IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三井E&S造船株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-操船制御システム 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114498
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】操船制御システム
(51)【国際特許分類】
   B63H 25/04 20060101AFI20230810BHJP
   B63H 25/00 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
B63H25/04 D
B63H25/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016816
(22)【出願日】2022-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】518144045
【氏名又は名称】三井E&S造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】三上 隆
(57)【要約】
【課題】船舶の転覆を好適に回避することが可能な操船制御システムを提供する。
【解決手段】操船制御システム1は、船舶の動揺を計測する動揺計測装置11と、動揺計測装置11の計測結果に基づいて航路を生成し、生成された航路に基づいて船舶を制御する操船制御装置20と、を備える。操船制御装置20は、動揺計測装置11の計測結果に基づいて、パラメトリック横揺れ現象、波浪中復原力喪失現象及びブローチング現象による危険な事象を回避する方向に前記航路を生成する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の動揺を計測する動揺計測装置と、
前記動揺計測装置の計測結果に基づいて航路を生成し、生成された前記航路に基づいて前記船舶を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記動揺計測装置の計測結果に基づいて、パラメトリック横揺れ現象、波浪中復原力喪失現象及びブローチング現象による危険な事象を回避する方向に前記航路を生成する
ことを特徴とする操船制御システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記船舶の速度、並びに、前記動揺計測装置によって計測される波の周期及び前記船舶の横揺れ周期に基づいて、前記パラメトリック横揺れ現象による危険な事象を回避する方向に前記航路を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の操船制御システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記パラメトリック横揺れ現象による危険な事象を回避する方向に前記航路を生成するものであって、
前記船舶の速度をV[m/s]、波の周期をT[s]、パラメトリック横揺れが発生しうる波の出会い周期をTe[s]、前記船舶の横揺れ周期をTφ[s]としたとき、下記式(1a)又は下記式(1b)を満たす場合に、前記パラメトリック横揺れ現象による危険な事象を回避する方向に前記航路を生成する
【数1】
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の操船制御システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記船舶の速度、前記船舶の水線長、前記船舶の喫水、波高、波の周期、及び、前記船舶の縦波中における舷側波形を考慮した復原テコの曲線に基づいて、前記波浪中復原力喪失現象による危険な事象を回避する方向に前記航路を生成する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の操船制御システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記波浪中復原力喪失現象による危険な事象を回避する方向に前記航路を生成するものであって、
前記船舶の速度をV[m/s]、前記船舶の水線長をL[m]、前記船舶の喫水をd[m]、波高をH[m]、波の周期をT[s]、予め計算された前記船舶の縦波中における舷側波形を考慮した復原テコの曲線の最大値をGZmax[m]としたとき、下記式(2)を満たす領域を回避するように前記航路を生成する
【数2】
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の操船制御システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記船舶の速度、前記船舶の水線長、及び、前記動揺計測装置によって計測される波との出会い周期に基づいて、前記ブローチング現象による危険な事象を回避する方向に前記航路を生成する
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の操船制御システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記ブローチング現象による危険な事象を回避する方向に前記航路を生成するものであって、
前記船舶の速度をV[m/s]、前記船舶の水線長をL[m]としたとき、下記式(3)を満たす場合において、前記動揺計測装置によって計測される波との出会い周期が25[s]以上となる場合に、前記ブローチング現象による危険な事象を回避する方向に前記航路を生成する
【数3】
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の操船制御システム。
【請求項8】
前記制御装置は、前記船舶の速度、及び、前記動揺計測装置によって計測される波の周期に基づいて、前記ブローチング現象による危険な事象を回避する方向に前記航路を生成する
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の操船制御システム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記ブローチング現象による危険な事象を回避する方向に前記航路を生成するものであって、
前記船舶の速度をV[m/s]、波の周期をT[s]、ブローチング現象が発生しうる波の出会い周期をT[s]、定数α(斜め追い波状態で2.28、追い波状態で3.23)としたとき、下記式(4)によって算出されるTが25[s]以上となる場合に、前記ブローチング現象による危険な事象を回避する方向に前記航路を生成する
【数4】
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の操船制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の安全に航行可能な航路を生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、船舶の自動運航(無人制御)を可能とするための技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61-163409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術は、他船舶との衝突や座礁を考慮した自動運航を実行することができるが、波風による船舶の転覆を回避することを考慮したものではない。
【0005】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、船舶の安全な運航を支援することが可能な操船制御システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するために、本発明の操船制御システムは、船舶の動揺を計測する動揺計測装置と、前記動揺計測装置の計測結果に基づいて航路を生成し、生成された前記航路に基づいて前記船舶を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記動揺計測装置の計測結果に基づいて、パラメトリック横揺れ現象、波浪中復原力喪失現象及びブローチング現象による危険な事象を回避する方向に前記航路を生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、船舶の動揺の計測結果に基づいて波風による危険な事象を回避する方向に航路を生成することができ、船舶の安全な運航を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る操船制御システムを模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る船舶は、自律操船を行うためのシステムとして、操船制御システム1を備える。操船制御システム1は、動揺計測装置11と、船舶自動識別装置12と、海域情報表示装置13と、方位センサ14と、速度センサ15と、を備える。
また、操船制御システム1は、操船制御装置20と、当該船舶の動力源である動力装置31と、当該船舶の進行方向を変更するための操舵装置32と、を備える。
【0011】
<動揺計測装置>
動揺計測装置11は、船舶が航行している海域の海象(風、波等)によって当該船舶に発生する動揺(船舶の動揺に関する振幅、波長、周期等)を計測し、計測結果を操船制御装置20へ出力する。
【0012】
<船舶自動識別装置>
船舶自動識別装置(AIS:Automatic Identification System)12は、船舶の周辺を航行する他の船舶を自動的に識別し、識別された他の船舶の位置並びに速度(向き及び速さ)を検出する装置である。船舶自動識別装置12は、検出結果を操船制御装置20へ送信する。
【0013】
<海域情報表示装置>
海域情報表示装置13は、船舶が航行する海域の海図(例えば、海上保安庁発行の航海用海図)、参考図(例えば、航海用電子参考図、Yチャート等)等を表示する装置である。海域情報表示装置13は、船舶が航行する海域の情報(地形、水深、浮標、航路、その他の障害物、潮流等の情報)を操船制御装置20へ送信する。
【0014】
<方位センサ>
方位センサ14は、船舶の向き(方角)を検出するセンサである。方位センサ14は、検出結果を操船制御装置20へ送信する。
【0015】
<速度センサ>
速度センサ15は、船舶の速度を検出するセンサである。速度センサ15は、検出結果を操船制御装置20へ送信する。
【0016】
<操船制御装置>
操船制御装置20は、動揺計測装置11の計測結果等に基づいて航路を生成し、生成された航路を航行するように動力装置31及び操舵装置32を制御する。操船制御装置20は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力回路等によって構成されている。操船制御装置20は、機能部として、記憶部21と、危険性判定部22と、航路生成部23と、操船部24と、を備える。
【0017】
≪記憶部≫
記憶部21には、船舶のサイズ等に関する情報、波浪頻度表、船舶の目的地(座標)等が記憶されている。
【0018】
≪危険性判定部≫
危険性判定部22は、動揺計測装置10から出力された計測結果を取得し、取得された計測結果及び記憶部21に記憶された船舶の情報等に基づいて、船舶の方向ごとに危険性パラメータを算出する。また、復原性判定部22は、パラメトリック横揺れ現象、波浪中復原力喪失現象及びブローチング現象のそれぞれに関して、前記危険性パラメータが数式を満たすかを判定し、判定結果を航路生成部23へ出力する。
【0019】
(パラメトリック横揺れ現象)
パラメトリック横揺れ現象は、波によって船舶に発生する横復原力が船舶の横揺れを助長する方向に作用し続けることによって、船舶の横揺れが大きくなり、船舶が転覆する現象である。パラメトリック横揺れは、船舶の横揺れの周期が横復原力変化の周期の2倍になったときに発生する。危険性判定部22は、動揺計測装置11によって、船舶の縦揺れ周期と等しい出会い波周期Teを計測することができる場合には、下記式(1a)を満たす場合に、パラメトリック横揺れ現象による危険な事象(船舶の転覆、船舶の大角度傾斜による荷崩れ及び貨物消失等)を回避する必要があると判定し、下記式(1a)を満たさない場合に、現航路保持可と判定する。また、危険性判定部22は、動揺計測装置11によって出会い波周期Teを計測することができない場合には、下記式(1b)を満たす場合に、パラメトリック横揺れ現象による危険な事象を回避する必要があると判定し、下記式(1b)を満たさない場合に、現航路保持可と判定する。
【0020】
【数1】
【0021】
ここで、V[m/s]は速度センサ15によって検出された船舶の速度、T[s]はインターネット等を介して気象・海象情報の予報値として取得された波の周期、Te[s]は動揺計測装置11によって計測される出会い波周期(すなわち、船舶の縦揺れ周期)、TΦ[s]は動揺計測装置11によって計測される船舶の横揺れ周期である。
危険性判定部22は、式(1a)又は式(1b)を満たす場合に、図示しない警報装置を制御することによって、船員に向けてパラメトリック横揺れの危険がある旨の警報を発する。
【0022】
(波浪中復原力喪失現象)
波浪中復原力喪失現象は、船舶の中央部が波の山に位置し、船舶の船首及び船尾が波の谷に位置することによって、船舶に作用する横復原力が低下する現象である。本実施形態において、危険性判定部22は、下記式(2)を満たす場合に、波浪中復原力喪失現象による危険な事象(船舶の復原性喪失による転覆)を回避する必要があると判定し、下記式(2)を満たさない場合に、復原性を有すると判定する。
【0023】
【数2】
【0024】
ここで、V[m/s]は速度センサ15によって検出された船舶の速度、L[m]は船舶の水線長、H[m]はインターネット等を介して気象・海象情報の予報値として取得された波高、T[s]はインターネット等を介して気象・海象情報の予報値として取得された波の周期、GZmaxは予め計算された船舶の縦波中における舷側波形を考慮した復原テコの曲線の最大値である。復原テコの曲線GZは、造船所において正弦波の縦波中の舷側波形を考慮して直接計算したものである。記憶部21には、H、Tに応じたGZ曲線中の最大値GZmax[m]がデータベース化して記憶されている。危険性判定部22は、インターネット等を介して気象・海象情報の予報値としてのH及びTを取得し、取得された値を用いて記憶部21内のデータベースを参照することによって、取得された値に対応するGZを読み出す。危険性判定部22は、予め記憶されたL、速度センサ15によって検出されたV、取得されたH及びT並びにこれらに対応するGZmaxを式(2)に適用することによって、波浪中復原力喪失現象による危険な事象を回避する必要性の有無を判定する。
【0025】
(ブローチング現象)
ブローチング現象は、船尾に波の山を斜めに受けることによって、船舶が旋回して操縦不能となる現象である。ブローチング現象は、サーフィンと同様に、波の谷に近い下り波面に比較的長い間留まることによって発生するので、波乗り現象として知られている。
【0026】
本実施形態において、危険性判定部22は、船舶の水線長が200[m]以下である場合に、ブローチング現象による復原性の有無の判定を行う。また、危険性判定部22は、第2世代非損傷時復原性基準の第1段階基準であるフルード数0.3以上を適用するとともに、ブローチング現象の発生し得る波の出会い周期(長い出会い周期)を回避するように、航路を生成する。
【0027】
すなわち、危険性判定部22は、式(3)を満たす場合において、動揺計測装置11によって計測された波との出会い周期が25[s]以上となる場合に、ブローチング現象による危険な事象(船舶の復原性喪失による転覆)を回避する必要があると判定し、式(3)を満たさない場合、及び、波との出会い周期が25[s]未満である場合に、復原性を有すると判定する。
【0028】
【数3】
【0029】
ここで、V[m/s]は速度センサ15によって検出された船舶の速度、L[m]は船舶の水線長である。危険性判定部22は、予め記憶されたL及び速度センサ15によって検出されたVを式(3)に適用することによって、ブローチング現象による復原性の有無の第一条件を判定する。
【0030】
または、危険性判定部22は、下記式(4)によって算出されるTが25[s]以上となる場合に、ブローチング現象による危険な事象を回避する必要があると判定し、Tが25[s]未満である場合に、復原性を有すると判定する。
【0031】
【数4】
【0032】
ここで、V[m/s]は速度センサ15によって検出された船舶の速度、T[s]はインターネット等を介して気象・海象情報の予報値として取得された波の周期、T[s]は波の出会い周期、αは定数(斜め追い波状態でα=4.44、追い波状態でα=6.28)である。危険性判定部22は、速度センサ15によって検出されたV、インターネット等を介して取得されたT及び動揺計測装置11の測定結果に基づいて選択されたαを式(4)に適用することによって、ブローチング現象を回避する必要性の有無を判定する。
【0033】
≪航路生成部≫
航路生成部23は、危険性判定部22の判定結果を取得し、取得された判定結果に基づいて、船舶の航路を生成し、生成された航路を操船部24へ出力する。航路生成部23は、3つの危険性パラメータの全てにおいて危険な事象を回避可能であると判定された方向から、GNSS(Global Navigation Satellite System)によって取得された船舶の現在位置(座標)と記憶部21に記憶された船舶の目的地(座標)を結ぶ直線に最も近い方向を選択し、選択された方向に航路を生成することができる。また、航路生成部23は、船舶自動識別装置12から出力された検出結果を取得し、取得された検出結果に基づいて、他の船舶を回避するように航路を生成する。また、航路生成部23は、海域情報表示装置13から出力された情報を取得し、取得された情報に基づいて、座礁等を回避するように航路を生成する。
【0034】
本実施形態において、航路生成部23は、危険性判定部22においてパラメトリック横揺れ現象、波浪中復原力喪失現象及びブローチング現象のいずれかによる危険な事象(船舶の復原性喪失による転覆等)が発生すると判定された場合に、これらの危険な事象を回避する方向に航路を生成する。例えば、航路生成部23は、船舶の航行中において危険性判定部22が式(1a)又は式(1b)を満たす場合と判定した場合に、式(1a)又は式(1b)を満たす方向に対して30度以上の針路変更となる航路を生成する。また、航路生成部23は、航海計画時において、危険性判定部22が式(2)を満たすと判定した領域を回避するように航路(計画)を生成する。
【0035】
≪操船部≫
操船部24は、航路生成部23から出力された航路を取得し、取得された航路に基づいて、船舶が当該航路を航行するように動力装置31及び操舵装置32を制御する。
【0036】
本発明の実施形態に係る操船制御システム1は、船舶の動揺を計測する動揺計測装置11と、前記動揺計測装置11の計測結果に基づいて航路を生成し、生成された前記航路に基づいて前記船舶を制御する制御装置(操船制御装置20)と、を備える。前記制御装置は、前記動揺計測装置11の計測結果に基づいて、パラメトリック横揺れ現象、波浪中復原力喪失現象及びブローチング現象による危険な事象を回避する方向に前記航路を生成する。
したがって、操船制御システム1は、船舶の動揺の計測結果に基づいて、危険な事象を回避する方向に航路を生成するので、船舶の安全な運航を支援することができる。
【0037】
前記制御装置は、前記船舶の速度、並びに、前記動揺計測装置11によって計測される波の周期及び前記船舶の横揺れ周期に基づいて、前記パラメトリック横揺れ現象による危険な事象を回避する方向に前記航路を生成する。
【0038】
詳細には、前記制御装置は、前記パラメトリック横揺れ現象による危険な事象を回避する方向に前記航路を生成するものであって、前記船舶の速度をV[m/s]、波の周期をT[s]、パラメトリック横揺れが発生しうる波の出会い周期をTe[s]、前記船舶の横揺れ周期をTφ[s]としたとき、下記式(1a)又は下記式(1b)を満たす場合に、前記パラメトリック横揺れ現象による危険な事象を回避する方向に前記航路を生成する。
【0039】
【数5】
【0040】
したがって、操船制御システム1は、危険な事象を発生するパラメトリック横揺れ現象を好適に回避し、船舶の安全な運航を支援することができる。
【0041】
前記制御装置は、前記船舶の速度、前記船舶の水線長、前記船舶の喫水、波高、波の周期、及び、前記船舶の縦波中における舷側波形を考慮した復原テコの曲線に基づいて、前記波浪中復原力喪失現象による危険な事象を回避する方向に前記航路を生成する。
【0042】
詳細には、前記制御装置は、前記波浪中復原力喪失現象による危険な事象を回避する方向に前記航路を生成するものであって、前記船舶の速度をV[m/s]、前記船舶の水線長をL[m]、前記船舶の喫水をd[m]、波高をH[m]、波の周期をT[s]、予め計算された前記船舶の縦波中における舷側波形を考慮した復原テコの曲線の最大値をGZmax[m]としたとき、下記式(2)を満たす領域を回避するように前記航路を生成する。
【0043】
【数6】
【0044】
したがって、操船制御システム1は、復原性の喪失によって危険な事象を発生する波浪中復原力喪失現象を好適に回避し、船舶の安全な運航を支援することができる。
【0045】
前記制御装置は、前記船舶の速度、前記船舶の水線長、及び、前記動揺計測装置11によって計測される波との出会い周期に基づいて、前記ブローチング現象による危険な事象を回避する方向に前記航路を生成する。
【0046】
詳細には、前記制御装置は、前記ブローチング現象による危険な事象を回避する方向に前記航路を生成するものであって、前記船舶の速度をV[m/s]、前記船舶の水線長をL[m]としたとき、下記式(3)を満たす場合において、前記動揺計測装置によって計測された波との出会い周期が25[s]以上となる場合に、前記ブローチング現象による危険な事象を回避する方向に前記航路を生成する。
【0047】
【数7】
【0048】
したがって、操船制御システム1は、復原性の喪失によって危険な事象を発生するブローチング現象を好適に回避し、船舶の安全な運航を支援することができる。
【0049】
前記制御装置は、前記船舶の速度、及び、前記動揺計測装置11によって計測される波の周期に基づいて、前記ブローチング現象による危険な事象を回避する方向に前記航路を生成する。
【0050】
詳細には、前記制御装置は、前記ブローチング現象による危険な事象を回避する方向に前記航路を生成するものであって、前記船舶の速度をV[m/s]、波の周期をT[s]、ブローチング現象が発生しうる波の出会い周期をT[s]、定数α(斜め追い波状態で2.28、追い波状態で3.23)としたとき、下記式(4)によって算出されるTが25[s]以上となる場合に、前記ブローチング現象による危険な事象を回避する方向に前記航路を生成する。
【0051】
【数8】
【0052】
したがって、操船制御システム1は、復原性の喪失によって危険な事象を発生するブローチング現象を好適に回避し、船舶の安全な運航を支援することができる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変形可能である。例えば、航行上の危険性に関する判定手法は、前記したものに限定されない。
【符号の説明】
【0054】
1 操船制御システム
11 動揺計測装置
20 操船制御装置(制御装置)
図1