(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114472
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】木鋼複合部材及び木鋼複合部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
E04C 3/292 20060101AFI20230810BHJP
E04B 1/30 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
E04C3/292
E04B1/30 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016770
(22)【出願日】2022-02-05
(71)【出願人】
【識別番号】000183428
【氏名又は名称】住友林業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096611
【弁理士】
【氏名又は名称】宮川 清
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】ペク ヘス
(72)【発明者】
【氏名】中島 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】松本 悠実
(72)【発明者】
【氏名】池田 将和
(72)【発明者】
【氏名】町田 健一
(72)【発明者】
【氏名】長島 泰介
(72)【発明者】
【氏名】丸谷 周平
【テーマコード(参考)】
2E163
【Fターム(参考)】
2E163FB36
2E163FC35
2E163FF04
(57)【要約】
【課題】軸方向力が鋼部材と木質部材とに適切に負荷される木鋼複合部材であって、効率よく製造が可能で、外観を損なうことなく鋼部材の座屈を抑止することができる木鋼複合部材を提供する。
【解決手段】中実断面形状の木質部材1と、木質部材の軸線方向に沿って設けられ、該木質部材の外周部に分散して木質部材と組み合わされる複数の鋼部材2と、木質部材及び鋼部材の両端部に取り付けられ、木質部材と鋼部材との双方に軸線方向の力を伝達することが可能となった材端部材3と、を有する。木質部材には、軸線方向に溝が形成されており、鋼部材の断面の一部又は全部が溝内に嵌め入れられている。そして、鋼部材の座屈が木部材の拘束により、又は鋼部材の断面形状により抑止される。鋼部材には引張力が、木質部材には圧縮力をあらかじめ導入しておくこともできる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中実断面形状の木質部材と、
前記木質部材の軸線方向に沿って設けられ、該木質部材の外周部に分散して前記木質部材と組み合わされる複数の鋼部材と、
前記木質部材及び前記鋼部材の両端部に取り付けられ、前記木質部材と前記鋼部材との双方に軸線方向の力を伝達することが可能となった材端部材と、を有し、
前記木質部材には、軸線方向に溝が形成されており、
前記鋼部材の断面の一部又は全部が前記溝内に嵌め入れられていることを特徴とする木鋼複合部材。
【請求項2】
前記鋼部材は、木質部材から離れる方向への曲げ剛性が、前記溝が形成された側面に沿った方向への曲げ剛性より大きく設定されていることを特徴とする請求項1に記載の木鋼複合部材。
【請求項3】
前記鋼部材は、前記木質部材から離れる方向への細長比が限界細長比以下となっていることを特徴とする請求項1に記載の木鋼複合部材。
【請求項4】
前記鋼部材が前記木質部材から離れる方向に変位するのを木質部材に留めつけて拘束する座屈拘束手段を有することを特徴とする請求項1に記載の木鋼複合部材。
【請求項5】
前記木質部材の断面において、前記溝の一つと他の溝との最も近接する位置間を結ぶ線分Lと前記2つの溝で断面が区切られる木質部材の一部に、前記2つの溝に嵌め入れられた鋼部材の座屈を拘束する力が作用したときに、前記鋼部材から作用する力の合力の線分Lと直角となる方向の成分が、木質部材の線分Lに沿った割裂破壊に対する耐力より小さくなるように、前記溝の断面形状及び寸法が設定されていることを特徴とする請求項1に記載の木鋼複合部材。
【請求項6】
前記材端部材は、前記木質部材の端面に当接される第1の鋼板と、該第1の鋼板と間隔をあけて平行に配置された第2の鋼板と、前記第1の鋼板と前記第2の鋼板とを結合する連結部材と、を有するものであり、
前記鋼部材は、前記木質部材に沿った位置から前記第1の鋼板に設けられた切り欠き又は開口部を越えて連続し、前記第2の鋼板又は前記連結部材に溶接又はボルトで接合されていることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかに記載の木鋼複合部材。
【請求項7】
前記材端部材は、前記木質部材の端面に当接される第1の鋼板と、該第1の鋼板と間隔をあけて平行に配置された第2の鋼板と、前記第1の鋼板と前記第2の鋼板とを結合する連結部材と、を有するものであり、
前記鋼部材の端面は、前記第1の鋼板に突き当てられ、前記第1の鋼板を貫通するボルトで該第1の鋼板と接合されていることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかに記載の木鋼複合部材。
【請求項8】
前記材端部材は、前記木質部材の端面に圧接され、
該木質部材の軸線方向に圧縮力が導入され、
前記鋼部材は引張力が導入された状態で前記材端部材に接合されていることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれかに記載の木鋼複合部材。
【請求項9】
中実断面形状の木質部材の外周部に、軸線方向の複数の溝を切削する工程と、
前記溝に、前記木質部材の軸線方向に連続する鋼部材を嵌め入れる工程と、
前記木質部材の両端面に材端部材を当接し、該材端部材を介して該木質部材に軸線方向の圧縮力を導入する工程と、
前記木質部材に圧縮力が導入されている状態で、前記材端部材と前記鋼部材とを、該材端部材から該鋼部材に軸線方向の力が伝達可能に接合する工程と、を含むことを特徴とする木鋼複合部材の製造方法。
【請求項10】
前記木質部材に圧縮力を導入する工程は、前記材端部材を介して前記木質部材に反力を負荷し、前記鋼部材を引張するものであり、
前記材端部材と前記鋼部材とを接合する工程は、前記鋼部材を引張することによる反力で前記木質部材に圧縮力が導入された状態で材端部材と前記鋼部材とを接合するものであることを特徴とする請求項9に記載の木鋼複合部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物等に使用する構造用の部材であって、木質の部材と鋼からなる部材とを組み合わせ、双方の部材によって主に軸線方向の荷重を支持する木鋼複合部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
森林資源の有効な活用を図るために、中規模・大規模の建築物、又は中層・高層の建築物の木造化が試みられている。しかし、中層・高層の建築物では柱等に大きな軸方向力が作用し、木質部材によって大きな軸方向力を支持しようとすると断面が過大になりやすい。このため、例えば特許文献1、特許文献2及び特許文献3には、木質部材を鋼部材と組み合わせ、複合部材として用いることが提案されている。
【0003】
特許文献1には、H形の断面を有する鋼部材の周囲を木質部材で囲った複合柱、H形鋼を組み合わせて十字状の断面とした鋼部材の周囲を木質部材で囲った複合柱が提案されている。また、特許文献2には、角型の鋼管の周囲を木質部材で囲った複合柱が提案されている。
特許文献3には、矩形の木質部材の周囲に鋼部材を沿わせた柱が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-130021号公報
【特許文献2】特開2017-89329号公報
【特許文献3】特開2020-122323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2に提案されている複合柱は、鋼部材の周囲を木質部材で囲うものであり、鋼部材の形状に合わせて木質部材を複数に分割して加工し、これらの木質部材を鋼部材の周囲を囲むように接着接合する必要がある。このため、製造工程における効率が良好ではない。
また、特許文献3に提案されている複合柱では、一つの矩形断面の木質部材を使用することができるが、周囲に沿わせた複数の部材のそれぞれは断面が小さく、鋼部材が単独で座屈しやすくなる。鋼部材のそれぞれを互いに連結して座屈を抑止することが提案されているが、外周部で鋼部材を横方向や斜め方向に連結すると、複合部材を柱として用いるときに外観が著しく損なわれる。また、木質部材の外周面から鋼部材が突出しており、木質部材が外周面に現れる柱として使用するときに、鋼部材が外観を損なうことになる。
【0006】
一方、鋼部材と木質部材とを組み合わせた複合部材では、軸方向の力が作用する初期から双方の部材に適切に負荷され、木質部材内では一部に偏ることなく均等に近い状態で負荷されることが望ましい。したがって、確実に荷重が鋼部材と木質部材に負荷される端部の構造が求められている。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、効率よく製造が可能であって、外観を損なうことなく鋼部材の座屈を抑止することができる木鋼複合部材を提供することである。また、これに併せて、軸方向力が鋼部材と木質部材とに適切に負荷される木鋼複合部材とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、 中実断面形状の木質部材と、 前記木質部材の軸線方向に沿って設けられ、該木質部材の外周部に分散して前記木質部材と組み合わされる複数の鋼部材と、 前記木質部材及び前記鋼部材の両端部に取り付けられ、前記木質部材と前記鋼部材との双方に軸線方向の力を伝達することが可能となった材端部材と、を有し、 前記木質部材には、軸線方向に溝が形成されており、 前記鋼部材の断面の一部又は全部が前記溝内に嵌め入れられている木鋼複合部材を提供する。
【0009】
この木鋼複合部材では、該部材の軸線方向の外力が材端部材から木質部材と鋼部材との双方に作用し、双方の部材によって外力が支持される。木質部材には単一の木材又は集成材等を用いることができ、予め一体に成形したのちに鋼部材と組み合わせることができる。したがって、鋼部材と組み合わせるときに木質の材料を貼り合わせる加工等が不要となり、効率の良い作業が可能になるとともに、木質部材を強固に一体となった部材とすることができる。
また、鋼部材を木質部材の外周部に分散して組み合わせることにより、剛性の大きい鋼部材が断面の外周部にあり、曲げ剛性が大きい部材とすることができる。そして、鋼部材を木質部材に形成した溝内に嵌め入れることによって、木質部材と鋼部材とを組み合わせた複合部材の側面で鋼部材が大きく突出するのが回避され、外観が良好なものとなる。
さらに、木質部材に形成された溝に鋼部材を嵌め入れることにより、鋼部材が木質部材に拘束され、木質部材の側面に沿った方向、木質部材の中心に向かう方向への鋼部材の座屈が抑止される。また、溝の深さの調整によって鋼部材が木質部材から離れる方向への曲げ剛性を大きくすることができる。これにより、鋼部材の木質部材から離れる方向への細長比を小さくして鋼部材が木質部材から離れる方向に座屈するのを、部材の外観を損なうことなく抑制することが可能となる。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の木鋼複合部材において、 前記鋼部材は、木質部材から離れる方向への曲げ剛性が、前記溝が形成された側面に沿った方向への曲げ剛性より大きく設定されているものとする。
【0011】
この木鋼複合部材では、鋼部材が木質部材から離れる方向への座屈を含む、全方向への座屈を有効に抑止するととともに、鋼部材の断面積を過大にすることなく、木質部材と組み合わせて木質部材を構造部材の一部として有効に用いることが可能となる。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の木鋼複合部材において、 前記鋼部材は、前記木質部材から離れる方向への細長比が限界細長比以下となっているものとする。
【0013】
鋼部材の木質部材から離れる方向への座屈に対する細長比が、限界細長比より小さくなるように設定することにより、鋼部材の圧縮応力度が弾性範囲内であるときには座屈は生じない。そして、他の方向へは木質部材によって拘束され、鋼部材の座屈は抑止される。
したがって、鋼部材に生じる圧縮応力度が弾性範囲内に抑えられている状態で使用するかぎり、鋼部材に座屈が生じない部材として構造物を設計することができる。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載の木鋼複合部材において、 前記鋼部材が前記木質部材から離れる方向に変位するのを木質部材に留めつけて拘束する座屈拘束手段を有するものとする。
【0015】
この木鋼複合部材では、木質部材の外周部に分散して配置された鋼部材が木質部材から離れて座屈するのを有効に抑止することができる。そして、鋼部材が木質部材に形成された溝内に嵌め入れられていることによって鋼部材が木質部材に拘束され、木質部材から離れる方向への座屈のみに対して拘束手段を設けることにより有効に座屈を抑止することができる。
なお、上記座屈拘束手段には、ビス、ラグスクリュー、ボルト、鋼部材及び木質部材に形成された孔に挿通されるドリフトピン、木質部材に巻き付ける鋼ベルト、鋼部材を抑えるように木質部材に留め付けられた鋼ベルト等を用いることができる。
【0016】
請求項5に係る発明は、請求項1に記載の木鋼複合部材において、 前記木質部材の断面において、前記溝の一つと他の溝との最も近接する位置間を結ぶ線分Lと前記2つの溝で断面が区切られる木質部材の一部に、前記2つの溝に嵌め入れられた鋼部材の座屈を拘束する力が作用したときに、前記鋼部材から作用する力の合力の線分Lと直角となる方向の成分が、木質部材の線分Lに沿った割裂破壊に対する耐力より小さくなるように、前記溝の断面形状及び寸法が設定されているものとする。
【0017】
鋼部材を嵌め入れる溝を深く形成することによって、複数の溝の奥底部が接近し、断面内における2つの溝を結ぶ位置での木質部材の割裂をともなう鋼部材の座屈が生じるおそれがあるが、この木鋼複合部材では、上記のような態様で鋼部材が座屈するのを有効に抑止することが可能となる。
【0018】
請求項6に係る発明は、請求項1から請求項5までのいずれかに記載の木鋼複合部材において、 前記材端部材は、前記木質部材の端面に当接される第1の鋼板と、該第1の鋼板と間隔をあけて平行に配置された第2の鋼板と、前記第1の鋼板と前記第2の鋼板とを結合する連結部材と、を有するものであり、 前記鋼部材は、前記木質部材に沿った位置から前記第1の鋼板に設けられた切り欠き又は開口部を越えて連続し、前記第2の鋼板又は前記連結部材に溶接又はボルトで接合されているものとする。
【0019】
この木鋼複合部材では、第1の鋼板に木質部材の端面を軸線方向の力が伝達されるように突き当てるとともに、第2の鋼板は他の構造部材と接合するための平坦な面を維持し、ボルト挿通孔を設けることができる。これにより、他の構造部材との接合が容易となる。また、第1の鋼板と第2の鋼板の間の空間を利用して材端部材と木質部材に嵌め合わされている鋼部材との接合を確実かつ容易に行うことが可能となる。
【0020】
請求項7に係る発明は、請求項1から請求項5までのいずれかに記載の木鋼複合部材において、 前記材端部材は、前記木質部材の端面に当接される第1の鋼板と、該第1の鋼板と間隔をあけて平行に配置された第2の鋼板と、前記第1の鋼板と前記第2の鋼板とを結合する連結部材と、を有するものであり、 前記鋼部材の端面は、前記第1の鋼板に突き当てられ、前記第1の鋼板を貫通するボルトで該第1の鋼板と接合されているものとする。
【0021】
この木鋼複合部材では、第1の鋼板と第2の鋼板との間の空間を利用して第1の鋼板を貫通するボルトを締め付けることができる。これにより容易に鋼部材と材端部材を接合することが可能となる。また、鋼部材より木質部材の長さを所定長だけ長く調整しておくことにより、ボルトを締め付ける力によって木質部材に圧縮力が、鋼部材に引張力を導入することもできる。
【0022】
請求項8に係る発明は、請求項1から請求項7までのいずれかに記載の木鋼複合部材において、 前記材端部材は、前記木質部材の端面に圧接され、 該木質部材の軸線方向に圧縮力が導入され、 前記鋼部材は引張力が導入された状態で前記材端部材に接合されているものとする。
【0023】
この木鋼複合部材では、材端部材が木質部材の端面に押し付けられていることにより、軸方向の外力が作用する初期の状態で、木質部材に作用する圧縮力が小さいまま変形が進行するのが防止される。また、木質部材内で軸方向の圧縮力が偏って負荷されるのが回避される。したがって、材端部材から木質部材のほぼ全域に力の伝達が可能となっており、軸方向の外力が作用する初期から木質部材と鋼部材とによって外力に抵抗する部材となる。また、外部から作用する軸方向力に対して、弾性係数が鋼部材に比べて小さい木質部材が負担する割合を調整し、木質部材の断面を有効に利用して耐荷重の大きな部材とすることが可能となる。
【0024】
請求項9に係る発明は、 中実断面形状の木質部材の外周部に、軸線方向の複数の溝を切削する工程と、 前記溝に、前記木質部材の軸線方向に連続する鋼部材を嵌め入れる工程と、 前記木質部材の両端面に材端部材を当接し、該材端部材を介して該木質部材に軸線方向の圧縮力を導入する工程と、 前記木質部材に圧縮力が導入されている状態で、前記材端部材と前記鋼部材とを、該材端部材から該鋼部材に軸線方向の力が伝達可能に接合する工程と、を含む木鋼複合部材の製造方法を提供するものである。
【0025】
この方法では、一体に成型されている木質部材の周囲に鋼部材を嵌め合わせた複合部材に、鋼部材と木質部材との双方に軸線方向の力が伝達されるように材端部材を確実に接合することができる。また、木質部材に圧縮力が導入され、鋼部材に引張力が導入されることによって耐荷力が大きい複合部材を得ることができる。
【0026】
請求項10に係る発明は、請求項9に記載の木鋼複合部材の製造方法において、 前記木質部材に圧縮力を導入する工程は、前記材端部材を介して前記木質部材に反力を負荷し、前記鋼部材を引張するものであり、 前記材端部材と前記鋼部材とを接合する工程は、前記鋼部材を引張することによる反力で前記木質部材に圧縮力が導入された状態で材端部材と前記鋼部材とを接合するものとする。
【0027】
この方法では、木質部材に圧縮力が導入されるとともに、鋼部材に引張力が導入された状態で鋼部材と材端部材とを接合することを、簡単な設備によって行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明の木鋼複合部材では、効率よく製造が可能であり、軸方向力が鋼部材と木質部材とに適切に負荷されるとともに、外観を損なうことなく鋼部材の座屈を抑止することが可能となる。また、本発明の木鋼複合部材の製造方法では、木質部材の耐荷力を有効に利用して耐荷力の大きな木鋼複合部材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の一実施形態である木鋼複合部材の側面図、拡大した平面図及び拡大した断面図である。
【
図2】
図1に示す木鋼複合部材の端部の構造を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示す木鋼複合部材の組み立て図である。
【
図4】
図1に示す木鋼複合部材の鋼部材が座屈するのを抑止する手段を説明する概略図である。
【
図5】
図1に示す木鋼複合部材の鋼部材が座屈するのを抑止する手段の他の例を示す概略断面図である。
【
図6】
図1に示す木鋼複合部材の木質部材に圧縮力を導入した状態で鋼部材を材端部材と接合する方法を示す概略図である。
【
図7】木質部材に圧縮力が導入され、鋼部材に引張力が導入された木鋼複合部材の軸方向の耐荷力を説明する図である。
【
図8】本発明の他の実施形態である木鋼複合部材の鋼部材と材端部材との接合構造を示す概略側面図である。
【
図9】本発明の他の実施形態であって、鋼部材の断面形状を変更した木鋼複合部材の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施形態である木鋼複合部材であって、柱として使用されるものの側面図、拡大した平面図及び拡大した断面図である。また、
図2はこの木鋼複合柱の上端部を示す下方からの斜視図である。
図3は同じ木鋼複合柱の木質部材、鋼部材及び材端部材である材端プレートを接合する要領を示す概略斜視図である。
この木鋼複合柱は、断面がほぼ正方形で中実の木質部材1と、木質部材1の側面に形成された軸線方向の溝11に嵌め入れられた複数の鋼部材2と、木質部材1及び鋼部材2の両端部に接合され、木質部材1と鋼部材2との双方に軸線方向の力を伝達することが可能となった材端プレート3と、で主要部が構成されている。
【0031】
木質部材1は、複数の小断面の木材を貼り合わせた集成材が用いられており、構造物の一部として軸線方向の力を負担することができるものである。また、原木から切り出された単材を用いるものであってもよい。
この木質部材1の4つの側面のほぼ中央部には、それぞれ軸線方向の溝11が全長にわたって形成されている。この溝11は、鋼部材2の断面形状に対応するものであり、鋼部材2がぴったりと嵌め入れることができるように形成されている。
【0032】
鋼部材2は、構造用鋼を用いることができ、鋼板から帯状に切り出したものである。この鋼部材2は、幅の狭い周面つまり鋼板の厚さ方向の面が木質部材1の側面と平行となり、幅の広い面が木質部材1に形成された溝11の深さ方向となるように、木質部材1に形成された4つの溝内にそれぞれ嵌め入れられている。そして、鋼部材2の幅の狭い面は木質部材1の側面とほぼ同一面上となっている。
鋼部材2は木質部材1より長さが大きくなっており、
図3に示すように木質部材1の端面より突き出しており、この突き出した部分に材端プレート3が接合される。
【0033】
材端プレート3は、木質部材1の端面に当接される第1の鋼板31と、該第1の鋼板31と間隔をあけて平行に配置された第2の鋼板32と、第1の鋼板31と第2の鋼板32とを結合する連結部材33と、を有するものである。
第1の鋼板31は、木質部材1の断面寸法とほぼ対応する矩形の板材からなり、木質部材1の溝11に嵌め入れられた鋼部材2と対応する位置には矩形の切り欠き34が設けられている。そして、鋼部材2は切り欠き内に挿通され、第1の鋼板31が設けられた位置を越えて第2の鋼板32側へ突き出している。
【0034】
第2の鋼板32は、第1の鋼板31より大きい矩形となっており、他の構造部材と接合するためのボルトを挿通する複数の貫通孔35が設けられている。
連結部材33は、鋼からなる矩形断面の管状部材であり、第1の鋼板31と第2の鋼板32との間で双方を平行にして結合するものである。第1の鋼板31との接合及び第2の鋼板32との接合は溶接によるものである。
【0035】
上記木質部材1、鋼部材2及び材端プレート3は、
図3に示すように組み立てることができる。
図3(a)に示すように4つの側面のそれぞれに形成された溝11に鋼部材2を嵌め入れる。このとき鋼部材2は木質部材1の端面より突き出しており、材端プレート3は、
図3(b)に示すように第1の鋼板31が有する切り欠き34に鋼部材2が入り込むようにして木質部材1の端面に第1の鋼板31を当接させる。このとき、木質部材1の端面と第1の鋼板31との間に隙間が生じないように、後に硬化する樹脂等を塗布しておくこともできる。そして、第1の鋼板31から木質部材1に軸線方向の力が伝達可能な状態で鋼部材2の端部を材端プレート3の第2の鋼板32に溶接で接合する。このように接合されることにより、木鋼複合柱に軸方向力が作用するとき、初期状態から鋼部材2と木質部材1との双方に軸方向力が負荷され、複合部材として適切に荷重を支持するものとなる。つまり荷重の作用する初期状態で鋼部材2のみが荷重を負担して木質部材1の支持する荷重が低減するのが回避される。
【0036】
また、上記のように木質部材1と鋼部材2とが組み合わされた木鋼複合柱では、
図1(d)に示すように鋼部材2が木質部材1の側面と平行な方向(
図1(d)中における矢印A、Bの方向)へ座屈すること、及び木質部材1の中心に向かう方向(
図1(d)中における矢印Cの方向)へ座屈することは、木質部材1の拘束によって抑止される。そして、木質部材1の溝から抜け出して木質部材1から離れる方向(
図1(d)中における矢印Dの方向)への座屈は、鋼部材2の木質部材1から離れる方向への曲げ剛性を、木質部材1の側面に沿った方向への曲げ剛性より大きく設定することにより生じにくくなる。つまり、同じ断面積であっても鋼部材2の木質部材1から離れる方向への座屈に対する細長比が小さくなる。また、溝11の深さを大きくして、鋼部材2の木質部材1から離れる方向への曲げ剛性を大きくすることもでき、細長比を小さくすることが可能である。特に、鋼部材2が木質部材1から離れる方向への座屈に対する細長比が、限界細長比より小さくなるように設定することにより、木鋼複合柱に生じる圧縮応力度を弾性範囲内に抑えられている状態では鋼部材2の座屈は生じないものとなる。
【0037】
一方、鋼部材2が木質部材1から離れる方向への細長比を小さくするために鋼部材2の木質部材1への嵌め込み深さを大きく設定すると、木質部材1の隣り合う側面から切削された二つの溝が木質部材1の中心に接近し、二つの溝間の距離が小さくなる。これにより
図4に示すように、二つの溝に嵌め入れられた2つの鋼部材2a,2bと、これらの鋼部材と隣接する領域の木質部材の一部1a(
図4中に示す網掛け部分)が割裂をともなって、木質部材1の中心から離れる方向に座屈するおそれが生じる。これに対し、二つの鋼部材2a,2bの座屈時に鋼部材2a,2bから木質部材1aに作用する力Peの合力Ptが、2つの溝が最も接近する位置間を結んだ線分Lに沿った割裂耐力Rwより小さいときには上記座屈は生じないことになる。
【0038】
つまり、次式の要件を満たすことによって上記座屈が抑止される。
Pt <Rw ・・・・・・・・ (1)
上記Ptは、「鋼構造制振設計指針」(日本建築学会)の「第3章 座屈拘束ブレース」(3.3.4)に基づき、次式によって推定することができる。
Pt =√2・Pe ・・・・・・・・・ (2)
Pe =(4・Nmax・s)/ln ・・・・ (3)
ここで、Nmax :一つの鋼部材に作用する軸力の最大値
s : 溝と鋼部材との間の空隙の最大値(溝の幅-鋼部材の幅)
ln : 局部座屈の波長
また、上記割裂耐力Rwは、木質部材の材質等の諸条件によって変動し得るものであるが、実験の結果から推定する、又は「木質構造設計規準」(日本建築学会)の「6.接合部の設計」(602.1.3)に基づき、次式によって推定することができる。
Rw =2・Cr・L・√he ・・・・・ (4)
ここで、 Cr:割裂破壊定数
L :せん断抵抗長さ
he :加力材縁から鋼部材の断面奥側端部までの距離
したがって、上記合力Ptより割裂耐力Rwが大きくなるように溝11の形状及び寸法が設定されていることにより、2つの鋼部材2a,2bと木質部材の一部1aとが座屈するのを抑止することができる。
【0039】
また、上記のように鋼部材2の断面形状の設定又は溝の形状寸法の設定で確実に座屈を抑止することができないときには、鋼部材2を木質部材1に留めつけることによって座屈を抑止することもできる。
例えば、
図5(a)に示すように鋼部材1にビス孔を設けておき、鋼部材2を貫通して木質部材1にねじ込まれるビス21又はラグスクリューによって、鋼部材を木質部材に留めつけることができる。また、
図5(b)に示すように、木質部材のそれぞれの側面に沿って木質部材1を水平方向に貫通する横孔を穿設するとともに、溝に嵌め入れられた鋼部材2の上記横孔と対応する位置に貫通孔を設け、横孔から鋼部材の貫通孔に挿通したドリフトピン22によって鋼部材2が木質部材1の溝内から抜け出さないように留め付けることもできる。その他、上記ドリフトピン22に代えてボルトを用いることもできるし、木質部材の周囲に巻き付けた鋼ベルト、鋼部材を押さえるように木質部材に留め付けた鋼ベルト等によって鋼部材2が木質部材1の溝内から抜け出すのを抑止することもできる。
【0040】
上記木鋼複合柱は、木質部材1と鋼部材2との双方が軸方向にほぼ無応力の状態で材端プレート3と接合されたものであってもよいが、木質部材1に圧縮力、鋼部材2に引張力が導入された状態で材端プレート3が接合されたものとすることができる。
木質部材1に圧縮力、鋼部材2に引張力が導入された状態で材端プレート3を接合する方法としては、例えば次のような方法を採用することができる。
【0041】
図6(a)に示す方法では、2つの材端プレート3を木質部材1の両端面に当接し、両端の材端プレート3に外力を付与して木質部材1の端面に押し付ける。これにより木質部材1に軸線方向の圧縮力を導入する。このとき材端プレート3と鋼部材2とは連結されておらず、材端プレート3の第2の鋼板32と鋼部材2の端面との間には、木質部材1に導入する圧縮力で生じる変形量に相当する間隙を設けておく。そして、木質部材1に圧縮力が作用した状態を維持したまま、鋼部材2と第2の鋼板32とを溶接W1によって接合する。溶接の完了後、外力を除荷することにより鋼部材2には引張力が導入され、木質部材1の圧縮力と釣り合った状態となる。
なお、
図1に示す木鋼複合柱で、鋼部材2は第2の鋼板32に溶接接合されているが、溶接による熱で木質部材を損傷しないときには、第1の鋼板31も切り欠きの周辺部で鋼部材2と溶接で接合することができる。
【0042】
上記外力は、木鋼複合柱の製作ヤードに固定構造として2つの反力ブロックを設け、これら反力ブロックに反力を作用させて材端プレート3を木質部材1の両端面に押し付けるように外力を負荷することができる。また、木鋼複合柱の両端で材端プレート3と対向するように2つの反力板を設置し、これらの反力板を引張部材で連結した状態としておき、反力板に反力を作用させて材端プレートを木質部材に押し付けることもできる。
【0043】
また、
図6(b)に示す方法では、材端プレート3の第2の鋼板32と対向するように反力板41を設置し、第2の鋼板32に設けられた開口を貫通するように延長された鋼部材2と連結する。そして、反力板41と材端プレート3との間にジャッキ42を介装して、鋼部材2に反力を作用させながら材端プレート3を木質部材1の端面に押し付ける。これにより、木質部材1には圧縮力が導入されるとともに鋼部材2には引張力が導入される。この状態で、材端プレート3の第2の鋼板32と鋼部材2とを溶接W2によって接合する。その後、鋼部材2の第2の鋼板32より突出する部分は切断する。なお、材端プレート3を木質部材1に押し付けるジャッキ42に代えて太径のボルトを用い、ねじ込む力によって材端プレート3を木質部材1に押し付けることもできる。
【0044】
図6(a)及び
図6(b)に示す方法によって材端プレートを木質部材の端面に押し付けるときに、鋼部材2の両端が材端プレート3に接合されていない状態で双方の材端プレート3を木質部材1の両端に押し付けてもよいし、一方の材端プレートはあらかじめ鋼部材と接合しておき、他方の材端プレートを木質部材の端面に押し付けて木質部材に圧縮力を導入するものであってもよい。そして、木質部材に圧縮力が導入された状態で鋼部材を他方の材端プレートに接合するものである。
【0045】
上記にように木質部材1には圧縮力が導入され、鋼部材2には引張力が導入された状態で材端プレート3が接合されている木鋼複合柱では、以下に説明するように木質部材1の耐荷力を有効に利用して大きな荷重を支持することができる木鋼複合柱とすることができる。
木質部材1及び鋼部材2の双方に軸力が導入されていない状態で材端プレート3が接合された木鋼複合柱では、
図7(a)に示すように、軸線方向の荷重が作用すると、荷重の載荷初期から双方の部材に軸方向力が付加される。そして、材端プレート3によって木質部材1と鋼部材2とのひずみ量は同じに維持されるので、木質部材1と鋼部材2とのそれぞれに負荷される軸方向力は、双方の軸方向の剛性比によって分配される。つまり、軸方向に作用する荷重が増加しても、木質部材の軸方向の剛性EwAwと鋼部材の軸方向の剛性EsAsとの比で荷重が負担される。ここでEwは木質部材の弾性係数、Awは木質部材の断面積、Esは鋼部材の弾性係数、Asは鋼部材の断面積である。
そして、軸方向の荷重が増大し、木質部材1又は鋼部材2のいずれかの圧縮応力度が許容応力度に達するまでの荷重を支持することができる。
図7(a)に示すように、一般に木質部材が許容応力度に達するときのひずみεwa1は鋼部材が許容応力度に達するときのひずみεsa1より大きくなっている。したがって、鋼部材の圧縮応力度が許容応力度に達したときに、鋼部材はPsaの軸力を負担し、木質部材の圧縮応力度は許容応力度に達しておらず、木質部材はPw1の軸力を負担する。この木質部材が負担する軸力Pw1は木質部材が許容応力度に達したときの負担する軸力Pwaより小さくなる。
【0046】
一方、
図7(b)中に示すように木質部材に圧縮力Pso、鋼部材に引張力Psoが導入された状態で材端プレートが接合されていると、木質部材の圧縮力と鋼部材の引張力が内力としてつり合った状態で、Pwo=Psoとなっている。そして、外力として軸方向の力が作用すると、木質部材の軸方向の剛性EwAwと鋼部材の軸方向の剛性EsAsとの比でそれぞれの負担する軸力が増加する。鋼部材の圧縮応力度が許容応力度に達したときに、鋼部材はPsaの軸力を負担し、木質部材はPw2の軸力を負担している。この木質部材が負担する軸力Pw2は、
図7(a)に示す無応力状態から荷重が載荷された場合の軸力Pw1より大きくなる。したがって、木鋼複合柱は、Psa+Pw2の軸力を支持することができるものとなり、木質部材に圧縮力、鋼部材に引張力が導入された状態で材端プレートと接合された状態としておくことにより、大きな耐荷力を有する木鋼複合柱とすることができる。
【0047】
以上に説明した実施形態の木鋼複合柱では、鋼部材2は端面を第2の鋼板32に突き合わせて溶接接合するものとなっているが、鋼部材は他の形態で材端プレートと接合することができ、例えば
図8に示すような接合形態とすることができる。
図8(a)に示す木鋼複合柱は、
図1から
図3までに示す木鋼複合柱と同様に木質部材51の側面に形成された溝に、帯状の鋼部材52が嵌め入れられたものである。そして、材端プレート53は、
図1から
図3までに示す木鋼複合柱で用いられている材端プレートと同じ第1の鋼板54、第2の鋼板55及び連結部材56を有するものであるが、これらの他に第1の鋼板54と第2の鋼板55と間に設けられた4つの連結板57を備えている。これらの連結板57は、第1の鋼板54の切り欠きを通過して突き出している鋼部材52の端部に沿った位置に設けられ、第1の鋼板54及び第2の鋼板55に溶接で接合されている。そして、鋼部材52はこれらの連結板57に重ね合わされ、双方の対応する位置に設けられた貫通孔に挿通された高力ボルト58によって接合されている。このような木鋼複合柱でも、
図1から
図3までに示す木鋼複合柱と同様な手段で木質部材51に圧縮力、鋼部材52に引張力を導入した状態で材端プレート53を接合することができる。
【0048】
図8(b)に示す木鋼複合柱では、木質部材61及び鋼部材62は、
図1から
図3までに示す木鋼複合柱と同じ断面形状となっており、材端プレート63も同様に第1の鋼板64と第2の鋼板65と連結部材66とを有するものである。この木鋼複合柱では、鋼部材62の端部にフランジ部62aが設けられており、このフランジ部62aを第2の鋼板65に当接し、ボルト67で接合するものである。鋼部材62が有するフランジ部62aには複数のボルト孔が設けられ、これらのボルト孔には雌ねじが形成されている。材端プレート63の第2の鋼板65には、当接されたフランジ部62aのボルト孔に対応する位置に貫通孔が設けられ、ボルト67をこれらの貫通孔に挿通し、フランジ部62aのボルト孔にねじ込み、締め付けることによって接合するものである。
鋼部材62は、材端プレート63の第1の鋼板64を木質部材61の端面に当接した状態で、フランジ部62aが第2の鋼板65と所定の間隙を開けて対向するように長さを調性しておき、上記ボルト67を締め付けることによって鋼部材のフランジ部62aを第2の鋼板65に当接させることもできる。このようにフランジ部62aを第2の鋼板65と接合することにより鋼部材62に引張力を導入し、木質部材に圧縮力を導入することができる。
【0049】
図8(c)に示す木鋼複合柱でも、木質部材71及び鋼部材72は、
図1から
図3までに示す木鋼複合柱と同じ断面形状となっており、材端プレート73も同様に第1の鋼板74と第2の鋼板75と連結部材76とを有するものである。この実施形態では、鋼部材72は端面が材端プレート73の第1の鋼板74と対向するように長さが調整されている。そして、端面から軸線方向にボルト穴が形成され、雌ねじが切削されている。材端プレート73の第1の鋼板74には、鋼部材72の端面に設けられたボルト穴と対応する位置に貫通孔が設けられている。そして、第1の鋼板74に設けられた貫通孔に挿通し、鋼部材72の端面に設けられたボルト穴にねじ込まれるボルト77によって鋼部材72と材端プレート73とが接合される。また、この木鋼複合柱でも、材端プレート73の第1の鋼板74を木質部材71の端面に当接させたときに、鋼部材72の端面と第1の鋼板74とが所定の間隙をあけて対向するように鋼部材72の長さを調整しておき、ボルト77を締め付ける力によって鋼部材72の端面を第1の鋼板74に当接させ、鋼部材72に引張力、木質部材71に圧縮力を導入した状態で鋼部材72と材端プレート73とを接合することもできる。
【0050】
一方、以上に説明した木鋼複合柱では鋼部材として帯状の鋼板を使用し、幅の広い面が木質部材に設けられた溝の深さ方向となるように嵌め入れたものとなっているが、鋼部材は他の断面形状のものを使用することもできる。例えば、
図9(a)に示すように木質部材81の溝に嵌め入れられたときに、木質部材の表面に沿った位置で軸線方向に連続するフランジ部82aを有し、断面がT字状となった鋼部材82を採用することができる.このような断面形状とすることにより鋼部材82の曲げ剛性及び断面積を大きくすることができ、鋼部材82の座屈が生じにくく、耐荷力が大きい木鋼複合柱とすることができる。
また、本発明の木鋼複合柱は、
図9(b)に示すように、鋼部材92として木質部材91の側面に沿った方向に長辺を有する矩形断面を有するものを採用することもできる。このような木鋼複合柱では、鋼部材92が木質部材91から離れる方向に座屈するおそれが生じることもあるが、鋼部材92を木質部材91に留め付けることによって鋼部材92の座屈を抑止することができる。
【0051】
その他、本発明は以上に説明した実施形態に限定されることなく、本発明の範囲内で態様を変更して実施することができる。
例えば、上記の実施形態はいずれも柱として使用するものであるが、ブレース等の軸力が大きく作用する部材として用いることもできる。
また、以上に説明した実施形態では、材端部材として鋼からなる材端プレートを用いているが、材端部材として鋼と他の材料との複合部材、例えば鋼とコンクリート又はモルタルとの複合部材、鉄筋コンクリートからなる部材等を使用することも可能である。
【符号の説明】
【0052】
1:木質部材, 2:鋼部材, 3:材端プレート,
11:木質部材に形成された溝,
21:ビス, 22:ドリフトピン,
31:第1の鋼板, 32:第2の鋼板, 33:連結部材, 34:第1の鋼板に形成された切り欠き, 35:ボルトを挿通する貫通孔,
41:反力板, 42:ジャッキ,
51:木質部材, 52:鋼部材, 53:材端プレート, 54:第1の鋼板, 55:第2の鋼板, 56:連結部材, 57:第1の鋼板と第2の鋼板との間の連結板, 58:高力ボルト,
61:木質部材, 62:鋼部材, 62a:鋼部材が備えるフランジ部, 63:材端プレート, 64:第1の鋼板, 65:第2の鋼板, 66:連結部材, 67:ボルト,
71:木質部材, 72:鋼部材, 73:材端プレート, 74:第1の鋼板, 75:第2の鋼板, 76:連結部材, 77:ボルト,
81:木質部材, 82:鋼部材, 82a:鋼部材の軸線方向に沿って設けられたフランジ部,
91:木質部材, 92:鋼部材,