(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114531
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】座席付き育児器具および股ベルトカバー
(51)【国際特許分類】
B60N 2/28 20060101AFI20230810BHJP
【FI】
B60N2/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016875
(22)【出願日】2022-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】310019730
【氏名又は名称】グラコ・チルドレンズ・プロダクツ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺岡 忠義
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087CE07
(57)【要約】
【課題】簡易な構造で、子供を乗せ下ろしする場合に股ベルトが邪魔になることがない座席付き育児器具を提供すること。
【解決手段】座席付き育児器具(1)は、座面部(32)と背もたれ部(31)とを有する座席本体(3)と、座席本体(3)に着座した子供の股を拘束する股ベルト(12)と、股ベルト(12)の先端に設けられるバックル(13)と、股ベルト(12)およびバックル(13)が子供に当たらないように覆う股ベルトカバー(4)と、股ベルトカバー(4)の先端部と座面部(32)の先端部とを当接させた状態で保持する当接保持手段(38,48)とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座面部と背もたれ部とを有する座席本体と、
前記座席本体に着座した子供の股を拘束する股ベルトと、
前記股ベルトの先端に設けられるバックルと、
前記股ベルトおよび前記バックルが子供に当たらないように覆う股ベルトカバーと、
前記股ベルトカバーの先端部と前記座面部の先端部とを当接させた状態で保持する当接保持手段とを備える、座席付き育児器具。
【請求項2】
前記当接保持手段は、前記股ベルトカバーの先端部に設けられる係合部と、前記座面部の先端部に設けられ、前記係合部と着脱自在に係合する被係合部とを含む、請求項1に記載の座席付き育児器具。
【請求項3】
前記股ベルトカバーは、前記股ベルトを貫通させるベルト保持部と、前記ベルト保持部の先端部に設けられ、前記バックルの裏面を覆うバックル当接部とを含み、
前記バックル当接部は、前記バックルよりも上方に向かって張り出す上方張り出し部を有し、
前記上方張り出し部には、前記係合部が設けられる、請求項2に記載の座席付き育児器具。
【請求項4】
前記上方張り出し部を前記ベルト保持部側に折畳んだ状態に維持する折り畳み状態維持手段をさらに備える、請求項3に記載の座席付き育児器具。
【請求項5】
前記股ベルトカバーは、変形に対して元の形状を保つように弾性復元力を発生させる素材で形成されている、請求項1~4のいずれかに記載の座席付き育児器具。
【請求項6】
前記座席付き育児器具は、自動車に用いられるチャイルドシートである、請求項1~5のいずれかに記載の座席付き育児器具。
【請求項7】
座席付き育児器具の座席本体に設けられ、前記座席本体に着座した子供の股を拘束する股ベルトを覆うための股ベルトカバーにおいて、
前記股ベルトを貫通するベルト保持部と、
前記ベルト保持部の先端部に設けられるバックルの裏面を覆うバックル当接部とを備え、
前記バックル当接部の先端部には、前記座席本体の先端部に設けられる被係合部と着脱自在に連結する係合部が設けられる、股ベルトカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、座席付き育児器具および股ベルトカバーに関し、特に、股ベルトを備えた座席付き育児器具および股ベルトの股ベルトカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
チャイルドシートには、座席シートに着座した子供を拘束する肩ベルト、腰ベルト、および股ベルトが設けられている。子供をチャイルドシートに乗せ下ろしする際に、これらのベルトが邪魔にならないようにするために、たとえば、特許文献1(特開2008-290587号公報)および特許文献2(特開2010-274884号公報)のような技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、ベルトカバーに固定された第1磁石を、シート本体の側方に設けられる第2磁石に保持させることで、着座空間をシートベルトの介在がない開放空間に維持することが開示されている。
【0004】
また、特許文献2の股ベルトカバーは、チャイルドシート前方側へ傾いた姿勢で股ベルトを自立させることができるため、子供を座部に乗降させる際に股ベルトが邪魔になりにくいことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-290587号公報
【特許文献2】特開2010-274884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に開示されたチャイルドシートは、子供を乗せ下ろしする場合に、着座空間をシートベルトの介在がない開放空間に維持することが可能であるが、構造が複雑であった。さらに、上記特許文献2に開示された股ベルトカバーは、前方へ傾いた姿勢で自立しているため、依然として乗せ下ろしの際に邪魔となる。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、簡易な構造で、子供を乗せ下ろしする場合に股ベルトが邪魔にならない座席付き育児器具および股ベルトカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のため、本発明の一態様に係る座席付き育児器具は、座面部と背もたれ部とを有する座席本体と、座席本体に着座した子供の股を拘束する股ベルトと、股ベルトの先端に設けられるバックルと、股ベルトおよびバックルが子供に当たらないように覆う股ベルトカバーと、股ベルトカバーの先端部と座面部の先端部とを当接させた状態で保持する当接保持手段とを備える。
【0009】
好ましくは、当接保持手段は、股ベルトカバーの先端部に設けられる係合部と、座面部の先端部に設けられ、係合部と着脱自在に係合する被係合部とを含む。
【0010】
好ましくは、股ベルトカバーは、股ベルトを貫通させるベルト保持部と、ベルト保持部の先端部に設けられ、バックルの裏面を覆うバックル当接部とを含み、バックル当接部は、バックルよりも上方に向かって張り出す上方張り出し部を有し、上方張り出し部には、係合部が設けられる。
【0011】
好ましくは、上方張り出し部をベルト保持部側に折畳んだ状態に維持する折り畳み状態維持手段をさらに備える。
【0012】
好ましくは、股ベルトカバーは、変形に対して元の形状を保つように弾性復元力を発生させる素材で形成されている。
【0013】
好ましくは、座席付き育児器具は、自動車に用いられるチャイルドシートである。
【0014】
本発明の他の態様に股ベルトカバーは、座席付き育児器具の座席本体に設けられ、座席本体に着座した子供の股を拘束する股ベルトを覆うための股ベルトカバーにおいて、股ベルトを貫通するベルト保持部と、ベルト保持部の先端部に設けられるバックルの裏面を覆うバックル当接部とを備え、バックル当接部の先端部には、座席本体の先端部に設けられる被係合部と着脱自在に連結する係合部が設けられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡易な構造で、子供を乗せ下ろしする場合に股ベルトが邪魔にならない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施の形態1に係るチャイルドシートの斜視図である。
【
図2】股ベルトカバーを股ベルトに装着して、各ベルトを装着した状態を示す正面図である。
【
図3】股ベルトカバーを示す図であり、(A)は正面図であり、(B)は展開図である。
【
図4】本実施の形態1に係る股ベルトの位置変更を示す模式図であり、(A)は股ベルト、肩ベルト、および腰ベルトの連結状態が解除されている状態を示し、(B)はそれらのベルトが連結されている状態を示す。
【
図5】股ベルトカバーの変形例を示す正面図である。
【
図6】本実施の形態2に係るチャイルドシートのインナーシートを示す図であり、(A)は斜視図であり、(B)は(A)の部分的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0018】
(チャイルドシートの概要について)
図1を参照して、本実施の形態に係る座席付き育児器具としてのチャイルドシート1の概要について説明する。チャイルドシート1の説明において、前後方向は、チャイルドシート1に着座する子供の前後方向に対応する。幅方向は、チャイルドシート1に着座する子供の左右方向に対応する。また、内側は、チャイルドシート1に着座する子供に向かう側に対応する。外側は、チャイルドシート1に着座する子供とは反対側に対応する。
【0019】
本実施形態に係るチャイルドシート1の基本構造としては、一般的なチャイルドシートの構造と同様であってよく、自動車に用いられ、特に自動車の座席の上に配置され、乳児や幼児などの子供を安全に乗車させるための装置である。チャイルドシート1は、ベース本体2および座席本体3を備える。
【0020】
ベース本体2は、乗用自動車の座席シート上に載置され、座席本体3を下方から支持する。図示は省略するが、ベース本体2の前方端には、乗用自動車の床面に向かって伸びるレッグサポートが設けられ、ベース本体2の後方端には、乗用自動車の座席シートのアンカーに連結するISOFIXが設けられていてもよい。ベース本体2の上方には、ベース本体2に対して回転可能に支持される座席本体3が設けられている。
【0021】
座席本体3は、ベース本体2の上側に取り付けられ、ベース本体2に対して回転自在に支持される。
図1では、座席本体3本体上において、柔らかい布製部材、たとえばクッション材などの被覆部材が装着されている状態が示されている。
【0022】
座席本体3には、子供が着座する。このため、座席本体3は、子供用座席ともいい、子供の臀部を支持する座面部32と、座面部32の後方から立ち上がり、子供の背部を支持する背もたれ部31とを有する。
【0023】
座面部32の先端部には、後述する股ベルトカバー4の係合部48と連結する被係合部38が設けられる。座面部32の先端部とは、股ベルト12の基端部(股ベルト12の下端と座面部32との接点)よりも前方側に位置する部分であり、好ましくは座面部32の先端部周辺であり、たとえば座面部32の先端部の上面、側面、または裏面などである。また、座面部32上にインナーシートが設けられる場合については、実施の形態2において説明する。被係合部38については、後述する。
【0024】
背もたれ部31の上方には、子供の頭部を支持するヘッドレストが設けられていてもよい。背もたれ部31は、座面部32に対して傾斜することでリクライニング可能に設けられていてもよいし、座面部32に対する傾斜角度が固定されていてもよい。この場合、座席本体3は、ベース本体2に対してスライド可能に設けられていてもよい。
【0025】
チャイルドシート1には、子供の体を拘束するベルトが複数設けられている。背もたれ部31には、子供の両肩を拘束する1対の肩ベルト10が設けられる。肩ベルト10は、背もたれ部31を貫通するように配置されている。肩ベルト10には、筒状の肩当て部が設けられている。
【0026】
また、座面部32には、座席本体3に着座した子供の両太腿の間を延びる股ベルト12と、座席本体3を左右方向に横断するように延びて子供の腰を拘束する腰ベルト11とが設けられる。股ベルト12の下端は、座面部32を貫通するように配置されており、座面部32の幅方向の中央部分において、前後方向にスライド可能に設けられる。この股ベルト12の動きについては、実施の形態2において説明する。また、腰ベルト11は左右にそれぞれ配置され、各腰ベルト11の一端は座面部32の幅方向両側部分にそれぞれ固定される。
【0027】
これらのベルト10,11,12の他端同士は、股ベルト12の先端に設けられるバックル13により、子供の腹部付近で着脱可能に連結される。なお、本実施の形態では、肩ベルト10および腰ベルト11は、同一の長尺状のベルトにより形成されており、その途中位置に、上下動可能なトング14が設けられる(
図4(A))。このトング14が股ベルト12の先端に設けられるバックル13に着脱可能に連結する。また、これらのベルト10,11,12は、たとえば布製である。
【0028】
股ベルト12およびバックル13には、股ベルトカバー4が着脱自在に設けられている。股ベルトカバー4は、股ベルト12およびバックル13が子供に当たらないように覆うものである。股ベルトカバー4について、詳細に説明する。
【0029】
(股ベルトカバーについて)
図2および
図3(A)は、股ベルトカバー4の使用状態を示す図であり、
図3(B)は、股ベルトカバー4の展開図である。特に、
図2には、腰ベルト11およびバックル13に股ベルトカバー4を取り付け、さらに肩ベルト10および腰ベルト11をバックル13に連結させた状態を示している。
図2および
図3を参照して、股ベルトカバー4について詳細に説明する。
【0030】
図2に示すように、股ベルトカバー4は、股ベルト12およびバックル13を覆うためのものである。なお、股ベルトカバー4は、少なくとも子供に当接する側の面を覆っていればよい。
【0031】
股ベルトカバー4は、変形に対して元の形状を保つように弾性復元力を発生させる素材で形成されている。具体的には、股ベルトカバー4は、全体として可撓性を有しており、たとえば多孔質体のウレタンを布地で挟んだ複層構造であり、布製であってもよい。また、股ベルトカバー4が布製である場合、たとえば2枚以上の布地を重ね合わせることにより弾力を有するように構成されてもよい。また、股ベルトカバー4は、厚みを有していることにより、クッション性(弾力性)を有していてもよい。股ベルトカバー4の厚さは、たとえば0.2cm以上1.5cm以下であることが好ましい。
【0032】
股ベルトカバー4は、先端(上方)側へいくにつれて幅広となる略しゃもじ形状であり、股ベルト12が貫通するベルト保持部41と、ベルト保持部41の先端部に設けられ、バックル13の裏面を覆うバックル当接部45とを備える。特に
図3(A)に示すように、ベルト保持部41は、股ベルト12に取り付けている使用状態において幅狭となり、筒形状となる。バックル当接部45は、使用状態においても、外観形状は変わらず幅広の板形状である。
【0033】
図3(B)に示すように、ベルト保持部41は、子供の股部に当接する背面領域41aと、背面領域41aの両端部からつながる前面領域41b,41bとを含む。背面領域41aには、股ベルト12の上下の位置がずれないように固定するための固定部44が設けられる。固定部44は、たとえば長尺状の面ファスナ、紐などであり、特に限定されない。前面領域41b,41bには、上方連結具42a,42aと、下方連結具42b,42bとが左右に対向して設けられる。これらの連結具42a,42bは、たとえば左右対をなすホック、面ファスナ、ボタンとボタン穴などであり、特に限定されない。
【0034】
股ベルトカバー4の前面領域41b,41bと背面領域41aとの境界部分(
図3(B)の破線)で前面領域41b,41bを背面領域41a上に折り曲げて、これらの連結具42a,42bを連結する。これらの連結具42a,42bを連結することで、ベルト保持部41は、筒形状となる。これにより、ベルト保持部41で股ベルト12を保持することができる。また、股ベルトカバー4は、連結具42a,42bの連結を解除するだけで、股ベルト12から取り外すことができる。これにより、股ベルトカバー4が汚れた場合でも、簡単に取り外して洗濯することができるため、衛生的である。
【0035】
図2および
図3(A)に示すように、バックル当接部45は、たとえば全体として略ダイヤ形状であり、本体部45aと、本体部45aの上方に位置し、バックル13よりも上方に向かって張り出す上方張り出し部46と、本体部45aの両側方に位置し、バックル13よりも左右に向かって張り出す側方張り出し部47とを有する。バックル当接部45は、平面状であり、バックル13の裏面側に当接し、バックル13の前面側(操作部側)には当接しない。
【0036】
特に
図2に示すように、上方張り出し部46は、トング14をバックル13に連結した場合に、トング14よりも上方から突出する部分である。バックル当接部45の先端部には、係合部48が設けられる。係合部48は、座面部32の先端部に設けられる被係合部38と着脱自在に連結する。
図4(A)に示すように、この係合部48と被係合部38とを連結することで、股ベルトカバー4の先端部と座面部32の先端部とを当接させた状態で保持することが可能となる。この係合部48と被係合部38とは、当接保持手段として機能する。
【0037】
特に
図2に示すように、側方張り出し部47は、股ベルト12の先端に設けられるバックル13にトング14を連結した場合に、トング14が子供に当たらないようにするためのものである。
【0038】
図1~
図3には、当接保持手段(係合部48,被係合部38)の一例としてホックが示されているが、股ベルトカバー4と座面部32の先端部とが当接して保持されるものであればよく、たとえば面ファスナ、ボタンとボタン穴、突起と篏合穴、フックと係止紐などの連結具であってもよい。また、当接保持手段は、上述した連結具に限定されず、たとえば、座面部32に挿入穴が設けられており、股ベルトカバー4の先端部が差し込まれる形状であってもよい。
【0039】
(使用例について)
図4(A)には、ベルト10,11,12の連結状態が解除されていることが示されている。
図4(B)には、ベルト10,11,12が連結されている状態が示されている。
図4(A)および
図4(B)を参照して、使用例について説明する。
【0040】
子供をチャイルドシート1に乗せる場合について説明する。まず、
図4(A)に示すように、股ベルト12を保持している股ベルトカバー4を座面部32の座面に沿って沿わせ、股ベルトカバー4の係合部48と座面部32の被係合部38とを連結する。さらに、肩ベルト10および腰ベルト11を、座面部32の両側方に避けて置く。この状態で、子供を座席本体3に乗せる。これにより、股ベルト12が座面部32に沿って前方に延びた状態で保持されるため、股ベルト12が邪魔にならずに、子供を座席本体3に乗せることができる。
【0041】
次に、股ベルトカバー4の係合部48と座面部32の被係合部38との連結を解除する。股ベルトカバー4は、弾性復元力を有する素材で形成されているため、子供の股側(後方)に向かってやや立ち上がろうとする。さらに、
図4(B)に示すように、肩ベルト10および腰ベルト11に設けられるトング14と股ベルト12の先端に設けられるバックル13とを連結させる。この状態で、子供にベルト10,11,12を装着する。これにより、子供を容易にベルト10,11,12に装着することができる。
【0042】
子供をチャイルドシート1から下ろす場合には、肩ベルト10および腰ベルト11に設けられるトング14と股ベルト12の先端に設けられるバックル13との連結を解除させる。さらに、
図4(A)に示すように、股ベルト12を保持している股ベルトカバー4を座面部32の座面に沿って沿わせ、股ベルトカバー4の係合部48と座面部32の被係合部38とを連結する。さらに、肩ベルト10および腰ベルト11が邪魔にならないように、座面部32の両側方に避けて置く。これにより、股ベルト12が邪魔にならずに、子供を座席本体3から下ろすことができる。
【0043】
本実施の形態の股ベルトカバー4は、股ベルトカバー4の先端部に設けられる係合部48と、座面部32の先端部に設けられる被係合部38とを連結させることで、股ベルトカバー4の先端部と座面部32の先端部とを当接させた状態で保持することができる。これにより、子供をチャイルドシート1に乗せる場合に、股ベルト12の先端部を座面部32の先端部に当接保持することができるため、股ベルト12が邪魔になることがない。
【0044】
特に、車両に用いられるチャイルドシート1は、車両の出入り口の高さが狭いため、子供を高い位置から乗せることができず、座面部32に背部や臀部を擦りながら乗せることになる。そのような場合、従来の股ベルトカバーは子供の背部や臀部が股ベルトに当たって、股ベルトを座面部32の奥に引き込んでしまい、結果として、股ベルトが子供の背部や臀部の下敷きになり、股ベルトが邪魔になる。本実施の形態の股ベルトカバー4は、股ベルトカバー4の先端部と座面部32の先端部とを当接させた状態で保持することができるため、子供を座面部32に擦りながら乗せたとしても、股ベルト12が後方に移動しないため、股ベルト12が邪魔になることがない。
【0045】
また、
図4(A)に示すように、股ベルト12の上下方向の途中位置を固定するのではなく、股ベルト12の先端位置を座面部32に固定することができるため、子供を乗せる場合に、子供の背部や臀部に多少股ベルトカバー4が擦れたとしても、股ベルト12が後方へ移動しないため、子供の乗せ下ろしを容易に行うことができる。さらに、子供の乗せ下ろしの際に、子供の背部や臀部に擦れる部分は股ベルト12ではなく、股ベルトカバー4であるため、子供に不快感を与えない。さらに、ベルト10,11,12を装着した状態においても、子供に当たるのは股ベルトカバー4であるため、子供に不快感を与えない。
【0046】
(股ベルトカバーの変形例について)
図5を参照して、股ベルトカバーの変形例について説明する。
図5に示す股ベルトカバー4Aは、上述した股ベルトカバー4の形状と略同一であるが、折り畳み状態維持手段49Aをさらに備える点で異なる。
【0047】
折り畳み状態維持手段49Aは、上方張り出し部46をベルト保持部41側に折畳んだ状態に維持するものである。具体的には、折り畳み状態維持手段49Aとして、係合部48と係合するホックが一例として示されている。折り畳み状態維持手段49Aは、矢印で示すように、上方張り出し部46を下方に折り返し、係合部48と係合するものである。折り畳み状態維持手段49Aは、ホックなどの連結具に限定されず、単に上方張り出し部46を差し込むことが可能な穴部や紐部などであってもよい。つまり、折り畳み状態維持手段49Aは、係合部48と係合しなくてもよく、上方張り出し部46を折り畳んだ状態で維持できるものであればよい。
【0048】
このように、折り畳み状態維持手段49Aが設けられることで、上方張り出し部46を折り畳んだ状態で保持することができるため、バックル13とトング14を係合させた状態でも、係合部48が邪魔にならない。さらに、折り畳み状態維持手段49Aが設けられることで、バックル当接部45をコンパクトにすることができる。
【0049】
(実施の形態2について)
図6(A)および
図6(B)を参照して、実施の形態2に係るチャイルドシートについて説明する。本実施の形態で用いられる股ベルトカバー4は、上述した実施の形態1の股ベルトカバー4の形状と略同一であるが、インナーシート5を備える点で異なる。なお、
図6(B)において、インナーシート5の前方を矢印Aで示している。
【0050】
本実施の形態のチャイルドシートは、座席本体3(
図1)の背もたれ部31および座面部32の上方にインナーシート5が置かれている。このインナーシート5は、特に子供が小さい場合に用いられるものであり、座席本体として機能する。なお、
図6(A)においては、チャイルドシートの図示は省略している。
【0051】
図6(A)を参照して、インナーシート5は、子供の背部に当接し、背もたれ部31として機能するインナー背部51と、子供の臀部および脚部に当接し、座面部32として機能するインナー座部52とを含む。
【0052】
特に、インナー座部52は、底面部53と、底面部53の両側端部から立ち上がる一対の側壁部54と、底面部53の下端部から立ち上がる下壁部55とを有する。底面部53には、股ベルト12が貫通する長孔56が設けられている。底面部53と下壁部55とが交わる角部近傍には、股ベルトカバー4の係合部48と係合する被係合部38Bが設けられる。被係合部38Bは、実施の形態1と同様に、たとえばフックなどの連結具であるが、限定されない。また、被係合部38Bは、下壁部55の内方側に設けられたが、外方側に設けられてもよいし、底面部53の裏面に設けられてもよい。
【0053】
図6(B)を参照して、股ベルト12は、チャイルドシート1の座席本体3に前後方向移動可能に取り付けられている。具体的には、股ベルト12は、チャイルドシート1の前後方向に沿って延びる棒状部材36Bに前後方向に移動可能に保持されている。股ベルト12の下端部は折り返されて環状部が形成されており、その環状部が棒状部材36Bを貫通している。股ベルト12の前後方向の移動を許容するために、インナーシート5には前後方向に長い長孔56が設けられている。子供を乗せる場合には、子供の収容空間を広くするために股ベルト12を前方に移動させ、ベルト10,11,12を子供に装着させる場合には、股ベルト12の基端部(長孔56から外方に突出する部分)が子供の股に当接するまで手動で移動させる。
【0054】
股ベルトカバー4は、係合部48と被係合部38Bとを連結すると、
図6(B)に示すように、上方を向く円弧状となる。上述のように、股ベルトカバー4は、変形に対して元の形状を保つように弾性復元力を発生させる素材で形成されているため、矢印で示すように、股ベルト12は棒状部材36Bに沿って後方へ移動する。上述のように、股ベルト12の基端部は子供の股に近い方がよく、長孔56の後端側に位置していることが好ましい。そのため、係合部48と被係合部38Bの係合を解除すると、股ベルトカバー4の弾性復元力により、股ベルト12が徐々に後方に移動し、子供の股に当たるとその移動は停止するため、作業者の手間が減り、利便性が高い。
【0055】
実施の形態1の股ベルトカバー4は、座面部32に沿って設けられたが、本実施の形態の股ベルトカバー4は、座面部32としての底面部52に沿って設けられていない。要は、股ベルトカバー4は、その先端部が座面部32の先端部に取り付けられていればよく、股ベルトカバー4の先端部以外は、座面部32から浮いていてもよい。
【0056】
なお、上記実施の形態では、座席付き育児器具はチャイルドシートであるとして説明したが、これに限定されず、たとえば乳母車、ベビーラック、育児椅子などの股ベルトが設けられるような座席付き育児器具であればよい。
【0057】
また、本実施の形態1のバックル当接部45の上方張り出し部46は、本体部45aと同一の部材で形成したが、異なる部材であってもよい。たとえば、上方張り出し部46は、本体部45aの上方位置に縫着されているベルトであってもよく、上方張り出し部46自体が係合部48であり、座面部32の先端側に設けられる紐(被係合部38)に掛け止められるようにされてもよい。
【0058】
実施の形態1,2の股ベルトカバー4は、座席付き育児器具とともに用いられたが、股ベルトカバー4単体として個別に提供されるものであってもよい。
【0059】
以上、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 チャイルドシート、2 ベース本体、3 座席本体、4,4A 股ベルトカバー、12 股ベルト、13 バックル、31 背もたれ部、32 座面部、38,38B 被係合部、41 ベルト保持部、45 バックル当接部、46 上方張り出し部、47 側方張り出し部、48 係合部、49A 折り畳み状態維持手段。