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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114534
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】機械学習方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20230810BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20230810BHJP
   G06N 3/02 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06N20/00
G06N3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016880
(22)【出願日】2022-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 恵子
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC20
(57)【要約】
【課題】食品試料の分析結果の公開または秘匿、および分析結果に対応する解析結果の公開または秘匿を考慮した機械学習方法を提供する。
【解決手段】第2装置は、分析機器による食品試料の分析結果を受信するステップと、分析結果を解析して解析結果を取得するステップと、分析結果の公開または秘匿に関する第1情報および解析結果の公開または秘匿に関する第2情報を取得するステップと、第1情報と分析結果とを関連付けて記憶するとともに第2情報と前記解析結果とを関連付けて記憶するステップと、公開の設定がされた分析結果または解析結果の少なくともいずれか一方を教師データとして用いて解析結果を予測する機械学習を行なうステップと、を実行する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システム管理会社が備える演算装置が実行する機械学習方法であって、
前記演算装置は、
分析機器による試料の分析結果と第1官能結果を取得するステップと、
前記分析結果および前記第1官能結果の公開または秘匿に関する公開設定情報を取得するステップと、
前記公開設定情報と前記分析結果および前記第1官能結果とを関連付けて記憶するステップと、
公開の設定がされた前記分析結果または前記第1官能結果の少なくともいずれか一方を教師データとして用いて前記第1官能結果を予測する機械学習を行ない学習済みモデルを生成するステップと、
秘匿の設定がされた前記分析結果を前記機械学習済みモデルに入力し、第2官能結果を出力するステップと、を実行する、機械学習方法。
【請求項2】
前記第1官能結果は、前記試料の官能評価結果、前記分析結果を基に前記演算装置によって出力される官能予測結果、前記分析結果と前記官能評価結果または前記分析結果と前記官能予測結果とから対応付けられる検討結果のいずれかである、請求項1に記載の機械学習方法。
【請求項3】
前記官能評価結果は、前記試料について官能計測評価者により評価された結果である、請求項2に記載の機械学習方法。
【請求項4】
前記演算装置は、入力された前記分析結果を演算し、前記官能予測結果を出力するステップを実行する、請求項2または請求項3に記載の機械学習方法。
【請求項5】
前記演算装置は、入力された前記分析結果と、入力された前記官能評価結果または入力された前記官能予測結果とを演算し、前記検討結果を出力するステップを実行する、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の機械学習方法。
【請求項6】
前記公開設定情報は、前記システム管理会社の顧客情報に関連付けて記憶されている、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の機械学習方法。
【請求項7】
前記演算装置は、前記顧客情報と関連付けられている前記公開設定情報に応じて、顧客へ請求する請求金額情報を変更するステップを実行する、請求項6に記載の機械学習方法。
【請求項8】
前記演算装置は、前記公開設定情報において公開の設定がされた前記分析結果、前記第1官能結果、および前記第2官能結果をネットワークを介してサーバ上に公開し、秘匿の設定がされた前記分析結果、前記第1官能結果、および前記第2官能結果を前記サーバ上に公開しないように設定するステップを実行する、請求項1から請求項7いずれか1項に記載の機械学習方法。
【請求項9】
前記公開設定情報は、
前記分析結果の公開または秘匿に関する第1情報と、
前記第1官能結果、および前記第2官能結果の公開または秘匿に関する第2情報と、を含む、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の機械学習方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、機械学習方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、酒造分析システムとして複数の検索条件の入力により検索結果を絞り込むシステムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-184167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
官能計測結果(以下、官能結果と称する)は、それぞれの組織内でのみ用いられることが多いが、その官能結果が多いほど研究・開発の制度及び効率が向上するため、組織外の官能結果を用いたいという要望がある。しかし、官能結果の公開についての姿勢は私企業や研究機関で大きく異なる。特許文献1に開示されているシステムは、一つの会社または組織で食品試料としての酒の官能結果を含む情報を公開または秘匿にすることが考慮されていなかった。
【0005】
また、食品分野の研究開発において、会社または研究機関がそれぞれの組織の範囲内で、食品試料の官能結果を管理しており、公開情報として官能結果を管理するシステムはなかった。
【0006】
本開示は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、官能結果の公開または秘匿を考慮した機械学習方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、システム管理会社が備える演算装置が実行する機械学習方法に関する。演算装置は、分析機器による試料の分析結果と第1官能結果を取得するステップと、分析結果および第1官能結果の公開または秘匿に関する公開設定情報を取得するステップと、公開設定情報と分析結果および第1官能結果とを関連付けて記憶するステップと、公開の設定がされた分析結果または第1官能結果の少なくともいずれか一方を教師データとして用いて第1官能結果を予測する機械学習を行ない学習済みモデルを生成するステップと、秘匿の設定がされた分析結果を機械学習済みモデルに入力し、第2官能結果を出力するステップと、を実行する。
【0008】
本開示によれば、官能結果の公開または秘匿を考慮した機械学習方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る分析システムの全体構成を示す図である。
図2】実施の形態1に係る分析システムの流れを説明するための図である。
図3】実施の形態1に係る分析システムの各装置の構成を示す図である。
図4】実施の形態1に係る分析システムのシーケンス図である。
図5】学習フェーズにおける推定モデルの学習を説明するための図である。
図6】運用フェーズにおける分析システムの構成を示す図である。
図7】食品試料における官能結果および分析結果を示す図である。
図8】顧客情報に基づく分析結果公開数、解析結果公開数、および金額情報を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一の符号を付して、その説明は原則的に繰り返さない。
<実施の形態1>
図1から図4を参照しながら実施の形態1に係る分析システム1000における機械学習方法について説明する。図1は、実施の形態1に係る分析システム1000の全体構成を示す図である。図2は、実施の形態1に係る分析システム1000の流れを説明するための図である。図3は、実施の形態1に係る分析システム1000の各装置の構成を示す図である。図4は、実施の形態1に係る分析システム1000のシーケンス図である。
【0011】
図1に示すように、分析システム1000においては、顧客100と、システム管理会社200と、受託分析会社300と、サーバ400とが備える各装置がネットワーク5を介して接続されている。顧客100は、食品試料の分析を依頼する立場であり、例えば、1からNである。システム管理会社200は、分析システム1000の全体を管理する立場であり、例えば、1つである。受託分析会社300は、食品試料を分析する立場であり、例えば、1からMである。受託分析会社300は、1つであってもよい。サーバ400は、各種データを記憶、公開する立場であり、例えば、1つである。サーバ400は、複数あってもよい。
【0012】
図2を参照して、1組の顧客100、システム管理会社200、受託分析会社300、およびサーバ400の間における分析システム1000の流れを説明する。顧客100は、受託分析会社300に対して食品試料を送付する。受託分析会社300は、分析機器を用いて食品試料の分析を行なう。受託分析会社300は、分析結果をシステム管理会社200へ通知する。
【0013】
システム管理会社200は、受託分析会社300に対して分析依頼に対する金額を支払う。システム管理会社200は、所属する官能計測評価者に食品試料の官能試験を行なわせる。官能試験とは、人間の感覚(視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚など)を用いて製品の品質を判定する試験をいい、食品、香料、工業製品などについて用いられる試験である。官能試験により、官能結果が得られる。
【0014】
システム管理会社200は、分析結果を取得する。システム管理会社200は、取得した分析結果を解析し、第1官能結果、または第2官能結果である解析結果を取得する。解析結果は、例えば、分析結果と官能結果とに基づいて作成される検討結果のことである。システム管理会社200は、分析結果、解析結果を顧客100へ通知する。
【0015】
顧客100は、分析結果の公開または秘匿を設定するとともに、解析結果の公開または秘匿を設定し、選択結果をシステム管理会社200へ通知する。システム管理会社200は、金額情報を顧客100へ送信する。顧客100は、金額情報に基づいてシステム管理会社200へ金額を支払う。システム管理会社200は、選択結果に基づいて公開される公開データをサーバ400へ送信する。
【0016】
図3を参照して、分析システム1000に用いられる各種装置の構成を説明する。分析システム1000は、顧客100が備える第1装置1と、システム管理会社200が備える第2装置2と、受託分析会社300が備える第3装置3と、サーバ400が備えるサーバ装置4とがネットワーク5を介して接続されている。
【0017】
第1装置1、第2装置2および、第3装置3は、汎用的なコンピュータアーキテクチャに従って構成される。本実施の形態において、第1装置1、第2装置2、および第3装置3は、デスクトップ型コンピュータにより構成される。第1装置1、第2装置2、および第3装置3は、ラップトップ型コンピュータ、タブレット型コンピュータ、スマートフォンなどの携帯端末等のデスクトップ型コンピュータ以外の装置であってもよい。
【0018】
サーバ装置4は、汎用的なコンピュータアーキテクチャに従って構成される。本実施の形態においては、サーバ装置4は、システム管理会社200が所有している。
【0019】
第1装置1は、プロセッサ11と、メインメモリ12と、入出力インターフェイス13と、通信インターフェイス14と、ストレージ15と、を備える。これらのコンポーネントは、バスを介して接続されている。
【0020】
プロセッサ11は、各種のプログラムに従って各種の処理を実行する演算主体(コンピュータ)である。プロセッサ11は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、およびMPU(Multi Processing Unit)のうちの少なくともいずれか1つで構成されている。なお、プロセッサ11は、演算回路(Processing Circuitry)で構成されてもよい。プロセッサ11は、ストレージ15に記憶されたプログラムを読み出して、メインメモリ12に展開して実行する処理等を行なう。
【0021】
メインメモリ12は、例えば、RAM(Random Access Memory)、DRAM(Dynamic RAM)、SRAM(Static Random Access Memory)などの揮発性記憶装置、ROM(Read Only Memory)などの不揮発性装置で構成されている。
【0022】
入出力インターフェイス13は、ボタン、タッチパネルなどのユーザによる入力信号、液晶ディスプレイなどの表示装置への出力信号を各機器に伝達する。
【0023】
通信インターフェイス14は、有線接続または無線接続によって、他の装置との間でデータ(情報)を送受信する。本実施の形態においては、通信インターフェイス14は、ネットワーク5を介した無線通信によって、他の通信インターフェイスとの間でデータ(情報)を送受信する。
【0024】
ストレージ15は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの不揮発性記憶装置などで構成される。ストレージ15には、食品試料の官能試験の官能評価項目および官能評価項目に対応する分析評価項目等を含む分析情報151、公開するデータと秘匿にするデータとを選択した情報である選択情報152などが記憶される。
【0025】
第2装置2は、プロセッサ21と、メインメモリ22と、入出力インターフェイス23と、通信インターフェイス24と、ストレージ25と、を備える。これらのコンポーネントは、バスを介して接続されている。
【0026】
第2装置2におけるプロセッサ21、メインメモリ22、入出力インターフェイス23、通信インターフェイス24、およびストレージ25の構成は、第1装置1におけるプロセッサ11、メインメモリ12、入出力インターフェイス13、通信インターフェイス14、およびストレージ15の構成と同様である。
【0027】
ストレージ25には、顧客情報251、ID情報252、推定モデル253、分析結果情報254、解析結果情報255、および公開・秘匿情報256などが記憶される。
【0028】
顧客情報251は、顧客100に関する情報である。ID情報252は、顧客情報251に対応付けて付される顧客を識別するための情報である。推定モデル253は、機械学習に用いられるモデルであり、詳細は後述する。分析結果情報254は、食品試料の分析結果に関する情報である。解析結果情報255は、分析結果情報254と官能結果とに基づいて作成される第1官能結果、または第2官能結果としての情報である。公開・秘匿情報256は、分析結果情報254、解析結果情報255について公開または秘匿に設定されている項目を示す情報である。
【0029】
第3装置3は、プロセッサ31と、メインメモリ32と、入出力インターフェイス33と、通信インターフェイス34と、ストレージ35と、分析機器インターフェイス36と、を備える。これらのコンポーネントは、バスを介して接続されている。
【0030】
第3装置3におけるプロセッサ31、メインメモリ32、入出力インターフェイス33、通信インターフェイス34、およびストレージ35の構成は、第1装置1におけるプロセッサ11、メインメモリ12、入出力インターフェイス13、通信インターフェイス14、およびストレージ15の構成と同様である。
【0031】
分析機器インターフェイス36は、受託分析会社300が備えている食品試料を分析するための分析機器との間で情報の入出力を行なう。ストレージ35には、食品試料の分析結果に関する分析結果情報351などが記憶される。
【0032】
サーバ装置4は、プロセッサ41と、メインメモリ42と、通信インターフェイス44と、ストレージ45と、を備える。これらのコンポーネントは、バスを介して接続されている。
【0033】
サーバ装置4におけるプロセッサ41、メインメモリ42、通信インターフェイス44、およびストレージ45の構成は、第1装置1におけるプロセッサ11、メインメモリ12、通信インターフェイス14、およびストレージ15の構成と同様である。
【0034】
ストレージ45には、第2装置2から送信される分析結果情報254、解析結果情報255、および公開・秘匿情報256に対応した、分析結果情報454、解析結果情報455、および公開・秘匿情報456などが記憶される。
【0035】
図4を用いて、顧客100の第1装置1と、システム管理会社200の第2装置2と、受託分析会社300の第3装置3と、サーバ400のサーバ装置4との間における処理の流れについて説明する。図4の「SQ」は、シーケンスを意味する。
【0036】
SQ11において、第1装置1は、分析情報を第3装置3へ送信する。SQ12において、第3装置3は、受信した分析情報に含まれる分析項目情報に基づいて、分析機器を用いて食品試料を分析する。その後、SQ12において、第3装置3は、分析結果情報を作成する。SQ13において、第3装置3は、分析結果情報を第2装置2へ送信する。
【0037】
SQ14において、第2装置2は、受信した分析結果情報を登録するとともに、分析結果情報を解析し、第1官能結果としての解析結果情報を取得する。解析結果情報は、官能計測評価者から得た官能試験の結果を基に作成される官能結果情報、推定モデル253を用いた機械学習から得られる官能結果予測情報、分析結果情報および官能結果情報(あるいは官能予測結果情報)から得られる検討結果情報のいずれかを含む。
【0038】
SQ15において、第2装置2は、分析結果情報および解析結果情報を第1装置1へ送信する。なお、分析結果情報および解析結果情報には、顧客を識別するためのIDが対応付けられている。SQ16において、第1装置1は、受信した分析結果情報および解析結果情報について公開するか秘匿するかの設定を行なう。
【0039】
SQ17において、第1装置1は、分析結果情報および解析結果情報について公開するか秘匿するかの選択を行なった選択情報を第2装置2へ送信する。SQ18において、第2装置2は、分析結果情報の各項目および解析結果情報の各項目に対して、公開または秘匿のタグ付けを行なう。SQ19において、第2装置2は、公開のタグ付けがされた分析結果情報および解析結果情報を教師データとして用いて解析結果情報を予測する機械学習を行なうように設定する。具体的には、機械学習を行なうことにより、学習済みモデルを生成する。そして、公開または秘匿の設定がされた分析結果を学習済みモデルに入力することで第2官能結果としての解析結果情報を取得することができる。
【0040】
SQ20において、第2装置2は、公開のダグ付けがされた分析結果情報および解析結果情報をサーバ装置4へ送信する。SQ21において、第2装置2は、顧客情報に紐付く公開、秘匿のダグに応じて顧客100に請求するための金額情報を変更する計算を行なう。SQ21において、第2装置2は、SQ21で計算した値に基づく請求金額情報を第1装置1へ送信する。請求金額は、例えば、機械学習方法の使用料金、サブスクリプションとして請求する定額料金、解析結果情報を取得するための解析料金等が含まれる。
【0041】
図5図6を参照して、本実施の形態の推定モデル253の学習フェーズ、運用フェーズについて説明する。図5は、学習フェーズにおける推定モデルの学習を説明するための図である。図6は、運用フェーズにおける分析システムの構成を示す図である。
【0042】
図5に示すように、学習フェーズは、分析結果あるいは分析結果および官能結果を第2装置2へ提供する前に推定モデル253を学習させる事前学習フェーズである。推定モデル253は、学習装置51によって分析結果から第2官能結果としての官能結果を推定する、あるいは分析結果および官能結果から第2官能結果としての検討結果を予測するように学習されている。
【0043】
推定モデル253を学習させるための学習アルゴリズムには、教師あり学習、教師なし学習、および強化学習などの公知のアルゴリズムを用いることができる。本実施の形態においては、学習装置51は、学習用データ40を用いた教師あり学習によって、推定モデル253を学習させる。
【0044】
学習用データ40は、推定モデル253の学習のために予め準備されており、分析結果と、分析結果に対応する官能結果とを含む。例えば、プログラムの設計者は、食品試料における過去の複数の分析結果と、分析結果に対応する官能結果(正解データ)とを関連付けて、学習用データ(教師データ)40とする。設計者は、このような学習用データ40を予め複数用意する。
【0045】
推定モデル253は、ニューラルネットワーク2531と、ニューラルネットワーク2531によって用いられるパラメータ2532とを含む。ニューラルネットワーク2531は、畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolution Neural Network)、リカレントニューラルネットワーク(再帰型ニューラルネットワーク)(RNN:Recurrent Neural Network)、またはLSTMネットワーク(Long Short Term Memory Network)など、ディープラーニングによる処理で用いられる公知のニューラルネットワークが適用される。
【0046】
推定モデル253は、上述したようなニューラルネットワーク2531を用いることで、ディープラーニングを行う。パラメータ2532は、ニューラルネットワーク2531による計算に用いられる重み付け係数などを含む。なお、推定モデル253は、ニューラルネットワークを用いたディープラーニングによって学習するものに限らず、他の機械学習によって学習するものであってもよい。ここで、学習前の推定モデル253および学習済みの推定モデル253をまとめて「推定モデル」と総称する一方で、特に、学習済みの推定モデル253を「学習済モデル」とも称する。
【0047】
学習装置51は、学習用データ40のうち、分析結果の入力あるいは分析結果および官能結果の入力を受け付ける。学習装置51は、入力された分析結果あるいは分析結果および官能結果と、ニューラルネットワーク2531を含む推定モデル253とに基づき、官能結果あるいは検討結果を推定するための処理を実行する。
【0048】
学習装置51は、官能結果の推定結果と、学習用データ40に含まれる正解データ(分析結果に対応する官能結果)とに基づき、推定モデル253を学習させる。具体的には、学習装置51は、推定モデル253によって得られた官能結果の推定結果が、正解データに近づくように、パラメータ2532(たとえば、重み付け係数)を調整することで、推定モデル253を学習させ学習済モデルを生成する。
【0049】
あるいは、学習装置51は、検討結果の推定結果と、学習用データ40に含まれる正解データ(分析結果および官能結果に対応する検討結果)とに基づき、推定モデル253を学習させる。具体的には、学習装置51は、推定モデル253によって得られた検討結果の推定結果が、正解データに近づくように、パラメータ2532(たとえば、重み付け係数)を調整することで、推定モデル253を学習させ学習済モデルを生成する。
【0050】
図6に示す運用フェーズは、分析結果あるいは分析結果および解析結果を提供した後に学習済モデルである推定モデル253を用いて第2官能結果として、官能予測結果あるいは検討結果を推定するフェーズである。図6に示されるように、第2装置2は、図5に示す学習装置51によって学習された推定モデル253をストレージ25に格納する。例えば、第2装置2は、学習装置51から推定モデル253を取得し、取得した推定モデル253をストレージ25に格納する。なお、学習装置51は、第2装置2であってもよく、上述した学習装置51の機能は、第2装置2のプロセッサ21が有する機能であってもよい。
【0051】
第2装置2のプロセッサ21は、入力部211と、処理部212と、出力部213とを備える。入力部211は、分析結果あるいは分析結果および解析結果の入力を受け付ける。処理部212は、入力部211から入力される分析結果あるいは分析結果および解析結果と、ニューラルネットワーク2531を含む推定モデル253とに基づき、官能予測結果あるいは検討結果を推定するための処理を実行する。なお、上述したように、推定モデル253は、ニューラルネットワークを用いたディープラーニングによって学習するものに限らず、他の機械学習によって学習するものであってもよい。出力部213は、処理部212によって得られた結果を官能予測結果あるいは検討結果として出力する。
【0052】
図7は、食品試料における官能結果および分析結果を示す図である。図7では、食品資料として複数の日本酒が用いられた場合の官能結果と分析結果との具体例が示されている。日本酒の場合、例えば、官能計測評価者が官能試験を行なうことにより、官能評価項目の「香りの強さ」、「味の濃さ」、「味の甘辛」、および「熟度」を数値化する。官能評価項目に対応した分析項目として、「アルコール分」、「日本酒度」、「酸度」、「アミノ酸度」、「酢酸イソアミル」、「イソアミルアルコール」、「カプロン酸エチル」、「クエン酸」、「ピルビン酸」、「リンゴ酸」、「コハク酸」、「乳酸」、「酢酸」、および「グルコース」が分析機器により分析され数値化される。
【0053】
より具体的には、例えば、官能評価項目の「香りの強さ」に対して分析項目の「カプロン酸エチル」および「グルコース」の量が影響する。これらの量が多いと「香りの強さ」が強いと判断できる。
【0054】
第2装置2においては、図7に示す分析結果と官能結果とに基づいて、分析結果と官能結果との関係を示す検討結果を作成する。検討結果は、例えば、分析結果のクロマトグラムのあるピーク値が官能評価のある味の項目に対応することを示すデータである。
【0055】
図8は、顧客情報に基づく分析結果公開数、解析結果公開数、および金額情報を示す図である。顧客100は、取得した分析結果の各項目について公開または秘匿にすることを設定するとともに、取得した解析結果の各項目について公開または秘匿にすることを設定する。分析結果および解析結果の公開または秘匿に関する情報を公開設定情報とも称する。公開設定情報は、分析結果の公開または秘匿に関する第1情報と、解析結果(第1官能結果、および第2官能結果)の公開または秘匿に関する第2情報とを含む。
【0056】
システム管理会社200の第2装置2は、顧客100の第1装置1から送信される公開または秘匿の公開設定情報に基づいて、顧客100へ請求する金額を計算する。図8に示すように、例えば、顧客Aは、合計14個の分析結果の項目のうち14個の項目を公開する第1情報の設定をし、合計4個の解析結果の項目のうち4個の項目を公開する第2情報の設定をする。この場合、顧客Aの請求金額の割引率は、15%である。顧客Bは、合計14個の分析結果の項目のうち10個の項目を公開する第1情報の設定をし、合計4個の解析結果の項目のうち3個の項目を公開する第2情報の設定をする。この場合、顧客Bの請求金額の割引率は、7%である。
【0057】
顧客Cは、合計14個の分析結果の項目のうち8個の項目を公開する第1情報の設定をし、合計4個の解析結果の項目のうち2個の項目を公開する第2情報の設定をする。この場合、顧客Cの請求金額の割引率は、5%である。顧客Dは、合計14個の分析結果の項目のうち5個の項目を公開する第1情報の設定をし、合計4個の解析結果の項目のうち1個の項目を公開する第2情報の設定をする。この場合、顧客Dの請求金額の割引率は、3%である。顧客Eは、合計14個の分析結果の項目のうち0個の項目を公開する第1情報の設定をし、合計4個の解析結果の項目のうち0個の項目を公開する第2情報の設定をする。この場合、顧客Eの請求金額の割引率は、0%である。
【0058】
図8に示すように、分析結果の公開数と、解析結果の公開数とから請求する金額情報としての割引率が異なるように設定されている。請求金額の割引率は、公開数が多いほど高い。このようにすれば、公開する側は、公開数を多くすることで請求金額の割引を多く受けることができるというメリットがある。
【0059】
本実施の形態の機械学習方法では、顧客100が取得した分析結果および解析結果の各項目について公開とするか秘匿とするかについて選択が可能である。システム管理会社200の第2装置2は、公開または秘匿のタグ付けをし、公開のタグ付けがされた分析結果情報および解析結果情報を教師データとして用いて機械学習を行なうように設定する。
【0060】
このようにすれば、公開のタグ付けがされた分析結果情報および解析結果情報を用いて精度および効率を向上させることができる。公開のタグ付けがされた分析結果情報および解析結果情報の数により請求金額の割引率が異なるため、顧客100に積極的に公開させるようにすることができる。
<変形例>
上述した実施の形態において、請求金額の割引率は、公開数に応じて変化するように設定されていた。しかし、請求金額の割引率は、公開する項目の内容に応じて変化するように設定してもよい。例えば、公開データが少ない項目を公開した顧客の割引率が他の顧客の割引率よりも高くなるように設定してもよい。
【0061】
上述した実施の形態において、第2装置2のプロセッサ21は、入力された分析結果から官能予測結果を出力していた。プロセッサ21は、入力された分析結果と官能評価結果とから検討結果を出力してもよいし、入力された分析結果と官能予測結果とから検討結果を出力してもよい。
【0062】
上述した実施の形態において、官能試験は、システム管理会社200で実行される場合を説明した。官能試験は、顧客100、分析機器を有する受託分析会社300において実行されるようにしてもよい。例えば、官能試験を顧客100で実行する場合、その分の請求金額を減額してもよい。
【0063】
上述した実施の形態において、受託分析会社300の第3装置3は、分析結果をシステム管理会社200の第2装置2へ送信せず、顧客100の第1装置1へ直接送信するようにしてもよい。このようにすれば、システム管理会社200の第2装置2が分析結果を受信する処理および送信する処理を省略することができる。
【0064】
上述した実施の形態において、顧客毎に参照できる公開範囲を設定してもよい。例えば、顧客Aと顧客Bとが関連会社である場合には参照できる公開範囲が広く、顧客Aと顧客Cとが競合会社である場合には参照出来る公開範囲が顧客Bとの関係よりも狭くなるようにすればよい。
【0065】
上述した実施の形態において、情報の公開状況に応じて請求金額を変更するのではなく、公開数が多い場合には情報の検索範囲が広く、公開数が少ない場合には情報の検索範囲を狭くなるように設定してもよい。
【0066】
上述した実施の形態において、依頼した顧客以外の他の企業であっても料金を払うことによりサーバ上の情報を検索できるようにしてもよい。
【0067】
上述した実施の形態において、第1装置1から第2装置2へ送信される分析情報には、食品試料の製造年月日、食品試料の種類等の情報が含まれるようにしてもよい。
【0068】
[態様]
上述した複数の例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0069】
(第1項) 一態様に係る機械学習方法は、システム管理会社が備える演算装置が実行する機械学習方法に関する。演算装置は、分析機器による試料の分析結果と第1官能結果を取得するステップと、分析結果および第1官能結果の公開または秘匿に関する公開設定情報を取得するステップと、公開設定情報と分析結果および第1官能結果とを関連付けて記憶するステップと、公開の設定がされた分析結果または第1官能結果の少なくともいずれか一方を教師データとして用いて第1官能結果を予測する機械学習を行ない学習済みモデルを生成するステップと、秘匿の設定がされた分析結果を機械学習済みモデルに入力し、第2官能結果を出力するステップと、を実行する。
【0070】
第1項に記載の機械学習方法によれば、官能結果の公開または秘匿を考慮した機械学習方法を提供することができる。
【0071】
(第2項) 第1官能結果は、試料の官能評価結果、分析結果を基に演算装置によって出力される官能予測結果、分析結果と官能評価結果または分析結果と官能予測結果とから対応付けられる検討結果のいずれかである。
【0072】
第2項に記載の機械学習方法によれば、官能評価結果、官能予測結果、および検討結果のいずれかについて公開または秘匿を考慮した機械学習方法を提供することができる。
【0073】
(第3項) 官能評価結果は、試料について官能計測評価者により評価された結果である。
【0074】
第3項に記載の機械学習方法によれば、官能計測評価者により評価される官能評価結果について、公開または秘匿の設定をすることができる。
【0075】
(第4項) 演算装置は、入力された分析結果を演算し、官能予測結果を出力するステップを実行する。
【0076】
第4項に記載の機械学習方法によれば、分析結果から官能予測結果を出力できるため、官能予測結果の精度を向上させることができる。
【0077】
(第5項) 演算装置は、入力された分析結果と、入力された官能評価結果または入力された官能予測結果とを演算し、検討結果を出力するステップを実行する。
【0078】
第5項に記載の機械学習方法によれば、分析結果と、官能評価結果または官能予測結果とから検討結果を出力できるため、検討結果の精度を向上させることができる。
【0079】
(第6項) 公開設定情報は、システム管理会社の顧客情報に関連付けて記憶されている。
【0080】
第6項に記載の機械学習方法によれば、顧客情報毎に公開または秘匿にする情報を適切に管理することができる。
【0081】
(第7項) 演算装置は、顧客情報と関連付けられている公開設定情報に応じて、顧客へ請求する請求金額情報を変更するステップを実行する。
【0082】
第7項に記載の機械学習方法によれば、顧客が公開または秘匿にする情報に応じて適切な金額の請求を行なうことができる。
【0083】
(第8項) 演算装置は、公開設定情報において公開の設定がされた分析結果、第1官能結果、および第2官能結果をネットワークを介してサーバ上に公開し、秘匿の設定がされた分析結果、第1官能結果、および第2官能結果をサーバ上に公開しないように設定するステップを実行する。
【0084】
第8項に記載の機械学習方法によれば、公開の設定がされた分析結果、第1官能結果、および第2官能結果のみを適切にサーバ上に公開することができる。
【0085】
(第9項) 公開設定情報は、分析結果の公開または秘匿に関する第1情報と、第1官能結果、および第2官能結果の公開または秘匿に関する第2情報と、を含む。
【0086】
第9項に記載の機械学習方法によれば、第1情報および第2情報を個別に設定することができる。
【0087】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0088】
1 第1装置、2 第2装置、3 第3装置、4 サーバ装置、5 ネットワーク、11,21,31,41 プロセッサ、12,22,32,42 メインメモリ、13,23,33 入出力インターフェイス、14,24,34,44 通信インターフェイス、15,25,35,45 ストレージ、36 分析機器インターフェイス、40 学習用データ、51 学習装置、151 分析情報、152 選択情報、200 システム管理会社、211 入力部、212 処理部、213 出力部、251 顧客情報、252 ID情報、253 推定モデル、254,351,454 分析結果情報、255,455 解析結果情報、256,456 公開・秘匿情報、300 受託分析会社、400 サーバ、1000 分析システム、2531 ニューラルネットワーク、2532 パラメータ。
図1
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図8