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特開2023-11456建築物の壁面の施工方法、継ぎ目構造体並びに下地調整材及び下塗材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023011456
(43)【公開日】2023-01-24
(54)【発明の名称】建築物の壁面の施工方法、継ぎ目構造体並びに下地調整材及び下塗材
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/02 20060101AFI20230117BHJP
   E04B 1/682 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
E04F13/02 K
E04B1/682 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021115331
(22)【出願日】2021-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】501352619
【氏名又は名称】三商株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520335853
【氏名又は名称】株式会社WELLNEST HOME
(71)【出願人】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188765
【弁理士】
【氏名又は名称】赤座 泰輔
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100136995
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 千織
(74)【代理人】
【識別番号】100163164
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 敏之
(72)【発明者】
【氏名】服部 絵美
(72)【発明者】
【氏名】早田 宏徳
(72)【発明者】
【氏名】冨田 直哉
(72)【発明者】
【氏名】加藤 圭一
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DA01
2E001FA09
2E001GA07
2E001GA63
2E001HD08
2E001HD11
2E001MA02
2E001MA11
(57)【要約】
【課題】複数の板材から形成される壁面の、板材の継ぎ目が視認され難い、建築物の壁面の施工方法を提供すること。
【解決手段】建築物の壁面の施工方法は、建築物の壁面を形成する板材101の継ぎ目111に、下地調整材21を充填する充填工程と、充填工程の後に行われ、下地調整材21が充填された継ぎ目111に、壁面側に粘着剤層162を備える有孔芯材層106を貼付し、有孔芯材層106を押圧工具で均す貼付工程と、貼付工程の後に行われ、継ぎ目111を含めた板材101に、下塗材31を塗布する下塗材塗布工程と、を有する。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の壁面を形成する板材の継ぎ目に、下地調整材を充填する充填工程と、
該下地調整材が充填された該継ぎ目に、該壁面側に粘着剤層を備える有孔芯材層を貼付し、該有孔芯材層を押圧工具で均す貼付工程と、
該貼付工程の後に行われ、該継ぎ目を含めた該板材に、下塗材を塗布する下塗材塗布工程と、
を有することを特徴とする建築物の壁面の施工方法。
【請求項2】
前記板材の前記継ぎ目に凹んだ目地部が形成され、前記充填工程の前に、該継ぎ目の該目地部に、樹脂発泡体を母材とする支持部材を装入する装入工程、を有することを特徴とする請求項1に記載の建築物の壁面の施工方法。
【請求項3】
前記支持部材が前記目地部に装入されたとき、該目地部の短手方向両端側に長手方向の遊間を有することを特徴とする請求項2に記載の建築物の壁面の施工方法。
【請求項4】
前記有孔芯材層が、前記壁面側に、前記下地調整材を押圧する押圧層を備えることを特徴とする請求項2に記載の建築物の壁面の施工方法。
【請求項5】
継ぎ目に凹んだ目地部が形成された、建築物の壁面を形成する板材の継ぎ目構造体であって、
該目地部内の短手方向中心の長手方向に延設された樹脂発泡体を母材とする支持部材と、
該支持部材の短手方向両端側から該支持部材に密着し、該目地部内に埋入された下地調整材が固化した下地調整材層と、
該下地調整材層を被覆し、該目地部を挟んで対向するそれぞれの該板材に接着された有孔芯材層と、
該有孔芯材層を被覆する下塗材が固化した下塗材層と、
を有することを特徴とする継ぎ目構造体。
【請求項6】
請求項1に記載の建築物の壁面の施工方法に使用される前記下地調整材及び前記下塗材であって、
希釈水量のみが異なる同じ組成配合物から構成されていることを特徴とする下地調整材及び下塗材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の技術分野は、建築物の壁面を形成する板材の継ぎ目を含む建築物の壁面の施工方法、板材の継ぎ目を含む継ぎ目構造体、並びに、壁面の施工方法に使用される下地調整材及び下塗材に関する。
【背景技術】
【0002】
壁面用板材の板材間の継ぎ目の施工方法として、従来、下記特許文献1において、継ぎ目に形成された目地部に硬質パテ材を充填し、弾性クロス及び弾性パテ材を目地部に覆わせて重層させたのち、塗材を塗布して塗膜を形成させる施工方法が知られている。また、下記特許文献2において、継ぎ目に形成された目地部の隙間に弾性体を装入し、目地部に弾性を有するパテ材を充填し、塗材を塗布して塗膜を形成させる施工方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-021287号公報
【特許文献2】特開2004-107932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の施工方法は、パテ材の厚みを調整する手段がなく、目地部のパテ材の充填された部分とそれ以外の部分とで不陸が生じ、板材の継ぎ目が視認されてしまうおそれがあるという課題があった。
【0005】
本明細書の技術が解決しようとする課題は、上述の点に鑑みてなされたものであり、複数の板材から形成される壁面の、板材の継ぎ目が視認され難い、建築物の壁面の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書の実施形態に係る建築物の壁面の施工方法は、建築物の壁面を形成する板材の継ぎ目に、下地調整材を充填する充填工程と、
該下地調整材が充填された該継ぎ目に、該壁面側に粘着剤層を備える有孔芯材層を貼付し、該有孔芯材層を押圧工具で均す貼付工程と、
該貼付工程の後に行われ、該継ぎ目を含めた該板材に、下塗材を塗布する下塗材塗布工程と、
を有することを特徴とする。
【0007】
本明細書の実施形態に係る建築物の壁面の施工方法によれば、板材の継ぎ目に、充填された下地調整材は、下地調整材が充填された継ぎ目に貼付された有孔芯材層が押圧工具で均されることによって、下地調整材の過剰分が有孔芯材層の孔から吐出される。このため、下地調整材の厚みを均一にすることができ、複数の板材から形成される壁面の、板材の継ぎ目が視認され難い、仕上がりにすることができる。
【0008】
ここで、上記建築物の壁面の施工方法において、前記板材の前記継ぎ目に凹んだ目地部が形成され、前記充填工程の前に、該継ぎ目の該目地部に、樹脂発泡体を母材とする支持部材を装入する装入工程、を有するものとすることができる。
【0009】
これによれば、実施形態に係る建築物の壁面の施工方法は、凹んだ目地部が形成された板材の継ぎ目に施工することができ、支持部材によって、下地調整材の収縮による継ぎ目に生じる凹みを抑制することができ、板材の継ぎ目が視認され難い仕上がりにすることができる。
【0010】
また、上記建築物の壁面の施工方法において、前記支持部材が前記目地部に装入されたとき、該目地部の短手方向両端側に長手方向の遊間を有するものとすることができる。
【0011】
これによれば、目地部の遊間に充填された下地調整材が硬化した下地調整材層が、継ぎ目を形成する板材間の振動などの動きを緩和・吸収し、不陸の発生を抑制することができる。
【0012】
また、上記建築物の壁面の施工方法において、前記有孔芯材層が、前記壁面側に、前記下地調整材を押圧する押圧層を備えるものとすることができる。
【0013】
これによれば、下地調整材、又は、下地調整材と支持部材、が均一に押圧されるため、下地調整材の目地部への充填を促すとともに、板材の継ぎ目がより視認され難い仕上がりにすることができる。
【0014】
ここで、本明細書の実施形態に係る継ぎ目構造体は、継ぎ目に凹んだ目地部が形成された、建築物の壁面を形成する板材の継ぎ目構造体であって、
該目地部内の短手方向中心の長手方向に延設された樹脂発泡体を母材とする支持部材と、
該支持部材の短手方向両端側から該支持部材に密着し、該目地部内に埋入された下地調整材が固化した下地調整材層と、
該下地調整材層を被覆し、該目地部を挟んで対向するそれぞれの該板材に接着された有孔芯材層と、
該有孔芯材層を被覆する下塗材が固化した下塗材層と、
を有することを特徴とする。
【0015】
本明細書の実施形態に係る継ぎ目構造体によれば、板間は、支持部材、下地調整材、有孔芯材層及び下塗材によって、板間の動きが緩和・吸収され、板間の塗膜に亀裂が生じることを抑制することができる。
【0016】
また、本明細書の実施形態に係る下地調整材及び下塗材は、上記の建築物の壁面の施工方法に使用される前記下地調整材及び前記下塗材であって、
希釈水量のみが異なる同じ組成配合物から構成されていることを特徴とする。
【0017】
本明細書の実施形態に係る下地調整材及び下塗材によれば、同じ組成配合物から構成されているため、組成配合物を共通化することができる。
【発明の効果】
【0018】
本明細書の建築物の壁面の施工方法によれば、複数の板材から形成される壁面の、板材の継ぎ目が視認され難い、仕上がりにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態の有孔芯材層の正面図である。
図2図1のII-II線位置の断面図である。
図3図1のIII-III線位置の断面図である。
図4】第1実施形態の支持部材の正面側からの斜視図である。
図5】第1実施形態の建築物の壁面を形成する板材の縦方向の継ぎ目に対する水平方向の断面図であり、施工前の状態を示す図である。
図6】同断面図であり、装入工程後の状態を示す図である。
図7】同断面図であり、充填工程後の状態を示す図である。
図8】同断面図であり、貼付工程の状態を示す図である。
図9】同断面図であり、下塗材塗布工程後の状態を示す図である。
図10】第1実施形態の工程順序を塗り分けた板材の正面側からの斜視図である。
図11】第2実施形態の建築物の壁面を形成する板材の縦方向の継ぎ目に対する水平方向の断面図であり、充填工程後の状態を示す図である。
図12】同断面図であり、貼付工程の状態を示す図である。
図13】同断面図であり、下塗材塗布工程後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本明細書の第1実施形態に係る建築物の壁面の継ぎ目構造体について、図1~10に基づいて説明する。なお、本発明の範囲は、実施形態で開示される範囲に限定されるものではない。第1実施形態に係る建築物の壁面の継ぎ目構造体は、壁面を形成する板材1の継ぎ目11に形成された凹んだ目地部12に、目地部12内の短手方向中心の長手方向に延設された支持部材5と、支持部材5の短手方向両端側から支持部材5に密着し、目地部12内に埋入された下地調整材21が固化した下地調整材層2と、下地調整材層2を被覆し、目地部12を挟んで対向するそれぞれの板材1に接着された有孔芯材層6と、有孔芯材層6を被覆する下塗材31が固化した下塗材層3と、を有する。なお、本明細書において、板材1の継ぎ目11は、上下方向の継ぎ目11を例として説明する。また、建築物の壁面(板材1)の向きは、図10に示すように、上下方向の継ぎ目11を正面から見た際の上下左右とし、施工される側を前、その逆を後とし、図示で使用する、Uは上、Dは下、Lは左、Rは右、Fは前、Bは後を示す。
【0021】
板材1には、図5~10に示すように、板材1の継ぎ目11に、前側が広く開口した目地部12が形成される、窯業サイディングボードを使用した。板材1は、板厚の半分を互いに切り欠き、板材1同士をつなぎ合わせる相じゃくりの前側のつなぎ合わせ部を欠落させることにより、目地部12が形成される。目地部12を形成する板材1の前側の角が取られ、傾斜側面14が形成され、前側が広く開口した目地部12が形成される。目地部12の具体的な大きさは、深さ(前後方向)は3~4mm、幅(左右方向)は、後側が8~9mm、前側が11~12mm、長さ(上下方向)は板材1の長さの910mmであるが板材1を上下につなぎ合わせることにより延長されるものである。なお、目地部12の具体的な大きさに幅があるのは、板材1及び板材1の壁面への取り付けに対して寸法公差が生じるためである。
【0022】
支持部材5は、目地部12に装入させて、詳しくは後述する貼付工程で、有孔芯材層6を支持する材料である。図4は、支持部材5の外観を示すものである。支持部材5は、見かけ密度が30kg/m3の独立気泡の低密度ポリエチレン発泡体を母材とし、目地部12に粘着する粘着剤層51を備えている。支持部材5の熱伝導率は、0.028kcal/m・hr・℃である。これにより、建築物の壁面の外部からの温度変化の影響を抑制することができる。また、支持部材5は、独立気泡の発泡体であるため、施工後の何かしらの不備により雨水にさらされた際に、雨水の更なる侵入を防ぐことができる。支持部材5の後側に、目地部12に粘着する粘着剤層51が備えられ、装入の際に、支持部材5は、粘着剤層51の粘着によって、目地部12に固定される。なお、使用される前(装入前)、粘着剤層51は、図示しない離型紙が貼付され、保護されている。支持部材5の色は、板材1の色と同系の色としている。施工後において、支持部材5が透けて見えるのを防ぐためである。支持部材5の具体的な大きさは、厚さ(前後方向)は目地部12の深さの寸法公差を考慮した3mm、幅(左右方向)は7mm、長さ(上下方向)は板材1の長さに合わせた910mmである。
【0023】
下地調整材21とは、目地部12に充填され、硬化することによって、下地調整材層2を形成する材料である。下地調整材21は、アクリル樹脂を結合材とする塗材組成物であり、配合成分と配合量を表1に記載する。
【0024】
【表1】
アクリル樹脂は、樹脂のガラス転移温度(Tg)が-20℃のアクリル樹脂エマルジョンを使用した。Tgが-20℃であり、樹脂とフィラー(酸化チタン及び炭酸カルシウム)の比が表1に記載した範囲にあることにより、下地調整材21から形成される下地調整材層2は、適度な柔軟性を有するものとなる。このため、目地部12に充填されたとき、下地調整材層2は、板材1の動きを緩和・吸収し、下地調整材層2の前側に塗装される下塗材層3及び上塗材層4に亀裂が生じることを抑制することができる。
【0025】
アクリル樹脂のTgの調整は、使用するモノマーの種類と量とを調整することによって行うことができる。Tgは、フォックス(FOX)の計算式(下記(1)式)から求めることができる。Wiは単量体iの質量分率を示し、Tgiは単量体iのTg(℃)を示し、単量体のTgは、ポリマーハンドブック(John Willey & Sons)に記載されている値などの既知の値を用いることができる。

1/(273+Tg)=Σ(Wi/(273+Tgi))・・・(1)

アクリル樹脂エマルジョンは、重合反応が進行する反応器に、界面活性剤を含む水溶液を入れ、水溶液を86℃に調整した反応器中に、プレ乳化エマルション(モノマー成分、乳界面活性剤及び水を予め乳化させたもの)と重合開始剤を2時間かけて滴下させることによって、モノマー成分を重合させた合成樹脂エマルジョンとした。
【0026】
酸化チタンは、メディアン径d50=0.25μmの市販品を使用した。炭酸カルシウムは、メディアン径d50=1.1μmの市販品を使用した。分散剤、増粘剤、消泡剤及び防腐剤は、それぞれ市販品を使用した。
【0027】
下地調整材21は、揮発分を11.5%含有している。これにより、目地部12への充填性に優れるものとしている。
【0028】
有孔芯材層6は、目地部12に充填された下地調整材21の前側から目地部12に沿って、目地部を挟んだ左右の板材1に貼付され、長期的に、板材1の動きを緩和・吸収する材料である。また、有孔芯材層6は、施工の際に、有孔芯材層6の前側から押圧工具で均されることによって、下地調整材21の過剰分を有孔芯材層6の孔部61bから吐出させ、下地調整材層2を均一な厚みに調整する役割を有するものでもある。
【0029】
有孔芯材層6は、図1~3に示すように、左右の幅が100mmの網目状ガラス繊維シート61を基材として、ガラス繊維部61aが芯材層を形成し、網目状ガラス繊維シート61の網の目が孔部61bを形成する。網目状ガラス繊維シート61の短手方向(左右方向)の中央の長手方向(上下方向)の後側に、左右の幅が35mmのポリエステルフィルムからなる押圧層63が熱圧着されている。押圧層63は、有孔芯材層6が目地部12に沿って貼付され、有孔芯材層6の前側から押圧工具で均されたとき、下地調整材21の目地部12への充填を促し、下地調整材21の表面(前側)を均すとともに、過剰に充填された下地調整材21を左右に逃がして孔部61bから有孔芯材層6の外側に吐出させる。これにより、下地調整材層2の厚みを均一にすることができる。孔部61bの外枠を形成するガラス繊維部61aは、親水性であるため、下地調整材21を有孔芯材層6の外側に吐出させる際の抵抗を少なくするものである。
【0030】
押圧層63が熱圧着された網目状ガラス繊維シート61の後側には、図2、3に示すように、アクリル樹脂からなる粘着剤層62が備えられている。粘着剤層62によって、有孔芯材層6は、目地部12を跨いで左右の板材1に接着される。このため、有孔芯材層6の前側から押圧工具で均されたときに、有孔芯材層6のズレやハガレが抑制される。粘着剤層62は、網目状ガラス繊維シート61のガラス繊維部61aに形成されているが、孔部61bには形成されていないため、下地調整材21を孔部61bから有孔芯材層6の外側に吐出させることを妨げることはない。
【0031】
有孔芯材層6と押圧層63の色は、板材1の色と同系の色としている。施工後において、有孔芯材層6が透けて見えるのを防ぐためである。粘着剤層62は、使用される前は、図示しない離型フィルムで被覆され、ゴミなどの異物から保護されている。
【0032】
下塗材31とは、壁面を形成する板材1の集合体の不陸を調整して平滑な表面にし、硬化することによって、下塗材層3を形成する材料である。下塗材31が塗布されることによって、目地部12に貼付された有孔芯材層6は下塗材層3中に填塞され、壁面は、下塗材層3によって平滑に仕上げられる。
【0033】
下塗材31は、下地調整材21を水希釈したものであり、つまり、下地調整材21と下塗材31は、希釈水量のみが異なる同じ組成配合物から構成されている。具体的には、下塗材31は、表1に記載された下地調整材21を水希釈によって揮発分を14%に調整したものである。なお、希釈水量は、表1の配合量(湿潤状態)に対して、30質量部である。
【0034】
下塗材層3が形成されることにより、板間は、支持部材5、下地調整材層2、有孔芯材層6及び下塗材層3によって、板間の動きが緩和・吸収され、板間の塗膜(下塗材層3及び上塗材層4)に亀裂が生じることを抑制する。
【0035】
下塗材層3が形成された壁面には、仕上材(化粧材)として上塗材41を塗布して上塗材層4を形成させる(図10)。上塗材41として、同じ特許出願人の特許出願である特願2020-146798に記載された、実施形態の仕上層を形成する可とう性を有する仕上塗材(「WellnestWall」(株式会社 WELLNEST HOME 製 可とう形外装薄塗材(「サンアクアウトEX」(三商株式会社製可とう形外装薄塗材)と同じ組成配合物。)))を使用した。
【0036】
次に、本明細書の第1実施形態に係る建築物の壁面の施工方法について説明する。図5~9に示すように、第1実施形態の建築物の壁面の施工方法は、板材1の継ぎ目11に凹んだ目地部12が形成された板材1を使用する建築物の壁面の施工方法であって、目地部12に支持部材5を装入する装入工程、目地部12に下地調整材層2を形成する下地調整材21を充填する充填工程、有孔芯材層6を貼付し、有孔芯材層6を押圧工具で均す貼付工程、目地部12を含めた板材1に下塗材層3を形成する下塗材31を塗布する下塗材塗布工程、の順に施工する施工方法である。
【0037】
目地部12に支持部材5を装入する装入工程は、図6に示すように、目地部12内の短手方向中心の目地部12の長手方向に沿って、目地部12の短手方向両端側に長手方向の遊間を持たせて、支持部材5を装入する工程である。支持部材5は、目地部12の底部13に仮置きしたのち、粘着剤層51を保護している離型紙(図示せず)を剥がして、支持部材5の粘着剤層51を目地部12の底部13に粘着させる。長手方向の遊間は、少なくとも目地部12の傾斜側面14によって形成される。
【0038】
目地部12に下地調整材層2を形成する下地調整材21を充填する充填工程は、パテベラを用いて下地調整材21を目地部12に充填することによって行なった。このとき、図7に示すように、下地調整材21を目地部12に2mm程度前側に盛り上げて充填した。充填の欠如を防止するためである。また、下地調整材21は、図10に示すように、次の工程で貼付される有孔芯材層6の押圧層63の左右の幅(35mm)を超える範囲の塗り幅とした。
【0039】
有孔芯材層6を貼付し、有孔芯材層6を押圧工具で均す貼付工程は、目地部12に充填した下地調整材21が硬化する前に、目地部12に沿って、有孔芯材層6を貼付し、有孔芯材層6を押圧工具の左官鏝で均して行なった。有孔芯材層6を貼付する際に、下地調整材21が押圧層63の左右の幅を超えて塗られているため、押圧層63を下地調整材21からはみ出さないように貼付することにより、下地調整材21を有孔芯材層6の位置決めの目安とすることができる。有孔芯材層6を目地部12に貼付すると、下地調整材21の左右の幅を超える網目状ガラス繊維シート61が、粘着剤層62によって、左右の板材1に粘着する。このため、左官鏝で均す際に、有孔芯材層6がはがれるのを防ぐことができる。有孔芯材層6を左官鏝で均すと、目地部12に盛り上げて充填された下地調整材21は、押圧層63によって均一に押圧され、目地部12への充填が促される。過剰に充填された下地調整材21は、押圧層63の左右の孔部61bから有孔芯材層6の外側に吐出される。吐出された下地調整材21は、押圧層63の左右の幅を超える範囲に塗布される。また、目地部12内には、厚さ(前後方向)が目地部12の深さと同じないし1mm薄い厚さの支持部材5が装入されているため、壁面に対して凹凸なく有孔芯材層6を貼付することができる。さらに、有孔芯材層6は、左右の板材1と目地部12内の支持部材5によって、平面が保たれているため、下地調整材21の硬化の際の収縮に対して、抵抗を有し、板材1の継ぎ目11が視認され難い仕上がりを維持することができる。
【0040】
目地部12含めた板材1に下塗材層3を形成する下塗材31を塗布する下塗材塗布工程は、下地調整材21の硬化後、有孔芯材層6が貼付された目地部12含めた板材1全体に、左官鏝を用いて下塗材31を塗布することによって行なった。下地調整材21と下塗材31は、希釈水量のみが異なる同じ組成配合物から構成されているため、使用する塗材の種類を減らすことができる。また、同じ組成配合物であるため、下地調整材21と下塗材31から形成される下地調整材層2と下塗材層3の線膨張率が同じであり、壁面が受ける寒暖差や振動による伸縮を同じにすることができ、線膨張率の違いによる不陸の発生や層間剥離の発生を抑制することができる。
【0041】
下塗材層3が形成された壁面には、図10に示すように、仕上材(化粧材)として上塗材41を塗布して上塗材層4を形成させた。
【0042】
このようにして施工された第1実施形態の建築物の壁面を形成する板材1の継ぎ目構造体は、施工時において、板材1の継ぎ目11の目地部12に対して、板材1の継ぎ目11が視認され難い仕上がりを形成することができる。目地部12は、支持部材5によって、下地調整材21の収縮による継ぎ目11に生じる凹みを抑制することができ、板材1の継ぎ目11が視認され難い仕上がりを維持することができる。第1実施形態の建築物の壁面を形成する板材1の継ぎ目構造体は、特に、多数の板材1を並べて1枚の大きな壁体とする大壁工法に適している。また、施工後において、板間の継ぎ目11は、支持部材5、下地調整材層2、有孔芯材層6及び下塗材層3によって、板間の動きが緩和・吸収され、板間の継ぎ目11の塗膜に亀裂が生じることを抑制することができる。
【0043】
次に、第2実施形態に係る建築物の壁面の継ぎ目構造体について、図11~13に基づいて説明する。第2実施形態に係る建築物の壁面の継ぎ目構造体は、壁面を形成する板材101の継ぎ目111に目地部が形成されていない点、目地部が形成されていないため、目地部に支持部材が装入されない点、有孔芯材層106が押圧層を備えていない点、これらが、第1実施形態に係る建築物の壁面の継ぎ目構造体と異なる。その他は、第1実施形態に係る建築物の壁面の継ぎ目構造体と同じであるため、対応する要素については第1実施形態と同じ符号を用い、その説明を省略する。
【0044】
目地部が形成されていない第2実施形態に係る建築物の壁面の継ぎ目構造体は、壁面を形成する板材101の継ぎ目111に埋入された下地調整材21が固化した下地調整材層2と、下地調整材層2を被覆し、目地部12を挟んで対向するそれぞれの板材101に接着された有孔芯材層106と、有孔芯材層106を被覆する下塗材31が固化した下塗材層3と、を有する。
【0045】
板材101には、図11~13に示すように、継ぎ目111が突き付けにより板材101同士が接合される窯業サイディングボードを使用した。
【0046】
下地調整材21は、しごき塗りによって継ぎ目111に埋入させる。しごき塗りとは、左官鏝でこするように薄く平坦に塗材を塗る塗り方である。下地調整材21は、第1実施形態で使用したものと同じで、揮発分を11.5%含有している。これにより、継ぎ目111への充填性に優れるものとしている。
【0047】
有孔芯材層106は、押圧層を備えていないことが、第1実施形態の有孔芯材層6と異なり、それ以外は、第1実施形態の有孔芯材層6と同じである。有孔芯材層106は、継ぎ目111を跨いで左右の板材101に貼付される。粘着剤層62によって、有孔芯材層6は、継ぎ目111を挟む左右の板材101に接着される。このため、有孔芯材層6の前側から押圧工具で均されたときに、有孔芯材層6のズレやハガレが抑制される。
【0048】
下塗材31と上塗材41は、第1実施形態で使用したものと同じある。
【0049】
次に、第2実施形態に係る建築物の壁面の施工方法について説明する。図11~13に示すように、第2実施形態の建築物の壁面の施工方法は、建築物の壁面を形成する板材101の継ぎ目111に、下地調整材21を充填する充填工程、下地調整材21が充填された継ぎ目111に、壁面側に粘着剤層162を備える有孔芯材層106を貼付し、有孔芯材層106を押圧工具で均す貼付工程、継ぎ目111を含めた板材101に、下塗材31を塗布する下塗材塗布工程、の順に施工する施工方法である。
【0050】
板材101の継ぎ目111に、下地調整材21を充填する充填工程は、継ぎ目111に、下地調整材21をしごき塗りで埋め込むことによって行なった。これにより、継ぎ目111を段差のない平滑なものとすることができる。
【0051】
有孔芯材層6を貼付し、有孔芯材層6を押圧工具で均す貼付工程は、継ぎ目111に沿って、有孔芯材層6を貼付し、押圧工具を用いて有孔芯材層6を均すことによって行なった。有孔芯材層6を継ぎ目111に貼付すると、継ぎ目111を跨ぐ網目状ガラス繊維シート61が、粘着剤層62によって、左右の板材101に粘着する。
【0052】
継ぎ目111を含めた板材101に、下塗材31を塗布する下塗材塗布工程と、仕上材(化粧材)として上塗材41を塗布して上塗材層4を形成させる工程は、第1実施形態と同じである。
【0053】
このようにして施工された第2実施形態の建築物の壁面を形成する板材101の継ぎ目構造体は、施工時において、板材101の継ぎ目111に対して、板材101の継ぎ目が視認され難い仕上がりを形成することができる。特に、多数の板材101を並べて1枚の大きな壁体とする大壁工法に適している。また、施工後において、板間の継ぎ目111は、下地調整材層2、有孔芯材層106及び下塗材層3によって、板間の動きが緩和・吸収され、板間の継ぎ目111の塗膜に亀裂が生じることを抑制することができる。
【0054】
なお、実施形態の建築物の壁面の継ぎ目構造体は、その構成を以下のような形態に変更しても実施することができる。
【0055】
実施形態の建築物の壁面の継ぎ目構造体では、板材1、101に窯業サイディングボードを使用したが、板材1、101は、これに限定されるものではなく、金属サイディングボード、木質サイディングボード、ALC、又は、押出成形セメント板など、であっても使用することができる。また、実施形態では、縦方向の継ぎ目11を例に説明したが、継ぎ目11の方向は、横方向、斜め方向であっても適用することができるものである。もちろん、建築物は、新築、改修に係らず適用することができる。
【0056】
第2実施形態に係る建築物の壁面の施工方法は、建築物の壁面を形成する板材101の継ぎ目111に、下地調整材21を充填する充填工程と、下地調整材21が充填された継ぎ目111に、壁面側に粘着剤層162を備える有孔芯材層106を貼付し、有孔芯材層106を押圧工具で均す貼付工程と、継ぎ目111を含めた板材101に、下塗材31を塗布する下塗材塗布工程と、を有する施工方法である。しかし、第2実施形態に係る建築物の壁面の施工方法は、継ぎ目111に段差などの不陸がない場合には、下地調整材21を充填する充填工程を省くことができる。
【0057】
第1実施形態の建築物の壁面の継ぎ目構造体では、目地部12は深さが3~4mm、幅が8~9mm(後側)・11~12mm(前側)の前側が広く開口した目地部12を用いて説明したが、目地部12は、これに限定されるものではなく、様々な形状、様々な寸法であっても、板材1の継ぎ目11に形成される目地部12であれば、継ぎ目構造体を形成させることができる。目地部12の適した寸法をあげるとすると、深さは2~50mm、幅は、後側が2~50mm、前側が2~100mmである。これら寸法未満だと、支持部材5の装入が困難になるおそれがある。一方、これら寸法を超えると、下地調整材21の硬化の際の収縮により継ぎ目11に凹みが生じるおそれがある。なお、支持部材5の形状・寸法も目地部12の形状・寸法に合わせて適宜変更することができるが、支持部材5の厚さは、目地部12の深さと同じ~1mm短いもの、別の実施形態として、目地部12の深さより0.5~1mm短いものとすることができる。
【0058】
第1実施形態の建築物の壁面の継ぎ目構造体では、支持部材5に、独立気泡の低密度ポリエチレン発泡体を母材とし、目地部12に粘着する粘着剤層51を備えるものを使用したが、支持部材5は、これに限定されるものではない。例えば、支持部材5は、独立気泡の低密度ポリエチレン発泡体のみからなるものとし、接着剤や両面テープなどを用いて、目地部12に固定するものであっても、使用することができる。
【0059】
第1実施形態の建築物の壁面の継ぎ目構造体では、支持部材5に、熱伝導率が0.028kcal/m・hr・℃である低密度ポリエチレン発泡体を使用したが、支持部材5は、熱伝導率が0.05kcal/m・hr・℃以下であれば、建築物の壁面の外部からの温度変化の影響を抑制することができる。支持部材5の熱伝導率が0.05kcal/m・hr・℃を超えると、目地部分の板材1は板厚が薄いため、外部からの温度変化の影響を受けるおそれがある。別の実施形態として、支持部材5の熱伝導率は、0.04kcal/m・hr・℃以下とすることができ、さらに別の実施形態として、支持部材5の熱伝導率は、0.03kcal/m・hr・℃以下とすることができる。なお、支持部材5の熱伝導率の下限は、あげるとすると、ほぼ、空気(20℃)の熱伝導率となる、0.02kcal/m・hr・℃となる。
【0060】
第1実施形態の建築物の壁面の継ぎ目構造体では、支持部材5に見かけ密度が30kg/m3の独立気泡の低密度ポリエチレン発泡体を使用したが、支持部材5は、は、これに限定されるものではない。支持部材5の見かけ密度は、5~500kg/m3であれば、継ぎ目11を平滑な仕上がりにすることができる。支持部材5の見かけ密度が5kg/m3未満である場合には、有孔芯材層6を押圧工具で均す貼付工程の際に変形し、継ぎ目11を平滑な仕上がりにすることができないおそれがある。一方、500kg/m3を超えると、支持部材5の自重によってずれ落ちるおそれがあり、継ぎ目11を平滑な仕上がりにすることができないおそれがある。別の実施形態として、支持部材5の見かけ密度は、10~100kg/m3とすることができ、さらに別の実施形態として、20~50kg/m3とすることができる。支持部材5の材質は、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリフェノールなどからなる一般的な樹脂発泡体であれば使用することができる。また、発泡体は独立気泡の発泡体に限られるものではなく、例えば、連続気泡の発泡体であっても、樹脂コーティング剤を用いて表面をコーティングすることにより使用することができる。
【0061】
実施形態では、有孔芯材層6は、左右の幅が100mmの網目状ガラス繊維シート61を基材として使用したが、有孔芯材層6の基材はこれに限定されるものではない。有孔芯材層6の左右の幅は50~150mmであるものとすることができる。目地部12に重ねて容易に貼付することができるためである。左右の幅が50mm未満である場合には、幅が狭いため、貼付の際に目地部12から外れてしまうおそれがある。一方、150mmを超えると、有孔芯材層6の基材にヨレやシワが生じやすく、板材1、101の継ぎ目11、111が視認され難い仕上がりが得られないおそれがある。別の実施形態として、有孔芯材層6の左右の幅は、70~130mm、さらに別の実施形態として、80~120mmとすることができる。有孔芯材層6の基材は、網目状ガラス繊維シート61に限られるものではなく、網目状樹脂繊維シート、ステンレスメッシュなども使用することができる。なお、有孔芯材層6の基材の厚みは、網目状ガラス繊維シート61である場合には0.1~0.5mm、網目状樹脂繊維である場合には0.2~0.5mm、ステンレスメッシュである場合には0.02~0.2mm、とすることができる。
【0062】
第1実施形態の建築物の壁面の継ぎ目構造体では、押圧層63の左右の幅は、35mmとしたが、目地部12の幅(前側)を超えるものであれば、下地調整材21から形成される下地調整材層2を均一な厚みに調整することができる。目地部12の幅を超える幅の押圧層63によって、目地部12に充填された下地調整材21が全体に均一に押圧されるためである。
【0063】
実施形態では、有孔芯材層6を押圧する押圧工具として左官鏝を使用したが、押圧工具は、これに限定されるものではなく、パテベラ(プラスチック製、金属製)、プラスチックローラ、金属ローラなどであっても使用することができる。
【0064】
実施形態では、上塗材41として、特願2020-146798に記載された、実施形態の仕上層を形成する可とう性を有する仕上塗材(「WellnestWall」(株式会社 WELLNEST HOME 製 可とう形外装薄塗材))を使用したが、上塗材41は、可とう性を有する仕上塗材であれば使用することができる。可とう性を有する仕上塗材として、JIS A 6909(2014)「建築用仕上塗材」に規定される、可とう形外装薄塗材、防水形外装薄塗材、などを使用することができる。
【0065】
実施形態では、下地調整材21の揮発分は11.5%としたが、下地調整材21の揮発分は5~30%であれば、目地部12への充填性に優れるものとすることができる。下地調整材21の揮発分が5%未満である場合には、下地調整材21に流動性がなく、目地部12への充填性が劣るおそれがある。一方、30%を超える場合には、厚みを要する目地部12への充填では、下地調整材21の硬化の際の収縮が大きく、平滑な仕上がりが得られないおそれがある。別の実施形態として、下地調整材21の揮発分は10~20%、さらに別の実施形態として、10~15%とすることができる。
【0066】
実施形態では、下塗材31の揮発分は14%としたが、下塗材31の揮発分は10~40%であれば、下塗材31として作業性に優れるものとすることができる。下塗材31の揮発分が10%未満である場合には、下塗材31に塗布可能な流動性がなく、作業性が劣るおそれがある。一方、40%を超える場合には、下塗材31の硬化の際の収縮が大きく、平滑な仕上がりが得られないおそれがある。別の実施形態として、下塗材31の揮発分は12~25%、さらに別の実施形態として、12~20%とすることができる。
【0067】
実施形態では、目地部12を含めた板材1に下塗材層3を形成する下塗材31を塗布する下塗材塗布工程は、下地調整材21の硬化後に行ったが、下地調整材21の硬化前であっても下塗材塗布工程を行なうことができる。下地調整材21と下塗材31が同じ組成配合物から構成されているため、混ざることによる弊害が生じないためである。
【0068】
実施形態では、下地調整材21(下塗材31を含む。以下、符号の説明を除いて同じ。)は、表1に記載の成分配合のものを使用したが、下地調整材21の成分配合はこれに限定されるものではなく、表1に併記した、アクリル樹脂量を固定した際の好ましい配合範囲であれば、下地調整材21として使用することができる。具体的には、下地調整材21は、アクリル樹脂不揮発分100質量部に対して、酸化チタンを1~100質量部配合することができ、これにより、下地隠蔽性を有し、作業性に優れるものとすることができる。アクリル樹脂不揮発分100質量部に対して、酸化チタンの配合量が1質量部未満である場合には、下地隠蔽性が劣るおそれがある。一方、100質量部を超えると、細かい酸化チタンが多くなるため、作業性が劣るおそれがある。別の実施形態として、アクリル樹脂不揮発分100質量部に対して、酸化チタンを5~50質量部配合することができ、さらに別の実施形態として、酸化チタンを10~30質量部配合することができる。なお、上塗材41に十分な隠蔽性を持たせることを条件に、下地調整材21に配合する酸化チタンを省略することができる。また、下地調整材21は、アクリル樹脂不揮発分100質量部に対して、炭酸カルシウムを300~1000質量部配合することができ、これにより、下地の動きに対する追従性を有しつつ、硬化時の収縮を抑えるものとすることができる。アクリル樹脂不揮発分100質量部に対して、炭酸カルシウムの配合量が300質量部未満である場合には、硬化時の収縮を抑えることができないおそれがある。一方、1000質量部を超えると、下地の動きに対する追従性が劣るおそれがある。別の実施形態として、アクリル樹脂不揮発分100質量部に対して、炭酸カルシウムを400~900質量部配合することができ、さらに別の実施形態として、炭酸カルシウムを500~800質量部配合することができる。
【0069】
実施形態では、下地調整材21の配合成分のアクリル樹脂は、樹脂のガラス転移温度(Tg)が-20℃に調整されたアクリル樹脂エマルジョンを使用したが、アクリル樹脂はこれに限定されるものではなく、例えば、市販品であっても使用することができる。市販品として、ポリトロン(旭化成株式会社製)、ペガール(高圧ガス工業株式会社性)、アクロナール(BASF株式会社製)などのアクリル樹脂エマルジョンを適宜選定して使用することができる。また、アクリル樹脂は、樹脂の主な骨格がアクリル樹脂であるものをいい、スチレン-アクリル共重合樹脂、ウレタン-アクリル共重合樹脂、シリコーン-アクリル共重合樹脂などのアクリル共重合樹脂も実施形態のアクリル樹脂に含まれるものである。
【0070】
実施形態では、下地調整材21の配合成分のアクリル樹脂は、樹脂のTgが-20℃のアクリル樹脂エマルジョンを使用したが、樹脂のTgは-45~0℃であれば、下地調整材21のアクリル樹脂として使用することができる。樹脂のTgが-45℃未満である場合には、下地調整材21から形成される下地調整材層2(下塗材層3)が柔らかく、外部から力を受けた時に変形してしまうおそれがある。一方、Tgが0℃を超えると、下地調整材21から形成される下地調整材層2が固くなり、板材1の動きに追従できず、亀裂などが生じるおそれがある。別の実施形態として、樹脂のTgは-38~-10℃とすることができ、さらに別の実施形態として、-30~-15℃とすることができる。
【符号の説明】
【0071】
1…板材、2…下地調整材層、3…下塗材層、4…上塗材層、5…支持部材、6…有孔芯材層、11…継ぎ目、12…目地部、13…底部、14…傾斜側面、21…下地調整材、31…下塗材、41…上塗材、51…粘着剤層、61…網目状ガラス繊維シート、61a…ガラス繊維部、61b…孔部、62…粘着剤層、63…押圧層、101…板材、106…有孔芯材層、111…継ぎ目、162…粘着剤層。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
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図10
図11
図12
図13