(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114486
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】柱梁接合構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20230810BHJP
E04B 1/24 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
E04B1/58 508S
E04B1/24 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016792
(22)【出願日】2022-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000110446
【氏名又は名称】ナカジマ鋼管株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 功雄
(72)【発明者】
【氏名】中島 教雄
(72)【発明者】
【氏名】中島 伸
(72)【発明者】
【氏名】加納 英樹
(72)【発明者】
【氏名】中島 正博
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA03
2E125AA13
2E125AB01
2E125AB16
2E125AC15
2E125AC16
2E125AG49
2E125CA90
(57)【要約】
【課題】仕口部の各角部と外ダイヤフラムの各角部との間での目違いを防止するために成形方法を限定した外ダイヤフラムを用いることなく、仕口部に対する外ダイヤフラムの外篏を行うことが可能な柱梁接合構造を提供する。
【解決手段】柱梁接合構造10は、角形鋼管によって構成されるシャフト21と、シャフト21と接合される梁31と、角形リング状に成形され、シャフト21に対する梁31の接合位置である仕口部22に外嵌される外ダイヤフラム41と、仕口部22の角部23の外周面22aと、仕口部22に外嵌された外ダイヤフラム41の角部42の内周面41bと、の間に形成される角部隙間S2に嵌合される裏当て金51と、を備えるものである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
角形鋼管によって構成される柱部材と、
前記柱部材と接合される梁部材と、
角形リング状に成形され、前記柱部材に対する前記梁部材の接合位置である仕口部に外嵌される外ダイヤフラムと、
前記仕口部の角部の外周面と、前記仕口部に外嵌された前記外ダイヤフラムの角部の内周面と、の間に形成される隙間に嵌合される裏当て金と、
を備えること
を特徴とする柱梁接合構造。
【請求項2】
前記裏当て金は、前記外ダイヤフラムと同質の部材によって構成されること
を特徴とする請求項1に記載の柱梁接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱に梁を接合させるための柱梁接合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、柱に梁を接合させるための柱梁接合構造としては、例えば、特許文献1に示すような柱梁接合構造がある。特許文献1に示す柱梁接合構造では、角形鋼管柱に対する梁の接合位置(仕口部)であって、当該角形鋼管柱の長さ方向の複数箇所に、角形リング状の外ダイヤフラムを外篏して溶接結合することで梁の接合位置を補強する。
【0003】
特許文献1のような従来の柱梁接合構造では、角形鋼管柱(仕口部)と梁との接合部における強度を確保するために、外ダイヤフラムの板厚が、所定の厚さで制御されている。例えば、特許文献1の柱梁接合構造では、外ダイヤフラムの板厚が、角形鋼管柱の板厚以上の板厚で制御されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の柱梁接合構造のように、角形鋼管柱(仕口部)と梁との結合部における強度を確保するために、角形鋼管柱の板厚以上の板厚を有する外ダイヤフラムを用いると、外ダイヤフラムの各角部の内面曲率半径が、角形鋼管柱(仕口部)の各角部の外面曲率半径よりも小さく成形される。このため、角形鋼管柱(仕口部)に対して外ダイヤフラムを外篏した際に、角形鋼管柱(仕口部)の各角部と外ダイヤフラムの各角部との間で目違いが生じるという問題があった。
【0006】
ここで、特許文献1の柱梁接合構造では、外ダイヤフラムを熱間成形によって成形して、外ダイヤフラムの各角部の内面曲率半径を、角形鋼管柱(仕口部)の各角部の外面曲率半径に応じて自由に変更することで上記目違いを防止している。
【0007】
このように、特許文献1のような従来の柱梁接合構造では、上記目違いを防止するために、外ダイヤフラムを熱間成形よって製造する等、外ダイヤフラムの成形方法が限定的であった。
【0008】
そこで、本発明は、仕口部の各角部と外ダイヤフラムの各角部との間での目違いを防止するために成形方法を限定した外ダイヤフラムを用いることなく、仕口部に対する外ダイヤフラムの外篏を行うことが可能な柱梁接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上であり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
即ち、本発明の柱梁接合構造は、角形鋼管によって構成される柱部材と、前記柱部材と接合される梁部材と、角形リング状に成形され、前記柱部材に対する前記梁部材の接合位置である仕口部に外嵌される外ダイヤフラムと、前記仕口部の角部の外周面と、前記仕口部に外嵌された前記外ダイヤフラムの角部の内周面と、の間に形成される隙間に嵌合される裏当て金と、を備えるものである。
上記構成では、仕口部の角部の外周面と、仕口部に外嵌された外ダイヤフラムの角部の内周面と、の間に形成される隙間が、裏当て金によって埋められる。
【0011】
また、本発明の柱梁接合構造では、前記裏当て金は、前記外ダイヤフラムと同質の部材によって構成されるものである。
上記構成では、仕口部の角部の外周面と、仕口部に外嵌された外ダイヤフラムの角部の内周面と、の間に形成される隙間が、外ダイヤフラムと同質の裏当て金によって埋められる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の柱梁接合構造によれば、仕口部の角部の外周面と、仕口部に外嵌された外ダイヤフラムの角部の内周面と、の間に形成される隙間に裏当て金が嵌合されることで、仕口部に対して外ダイヤフラムを外篏した際に、仕口部の各角部と外ダイヤフラムの各角部との間で目違いが生じる場合であっても、上記隙間を裏当て金によって埋めることができる。そのため、上記目違いを防止するために成形方法を限定した外ダイヤフラムを用いることなく、仕口部に対する外ダイヤフラムの外篏を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態に係る柱梁接合構造の斜視図である。
【
図2】同柱梁接合構造における要部の一部切り欠き平面図である。
【
図3】同柱梁接合構造における要部の縦断正面図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る柱梁接合構造における裏当て金の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の柱梁接合構造10について説明する。なお、本発明は、以下に説明する柱梁接合構造10に限定されるものではない。
【0015】
図1に示すように、柱梁接合構造10は、角形鋼管によって構成されるシャフト21(「柱部材」の一例)と、シャフト21と接合される梁31(「梁部材」の一例)と、角形リング状に成形され、シャフト21に対する梁31の接合位置である仕口部22に外嵌される外ダイヤフラム41と、から主に構成されている。
【0016】
柱梁接合構造10においては、外ダイヤフラム41が外篏されて所望の長さに加工されたシャフト21が、所定本数、建築現場等に搬送される。そして、シャフト21の下端が図示しない座板等に溶接結合されることによって所定位置に立設される。さらに、シャフト21の仕口部22の外周面22a及び外ダイヤフラム41の外周面41aに梁31の端部を溶接結合によって連結することで、柱梁接合構造10が構成される。
【0017】
図2に示すように、シャフト21は、冷間成形よって断面視四角形状に成形される中空状の角形鋼管である。シャフト21は、所定の板厚tcであり、各角部23が所定の外面曲率半径rであり、且つ、所定の外寸dとなるように冷間成形されている。なお、本実施の形態では、シャフト21を冷間成形によって成形しているが、これに限定されるものではなく、シャフト21を熱間成形によって成形しても構わない。
【0018】
図1及び
図2に示すように、梁31は、H形鋼によって形成されている。梁31は、対向する2枚の平板状のフランジ32と、対向するフランジ32の間に形成されるウェブ33と、から構成される。梁31は、シャフト21の仕口部22の四方に向く外周面22aのそれぞれから水平方向に延びて設けられる。梁31は、フランジ32が上下方向に対向した位置となり、且つウェブ33の一端面がシャフト21の仕口部22における一方の外周面22aに沿って当接するように、シャフト21の仕口部22に固着される。
【0019】
図1に示すように、外ダイヤフラム41は、シャフト21の仕口部22の長さ方向における複数箇所(
図1においては2箇所)にそれぞれ外篏され、溶接接合される。仕口部22に溶接接合された外ダイヤフラム41の四方に向く外周面41aには、梁31のフランジ32の一端部が固定される。これによって、梁31がシャフト21(仕口部22)から水平方向に延びて設けられる。
【0020】
外ダイヤフラム41は、外ダイヤフラム41用に成形した断面視四角形状に成形される中空状の角形鋼管を、図示しない定寸切断装置によって切断することで製造される。外ダイヤフラム41用の角形鋼管は、シャフト21の仕口部22と梁31との接合部における強度を確保するために、板厚Wがシャフト21(仕口部22)の板厚tc以上(W≧tc)である鋼板を冷間プレス成形することで成形される。具体的には、外ダイヤフラム41用の角形鋼管は、板厚Wが40mm以上の極厚鋼板によって成形される。外ダイヤフラム41用の角形鋼管は、シャフト21(仕口部22)の外寸dよりも大きい内寸D1に成形されるとともに、所定の外寸D2で成形されている。外ダイヤフラム41用の角形鋼管は、外ダイヤフラム41の高さHが板厚Wの2倍以上(H≧2W)になるように、図示しない定寸切断装置によって切断される。ここで、外ダイヤフラム41の高さHとは、
図3に示すように、外ダイヤフラム41をシャフト21の仕口部22に外篏した際の外ダイヤフラム41の上下方向における長さをいう。
【0021】
このような外ダイヤフラム41用の角形鋼管から外ダイヤフラム41を製造することで、
図2及び
図3に示すように、外ダイヤフラム41は、シャフト21(仕口部22)の外寸dよりも大きい内寸D1、所定の外寸D2、シャフト21(仕口部22)の板厚tc以上の板厚W、板厚Wの2倍以上の高さHである角形リング状の部材に成形される。また、外ダイヤフラム41は、その各角部42が、シャフト21(仕口部22)の外面曲率半径rよりも小さい内面曲率半径R1で成形されるとともに、所定の外面曲率半径R2で成形されている。外ダイヤフラム41の内周面41bにおける上下端の全周には、開先部43が形成されている。
【0022】
このような寸法関係によってシャフト21(仕口部22)及び外ダイヤフラム41を成形することで、シャフト21(仕口部22)の外周面22aと、外ダイヤフラム41の内周面41bとの間には側部隙間S1が生じる。柱梁接合構造10においては、この側部隙間S1を利用することで、シャフト21(仕口部22)に対する外ダイヤフラム41の外篏を行う。
【0023】
一方で、外ダイヤフラム41が、板厚Wがシャフト21(仕口部22)の板厚tc以上(W≧tc)である鋼板を冷間プレス成形することで製造されるため、シャフト21(仕口部22)に対して外ダイヤフラム41を外篏した際に、シャフト21(仕口部22)の各角部23の外周面22aと、仕口部22に外嵌された外ダイヤフラム41の各角部42の内周面41bと、の間に、側部隙間S1より間隔の大きい角部隙間S2(「隙間」の一例)が生じる。すなわち、仕口部22の各角部23と外ダイヤフラム41の各角部42との間で目違いが生じる。そのため、柱梁接合構造10においては、当該目違いを防止するために、各角部42の内周面41bに裏当て金51を接合した外ダイヤフラム41をシャフト21の仕口部22に外嵌する。
【0024】
図2、
図4及び
図5に示すように、裏当て金51は、平面断面視略三日月形状の湾曲部材である。裏当て金51は、外ダイヤフラム41と同質の部材によって構成されている。裏当て金51を外ダイヤフラム41と同質の部材によって構成することで、裏当て金51と外ダイヤフラム41との溶接部の強度を増加させることができる。
【0025】
裏当て金51は、その一端面52がシャフト21の各角部23の外面曲率半径rよりも若干大きい内面曲率半径で湾曲している。裏当て金51の一端面52は、外ダイヤフラム41がシャフト21の仕口部22に対して外嵌される際に、シャフト21の仕口部22の各角部23の外周面22aと対向する。裏当て金51は、その一端面52の上下端に開先部54が形成されている。
【0026】
裏当て金51は、その他端面53が外ダイヤフラム41の各角部42の内面曲率半径R1よりも若干小さい外面曲率半径で湾曲している。裏当て金51の他端面53は、外ダイヤフラム41がシャフト21の仕口部22に対して外嵌される際に、外ダイヤフラム41の各角部42の内周面41bと対向する。
【0027】
裏当て金51は、その高さH2が外ダイヤフラム41の高さHと略同様の高さである。ここで、裏当て金51の高さH2とは、外ダイヤフラム41をシャフト21の仕口部22に外篏した際の裏当て金51の上下方向における長さをいう。
【0028】
裏当て金51は、その厚さW1が、角部隙間S2の大きさに応じて変更される。具体的には、裏当て金51の厚さW1は、シャフト21の各角部23の外面曲率半径rに影響するシャフト21の板厚tc及び外寸dと、外ダイヤフラム41の各角部42の内面曲率半径R1に影響する外ダイヤフラム41の板厚W及び内寸D1と、に応じて変更される。
【0029】
次に、シャフト21の仕口部22に対して外ダイヤフラム41を外嵌する方法について説明する。
【0030】
柱梁接合構造10においては、外ダイヤフラム41をシャフト21に外嵌する前に、外ダイヤフラム41の各角部42の内周面41bに裏当て金51が溶接接合される。
【0031】
図2及び
図4に示すように、裏当て金51は、他端面53が外ダイヤフラム41の角部42の内周面41bと接触するように配置される。外ダイヤフラム41の角部42に配置された裏当て金51は、外ダイヤフラム41の角部42の内周面41bの上下端に形成される開先部43を利用して外ダイヤフラム41の角部42の内周面41bに溶接接合される。具体的には、裏当て金51が外ダイヤフラム41の角部42に配置された状態で、外ダイヤフラム41の開先部43と、裏当て金51の他端面53の上下端部と、を溶接することで、裏当て金51が外ダイヤフラム41の角部42の内周面41bに接合される。
【0032】
外ダイヤフラム41は、各角部42の内周面41bに裏当て金51が溶接接合された状態で、シャフト21の仕口部22の所定位置に外嵌される。外ダイヤフラム41は、シャフト21の仕口部22に外嵌されると、外ダイヤフラム41に形成される開先部43及び裏当て金51に形成される開先部54を利用してシャフト21の仕口部22に溶接接合される。具体的には、シャフト21の仕口部22の外周面22aにおいては、外ダイヤフラム41の内周面41bの上下端に形成される開先部43と、シャフト21の仕口部22の外周面22aと、を溶接する。シャフト21の仕口部22の角部23においては、裏当て金51の一端面52の上下端に形成される開先部54と、シャフト21の仕口部22の角部23の外周面22aと、を溶接する。
【0033】
以上のように、上記柱梁接合構造10によれば、仕口部22の角部23の外周面22aと、仕口部22に外嵌された外ダイヤフラム41の角部42の内周面41bと、の間に形成される角部隙間S2に裏当て金51が嵌合されることで、仕口部22に対して外ダイヤフラム41を外篏した際に、仕口部22の各角部23と外ダイヤフラム41の各角部42との間で目違いが生じる場合であっても、角部隙間S2を裏当て金51によって埋めることができる。そのため、上記目違いを防止するために成形方法が限定された外ダイヤフラムを用いることなく、仕口部22に対する外ダイヤフラムの外篏を行うことができる。
【符号の説明】
【0034】
10 梁接合構造
21 シャフト(柱部材)
22 仕口部
22a 仕口部の角部の外周面
23 仕口部の角部
31 梁(梁部材)
41 外ダイヤフラム
41b 外ダイヤフラムの角部の内周面
42 外ダイヤフラムの角部
51 裏当て金
S2 角部隙間(隙間)