(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114560
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20230810BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20230810BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20230810BHJP
H01L 29/41 20060101ALI20230810BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
H01L29/78 652C
H01L29/78 652Q
H01L29/78 652K
H01L29/78 653C
H01L29/78 652D
H01L29/06 301F
H01L29/06 301V
H01L29/78 652F
H01L29/78 652P
H01L29/78 658F
H01L29/44 Y
H01L29/78 655A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016937
(22)【出願日】2022-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】本田 真彬
(72)【発明者】
【氏名】北田 瑞枝
(72)【発明者】
【氏名】丸山 莉香帆
【テーマコード(参考)】
4M104
【Fターム(参考)】
4M104BB01
4M104FF10
4M104GG09
4M104GG18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】第1導電型半導体層の不純物濃度を高くした場合であっても、スイッチング損失及びゲート駆動損失が小さく、かつ、寄生バイポーラ動作が起こり難い半導体装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置100は、半導体基体110と、複数のトレンチ120と、ゲート絶縁膜122と、ゲート電極124と、層間絶縁膜130と、表面電極140と、を備える。半導体基体110は、ベース領域(第2導電型半導体領域)113の底部から張り出すように形成され、トレンチ120とは離隔している第2導電型の張り出し領域115を有し、張り出し領域115の不純物濃度のピーク位置が、第2導電型半導体領域113の底部よりも深く、張り出し領域115の深さ方向断面の不純物総量は、第2導電型半導体領域113の深さ方向断面の不純物総量と同じ又はそれよりも少ない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型半導体層、前記第1導電型半導体層の表面に形成された第2導電型半導体領域、及び、前記第2導電型半導体領域の表面に形成された第1導電型半導体領域を有する半導体基体と、
前記半導体基体の表面に形成され、最底部が前記第1導電型半導体層に接し、側壁が前記第1導電型半導体層、前記第2導電型半導体領域及び前記第1導電型半導体領域に接する複数のトレンチと、
前記複数のトレンチそれぞれの前記側壁に形成されたゲート絶縁膜と、
前記複数のトレンチそれぞれの内部に前記ゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、
前記ゲート電極、及び、前記半導体基体の上方に形成された層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜上に形成され、前記第2導電型半導体領域、及び、前記第1導電型半導体領域に接続された表面電極とを備え、
前記半導体基体は、隣接する前記トレンチに挟まれた領域において前記第2導電型半導体領域の底部から前記第1導電型半導体層に向けて張り出すように形成され、前記トレンチとは離隔している第2導電型の張り出し領域を有し、
前記張り出し領域の最深部の深さ位置は、前記トレンチの最深部の深さ位置よりも浅く、
前記張り出し領域の不純物濃度のピーク位置が、前記第2導電型半導体領域の底部よりも深く、
前記張り出し領域の深さ方向断面の不純物総量は、前記第2導電型半導体領域の深さ方向断面の不純物総量と同じ又はそれよりも少ないことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記層間絶縁膜を貫通し、少なくとも前記半導体基体の前記第2導電型半導体領域に達する深さで形成されたコンタクトトレンチをさらに備え、
前記表面電極は、前記コンタクトトレンチを介して前記第1導電型半導体領域及び前記第2導電型半導体領域と接続されており、
前記張り出し領域は、前記コンタクトトレンチの下方に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1導電型半導体領域は、前記コンタクトトレンチの側面に接していることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体基体は、前記コンタクトトレンチの底部と接する領域に形成され、かつ、前記第2導電型半導体領域よりも不純物濃度が高い第2導電型のコンタクト領域をさらに有することを特徴とする請求項2又は3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記張り出し領域は、隣接する前記トレンチに挟まれた領域の中央に形成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記トレンチ内において、前記トレンチの内周面及び前記ゲート電極のどちらとも離隔した位置に形成されたシールド電極と、
前記ゲート電極と前記シールド電極との間、及び、前記シールド電極と前記トレンチ内周面との間に形成された絶縁領域とを備えることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体基体には、MOS構造が形成されたセル領域と、前記セル領域を囲む周辺領域とが画定されており、
前記セル領域において、前記半導体基体は、
前記第1導電型半導体層と、
前記第2導電型半導体領域と、
前記第1導電型半導体領域と、
前記張り出し領域とを少なくとも有し、
前記周辺領域において、前記半導体基体は、
前記第1導電型半導体層と、
前記第1導電型半導体層の表面に形成され、前記第2導電型半導体領域と接続されており、かつ、最底部の深さ位置が、前記第2導電型半導体領域の最底部の深さ位置よりも深い第2導電型周辺領域とを少なくとも有し、
前記第2導電型周辺領域における深さ方向断面の不純物総量は、前記第2導電型半導体領域における深さ方向断面の不純物総量よりも多いことを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第2導電型周辺領域は、前記セル領域に形成された前記表面電極と直接接していることを特徴とする請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
第1導電型半導体層、前記第1導電型半導体層の表面に形成された第2導電型半導体領域、及び、前記第2導電型半導体領域の表面に形成された第1導電型半導体領域を有する半導体基体を準備する半導体基体準備工程と、
前記半導体基体の一方の表面に、最底部が前記第1導電型半導体層に接し、側壁が前記第1導電型半導体層、前記第2導電型半導体領域及び前記第1導電型半導体領域に接する複数のトレンチを形成するトレンチ形成工程と、
前記複数のトレンチそれぞれの前記側壁の少なくとも前記第2導電型半導体領域と接する領域にゲート絶縁膜を形成するゲート絶縁膜形成工程と、
前記複数のトレンチそれぞれの内部に前記ゲート絶縁膜を介して複数のゲート電極を形成するゲート電極形成工程と、
前記ゲート電極及び前記半導体基体の表面上に層間絶縁膜を形成する層間絶縁膜形成工程と、
前記層間絶縁膜に少なくとも前記半導体基体の前記第2導電型半導体領域に達する深さのコンタクトトレンチを形成するコンタクトトレンチ形成工程と、
前記コンタクトトレンチの底部に向けて、不純物濃度のピーク位置が、前記第2導電型半導体領域の底部よりも深くなるように第2導電型不純物を導入する第2導電型不純物導入工程と、
前記第2導電型不純物を拡散させることにより、隣接する前記トレンチで挟まれた領域において、前記トレンチとは離隔し、かつ、前記第2導電型半導体領域の底部から前記第1導電型半導体層に向けて張り出すように形成され、最深部の深さ位置が前記トレンチの最深部の深さ位置よりも浅く、深さ方向断面の不純物総量が、前記第2導電型半導体領域の深さ方向断面の不純物総量と同じ又はそれよりも少ない第2導電型の張り出し領域を形成する張り出し領域形成工程とを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記第2導電型不純物導入工程において、前記張り出し領域を形成する前記第2導電型不純物の飛程をRpとし、前記半導体基体が表面電極と接する位置から前記第2導電型半導体領域の底部までの長さをDとしたときに、Rp>Dを満たすことを特徴とする請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記第2導電型不純物導入工程において前記張り出し領域を形成する前記第2導電型不純物のドーズ量は、前記第2導電型半導体領域を形成する前記第2導電型不純物のドーズ量よりも少ないことを特徴とする請求項9又は10に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トレンチゲート型の半導体装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図14は、従来の半導体装置900を示す断面図である。従来の半導体装置900は、
図14に示すように、n
+型の低抵抗半導体層911、n型のドリフト層912、ドリフト層912の表面に形成されたp型のベース領域913、及び、ベース領域913の表面に形成されたn型(n
+型)のソース領域914を有する半導体基体910と、半導体基体910の表面に形成され、最底部がドリフト層912に隣接し、側壁がドリフト層912、ベース領域913及びソース領域914に隣接したトレンチ920と、トレンチ920の側壁に形成されたゲート絶縁膜922と、トレンチ920の内部にゲート絶縁膜922を介して形成されたゲート電極924と、ソース領域914に接続された表面電極940とを備える。従来の半導体装置900は、トレンチ920の内部において、ゲート電極924及びトレンチ920の内周面と離隔した位置に形成されたシールド電極926と、ゲート電極924とシールド電極926との間、及び、シールド電極926とトレンチ920内周面との間に形成された絶縁領域928とをさらに備えるシールドゲート構造を有する半導体装置である。
【0004】
従来の半導体装置900によれば、トレンチ920と、トレンチ920の内部にゲート絶縁膜922を介して形成されたゲート電極924とを備えるいわゆるトレンチゲート型の半導体装置であるため、チャネルを半導体基体910の深さ方向に形成することができ、プレーナゲート型の半導体装置と比較してチップサイズを小さくすることができる。また、プレーナゲート型の半導体装置においては、隣接するチャネル領域から空乏層が伸びて電流の経路を狭めるJ-FET効果を防ぐために、ある程度のチャネル間隔をあける必要があるが、トレンチゲート型半導体装置においてはそのような制約がなく、この観点からもチップサイズを小さくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、一般に、半導体装置においては、ドリフト層の不純物濃度を高くしてオン抵抗を小さくすることが求められている。しかしながら、従来の半導体装置900においてドリフト層912の不純物濃度を高くすると、ドリフト層912が空乏化し難くなる。従って、ドリフト層912を空乏化するためにはドレイン電圧を高くしなければならず、ゲート・ドレイン間電荷量Qgdが大きくなることから、スイッチング損失及びゲート駆動損失が大きくなる、という問題がある。
【0007】
また、アバランシェ降伏時においては、絶縁領域928(酸化膜)と半導体基体910との界面の電位が低いことに起因して、トレンチ920の底部近傍で生成された正孔がトレンチ920の縁に沿ってベース領域913に流れ込み易くなる(
図9(c)及び(d)参照)。従って、ベース領域913におけるトレンチ920と接する領域に多量の正孔が流れ込むことで局所的にベース領域913の電位が高くなり、寄生バイポーラ動作が起こるおそれがある、という問題もある。
【0008】
なお、上記した問題は、シールドゲート構造を有する半導体装置だけに起こる問題ではなく、一般的なトレンチゲート型の半導体装置においても起こりうる問題である。
【0009】
そこで本発明は、上記した問題を解決するためになされたものであり、第1導電型半導体層の不純物濃度を高くした場合であっても、スイッチング損失及びゲート駆動損失が小さく、かつ、寄生バイポーラ動作が起こり難い半導体装置及びそのような半導体装置を製造する半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の半導体装置は、第1導電型半導体層、前記第1導電型半導体層の表面に形成された第2導電型半導体領域、及び、前記第2導電型半導体領域の表面に形成された第1導電型半導体領域を有する半導体基体と、前記半導体基体の表面に形成され、最底部が前記第1導電型半導体層に接し、側壁が前記第1導電型半導体層、前記第2導電型半導体領域及び前記第1導電型半導体領域に接する複数のトレンチと、前記複数のトレンチそれぞれの前記側壁の少なくとも前記第2導電型半導体領域と接する領域に形成されたゲート絶縁膜と、前記複数のトレンチそれぞれの内部に前記ゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、前記ゲート電極、及び、前記半導体基体の上方に形成された層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜上に形成され、前記第2導電型半導体領域、及び、前記第1導電型半導体領域に接続された表面電極とを備え、前記半導体基体は、隣接する前記トレンチに挟まれた領域において前記第2導電型半導体領域の底部から前記第1導電型半導体層に向けて張り出すように形成され、前記トレンチとは離隔している第2導電型の張り出し領域を有し、前記張り出し領域の最深部の深さ位置は、前記トレンチの最深部の深さ位置よりも浅く、前記張り出し領域の不純物濃度のピーク位置が、前記第2導電型半導体領域の底部よりも深く、前記張り出し領域の深さ方向断面の不純物総量は、前記第2導電型半導体領域の深さ方向断面の不純物総量と同じ又はそれよりも少ないことを特徴とする。
【0011】
なお、本明細書中、「深さ方向断面の不純物総量」とは、単位深さ毎の不純物濃度を深さ方向で積分した値のことをいう(
図2(b)参照)。
【0012】
本発明の半導体装置の製造方法は、第1導電型の第1導電型半導体層、前記第1導電型半導体層の表面に形成された第2導電型の第2導電型半導体領域、及び、前記第2導電型半導体領域の表面に形成された第1導電型の第1導電型半導体領域を有する半導体基体を準備する半導体基体準備工程と、前記半導体基体の一方の表面に、最底部が前記第1導電型半導体層に接し、側壁が前記第1導電型半導体層、前記第2導電型半導体領域及び前記第1導電型半導体領域に接する複数のトレンチを形成するトレンチ形成工程と、前記複数のトレンチそれぞれの前記側壁の少なくとも前記第2導電型半導体領域と接する領域にゲート絶縁膜を形成するゲート絶縁膜形成工程と、前記複数のトレンチそれぞれの内部に前記ゲート絶縁膜を介して複数のゲート電極を形成するゲート電極形成工程と、前記ゲート電極及び前記半導体基体の表面上に層間絶縁膜を形成する層間絶縁膜形成工程と、前記層間絶縁膜に少なくとも前記半導体基体の前記第2導電型半導体領域に達する深さのコンタクトトレンチを形成するコンタクトトレンチ形成工程と、前記コンタクトトレンチの底部に、不純物濃度のピーク位置が、前記第2導電型半導体領域の底部よりも深くなるように第2導電型不純物を注入する第2導電型不純物導入工程と、前記第2導電型不純物を拡散させることにより、隣接する前記トレンチで挟まれた領域において、前記トレンチとは離隔し、かつ、第2導電型半導体領域の底部から前記第1導電型半導体層に向けて張り出すように形成され、最深部の深さ位置が前記トレンチの最深部の深さ位置よりも浅く、深さ方向断面の不純物総量が、前記第2導電型半導体領域の深さ方向断面の不純物総量と同じ又はそれよりも少ない第2導電型の張り出し領域を形成する張り出し領域形成工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の半導体装置及び半導体装置の製造方法によれば、半導体基体は、隣接するトレンチに挟まれた領域において第2導電型半導体領域の底部から第1導電型半導体層に向けて張り出すように形成され、トレンチとは離隔している第2導電型の張り出し領域を有するため、第2導電型半導体領域と第1導電型半導体層との間のpn接合から縦方向に空乏層が広がるだけでなく、張り出し領域の側面のpn接合から横方向にも空乏層が広がる。従って、トレンチと張り出し領域との間の第1導電型半導体層が空乏化し易くなるため、第1導電型半導体層の不純物濃度を高くした場合であっても、ドレイン電圧を必要以上に高くすることなく第1導電型半導体層を空乏化することができる。その結果、ゲート・ドレイン間電荷量Qgdが小さくて済み、スイッチング損失及びゲート駆動損失を低減することができる。
また、ゲート・ドレイン間電荷量Qgdが小さくて済むことから、ゲートのオンオフの際にゲート・ドレイン間容量Cgdを充放電するためにかかる時間が短くて済み、スイッチング速度が速くなる。
また、本構造を採用することでゲート・ドレイン間容量Cgdが削減され、Cgd/(Cgs+Cgd)が減少する。その結果、セルフターンオンまたはシュートスルーと呼ばれる、ゲートの誤点呼を抑制できる効果もある。
【0014】
また、本発明の半導体装置及び半導体装置の製造方法によれば、上記した構成を有するため、アバランシェ降伏時において、トレンチ底部近傍で生成された正孔が、第2導電型半導体領域におけるトレンチと接する領域だけでなく張り出し領域にも流れ込むこととなる(
図9(a)及び(b)参照)。従って、第2導電型半導体領域に流れ込む正孔の経路が広がるため、局所的に第2導電型半導体領域の電位が高くなることを防ぐことができ、その結果、寄生バイポーラ動作が起こることを防ぐことができる。
【0015】
ところで、張り出し領域の深さ方向断面の不純物総量を第2導電型半導体領域の深さ方向断面の不純物総量よりも多くした場合には、アバランシェ降伏時において、隣接するトレンチの中間付近にインパクトイオン化が発生し易くなってしまい、隣接するトレンチの中間付近に電界が集中して耐圧が低下してしまう(
図11(c)~(e)参照)。これに対して、本発明の半導体装置及び半導体装置の製造方法によれば、張り出し領域の深さ方向断面の不純物総量が第2導電型半導体領域の深さ方向断面の不純物総量と同等又はそれよりも少ないため、アバランシェ降伏時において、インパクトイオン化がトレンチ周辺に発生し易くなり、降伏する領域が分散されることとなる(
図11(b)参照)。従って、隣接するトレンチの中間付近に電界が集中することを防ぐことができ、耐圧が低下することを防ぐことができる。
【0016】
また、張り出し領域の最深部の深さ位置が、トレンチの最深部の深さ位置よりも深い場合には、ゲートオン状態時において、ソース・ドレイン間に電流を流した場合の電流経路が閉塞されるため、オン抵抗が高くなってしまう場合がある。これに対して、本発明の半導体装置及び半導体装置の製造方法によれば、張り出し領域の最深部の深さ位置は、トレンチの最深部の深さ位置よりも浅いため、ソース・ドレイン間に電流を流した場合でも電流経路が閉塞され難く、オン抵抗が低下し難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態1に係る半導体装置100を示す図である。
図1(a)は半導体装置100の平面図を示し、
図1(b)は
図1(a)のA-A断面図を示す。
【
図2】実施形態1に係る半導体装置100におけるベース領域113及び張り出し領域115の深さ方向断面の不純物総量を説明するために示す図である。
図2(a)は半導体装置100の断面図を示し、
図2(b)は
図2(a)の破線A-A’間及び破線B-B’間の深さに対する不純物濃度のグラフを示す。
【
図4】実施形態1に係る半導体装置100の周辺部の要部拡大図である。
図4(a)は半導体装置100の周辺部の要部拡大平面図であり、
図4(b)は
図4(a)のA-A’断面図であり、
図4(c)は
図4(a)のB-B’断面図であり、
図4(d)は
図4(a)のC-C’断面図である。
【
図5】実施形態1に係る半導体装置100の製造方法を示す図である。
図5(a)~(d)は各工程図である。
【
図6】実施形態1に係る半導体装置100の製造方法を示す図である。
図6(a)~(d)は各工程図である。
【
図7】実施形態1に係る半導体装置100の製造方法を示す図である。
図7(a)~(d)は各工程図である。
【
図8】実施形態1に係る半導体装置100の製造方法を示す図である。
図8(a)~(d)は各工程図である。
【
図9】実施形態1に係る半導体装置100の効果を説明するために示す図である。
図9(a)は実施例1に係る半導体装置のアバランシェ降伏時の正孔の動きを示す模式図であり、
図9(b)は実施例1に係る半導体装置のアバランシェ降伏時のホール電流密度分布を示し、
図9(c)は比較例1に係る半導体装置のアバランシェ降伏時の正孔の動きを示す模式図であり、
図9(d)は比較例1に係る半導体装置のアバランシェ降伏時のホール電流密度分布を示す。
【
図10】実施例2及び比較例2~5における張り出し領域のドーズ量と耐圧との関係を示すグラフである。
【
図11】実施例2及び比較例2~5におけるインパクトイオン化分布を示す図である。
図11(a)は比較例2のインパクトイオン化率分布を示し、
図11(b)は実施例2のインパクトイオン化率分布を示し、
図11(c)~
図11(e)は比較例3~5のインパクトイオン化率分布を示す。
【
図12】実施形態2に係る半導体装置102を示す断面図である。
【
図13】変形例に係る半導体装置104を示す断面図である。
【
図14】従来の半導体装置900を示す断面図である。なお、符号911は低抵抗半導体層(n
+型半導体層)を示し、符号950はドレイン電極を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の半導体装置及び半導体装置の製造方法について、図に示す実施形態に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0019】
[実施形態1]
1.実施形態1に係る半導体装置100の構成
図1は、実施形態1に係る半導体装置100を示す図である。実施形態1に係る半導体装置100は、
図1(a)に示すように、2つの長辺X1,X2及び2つの短辺X3,X4で構成される平面視略矩形形状を有する。実施形態1に係る半導体装置100は、半導体基体110の表面上に、ソース電極140、ソース配線SL1,SL2、ゲートパッドGP及びゲート配線GL1,GL2が配置されている。半導体基体110には、ソース電極140が配置されている中央の領域に形成されているセル領域A1と、セル領域A1の周囲を囲むように形成されている周辺領域A2とが画定されている。
【0020】
ソース電極(表面電極)140は、平面的に見て半導体基体110の中央部及び中央部から短辺X3側に広がる矩形形状をしている。ソース配線SL1は、ソース電極140の短辺X3側の端部から長辺X1側に短辺X3に沿って延び、半導体基体110の角部で短辺X4側に折れ曲がり長辺X1に沿って伸びる。ソース配線SL2は、ソース電極140の短辺X3側の端部から長辺X2側に短辺X3に沿って延び、半導体基体110の角部で短辺X4側に折れ曲がり長辺X2に沿って伸びる。ソース配線SL1,SL2はいずれもソース電極140と接続されている。
【0021】
ゲートパッドGPは、平面的に見て半導体基体110の短辺X4側中央付近において短辺X4側から中央に向かって突出するように形成された矩形形状をしている。ゲート配線GL1は、ゲートパッドGPの短辺X4側の端部から長辺X1側に短辺X4に沿って延び、中途で短辺X3側に折れ曲がり、ソース電極140及びソース配線SL1との間を長辺X1に沿って延びる。ゲート配線GL2は、ゲートパッドGPの短辺X4側の端部から長辺X2側に短辺X4に沿って延び、中途で短辺X3側に折れ曲がり、ソース電極140及びソース配線SL2との間を長辺X2に沿って延びる。ゲート配線GL1,GL2はいずれもゲートパッドGPと接続されている。また、ソース電極140及びソース配線SL1,SL2と、ゲートパッドGP及びゲート配線GL1,GL2とは離隔されている。
【0022】
ソース電極140、ソース配線SL1,SL2、ゲートパッドGP及びゲート配線GL1,GL2は、厚さが1μm~10μm(例えば3μm)のAl膜又はAl合金膜(例えばAlSi膜)からなり、一括して形成されている。
【0023】
次に、セル領域A1の構成について説明する。実施形態1に係る半導体装置100は、セル領域A1において、
図1(b)に示すように、半導体基体110、複数のトレンチ120、ゲート絶縁膜122、ゲート電極124、シールド電極126、絶縁領域128、層間絶縁膜130、コンタクトトレンチ132、ソース電極140及びドレイン電極150を備えており、MOS(Metal-Oxide-Semiconductor)構造が形成されている。
【0024】
半導体基体110は、n型(n+型)の低抵抗半導体層111と、低抵抗半導体層111よりも不純物濃度が低いn型のドリフト層(第1導電型半導体層)112と、ドリフト層112の表面に形成されたp型のベース領域(第2導電型半導体領域)113と、ベース領域113の表面に形成されたn型(n+型)のソース領域114と、隣接するトレンチ120同士の間の領域においてベース領域113の底部からドリフト層112に向けて張り出すように形成され、トレンチ120とは離隔しているp型(p-型)の張り出し領域115と、コンタクトトレンチ132の底部と接する領域に形成され、ベース領域113よりも不純物濃度が高いp型(p+型)のコンタクト領域116とを有する。
【0025】
図2は、実施形態1に係る半導体装置100におけるベース領域及び張り出し領域の深さ方向断面の不純物総量を説明するために示す図である。
張り出し領域115は、隣接するトレンチ120に挟まれた領域の中央に形成されており、コンタクトトレンチ132の下方に形成されている。張り出し領域115の最深部の深さ位置は、トレンチ120の最深部の深さ位置よりも浅い。また、張り出し領域115の不純物濃度のピーク位置は、ベース領域113の底部よりも深い。また、張り出し領域115の深さ方向断面の不純物総量は、ベース領域113の深さ方向断面の不純物総量よりも少ない。具体的には、深さ方向をyとし、y=0が
図2(a)の破線A-A’における半導体基体110の表面の深さ位置を示し、
図2(a)の破線A-A’における単位体積ごとの不純物濃度をN
A(A-A’)とし、
図2(a)の破線B-B’における単位体積ごとの不純物濃度をN
A(B-B’)としたときに、以下の式が成り立つ。なお、「ベース接合深さ」とは、ベース領域113の底部とドリフト層112とがpn接合している領域の深さのことをいい、張り出し領域深さは張り出し領域115の最底部の深さをいう。
【数1】
【0026】
張り出し領域115の深さ方向断面の不純物総量が、ベース領域113の深さ方向断面の不純物総量よりも少ない点について詳しく説明する。
張り出し領域115の深さ方向断面の不純物総量(
図2(b)の右側にハッチングされた領域)は、
図2(b)における「ベース領域底部」を示す直線、「B-B’断面におけるP型不純物濃度」の曲線及び横軸で囲まれた領域の面積となる。
一方、ベース領域の深さ方向断面の不純物総量(
図2(b)の左側にハッチングされた領域)は、
図2(b)における「ベース領域底部」を示す直線、「A-A’断面におけるP型不純物濃度」の曲線、縦軸及び横軸で囲まれた領域の面積となる。ベース領域の深さ方向断面の不純物総量は、コンタクトトレンチ132及びコンタクト領域116が形成されていない場合のベース領域の深さ方向断面の不純物総量と等しい。
従って、
図2(b)からもわかるように、張り出し領域115の深さ方向断面の不純物総量は、ベース領域113の深さ方向断面の不純物総量よりも小さい。なお、張り出し領域115の不純物総量がベース領域113の深さ方向断面の不純物総量と同じかそれよりも少なければよく、例えば、不純物濃度が高く、かつ、張り出し領域115の深さを浅くしてもよいし、不純物濃度が低く、かつ、張り出し領域115の深さを深くしてもよい。
【0027】
また、B-B’ 断面において、ソース電極140と半導体基体110とのコンタクト位置からベース領域底部までの半導体基体110の深さ方向断面の不純物総量(コンタクト領域116とベース領域113の深さ方向断面の不純物総量の和)は、
図2(b)において、「ベース領域底部」を示す直線、「B-B’断面におけるP型不純物濃度」の曲線及び横軸で囲まれた領域の面積となる。張り出し領域115の深さ方向断面の不純物総量は、この領域の深さ方向断面の不純物総量よりも小さい。
【0028】
実施形態1においては、平面的に見て長辺X1側のソース配線SL1と重なる領域からソース電極140と重なる領域を横断して長辺X2側のソース配線SL2と重なる領域まで延在するトレンチ120が所定の間隔で複数本平行に延びている(図示せず)。トレンチ120は、
図1(b)に示すように、半導体基体110の表面に形成され、最底部がドリフト層112に接し、側壁がドリフト層112、ベース領域113及びソース領域114に接する。なお、トレンチ120の底面は丸くなっているが平坦になっていてもよく、その他適宜の形状をしていてもよい。
【0029】
ゲート絶縁膜122は、複数のトレンチ120それぞれの側壁の上部、具体的にはドリフト層112の一部、ベース領域113及びソース領域114の一部と接する位置に形成されている。ゲート絶縁膜122は、熱酸化膜からなる。ゲート電極124は、複数のトレンチ120それぞれの内部に、ベース領域113と対向する位置にゲート絶縁膜122を介して形成されている。ゲート電極124は、ポリシリコンからなる。
【0030】
シールド電極126は、ゲート電極124及びトレンチ120の内周面と離隔した位置に形成されている。シールド電極126は、ポリシリコンからなる。絶縁領域128は、ゲート電極124とシールド電極126との間、及び、シールド電極126とトレンチ120の内周面との間に形成されており、ゲート電極124とシールド電極126との間、及び、シールド電極126と半導体基体110とを絶縁する。絶縁領域128は、例えば、CVD法で形成された酸化膜からなる。
【0031】
ゲート絶縁膜122、ゲート電極124、シールド電極126及び絶縁領域128は、トレンチ120内にあり、トレンチ120内を長辺X1側から長辺X2側に向かってストライプ状に延びている。
なお、ゲート電極124及びゲート絶縁膜122は、周辺領域A2におけるゲート配線GL1と重なる領域からソース電極140と重なる領域を通過してゲート配線GL2と重なる領域まで延在している。ゲート電極124は、ゲート配線GL1,GL2と重なる領域でコンタクトプラグGLCを介してゲート配線GLと接続されている(
図4(c)参照)。
また、平面的に見て、ゲート配線GL1よりも長辺X1側の端部及びゲート配線GL2よりも長辺X2側の端部においては、ゲート電極124及びゲート絶縁膜122が形成されておらず、トレンチ内において、シールド電極126及び絶縁領域128がトレンチ120内の上側まで形成されている(
図4(b)参照)。そして、シールド電極126は、トレンチ120の長辺X1側の端部及び長辺X2側の端部において、ゲート電極124が形成されていたソース配線SL1,SL2とコンタクトプラグSLC2を介して電気的に接続されている。
【0032】
層間絶縁膜130は、
図1に示すように、ゲート電極124、ゲート絶縁膜122及び半導体基体110の表面上に形成されている。層間絶縁膜130は、例えばCVD法で形成された酸化膜である。
【0033】
コンタクトトレンチ132は、平面的に見て隣接するトレンチ120の間にトレンチ120と平行に長辺X1側から長辺X2側に向かって延びている(図示せず)。コンタクトトレンチ132は、
図1(b)に示すように、層間絶縁膜130を貫通し、ソース領域114の底部の深さ位置よりも深い深さで形成されている。コンタクトトレンチ132の底部はコンタクト領域116と接しており、コンタクトトレンチ132の側壁はソース領域114及びベース領域113と接している。
【0034】
ソース電極140は、層間絶縁膜130上に形成され、コンタクトトレンチ132を介してベース領域113、ソース領域114及びコンタクト領域116に接続されている。
【0035】
ドレイン電極150は、半導体基体110の裏面側(低抵抗半導体層111の表面上)の全体に配置されている。ドレイン電極150は、Ti、Ni、Au(又はAg)がこの順序で積層された積層膜からなり、ドレイン電極150の厚さは0.2μm~1.5μm(例えば1μm)である。
【0036】
次に、周辺領域A2の構成を説明する。
図3は、
図1(a)のB-B断面図である。
図4は、実施形態1に係る半導体装置100の周辺部の要部拡大図である。実施形態1に係る半導体装置100は、周辺領域A2において、
図1(a)、
図3及び
図4に示すように、半導体基体110と、最外周トレンチ160と、埋込電極162と、絶縁領域164と、層間絶縁膜130と、ゲートパッドGPと、ゲート配線GL1、GL2と、ソース配線SL1,SL2とが配置されている。また、トレンチ120は、
図4(c)に示すように、セル領域A1から延びており、トレンチ120内のゲート電極124は、コンタクトプラグGCを介してゲート配線GL1、GL2と接続されており、トレンチ120内のシールド電極126は、コンタクトプラグSLC2を介してソース配線SL1、SL2と接続されている(
図4(b)参照)。
【0037】
半導体基体110は、
図3に示すように、周辺領域A2において、低抵抗半導体層111と、ドリフト層112と、p型周辺領域117とを有する。
【0038】
p型周辺領域117は、周辺領域A2において、ドリフト層112の表面に形成されているp型(p
+型)の半導体領域である。p型周辺領域117は、セル領域A1側の端部でベース領域113と接続されている。また、p型周辺領域117は、セル領域A1側でコンタクトトレンチ132を介してソース電極140と接続されており、長辺X1側及び長辺X2側のそれぞれの端部近傍でコンタクトプラグSLC1を介してソース配線SL1,SL2と接続されている(
図4(a)及び(b)参照)。p型周辺領域117は、最底部の深さ位置が、ベース領域113の最底部の深さ位置よりも深い。また、p型周辺領域117における深さ方向断面の不純物総量は、ベース領域113における深さ方向断面の不純物総量よりも多い。従って、p型周辺領域117の深さが相当程度深い場合には不純物濃度が相当程度低くてもよいし、p型周辺領域117の深さがある程度浅い場合であっても不純物濃度が相当程度高くすることとしてもよい。なお、周辺領域A2においては、張り出し領域115は形成されていない。また、最外周トレンチ160とトレンチ120との間においてはソース領域114及びベース領域113が形成されていない。
【0039】
最外周トレンチ160は、
図3及び4に示すように、半導体基体110の最外周を1周囲うように形成されている。埋込電極162は、最外周トレンチ160の内部に内周面とは離隔して配置されている。埋込電極162はポリシリコンからなる。埋込電極162は、コンタクトプラグSLCを介してソース電極140と電気的に接続されている。絶縁領域164は、最外周トレンチ160の内部において埋込電極162と最外周トレンチ160の内周面との間に配置されている。絶縁領域164は、例えば、CVD法で形成された酸化膜である。
【0040】
2.実施形態1に係る半導体装置の製造方法
次に実施形態1に係る半導体装置の製造方法を説明する。
図5~
図8は、実施形態1に係る半導体装置100の製造方法を示す図である。実施形態1に係る半導体装置の製造方法は、半導体基体準備工程と、トレンチ形成工程と、絶縁領域形成工程と、シールド電極形成工程と、絶縁領域形成工程と、ゲート絶縁膜形成工程と、ゲート電極形成工程と、層間絶縁膜形成工程と、コンタクトトレンチ形成工程と、第1のp型不純物導入工程と、第2のp型不純物導入工程と、張り出し領域及びコンタクト領域形成工程と、表面電極及び裏面電極形成工程とをこの順序で含む。
【0041】
(1)半導体基体準備工程
まず、セル領域A1においては、n型(n
+型)の低抵抗半導体層111と、低抵抗半導体層111よりも不純物濃度が低いn型のドリフト層112と、ドリフト層112の表面に形成されたp型のベース領域113と、ベース領域113の表面全体に形成されたn型(n
+型)のソース領域114とを有し(
図5(a)参照)、周辺領域A2においては、低抵抗半導体層111と、ドリフト層112と、ドリフト層112の表面に形成されているp型(p
+型)のp型周辺領域117とを有する半導体基体110を準備する。
【0042】
(2)トレンチ形成工程
次に、半導体基体110の表面(ソース領域114側の表面)に、所定の間隔で最底部がドリフト層112に接し、側壁がドリフト層112,ベース領域113及びソース領域114に接するようにトレンチ120を形成する(
図5(b)参照)。トレンチ形成工程においては、長辺X1側から長辺X2側に向かって延びるトレンチ120を所定の間隔で複数本平行に形成する。また、半導体基体110の最外周に沿って囲むように最外周トレンチ160を形成する。
【0043】
(3)絶縁領域形成工程
次に、トレンチ120の内表面上及び最外周トレンチ160の内周面上を含めた半導体基体110の表面上全域に絶縁膜128’を形成する(
図5(c)参照)。絶縁膜128’は、例えばCVD法によって形成された酸化膜である。
【0044】
(4)シールド電極形成工程
次に、絶縁膜128’の表面上全域にポリシリコン126’を堆積させる(
図5(d)参照)。このとき、トレンチ120内及び最外周トレンチ160内においては、絶縁膜128’を介してポリシリコン126’が堆積する。次に、トレンチ120内の所定の高さ位置まで堆積されている分及び最外周トレンチ160内に堆積されている分を残してポリシリコン126’をエッチングで除去する(
図6(a)参照)。具体的には、周辺領域A2におけるゲート配線GL1,GL2が形成される領域と重なる領域に挟まれた領域においては、トレンチ120内の略半分まで残し、周辺領域A2におけるGL1,GL2が形成される領域と重なる領域よりも外側(長辺X1側及び長辺X2側)においては、トレンチ120内の大部分を残してポリシリコン126’を除去する。残されたトレンチ120内のポリシリコン126’がシールド電極126となる。なお、最外周トレンチ160内のポリシリコン126’が埋込電極162となる。
【0045】
(5)絶縁領域形成工程
次に、絶縁膜128’及びシールド電極126上に、例えばCVD法によって絶縁膜128’’を形成する(
図6(b)参照)。次に、周辺領域A2における最外周トレンチ160及び埋込電極162上にマスク(図示せず)を形成する。次に、トレンチ120内におけるシールド電極126とトレンチ120の内周面との間、及び、トレンチ120内のシールド電極126上の絶縁膜128’’を残して絶縁膜128’及び絶縁膜128’’をエッチングにより除去する(
図6(c)参照)。シールド電極126上の絶縁膜128’’は絶縁領域128の一部を構成する。
【0046】
(6)ゲート絶縁膜形成工程
次に、半導体基体110上及びトレンチ内の絶縁領域128上に熱酸化膜122’を形成する(
図6(d)参照)。このとき、トレンチ120の側壁に形成された熱酸化膜122’がゲート絶縁膜122を構成する。また、絶縁膜128’及び絶縁膜128’’上の熱酸化膜122’は絶縁領域128の一部を構成する。
【0047】
(7)ゲート電極形成工程
次に、熱酸化膜122’上にポリシリコン層124’を形成する(
図7(a)参照)。次に、トレンチ120内の熱酸化膜122’(ゲート絶縁膜122)で挟まれた部分を残してポリシリコン層124’をエッチングして除去する(
図7(b)参照)。これにより、複数のトレンチ120それぞれの内部にゲート絶縁膜122を介して複数のゲート電極124を形成する。
【0048】
(8)層間絶縁膜形成工程
次に、周辺領域A2のマスクを除去する。次に、半導体基体110の表面全体に層間絶縁膜130を形成する(
図7(c)参照)。
【0049】
(9)コンタクトトレンチ形成工程
次に、隣接するトレンチに挟まれた領域のうちの所定の領域(実施形態1においては中央)をエッチングすることにより、半導体基体110のソース領域114の最底部よりも深い位置、かつ、ベース領域113に接する深さのコンタクトトレンチ132を形成する(
図7(d)参照)。このとき、コンタクトトレンチ132の長辺X1側の端部及び長辺X2側の端部においては、p型周辺領域117と接するように形成する。また、周辺領域A2において埋込電極162上の所定の位置、シールド電極126の端部となる位置、及びゲート電極124の端部となる位置にコンタクトホールを形成し、それぞれコンタクトプラグを形成する(図示せず)。
【0050】
(10)第1のp型不純物導入工程(第2導電型不純物導入工程)
次に、コンタクトトレンチ132の領域に開口を有するマスク(図示せず)を半導体基体110の表面側全体に形成する。次に、コンタクトトレンチ132の底部に、不純物濃度のピーク位置が、ベース領域113の底部よりも深くなるようにp型不純物(例えば、ボロン)を注入する(
図8(a)参照)。このとき、p型不純物の飛程をRpとし、半導体基体110とソース電極140のコンタクト位置からベース領域の底部までの長さをD(
図1(a)参照)としたときに、Rp>Dを満たす。第1の第2導電型不純物導入工程におけるp型不純物のドーズ量は、ベース領域を形成するp型不純物のドーズ量(ベース領域113をイオン注入によって形成するときのドーズ量)よりも少ない。
【0051】
(11)第2のp型不純物導入工程
次に、コンタクトトレンチ132の底部に、不純物濃度のピーク位置が、ベース領域113の底部よりも浅くなるようにp型不純物(例えば、ボロン)を注入する(
図8(b)参照)。このとき、p型不純物の飛程をRpとし、半導体基体110とソース電極140のコンタクト位置からベース領域の底部までの長さをDとしたときに、Rp<Dを満たす。また、第2の第2導電型不純物導入工程におけるp型不純物のドーズ量は、ベース領域を形成するp型不純物のドーズ量(ベース領域113をイオン注入によって形成するときのドーズ量)よりも多い。
【0052】
(12)張り出し領域及びコンタクト領域形成工程
次に、半導体基体110を加熱して、p型不純物を拡散させることにより、p型の張り出し領域115及びコンタクト領域116を形成する(
図8(c)参照)。このとき、p型の張り出し領域115は、隣接するトレンチ120で挟まれた領域において、トレンチ120とは離隔し、かつ、ベース領域113の底部からドリフト層112に向けて張り出すように形成され、最深部の深さ位置がトレンチ120の最深部の深さ位置よりも浅く、深さ方向断面の不純物総量が、ベース領域113の深さ方向断面の不純物総量よりも少なくなるように形成する。
【0053】
(13)表面電極及び裏面電極形成工程
次に、第1のp型不純物導入工程及び第2のp型不純物導入工程で用いたマスクを除去する(図示せず)。次に、層間絶縁膜130及び半導体基体110上に金属膜を成膜し、エッチングすることにより、ソース電極140(
図5(d)参照),ソース配線SL1,SL2、ゲートパッドGP、ゲート配線GL1,GL2を形成する。このとき、コンタクトトレンチ132内にも金属膜が入り込み、コンタクトトレンチ132を介してベース領域113及びソース領域114と接続される。また、ゲート電極124の端部がコンタクトプラグSLCを介してソース配線SL1,SL2と接続され、シールド電極126の端部が、コンタクトプラグGLCを介してゲート配線GL1,GL2と接続される。また、半導体基体110の裏面側(低抵抗半導体層111側)の表面上にドレイン電極150(裏面電極)を形成する。
【0054】
このようにして、実施形態1に係る半導体装置100を形成することができる。
なお、(1)半導体基体準備工程において、あらかじめドリフト層112の表面に形成されたp型のベース領域113と、ベース領域113の表面全体に形成されたn型(n+型)のソース領域114とを有する半導体基体を準備したが、これに限らず、低抵抗半導体層111及びドリフト層112が形成された半導体基体を準備して(2)トレンチ形成工程から(7)ゲート電極形成工程までを実施し、(7)ゲート電極形成工程の後にp型のベース領域113と、n型(n+型)のソース領域114を形成しても良い。
【0055】
3.試験例1
試験例1は、張り出し領域115を形成することにより、ベース領域113に流れ込む正孔の経路が広がることを確認するための試験例である。
【0056】
(1)試料について
比較例1に係る半導体装置800は、張り出し領域が形成されていない点及びゲート電極の上面が中央部で凹んでいる点を除き、実施形態1に係る半導体装置と同様の半導体装置である(
図9(c)参照)。
実施例1に係る半導体装置100Aは、ゲート電極の上面が中央部で凹んでいる点を除き、実施形態1に係る半導体装置と同様の半導体装置である(
図9(a)参照)。
【0057】
(2)試験方法
比較例1及び実施例1についてコンピューターシミュレーションにより半導体基体の各領域におけるホール電流密度を算出し、色分けしてプロットした(
図9(b)及び(d)参照)。
【0058】
(3)結果
比較例1に係る半導体装置800において、ホール電流密度は、
図9(d)に示すように、ドリフト層812におけるトレンチ820と接する領域のみが高くなっていることがわかった。従って、アバランシェ降伏時において、トレンチ820の底部近傍で発生し、ベース領域813近傍にまで近づいたキャリア(ホール)は、そのままトレンチ820の縁に沿ってベース領域813に向かって移動し、ベース領域813におけるトレンチ820と接する領域に多量の正孔が流れ込むことがわかった。
【0059】
これに対して、実施例1に係る半導体装置100Aにおいて、ホール電流密度は、
図9(b)に示すように、ドリフト層112におけるトレンチ120と接する領域だけでなく、そこから張り出し領域115までの領域でホール電流密度が高くなっていることがわかった。従って、アバランシェ降伏時において、トレンチ120の底部近傍で発生し、ベース領域113近傍にまで近づいたキャリア(ホール)は、そのままトレンチ120の縁に沿ってベース領域113に向かって移動するだけでなく、張り出し領域115に向かっても流れ込み、張り出し領域115を経由してベース領域113へ流れ込む成分が生じることがわかった。従って、張り出し領域115を形成することにより、ベース領域113に流れ込む正孔の経路が広がることを確認することができた。
【0060】
4.試験例2
試験例2は、張り出し領域の深さ方向断面の不純物総量がベース領域113の深さ方向断面の不純物総量よりも少なくすることにより、アバランシェ降伏時において、隣接するトレンチの中間付近に電界が集中することを防ぐことができ、耐圧が低下することを防ぐことができることを確かめる試験例である。
【0061】
(1)試料について
比較例2は、張り出し領域が形成されていない点を除き、実施形態1に係る半導体装置と同様の半導体装置である(
図11(a)参照)。
実施例2、比較例3,4,5は、張り出し領域115のドーズ量がそれぞれ5×10
12cm
-3、6×10
12cm
-3、7×10
12cm
-3、1.0×10
13cm
-3である点を除き、実施形態1に係る半導体装置と同様の半導体装置である(
図11(b)~
図11(e)参照)。
なお、ベース領域のドーズ量は、5.8×10
12cm
-3とする。また、張り出し領域115は330KeVの加速エネルギーでp型不純物を打ちこみ、拡散させることによって形成されたものである。
【0062】
(2)試験方法
実施例2及び比較例2~5について、張り出し領域のドーズ量に対する耐圧を算出し、横軸が張り出し領域のドーズ量、縦軸が耐圧であるグラフ上にプロットした(
図10参照)。また、コンピューターシミュレーションにより半導体基体の各領域におけるインパクトイオン化率分布を算出し、色分けしてプロットした(
図11参照)。
【0063】
(3)結果1
図10に示すように、比較例2(張り出し領域なし)及び実施例2においては、耐圧はおよそ220Vであり、十分な耐圧を確保することができた。一方、比較例3においては、耐圧はおよそ200V強であり、比較例4においては、耐圧はおよそ190Vであり、比較例5においては、耐圧はおよそ170Vであった。このことから、比較例2(張り出し領域なし)及び実施例2においては、十分な耐圧を確保することができることが確認できた。一方、比較例3~5においては、十分な耐圧を確保することができなかった。従って、張り出し領域のドーズ量がベース領域のドーズ量よりも小さい場合には、耐圧が低下してしまうことが分かった。このことから、張り出し領域の深さ方向断面の不純物総量がベース領域113の深さ方向断面の不純物総量よりも少なくすることにより、耐圧が低下することを防ぐことができることを確かめることができた。
【0064】
(4)結果2
比較例3~5においては、インパクトイオン化が発生しやすい領域が、隣接するトレンチに挟まれた領域の中央付近(
図11(c)~(e)の破線Bで囲まれた領域)に形成されている(
図11(c)~
図11(e)参照)。これにより、アバランシェ降伏時において、(耐圧が低下しやすい)隣接するトレンチに挟まれた領域の中間付近に電界が集中して耐圧が低下してしまう。
これに対して、実施例2においては、インパクトイオン化が発生しやすい領域が中央からずれた位置(中央よりもトレンチ120側の位置)に形成されている(
図11(a)及び
図11(b)参照)。従って、インパクトイオン化が発生する領域を分散させることができる。従って、隣接するトレンチの中間付近に電界が集中することを防ぐことができ、この観点からも耐圧が低下することを防ぐことができることが確認できた。
【0065】
5.実施形態1に係る半導体装置100及び半導体装置の製造方法の効果
実施形態1に係る半導体装置100及び半導体装置の製造方法によれば、半導体基体110は、隣接するトレンチ120に挟まれた領域においてベース領域113の底部からドリフト層112に向けて張り出すように形成され、トレンチ120とは離隔しているp型の張り出し領域115を有するため、ベース領域113とドリフト層112との間のpn接合から縦方向に空乏層が広がるだけでなく、張り出し領域115の側面のpn接合から横方向にも空乏層が広がる。従って、トレンチ120と張り出し領域115との間のドリフト層112が空乏化し易くなるため、ドリフト層112の不純物濃度を高くした場合であっても、ドレイン電圧を必要以上に高くすることなくドリフト層112を空乏化することができる。その結果、ゲート・ドレイン間電荷量Qgdが小さくて済み、スイッチング損失及びゲート駆動損失を低減することができる。
また、ゲート・ドレイン間電荷量Qgdが小さくて済むことから、ゲートのオンオフの際にゲート・ドレイン間容量Cgdを充放電するためにかかる時間が短くて済み、スイッチング速度が速くなる。すなわち、ゲート・ドレイン間電荷量Qgdが充放電される期間(ミラー期間)において、ドレイン・ソース間電圧Vdsがそれぞれ、下降及び上昇するが、ゲート・ドレイン間電荷量Qgdが小さくて済むことから、スイッチング速度が速くなる
また、本構造を採用することでゲート・ドレイン間容量Cgdが削減され、Cgd/(Cgs+Cgd)が減少する。その結果、セルフターンオンまたはシュートスルーと呼ばれる、ゲートの誤点呼を抑制できる効果もある。
【0066】
また、実施形態1に係る半導体装置100及び半導体装置の製造方法によれば、上記した構成を有するため、アバランシェ降伏時において、トレンチ120底部近傍で生成された正孔が、ベース領域113におけるトレンチ120と接する領域だけでなく張り出し領域115にも流れ込むこととなる(
図9(a)及び(b)参照)。従って、ベース領域113に流れ込む正孔の経路が広がるため、局所的にベース領域113の電位が高くなることを防ぐことができ、寄生バイポーラ動作が起こることを防ぐことができる。
【0067】
ところで、張り出し領域115の深さ方向断面の不純物総量をベース領域113の深さ方向断面の不純物総量よりも多くした場合には、アバランシェ降伏時において、隣接するトレンチ120の中間付近にインパクトイオン化が発生し易くなってしまい、(耐圧が低下しやすい)隣接するトレンチ120の中間付近に電界が集中して耐圧が低下してしまう。例えば、ベース領域の下方にp-型半導体領域を形成し、その下にさらにベース領域よりも不純物濃度が濃いp領域を形成した場合、当該p領域周辺に電界が集中し、耐圧が低下してしまう。これに対して、実施形態1に係る半導体装置100及び半導体装置の製造方法によれば、張り出し領域の深さ方向断面の不純物総量が第2導電型半導体領域の深さ方向断面の不純物総量と同等又はそれよりも少ないため、アバランシェ降伏時において、インパクトイオン化がトレンチ周辺に発生し易く、隣接するトレンチ120の中間付近に発生し難くなる(
図11(a)参照)。従って、隣接するトレンチの中間付近に電界が集中することを防ぐことができ、耐圧が低下することを防ぐことができる。
【0068】
また、張り出し領域115の最深部の深さ位置が、トレンチ120の最深部の深さ位置よりも深い場合には、ソース・ドレイン間に電流を流した場合の電流経路が閉塞されるため、オン抵抗が高くなってしまう場合がある。例えば、スーパージャンクション構造を有する半導体装置は、ベース領域から下方に向かってp型領域が形成されるが、n型であるドリフト層とチャージバランスをとる必要があり、トレンチよりも深い領域までp型領域(p柱)が形成される。この場合には、p柱によってソース・ドレイン間に電流を流した場合の電流経路が閉塞されることから、オン抵抗が小さくなってしまう。これに対して、実施形態1に係る半導体装置100及び半導体装置の製造方法によれば、張り出し領域115の最深部の深さ位置は、トレンチ120の最深部の深さ位置よりも浅いため、ソース・ドレイン間に電流を流した場合でも電流経路が閉塞され難く、オン抵抗が低下し難くなる。
【0069】
また、実施形態1に係る半導体装置100によれば、層間絶縁膜130を貫通し、少なくとも半導体基体110のベース領域113に達する深さで形成されたコンタクトトレンチ132を備えるため、比較的大きな電流を流すことができるとともに、ドリフト層112からベース領域113に流れ込む、又は、張り出し領域115を経由してベース領域113に流れ込むホールを引き抜きやすくなる。また、張り出し領域115は、コンタクトトレンチ132の下方に形成されているため、張り出し領域115を経由してベース領域113に流れ込むホールを引き抜きやすくなる。さらにまた、上記した構成を有するため、コンタクトトレンチ132の底部にイオン注入することで比較的低い電圧で張り出し領域115を形成するためのイオン注入をすることができる。
【0070】
また、実施形態1に係る半導体装置100によれば、ソース領域114は、コンタクトトレンチ132の側面に接しているため、コンタクトトレンチ132はソース領域114の深さ位置よりも深い深さ位置まで形成されていることとなる。これにより、コンタクトトレンチ132の底部にイオン注入することでより一層低電圧で張り出し領域115を形成するためのイオン注入をすることができる。
【0071】
また、実施形態1に係る半導体装置100によれば、半導体基体110は、コンタクトトレンチ132の底部と接する領域に形成され、ベース領域113よりも不純物濃度が高いp型のコンタクト領域116を有するため、ソース電極140との接触抵抗を低減することができる。また、コンタクトトレンチ132の底部に形成されているため、比較的低電圧でコンタクト領域116を形成することができる。
【0072】
また、実施形態1に係る半導体装置100によれば、張り出し領域115は、隣接するトレンチ120に挟まれた領域の中央に形成されているため、張り出し領域115の両側面から各トレンチに向かって横方向に空乏層が延びることによって、張り出し領域115と隣接するトレンチ120との間の領域を均等に空乏化することができる。このため、耐圧を高くすることができる。
【0073】
また、実施形態1に係る半導体装置100によれば、トレンチ120内において、ゲート電極124及びトレンチ120の内周面と離隔した位置に形成されたシールド電極126と、ゲート電極124とシールド電極126との間、及び、シールド電極126とトレンチ120内周面との間に形成された絶縁領域128とを備えるため、ゲート電極124からトレンチ120の底部までの距離が長くなるため、ゲート・ドレイン間容量Cgdが低減し、スイッチング速度を速くすることができる。また、電界集中が起こりやすいトレンチ120の角部からゲート電極124までの距離を長くすることができ、かつ、絶縁領域128によって電界を緩和することができるため、耐圧を高くすることができる。
【0074】
また、実施形態1に係る半導体装置100は、周辺領域A2において、半導体基体110は、ドリフト層112の表面に形成され、ベース領域113と接続されており、かつ、最底部の深さ位置が、ベース領域113の最底部の深さ位置よりも深いp型周辺領域117を有し、p型周辺領域117の不純物濃度は、ベース領域113の不純物濃度よりも濃い。このような構成を有するため、トレンチ120を形成しない周辺領域A2においてもドリフト層112で発生したホールを効率よく回収することができ、高い耐圧及びアバランシェ耐量を確保した半導体装置となる。
【0075】
また、実施形態1に係る半導体装置100は、p型周辺領域117は、セル領域A1に形成されたソース電極140と直接接しているため、p型周辺領域117の電位がソース電位と等しくすることができるとともに、回収したホールを効率よくソース電極140へと移動させることができる。
【0076】
また、実施形態1に係る半導体装置の製造方法によれば、張り出し領域115を形成するp型不純物の飛程をRpとし、半導体基体110がソース電極140と接する位置からベース領域113の底部までの長さをDとしたときに、Rp>Dを満たすため、ベース領域113の底部よりも深い深さ位置に張り出し領域115を形成することができる。
【0077】
また、実施形態1に係る半導体装置の製造方法によれば、第1のp型不純物導入工程における張り出し領域115を形成するp型不純物のドーズ量は、ベース領域113を形成するp型不純物のドーズ量よりも少ないため、張り出し領域115の深さ方向断面の不純物総量をベース領域113の深さ方向断面の不純物総量よりも小さくすることができる。
【0078】
[実施形態2]
実施形態2に係る半導体装置102は、基本的には実施形態1に係る半導体装置100と同様の構成を有するが、シールドゲート構造を有しない点で実施形態1に係る半導体装置100の場合とは異なる(
図12参照)。すなわち、実施形態2に係る半導体装置102は、シールド電極126及び絶縁領域128を備えておらず、トレンチ120内には、内周面に沿って形成された絶縁膜(側壁表面の絶縁膜がゲート絶縁膜122となる)と、トレンチ120内に絶縁膜を介して配置されたゲート電極124を有する。
【0079】
このように、実施形態2に係る半導体装置102は、シールドゲート構造を有しない点で実施形態1に係る半導体装置100の場合とは異なるが、実施形態1に係る半導体装置100の場合と同様に、半導体基体は、隣接するトレンチに挟まれた領域において第2導電型半導体領域の底部から第1導電型半導体層に向けて張り出すように形成され、トレンチとは離隔している第2導電型の張り出し領域を有するため、ドリフト層112の不純物濃度を高くした場合であっても、スイッチング損失及びゲート駆動損失が小さく、かつ、寄生バイポーラ動作が起こり難い半導体装置とすることができる。
【0080】
なお、実施形態2に係る半導体装置102は、シールドゲート構造を有しない点以外の点においては実施形態1に係る半導体装置100と同様の構成を有するため、実施形態1に係る半導体装置100が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0081】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0082】
(1)上記各実施形態(各変形例も含む。以下同じ。)において記載した位置、大きさ等は例示であり、本発明の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。また、上記各実施形態においては、第1導電型をn型、第2導電型をp型として説明したが、第1導電型をp型、第2導電型をn型としてもよい。
【0083】
(2)上記各実施形態においては、コンタクトトレンチをソース領域114の底部の深さ位置よりも深い深さで形成したが、本発明はこれに限定するものではない。コンタクトトレンチをソース領域114の底部と同じ深さ又はそれよりも浅い深さで形成しでもよいし、ベース領域113が半導体基体110の表面に現れている場合には、半導体基体を掘らずに半導体基体110に接することとしてもよい。
【0084】
(3)上記各実施形態においては、ソース電極とソース配線とを接続したが、本発明はこれに限定するものではない。ソース電極とソース配線とを接続しなくてもよい。
【0085】
(4)上記各実施形態においては、張り出し領域115を1つ形成したが、本発明はこれに限定するものではない。張り出し領域115を複数形成してもよい。また、上記各実施形態においては、張り出し領域115を隣接するトレンチ120の中央に形成したが、本発明はこれに限定するものではない。張り出し領域115を隣接するトレンチ120の中央以外の場所に形成してもよい(隣接するトレンチ120の中央を避けた位置に張り出し領域を2つ形成した場合、
図13参照。変形例に係る半導体装置104)。
【0086】
(5)上記各実施形態においては、半導体装置としてMOSFETを用いたが、本発明はこれに限定するものではない。半導体装置として、IGBT、サイリスタ、トライアックその他適宜のものを用いてもよい。
【0087】
(6)上記各実施形態においては、張り出し領域115の深さ方向断面の不純物総量をベース領域113の深さ方向断面の不純物総量よりも少ないこととしたが、本発明はこれに限定するものではない。張り出し領域115の深さ方向断面の不純物総量をベース領域113の深さ方向断面の不純物総量と同じ不純物総量としてもよい。
【符号の説明】
【0088】
100,100A,900…半導体装置、110,910…半導体基体、111,911…低抵抗半導体層、112,912…ドリフト層、113、913…ベース領域、114,914…ソース領域、115…張り出し領域、116…コンタクト領域、117…p型周辺領域、120,920…トレンチ、122,922…ゲート絶縁膜、122'・M酸化膜、124,924…ゲート電極、124'・|リシリコン層、126,926…シールド電極、126'・|リシリコン、128,928…絶縁領域、128',128''…絶縁膜、130…層間絶縁膜、132…コンタクトトレンチ、140,940…ソース電極、150…ドレイン電極、160…最外周トレンチ、162…埋込電極、164…絶縁領域、A1…セル領域、A2…周辺領域、GL1,GL2…ゲート配線、GLC,SLC,SLC2,SLC3…コンタクトプラグ、GP…ゲートパッド、SL1,SL2…ソース配線、X1,X2…長辺、X3,X4…短辺