(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114445
(43)【公開日】2023-08-17
(54)【発明の名称】ロードノイズキャンセレーションシェーピングフィルタ
(51)【国際特許分類】
G10K 11/178 20060101AFI20230809BHJP
【FI】
G10K11/178 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010740
(22)【出願日】2023-01-27
(31)【優先権主張番号】17/592,861
(32)【優先日】2022-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】512168283
【氏名又は名称】ハーマン インターナショナル インダストリーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】フェン タオ
(72)【発明者】
【氏名】ケビン ジェイ. バスター
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061FF02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ロードノイズキャンセレーション(RNC)システム及び方法を提供する。
【解決手段】アンチノイズ信号に応答して車両102の客室内にアンチノイズ音を発するための少なくとも1つのラウドスピーカ110と、コントローラ130と、を備え、広帯域適応型フィードフォワードアクティブノイズキャンセレーション(ANC)システム106と統合するRNCシステム100であって、、コントローラは、道路誘起ノイズを示すノイズ信号x(n)と、客室内のノイズ及びアンチノイズ音を示す誤差信号e(n)との間のコヒーレンス値を決定し、コヒーレンス値に基づいてノイズリダクション値を推定し、推定したノイズリダクション値に基づいてノイズ信号と誤差信号をフィルタリングし、フィルタリングされたノイズ信号及びフィルタリングされた誤差信号に基づいてアンチノイズ信号Y(n)を生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロードノイズキャンセレーション(RNC)システムであって、
アンチノイズ信号に応答して車両の客室内にアンチノイズ音を発するための少なくとも1つのラウドスピーカと、
コントローラであって、
道路誘起ノイズを示すノイズ信号と、前記客室内のノイズ及び前記アンチノイズ音を示す誤差信号との間のコヒーレンス値を決定し、
前記コヒーレンス値に基づいてノイズリダクション値を推定し、
前記推定されたノイズリダクション値に基づいて前記ノイズ信号及び前記誤差信号をフィルタリングし、
前記フィルタリングされたノイズ信号及び前記フィルタリングされた誤差信号に基づいて前記アンチノイズ信号を生成する、
ようにプログラムされた前記コントローラと、
を備える、前記RNCシステム。
【請求項2】
前記コントローラが、
非線形最小二乗ソルバーを使用して、前記推定されたノイズリダクション値に基づいてシェーピングフィルタパラメータを決定し、
前記シェーピングフィルタパラメータを使用して、前記ノイズ信号及び前記誤差信号をフィルタリングする、
ようにさらにプログラムされている、請求項1に記載のRNCシステム。
【請求項3】
前記コントローラが、
前記推定されたノイズリダクション値に基づく目標値で目的関数を初期化し、
前記非線形最小二乗ソルバーを使用して、前記目的関数に基づいて前記シェーピングフィルタパラメータを決定する、
ようにさらにプログラムされている、請求項2に記載のRNCシステム。
【請求項4】
前記コントローラが、
人工知能を使用して、前記フィルタリングされたノイズ信号及び前記フィルタリングされた誤差信号を平滑化し、
前記平滑化されフィルタリングされたノイズ信号及び前記平滑化されフィルタリングされた誤差信号に基づいて前記アンチノイズ信号を生成する、
ようにさらにプログラムされている、請求項1に記載のRNCシステム。
【請求項5】
前記コントローラが、
前記推定されたノイズリダクション値に基づいて、少なくとも1つのピークフィルタを選択し、
前記少なくとも1つのピークフィルタを使用して、前記ノイズ信号及び前記誤差信号をフィルタリングする、
ようにさらにプログラムされている、請求項1に記載のRNCシステム。
【請求項6】
前記コントローラが、周波数範囲にわたる前記推定されたノイズリダクション値に基づいて、前記ノイズ信号及び前記誤差信号をフィルタリングするようにさらにプログラムされている、請求項1に記載のRNCシステム。
【請求項7】
前記客室内の前記ノイズ及び前記アンチノイズ音を測定し、前記誤差信号を提供するための、少なくとも1つのマイクロフォンをさらに備える、請求項1に記載のRNCシステム。
【請求項8】
前記客室内の前記道路誘起ノイズを示す前記ノイズ信号を提供するための振動センサをさらに備える、請求項1に記載のRNCシステム。
【請求項9】
前記コントローラが、
前記コヒーレンス値を決定し、前記ノイズリダクション値を推定するための適応型フィルタコントローラと、
前記アンチノイズ信号を生成するための制御可能フィルタと、
をさらに備える、請求項1に記載のRNCシステム。
【請求項10】
ロードノイズキャンセレーション(RNC)シェーピングフィルタを自動的に調整するための方法であって、
アンチノイズ信号に応答して車両の客室内にアンチノイズ音を発することと、
前記客室内の道路誘起ノイズを示すノイズ信号を受信することと、
前記客室内のノイズ及び前記アンチノイズ音を示す誤差信号を受信することと、
前記ノイズ信号と前記誤差信号との間のコヒーレンス値を決定することと、
前記コヒーレンス値に基づいてノイズリダクション値を推定することと、
前記推定されたノイズリダクション値に基づいて前記ノイズ信号及び前記誤差信号をフィルタリングすることと、
前記フィルタリングされたノイズ信号及び前記フィルタリングされた誤差信号に基づいて前記アンチノイズ信号を生成することと、
を含む、前記方法。
【請求項11】
前記推定されたノイズリダクション値に基づく目標値で目的関数を初期化することと、
非線形最小二乗ソルバーを使用して、前記目的関数に基づいてシェーピングフィルタパラメータを決定することと、
前記シェーピングフィルタパラメータを使用して、前記ノイズ信号及び前記誤差信号をフィルタリングすることと、
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
人工知能を使用して、前記フィルタリングされたノイズ信号及び前記フィルタリングされた誤差信号を平滑化することと、
前記平滑化されフィルタリングされたノイズ信号及び前記平滑化されフィルタリングされた誤差信号に基づいて前記アンチノイズ信号を生成することと、
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記推定されたノイズリダクション値に基づいて、少なくとも1つのピークフィルタを選択することと、
前記少なくとも1つのピークフィルタを使用して、前記ノイズ信号及び前記誤差信号をフィルタリングすることと、
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
ロードノイズキャンセレーション(RNC)システムであって、
アンチノイズ信号に応答して車両の客室内にアンチノイズ音を発するための少なくとも1つのラウドスピーカと、
前記客室内の前記ノイズ及び前記アンチノイズ音を示す誤差信号を提供するための少なくとも1つのマイクロフォンと、
コントローラであって、
道路誘起ノイズを示すノイズ信号と、前記客室内のノイズ及び前記アンチノイズ音を示す誤差信号との間のコヒーレンス値を決定し、
前記コヒーレンス値に基づいてノイズリダクション値を推定し、
前記推定されたノイズリダクション値に基づいて前記ノイズ信号及び前記誤差信号のうちの少なくとも1つをフィルタリングし、
前記フィルタリングされたノイズ信号及び前記フィルタリングされた誤差信号のうちの前記少なくとも1つに基づいて前記アンチノイズ信号を生成する、
ようにプログラムされた、前記コントローラと、
を備える、前記RNCシステム。
【請求項15】
前記コントローラが、
非線形最小二乗ソルバーを使用して、前記推定されたノイズリダクション値に基づいてシェーピングフィルタパラメータを決定し、
前記シェーピングフィルタパラメータを使用して、前記ノイズ信号及び前記誤差信号のうちの少なくとも1つをフィルタリングする、
ようにさらにプログラムされている、請求項14に記載のRNCシステム。
【請求項16】
前記コントローラが、
人工知能を使用して、前記フィルタリングされたノイズ信号及び前記フィルタリングされた誤差信号のうちの前記少なくとも1つを平滑化し、
前記平滑化されフィルタリングされたノイズ信号及び前記平滑化されフィルタリングされた誤差信号のうちの前記少なくとも1つに基づいて前記アンチノイズ信号を生成する、
ようにさらにプログラムされている、請求項14に記載のRNCシステム。
【請求項17】
前記コントローラが、
前記推定されたノイズリダクション値に基づいて、少なくとも1つのピークフィルタを選択し、
前記少なくとも1つのピークフィルタを使用して、前記ノイズ信号及び前記誤差信号をフィルタリングする、
ようにさらにプログラムされている、請求項14に記載のRNCシステム。
【請求項18】
前記コントローラが、周波数範囲にわたる前記推定されたノイズリダクション値に基づいて、前記ノイズ信号及び前記誤差信号をフィルタリングするようにさらにプログラムされている、請求項14に記載のRNCシステム。
【請求項19】
前記客室内の前記道路誘起ノイズを示す前記ノイズ信号を提供するための振動センサをさらに備える、請求項14に記載のRNCシステム。
【請求項20】
前記コントローラが、
前記コヒーレンス値を決定し、前記ノイズリダクション値を推定するための適応型フィルタコントローラと、
前記アンチノイズ信号を生成するための制御可能フィルタと、
をさらに備える、請求項14に記載のRNCシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アクティブノイズキャンセレーションシステムを対象とし、より具体的には、ロードノイズキャンセレーションシェーピングフィルタを自動的に調整するアクティブノイズキャンセレーションシステムを対象とする。
【背景技術】
【0002】
アクティブノイズキャンセレーション(ANC)システムは、フィードフォワード及び/またはフィードバック構造を使用して望ましくないノイズを減衰させて、車室内などのリスニング環境内で望ましくないノイズを適応的に除去する。ANCシステムは、一般に、キャンセレーション音波を生成して不要な可聴ノイズを破壊的に干渉することにより、不要なノイズをキャンセルまたは低減する。破壊的な干渉は、ノイズと「アンチノイズ」(ノイズと大きさはほぼ同じで位相が逆)が場所の音圧レベル(SPL)を低下させると生じる。車室内のリスニング環境では、望ましくないノイズの潜在的な発生源は、エンジン、排気システム、車両のタイヤと車両が走行する路面との相互作用、及び/または車両の他の部分の振動によって放射される音からのものである。したがって、不要なノイズは、車両の速度、道路状況、及び動作状態によって異なる。
【0003】
ロードノイズキャンセレーション(RNC)システムは、車室内の望ましくないロードノイズを最小限に抑えるために、車両に実装された特定のANCシステムである。RNCシステムは、振動センサを使用して、不要な可聴ロードノイズにつながるタイヤと道路の境界面から発生する道路誘起振動を感知する。室内のこの不要なロードノイズは、ラウドスピーカを使用して、低減されるノイズとは理想的には逆位相で大きさが同一の音波を1人または複数の聴取者の耳で生成することによって、キャンセルされるかまたはレベルが低減される。このようなロードノイズをキャンセルすることで、乗員の乗り心地が向上し、自動車メーカーは軽量の素材を使用できるようになり、それによってエネルギー消費を減らし、排出ガスが削減される。
【0004】
RNCなどの車両ベースのANCシステムは、通常、最小平均二乗(LMS)適応型フィードフォワードシステムであり、ノイズ入力(例えば、振動センサからの加速度入力)と、車両の室内の様々な位置にある物理的なマイクロフォンの信号とに基づいて、Wフィルタを継続的に適応させる。LMSベースのフィードフォワードANCシステムの機能及び対応するアルゴリズムは、システム内の各物理マイクロフォンと各アンチノイズラウドスピーカ間のインパルス応答または二次経路の記憶である。二次経路は、アンチノイズを生成するラウドスピーカと物理的マイクロフォンの間の伝達関数であり、基本的に、電気的なアンチノイズ信号が、どのようにラウドスピーカから放射された音になり、車室内を通って物理的マイクロフォンに伝わり、マイクロフォン出力信号になるかを特徴付けている。
【0005】
リモートまたは仮想マイクロフォン技術は、ANCシステムが、1つまたは複数の実際の物理的マイクロフォンから受信した誤差信号に基づいて、実際の物理的マイクロフォンが配置されていない場所にある架空または仮想マイクロフォンによって生成された誤差信号を推定する技術である。この仮想マイクロフォン技術は、聴取者の耳でのノイズキャンセレーションを、実際にそこに物理的マイクロフォンが配置されていない場合でも、向上させることができる。
【0006】
RNCシステムが適応型LMSシステムであることが多いため、RNCシステムはWフィルタを更新して加速度センサ信号からアンチノイズを生成し、誤差マイクロフォン信号のエネルギーを最小限に抑えて、車室内のロードノイズを静かにする。別の言い方をすれば、LMS技術の数学により、マイクロフォン信号のエネルギーが最小化され、これにより車両内で聞こえる可聴ノイズスペクトルが設定される。このように、車両のバックグラウンド(ロード)ノイズフロアは、基本的に既存の技術を使用して調整することはできない。これは、(ロード)ノイズフロアの「周波数応答」がLMSシステムによって自動的に設定され、誤差マイクロフォン信号のエネルギーが最小限に抑えられるためである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態では、アンチノイズ信号に応答して車両の客室内にアンチノイズ音を発するための少なくとも1つのラウドスピーカと、コントローラとを備える、ロードノイズキャンセレーション(RNC)システムが提供される。コントローラは、道路誘起ノイズを示すノイズ信号と、客室内のノイズ及びアンチノイズ音を示す誤差信号との間のコヒーレンス値を決定し、コヒーレンス値に基づいてノイズリダクション値を推定し、推定されたノイズリダクション値に基づいてノイズ信号と誤差信号をフィルタリングし、フィルタリングされたノイズ信号及びフィルタリングされた誤差信号に基づいてアンチノイズ信号を生成する、ようにプログラムされている。
【0008】
別の実施形態では、ロードノイズキャンセレーション(RNC)シェーピングフィルタを自動的に調整するための方法が提供される。アンチノイズ信号に応答して、アンチノイズ音が車両の客室内に発される。客室内の道路誘起ノイズを示すノイズ信号が受信される。客室内のノイズ及びアンチノイズ音を示す誤差信号が受信される。ノイズ信号と誤差信号との間のコヒーレンス値が決定される。コヒーレンス値に基づいてノイズリダクション値を推定する。ノイズ信号と誤差信号は、推定されたノイズリダクション値に基づいてフィルタリングされる。アンチノイズ信号は、フィルタリングされたノイズ信号及びフィルタリングされた誤差信号に基づいて生成される。
【0009】
さらに別の実施形態では、ロードノイズキャンセレーション(RNC)システムは、アンチノイズ信号に応答して車両の客室内にアンチノイズ音を発する少なくとも1つのラウドスピーカと、客室内のノイズ及びアンチノイズ音を示す誤差信号を提供するための少なくとも1つのマイクロフォンと、コントローラとを備える。コントローラは、道路誘起ノイズを示すノイズ信号と、客室内のノイズ及びアンチノイズ音を示す誤差信号との間のコヒーレンス値を決定し、コヒーレンス値に基づいてノイズリダクション値を推定し、推定されたノイズリダクション値に基づいてノイズ信号及び誤差信号のうち少なくとも1つをフィルタリングし、フィルタリングされたノイズ信号及びフィルタリングされた誤差信号のうち少なくとも1つに基づいてアンチノイズ信号を生成する、ようにプログラムされている。
例えば、本願は以下の項目を提供する。
(項目1)
ロードノイズキャンセレーション(RNC)システムであって、
アンチノイズ信号に応答して車両の客室内にアンチノイズ音を発するための少なくとも1つのラウドスピーカと、
コントローラであって、
道路誘起ノイズを示すノイズ信号と、上記客室内のノイズ及び上記アンチノイズ音を示す誤差信号との間のコヒーレンス値を決定し、
上記コヒーレンス値に基づいてノイズリダクション値を推定し、
上記推定されたノイズリダクション値に基づいて上記ノイズ信号及び上記誤差信号をフィルタリングし、
上記フィルタリングされたノイズ信号及び上記フィルタリングされた誤差信号に基づいて上記アンチノイズ信号を生成する、
ようにプログラムされた上記コントローラと、
を備える、上記RNCシステム。
(項目2)
上記コントローラが、
非線形最小二乗ソルバーを使用して、上記推定されたノイズリダクション値に基づいてシェーピングフィルタパラメータを決定し、
上記シェーピングフィルタパラメータを使用して、上記ノイズ信号及び上記誤差信号をフィルタリングする、
ようにさらにプログラムされている、上記項目に記載のRNCシステム。
(項目3)
上記コントローラが、
上記推定されたノイズリダクション値に基づく目標値で目的関数を初期化し、
上記非線形最小二乗ソルバーを使用して、上記目的関数に基づいて上記シェーピングフィルタパラメータを決定する、
ようにさらにプログラムされている、上記項目のいずれか一項に記載のRNCシステム。
(項目4)
上記コントローラが、
人工知能を使用して、上記フィルタリングされたノイズ信号及び上記フィルタリングされた誤差信号を平滑化し、
上記平滑化されフィルタリングされたノイズ信号及び上記平滑化されフィルタリングされた誤差信号に基づいて上記アンチノイズ信号を生成する、
ようにさらにプログラムされている、上記項目のいずれか一項に記載のRNCシステム。
(項目5)
上記コントローラが、
上記推定されたノイズリダクション値に基づいて、少なくとも1つのピークフィルタを選択し、
上記少なくとも1つのピークフィルタを使用して、上記ノイズ信号及び上記誤差信号をフィルタリングする、
ようにさらにプログラムされている、上記項目のいずれか一項に記載のRNCシステム。
(項目6)
上記コントローラが、周波数範囲にわたる上記推定されたノイズリダクション値に基づいて、上記ノイズ信号及び上記誤差信号をフィルタリングするようにさらにプログラムされている、上記項目のいずれか一項に記載のRNCシステム。
(項目7)
上記客室内の上記ノイズ及び上記アンチノイズ音を測定し、上記誤差信号を提供するための、少なくとも1つのマイクロフォンをさらに備える、上記項目のいずれか一項に記載のRNCシステム。
(項目8)
上記客室内の上記道路誘起ノイズを示す上記ノイズ信号を提供するための振動センサをさらに備える、上記項目のいずれか一項に記載のRNCシステム。
(項目9)
上記コントローラが、
上記コヒーレンス値を決定し、上記ノイズリダクション値を推定するための適応型フィルタコントローラと、
上記アンチノイズ信号を生成するための制御可能フィルタと、
をさらに備える、上記項目のいずれか一項に記載のRNCシステム。
(項目10)
ロードノイズキャンセレーション(RNC)シェーピングフィルタを自動的に調整するための方法であって、
アンチノイズ信号に応答して車両の客室内にアンチノイズ音を発することと、
上記客室内の道路誘起ノイズを示すノイズ信号を受信することと、
上記客室内のノイズ及び上記アンチノイズ音を示す誤差信号を受信することと、
上記ノイズ信号と上記誤差信号との間のコヒーレンス値を決定することと、
上記コヒーレンス値に基づいてノイズリダクション値を推定することと、
上記推定されたノイズリダクション値に基づいて上記ノイズ信号及び上記誤差信号をフィルタリングすることと、
上記フィルタリングされたノイズ信号及び上記フィルタリングされた誤差信号に基づいて上記アンチノイズ信号を生成することと、
を含む、上記方法。
(項目11)
上記推定されたノイズリダクション値に基づく目標値で目的関数を初期化することと、
非線形最小二乗ソルバーを使用して、上記目的関数に基づいてシェーピングフィルタパラメータを決定することと、
上記シェーピングフィルタパラメータを使用して、上記ノイズ信号及び上記誤差信号をフィルタリングすることと、
をさらに含む、上記項目に記載の方法。
(項目12)
人工知能を使用して、上記フィルタリングされたノイズ信号及び上記フィルタリングされた誤差信号を平滑化することと、
上記平滑化されフィルタリングされたノイズ信号及び上記平滑化されフィルタリングされた誤差信号に基づいて上記アンチノイズ信号を生成することと、
をさらに含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
上記推定されたノイズリダクション値に基づいて、少なくとも1つのピークフィルタを選択することと、
上記少なくとも1つのピークフィルタを使用して、上記ノイズ信号及び上記誤差信号をフィルタリングすることと、
をさらに含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
ロードノイズキャンセレーション(RNC)システムであって、
アンチノイズ信号に応答して車両の客室内にアンチノイズ音を発するための少なくとも1つのラウドスピーカと、
上記客室内の上記ノイズ及び上記アンチノイズ音を示す誤差信号を提供するための少なくとも1つのマイクロフォンと、
コントローラであって、
道路誘起ノイズを示すノイズ信号と、上記客室内のノイズ及び上記アンチノイズ音を示す誤差信号との間のコヒーレンス値を決定し、
上記コヒーレンス値に基づいてノイズリダクション値を推定し、
上記推定されたノイズリダクション値に基づいて上記ノイズ信号及び上記誤差信号のうちの少なくとも1つをフィルタリングし、
上記フィルタリングされたノイズ信号及び上記フィルタリングされた誤差信号のうちの上記少なくとも1つに基づいて上記アンチノイズ信号を生成する、
ようにプログラムされた、上記コントローラと、
を備える、上記RNCシステム。
(項目15)
上記コントローラが、
非線形最小二乗ソルバーを使用して、上記推定されたノイズリダクション値に基づいてシェーピングフィルタパラメータを決定し、
上記シェーピングフィルタパラメータを使用して、上記ノイズ信号及び上記誤差信号のうちの少なくとも1つをフィルタリングする、
ようにさらにプログラムされている、上記項目に記載のRNCシステム。
(項目16)
上記コントローラが、
人工知能を使用して、上記フィルタリングされたノイズ信号及び上記フィルタリングされた誤差信号のうちの上記少なくとも1つを平滑化し、
上記平滑化されフィルタリングされたノイズ信号及び上記平滑化されフィルタリングされた誤差信号のうちの上記少なくとも1つに基づいて上記アンチノイズ信号を生成する、
ようにさらにプログラムされている、上記項目のいずれか一項に記載のRNCシステム。
(項目17)
上記コントローラが、
上記推定されたノイズリダクション値に基づいて、少なくとも1つのピークフィルタを選択し、
上記少なくとも1つのピークフィルタを使用して、上記ノイズ信号及び上記誤差信号をフィルタリングする、
ようにさらにプログラムされている、上記項目のいずれか一項に記載のRNCシステム。
(項目18)
上記コントローラが、周波数範囲にわたる上記推定されたノイズリダクション値に基づいて、上記ノイズ信号及び上記誤差信号をフィルタリングするようにさらにプログラムされている、上記項目のいずれか一項に記載のRNCシステム。
(項目19)
上記客室内の上記道路誘起ノイズを示す上記ノイズ信号を提供するための振動センサをさらに備える、上記項目のいずれか一項に記載のRNCシステム。
(項目20)
上記コントローラが、
上記コヒーレンス値を決定し、上記ノイズリダクション値を推定するための適応型フィルタコントローラと、
上記アンチノイズ信号を生成するための制御可能フィルタと、
をさらに備える、上記項目のいずれか一項に記載のRNCシステム。
(摘要)
アンチノイズ信号に応答して車両の客室内にアンチノイズ音を発するための少なくとも1つのラウドスピーカと、コントローラとを備える、ロードノイズキャンセレーション(RNC)システムが提供される。コントローラは、道路誘起ノイズを示すノイズ信号と、客室内のノイズ及びアンチノイズ音を示す誤差信号との間のコヒーレンス値を決定し、コヒーレンス値に基づいてノイズリダクション値を推定し、推定されたノイズリダクション値に基づいてノイズ信号と誤差信号をフィルタリングし、フィルタリングされたノイズ信号及びフィルタリングされた誤差信号に基づいてアンチノイズ信号を生成する、ようにプログラムされている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】1つまたは複数の実施形態による、ロードノイズキャンセレーション(RNC)システムを含むアクティブノイズキャンセレーション(ANC)システムを有する車両の概略図である。
【0011】
【
図2】R加速度計ノイズ信号とLラウドスピーカ信号を含むようにスケーリングされたRNCシステムの関連部分を示すサンプル概略図である。
【0012】
【
図3】1つまたは複数の実施形態による、シェーピングフィルタを含むRNCシステムのサンプル概略ブロック図である。
【0013】
【
図4】RNCシェーピングフィルタを自動的に調整するための方法を示すフローチャートである。
【0014】
【
図5】推定最大ノイズリダクション(EMNR)値を示すグラフである。
【0015】
【
図6】1つまたは複数の実施形態による、
図3のRNCシェーピングフィルタの周波数応答を示すグラフである。
【0016】
【
図7】1つまたは複数の実施形態による、10Hzから400Hzの間の
図3のRNCシェーピングフィルタの性能を示すグラフである。
【0017】
【
図8】車両内の第1の位置における、RNCシェーピングを伴う、及び伴わない、
図3のRNCシステムのノイズキャンセレーション性能を示すグラフである。
【0018】
【
図9】
図8のノイズキャンセレーション性能に基づくRNCシェーピングフィルタの例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
必要に応じて、本開示の詳細な実施形態が本明細書中に開示されるが、開示された実施形態は、様々なかつ代替の形式で具現化され得る開示の単なる例であることが理解されよう。図は必ずしも縮尺通りではなく、一部の特徴は、特定の構成要素の詳細を示すために誇張または最小化される場合がある。したがって、本明細書に開示される具体的な構造的及び機能的詳細は、限定的と解釈されるべきではなく、単に、代表的な基礎として解釈されるべきである。
【0020】
図1を参照すると、ロードノイズキャンセレーション(RNC)システムが、1つまたは複数の実施形態に従って示され、全般的に数字100によって表される。RNCシステム100は、1つまたは複数の振動センサ104を有する車両102内に示されている。振動センサ104は、車両102全体に配置され、車両のサスペンション、サブフレーム、ならびに他の車軸及びシャーシコンポーネントの振動挙動を監視する。RNCシステム100は、1つまたは複数の物理的マイクロフォン108を使用して振動センサ104からの信号を適応的にフィルタリングすることによってアンチノイズを生成する広帯域適応型フィードフォワードアクティブノイズキャンセレーション(ANC)システム106と統合することができる。ANCシステム106は信号を評価し、RNCシェーピングフィルタを自動的に調整する。次いで、アンチノイズ信号は、1つまたは複数のラウドスピーカ110を通じて再生されて音にすることができる。S(z)は、単一ラウドスピーカ110と単一マイクロフォン108との間の伝達関数を表す。
【0021】
図1は、単一の振動センサ104、マイクロフォン108、及びラウドスピーカ110を簡略化の目的で示しているだけであるが、典型的なRNCシステムは複数の振動センサ104(例えば、10個以上)、マイクロフォン108(例えば、4個から6個)、及びラウドスピーカ110(例えば、4個から8個)を使用することに注意されたい。ANCシステム106はまた、1つまたは複数の実施形態による、車両102の乗員に最適化されたアンチノイズ信号(複数可)を適応させるために使用される1つまたは複数の仮想マイクロフォン112、114を含み得る。
【0022】
振動センサ104は、加速度計、力ゲージ、受振器、線形可変差動変圧器、歪みゲージ、及びロードセルを含むことができるが、これらに限定されない。例えば、加速度計は、出力信号の振幅が加速度に比例するデバイスである。RNCシステムでは、様々な加速度計を使用できる。これらには、通常は直交する1、2、及び3方向の振動に敏感な加速度計が含まれる。これらの多軸加速度計は、通常、そのX方向、Y方向、及びZ方向で感知される振動用に個別の電気出力(またはチャネル)を備えている。したがって、単軸及び多軸加速度計は、振動センサ104として使用して、加速度の大きさと位相を検出することができ、方向、運動、及び振動を感知するためにも使用することができる。
【0023】
路面118上を移動する車輪116から発生するノイズと振動は、サスペンションデバイス119に機械的に結合された振動センサ104または車両102のシャーシコンポーネントの1つまたは複数によって感知され得る。振動センサ104は、基準信号、または検出された道路誘起振動を表すノイズ信号x(n)を出力することができる。複数の振動センサが可能であり、それらの信号を別々に使用することも、組み合わせることもできることに留意されたい。特定の実施形態では、振動センサの代わりにマイクロフォンを使用して、車輪116と路面118との相互作用から生成されるノイズを示すノイズ信号x(n)を出力することができる。ノイズ信号x(n)は、モデル化された伝達特性
【数1】
でフィルタ処理され得、これは、二次経路フィルタ120によって二次経路(すなわち、アンチノイズラウドスピーカ110と物理的マイクロフォン108との間の伝達関数)を推定する。
【0024】
車輪116と路面118の相互作用に起因するロードノイズも、機械的及び/または音響的に、客室内に伝達され、車両102内の1つまたは複数のマイクロフォン108によって受信される。1つまたは複数のマイクロフォン108は、例えば、車両102のヘッドライナーに配置されてもよいし、または後部座席122に座っている乗員など、車両102の内部の乗員が聞く音響ノイズ場を感知する他の適切な場所に配置されてもよい。車輪116と路面118の相互作用に起因するロードノイズは、一次経路(すなわち、実際のノイズ源と物理的マイクロフォンとの間の伝達関数)を表す伝達特性P(z)に従ってマイクロフォン108に伝達される。
【0025】
マイクロフォン108は、ノイズ及びアンチノイズを含むマイクロフォン108によって検出された車両102の室内に存在する音を表す誤差信号e(n)を出力することができる。RNCシステム100において、制御可能フィルタ126の適応型伝達特性W(z)は、適応型フィルタコントローラ128によって制御され、これは二次経路フィルタ120によってモデル化された伝達特性
【数2】
でフィルタリングされた誤差信号e(n)及びノイズ信号x(n)に基づく最小二乗平均(LMS)アルゴリズムに従って動作することができる。制御可能フィルタ126はしばしばWフィルタと呼ばれる。アンチノイズ信号Y(n)は、1つまたは複数の制御可能フィルタ126及びノイズ信号、またはノイズ信号x(n)の組み合わせによって生成され、ラウドスピーカ110に提供され得る。アンチノイズ信号Y(n)は、理想的には、ラウドスピーカ110を通して再生されると、乗員の耳及びマイクロフォン108の近くで、車室内の乗員に聞こえるロードノイズと実質的に位相が逆で、振幅が同一のアンチノイズが生成されるような波形を有する。ラウドスピーカ110からのアンチノイズは、マイクロフォン108の近くの車室内のロードノイズと結合し、この場所でのロードノイズ誘起音圧レベル(SPL)の低減をもたらすことができる。特定の実施形態では、RNCシステム100は、音響エネルギーセンサ、音響強度センサ、または音響粒子速度または加速度センサ(図示せず)などの客室内の他の音響センサからセンサ信号を受信して、誤差信号e(n)を生成することができる。
【0026】
車両102が作動している間、コントローラ130は、振動センサ104及びマイクロフォン108からのデータを収集及び処理することができる。コントローラ130は、プロセッサ132及びストレージ134を含む。プロセッサ132は、データを収集及び処理して、車両102によって使用されるデータ及び/またはパラメータを含むデータベースまたはマップを構築する。収集されたデータは、車両102による将来の使用のために、ストレージ134にローカルに、またはクラウドに格納され得る。ストレージ134にローカルに格納するのに有用であり得るRNCシステム100に関連するデータのタイプの例には、加速度計またはマイクロフォンのスペクトルまたは時間依存信号、スペクトル及び、コヒーレンスまたは推定最大ノイズキャンセレーションデータなどの時間依存特性を含む他の加速度特性が含まれるが、これらに限定されない。所定の、またはオンラインで計算されたピーク、シェルフ、またはその他のシェーピングフィルタも格納できる。
【0027】
コントローラ130は単一のコントローラとして示されているが、それは複数のコントローラを含んでもよく、または適応型フィルタコントローラ128などの1つまたは複数の他のコントローラ内のソフトウェアコードとして具現化されてもよい。コントローラ130は一般に、任意の数のマイクロプロセッサ、ASIC、IC、メモリ(例えば、フラッシュ、ROM、RAM、EPROM及び/またはEEPROM)及びソフトウェアコードを含み、互いに組み合わせて動作し、一連の操作を実行する。このようなハードウェア及び/またはソフトウェアは、特定の機能を実行するためにモジュールにグループ化されてもよい。本明細書に説明するコントローラまたはデバイスの任意の1つまたは複数は、様々なプログラミング言語及び/または技術を使用し、作成されたコンピュータプログラムからコンパイルまたは解釈され得るコンピュータ実行可能命令を含む。一般に、プロセッサ、例えばプロセッサ132は、例えばメモリ、例えばストレージ134、コンピュータ可読媒体などから命令を受け取り、命令を実行する。プロセシングユニットは、ソフトウェアプログラムの命令を実行することが可能な非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含む。コンピュータ可読記憶媒体は、それらに限定されないが、電子記憶デバイス、磁気記憶デバイス、光学記憶デバイス、電磁気記憶デバイス、半導体記憶デバイス、またはそれらの任意の適切な組み合わせであってもよい。コントローラ130はまた、1つまたは複数の実施形態によれば、メモリ内に格納される所定のデータまたは「ルックアップテーブル」を含む。
【0028】
前述のように、典型的なRNCシステムは、いくつかの振動センサ、マイクロフォン、及びスピーカを使用して、車両の構造由来の振動挙動を感知し、アンチノイズを生成することができる。振動センサは、複数の出力チャネルを有する多軸加速度計であってもよい。例えば、3軸加速度計は通常、X方向、Y方向、及びZ方向で感知された振動に対して個別の電気出力を備えている。RNCシステムの典型的な構成は、例えば、6個の誤差マイクロフォン、6個のスピーカ、及び4個の3軸加速度計または6個の2軸加速度計から来る12チャネルの加速度信号を有することができる。したがって、RNCシステムはまた、複数のS’(z)フィルタ(例えば、二次経路フィルタ120)及び複数のW(z)フィルタ(例えば、制御可能フィルタ126)を含む。
【0029】
図1に示される単純化されたRNCシステムの概略図は、S(z)によって表される、ラウドスピーカ110とマイクロフォン108との間の1つの二次経路を示す。前述のように、RNCシステムには通常、複数のラウドスピーカ、マイクロフォン、及び振動センサがある。したがって、6スピーカ、6マイクロフォンのRNCシステムは、合計36の二次経路(すなわち、6×6)を有する。対応して、6スピーカ、6マイクロフォンのRNCシステムは、同様に36個の
【数3】
フィルタ(すなわち、二次経路フィルタ120)を有することができ、各二次経路の伝達関数を推定する。
図1に示されるように、RNCシステムはまた、振動センサ(例えば、加速度計)104及び各ラウドスピーカ110からの各ノイズ信号x(n)の間に1つのW(z)フィルタ(すなわち、制御可能フィルタ126)を有する。したがって、12個の加速度計ノイズ信号、6スピーカのRNCシステムは、72個のW(z)フィルタを有することができる。ノイズ信号、ラウドスピーカ、及びW(z)フィルタの数の関係を
図2に示す。
【0030】
図2は、加速度計204からのR個のノイズ信号[X
1(n)、X
2(n)、…X
R(n)]、及びラウドスピーカ210からのL個のラウドスピーカ信号[Y
1(n),Y
2(n),…Y
L(n)]を含むようにスケーリングされたRNCシステム200の関連部分を示すサンプルの概略図である。したがって、RNCシステム200は、ノイズ信号のそれぞれとラウドスピーカのそれぞれとの間のR×L個の制御可能フィルタ(またはWフィルタ)226を含むことができる。一例として、12個の加速度計出力(つまり、R=12)を有するRNCシステムは、6つの2軸加速度計または4つの3軸加速度計を使用することができる。したがって、同じ例では、アンチノイズを再現するために6つのラウドスピーカ(つまり、L=6)を有する車両は、合計で72個のWフィルタを使用することができる。L個のラウドスピーカのそれぞれにおいて、R個のWフィルタ出力が合計されて、ラウドスピーカのアンチノイズ信号Y(n)が生成される。L個のラウドスピーカの各々は増幅器(図示せず)を含むことができる。1つまたは複数の実施形態では、R個のWフィルタによってフィルタリングされたR個のノイズ信号が加算されて電気的アンチノイズ信号y(n)が生成され、これが増幅器に供給されてラウドスピーカに送られる増幅アンチノイズ信号Y(n)が生成される。
【0031】
図3は、RNCシステム300の一例を示す概略ブロック図である。
図1のRNCシステム100と同様に、RNCシステム300は、振動センサ304、物理誤差マイクロフォン308、ラウドスピーカ310、二次経路フィルタ320、Wフィルタ326、及び適応型フィルタコントローラ328を含むことができ、これらは
図1を参照して説明したように、それぞれ、振動センサ104、物理的マイクロフォン108、ラウドスピーカ110、二次経路フィルタ120、制御可能フィルタ126及び適応型フィルタコントローラ128の動作と一致する。
図3はまた、一次経路P(z)及び二次経路S(z)を示す。適応型フィルタコントローラ328は、1つまたは複数の実施形態によれば、統合されたプロセッサ及びストレージを含む。他の実施形態では、RNCシステム300は、
図1のRNCシステム100のように、別個のプロセッサ及びストレージを含む。
【0032】
RNCシステム300は、ノイズ信号x(n)を周波数領域x(f)に変換するための第1の高速フーリエ変換(FFT)ブロック330と、誤差信号e(n)を周波数領域e(f)に変換するための第2のFFTブロック332とを含む。RNCシステム300はまた、適応型フィルタコントローラ328によって周波数領域で適応されたWフィルタを時間領域Wフィルタ326に変換するための逆FFT(IFFT)ブロック334を含む。
【0033】
RNCシステム300はまた、特定の周波数範囲におけるノイズキャンセレーションの量を「調整」または優先順位付けするためのシェーピングフィルタを含む。RNCシステム300は、ノイズ信号x(f)を調整またはシェーピングするための第1のシェーピングフィルタ340と、誤差信号e(f)を調整するための第2のシェーピングフィルタ342とを含む。第1のシェーピングフィルタ340を表す第2のシェーピングフィルタ342を参照して示されるように、各シェーピングフィルタは、ピークフィルタ344とシェルフフィルタ346との組み合わせを含み得る。ピークフィルタは、他の周波数を増幅せずに、狭い帯域の周波数の振幅を増加させる。シェルフまたはシェルビングフィルタは、周波数スペクトルの端をブーストまたは減衰する。1つまたは複数の実施形態では、シェルフフィルタ346は、周波数スペクトルの上端を減衰またはブーストするハイシェルフである。1つまたは複数の実施形態では、シェーピングフィルタ342は、0から5つのピークフィルタ344、及び0から2つのシェルフフィルタ346を含む。シェーピングフィルタ342はまた、バンドパス、バンドストップ、ハイパス、及びローパスフィルタ(図示せず)などの1つまたは複数の追加のフィルタを含むことができる。1つまたは複数の実施形態では、各シェーピングフィルタ340、342は、ピークフィルタ344及びシェルフフィルタ346を非アクティブ化またはバイパスした後に、RNCシェーピングフィルタ(
図4に示される)を自動的に設計するためのフィルタ最適化(FO)ブロック348も含み得る。FOブロック348は、フィルタパラメータまたは形状を調整または調節することによって、RNCシェーピングフィルタを自動的に設計する。FOブロック348は、1つまたは複数の実施形態によれば、人工知能最適化を使用する。シェーピングフィルタ340及び342は、FFTブロック330及び332の後の周波数領域に示されているが、他の実施形態ではシェーピングフィルタ340及び342は、時間領域で実施されてもよい。
【0034】
図4は、本開示の1つまたは複数の実施形態による、RNCシェーピングフィルタを自動的に調整するための方法400を示すフローチャートである。開示された方法の様々なステップは、適応型フィルタコントローラ128、328によって、単独で、またはRNCシステム100、300の他の構成要素、例えば、プロセッサ132及びストレージ134またはワイヤレスもしくはで有線でRNCシステム100、300に接続された他のプロセッサと組み合わせて実行され得る。フローチャートはいくつかの連続したステップで示されているが、1つまたは複数のステップを省略してもよく、及び/または本開示の範囲及び意図から逸脱することなく、別の方法で実行してもよい。
【0035】
ステップ402で、RNCシステム300は、基準信号x(f)と誤差マイクロフォン信号e(f)との間のコヒーレンス値C
xe(f)を決定する。コヒーレンス値とは、2つの信号間の関係を定量化するために使用できる統計量を指す。コヒーレンス(C
xe(f))は、0と1の間の値(つまり、0≦C
xe(f)≦1)を持ち、式(1)に示すように、基準信号x(n)と誤差マイクロフォン信号e(n)の周波数依存クロススペクトル、誤差マイクロフォン信号e(n)の周波数依存自動スペクトルと基準信号x(n)の自動スペクトルを使用して計算される。
【数4】
ここで、S
xe(f)は基準信号x(n)と誤差マイクロフォンe(n)のクロススペクトル、S
xx(f)とS
ee(f)はそれぞれ基準信号x(n)と誤差マイクロフォンe(n)の自動スペクトルスペクトルであり、fは関連する周波数ビンである。コヒーレンスは、式(1)で1つの基準信号と1つの誤差マイクロフォン信号の観点から記述される。
【0036】
コヒーレンスは、式(2)に示すように、複数の加速度計と誤差マイクロフォンの信号間の複数のコヒーレンスの観点から表すこともできる。
【数5】
ここで、(j)は基準信号の数、j=1、2、…、Jであり、及び(i)は、関連する誤差マイクロフォン信号である。一般に、コヒーレンスC
xe(f)が高いほど、より多くのノイズリダクションを達成することができる。
【0037】
ステップ404で、RNCシステム300は、式(3)に示されるように、コヒーレンス値Cxe(f)に基づいて、周波数依存推定最大ノイズリダクション(EMNR)値を決定する。
ENMR(f)=-10log(1-C_xe (f)) (3)
【0038】
図5は、式(3)を使用して計算された例示的なEMNRスペクトルを示すグラフ500である。EMNR値は、周波数依存の、理論上の最大ノイズキャンセレーションであり、所与の基準信号と誤差信号のセットを使用して実現できる。RNCシステム300は、加速度計と誤差センサとの間のコヒーレンスのみを使用してEMNRを計算する。実際には、RNCシステム300で実現される実際のノイズキャンセレーションは、実際のノイズキャンセレーションシステムに固有の待ち時間のため、またはアンチノイズを作成する実際のスピーカの低周波出力の制限のため、EMNRよりも小さくなる。しかしながら、EMNRを使用して、RNCアルゴリズム用のRNCシェーピングフィルタを作成することができ、なぜならEMNRは、RNCシステムが理論的に十分にキャンセルできる周波数を示しているからである。例えば、グラフ500はピークEMNR値を示し、これは、それぞれ数字502、504、及び506によって参照される、110Hz、180Hz、及び200Hzにおける潜在的なノイズキャンセレーションの高い値を示している。
【0039】
図4を再び参照すると、方法400は、1つまたは複数の実施形態による、人工知能最適化(AIO)を用いた平滑化技術を含むインテリジェントRNCシェーピングフィルタ設計技術を提供する。1つまたは複数の実施形態では、RNCシステム300は、移動平均、最小二乗法などの曲線適合アプローチ、非線形最小二乗ソルバー、または単にSavizky-Golayフィルタなど、1つまたは複数の異なる「平滑化技術」を使用することができる。他の実施形態では、RNCシステム300は平滑化技術を含まない。特定の実施形態では、RNCシェーピングフィルタを周波数領域で実施することが有利である場合があり、他の実施形態では、時間領域で実施することが有利である場合がある。方法400は、インテリジェントRNCシェーピングフィルタのパラメータを自動的に生成及び調整し、RNCシステム300内のインテリジェントRNCシェーピングフィルタを更新するプロセスである。方法400を使用して、RNCシステム300は、インテリジェントRNCシェーピングフィルタのパラメータを調整して、性能を改善しながら、所望のシェーピングフィルタの要件を満たす。
【0040】
ステップ406で、RNCシステム300は、平均二乗誤差(MSE)に基づく目的関数を初期化し、EMNR値を目標値として設定する。インテリジェントRNCシェーピングフィルタの最良のパラメータまたは形状を決定するために、RNCシステム300は、ステップ404でEMNR値の間の平均二乗誤差(MSE)を計算し、ステップ406で各反復において生成されたインテリジェントRNCシェーピングフィルタの周波数応答を決定し、これがAIO勾配方向を決定する。
【0041】
ステップ408で、RNCシステム300は、非線形最小二乗ソルバーを使用して、AIO勾配方向に基づいてインテリジェントRNCシェーピングフィルタパラメータを決定する。非線形二乗は、目的関数の定義に基づいて所望のフィルタの非線形曲線関数またはパラメータを計算する方法であり、式(4)に示されている。
【数6】
ここで、F()はRNCシェーピングアルゴリズムの目的関数であり、(ydata)は、すべてのターゲット周波数ビンfのEMNR値であり、(xdata)は、すべてのターゲット周波数ビンfに対するインテリジェントRNCシェーピングフィルタの初期値であり、(x)は、最適化されるインテリジェントRNCシェーピングフィルタのパラメータのセットであり、(i)はAIO計算の反復回数である。
【0042】
ステップ410で、RNCシステム100は、式(4)の結果に基づいてRNCシェーピングフィルタパラメータを更新する。
図6は、式(3)を使用して計算されたEMNR値を表す第1の曲線602と、AIO技術及び式(4)に基づくRNCシェーピングフィルタを表す第2の曲線604とを示すグラフ600である。図示の実施形態では、インテリジェントRNCシェーピングフィルタの下限は10Hzに設定され、インテリジェントRNCシェーピングフィルタの上限は400Hzに設定される。グラフ600のこの周波数範囲内の第1の曲線602と第2の曲線604との間の重なりによって示されるように、インテリジェントRNCシェーピングフィルタは、10~400Hzの間のターゲット周波数範囲内のEMNR値によく一致する。他の実施形態では、RNCシステムは、AIOによって作成されたシェーピングフィルタを、異なる周波数範囲にわたってEMNRに一致させる。他の実施形態では、RNCシステムは、FOブロック348で前述の「平滑化技術」の1つを使用して、602に示されるEMNR値からRNCシェーピングフィルタを導出する。
【0043】
図7は、第1のマイクロフォン、例えば
図1の誤差マイクロフォン108によって測定された、インテリジェントRNCシェーピングがある場合と無い場合の、RNCシステム300のノイズキャンセレーション性能を示すグラフ700である。グラフ700は、車両102が、既存のRNCシェーピング戦略、例えば、手動の試行錯誤フィルタ設計戦略を有する既存のRNCシステムを備えている場合に、第1のマイクロフォンによって測定される音を表す、第1の曲線702を含む。グラフ700はまた、車両102が
図3及び
図4を参照して説明されたインテリジェントRNCシェーピング方法を使用するRNCシステム300を備えている場合に、第1のマイクロフォンによって測定される音を表す第2の曲線704を含む。第2の曲線704は、約10~400Hzの周波数範囲全体で第1の曲線702よりも1~2dB低く、これは既存のRNCシステムを超えるRNCシステム300の優れた広帯域ノイズリダクション性能を示している。
【0044】
図8は、第1のマイクロフォンとは異なる車両位置に配置される第2のマイクロフォン、例えば
図1の仮想マイクロフォン112によって測定された、インテリジェントRNCシェーピングがある場合と無い場合の、RNCシステム300のノイズキャンセレーション性能を示すグラフ800である。グラフ800は、車両102が、既存のRNCシェーピング戦略、例えば、試行錯誤フィルタ設計戦略を有する既存のRNCシステムを備えている場合に、第2のマイクロフォンによって測定される音を表す、第1の曲線802を含む。グラフ800はまた、車両102が
図3及び
図4を参照して説明されたインテリジェントRNCシェーピング方法を使用するRNCシステム300を備えている場合に、第2のマイクロフォンによって測定される音を表す第2の曲線804を含む。第2の曲線804は、約10~400Hzの周波数範囲全体で第1の曲線802よりも1~2dB低く、これは既存のRNCシステムを超えるRNCシステム300の優れた広帯域ノイズリダクション性能を示している。
【0045】
1つまたは複数の実施形態では、RNCシステム300は、FOブロック348で単純なRNCシェーピング方法を実行し、ステップ404からステップ410に直接進み、ステップ406及び408をバイパスする。この実施形態では、RNCシステム300は、RNCシェーピングフィルタパラメータを更新して、
図5のグラフ500に示されるEMNRピーク周波数でピークフィルタを作成する。
図9は、単純なRNCシェーピング方法に基づいているRNCシェーピングフィルタの周波数(振幅)応答を示すグラフ900である。この実施形態では、RNCシェーピングフィルタ、例えば
図3のシェーピングフィルタ342は、110Hz、180Hz及び200Hzの測定されたEMNRピーク(
図5)と、誤差マイクロフォン信号スペクトルに存在するピーク値(
図9)とに基づく、それぞれ数字902及び904によって参照される100Hz及び190Hzにおけるピークフィルタを含む。RNCシェーピングフィルタには、400Hzを超えるシェルフも含まれており、番号906で参照されている。
図9に示されるシェーピングフィルタ342は、車両が運転されているときにリアルタイムでオンラインで作成することができる。シェーピングフィルタ342はまた、加速度計及びマイクロフォンセンサからの新しい入力データに基づいて更新され得る。代替として、RNCシステム300は、例えば手動で、またはシミュレーションソフトウェアを使用して、大きなパラメータ空間が調査される所定のデータに基づいてシェーピングフィルタを決定することができる。このようなRNCフィルタは高周波数ゲインに敏感であり、シェーピングフィルタの振幅が大きすぎると、高周波数範囲で(ノイズキャンセレーションではなく)望ましくないノイズブーストが発生する。したがって、RNCシェーピングフィルタの手動設計には、長い調整時間と最適ではないノイズキャンセレーション性能という点で欠点があり、望ましくないノイズブーストを生じる可能性がある。
【0046】
したがって、RNCシステム300は、AIO法を使用するよりも、EMNRデータに基づいてより単純なフィルタを作成してもよい。式(1)と式(3)は、最大のノイズキャンセレーションポテンシャルの周波数はコヒーレンスまたはEMNRのいずれかの値が高い周波数であるため、それらをどのように特定できるかを示している。1つまたは複数の実施形態では、FOブロック348は、コヒーレンスまたはEMNRのいずれかがピークを有する周波数を中心周波数とする1つのピークフィルタを含むことができる。1つまたは複数の実施形態では、2つのピークフィルタは、3つのEMNRピーク周波数と同様の中心周波数を有する。1つまたは複数の実施形態では、FOブロック348は、その一般的な傾向がEMNRまたはコヒーレンスの傾向に従うフィルタを含む。すなわち、FOブロック348は、EMNRまたはコヒーレンスが高い値を有する周波数で高い値を有し、FOブロック348は、EMNRまたはコヒーレンスが低い値を有する周波数で低い値を有する。シェーピングフィルタ342を単純化するために、任意に平滑化を使用することができる。
【0047】
単純なRNCシェーピング方法の別の実施形態では、テストエンジニアは、EMNR値に基づいてピークフィルタ周波数を選択し、この所定の情報をRNCシステム300に保存する。このような手動のアプローチは、以前の試行錯誤の方法よりも多くの時間を節約する。例えば、試行錯誤の方法には数日かかる場合があるが、単純な「ピーク検出器」RNCシェーピング方法のアプローチは、RNCシステム300によって実行される場合にかかるのは、数時間または数分である。一実施形態では、周波数依存EMNR値は、基準センサと誤差センサとの間の相互相関、共分散、または相互共分散など、コヒーレンスに対する代替統計に置き換えられる。次に、代替統計を使用して、ピーク周波数またはRNCシェーピングフィルタ形状を導き出す。
【0048】
別の実施形態では、RNCシステム300は、複雑なRNCシェーピング方法を実行し、再びステップ404からステップ410に直接進む。ここで、RNCシステム300は、EMNR値の周波数依存形状全体をRNCシェーピングフィルタとして使用する。このより複雑なフィルタを使用するこの実施形態は、単純なアプローチと比較して、さらに優れたノイズキャンセレーション性能をもたらし、RNCシェーピングフィルタの所望の周波数形状を得る便利で効果的な方法を提供する。しかしながら、RNCシェーピングフィルタがEMNR形状を直接使用することから導出されるこのアプローチは、不必要に複雑になる可能性がある。有限インパルス応答(FIR)フィルタを使用できるため、このフィルタを周波数領域で使用する場合、この複雑さは問題にならない。しかしながら、RNCアルゴリズムのいくつかの実施形態では、このフィルタを時間領域に適用する必要があるため、いくつかのフィルタの簡素化(つまり何気なく平滑化と呼ぶことができるもの)を実装することができる。
【0049】
方法400のステップ402~410のすべてを実行することによって、すなわち、ステップ406及び408を含めて、RNCシステム300は、RNCシェーピングフィルタパラメータを数秒以内で決定する。
図6を参照して説明したように、システムエンジニアがEMNR形状の手動検査に基づいてフィルタを設計し、方法400の単純なRNCシェーピング戦略に従ってIIRフィルタベースのシェーピングフィルタを作成するには、数時間かかる場合がある。しかしながら、これらの方法は両方とも、既存の試行錯誤の方法を超えた利点を提供する。
【0050】
RNCシェーピング方法400は、適応型フィルタコントローラ128、328に入力される特定の周波数範囲における基準信号及び誤差信号のエネルギーを増幅することによって、特定の周波数範囲におけるノイズキャンセレーション量の「調整」または優先順位付けを可能にする。したがって、適応型フィルタコントローラ128、328は、Wフィルタ126、326を異なるように適応させて、これらの新たに増幅された周波数範囲を優先的にキャンセルする。このようにして、RNCシェーピングフィルタは、シェーピングフィルタ340~432がより高い値を有する周波数範囲において、より良好なキャンセレーションまたはより少ないノイズブーストを提供する。また、RNCシェーピングフィルタを設計するいくつかの方法も開示されている。車両の運転中にリアルタイムでフィルタを更新してノイズキャンセレーションを最大化する継続的に実行されるアルゴリズムである方法、及び、訓練を受けたエンジニアによって開発中に追加の調整ステップとして実行され得るより単純な方法である。
【0051】
RNCシステム300は、可聴でうなるような道路誘起の車内ノイズを低減するための広帯域ノイズキャンセレーションシステムである。RNCシェーピング方法400は、既存のRNCシステムと比較して、許可された周波数範囲で改善されたノイズリダクションを提供する。
図3に示すように、RNCシステム300は、基準チャネルのすべて及び誤差マイクロフォンチャネルのすべてをフィルタリングするシェーピングフィルタを含む。RNCシステム300及び方法400は、既存のシステムに勝る複数の利点を提供し、より良好なノイズキャンセレーション、ノイズブーストの低減、RNCシェーピングフィルタの設計ガイドの提供、エンジニアリングの調整時間の短縮を含む。
【0052】
方法400は、生産前に車両を調整するときに一度実行するのではなく、車両の動作中に継続的にオンラインで実施することができる。このことで、各舗装には独自の周波数依存スペクトルがあるので各舗装には独自の周波数依存EMNR形状があるため、車両のノイズキャンセレーション性能をさらに向上させることができる。そのため、各舗装で最大のノイズキャンセレーションは、独自のインテリジェントなRNCシェーピングフィルタを使用することによってのみ実現され得る。
【0053】
シミュレーションでは、インテリジェントなRNCシェーピングフィルタがすべての舗装でノイズキャンセレーションを改善することが示されているが、コヒーレンスとEMNRを5分ごとに1回計算するだけで十分であり得る。処理の制限が厳しいシステムでは、このコヒーレンスとEMNRは、車両の運用中に計算できるが、それはRNCシステムが起動される前である。あるいは、EMNRをクラウドなどで計算することもできる。
【0054】
ANCシステムは車両を参照して説明されているが、本明細書で説明されている技術は車両以外の用途にも適用可能である。例えば、基準センサ、誤差センサ、ラウドスピーカ、及びLMS適応型システムを使用して、邪魔な音を静めるリスニングポジションを定義する固定シートが部屋にある場合がある。キャンセルされる外乱ノイズは、HVACノイズ、または隣接する部屋やスペースからのノイズなど、異なるタイプである可能性が高いことに留意されたい。さらに、部屋には時間とともに位置が変化する居住者がいる場合があり、仮想マイクロフォンの3次元位置を選択できるように、座席センサまたはヘッドトラッキング技術を使用して、1人または複数の聴取者の位置を判定する必要がある。
【0055】
図1~3は、LMSベースの適応型フィルタコントローラ128及び328を示しているが、他の実施形態は、最適な制御可能フィルタ126及び326を適応または作成するための代替及び/または追加の方法及びデバイスを企図している。例えば、1つまたは複数の実施形態では、ニューラルネットワークを使用して、LMS適応型フィルタコントローラの代わりにWフィルタを作成及び最適化することができる。他の実施形態では、機械学習または人工知能を使用して、LMS適応型フィルタコントローラの代わりに最適なWフィルタを作成することができる。
【0056】
本明細書に説明するコントローラまたはデバイスの任意の1つまたは複数は、様々なプログラミング言語及び/または技術を使用し、作成されたコンピュータプログラムからコンパイルまたは解釈され得るコンピュータ実行可能命令を含む。一般に、(マイクロフォンプロセッサなどの)プロセッサは、例えばメモリ、コンピュータ可読媒体などから命令を受け取り、命令を実行する。プロセシングユニットは、ソフトウェアプログラムの命令を実行することが可能な非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含む。コンピュータ可読記憶媒体は、それらに限定されないが、電子記憶デバイス、磁気記憶デバイス、光学記憶デバイス、電磁気記憶デバイス、半導体記憶デバイス、またはそれらの任意の適切な組み合わせであってもよい。
【0057】
例えば、いずれかの方法または処理の請求項に記載されるステップは、任意の順序で実行されてもよく、請求項において提示される特定の順序に限定されない。式は、信号ノイズの影響を最小限に抑えるためにフィルタを使用して実装できる。加えて、いずれかの装置の請求項に記載される構成要素及び/または要素は、組み立てられてもよく、またはその他の方法により、様々な置換において動作可能に構成されてもよく、したがって、特許請求の範囲に記載される特定の構成に限定されない。
【0058】
さらに、時間ドメインまたは周波数領域のいずれかで、機能的に同等の処理ステップを行うことができる。したがって、図中の各信号処理ブロックについて明示的に述べられていないが、信号処理は、時間領域、周波数領域、またはそれらの組み合わせのいずれかで発生する可能性がある。例えば、FFTまたはIFFTは、本開示の範囲から逸脱することなく、追加または省略できる。さらに、様々な処理ステップがデジタル信号処理の典型的な用語で説明されているが、本開示の範囲から逸脱することなく、アナログ信号処理を使用して同等のステップを実行することができる。
【0059】
利点、他の長所、及び問題に対する解決策を、具体的な実施形態に関して、上記にて説明してきた。しかしながら、いずれかの利点、長所、問題への解決策、またはいずれかの特定の利点、長所、もしくは解決策を生じさせる、もしくはより明白にさせ得るいずれかの要素は、いずれかの、またはすべての請求項の重要な、必要とされる、または必須の特徴または構成要素として解釈されるというわけではない。
【0060】
用語「を備える(comprise)」、「を備える(comprises)」、「を備える(comprising)」、「を有する(having)」、「を含む(including)」、「を含む(includes)」、またはそれらのいずれかの変形は、要素のリストを含む処理、方法、項目、組成物、または装置が、記載されるそれらの要素を含むだけでなく、明確に列挙されていない、他の要素、またはそのような処理、方法、項目、組成物、もしくは装置に特有な他の要素をも含んでもよいように、非排他的包含に言及することが意図される。特に記載されていないものに加え、本発明の主題の実施において使用される上述された構造、配置、用途、比率、要素、材料、または構成要素の他の組み合わせ及び/または修正は、その一般的な原理から逸脱することなく、変えられてもよく、またはそれ以外の場合、特定の環境、製造仕様、設計パラメータ、もしくは他の動作要件に特に適合されてもよい。
【0061】
例示的な実施形態が上述されているが、これらの実施形態が本開示のすべての可能な形式を説明することは意図されていない。むしろ、本明細書で用いられた単語は限定ではなく説明のための単語であり、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な変更が成され得ることが理解される。さらに、様々な実装する実施形態の特徴は組み合わされてさらなる実施形態を形成し得る。