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特開2023-114478植物栽培用材料、その製造法及び植物栽培用成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114478
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】植物栽培用材料、その製造法及び植物栽培用成形体
(51)【国際特許分類】
   A01G 24/30 20180101AFI20230810BHJP
   C08J 9/40 20060101ALI20230810BHJP
   A01G 24/48 20180101ALI20230810BHJP
   A01G 24/12 20180101ALI20230810BHJP
【FI】
A01G24/30
C08J9/40 CFF
A01G24/48
A01G24/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016782
(22)【出願日】2022-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】595171059
【氏名又は名称】ニッポー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003111
【氏名又は名称】あいそう弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆俊
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 泰正
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 宏
(72)【発明者】
【氏名】安恒 満
【テーマコード(参考)】
2B022
4F074
【Fターム(参考)】
2B022BA02
2B022BA22
2B022BB02
4F074AA78
4F074CC10Z
4F074CC28Z
4F074CE15
4F074CE44
4F074CE77
4F074CE98
4F074DA46
(57)【要約】
【課題】ポリウレタンフォームを基材とする物栽培用材料及び植物栽培用成形体であっても、良好な吸水性と保水性を備え、保有する肥料の早期離脱がなく、持続的な肥料放出性を備える植物栽培用材料、その製造法及び植物栽培用成形体を提供する。
【解決手段】ポリウレタンフォームを基材とする植物栽培用材料1は、多数の連続気泡21を有するポリウレタンフォーム基材2と、ポリウレタンフォーム基材2の連続気泡21の内壁に保持された珪藻土粉末4とを備え、珪藻土粉末4の表面には、アルギン酸塩が付着しており、珪藻土粉末4および/またはアルギン酸塩5が植物栽培用肥料を保有しており、植物栽培用材料1は、吸水性を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンフォームを基材とする植物栽培用材料であって、
前記植物栽培用材料は、多数の連続気泡を有するポリウレタンフォーム基材と、前記ポリウレタンフォーム基材の前記連続気泡の内壁に保持された珪藻土粉末とを備え、前記珪藻土粉末の表面には、アルギン酸塩が付着しており、かつ、前記珪藻土粉末および/または前記アルギン酸塩が植物栽培用肥料を保有しており、さらに、前記植物栽培用材料は、吸水性を備えていることを特徴とする植物栽培用材料。
【請求項2】
前記珪藻土粉末は、前記珪藻土粉末の表面に付着したアルギン酸塩の固化物により、前記ポリウレタンフォーム基材内に形成された連続気泡の内壁に保持されている請求項1に記載の植物栽培用材料。
【請求項3】
前記アルギン酸塩の固化物は、水溶性固化物である請求項2に記載の植物栽培用材料。
【請求項4】
前記珪藻土粉末は、前記アルギン酸塩の固化物により被覆されている請求項1ないし3のいずれかに記載の植物栽培用材料。
【請求項5】
前記ポリウレタンフォーム基材は、押圧による圧縮および押圧解除による回復が可能な軟質ポリウレタンフォーム基材である請求項1ないし4のいずれかに記載の植物栽培用材料。
【請求項6】
前記ポリウレタンフォーム基材は、植物栽培用肥料を保有している請求項1ないし5のいずれかに記載の植物栽培用材料。
【請求項7】
前記アルギン酸塩は、アルギニン酸と1価カチオンからなる水溶性塩である請求項1ないし6のいずれかに記載の植物栽培用材料。
【請求項8】
前記請求項1ないし7のいずれかに記載の植物栽培用材料により所定形状に成形された植物栽培用成形体。
【請求項9】
前記植物栽培用成形体は、上面より内方に延びるスリットを備えている請求項8に記載の植物栽培用成形体。
【請求項10】
前記スリットは、十字スリットである請求項9に記載の植物栽培用成形体。
【請求項11】
前記スリットは、前記植物栽培用成形体の下面に到達していない請求項9または10に記載の植物栽培用成形体。
【請求項12】
有底容器と、前記有底容器内に収納された前記請求項1ないし7のいずれかに記載の植物栽培用材料または請求項8ないし11のいずれかに記載の植物栽培用成形体とを備える植物栽培用床。
【請求項13】
ポリウレタンフォームを基材とする植物栽培用材料の製造方法であって、
前記植物栽培用材料の製造方法は、
多数の連続気泡を有するポリウレタンフォーム基材を準備する工程と、
アルギン酸塩、植物肥料、珪藻土粉末と水からなる珪藻土溶液を調製する工程と、
前記珪藻土溶液に、前記ポリウレタンフォーム基材を投入し、さらに、前記ポリウレタンフォーム基材を押圧して、前記ポリウレタンフォーム基材内に珪藻土溶液を含浸させる珪藻土溶液浸透工程と、
前記珪藻土溶液を含浸したポリウレタンフォーム基材を乾燥させる第1の乾燥工程と、
前記第1の乾燥工程にて乾燥したポリウレタンフォーム基材に植物肥料含有水を塗布する工程と、
前記植物肥料含有水が塗布されたポリウレタンフォーム基材を乾燥させる第2の乾燥工程とを行うことを特徴とするポリウレタンフォームを基材とする植物栽培用材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物栽培用材料、その製造法及び植物栽培用成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
園芸用栽培床、植栽用基材として、土壌・培土以外の材質を主体としたものが開発されている。
このような栽培床としては、例えば、特開2005-176756(特許文献1)がある。特許文献1のものでは、骨材を含有するポリウレタンフォームからなり、ポリウレタンフォームがさらに肥料分を含有するものとなっている。
そして、特許文献1のものでは、ポリウレタンフォームに肥料分を含有させる場合には、肥料分と骨材とを別々に含有させてもよいし、肥料分を含む骨材を添加して肥料分を含有させてもよいし、さらには両者を併用してもよい。肥料分の形態は固体でもよいし、液体でもよいとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-176756
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、ポリウレタンフォームに肥料分を含有させる方法として、骨材とは別に肥料分をポリウレタン樹脂の原料に添加する方法、骨材を含むポリウレタンフォームに液体状の肥料分を散布する方法を挙げている。
しかし、肥料分を含む骨材を添加して肥料分を含有させたものでは、肥料の放出が良好に行われない可能性が高い。また、骨材を含むポリウレタンフォームに液体状の肥料分を散布したものでは、肥料の離脱が生じ易く、持続性が低い。また、ウレタンフォームは、ある程度の撥水性を有するため、吸水性も十分ではない。
【0005】
本発明の目的は、ポリウレタンフォームを基材とする植物栽培用材料及び植物栽培用成形体であっても、良好な吸水性と保水性を備え、保有する肥料の早期離脱がなく、持続的な肥料放出性を備える植物栽培用材料、その製造法及び植物栽培用成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) ポリウレタンフォームを基材とする植物栽培用材料であって、
前記植物栽培用材料は、多数の連続気泡を有するポリウレタンフォーム基材と、前記ポリウレタンフォーム基材の前記連続気泡の内壁に保持された珪藻土粉末とを備え、前記珪藻土粉末の表面には、アルギン酸塩が付着しており、かつ、前記珪藻土粉末および/または前記アルギン酸塩が植物栽培用肥料を保有しており、さらに、前記植物栽培用材料は、吸水性を備えている植物栽培用材料。
【0007】
(2) 前記珪藻土粉末は、前記珪藻土粉末の表面に付着したアルギン酸塩の固化物により、前記ポリウレタンフォーム基材内に形成された連続気泡の内壁に保持されている上記(1)に記載の植物栽培用材料。
(3) 前記アルギン酸塩の固化物は、水溶性固化物である上記(2)に記載の植物栽培用材料。
(4) 前記珪藻土粉末は、前記アルギン酸塩の固化物により被覆されている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の植物栽培用材料。
(5) 前記ポリウレタンフォーム基材は、押圧による圧縮および押圧解除による回復が可能な軟質ポリウレタンフォーム基材である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の植物栽培用材料。
(6) 前記ポリウレタンフォーム基材は、植物栽培用肥料を保有している上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の植物栽培用材料。
(7) 前記アルギン酸塩は、アルギニン酸と1価カチオンからなる水溶性塩である上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の植物栽培用材料。
(8) 前記上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の植物栽培用材料により所定形状に成形された植物栽培用成形体。
(9) 前記植物栽培用成形体は、上面より内方に延びるスリットを備えている上記(8)に記載の植物栽培用成形体。
(10) 前記スリットは、十字スリットである上記(9)に記載の植物栽培用成形体。
(11) 前記スリットは、前記植物栽培用成形体の下面に到達していない上記(9)または(10)に記載の植物栽培用成形体。
【0008】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(12) 有底容器と、前記有底容器内に収納された前記上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の植物栽培用材料または上記(8)ないし(11)のいずれかに記載の植物栽培用成形体とを備える植物栽培用床。
【0009】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(13) ポリウレタンフォームを基材とする植物栽培用材料の製造方法であって、
前記植物栽培用材料の製造方法は、
多数の連続気泡を有するポリウレタンフォーム基材を準備する工程と、
アルギン酸塩、植物肥料、珪藻土粉末と水からなる珪藻土溶液を調製する工程と、
前記珪藻土溶液に、前記ポリウレタンフォーム基材を投入し、さらに、前記ポリウレタンフォーム基材を押圧して、前記ポリウレタンフォーム基材内に珪藻土溶液を含浸させる珪藻土溶液浸透工程と、
前記珪藻土溶液を含浸したポリウレタンフォーム基材を乾燥させる第1の乾燥工程と、
前記第1の乾燥工程にて乾燥したポリウレタンフォーム基材に植物肥料含有水を塗布する工程と、
前記植物肥料含有水が塗布されたポリウレタンフォーム基材を乾燥させる第2の乾燥工程とを行うポリウレタンフォームを基材とする植物栽培用材料の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリウレタンフォームを基材とする植物栽培用材料は、多数の連続気泡を有するポリウレタンフォーム基材と、ポリウレタンフォーム基材の連続気泡の内壁に保持された珪藻土粉末とを備え、珪藻土粉末の表面には、アルギン酸塩が付着しており、かつ、珪藻土粉末および/またはアルギン酸塩が植物栽培用肥料を保有しており、さらに、植物栽培用材料は、吸水性を備えている。
この植物栽培用材料は、珪藻土粉末を保有することにより、吸水性と保水性を有し、さらに、珪藻土粉末および/またはアルギン酸塩が植物栽培用肥料を保有しており、珪藻土粉末の表面には、アルギン酸塩が付着しているため、肥料を保有する珪藻土粉末のポリウレタンフォーム基材からの離脱が少ないとともに、持続的な肥料放出が期待でき、良好な植物育成を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明のポリウレタンフォームを基材とする植物栽培用材料の内部構造を説明するための説明図である。
図2図2は、本発明の実施例のポリウレタンフォームを基材とする植物栽培用材料を用いた植物栽培用床の断面図である。
図3図3は、本発明の植物栽培用材料により所定形状に成形された植物栽培用成形体を用いた植物栽培用床の正面図である。
図4図4は、図3に示した植物栽培用床の平面図である。
図5図5は、図3に示した植物栽培用床の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のポリウレタンフォームを基材とする植物栽培用材料を図面に示した実施例を用いて説明する。
本発明のポリウレタンフォームを基材とする植物栽培用材料1は、多数の連続気泡21を有するポリウレタンフォーム基材2と、ポリウレタンフォーム基材2の連続気泡21の内壁に保持された珪藻土粉末4とを備え、珪藻土粉末4の表面には、アルギン酸塩が付着しており、珪藻土粉末4および/またはアルギン酸塩5が植物栽培用肥料を保有しており、さらに、植物栽培用材料1は、吸水性を備えている。
【0013】
本発明のポリウレタンフォームを基材とする植物栽培用材料の内部構造を説明するための説明図である図1に示すように、本発明の植物栽培用材料は、多数の連続気泡21を有するポリウレタンフォーム基材2と、この基材2の連続気泡21の内壁に保持された珪藻土粉末4とを備える。この実施例では、珪藻土粉末4は、珪藻土粉末4の表面に付着したアルギン酸塩の固化物により、ポリウレタンフォーム基材2内に形成された連続気泡21の内壁に保持されている。さらに、珪藻土粉末4が、植物栽培用肥料を保有している。
【0014】
なお、植物栽培用肥料は、珪藻土粉末4が直接保有すること、または、珪藻土粉末4に付着したアルギン酸塩の固化物5が保有することにより、珪藻土粉末4が保有した状態となっている。さらには、植物栽培用肥料は、珪藻土粉末4が直接保有するものと、珪藻土粉末4に付着したアルギン酸塩の固化物5が保有するものの両者を有するものであってもよい。
植物栽培用肥料の形態としては、植物栽培用肥料乾燥物であることが好ましい。植物栽培用肥料乾燥物は、完全乾燥物ではなく、ある程度の水分が除去されたもの(具体的には、乾燥工程を経たもの)であればよい。
アルギン酸塩固化物の形態としては、アルギン酸塩の乾燥固化物、アルギン酸塩の粘性保有固化物、アルギン酸塩の粘性保有および含水固化物などいずれであってもよい。
【0015】
図1に示すものでは、ポリウレタンフォーム基材2は、多数の連続気泡21、言い換えれば、複数のセル(空孔)が連結し、ポリウレタンフォーム基材2の上面から下面まで連通した連通路を有している。そして、珪藻土粉末4は、アルギン酸塩の固化物5により被覆されている。被覆としては、完全被覆、一部被覆のいずれでもよいが、完全被覆が好ましい。
そして、珪藻土粉末4は、珪藻土粉末4の表面に付着したアルギン酸塩の固化物を介して、ポリウレタンフォーム基材2内に形成された連続気泡(連通路)21の内壁に保持されている。
多数の連続気泡21を有するポリウレタンフォーム基材2としては、押圧による圧縮および押圧解除による回復が可能な軟質ポリウレタンフォーム基材2であることが好ましい。
【0016】
軟質ポリウレタンフォームは、ポリオール、イソシアネート、水、触媒(アミン触媒、金属触媒等)および整泡剤等を混合、撹拌することにより成形された軟質ポリウレタンフォームとして一般に使用されているものであればよく、成分組成や使用原料によって特に制限されない。通常の軟質ポリウレタンフォームから成形した成形品であることが好ましい。なお、成形品を切り出した際に生じる端材も使用することができる。
【0017】
軟質ポリウレタンフォーム基材としては、密度(JIS K 7222)が10~60kg/mであるのが好ましい。10kg/m以上であれば、植物栽培用材料として適した機械的強度を有する。また、60kg/m以下であれば、十分な量のアルギン酸塩固化物が付着した珪藻土粉末を担持することができる。
【0018】
また、軟質ポリウレタンフォーム基材は、セル数(JIS K 6400)が20~70個/25mmが好ましい。セル数が20個/25mm以上であれば、十分な量のアルギン酸塩固化物が付着した珪藻土粉末を担持することができる。また、セル数が70個/25mm以下であれば、植物栽培用材料として適した機械的強度を有する。セル数の調節は、発泡剤の量や整泡剤の量及び種類等によって行うことができる。
【0019】
軟質ポリウレタンフォーム基材としては、撥水性のもの、親水性を有するもののいずれも用いることができる。そして、本発明のポリウレタンフォームを基材とする植物栽培用材料1は、ポリウレタンフォーム基材2の連続気泡21の内壁に保持された珪藻土粉末4により、吸水性と保水性を備えるものとなっている。
【0020】
本発明に用いられる珪藻土粉末としては、いわゆる珪藻土の粉末、また、珪質頁岩粉末が用いられる。珪藻土は、藻類が海底や湖底に長年にわたって沈積し、体内の原形質が分解し、珪酸を主体にした遺殻からなる堆積岩をいう。珪質頁岩は、珪藻プランクトンの遺骸が堆積して形成された珪藻土が地圧と地熱の影響による地質的変化を受けて出来た頁岩状の岩石である。珪藻土粉末は、多孔質構造を有する。珪藻土粉末の含水率は5~40質量%であるものが好ましい。珪藻土粉末の平均粒径は、10~100μm程度であることが好ましい。特に、30~80μmであることが好ましい。
本発明のポリウレタンフォームを基材とする植物栽培用材料1における珪藻土粉末4の含有量としては、0.01~0.15g/cm程度が好適と考える。特に、0.015~0.06g/cmが好適と考える。
【0021】
本発明に用いられるアルギン酸塩としては、水溶性のものが用いられる。具体的には、アルギニン酸と1価カチオンからなる水溶性塩、例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウムが使用される。特に、アルギン酸ナトリウムが好ましい。そして、珪藻土粉末に付着したアルギン酸塩固化物は、水溶性固化物であることが好ましい。言い換えれば、付着した珪藻土粉末に付着したアルギン酸もしくアルギン酸塩は、多価カチオンと結合した不溶性の塩となっていない。このため、珪藻土粉末の吸水性を阻害しないものとなっている。
【0022】
水溶性のアルギン酸塩は、海藻(褐藻類)からの抽出によって製造されている。水溶性のアルギン酸塩は、アルギニン酸と1価カチオンからなる水溶性塩であり、アルギン酸のカルボキシル基が1価カチオン、例えば、Naイオン、カリウムイオンと結合した中性塩である。水溶性のアルギン酸塩は、冷水、温水に良く溶けて、粘ちょうな水溶液を形成する。
水溶性のアルギン酸塩、例えば、アルギン酸ナトリウムは冷水、温水に溶けて、粘りのあるコロイド溶液となる。水溶液の粘りである粘度は、アルギン酸ナトリウムの分子量、つまりアルギン酸を構成するウロン酸分子の重合度に応じて変化し、分子量の大きなものは低い濃度でも高い粘度を示し、低分子量になるほど粘度は低くなる。
【0023】
本発明に用いられるアルギン酸塩としては、製造工程も踏まえて、あまり高粘度とならないものが好ましい。本発明に用いられるアルギン酸塩、低分子量から中程度分子量のもの、具体的には、GPC測定による重量平均分子量が1万~500万、好ましくは2万~200万程度のものが好適と考える。
【0024】
本発明に用いられる肥料としては、水溶性の化学肥料、化成肥料が好適に使用される。また、水溶性の肥料としては、粒状肥料、粉末肥料を水に溶解したもの、水性肥料をそのままもしくは希釈したものが用いられる。なお、本発明の植物栽培用材料1では、珪藻土粉末が、水溶性肥料の乾燥物が保有している。
さらに、本発明の植物栽培用材料1は、ポリウレタンフォーム基材2も直接植物栽培用肥料を保有しているものであってもよい。ポリウレタンフォーム基材2が直接保有する植物栽培用肥料は、植物栽培用材料1に水が投与されたとき、初期に植物栽培用材料1より、放出するので、植物への肥料の初期投与が良好に行われるものとなる。
【0025】
本発明に用いられる肥料としては、窒素質肥料、リン酸質肥料、加里質肥料のほか、必要によって植物必須要素のカルシウム、マグネシウム、硫黄、鉄、マンガンやほう素等の微量要素やケイ素等を含有する化学肥料、化成肥料が好ましい。具体的には、商品名ユニバゾール(高純度粉末液肥、株式会社ハイポネックスジャパン)が好適に使用できる。
本発明の植物栽培用材料1の形状としては、図2に示すもののように、多数の植物栽培用材料1を容器に入れて使用する場合においては、適宜の形状、例えば、球状、円柱状、多角中状、不定形状などに形成される。その大きさとしては、5mm以上が好ましいと考える。特に、10mm以上が好ましいと考える。
【0026】
次に、本発明のポリウレタンフォームを基材とする植物栽培用材料の製造方法について説明する。
本発明の植物栽培用材料の製造方法では、多数の連続気泡を有するポリウレタンフォーム基材を準備する工程と、アルギン酸塩、植物肥料、珪藻土粉末と水からなる珪藻土溶液を調製する工程と、珪藻土溶液に、ポリウレタンフォーム基材を投入し、さらに、ポリウレタンフォーム基材を押圧して、ポリウレタンフォーム基材内に珪藻土溶液を含浸させる珪藻土溶液浸透工程と、珪藻土溶液を含浸したポリウレタンフォーム基材を乾燥させる第1の乾燥工程と、第1の乾燥工程にて乾燥したポリウレタンフォーム基材に植物肥料含有水を塗布する工程と、植物肥料含有水が塗布されたポリウレタンフォーム基材を乾燥させる第2の乾燥工程とを行う。
【0027】
多数の連続気泡を有するポリウレタンフォーム基材を準備する工程では、ポリウレタンフォームを基材とする植物栽培用材料に適したポリウレタンフォーム基材を購入すること、自ら作成することにより行われる。なお、準備する軟質ポリウレタンフォーム基材としては、上述した密度、セル数を有するものを準備することが好ましい。
【0028】
アルギン酸塩、植物肥料、珪藻土粉末と水からなる珪藻土溶液を調製する工程は、水にアルギン酸塩、水溶性植物肥料、および珪藻土粉末を混合、攪拌し、ほぼ均一に珪藻土粉末が分散した珪藻土溶液を調製することにより行われる。アルギン酸塩、水溶性植物肥料、珪藻土粉末としては、上述したものが好適に使用される。
【0029】
次に、上述のように調製された珪藻土溶液に、ポリウレタンフォーム基材を投入し、さらに、ポリウレタンフォーム基材を押圧して、ポリウレタンフォーム基材内に珪藻土溶液を含浸させる珪藻土溶液浸透工程が行われる。この工程は、珪藻土溶液が注入された珪藻土溶液槽に、ポリウレタンフォーム基材を投入し、ポリウレタンフォーム基材の上面を押圧し、ポリウレタンフォーム基材の圧縮、圧縮の解放を繰り返すことにより行われる。この工程により、珪藻土溶液を含浸したポリウレタンフォーム基材が作成される。
【0030】
次に、珪藻土溶液を含浸したポリウレタンフォーム基材を乾燥させる第1の乾燥工程が行われる。この工程は、珪藻土溶液を含浸したポリウレタンフォーム基材を乾燥機に入れ、加温乾燥することにより行われる。
さらに、本願発明では、第1の乾燥工程にて乾燥したポリウレタンフォーム基材に植物肥料含有水を塗布する工程が行われる。植物肥料含有水の塗布は、乾燥したポリウレタンフォーム基材の上面より、植物肥料含有水の散布、スプレー塗布による行うことが好ましい。
続いて、植物肥料含有水が塗布されたポリウレタンフォーム基材を乾燥させる第2の乾燥工程を行う。この乾燥工程は、風乾、または乾燥機による加温乾燥により行なわれる。
【0031】
次に、図2に示す、本発明の実施例のポリウレタンフォームを基材とする植物栽培用材料を用いた植物栽培用床について説明する。
この実施例の植物栽培用床(植物栽培用ポッド)20は、図2に示すように、上方が開口した有底容器7と、有底容器7内に収納された複数の本発明のポリウレタンフォームを基材とする植物栽培用材料1を備えている。植物栽培用材料1としては、上述したものが好適に用いられる。
有底容器7は、円筒状側部71、底部73、内部収納部72、円筒状側部71の上端に形成されたフランジ74を有する。有底容器7は、合成樹脂、紙類、セラミック焼成物などにより形成されたものが用いられる。有底容器7の底部73には、開口75が設けられており、排水を可能としている。
いる。
【0032】
次に、図3に示す、本発明の実施例のポリウレタンフォームを基材とする植物栽培用材料を用いた植物栽培用床について説明する。
この実施例の植物栽培用床(植物栽培用ポッド)30は、図3に示すように、上方が開口した有底容器7と、有底容器7内に収納された植物栽培用成形体10を備えている。植物栽培用成形体10は、本発明のポリウレタンフォームを基材とする植物栽培用材料1を所定形状に成形したものであり、その構成は、上述した植物栽培用材料1と同じものが好適に用いられる。
【0033】
有底容器7は、図2に示したものと同様に、円筒状側部71、底部73、内部収納部72、円筒状側部71の上端に形成されたフランジ74を有する。有底容器7は、合成樹脂、紙類、セラミック焼成物などにより形成されたものが用いられる。有底容器7の底部73には、開口75が設けられており、排水を可能としている。
【0034】
また、植物栽培用成形体10は、図4および図5に示すように、スリット12を備えている。スリット12は、成形体の上面のほぼ中心を通り、かつ、上面の直径より短い長さを有し、成形体の上面より下面方向に延びる第1のスリット12aと、第1のスリット12aと同様に形態を持ち、かつ第1のスリット12aと交差する第2のスリット12bを備えている。第1のスリット12aと第2のスリット12bは、ほぼ直交するものとなっている。この実施例では、スリット12は、十字状スリットとなっている。
また、第1のスリット12aと第2のスリット12bは、図5に示すように、植物栽培用成形体10の下面に到達しないものとなっている。言い換えれば、第1のスリット12aと第2のスリット12bは、図5に示すように、植物栽培用成形体10の下面より上方となる位置にて終端している。
【符号の説明】
【0035】
1 植物栽培用材料
2 ポリウレタンフォーム基材
4 珪藻土粉末
7 有底容器
10 植物栽培用成形体
20、30 植物栽培用床
図1
図2
図3
図4
図5