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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114559
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】防音材及び防音構造体
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/168 20060101AFI20230810BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
G10K11/168
G10K11/16 150
G10K11/16 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016935
(22)【出願日】2022-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000110804
【氏名又は名称】ニチアス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹川 哲矢
(72)【発明者】
【氏名】叶 貴麿
(72)【発明者】
【氏名】森川 修
(72)【発明者】
【氏名】菊地 和紘
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061AA22
5D061AA25
5D061BB37
5D061CC15
5D061DD06
(57)【要約】
【課題】優れた防音効果を示す防音材及び効果的に防音された防音構造体を提供する。
【解決手段】防音材は、音源構造体に対向して配置される第一の弾性多孔質層と、前記第一の弾性多孔質層の前記音源構造体と反対側に積層された非通気層と、前記非通気層の前記音源構造体と反対側に積層された第二の弾性多孔質層と、を有し、前記第二の弾性多孔質層の前記音源構造体と反対側に非通気層を有しない。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音源構造体に対向して配置される第一の弾性多孔質層と、
前記第一の弾性多孔質層の前記音源構造体と反対側に積層された非通気層と、
前記非通気層の前記音源構造体と反対側に積層された第二の弾性多孔質層と、
を有し、
前記第二の弾性多孔質層の前記音源構造体と反対側に非通気層を有しない、
防音材。
【請求項2】
前記第一の弾性多孔質層の弾性表面が、前記音源構造体に対向する最外表面である、
請求項1に記載の防音材。
【請求項3】
前記第一の弾性多孔質層の前記弾性表面は、前記音源構造体の表面に圧接される、
請求項2に記載の防音材。
【請求項4】
前記音源構造体に巻き付けられる、
請求項1乃至3のいずれかに記載の防音材。
【請求項5】
シート状である、
請求項1乃至4のいずれかに記載の防音材。
【請求項6】
前記音源構造体は、圧縮機である、
請求項1乃至5のいずれかに記載の防音材。
【請求項7】
前記音源構造体が収容された部屋の中に配置される、
請求項1乃至6のいずれかに記載の防音材。
【請求項8】
音源構造体と、
前記音源構造体の表面を覆う防音材と、
を有し、
前記防音材は、
前記音源構造体の前記表面に接する第一の弾性多孔質層と、
前記第一の弾性多孔質層の前記音源構造体と反対側に積層された非通気層と、
前記非通気層の前記音源構造体と反対側に積層された第二の弾性多孔質層と、
を有し、
前記第二の弾性多孔質層の前記音源構造体と反対側に非通気層を有しない、
防音構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音材及び防音構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コンプレッサーの内部機構から発生する空気伝搬音及び固体伝搬音を低減するための防音材として、騒音発生源の構造体の外形に添わせて弾性多孔質層を添着し、次いで、非通気層にて当該弾性多孔質層を覆ってなる防音材であって、当該弾性多孔質層の添着端部を露呈することなく非通気層にて覆ったことを特徴とする防音材が記載されている。
【0003】
特許文献2には、音源に対向して配置される第1の吸音材と、第1の吸音材の音源とは反対側の面に積層され、JIS L1018で測定した通気率が10cc/cm・sec以下である第1の軟質非通気層と、第1の軟質非通気層に積層される第2の吸音材と、第2 の吸音材に積層され、JIS L1018で測定した通気率が10cc/cm・sec以下で、かつJIS K7127で測定したヤング率が前記第1の軟質非通気層よりも5倍以上大きい第2の軟質非通気層とを備え、少なくとも第2の軟質非通気層と第2の吸音材とが、部分的に、もしくは全面で接着されている、防音材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-156141号公報
【特許文献2】国際公開第2012/102345号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、本発明の発明者らは、コンプレッサーから発生する騒音を低減するための技術的手段について検討を行ってきた。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、優れた防音効果を示す防音材及び効果的に防音された防音構造体を提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る防音材は、音源構造体に対向して配置される第一の弾性多孔質層と、前記第一の弾性多孔質層の前記音源構造体と反対側に積層された非通気層と、前記非通気層の前記音源構造体と反対側に積層された第二の弾性多孔質層と、を有し、前記第二の弾性多孔質層の前記音源構造体と反対側に非通気層を有しない。本発明によれば、優れた防音効果を示す防音材が提供される。
【0008】
また、前記防音材において、前記第一の弾性多孔質層の弾性表面が、前記音源構造体に対向する最外表面であることとしてもよい。この場合、前記第一の弾性多孔質層の前記弾性表面は、前記音源構造体の表面に圧接されることとしてもよい。
【0009】
また、前記防音材は、前記音源構造体に巻き付けられることとしてもよい。また、前記防音材は、シート状であることとしてもよい。また、前記音源構造体は、圧縮機であることとしてもよい。また、前記防音材は、前記音源構造体が収容された部屋の中に配置されることとしてもよい。
【0010】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る防音構造体は、音源構造体と、前記音源構造体の表面を覆う防音材と、を有し、前記防音材は、前記音源構造体の前記表面に接する第一の弾性多孔質層と、前記第一の弾性多孔質層の前記音源構造体と反対側に積層された非通気層と、前記非通気層の前記音源構造体と反対側に積層された第二の弾性多孔質層と、を有し、前記第二の弾性多孔質層の前記音源構造体と反対側に非通気層を有しない。本発明によれば、効果的に防音された防音構造体が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、優れた防音効果を示す防音材及び効果的に防音された防音構造体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る防音材の一例について、主な構成を概略的に示す説明図である。
図2】本発明の一実施形態に係る防音材及び防音構造体の一例について、主な構成を概略的に示す説明図である。
図3】本発明の一実施形態に係る防音材及び防音構造体の他の例について、主な構成を概略的に示す説明図である。
図4】本発明の一実施形態に係る防音材の他の例について、主な構成を概略的に示す説明図である。
図5A】本発明の一実施形態に係る実施例1において放射音の音圧レベルを評価した結果を示す説明図である。
図5B】本発明の一実施形態に係る実施例1においてオーバーオール値を評価した結果を示す説明図である。
図5C図5Bに示される各周波数範囲におけるオーバーオール値を表で示す説明図である。
図6A】本発明の一実施形態に係る実施例2において放射音の音圧レベルを評価した結果を示す説明図である。
図6B】本発明の一実施形態に係る実施例2においてオーバーオール値を評価した結果を示す説明図である。
図7】本発明の一実施形態に係る実施例3においてオーバーオール値を評価した結果を示す説明図である。
図8】本発明の一実施形態に係る実施例4において残響室法吸音率を評価した結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は本実施形態に限られるものではない。
【0014】
図1には、本実施形態に係る防音材の一例について、その主な構成を概略的に示す。図2には、本実施形態に係る防音材及び防音構造体の一例について、その主な構成を概略的に示す。図3には、本実施形態に係る防音材及び防音構造体の他の例について、その主な構成を概略的に示す。
【0015】
本実施形態に係る防音材1は、音源構造体100に対向して配置される第一の弾性多孔質層10と、当該第一の弾性多孔質層10の当該音源構造体100と反対側に積層された非通気層30と、当該非通気層30の当該音源構造体100と反対側に積層された第二の弾性多孔質層20と、を有し、当該第二の弾性多孔質層20の当該音源構造体100と反対側に非通気層を有しない。
【0016】
また、本実施形態に係る防音構造体2は、音源構造体100と、当該音源構造体100の表面101を覆う防音材1と、を有し、当該防音材1は、当該音源構造体100の当該表面101に接する第一の弾性多孔質層10と、当該第一の弾性多孔質層10の当該音源構造体100と反対側に積層された非通気層30と、当該非通気層30の当該音源構造体100と反対側に積層された第二の弾性多孔質層20と、を有し、当該第二の弾性多孔質層20の当該音源構造体100と反対側に非通気層を有しない。
【0017】
すなわち、本発明の発明者らは、優れた防音効果を示す防音材の構造について鋭意検討を重ねた結果、防音材1が、音源構造体に対向して配置される第一の弾性多孔質層と、当該第一の弾性多孔質層の当該音源構造体と反対側に積層された非通気層と、当該非通気層の当該音源構造体と反対側に積層された第二の弾性多孔質層とを有する場合において、意外にも、当該第二の弾性多孔質層の当該音源構造体と反対側に追加の非通気層を設けないことにより、当該追加の非通気層を有すること以外は同一の防音材に比べて、優れた防音効果(例えば、比較的低い周波数域における防音効果の向上)を示すことを独自に見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
音源構造体100は、防音の対象となる音を発する構造体であれば特に限られないが、例えば、圧縮機又はモーターであることとしてもよい。圧縮機は、コンプレッサーであってもよい。コンプレッサーは、例えば、エアコンプレッサーであってもよい。エアコンプレッサーは、気体を圧縮して吐出するコンプレッサーである。コンプレッサーは、電動コンプレッサーであってもよい。電動コンプレッサーは、モーターで駆動するコンプレッサーである。図1図3に示す例において、音源構造体100は、電動エアコンプレッサーである。モーターは、例えば、車両(vehicle)に含まれるモーターであってもよいし、他のモーターであってもよい。車両に含まれるモーターは、例えば、車輪駆動用のモーターであってもよいし、車両に含まれる他のモーターであってもよい。
【0019】
音源構造体100から発生する音の周波数範囲は、防音の対象となる範囲内であれば特に限られないが、例えば、10Hz以上であってもよく、250Hz以上であってもよく、500Hz以上であってもよく、800Hz以上であってもよい。
【0020】
また、音源構造体100から発生する音の周波数は、例えば、10kHz以下であってもよく、3150kHz以下であってもよく、2000Hz以下であってもよく、1600Hz以下であってもよい。音源構造体100から発生する音の周波数は、上述した下限値の1つと、上述した上限値の1つとの任意の組み合わせにより特定されてもよい。
【0021】
音源構造体100は、図3に示すように、部屋200の中に収容されていてもよい。この場合、防音材1もまた、音源構造体100が収容された部屋200の中に配置されることが好ましい。
【0022】
音源構造体100が収容される部屋200は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、車両の動力装置室であることとしてもよい。動力装置室は、動力装置を収容する部屋である。動力装置は、車両が動くための動力を発生させる装置であれば特に限られないが、例えば、エンジン及びモーターからなる群より選択される1以上であってもよい。すなわち、動力装置室は、例えば、エンジンルームであってもよいし、モータールームであってもよい。また、動力装置室を有する車両は、特に限られないが、例えば、エンジン及びモーターからなる群より選択される1以上を有する自動車(例えば、電気自動車、ハイブリッド車又は燃料電池車)であってもよい。
【0023】
防音材1は、音源構造体100から発生する音を低減するため、その第一の弾性多孔質層10が当該音源構造体100に対向するように配置される。具体的に、図1に示すように、防音材1は、その第一の弾性多孔質層10が、音源構造体100から離間した位置で当該音源構造体100に対向するよう配置されることとしてもよい。
【0024】
また、図2及び図3に示すように、防音材1は、音源構造体100の表面101を覆うように配置されることとしてもよい。この場合、音源構造体100に対向する第一の弾性多孔質層10は、当該音源構造体100の当該表面101に接して配置される。この結果、音源構造体100と、当該音源構造体100の表面101を覆う防音材1とを有する防音構造体2が構築される。
【0025】
防音材1によって音源構造体100の表面101を覆う場合、図2及び図3に示すように、当該防音材1は、当該音源構造体100に巻き付けられることが好ましい。すなわち、この場合、防音構造体2において、防音材1は、音源構造体100に巻き付けられることにより、当該音源構造体100の表面101を覆う。
【0026】
音源構造体100の全表面の面積に対する、防音材1が覆う表面の面積の割合は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、50%以上であってもよく、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることがより一層好ましく、90%以上であることが特に好ましい。もちろん、防音材1が音源構造体100の全表面(100%)を覆うことが最も好ましい。
【0027】
また、音源構造体100が柱状部分を有し、防音材1が当該柱状部分の外周面を覆うように巻き付けられて配置される場合、当該柱状部分の外周面の面積に対する、当該防音材1が覆う面積の割合は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、50%以上であってもよく、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることがより一層好ましく、90%以上であることが特に好ましい。もちろん、図2及び図3に示す例のように、防音材1が音源構造体100の柱状部分110の全外周面(100%)を覆うように巻き付けられることが最も好ましい。
【0028】
防音材1が音源構造体100に巻き付けられる場合、当該防音材1の一方の端部1aと他方の端部1bとは締結されることが好ましい。すなわち、防音材1は、その一方の端部1aと他方の端部1bとを締結するための締結部(不図示)を有することが好ましい。防音材1の締結部は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、面ファスナーやホック等の係止手段、及び/又は、クリップやリベット等の締付手段を含むことが好ましい。
【0029】
音源構造体100に巻き付けられた防音材1の一対の端部1a,1bは、図2及び図3に示すように互いに突き合わされてもよいが、これに限られず、例えば、当該音源構造体100の柱状部分110の径方向において、当該一対の端部1a,1bの一方が他方に重ねられてもよい。防音材1の一対の端部1a,1bの一方が他方に重ねられる場合、当該重なった一対の端部1a,1bを締結する方法は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、当該一対の端部1a,1bのうち上方側に配置される端部の下面と、下方側に配置される端部の上面とにそれぞれ設けられた締結部(例えば、面ファスナーやホック等の係止手段)により締結してもよいし、及び/又は、当該重なった一対の端部1a,1bを貫通するよう形成された貫通孔に締結具(例えば、クリップやリベット等の締付手段)を貫通させて締め付けることにより締結してもよい。
【0030】
また、音源構造体100の表面101を覆う防音材1の一方の端部1aと他方の端部1bとが離間して配置される場合においても、当該一対の端部1a,1bは、当該防音材1の締結部によって締結することが好ましい。すなわち、この場合、防音材1は、例えば、一方の端部1aから他方の端部1bまで届く締結部(例えば、面ファスナーを含んでもよい締結バンド)を有してもよい。
【0031】
防音材1の弾性多孔質層10,20は、吸音層として機能する。弾性多孔質層10,20は、弾性多孔質体から構成される。弾性多孔質体は、弾性を有し吸音性を示す多孔質体である。弾性多孔質体は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、繊維体及び発泡成形体からなる群より選択される1以上であることが好ましい。
【0032】
繊維体は、有機繊維を含むこととしてもよく、及び/又は、無機繊維を含むこととしてもよいが、有機繊維を含むことが好ましい。有機繊維は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、樹脂繊維、綿、羊毛、木毛、クズ繊維及びケナフ繊維からなる群より選択される1以上であってもよいが、樹脂繊維であることが好ましく、熱可塑性樹脂繊維であることが特に好ましい。
【0033】
樹脂繊維は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維等のポリエステル繊維、ナイロン繊維等のポリアミド繊維、ポリエチレン繊維やポリプロピレン繊維等のポリオレフィン繊維、及びアクリル繊維からなる群より選択される1以上であることが好ましい。
【0034】
無機繊維は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、グラスウール、ロックウール、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカ-アルミナ繊維、アラミド繊維、岩綿長繊維及びウィスカー(SiC等)からなる群より選択される1以上であることが好ましい。
【0035】
繊維体は、フェルトであることが好ましく、有機繊維フェルトであることが特に好ましい。有機繊維フェルトは、例えば、第一の有機繊維と、当該第一の有機繊維より融点が低い第二の有機繊維とを含み、当該第一の有機繊維は、当該第二の有機繊維が接着剤の役割を果たす熱融着によって部分的に接合されているフェルトであってもよい。また、有機繊維フェルトは、例えば、樹脂(例えば、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂)で部分的に接合された有機繊維を含むフェルト(いわゆるレジンフェルト)であってもよい。
【0036】
また、繊維体は、例えば、バインダーで接合された無機繊維を含むこととしてもよい。この場合、バインダーは、例えば、樹脂(例えば、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂)であることが好ましい。
【0037】
発泡成形体は、連通気泡を有する発泡成形体であることが好ましい。発泡成形体を構成する樹脂は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、熱可塑性樹脂であることが好ましい。具体的に、発泡成形体を構成する樹脂は、例えば、ポリウレタン、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ニトリルブタジエンゴム、クロログレンゴム、スチレンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、EPDM及びエチレン-酢酸ビニル共重合体からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
【0038】
第一の弾性多孔質層10と第二の弾性多孔質層20とは、同一の弾性多孔質体で構成されてもよいし、異なる弾性多孔質体で構成されてもよい。また、第一の弾性多孔質層10及び第二の弾性多孔質層20はそれぞれ、1つの弾性多孔質体から構成されることが好ましいが、積層された複数の弾性多孔質体を含んで構成されてもよい。
【0039】
弾性多孔質層10,20は、吸音性を示すために適した弾性を有する。弾性多孔質層10,20の弾性は、本発明の効果が得られれば特に限られない。具体的に、弾性多孔質層10,20のJIS K7127-1999に準拠した方法により測定されるヤング率は、例えば、10MPa以下であってもよく、1MPa以下であることが好ましく、0.5MPa以下であることがより好ましく、0.1MPa以下であることがより一層好ましく、0.05MPa以下であることが特に好ましい。
【0040】
また、弾性多孔質層10,20のヤング率は、例えば、0.1KPa以上であってもよく、0.5KPa以上であることが好ましく、1KPa以上であることがより好ましく、5KPa以上であることがより一層好ましく、10KPa以上であることが特に好ましい。弾性多孔質層10,20のヤング率は、上述した下限値の1つと、上述した上限値の1つとの任意の組み合わせにより特定されてもよい。
【0041】
第一の弾性多孔質層10と第二の弾性多孔質層20とは、同一のヤング率を有してもよいし、異なるヤング率を有してもよい。すなわち、第一の弾性多孔質層10のヤング率と、第二の弾性多孔質層20のヤング率とは同一又は近似していてもよい。この場合、第一の弾性多孔質層10のヤング率に対する第二の弾性多孔質層20のヤング率の比率は、例えば、0.7以上、1.3以下であってもよく、0.8以上、1.2以下であってもよく、0.9以上、1.1以下であってもよい。
【0042】
一方、第二の弾性多孔質層20のヤング率が小さい場合には、防音材1を音源構造体100に巻き付けやすくなり、その結果、第一の弾性多孔質層10の弾性表面11を当該音源構造体100の表面101と密着させやすくなり、防音材1による防音効果が向上する。
【0043】
したがって、第二の弾性多孔質層20のヤング率は、第一の弾性多孔質層10のヤング率より小さいこととしてもよい。具体的に、この場合、第一の弾性多孔質層10のヤング率に対する第二の弾性多孔質層20のヤング率の比率は、例えば、0.95以下であってもよく、0.90以下であってもよく、0.85以下であってもよく、0.80以下であってもよく、0.75以下であってもよく、0.70以下であってもよい。
【0044】
また、第一の弾性多孔質層10のヤング率に対する第二の弾性多孔質層20のヤング率の比率は、例えば、0.50以上であってもよく、0.55以上であってもよく、0.60以上であってもよく、0.65以上であってもよい。第一の弾性多孔質層10のヤング率に対する第二の弾性多孔質層20のヤング率の比率は、上述した下限値の1つと、上述した上限値の1つとの任意の組み合わせにより特定されてもよい。
【0045】
弾性に関する他の特性として、弾性多孔質層10,20のJIS K7220-2006に準拠した方法により測定される体積弾性率は、例えば、1MPa以下であってもよく、100KPa以下であることが好ましく、50KPa以下であることがより好ましく、30KPa以下であることがより一層好ましく、10KPa以下であることが特に好ましい。
【0046】
また、弾性多孔質層10,20の体積弾性率は、例えば、0.1KPa以上であってもよく、0.5KPa以上であることが好ましく、1KPa以上であることがより好ましく、5KPa以上であることがより一層好ましく、10KPa以上であることが特に好ましい。弾性多孔質層10,20の体積弾性率は、上述した下限値の1つと、上述した上限値の1つとの任意の組み合わせにより特定されてもよい。
【0047】
第一の弾性多孔質層10と第二の弾性多孔質層20とは、同一の体積弾性率を有してもよいし、異なるヤング率を有してもよい。すなわち、第一の弾性多孔質層10の体積弾性率と、第二の弾性多孔質層20の体積弾性率とは同一又は近似していてもよい。この場合、第一の弾性多孔質層10の体積弾性率に対する第二の弾性多孔質層20の体積弾性率の比率は、例えば、0.7以上、1.3以下であってもよく、0.8以上、1.2以下であってもよく、0.9以上、1.1以下であってもよい。
【0048】
第一の弾性多孔質層10と第二の弾性多孔質層20とは、同一の体積弾性率を有してもよいし、異なる体積弾性率を有してもよい。すなわち、第一の弾性多孔質層10の体積弾性率と、第二の弾性多孔質層20の体積弾性率とは同一又は近似していてもよい。この場合、第一の弾性多孔質層10の体積弾性率に対する第二の弾性多孔質層20の体積弾性率の比率は、例えば、0.7以上、1.3以下であってもよく、0.8以上、1.2以下であってもよく、0.9以上、1.1以下であってもよい。
【0049】
一方、第二の弾性多孔質層20の体積弾性率が小さい場合には、防音材1を音源構造体100に巻き付けやすくなり、その結果、第一の弾性多孔質層10の弾性表面11を当該音源構造体100の表面101と密着させやすくなり、防音材1による防音効果が向上する。
【0050】
したがって、第二の弾性多孔質層20の体積弾性率は、第一の弾性多孔質層10の体積弾性率より小さいこととしてもよい。具体的に、この場合、第一の弾性多孔質層10の体積弾性率に対する第二の弾性多孔質層20の体積弾性率の比率は、例えば、0.95以下であってもよく、0.90以下であってもよく、0.85以下であってもよく、0.80以下であってもよく、0.75以下であってもよく、0.70以下であってもよい。
【0051】
また、第一の弾性多孔質層10の体積弾性率に対する第二の弾性多孔質層20の体積弾性率の比率は、例えば、0.50以上であってもよく、0.55以上であってもよく、0.60以上であってもよく、0.65以上であってもよい。第一の弾性多孔質層10の体積弾性率に対する第二の弾性多孔質層20の体積弾性率の比率は、上述した下限値の1つと、上述した上限値の1つとの任意の組み合わせにより特定されてもよい。
【0052】
また、弾性多孔質層10,20のISO 9053に準拠した方法により測定される通気抵抗は、例えば、500KN・s/m以下であってもよく、300KN・s/m以下であることが好ましく、150KN・s/m以下であることがより好ましく、100KN・s/m以下であることが特に好ましい。なお、弾性多孔質層10,20の通気抵抗は、例えば、0.1KN・s/m以上であってもよい。
【0053】
第一の弾性多孔質層10と第二の弾性多孔質層20とは、同一の通気抵抗を有してもよいし、異なる通気抵抗を有してもよい。すなわち、第一の弾性多孔質層10の通気抵抗と、第二の弾性多孔質層20の通気抵抗とは同一又は近似していてもよい。この場合、第一の弾性多孔質層10の通気抵抗に対する第二の弾性多孔質層20の通気抵抗の比率は、例えば、0.7以上、1.3以下であってもよく、0.8以上、1.2以下であってもよく、0.9以上、1.1以下であってもよい。
【0054】
弾性多孔質層10,20の厚さは、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、25mm以下であってもよく、20mm以下であることが好ましく、15mm以下であることがより好ましく、10mm以下であることがより一層好ましく、5mm以下であることが特に好ましい。
【0055】
また、弾性多孔質層10,20の厚さは、例えば、1mm以上であってもよく、2mm以上であることが好ましく、3mm以上であることがより好ましく、4mm以上であることがより一層好ましく、5mm以上であることが特に好ましい。弾性多孔質層10,20の厚さは、上述した下限値の1つと、上述した上限値の1つとの任意の組み合わせにより特定されてもよい。
【0056】
第一の弾性多孔質層10と第二の弾性多孔質層20とは、同一の厚さを有してもよいし、異なる厚さを有してもよい。第二の弾性多孔質層20の厚さに対する第一の弾性多孔質層10の厚さの比率は、例えば、0.9以下であってもよく、0.8以下であってもよく、0.7以下であってもよく、0.6以下であってもよく、0.5以下であってもよい。
【0057】
また、第二の弾性多孔質層20の厚さに対する第一の弾性多孔質層10の厚さの比率は、例えば、0.1以上であってもよく、0.2以上であってもよく、0.3以上であってもよく、0.4以上であってもよく、0.5以上であってもよい。第二の弾性多孔質層20の厚さに対する第一の弾性多孔質層10の厚さの比率は、上述した下限値の1つと、上述した上限値の1つとの任意の組み合わせにより特定されてもよい。
【0058】
また、第一の弾性多孔質層10の厚さと、第二の弾性多孔質層20の厚さとは同一又は近似していてもよい。この場合、第一の弾性多孔質層10の厚さに対する第二の弾性多孔質層20の厚さの比率は、例えば、0.7以上、1.3以下であってもよく、0.8以上、1.2以下であってもよく、0.9以上、1.1以下であってもよい。
【0059】
また、弾性多孔質層10,20の厚さは、非通気層30の厚さより大きいこととしてもよい。また、弾性多孔質層10,20の厚さは、後述する表皮層40(図4)の厚さより大きいこととしてもよい。
【0060】
弾性多孔質層10,20の目付は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、2.0kg/m以下であってもよく、1.5kg/m以下であってもよく、1.0kg/m以下であってもよく、0.75kg/m以下であってもよく、0.5kg/m以下であってもよい。
【0061】
また、弾性多孔質層10,20の目付は、例えば、0.1kg/m以上であってもよく、0.2kg/m以上であってもよく、0.3kg/m以上であってもよく、0.4kg/m以上であってもよく、0.5kg/m以上であってもよい。弾性多孔質層10,20の目付は、上述した下限値の1つと、上述した上限値の1つとの任意の組み合わせにより特定されてもよい。
【0062】
第一の弾性多孔質層10と第二の弾性多孔質層20とは、同一の目付を有してもよいし、異なる目付を有してもよい。すなわち、例えば、第一の弾性多孔質層10の目付が、第二の弾性多孔質層20の目付より大きい場合には、防音材1による防音効果が向上する。
【0063】
この場合、第二の弾性多孔質層20の目付に対する第一の弾性多孔質層10の目付の比率は、例えば、1.2以上であってもよく、1.5以上であることが好ましく、1.7以上であることがより好ましく、1.9以上であることがより一層好ましく、2.0以上であることが特に好ましい。
【0064】
また、第二の弾性多孔質層20の目付に対する第一の弾性多孔質層10の目付の比率は、例えば、10.0以下であってもよく、9.0以下であってもよく、8.0以下であってもよく、7.0以下であってもよく、6.0以下であってもよく、5.0以下であってもよく、4.0以下であってもよく、3.0以下であってもよく、2.0以下であってもよい。第二の弾性多孔質層20の目付に対する第一の弾性多孔質層10の目付の比率は、上述した下限値の1つと、上述した上限値の1つとの任意の組み合わせにより特定されてもよい。
【0065】
第一の弾性多孔質層10の目付と、第二の弾性多孔質層20の目付とは同一又は近似していてもよい。この場合、第一の弾性多孔質層10の目付に対する第二の弾性多孔質層20の目付の比率は、例えば、0.7以上、1.3以下であってもよく、0.8以上、1.2以下であってもよく、0.9以上、1.1以下であってもよい。
【0066】
第一の弾性多孔質層10は、防音材1において音源構造体100に最も近い位置に配置される層である。すなわち、防音材1において、第一の弾性多孔質層10の音源構造体100側には、他の層は配置されていない。より具体的に、防音材1において、第一の弾性多孔質層10の音源構造体100と対向する弾性表面11は、他の層により覆われていない。
【0067】
すなわち、防音材1においては、第一の弾性多孔質層10の弾性表面11が、音源構造体100に対向する最外表面である。したがって、図2及び図3に示すように、防音材1が音源構造体100を覆うように配置される場合、当該防音材1の最外表面である第一の弾性多孔質層10の弾性表面11は、他の層を介することなく、当該音源構造体100の表面101に直接接して配置される。
【0068】
また、防音材1が音源構造体100を覆うように配置される場合、第一の弾性多孔質層10の弾性表面11は、音源構造体100の表面101に圧接されることが好ましい。すなわち、例えば、図2及び図3に示すように、防音材1は、第一の弾性多孔質層10の弾性表面11が音源構造体100の表面101(より具体的には、柱状部分110の表面101)に圧接されるよう、当該音源構造体100に巻き付けられて配置されることが好ましい。
【0069】
第一の弾性多孔質層10の弾性表面11は、弾性を有するため、音源構造体100の表面101に圧接されることにより、図2及び図3に示すように、当該表面101の形状に追従して弾性変形する。この結果、第一の弾性多孔質層の弾性表面11は、音源構造体100の表面101に効果的に密着することができる。防音部材1が音源構造体100に密着することにより、優れた防音効果が得られる。
【0070】
また、防音材1において、第一の弾性多孔質層10の弾性表面11には、音源構造体100の表面101の形状に対応する成形は施されていないこととしてもよい。すなわち、第一の弾性多孔質層10の弾性表面11は、上述のとおり、音源構造体100の表面101の形状に追従する弾性(柔軟性)を有するため、予め当該形状に対応する成形が施されていなくても、当該表面101に圧接されることにより、当該表面101に密着することができる。このため、音源構造体100に接していない防音材1において、第一の弾性多孔質層10の弾性表面11は、図1に示すように、実質的に平坦な表面であることとしてもよい。
【0071】
第二の弾性多孔質層20は、非通気層30を介して、第一の弾性多孔質層10の音源構造体100と反対側に配置される。第二の弾性多孔質層20は、防音材1において、音源構造体100から最も離れた位置に配置される弾性多孔質層である。
【0072】
防音材1は、弾性多孔質層として、第一の弾性多孔質層10及び第二の弾性多孔質層20のみを含むことが好ましい。この場合、薄く且つ軽量な防音材1が実現される。
【0073】
防音材1の非通気層30は、遮音層として機能する。非通気層30は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、フィルムから構成されることが好ましい。フィルムは、樹脂フィルムであることが好ましく、熱可塑性樹脂フィルムであることが特に好ましい。また、樹脂フィルムは、エラストマーフィルムであることが好ましく、熱可塑性エラストマーフィルムであることが特に好ましい。
【0074】
熱可塑性エラストマーフィルムを構成する熱可塑性エラストマーは、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル熱可塑性エラストマー、及びポリオレフィン系熱可塑性エラストマーからなる群より選択される1以上であることが好ましい。
【0075】
フィルムは、非多孔性フィルムであることが好ましい。非多孔性フィルムは、多孔性を有しないフィルムである。非通気層30は、1つのフィルムから構成されることが好ましいが、積層された複数のフィルムを含んで構成されてもよい。
【0076】
非通気層30は、遮音性を示すために適した非通気性を有する。すなわち、非通気層30のJIS L1018:1999に準拠した方法により測定される通気性は、例えば、10cm/cm・sec以下であってもよく、5cm/cm・sec以下であることが好ましく、1cm/cm・sec以下であることがより好ましく、0.1cm/cm・sec以下であることが特に好ましい。
【0077】
非通気層30は、弾性多孔質層10,20の振動変形に追従できる柔軟性を有することが好ましい。すなわち、非通気層30のJIS K7127-1999に準拠した方法により測定されるヤング率は、例えば、2GPa以下であってもよく、1GPa以下であることが好ましく、500Pa以下であることがより好ましく、200MPa以下であることがより一層好ましく、100MPa以下であることが特に好ましい。
【0078】
また、非通気層30のヤング率は、例えば、1MPa以上であってもよく、5MPa以上であることが好ましく、10MPa以上であることがより好ましく、50MPa以上であることがより一層好ましく、100MPa以上であることが特に好ましい。非通気層30のヤング率は、上述した下限値の1つと、上述した上限値の1つとの任意の組み合わせにより特定されてもよい。
【0079】
非通気層30の厚さは、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、1mm以下であってもよく、0.5mm以下であることが好ましく、0.3mm以下であることがより好ましく、0.2mm以下であることがより一層好ましく、0.1mm以下であることが特に好ましい。
【0080】
また、非通気層30の厚さは、例えば、0.01mm以上であってもよく、0.02mm以上であることが好ましく、0.03mm以上であることがより好ましく、0.04mm以上であることがより一層好ましく、0.05mm以上であることが特に好ましい。非通気層30の厚さは、上述した下限値の1つと、上述した上限値の1つとの任意の組み合わせにより特定されてもよい。
【0081】
非通気層30の目付は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、1kg/m以下であってもよく、0.5kg/m以下であることが好ましく、0.3kg/m以下であることがより好ましく、0.2kg/m以下であることがより一層好ましく、0.1kg/m以下であることが特に好ましい。
【0082】
また、非通気層30の目付は、例えば、0.005kg/m以上であってもよく、0.01kg/m以上であることが好ましく、0.02kg/m以上であることがより好ましく、0.03kg/m以上であることがより一層好ましく、0.05kg/m以上であることが特に好ましい。非通気層30の目付は、上述した下限値の1つと、上述した上限値の1つとの任意の組み合わせにより特定されてもよい。
【0083】
非通気層30は、第一の弾性多孔質層10と接していることが好ましい。この場合、非通気層30と第一の弾性多孔質層10とは、熱溶着により接着されていることが好ましい。また、非通気層30は、第二の弾性多孔質層20と接していることが好ましい。この場合、非通気層30と第二の弾性多孔質層20とは、熱溶着により接着されていることが好ましい。熱溶着は、例えば、熱プレスにより実施される。
【0084】
防音材1は、図4に示すように、第二の弾性多孔質層20の音源構造体100と反対側に積層された表皮40をさらに有してもよい。表皮層40は、防音材1の音源構造体100と反対側の最外表面を構成する。
【0085】
表皮層40を構成する材料は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、織布及び/又は不織布から構成されることが好ましく、不織布から構成されることが特に好ましい。
【0086】
織布又は不織布は、有機繊維を含むこととしてもよく、及び/又は、無機繊維を含むこととしてもよいが、有機繊維を含むことが好ましい。すなわち、表皮層40は、有機繊維不織布から構成されることが好ましい。具体的に、表皮層40は、樹脂(例えば、熱硬化性樹脂)で部分的に接合された有機繊維を含む不織布であることが好ましい。
【0087】
表皮層40は、通気性を有する。表皮層40のISO 9053に準拠した方法により測定される通気抵抗は、例えば、500KN・s/m以下であってもよく、300KN・s/m以下であることが好ましく、150KN・s/m以下であることがより好ましく、100KN・s/m以下であることが特に好ましい。
【0088】
表皮層40の厚さは、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、5mm以下であってもよく、3mm以下であることが好ましく、2mm以下であることがより好ましく、1.5mm以下であることがより一層好ましく、1mm以下であることが特に好ましい。
【0089】
また、表皮層40の厚さは、例えば、0.1mm以上であってもよく、0.2mm以上であることが好ましく、0.3mm以上であることがより好ましく、0.5mm以上であることがより一層好ましく、1mm以上であることが特に好ましい。表皮層40の厚さは、上述した下限値の1つと、上述した上限値の1つとの任意の組み合わせにより特定されてもよい。
【0090】
表皮層40の目付は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、0.5kg/m以下であってもよく、0.3kg/m以下であることが好ましく、0.2kg/m以下であることがより好ましく、0.15kg/m以下であることがより一層好ましく、0.1kg/m以下であることが特に好ましい。
【0091】
また、表皮層40の目付は、例えば、0.01kg/m以上であってもよく、0.03kg/m以上であることが好ましく、0.05kg/m以上であることがより好ましく、0.08kg/m以上であることがより一層好ましく、0.1kg/m以上であることが特に好ましい。表皮層40の目付は、上述した下限値の1つと、上述した上限値の1つとの任意の組み合わせにより特定されてもよい。
【0092】
表皮層40は、第二の弾性多孔質層20と接していることが好ましい。この場合、表皮層40と第二の弾性多孔質層20とは、熱溶着により接着されていることが好ましい。
【0093】
防音材1の形状は、本発明の効果が得られれば特に限られず、例えば、シート状であってもよいし、ブロック状であってもよいが、シート状であることが好ましい。
【0094】
防音材1の厚さ(例えば、防音材1が、第一の弾性多孔質層10、非通気層30、第二の弾性多孔質層20及び表皮層40から構成される場合は、当該第一の弾性多孔質層10の厚さと、当該非通気層30の厚さと、当該第二の弾性多孔質層20の厚さと、当該表皮層40の厚さとの合計)は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、50mm以下であってもよく、30mm以下であることが好ましく、20mm以下であることがより好ましく、15mm以下であることがより一層好ましく、10mm以下であることが特に好ましい。
【0095】
また、防音材1の厚さは、例えば、2mm以上であってもよく、4mm以上であることが好ましく、6mm以上であることがより好ましく、8mm以上であることがより一層好ましく、10mm以上であることが特に好ましい。防音材1の厚さは、上述した下限値の1つと、上述した上限値の1つとの任意の組み合わせにより特定されてもよい。
【0096】
防音材1の目付(例えば、防音材1が、第一の弾性多孔質層10、非通気層30、第二の弾性多孔質層20及び表皮層40から構成される場合は、当該第一の弾性多孔質層10の目付と、当該非通気層30の目付と、当該第二の弾性多孔質層20の目付と、当該表皮層40の目付との合計)は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、4kg/m以下であってもよく、3kg/m以下であることが好ましく、2kg/m以下であることがより好ましく、1.5kg/m以下であることがより一層好ましく、1kg/m以下であることが特に好ましい。
【0097】
また、防音材1の目付は、例えば、0.2kg/m以上であってもよく、0.4kg/m以上であることが好ましく、0.6kg/m以上であることがより好ましく、0.8kg/m以上であることがより一層好ましく、1kg/m以上であることが特に好ましい。防音材1の目付は、上述した下限値の1つと、上述した上限値の1つとの任意の組み合わせにより特定されてもよい。
【0098】
そして、防音材1は、第二の弾性多孔質層20の音源構造体100と反対側に非通気層を有しない。すなわち、防音材1は、第二の弾性多孔質層20の音源構造体100と反対側に、JIS L1018:1999に準拠した方法により測定される通気性が10cm/cm・sec以下である非通気層を有しないこととしてもよく、当該通気性が5cm/cm・sec以下である非通気層を有しないこととしてもよく、当該通気性が1cm/cm・sec以下である非通気層を有しないこととしてもよく、当該通気性が0.1cm/cm・sec以下である非通気層を有しないこととしてもよい。
【0099】
すなわち、防音材1においては、第一の弾性多孔質層10と第二の弾性多孔質層20との間に配置される非通気層30が唯一の非通気層であり、当該防音材1は、当該非通気層30以外に非通気層を有しない。
【0100】
また、防音材1が、第二の弾性多孔質層20の音源構造体100と反対側に積層された表皮層40を有する場合、当該防音材1は、当該第二の弾性多孔質体20と当該表皮層40との間に非通気層を有しないし、当該表皮層40の当該音源構造体100と反対側にも非通気層を有しない。
【0101】
防音材1は、第二の弾性多孔質層20の音源構造体100と反対側に非通気層を有しないことにより、当該第二の弾性多孔質層20の当該音源構造体100と反対側に当該非通気層を有すること以外は同一の防音材(対照防音材)に比べて、優れた防音効果を示す。
【0102】
すなわち、本実施形態に係る防音材1は、例えば、後述の実施例で実証されているように、対照防音材において防音効果が低い周波数帯の音を効果的に防音することができる。
【0103】
また、防音材1は、図3に示すように、音源構造体100が収容された部屋200の中に配置される場合、当該部屋200の中において、防音構造体2の外から入射される音(例えば、当該部屋200の内壁201からの反射音)に対して優れた吸音性を示す。
【0104】
すなわち、防音材1は、第二の弾性多孔質層20の音源構造体100と反対側が非通気層で覆われていないため、後述の実施例で実証されているように、防音構造体2の外からの音が当該第二の弾性多孔質層20に効率よく入射し、吸音されることにより、優れた防音効果を示す。
【0105】
次に、本実施形態に係る具体的な実施例について説明する。
【実施例0106】
[防音材の製造]
弾性多孔質層を構成する弾性多孔質体として、PET繊維のフェルト(厚さ5mm、目付500g/m)を用いた。非通気層を構成するフィルムとしては、熱可塑性エラストマーの非多孔性フィルム(厚さ0.07mm、目付65g/m)を用いた。
【0107】
そして、例1-1においては、第一のフェルト(第一の弾性多孔質層)にフィルム(非通気層)を積層し、当該フィルムに第二のフェルト(第二の弾性多孔質層)を積層して、これらを熱プレスで熱溶着することにより、防音材を製造した。
【0108】
一方、例1-2においては、第一のフェルト(第一の弾性多孔質層)に第一のフィルム(中間フィルム)を積層し、当該中間フィルムに第二のフェルト(第二の弾性多孔質層)を積層し、当該第二のフェルトに第二のフィルム(表層フィルム)を積層して、これらを熱プレスで熱溶着することにより、防音材を製造した。
【0109】
また、例1-3においては、表層フィルムとして、非多孔性フィルムに孔径15mmの穴を5個形成することにより得られた、開孔率3%の多孔性フィルムを用いたこと以外は上記例1-2と同様にして、防音材を製造した。
【0110】
例1-4においては、表層フィルムとして、非多孔性フィルムに孔径30mmの穴を5個形成することにより得られた、開孔率14%の多孔性フィルムを用いたこと以外は上記例1-2と同様にして、防音材を製造した。
【0111】
例1-5においては、表層フィルムとして、非多孔性フィルムに孔径30mmの穴を12個形成することにより得られた、開孔率33%の多孔性フィルムを用いたこと以外は上記例1-2と同様にして、防音材を製造した。
【0112】
例1-6においては、表層フィルムとして、非多孔性フィルムに孔径30mmの穴を18個形成することにより得られた、開孔率50%の多孔性フィルムを用いたこと以外は上記例1-2と同様にして、防音材を製造した。
【0113】
[防音性の評価]
内部に音源であるスピーカーを設置したボックスの表面に、第一の弾性多孔質層の弾性表面が接するように、防音材を配置した。また、防音材のスピーカーと反対側の位置であって、当該防音材を配置したボックス表面から500mm離れた位置にマイクを配置した。そして、スピーカーから防音材にホワイトノイズを入力し、放射音圧レベルをマイクで測定した。
【0114】
[結果]
図5Aには、1/3オクターブバンド中心周波数(Hz)と、測定された放射音の音圧レベル(dB)との関係を評価した結果を示す。図5Aに示すように、防音材を配置しない場合(図中の「防音材無し」)に比べて、防音材を配置することにより、放射音の音圧レベルは低減された。
【0115】
特に1/3オクターブバンド中心周波数が1000Hz付近(具体的には、1000Hz~1600Hzの範囲)の低周波数域の音に対しては、表層フィルムを有する防音材(図中の「開孔率0%」~「開孔率50%」)に比べて、当該表層フィルムを有しない防音材(図中の「開孔率100%(フィルム1層)」)のほうが顕著に優れた防音効果を示した。
【0116】
また、表層フィルムを有する防音材については、当該表層フィルムの開孔率が小さくなるにつれて、1/3オクターブバンド中心周波数が1000Hz付近の音に対する防音効果は低下する傾向が確認された。
【0117】
一方、1/3オクターブバンド中心周波数が約4000Hz以上の高周波数域の音に対しては、表層フィルムの開孔率が大きくなるにつれて、防音効果が低下する傾向が確認された。
【0118】
図5Bには、表層フィルムの開孔率(%)と、250Hz~1.6kHzの周波数域、2kHz~4kHzの周波数域、5kHz~10kHzの周波数域及び250Hz~10kHzの周波数域のオーバーオール(OA)値(dB)と、の関係を評価した結果を示す。また、図5Cには、図5Bに示される各周波数範囲におけるOA値を表で示す。
【0119】
図5B及び図5Cに示すように、特に250Hz~1.6kHzの低周波数域の音については、表層フィルムの開孔率が大きくなるにつれて、OA値が低下する傾向が確認された。すなわち、250Hz~1.6kHzの低周波数域については、表層フィルムを有しない防音材(表層フィルムの開孔率100%)が、優れた防音性を示した。一方、特に5kHz~10kHzの高周波数域については、表層フィルムの開孔率が大きくなるにつれて、防音効果が低下する傾向が確認された。
【実施例0120】
[防音材の製造]
弾性多孔質層を構成する弾性多孔質体として、目付が異なる2種類のPET繊維フェルトを用いた。すなわち、フェルトAとして、目付が0.5kg/mであるPET繊維フェルト(厚さ5mm)を用い、フェルトBとして、目付がより大きい1kg/mであるPET繊維フェルト(厚さ5mm)を用いた。
【0121】
非通気層を構成するフィルムとしては、熱可塑性エラストマーの非多孔性フィルム(厚さ0.7mm、目付65g/m)を用いた。表皮層を構成する不織布としては、PET繊維の不織布(厚さ1mm、目付0.125kg/m)を用いた。
【0122】
例2-1においては、フェルトA(第一の弾性多孔質層)にフィルム(非通気層)を積層し、当該フィルムにさらにフェルトA(第二の弾性多孔質層)を積層して、これらを熱プレスで熱溶着することにより、シート状の防音材を製造した。
【0123】
例2-2においては、フェルトA(第一の弾性多孔質層)にフィルム(非通気層)を積層し、当該フィルムにフェルトB(第二の弾性多孔質層)を積層して、これらを熱プレスで熱溶着することにより、シート状の防音材を製造した。
【0124】
例C2においては、不織布(第一の表皮層)にフェルトA(第一の弾性多孔質層)を積層し、当該フェルトAにフィルム(中間フィルム)を積層し、当該中間フィルムにさらにフェルトA(第二の弾性多孔質層)を積層し、当該第二の弾性多孔質層にフィルム(表層フィルム)を積層し、当該表層フィルムにさらに不織布(第二の表皮層)を積層して、これらを熱プレスで熱溶着することにより、シート状の防音材を製造した。
【0125】
[防音性の評価]
音源構造体として、市販の電動エアコンプレッサーを用い、その外殻に対して強制加振を行い発音体として評価した。コンプレッサーの凹凸を有する円柱状部分の表面に第一の弾性多孔質層の弾性表面を圧接しながら、例2-1、例2-2又は例C2の防音材を巻き付けた。コンプレッサーに巻き付けたシート状の防音材の一方の端部と他方の端部とは面ファスナーにより締結した。
【0126】
また、例C2で製造した防音材を、コンプレッサーの円柱状部分の凹凸を有する表面形状に対応する形状となるよう、熱プレスにより成型した。こうして得られた例C2の防音材の成型品を、コンプレッサーの円柱状部分を覆うように配置した。
【0127】
いずれの防音材を用いた場合においても、コンプレッサーの円柱状部分の表面の周方向における約89%の範囲が当該防音材により覆われた。
【0128】
一方、防音材及びコンプレッサーから構成される防音構造体から鉛直方向上方に500mm離れた位置に第一のマイクを設置するとともに、当該防音構造体から水平方向に500mm離れた位置に第二のマイクを設置した。
【0129】
そして、コンプレッサーの内部に加振機を設置し発音させ電源をオンにして、当該コンプレッサーの作動を開始し、当該コンプレッサーを作動させた状態で第一のマイク及び第二のマイクにより放射音を測定した。
【0130】
[結果]
図6Aには、1/3オクターブバンド中心周波数(Hz)と、測定された放射音の音圧レベル(dB(A))との関係を評価した結果を示す。なお、図6Aに示す音圧レベルは、第一のマイクで測定された音圧レベルと第二のマイクで測定された音圧レベルとの算術平均値である。
【0131】
図6Aに示すように、防音材を配置しない場合(図中の「防音材なし」)に比べて、防音材を配置することにより、放射音の音圧レベルは低減された。特に1/3オクターブバンド中心周波数が1000Hz付近(具体的には、800Hz~1250Hzの範囲)の低周波数域の音に対しては、予め成型された例C2の防音材を用いた場合(図中の「例C2成型」)は、防音材を配置しない場合に比べて、却って放射音の音圧レベルが増加してしまったのに対し、成型していない防音材をコンプレッサーに巻き付けて配置することにより、当該低周波数域の音圧レベルが効果的に低減された。
【0132】
さらに、不織布から構成される第一の表皮層がコンプレッサーの表面に接するように例C2の防音材を当該コンプレッサーに巻き付けた場合(図中の「例C2巻き付け」)に比べて、第一の弾性多孔質層の弾性表面がコンプレッサーの表面に圧接されるように例2-1及び例2-2の防音材を当該コンプレッサーに巻き付けた場合(図中の「例2-1巻き付け」及び「例2-2巻き付け」)のほうが、上記低周波数域の音圧レベルが効果的に低減された。
【0133】
図6Bには、250Hz~10kHzの周波数域及び500Hz~3.15kHzの周波数域のオーバーオール(OA)値(dB)を評価した結果を示す。図6Bに示すように、防音材を配置しない場合(図中の「防音材なし」)に比べて、防音材を配置することにより、OA値は顕著に低減された。
【0134】
また、予め成型された例C2の防音材を用いた場合(図中の「例C2成型」)に比べて、成型していない防音材をコンプレッサーに巻き付けて配置することにより、OA値が低減された。
【0135】
さらに、不織布から構成される第一の表皮層がコンプレッサーの表面に接するように例C2の防音材を当該コンプレッサーに巻き付けた場合(図中の「例C2巻き付け」)に比べて、第一の弾性多孔質層の弾性表面がコンプレッサーの表面に圧接されるように例2-1及び例2-2の防音材を当該コンプレッサーに巻き付けた場合(図中の「例2-1巻き付け」及び「例2-2巻き付け」)のほうが、、OA値が低減された。また、例2-1の防音材を用いた場合に比べて、目付が大きい例2-2の防音材を用いた場合のほうが、OA値が低減された。
【実施例0136】
弾性多孔質層を構成する弾性多孔質体として、目付が異なる4種類のPET繊維フェルトを用いた。すなわち、目付が0.45kg/mであるフェルト(厚さ5mm)、目付が0.5kg/mであるフェルト(厚さ5mm)、目付が0.75kg/mであるフェルト(厚さ7.5mm)、及び目付が1.00kg/mであるフェルト(厚さ10mm)を用いた。非通気層を構成するフィルムとしては、熱可塑性エラストマーの非多孔性フィルム(厚さ0.07mm、目付65g/m)を用いた。
【0137】
そして、第一のフェルト(第一の弾性多孔質層)にフィルム(非通気層)を積層し、当該フィルムに第二のフェルト(第二の弾性多孔質層)を積層して、これらを熱プレスで熱溶着することにより、防音材を製造した。
【0138】
[防音性の評価]
内部に音源であるスピーカーを設置したボックスの表面に、第一の弾性多孔質層の弾性表面が接するように、防音材を配置した。また、防音材のスピーカーと反対側の位置であって、当該防音材を配置したボックス表面から500mm離れた位置にマイクを配置した。そして、スピーカーから防音材にホワイトノイズを入力し、放射音圧レベルをマイクで測定した。
【0139】
[結果]
図7には、500Hz~3.15kHzの周波数域のオーバーオール(OA)値(dB)を評価した結果を示す。なお、図7において、横軸には、防音材の第一の弾性多孔質層の目付を「(1)」として、また、第二の弾性多孔質層の目付を「(2)」として、それぞれ示している。
【0140】
図7に示すように、第一の弾性多孔質層の目付と第二の弾性多孔質層の目付との合計が大きくなるほど、OA値は低減され、より高い防音効果が得られる傾向が確認された。また、第二の弾性多孔質層の目付を第一の弾性多孔質層のそれより大きくした場合(例えば、図中の「(1)500/(2)750」、「(2)500/(2)1000」)に比べて、第一の弾性多孔質層の目付を第二の弾性多孔質層のそれより大きくした場合(例えば、図中の「(1)750/(2)500」、「(1)1000/(2)500」)のほうが、OA値が効果的に低減され、より高い防音効果が得られる傾向が確認された。
【実施例0141】
[防音材の製造]
弾性多孔質層を構成する弾性多孔質体として、PET繊維のフェルト(厚さ5mm、目付0.5kg/m)を用いた。非通気層を構成するフィルムとしては、熱可塑性エラストマーの非多孔性フィルム(厚さ0.07mm、目付65g/m)を用いた。表皮層を構成する不織布としては、PET繊維の不織布(厚さ1mm、目付0.125kg/m)を用いた。
【0142】
例4においては、第一のフェルト(第一の弾性多孔質層)にフィルム(非通気層)を積層し、当該フィルムに第二のフェルト(第二の弾性多孔質層)を積層し、当該第二のフェルトに不織布(表皮層)を積層して、これらを熱プレスで熱溶着することにより、防音材を製造した。
【0143】
例C4においては、不織布(第一の表皮層)に第一のフェルト(第一の弾性多孔質層)を積層し、当該第一のフェルトにフィルム(中間フィルム)を積層し、当該中間フィルムに第二のフェルト(第二の弾性多孔質層)を積層し、当該第二のフェルトにさらにフィルム(表層フィルム)を積層し、当該表層フィルムにさらに不織布(第二の表皮層)を積層して、これらを熱プレスで熱溶着することにより、シート状の防音材を製造した。
【0144】
[防音性の評価]
作製した防音材を1mの平板状に切り出したものを測定サンプルとして用いた。そして、残響室(Ab-Loss、日本音響エンジニアリング株式会社製)において、側面をL字状のアルミ製アンクルを用いてシールした測定サンプルを床面に設置し、残響室法吸音率を測定した。なお、測定サンプルは、その第二の弾性多孔質層が上層側(音入射側)となるよう床面に設置することにより、音が当該第二の弾性多孔質層側から入射するようにした。吸音率は、1000Hzの範囲においてISO354(2003)に基づくインパルス応答積分法を用いて測定した。
【0145】
[結果]
図8には、1/3オクターブバンド中心周波数(Hz)と、残響室法吸音率(-)との関係を評価した結果を示す。図8に示すように、1/3オクターブバンド中心周波数が1000Hzから5000Hzまでの全範囲において、例4の防音材の残響室法吸音率は、例C4の防音材のそれより顕著に高かった。すなわち、例4の防音材は、例C4の防音材に比べて、第二の弾性多孔質層の側から入射する音に対して、より効果的に防音効果を示すことが確認された。
【0146】
これは、例4Cの防音材は、第二の弾性多孔質層の音源と反対側に配置された非通気性の表層フィルムが外からの音を跳ね返してしまうのに対し、例4の防音材は、当該非通気性の表層フィルムを有しないため、外からの音が第二の弾性多孔質層に入射しやすく、効果的に吸音されるためと考えられた。
【0147】
このように、例4の防音材は、防音の対象とする音源構造体から発生する音に対して優れた防音効果を示すのみならず、外から入射してくる音に対しても、優れた防音効果を示すことが確認された。

図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7
図8