており、
図1に示すように、切断トーチ11の本体部14に着脱可能に装着されている。
図5(c)、(d)に示すように、火口受け51は、火口16が差し込まれる火口差し込み孔52を有しており、火口差し込み孔52は、先端面53に真円状に開口している。火口受け51の先端側(先端面53の側)において、火口差し込み孔52の内周面には、ねじ溝(符号省略、雌ねじの溝)56が形成されている。
【0030】
火口差し込み孔52の奥側(後端面57の側)には、奥側へ行くほど細く狭まるテーパ部54が形成されている。テーパ部54の内周面55は、周方向及び軸方向に連続したテーパ面となっている。火口差し込み孔52の奥部(テーパ部54の奥部)には、切断酸素用導入通路61の一端が開口しており、切断酸素用導入通路61の他端は、
図5(b)に示すように、火口受け51の後端面57における中央部に開口している。
【0031】
テーパ部54の周囲の部位には、4つの通路が形成されている。これらの通路は、燃料ガス用導入通路62、予熱酸素用導入通路63、及び、2つのパウダー用導入通路64である。各導入通路62~64は、
図5(b)に示すように、後端面57において、切断酸素用導入通路61を中心とした同心円上に開口している。これらのうち、2つのパウダー用導入通路64は、火口受け51に対称的(線対称的及び点対称的)に形成されている。
【0032】
図5(c)、(d)に示すように、これらの燃料ガス用導入通路62、予熱酸素用導入通路63、及び、パウダー用導入通路64の、一端側(先端面53の側)の端部には、各接続孔67~69が形成されている。
【0033】
これらの接続孔67~69は、燃料ガス用接続孔67、予熱酸素用接続孔68、パウダー用接続孔69である。各接続孔67~69は、火口受け51の径方向に延びており、火口差し込み孔52に空間的に繋がっている。各接続孔67~69は、燃料ガス用導入通路62、予熱酸素用導入通路63、及び、パウダー用導入通路64の、それぞれの一部を構成している。
【0034】
さらに、各接続孔67~69は、火口受け51の外周面58に開口している。各接続孔67~69を、火口受け51の外周面58で開口させることにより、各導入通路62~64の加工を容易に行えるようになる。ただし、外周面58における、各接続孔67~69の開口は、各導入通路62~64を確保した状態で塞がれている。
【0035】
つまり、塞がれているのは、各接続孔67~69の、外周面58における開口端部のみであり、各導入通路62~64は、燃料ガス、予備酸素、パウダーの流通に支障がないよう形成されている。各接続孔67~69の開口を塞ぐのにあたっては、例えば、火口受け51と同様な素材の柱状体100を開口内に隙間が生じないよう圧入し、突出部分を研磨して、火口受け51に目立たないよう一体化することなどが可能である。
【0036】
接続孔67~69のうち、燃料ガス用接続孔67(
図5(d))は、他の接続孔68、69(
図5(a)、(b))と比較して、最も後端面57に近い位置に形成されている。また、2つのパウダー用接続孔69(
図5(c))は、他の接続孔67、68(
図5(d))と比較して、最も先端面53に近い位置に形成されている。さらに、2つのパウダー用接続孔69(
図5(c))は、180度間隔で同一直線上に配置されている。予熱酸素用接続孔68(
図5(d))は、燃料ガス用接続孔67(
図5(d))と、パウダー用接続孔69(
図5(c))との間の位置に形成されている。
【0037】
図5(d)に示すように、燃料ガス用導入通路62は、切断酸素用導入通路61と平行に形成されている。予熱酸素用導入通路63とパウダー用導入通路64は、
図5(c)及び
図5(d)に示すように、後端面57から先端面53の側に向かうにつれて、火口受け51の軸心から離れるよう傾斜している。
【0038】
切断酸素用導入通路61、燃料ガス用導入通路62、予熱酸素用導入通路63、及び、パウダー用導入通路64には、それぞれ、
図2や
図3に示す切断酸素供給管21a、燃料ガス供給管20、予熱酸素供給管21b、及び、パウダー供給管22が接続されている。ここで、切断酸素供給管21a、燃料ガス供給管20、予熱酸素供給管21b、及び、パウダー供給管22の束は、本体部14の中で、切断酸素用導入通路61、燃料ガス用導入通路62、予熱酸素用導入通路63、及び、パウダー用導入通路64の位置に整合するように捻られている。
【0039】
<<火口16と火口受け51の接続構造>>
続いて、
図6に示すように、火口受け51の火口差し込み孔52には、火口16が着脱可能にねじ込まれる。火口16が、火口受け51の奥までねじ込まれると、火口16のテーパ部46が、火口受け51のテーパ部54に差し込まれて入り込み、火口受け51のテーパ部54における内周面55に接触(面接触)する。このように、火口16と火口受け51は、互いのテーパ部46、54を接触させた状態で接続されている。ここで、互いのテーパ部46、54を介在物なく直接的に接触させることに限らず、例えば、テーパ部46、54の間に、テーパ状に加工された管状物や、湾曲させられたシート状物等の介在物を設けてもよい。この介在物は、剛体であっても、可撓性を有するものであってもよい。さらに、介在物は、シール性(例えば気密的なシール性)を発揮するものであってもよい。また、本実施形態のように火口16を雄側とし、火口受け51を雌側とすることに限らず、例えば、火口16を雌側とし、火口受け51を雄側として、火口16と火口受け51とを接続してもよい。
【0040】
火口16のテーパ部46は、外側に突出した部分を持たないテーパ状である。テーパ部54の内周面55も、内側に突出した部分を持たないテーパ状である。このため、火口16のテーパ部46の、燃料ガス用環状溝42、予熱酸素用環状溝43、及び、パウダー用環状溝44の開口の部分を除いた部分(テーパ面)が、テーパ部54の内周面55に面接触する。
【0041】
このようにして、火口16が火口受け51に装着されると、火口16の切断酸素用噴射口31が、火口受け51の切断酸素用導入通路61に、空間的に繋がる。また、火口16の燃料ガス用環状溝42、予熱酸素用環状溝43、及び、パウダー用環状溝44と、火口受け51の、燃料ガス用導入通路62、予熱酸素用導入通路63、及び、パウダー用導入通路64も、空間的に繋がる。
【0042】
<<火口16から噴射されるガス>>
切断酸素は、火口受け51の切断酸素用導入通路を介して、火口16に導入され、火口16の切断酸素用噴射口31から噴射される。燃料ガス、予熱酸素、及び、パウダーは、火口受け51の、燃料ガス用導入通路62、予熱酸素用導入通路63、及び、パウダー用導入通路64を介して火口16に導入され、火口16の、燃料ガス用噴射口32、予熱酸素用噴射口33、及び、パウダー用噴射口34から噴射される。そして、切断酸素、燃料ガス、予熱酸素、及び、パウダーは、火口16から噴射されて混合ガスとなる。
【0043】
燃料ガスとしては、水素ガスや種々のガスを使用できるが、特に水素リッチガスであることが望ましい。水素リッチガスとしては、水素ガス(100%)や、水素ガスと炭化系ガスの混合ガス(水素混合比率が50%以上)のものを例示できる。
【0044】
水素リッチガスを使用した場合、切断作業時に切断対象物からの輻射熱を抑えることができる。また、水素リッチガスは、ガスを噴射した場合の直進性に優れる。このため、作業者が体感する温度や、切断トーチ11の過熱を抑制することができる。さらに、炎を狙った位置に向けて的確に噴射できる。
【0045】
切断酸素は、パウダーを燃焼させる機能、及び、切断対象物(鉄筋コンクリート、鋼材を内包した強化コンクリートなど)の溶融物を排出する機能等を有している。パウダーは、炎の温度を上げる機能を有している。パウダーとしては、鉄とアルミの混合粉が用いられている。アルミを混合した場合には、アルミの酸化発熱量を利用して対象物が溶融される。この際、流動性を補助するものとして酸化鉄を基本として用い、酸化反応熱の高い粉体(ここではアルミ)を混合することによって切断能力を向上させている。しかし、これに限定されず、炎の温度を必要な温度以上に上げることができる種々のパウダーを採用することが可能である。切断対象物(ここでは
図6等の後述する切断対象物72)の構成(構造や組成などの特性)により、混合比を変えることで、加熱されて溶融した切断対象物(溶融物)の流動性を良くし、排出性を向上することができる。
【0046】
パウダーは鉄のみや、アルミのみなどであってもよい。パウダーにはマグネシウムなども、他の金属粉と混合して、或いは、単独で用いることが可能である。また、パウダーを、鉄と他の金属粉との混合物とし、パウダー内における鉄の混合率(「混合比」や「混合割合」ともいう)を、相対的に多くする(50%超とする)ことが可能である。好適には、鉄の混合率を、例えば65~90%(重量%)とすることが可能である。また、鉄の混合率を、作業者の状態(作業姿勢や作業内容など)を考慮して変更する(決定する)ことなども可能である。
【0047】
パウダーを構成する金属粉については、少なくとも一部の金属粉が、視認可能な大きさ(「粒子径」や「粒径」などともいう)を有している。このようにすることで、混合ガスのその他の成分(水素ガスなどの燃料ガスや各種酸素)が視認できないものであっても、混合ガスを視認可能とすることができる。そして、混合ガスの噴射の状態(速度、流量、直進性など)を目視により確認したうえで、混合ガスに着火することができる。
【0048】
<<切断作業の一例>>
図7は、作業者70が切断トーチ11を把持して操作し、鉄筋コンクリート等からなる切断対象物72を切断する様子を例示している。切断対象物72の切断にあたり、切断トーチ11に供給された燃料ガスと予熱酸素が、切断トーチ11から高圧で噴射される。燃料ガスと予熱酸素の混合ガスに、同じく切断トーチ11から噴射されるパウダーが混ざり、これらの混合ガス(混合物)に着火が行われる。より具体的には、混合ガスによりパウダーが加熱され、切断酸素により着火されると考えられる。
【0049】
切断トーチ11からは、火炎74が直進するよう噴射される。
図7には、火炎74が切断対象物72に当たって反射する様子が模式的に示されている。作業者70は、切断対象物72に対して切断トーチ11の先端部を対向させ、切断対象物72の表面を加熱する。さらに、予熱の段階が終了すると、予熱酸素に切断酸素が足し合わされ、火炎74が維持(或いは増強)される。そして、切断酸素とパウダーとが供給されることで、高温の火炎74が噴射され、切断対象物72が加熱される。
【0050】
切断酸素の供給が行われた後には、火炎74の切断温度は、混合されたパウダーの作用により、2000~2500℃以上となり、切断対象物72の融点を越える温度に達している。そして、高温の火炎74が切断対象物72に吹き付けられ、切断対象物72の、火炎74は当たった部位が溶融する。
【0051】
切断対象物72には、火炎74によって、コンクリートや鉄筋等の内包物が部分的に除去された裂開部76(
図8)が形成される。裂開部76の形成に伴い、溶融した切断対象物(溶融物)が流れ出る。例えば、作業者70は、裂開部76に対して、切断トーチ11の先端側を徐々に進入させる、裂開部76を深化させる。
図8には、切断トーチ11の先端側が、裂開部76に進入した様子が模式的に示されている。
【0052】
作業者70は、切断トーチ11の前進移動や、横方向及び縦方向の移動を適宜組み合わせる。そして、作業者70は、切断対象物72を、例えば板状や直方体状に順次切り出し、鉄筋コンクリート等により構成された建築物等の解体を進める。切断トーチ11には、冷却水供給管23を介して冷却水が流通しており、この冷却水は、切断トーチ11の内部と外部との間で循環している。このため、切断作業時に切断トーチ11の過度な温度上昇が防止される。
【0053】
また、
図6及び
図7には、シールド金属板78が示されている。このシールド金属板78は、耐火性のある金属製の素材を用いて板状に形成されている。シールド金属板78は、作業者70が必要に応じて、単独で、或いは、チャンバ部(図示略)と併用し、輻射熱や火花を防ぐことができるものである。シールド金属板78には長方形状の開口部79が設けられている。
【0054】
シールド金属板78は、図示は省略するが、例えば、他の作業者に持って貰ったり、架台上に載せたり、昇降機構(クレーンやウインチなど)により支持したり、或いは、切断対象物72に立て掛けたりして、使用することが可能である。作業者70は、開口部79に、切断トーチ11の先端側を差し込んで、輻射熱や火花を防ぎながら、前述のような切断作業を行える。
【0055】
開口部79の形状を例えば、長方形とした様な場合、開口部79の縁部をガイドとして、切断トーチ11を、横方向や縦方向に直線的に移動させることが可能である。つまり、例えば、切断トーチ11の、先端側と作業者70との間の部位の一部を、開口部79の下縁部に載せ、作業者70が、切断トーチ11を、開口部79の下縁部に接触させながら移動させる。すると、切断トーチ11は、開口部79の下縁部の形状に沿って移動し、切断対象物72の切断が直線的に行われることとなる。
【0056】
図7及び
図8に示すように使用される切断トーチ11において、火口受け51(
図5(a)~(d))に導入されたパウダーは、
図9に模式的に示すように、パウダー用導入通路64を通る。
図9は、一方のパウダー用導入通路64の断面を拡大して示している。パウダー用導入通路64に進入したパウダーは、パウダー用導入通路64を通って、火口16の側へ向かう。
図9では、パウダーの流れが矢印Pにより示されている。
【0057】
前述したように、パウダー用導入通路64は、火口受け51の軸心から離れるよう傾斜している。このため、パウダー(矢印P)は、パウダー用接続孔69を塞ぐ柱状体100に向かって進む。さらに、パウダーは、パウダー用接続孔69の端部を塞ぐ柱状体100に近付いてから、パウダー用接続孔69に流入する。つまり、パウダーは、パウダー用導入通路64とパウダー用接続孔69との境界部において、パウダー用導入通路64から、柱状体100の内端面102に向かって噴出する。
【0058】
パウダー用接続孔69において、柱状体100の内端面102の周囲の部位には、袋状の折曲部104が形成されている。このため、柱状体100における内端面102の周囲の部位には、パウダーが堆積し得る。しかし、パウダーが、パウダー用導入通路64から、柱状体100の内端面102に向かって噴出することから、柱状体100や折曲部104に達したパウダーは、後続のパウダーにより吹き飛ばされる。
【0059】
パウダー用接続孔69は、火口16のパウダー用環状溝44に面して開口しており、吹き飛ばされたパウダーは、パウダー用接続孔69から、火口16のパウダー用環状溝44に直接に導入される。ここで、柱状体100の内端面102は、パウダー用接続孔69の奥部(火口受け51における半径方向外側の奥部)を構成している。
【0060】
以上説明したような本実施形態の切断装置10や、切断装置10を用いた切断方法によれば、火口16と火口受け51とが、互いのテーパ部46、54を接触(面接触)させた状態で連結されている。このため、火口16と火口受け51とを、段差の少ない直線状の面(円錐状の面)で密に接触させることができる。そして、火口16と火口受け51との間に、燃料ガス、予備酸素、及び、パウダーの通路以外には、空間が生じないようにすることができる。したがって、火口16と火口受け51との間に、凹凸や段差が生じるのを可及的に防止することができる。そして、凹凸や段差におけるパウダーの堆積を防ぐことが可能となる。
【0061】
また、切断装置10や切断方法によれば、火口受け51にはパウダー用導入通路64が形成され、 パウダー用導入通路64の一部は、テーパ部54のテーパ面に開口するパウダー用接続孔69となっている。したがって、パウダー用導入通路64を、直接、火口16に空間的に繋げることができる。このような切断装置10は、例えば、
図10(a)~(e)に示すようなタイプの火口受け81に比べて、パウダーが堆積し得る余地を可能な限り削減することができ、メンテナンス性に優れる。
【0062】
図10(a)~(e)に示す火口受け81は、
図5(a)~(d)に示す本実施形態の火口受け51とは別なタイプの火口受けである。
図10(a)~(e)に示すタイプの火口受け81においては、火口差し込み孔82の周囲に、パウダー用環状溝86が形成されている。そして、パウダー用環状溝86の存在により、パウダーの堆積が生じ得る部分が大となり、火口受け81と火口16との固着が生じ易い。
【0063】
より詳しく説明すれば、
図10に示すタイプの火口受け81は、
図5に示すタイプの火口受け51と同様に、テーパ部88が、火口16のテーパ部46に面接触するようになっている。ただし、火口差し込み孔82の周囲に、複数の環状溝84~86が形成されており、各環状溝84~86は、火口差し込み孔82の外側(径方向の外側)に張り出した(凹んだ)凹陥部となっている。
【0064】
各環状溝84~86は、燃料ガス用導入通路92、予熱酸素用導入通路93、及び、1つのパウダー用導入通路94に、それぞれ空間的に繋がっている。各導入通路92~94には、それぞれ、燃料ガス、予熱酸素、パウダーが供給される。ここで、
図10(b)~(d)に符号91で示すのは、切断酸素の供給に用いられる切断酸素用導入通路である。
【0065】
図示は省略するが、
図4(a)、(b)に示すような火口16が、
図10に示す火口受け81の奥までねじ込まれる。火口16のテーパ部46が、火口受け81のテーパ部88に入り込み、火口受け81のテーパ部88における内周面89に接触する。そして、火口16の切断酸素用孔、燃料ガス用環状溝42、予熱酸素用環状溝43、及び、パウダー用環状溝44と、火口受け81の、燃料ガス用環状溝84、予熱酸素用環状溝85、及び、パウダー用環状溝86とが、環状溝同士で互いに空間的に繋がる。
【0066】
切断酸素、燃料ガス、予熱酸素、及び、パウダーは、火口受け81の各導入通路91~94を通って、火口16に導入される。そして、切断酸素、燃料ガス、予熱酸素、及び、パウダーは、
図5(a)~(d)に示す火口受け51を用いた場合と同様に、火口16の、切断酸素用噴射口31、燃料ガス用噴射口32、予熱酸素用噴射口33、及び、パウダー用噴射口34から、混合ガスとなって噴射される。
【0067】
しかし、前述したように、火口受け81には、外側に張り出した(凹んだ)パウダー用環状溝86が設けられている。
図11(a)は、
図10に示すタイプの火口受け81に、火口16を接続した状態の断面を模式的に示している。
図11(a)は、火口受け81や火口16について、先端側(
図1における左側)から見た場合の縦断面を簡略化して示している。
【0068】
図11(a)に示すように、パウダー用環状溝86は、火口16のパウダー用環状溝44と空間的に繋がり、火口16のパウダー用環状溝44とともに、大容量(大容積)で大面積の空間を形成する。このため、パウダーが接し得る部分の容積や面積が大となる。そして、火口受け81におけるパウダー用環状溝86の内側にパウダーが堆積し得ることとなり、パウダーが堆積し得る余地が大となる。
【0069】
したがって、火口受け81と火口16との間の空間にパウダーが堆積し易い。そして、堆積したパウダーが溶融し、凝固した場合には、火口受け51と火口16とが固着し、火口16の取り外しが困難になる。パウダーが、例えばアルミのような低融点の成分のものである場合や、低融点の成分を含む場合は、パウダーの固着が生じ易い。このような火口受け51と火口16との固着を防ぐには、短時間で切断作業を中断し、メンテナンス作業を行う必要がある。メンテナンス作業においては、火口16が火口受け81から取り外され、火口受け81や火口16が清掃される。メンテナンス作業を頻繁に繰り返すことにより、作業時間や工数が増え、工期短縮や工数削減が困難になる。
【0070】
これに対し、
図11(b)は、
図5(a)~(d)に示すタイプの火口受け51に、火口16を接続した状態の断面を模式的に示している。
図11(b)は、火口受け51や火口16について、先端側(
図1における左側)から見た場合の縦断面を簡略化して示している。
【0071】
図11(b)に示すように、火口受け51にはパウダー用環状溝が設けられていない。 火口16は、パウダーを受け入れるパウダー用環状溝44を有し、火口受け51のパウダー用接続孔69が、パウダー用環状溝44に面して開口している。パウダー用導入通路64のパウダー用接続孔69を通ったパウダーは、火口受け51のパウダー用接続孔69から、火口16のパウダー用環状溝44に直接に導入される。
【0072】
このため、火口受け51において、パウダーが接し得る部分の容積や面積が小さく、パウダーが堆積し得る余地が小となる。そして、
図10に示す火口受け81と比べて、火口受け51の内周部にパウダーが堆積し難い。この結果、パウダー用接続孔69にもパウダーが堆積し難く、パウダー用接続孔69や、火口受け51と火口16との境界部が、長期に亘り清浄に保たれる。そして、火口受け51と火口16との固着を防止でき、このことで、火口16の取り外しが容易となり、また、頻繁なメンテナンス作業が不要になる。
【0073】
メンテナンス作業の頻度は、
図10、
図11(a)に示す火口受け81の場合、例えば、30分に1回程度必要となることがあった。しかし、
図5、
図11(b)に示す火口受け51においては、1日の作業をメンテナンスなしで続行することができた。メンテナンス作業の頻度を下げることは、工期短縮や工数削減のためには重要である。
【0074】
また、本実施形態の切断装置10や切断方法によれば、火口受け51に、複数(ここでは2つ)のパウダー用導入通路64が設けられており、パウダーは、複数のパウダー用導入通路64を介して火口16に導入される。このため、火口16に対するパウダーの供給をバランスよく行うことができる。また、火口16からパウダーを直進性良く噴射することが可能となる。
【0075】
より詳しく説明すれば、例えば、
図10に示す火口受け81のように、パウダー用導入通路94が1つ(1本、1系統)である場合、同じ量のパウダーを火口16に供給するためには、パウダー用導入通路94を通過するパウダーの量(単位時間当たりのパウダーの量)は、
図5の例のように複数のパウダー用導入通路64を備えた場合よりも多くなる。また、パウダーには重力が作用し、極一部のパウダーが、パウダー用導入通路94の中で落下して留まる場合もある。そして、パウダー用導入通路94が1本である場合には、パウダー用導入通路94の中に留まるパウダーの量も、複数本である場合に比べて多くなる。
【0076】
しかし、
図5の例のように、複数本のパウダー用導入通路64を備えることにより、1本あたりのパウダー用導入通路を流れるパウダーの量を低減できる。そして、パウダーを火口16にバランスよく、且つ、効率よく供給できる。そして、火口16からパウダーを直進性良く噴射することが可能となる。
【0077】
さらに、火口16において、パウダーは、同心円上に配置された複数(ここでは8個)のパウダー用噴射口34から同時に噴射される。このため、パウダーを、複数の経路を介して火口16に導き、火口16から噴射することができる。そして、このことによっても、火口16を直進性良く噴射することが可能となる。なお、パウダー用導入通路64は、複数であることに限定されず、例えば1本であってもよい。
【0078】
また、
図9に示すように、パウダー用導入通路64は、火口受け51の軸心から離れるよう傾斜しており、パウダーは、パウダー用接続孔69の奥部(柱状体100の内端面102により構成されている)に向かって噴射される。このため、パウダー用接続孔69の奥部にパウダーが堆積するのを防止できる。また、パウダーが堆積したとしても、後続のパウダーにより、堆積したパウダーを噴き飛ばすことができる。そして、このことによっても、火口受け51にパウダーが堆積するのを防止することができる。
【0079】
また、本実施形態の切断装置10や切断方法によれば、燃料ガスとして水素ガスを用いることにより、水素と酸素の化学反応によりで水が生成され、二酸化炭素(CO2)の排出を抑制できる。発明者等の実験では、8時間の燃焼により発生したCO2はほぼゼロであった。これに対し、アセチレンガスを用いたガス切断では、8時間で60kgのCO2が排出された。本実施形態の切断装置10や切断方法は、この点においても有利である。
【0080】
<切断装置10による厚板の切断>
発明者等は、切断装置10を種々の切断対象物72に対して適用した。その結果、切断装置10は、厚板(特に積層板)に対して、従来と比べて顕著な切断能力を示すことを見出した。以下にこの点について説明する。
【0081】
例えば、切断対象物72が、遮蔽材(前掲の特許文献2に開示されたようなもの)を内包したコンクリート構造物である場合、一般的なガス切断や、レーザー切断等の工法によったのでは、効率よく切断することが難しい。また、積層された鋼板の間の隙間により、切断に多くの時間を要する。これに対し、本実施形態に係る切断装置10により、上述のような切断対象物72を切断した場合には、従来よりも顕著に効率よく切断することができた。
【0082】
<<実験例>>
図12(a)~(c)は、鋼製の厚板を切断対象物72Aとし、前述の切断装置10Aを用いて切断対象物72Aを切断する実験の様子を示している。
図12(a)は切断中の様子を示しており、同図(b)及び(c)は、切断後の様子を示している。
図12(a)に示す切断装置10Aでは、切断トーチ11Aは、実験用に短尺化され、リニアガイド装置(走行台車)110のホルダ112に装着されている。リニアガイド装置110は、ホルダ112を例えば1軸方向(ここでは裂開部76Aが延びている方向)へ自動的に移動させ、切断トーチ11Aをガイドする。リニアガイド装置110としては、例えば、モータを駆動源とし、リニアガイドを介して移動ステージをホルダ112とともに直線移動させるもの等を例示できる。リニアガイド装置110は、有線又は無線による駆動源の遠隔操作が可能である。
【0083】
実験で使用された切断トーチ11Aは、例えば数十センチ程度に短尺化されていることから、
図7に示すように作業者70が把持して操作することは難しい。しかし、切断トーチ11Aの先端部に装着された火口16(
図8では符号を省略する)や火口受け51(
図12では符号を省略する)には、前述したのと同様のものが採用されている(
図6)。また、各種の供給ホース18Aを介して、前述したのと同様の燃料ガス、酸素、パウダー、及び、冷却水が切断トーチ11Aに供給されている。このため、火口16(
図12では符号を省略する)から噴射される火炎も、前述したのと同様の特性を有している。
【0084】
図12(a)~(c)に示す実験で用いられた切断対象物72Aは、厚さが80mmの鋼板114を5枚重ねて構成された厚板である。切断対象物72Aの厚みは、
図12(b)、(c)に寸法線を用いて示すように400(=80×5)mmである。この切断対象物72Aの厚み、構造、及び素材は、例えば、リニアック室(リニアックが設置される部屋)を囲む1200mmの厚みのスラブや壁部(RC1200mm)に内包される遮蔽材と同様である。
【0085】
このような切断対象物72Aに対し、
図12(a)に示すように、切断トーチ11Aによる切断を試みた結果、
図12(b)に示すように、切断対象物72Aを貫通する裂開部76Aを形成することができた。したがって、本実施形態に係る切断装置10を用いた切断方法(本実施形態に係る切断方法)は、積層構造の遮蔽材を内包した切断対象物に対しても効果があるといえる。ここで、
図12(a)の画像の下部中央には、白く示されているように火花116が観察された。
図12(a)の画像からも、裂開部76Aが切断対象物72Aを貫通していることが分かる。
【0086】
また、400mm程度の厚さの鋼製の切断対象物72Aであれば、切断トーチ11Aを裂開部76Aの奥に入り込ませなくても、裂開部76Aを貫通させることができた。
図12(b)に「~15mm」の文字と両矢印で示すように、裂開部76の開口幅は15mm以下程度であり、切断対象物72Aの厚さ方向においてほぼ一定となった。
図12(b)より、裂開部76Aの開口幅を過度に拡げことなく、切断対象物72Aを切断できることが分かった。
【0087】
厚板等を内包したコンクリート構造物の切断のための工法として、一般には、プラズマ、レーザー ガス、ウォータージェット、ランスといった各種の工法が存在する。これらの各種の工法のうち、切断速度が比較的速い工法(プラズマ、レーザーなど)は、厚さが40mmを超えるような厚板を切断することは難しかった。
【0088】
また、従来のガス工法やウォータージェット工法は、最大でも150mm程度の厚さまでしか切断できず、150mm程度の厚板を切断する際の切断速度は、1cm/min(分)程度であった。さらに、通常のガス工法では、積層板に対して火炎を貫通させることができず、積層板の切断ができなかった。また、ランス工法では、400mm程度の厚板の切断も可能であるが、切断速度は、2.1cm/min程度であった。さらに、ランス工法により100mm程度の厚板を切断する場合の切断速度は、8cm/min程度であった。
【0089】
これらに対して、本実施形態の切断方法では、100mm程度の厚板を切断する場合の切断速度は、約50cm/minであった。さらに、400mm程度の厚さの厚板を切断する場合の切断速度は、3.5cm/min(=35mm/min)であった。さらに、本実施形態の切断方法では、600mm以上の厚板を切断することができた。正式な実験は未だ行われていないが、これまでの知見から、切断できる厚さは、更に拡大(例えば600mm超から3m(3メートル)程度に拡大)できると考えられる。また、火炎のパラメータ(例えば、混合ガスの噴射速度、パウダーと他のガスの流量等のバランスなど)や、切断トーチ11、11Aの口径等を変更することによっても、切断できる厚さは、更に拡大(例えば600mm超から3m(3メートル)程度に拡大)できると考えられる。
【0090】
このように、本実施形態の切断方法は、切断速度や、切断可能な厚板の厚さにおいて、従来の工法に比べて有利である。切断速度の高速化は、ガス等の使用量の削減に寄与するため、コスト削減や省エネにも有利である。
【0091】
また、本実施形態の切断方法を所定の大きさのコンクリート構造物に適用した場合、切断所要時間(単位:min/m2)は、コンクリート構造物に包含された鋼材の比率(鋼材率)を、0%から20%に順次増やしても変化せず、ほぼ一定であった。これに対し、ワイヤーソーによる切断では、鋼材率を0%、2.5%、7%、17%と順次増やした場合に、切断所要時間は、48(min/m2)、50(min/m2)、80(min/m2)、370(min/m2)と増加した。このように、本実施形態の切断方法は、切断所要時間に関して鋼材率に影響されず、鋼材率に係る優位性を有している。
【0092】
さらに、本実施形態の切断方法により切断対象物72Aを切断する様子をカメラで撮影して熱解析したところ、裂開部76Aのみの色が温度上昇を示し、裂開部76Aの周囲の温度上昇は抑制されていた。したがって、本実施形態の切断方法によれば、裂開部76Aの周囲への熱の影響を抑えながら、切断対象物72Aを切断することができる。
【0093】
以上のように本実施形態に係る切断方法が、積層構造の厚板を良好に切断できる理由としては、次のような説明が可能である。本実施形態に係る切断方法は、燃料ガスやパウダー等を含む混合ガスに点火して火炎を形成している。このため、混合ガスのパウダーが鋼板の間の隙間にも幾分進入し、結果として、高温の火炎が隙間の温度も高める。また、形成される火炎が高温(2000~2500℃以上)であることから、裂開部76の進行先に存在する隙間も加熱され、裂開部76の進行が、隙間の存在によって妨げられるのを防止できる。
【0094】
また、鋼板114は、火炎が接触することで酸化されることから、自ずと裂開部76Aを進化させる機能を発揮する。このため、コンクリートを切断する場合(
図8)のように、切断トーチ11Aを裂開部76Aの奥に入り込ませて、火炎を切断対象部位に接近させなくても、裂開部76Aが深化する。したがって、切断トーチ11Aを移動させなくても、裂開部76Aを貫通させることができる。
【0095】
さらに、同様に裂開部76Aが自ずから進行するような素材であれば、鋼板114に限らず、他の材質の金属板も切断の対象とすることが可能である。
【0096】
以上説明したような実験例から、本実施形態に係る切断方法によれば、積層構造の厚板を良好に切断することができる。したがって、例えば、積層構造の厚板や、リニアック室を区画していたスラブや壁部等のような切断対象物に対しても、効率よく切断を行うことが可能となる。そして、リニアック室の解体を可能とする新規な切断方法を提供することが可能となる。
【0097】
ここで、実験例では厚板である切断対象物72Aを、切断トーチ11Aにより直接的に切断した。しかし、前述したように鋼材率に影響されないことから、切断対象物72Aを内包したコンクリート構造物についても、同様に良好な切断が可能である。
【0098】
また、鋼板を切断する場合には、切断トーチ11Aを移動させなくても裂開部76Aを深化させることが可能であることから、コンクリートを切断する際には切断トーチ11Aを移動させ、火炎が鋼板114に到達して鋼板(遮蔽材)を切断している際には、切断トーチ11Aを停止させる、といった工法により作業を行うことが可能である。
【0099】
なお、切断トーチ11や切断トーチ11Aを移動させるガイド装置は、例えば2軸以上の案内を行うことが可能な多軸のガイド装置(走行台車)であってもよい。
図13に符号120で示すのは多軸ガイド装置である。この多軸ガイド装置120は、直交するXYZ軸方向と、1つの軸(例えば、ガイド装置120と、切断対象物72Bとを結ぶ方向に延びる軸、ここではX軸とする)の周りの回転(X
θ)方向に、切断トーチ11Aを変位させ、切断トーチ11Aの位置や向きを変化させることが可能である。多軸ガイド装置120は、遠隔操作機構を備えており、離れた位置から操作される。
【0100】
多軸ガイド装置120としては、例えば、一般的な3軸+1軸のステージ機構の構成を採用できる。具体的には、各軸毎にモータを駆動源とし、リニアガイドを介して、各軸毎に積層された移動ステージを、ホルダ112とともに直線移動させるものを例示できる。また、ホルダ112の回転には、回転方向用のモータによりホルダ112を回転させることが可能である。なお、
図13は、
図12の実験例とは異なる実験例を示している。
図13の実験例においても、画像の左側に多数の白い点として映っている火花126により、裂開部76Bが切断対象物72Bを貫通していることが分かる。
図3の符号10Bは切断装置を示しており、符号124は積層(5枚)された鋼板を示している。
【0101】
このような多軸ガイド装置120を用いることにより、遠隔地から自在に切断トーチ11Aの位置や向きを変化させて、切断作業を行うことが可能である。なお、多軸ガイド装置120の遠隔操作は、有線通信により行われるものであっても、無線通信により行われるものであってもよい。なお、図示は省略するが、多軸ガイド装置120は、切断トーチ11Aについて、XYZの3軸に係る直線移動と、各直線軸を中心とした回転移動(Xθ、Yθ、Zθ)の6軸の変位を可能としたものであってもよい。
【0102】
また、各種のガイド装置(リニアガイド装置110、リニアガイド装置110など)を用い、切断対象物(切断対象物72A、72Bなど)の切断状態や切断状況を、目視や、画像観察、又は、コンピュータ機器による画像処理等により確認しながら、ガイド装置に前進、停止、後退等の動作を行わせることが可能である。そして、ガイド装置の前進、停止、後退等の動作とともに、切断トーチ(切断トーチ11、切断トーチ11Aなど)によるパウダー等の噴射のON/OFFを行って、切断や解体を行うことが可能である。このようにすることで、切断対象物の切断や解体を、切断対象物の状態や状況に合わせて、効率よく行うことが可能となる。
【0103】
<実施形態から抽出できる発明>
本実施形態からは、以下のような発明を抽出することができる。
(1)切断対象物(切断対象物72、72A、72Bなど)を切断するための切断トーチ(切断トーチ11、11Aなど)と、
少なくとも燃料ガス及びパウダーを前記切断トーチに供給するための供給ホース(供給ホース18など)と、を備え、
前記切断トーチは、管状の本体部(本体部14など)と、前記本体部の先端部に配置され、少なくとも前記燃料ガス及び前記パウダーを噴射する火口部(火口16など)と、を有し、
前記本体部は、前記火口部が取り付けられる火口受け部(火口受け51など)を有し、
前記火口部と前記火口受け部は、一方のテーパ部(火口のテーパ部46部など)を他方のテーパ部(火口受け51のテーパ部54など)に差し込んで接続されていることを特徴とする切断装置。
(2)前記火口受け部には、少なくとも、前記燃料ガスを流通させるための燃料ガス用導入通路(燃料ガス用導入通路62など)と、前記パウダーを流通させるためのパウダー用導入通路(パウダー用導入通路64など)と、が形成され、
前記パウダー用導入通路の一部は、前記テーパ部に開口する接続孔(パウダー用接続孔69など)となっていることを特徴とする上記(1)に記載の切断装置。
(3)前記パウダー用導入通路が、前記火口受け部に少なくとも1つ形成されていることを特徴とする上記(2)に記載の切断装置。
(4)前記火口部が、前記パウダーを受け入れるパウダー受け入れ部(パウダー用環状溝44など)を有し、
前記接続孔が、前記パウダー受け入れ部に面して開口していることを特徴とする上記(2)又は(3)に記載の切断装置。
(5)切断対象物(切断対象物72、72A、72Bなど)を切断するための切断トーチ(切断トーチ11、11Aなど)と、
少なくとも燃料ガス及びパウダーを前記切断トーチに供給するための供給ホース(供給ホース18、供給ホース18Aなど)と、を備えた切断装置(切断装置10、10Aなど)が用いられ、
前記切断対象物は、少なくとも、鋼製の厚板を含んで構成されており、
前記切断トーチから噴射される火炎により前記切断対象物を切断する切断方法。
(6)前記厚板は複数の鋼板を積層して形成されている、上記(5)に記載の切断方法。
(7)前記厚板の合計の厚さは100mm以上3m以下である、上記(5)又は(6)に記載の切断方法。
(8)前記切断トーチは、
少なくとも前記燃料ガス及び前記パウダーを噴射する火口部(火口16など)と、
前記火口部が取り付けられる火口受け部(火口受け51など)と、を備え、
前記火口受け部に、複数のパウダー用導入通路(2つのパウダー用導入通路64)が設けられ、
前記パウダーは、前記複数のパウダー用導入通路を介して前記火口部に導入され、前記火口部の複数のパウダー用噴射口(パウダー用噴射口34など)から噴射される、上記(6)に記載の切断方法。
(9)上記(1)に記載の切断装置における前記切断トーチを保持して少なくとも1軸方向に案内するガイド装置(リニアガイド装置110、多軸ガイド装置120など)。
(10)ガイド装置(リニアガイド装置110、多軸ガイド装置120など)により、前記切断トーチを保持して少なくとも1軸方向に案内する上記(5)又は(6)に記載の切断方法。
【0104】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で多くの変形が可能である。そして、説明した実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【0105】
切断トーチ11は、作業者70が手で把持可能なものであるが、切断トーチ11の支持は、必ずしも、作業者70が手で直接把持することに限られるものではない。例えば、切断トーチ11の把持装置(図示略)を設け、この把持装置により切断トーチ11を支持することも可能である。把持装置としては、比較的軽量な簡易タイプ(ホルダタイプやスタンドタイプ、ハンドルタイプなど)のものや、重機への装着が可能な重機アタッチメント等を例示できる。また、前述したリニアガイド装置110(
図12(a)、多軸ガイド装置120)のように、自動で切断トーチ11や切断トーチ11Aを案内することも可能である。
【符号の説明】
【0106】
10、10A 切断装置
11、11A 切断トーチ
14 本体部
16 火口
18、18A 供給ホース
20 燃料ガス供給管
21a 切断酸素供給管
21b 予熱酸素供給管
22 パウダー供給管
23 冷却水供給管
31 切断酸素用噴射口
32 燃料ガス用噴射口
33 予熱酸素用噴射口
34 パウダー用噴射口
42 燃料ガス用環状溝
43 予熱酸素用環状溝
44 パウダー用環状溝
46 テーパ部
51 火口受け
53 先端面
54 テーパ部
61 切断酸素用導入通路
62 燃料ガス用導入通路
63 予熱酸素用導入通路
64 パウダー用導入通路
67 燃料ガス用接続孔
68 予熱酸素用接続孔
69 パウダー用接続孔
72、72A、72B 切断対象物
110 リニアガイド装置
112 ホルダ
114 鋼板
120 多軸ガイド装置