(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114562
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】構造物の移動制限装置
(51)【国際特許分類】
E01D 19/04 20060101AFI20230810BHJP
【FI】
E01D19/04 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016943
(22)【出願日】2022-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504242342
【氏名又は名称】株式会社免制震ディバイス
(74)【代理人】
【識別番号】100095566
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 友雄
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(72)【発明者】
【氏名】岩田 秀治
(72)【発明者】
【氏名】土屋 正宏
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佑斗
(72)【発明者】
【氏名】中南 滋樹
(72)【発明者】
【氏名】木田 英範
(72)【発明者】
【氏名】掛本 啓太
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA33
2D059GG33
2D059GG59
(57)【要約】
【課題】中小規模地震時には、上部構造の移動をストッパによって制限し、大規模地震時には、ストッパが破断した際の衝撃荷重を緩和し、上部構造の振動を良好に抑制できる構造物の移動制限装置を提供する。
【解決手段】本発明による構造物の移動制限装置DAは、上部構造USと下部構造LSの間に設けられ、水平方向の外力が所定値未満のときに、下部構造LSに対する上部構造USの移動を機械的に制限するとともに、水平方向の外力が所定値に達したときに破断し、上部構造USの移動制限を解除するストッパSAと、上部構造USと下部構造LSの間に設けられ、回転マス23及び粘性体30を有し、上部構造USと下部構造LSとの間の水平方向の相対変位を回転マス23の回転に変換することにより、回転マス23の回転慣性質量効果と粘性体30の粘性減衰効果によって、上部構造USの振動を抑制する粘性マスダンパD1と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部構造と、当該下部構造に水平方向に移動自在に支持された上部構造を有する構造物において、前記上部構造の移動を制限する構造物の移動制限装置であって、
前記上部構造と前記下部構造の間に設けられ、水平方向の外力が所定値未満のときに、前記下部構造に対する前記上部構造の移動を機械的に制限するとともに、前記水平方向の外力が前記所定値に達したときに破断し、前記上部構造の移動制限を解除するストッパと、
前記上部構造と前記下部構造の間に設けられ、回転マス及び粘性体を有し、前記上部構造と前記下部構造との間の水平方向の相対変位を前記回転マスの回転に変換することにより、前記回転マスの回転慣性質量効果と前記粘性体の粘性減衰効果によって、前記上部構造の振動を抑制する粘性マスダンパと、
を備えることを特徴とする構造物の移動制限装置。
【請求項2】
前記ストッパは、前記粘性マスダンパと前記下部構造の間に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の構造物の移動制限装置。
【請求項3】
前記粘性マスダンパは、前記回転マスに直列に連結された支持部材を有し、前記回転マスの等価質量及び前記支持部材のばね定数は、当該等価質量及び当該ばね定数に応じて定まる前記粘性マスダンパの固有振動数が、前記ストッパの破断時に発生する衝撃荷重の振動数よりも小さい所定振動数になるように設定されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の構造物の移動制限装置。
【請求項4】
前記ストッパは、前記上部構造と前記下部構造の間を緊結するボルトを有することを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の構造物の移動制限装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下部構造に水平方向に移動自在に支持された上部構造を有する構造物において、上部構造の移動を制限する構造物の移動制限装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の構造物の移動制限装置として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。この構造物は橋梁であり、下部構造としての橋脚と、橋脚に水平方向に移動自在に支持された、上部構造としての橋桁を有する。移動制限装置は、橋桁に一体に連結された上沓鋼板と、橋脚に一体に連結された下沓鋼板を備えており、上沓鋼板と下沓鋼板の間にゴム支承が介在している。ゴム支承は、複数のゴム層及び複数の金属板を積層した積層体と、積層体の上下面にそれぞれ接合された上下のフランジを有しており、上沓鋼板と下沓鋼板の間にボルトによって取り付けられている。
【0003】
上沓鋼板には、橋軸方向に延びる切欠が形成され、下沓鋼板の上面には、サイドブロックが一体に設けられている。サイドブロックには、上方に突出する2つのストッパ(凸部)が、橋軸方向に互いに間隔を隔てて設けられている。これらの2つのストッパは、上沓鋼板の切欠に入り込むとともに、切欠の橋軸方向の両縁部との間に所定の間隔を隔てるように配置されている。
【0004】
この構成では、例えば中小規模地震時においては、上部構造が下部構造に対して橋軸方向に移動するのに伴い、上沓鋼板の切欠の縁部が下沓鋼板のストッパに当接することによって、下部構造に対する上部構造の移動が制限される。また、大規模地震時においては、切欠の縁部からストッパに作用する水平力が限界値に達することで、ストッパがせん断によって破断する。これにより、上部構造の移動制限が解除され、上部構造がゴム支承で免震化されることによって、その損傷などが低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した移動制限装置では、大規模地震時にストッパが破断するのに伴い、衝撃荷重が発生し、ゴム支承を含む免制震装置を介して上部構造に伝達されるおそれがある。その場合、橋梁が鉄道橋であり、ストッパの破断タイミングで、上部構造の線路上を列車が走行中のときには、列車の走行安定性を十分に確保することができない。また、ストッパの破断時に、衝撃荷重が免制震装置に作用することによって、免制震装置の動作に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、中小規模地震時には、上部構造の移動をストッパで制限し、その変位を十分に抑制するとともに、大規模地震時には、ストッパが破断した際の衝撃荷重を緩和し、上部構造の振動を良好に抑制することができる構造物の移動制限装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、下部構造と、下部構造に水平方向に移動自在に支持された上部構造を有する構造物において、上部構造の移動を制限する構造物の移動制限装置であって、上部構造と下部構造の間に設けられ、水平方向の外力が所定値未満のときに、下部構造に対する上部構造の移動を機械的に制限するとともに、水平方向の外力が所定値に達したときに破断し、上部構造の移動制限を解除するストッパと、上部構造と下部構造の間に設けられ、回転マス及び粘性体を有し、上部構造と下部構造との間の水平方向の相対変位を回転マスの回転に変換することにより、回転マスの回転慣性質量効果と粘性体の粘性減衰効果によって、上部構造の振動を抑制する粘性マスダンパと、を備えることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、上部構造と下部構造の間にストッパが設けられており、地震時、ストッパに作用する水平方向の外力が所定値未満の場合、下部構造に対する上部構造の移動がストッパによって機械的に制限される。この場合、上部構造と下部構造との間の相対変位が非常に小さいため、粘性マスダンパは実質的に作動せず、上部構造の挙動には影響を及ぼさない。したがって、上記の所定値を、例えば中小規模地震時に発生すると想定される外力の最大値に相当する値に設定することによって、中小規模地震時に、上部構造の移動を制限し、その変位を十分に抑制することができる。
【0010】
一方、水平方向の外力が所定値に達すると、ストッパが破断することで、上部構造の移動制限が解除される。これに伴い、上部構造が移動し、下部構造との間の相対変位が粘性マスダンパの回転マスの回転に変換されることによって、回転マスの回転慣性質量効果と粘性体の粘性減衰効果が発揮される。これにより、大規模地震時に、上部構造の振動を良好に抑制することができる。また、粘性マスダンパは、ストッパが破断する際に発生する衝撃荷重(衝撃波)をフィルタリングする機能を有する。これにより、ストッパの破断時の衝撃荷重を緩和し、ダンパを介して伝達される衝撃荷重が上部構造に及ぼす悪影響を抑制することができる。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の構造物の移動制限装置において、ストッパは、粘性マスダンパと下部構造の間に配置されていることを特徴とする。
【0012】
この構成では、ストッパが上記のように配置されているため、上部構造、粘性マスダンパ、ストッパ及び下部構造が、この順で直列に連結された関係になる。このため、ストッパの破断によって発生した衝撃荷重は、上部構造に伝達される前に、粘性マスダンパを必ず通り、粘性マスダンパで緩和される。これにより、粘性マスダンパのフィルタリング機能が十分に発揮されることによって、衝撃荷重による上部構造への悪影響を確実に抑制することができる。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の構造物の移動制限装置において、粘性マスダンパは、回転マスに直列に連結された支持部材を有し、回転マスの等価質量及び支持部材のばね定数は、当該等価質量及び当該ばね定数に応じて定まる粘性マスダンパの固有振動数が、ストッパの破断時に発生する衝撃荷重の振動数よりも小さい所定振動数になるように設定されていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、粘性マスダンパの回転マスの等価質量と、回転マスに直列に連結された支持部材のばね定数により、粘性マスダンパの固有振動数が、ストッパの破断時に発生する衝撃荷重の振動数よりも小さい所定振動数に設定されている。粘性マスダンパは、入力された振動のうち、自身の固有振動数よりも高い振動数の成分を通さないというフィルタリング機能を有する。したがって、粘性マスダンパの固有振動数を上記のように設定することにより、ストッパの破断時の衝撃荷重を良好に緩和でき、衝撃荷重による上部構造への悪影響をさらに抑制することができる。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項1から3のいずれかに記載の構造物の移動制限装置において、ストッパは、上部構造と下部構造の間を緊結するボルトを有することを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、例えばボルト1本あたりの破断荷重や本数などを設定することによって、所望の機能をストッパ、すなわち、水平方向の外力が所定値未満のときに、上部構造の移動を機械的に制限し、水平方向の外力が所定値に達したときに破断するストッパを容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態による移動制限装置を適用した鉄道橋を示す(a)平面図、及び(b)正面図である。
【
図2】
図1の移動制限装置の(a)部分拡大正面図、(b)モデル図、及び(c)荷重-変位特性図である。
【
図4】第1実施形態の変形例による移動制限装置の部分拡大正面図である。
【
図5】第2実施形態による移動制限装置の(a)正面図、及び(b)モデル図である。
【
図6】(a)ストッパと粘性マスダンパを併用した場合のモデル図、及び(b)ストッパと鋼材ダンパや積層ゴム支承などを併用した場合のモデル図である。
【
図7】第3実施形態による移動制限装置の(a)正面図、(b)矢印X部の部分拡大図、及び(c)モデル図である。
【
図8】L1地震動を入力した場合の時刻歴応答解析によって得られた第2層の(a)加速度、(b)速度、及び(c)変位を示す図である。
【
図9】
図8と同様の場合の時刻歴応答解析によって得られた粘性マスダンパの反力を示す図である。
【
図10】L2地震動を入力した場合の時刻歴応答解析によって得られた第2層の(a)加速度、(b)速度、及び(c)変位を示す図である。
【
図11】
図10と同様の場合の時刻歴応答解析によって得られた粘性マスダンパ及びストッパの反力を示す図である。
【
図12】動的加振実験に用いた実験装置を示す図である。
【
図13】L1地震動の場合の動的加振実験の(a)入力波、(b)粘性マスダンパ及び支持部材の変位を示す図である。
【
図14】L2地震動の場合の動的加振実験の(a)入力波、(b)粘性マスダンパ及び支持部材の変位を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1及び
図2は、本発明の第1実施形態による移動制限装置DAを、これを適用した鉄道橋2とともに示す。移動制限装置DAは、ストッパSA及び粘性マスダンパD1を備える。
【0019】
この移動制限装置DAは、常時や中小規模地震時には、鉄道橋2の上部構造USの線路と直角方向(以下「線路直交方向」という)の移動をストッパSAが機械的に制限し、線路直交方向の変位を抑制することによって、列車Tの走行安定性を確保する。一方、大規模地震時には、ストッパSAのボルトBが破断し、粘性マスダンパD1が作動することによって、ストッパSAの破断時の衝撃荷重を緩和するとともに、上部構造USの線路直交方向の振動を抑制するものである。
【0020】
図1(b)に示すように、鉄道橋2は、上部構造USと、上部構造USを支持する下部構造LSに大別される。上部構造USにはレール(図示せず)が敷設され、レール上を列車Tが走行する。
【0021】
上部構造USは、橋梁の支間方向に延びる複数の主桁3と、主桁3に直交する方向に延び、主桁3の両端部及び2箇所の中間部に連結された複数の受桁4を有する。下部構造LSは、複数のRC橋脚9及びこれを支持するケーソン基礎10と、複数の鋼製橋脚11を有する。
【0022】
上部構造USは、複数の支承を介して、下部構造LSに支持されている。具体的には、主桁3の一端部では固定支承5を介して、他端部では可動支承6を介して、それぞれRC橋脚9及びケーソン基礎10に支持されている。また、主桁3の中間部において、受桁4の一端部では、ゴム製などのすべり支承7を介して、RC橋脚9及びケーソン基礎10に支持され、受桁4の他端部では、ピボット支承8を介して、鋼製橋脚11に支持されている。
【0023】
ピボット支承8は、上下方向に延びる支柱部8aと、支柱部8aの上下の端部にそれぞれ回動自在に連結された上下のピボット部8b、8cを有する。ピボット支承8は、ピボット部8b、8cを介して、上部構造USと鋼製橋脚11にそれぞれ連結されており、それにより、上部構造USを回動自在に支持する。
【0024】
図1(b)及び
図2(a)に示すように、移動制限装置DAは、下部構造LSの鋼製橋脚11と上部構造USの受桁4の間に設けられており、粘性マスダンパD1、支持部材D2、第1接続部材D3及び第2接続部材D4を備えている。
【0025】
支持部材D2は、下端部が鋼製橋脚11に固定され、上方に延びている。支持部材D2は、粘性マスダンパD1のばね定数(剛性)を調整するためのものであり、必要なばね定数に応じて、鋼材や、比較的柔らかい低剛性の部材、例えばゴムユニットで構成されている。第1及び第2接続部材D3、D4は、粘性マスダンパD1をそれぞれ支持部材D2及び受桁4に接続するものである。第1及び第2接続部材D3、D4はそれぞれ、所定の剛性を有する、H形鋼などの鋼材で構成されており、支持部材D2及び受桁4にボルトなどで固定され、線路直交方向に互いに対向している。
【0026】
図3に示すように、粘性マスダンパD1は、ボールねじ式のものであり、内筒21、ボールねじ22、回転マス23、及び軸力制限機構24を備える。内筒21は、円筒状の鋼材で構成されており、その一端部は開口し、他端部は、自在継手25aを介して第1フランジ25に取り付けられている。
【0027】
ボールねじ22は、ねじ軸22aと、ねじ軸22aに多数のボール22bを介して螺合するナット22cを有し、内筒21と同軸状かつ直列に配置されている。ねじ軸22aの一端部は、内筒21に収容されており、ねじ軸22aの他端部は、自在継手26aを介して第2フランジ26に取り付けられている。ナット22cの一端部は、クロスローラベアリング27を介して内筒21に嵌合しており、それにより、ナット22cは、内筒21に回転自在に支持されている。
【0028】
回転マス23は、比重の大きな材料、例えば鉄で構成され、円筒状に形成されており、内筒21及びボールねじ22の外側に同軸状に配置されている。回転マス23の第1フランジ25側の端部は、ラジアルベアリング28を介して、内筒21に嵌合しており、それにより、回転マス23は内筒21に回転自在に支持されている。また、回転マス23と内筒21の間には、一対のリング状のシール材29、29が設けられている。これらのシール材29、29、回転マス23及び内筒21によって画成された空間には、シリコンオイルなどで構成された粘性体30が充填されている。
【0029】
以上の構成では、内筒21とねじ軸22aの間に相対変位(以下、適宜「ダンパ変位」という)が発生すると、この相対変位がボールねじ22でナット22cの回転運動に変換され、軸力制限機構24を介して回転マス23に伝達されることによって、回転マス23が回転する。これにより、回転マス23による回転慣性質量効果が発揮されるとともに、内筒21と回転マス23との間に配置された粘性体30による粘性減衰効果が発揮される。
【0030】
軸力制限機構24は、粘性マスダンパD1の回転変換動作を制限することで、粘性マスダンパD1の反力(軸力)(以下、適宜「ダンパ反力」という)を制限するものである。軸力制限機構24は、回転マス23とナット22cの間に配置されたリング状の回転滑り材24aと、回転滑り材24aをナット22cに押し付けるとともに、その押付け力を調整するための複数のねじ24b及びばね24cで構成されている。
【0031】
この構成では、粘性マスダンパD1の軸力(ダンパ反力)が、ねじ24bの締付度合に応じて定まる制限荷重に達すると、回転滑り材24aとナット22cまたは回転マス23との間に滑りが発生することで、粘性マスダンパD1の回転変換動作が制限され、ダンパ反力の過大化が防止される。なお、ダンパ反力を制限する必要性が低い場合には、軸力制限機構24は省略することが可能である。
【0032】
以上の構成の粘性マスダンパD1は、
図2(a)に示すように、第1及び第2接続部材D3、D4の間に水平に設けられ、ねじ軸22a側が第1接続部材D3に、内筒21側が第2接続部材D4にそれぞれ連結されている。なお、この連結関係を左右逆にしてもよく、すなわち、ねじ軸22a側を第2接続部材D4に連結し、内筒21側を第1接続部材D3に連結してもよい。
【0033】
ストッパSAは、連結板S1と、複数のボルトBを有する。連結板S1は、高い剛性を有する部材、例えば鋼材で構成されており、
図2(a)に示すように、受桁4の下面にボルト止めされるとともに、第1接続部材D3に複数のボルトBで緊結されている。このように、ストッパSAは、第1接続部材D3と受桁4の間に、粘性マスダンパD1及び第2接続部材D4の直列体と並列に設けられている。ボルトBのせん断面(軸方向に直交する面)は、受桁4の下面に対して直角に配置されている。
【0034】
以上の構成から、
図2(c)に示すように、ストッパSAは、ボルトBに作用する水平方向の荷重(外力)Fsが所定値Frに達するまでは線形的に変位する一方、荷重Fsが所定値Frに達したときにボルトBが破断(せん断破壊)し、荷重Fsが0になるという特性を有する。また、本実施形態では、ボルトBの1本あたりの破断荷重及び本数などは、大規模地震時(L2地震動)において、ストッパSAに作用する水平方向の外力が所定値に達したときに、ボルトBが破断するように設定されている。
【0035】
以上の構成から、移動制限装置DAは、
図2(b)のようにモデル化される。まず、粘性マスダンパD1は、軸力制限機構24が省略されている場合、等価質量(見掛けの質量)がmdである回転マス23から成る慣性接続要素と、減衰係数がcdである粘性体30から成る粘性減衰要素との並列体で表される。これらの並列体は、互いに直列の第1接続部材D3及び支持部材D2から成るばね要素を介して、鋼製橋脚11に接続されるとともに、第2接続部材D4から成るばね要素を介して、受桁4に接続されている。さらに、ストッパSAのボルトBから成るばね破断要素が、第1接続部材D3と受桁4の間に、粘性マスダンパD1及び第2接続部材D4の直列体と並列に接続されたモデルになる。
【0036】
また、この移動制限装置DAにおいて、粘性マスダンパD1に直列に接続された第1接続部材D3、支持部材D2及び第2接続部材D4を1つの直列ばねとして縮約し、それら全体のばね定数をkとすると、ストッパSAが破断した後の粘性マスダンパD1の固有周期T(固有振動数f)は、次式(1)によって表される。本実施形態では、この固有振動数fは、ストッパSAの破断時に発生すると想定される衝撃荷重(衝撃波)の振動数よりも若干小さい所定振動数frに設定されており、この所定振動数frが得られるよう、回転マス23の等価質量mdと支持部材D2のばね定数が設定されている。
T= 1/f= sqrt(md/k) ・・・(1)
【0037】
以上の構成の移動制限装置DAによれば、常時や中小規模地震時(L1地震動)においては、上部構造USが下部構造LSに対して線路直交方向に移動しようとしても、この上部構造USの移動がストッパSAで機械的に制限され、線路直交方向の変位が抑制されることによって、列車Tの走行安定性を確保することができる。
【0038】
一方、大規模地震時(L2地震動)においては、ストッパSAに作用する線路直交方向の外力が所定値に達することによって、ボルトBがせん断によって破断する。これにより、上部構造USの移動制限が解除され、上部構造USと下部構造LSが相対的に変位するようになり、この相対変位が伝達されることによって、粘性マスダンパD1が作動する。その結果、粘性マスダンパD1の回転マス23による回転慣性質量効果と粘性体30による粘性減衰効果が発揮されることによって、上部構造USの振動を良好に抑制でき、その損傷などを低減することができる。
【0039】
また、前述したように、ストッパSAを除く粘性マスダンパD1の固有振動数fは、ストッパSAの破断時に発生すると想定される衝撃荷重(衝撃波)の振動数よりも若干小さい所定振動数frに設定されている。このため、直列ばねを有する粘性マスダンパD1のフィルタリング機能により、ストッパ破断時のダンパを介して伝達される衝撃荷重のうちの固有振動数f以上の成分の上部構造US側への伝達が抑制される。このように粘性マスダンパD1のフィルタリング機能が発揮される結果、ストッパ破断時の衝撃荷重を良好に緩和し、上部構造USへの悪影響を抑制することができる。
【0040】
図4は、上述した第1実施形態の変形例による移動制限装置DA’を示す。同図及び他の移動制限装置を示す後述の図面において、第1実施形態と同じ又は同等の構成要素には、同じ参照符号が付されている。前述したように、第1実施形態では、ストッパSAは、受桁4にボルト止めされた連結板S1と、連結板S1を第1接続部材D3に緊結する複数のボルトBで構成され、ボルトBのせん断面は、受桁4の下面に対して直角に配置されている。
【0041】
これに対し、変形例による移動制限装置DA’では、ストッパSA’は、受桁4にボルト止めされた第1ストッパ部材S2と、第1ストッパ部材S2にボルト止めされた第2ストッパ部材S3と、連結板S4を介して第2ストッパ部材S3を第1接続部材D3に緊結する複数のボルトBなどで構成され、ボルトBのせん断面は、受桁4の下面に対して平行に配置されている。第1及び第2ストッパ部材S2、S3、連結板S4はいずれも、高い剛性を有する部材、例えば鋼材で構成されている。他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0042】
以上の構成から、この移動制限装置DA’のモデルは、第1実施形態とまったく同じであり、
図2(b)のように表される。したがって、移動制限装置DA’によれば、前述した第1実施形態による効果を同様に得ることができる。
【0043】
図5は、第2実施形態による移動制限装置DBを示す。この移動制限装置DBでは、ストッパSBは、例えば鋼材で構成された第1及び第2ストッパ部材S5、S6、連結板S7と、複数のボルトBなどで構成されている。第1ストッパ部材S5は、下端部において鋼製橋脚11にボルト止めされ、上方に延びている。第2ストッパ部材S6は、第1ストッパ部材S5にボルト止めされるとともに、補強部材S7を介して、第1接続部材D3に複数のボルトBで緊結されている。ボルトBのせん断面は、受桁4の下面に対して平行に配置されている。他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0044】
以上の構成から、移動制限装置DBは、
図5(b)のようにモデル化される。まず、第1実施形態と同様、粘性マスダンパD1は、等価質量がmdである回転マス23から成る慣性接続要素と、減衰係数がcdである粘性体30から成る粘性減衰要素との並列体で表される。これらの並列体は、互いに直列の第1接続部材D3及び支持部材D2から成るばね要素を介して、鋼製橋脚11に接続されるとともに、第2接続部材D4から成るばね要素を介して受桁4に接続されている。さらに、ストッパSBのボルトBから成るばね破断要素が、鋼製橋脚11と第1接続部材D3の間に、支持部材D2と並列に接続されたモデルになる。
【0045】
以上の構成の移動制限装置DBによれば、第1実施形態の移動制限装置DAと同様の動作及び効果を得ることができる。すなわち、例えば常時や中小規模地震時においては、下部構造LSに対する上部構造USの線路直交方向の移動を、ストッパSBで機械的に制限することによって、列車Tの走行安定性を確保することができる。一方、大規模地震時においては、線路直交方向の外力が所定値に達したときに、ストッパSBのボルトBがせん断で破断し、上部構造USの移動制限が解除され、粘性マスダンパD1が作動することによって、上部構造USの線路直交方向の振動を良好に抑制し、その損傷などを低減することができる。
【0046】
また、ストッパSBを除く粘性マスダンパD1の固有振動数fが所定振動数frに設定されているため、粘性マスダンパD1のフィルタリング機能により、ストッパ破断時の衝撃荷重のうちの固有振動数f以上の成分の上部構造US側への伝達が抑制される。本実施形態では特に、
図5(b)及び
図6(a)に示すように、支持部材D2から成るばね要素と並列のストッパSBが、粘性マスダンパD1を介してのみ受桁4に接続されているため、ストッパ破断時の衝撃荷重はすべて、粘性マスダンパD1を介して受桁4に伝達される。その結果、粘性マスダンパD1のフィルタリング機能が十分に発揮されることによって、ストッパSBの破断時の衝撃荷重を十分に緩和し、上部構造への悪影響を確実に抑制することができる。
【0047】
これに対し、例えばストッパSと鋼材ダンパや積層ゴム支承などを併用した場合には、
図6(b)に示すように、鋼材ダンパや積層ゴム支承などが、ストッパSと並列に接続されたばね要素で表され、フィルタリング機能をもたないため、ストッパSの破断時に衝撃荷重が受桁4側に伝達されてしまう。
【0048】
図7は、第3実施形態による移動制限装置DCを示す。同図(a)(b)に示すように、この移動制限装置DCでは、ストッパSCは、例えば鋼材で構成された第1及び第2ストッパ部材S8、S9、連結板S10と、複数のボルトBなどで構成されている。第1ストッパ部材S8は、上端部において受桁4にボルト止めされ、下方に延びており、その下端部に連結板S10が一体に設けられている。第2ストッパ部材S9は、下端部において鋼製橋脚11にボルト止めされ、上方に延びている。そして、第1ストッパ部材S8は、連結板S10を介して、第2ストッパ部材S9に複数のボルトBで緊結されている。ボルトBのせん断面は、受桁4の下面に対して直角に配置されている。他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0049】
以上の構成から、移動制限装置DCは、
図7(c)のようにモデル化される。まず、第1及び第2実施形態と同様、粘性マスダンパD1は、等価質量がmdである回転マス23から成る慣性接続要素と、減衰係数がcdである粘性体30から成る粘性減衰要素との並列体で表される。これらの並列体は、互いに直列の第1接続部材D3及び支持部材D2から成るばね要素を介して、鋼製橋脚11に接続されるとともに、第2接続部材D4から成るばね要素を介して受桁4に接続されている。さらに、ストッパSCのボルトBから成るばね破断要素が、受桁4と鋼製橋脚11の間に、上記の構成要素と並列に接続されたモデルになる。
【0050】
以上の構成の移動制限装置DCによれば、第1実施形態の移動制限装置DAと同様の動作及び効果を得ることができる。すなわち、例えば常時や中小規模地震時においては、上部構造USの線路直交方向の移動を、ストッパSCで機械的に制限することによって、列車Tの走行安定性を確保できる。一方、大規模地震時においては、線路直交方向の外力が所定値に達したときに、ストッパSCのボルトBがせん断で破断し、粘性マスダンパD1が作動することで、上部構造USの線路直交方向の振動を良好に抑制し、その損傷などを低減できる。
【0051】
また、ストッパSCを除く粘性マスダンパD1の固有振動数fが所定振動数frに設定されているため、粘性マスダンパD1のフィルタリング機能により、ストッパ破断時のダンパを介して伝達される衝撃荷重のうちの固有振動数f以上の成分の上部構造US側への伝達が抑制される。このように粘性マスダンパD1のフィルタリング機能が発揮される結果、ストッパSCの破断時のダンパを介して伝達される衝撃荷重を良好に緩和し、上部構造USへの悪影響を抑制することができる。
【0052】
次に、
図8~
図11を参照しながら、時刻歴応答解析について説明する。この時刻歴応答解析は、鉄道橋2に取り付けた移動制限装置のストッパによる移動制限効果と粘性マスダンパD1による制震効果を確認するために実施したものである。その条件は、以下のとおりである。
【0053】
まず、解析対象である鉄道橋2は、
図1に示すようなロッキング橋脚を有する3径間連続橋脚(1径間=約50m)とし、解析方向は線路直交方向とした。鉄道橋2のモデルは2質点系縮約モデルとした。具体的には、
図1(b)において、RC橋脚9の中央から上方のすべり支承7などの支承部までを第1層(質点1)、その質量を約1300(ton)とし、支承部から上方を第2層(質点2)、その質量を約1200(ton)とした。
【0054】
RC橋脚9、すべり支承7及びピボット支承8は、弾性ばねとし、すべり支承7はバイリニア特性とした。また、L1地震動(まれに発生する地震動)検討時の第1層及び第2層のばね定数は、それぞれ360(kN/mm)、100(kN/mm)、L2地震動(極めてまれに発生する地震動)検討時の第1層及び第2層のばね定数は、それぞれ270(kN/mm)、75(kN/mm)とした。
【0055】
また、移動制限装置は、
図5に示す第2実施形態の移動制限装置DBを基本とした。ストッパSBのボルトBは、1本あたりの初期剛性が30.8(kN/mm)のものを20本、用いており、ボルトB全体の初期剛性は30.8×20=616(kN/mm)である。ボルトBの1本あたりの破断荷重は100(kN)、全体の破断荷重は100×20=2000(kN)とした。また、ボルトBは、
図2(c)に示すように、破断荷重に達したときに応力が0になるモデルとした。
【0056】
さらに、粘性マスダンパD1の1基あたりの等価質量mdは800(ton)、減衰係数cdは1.0 (kNs/mm)とした。また、支持部材D2のばね定数は、粘性マスダンパD1の1基あたり400(kN/mm)とし、設置数は2箇所とした。
【0057】
また、入力地震動は、L1地震動及びL2地震動とし、地盤種別はG4地盤とした。そして、L1地震動及びL2地震動をそれぞれ鉄道橋2の下部構造LSに入力したときの、第2層(質点2)の応答(変位、速度及び加速度)の時刻歴とダンパ反力(粘性マスダンパD1の反力)などの時刻歴を求めた。以下、その結果について説明する。
【0058】
図8及び
図9に示すように、L1地震動の場合には、鉄道橋2に作用する線路直交方向の外力が小さく、ストッパSBが破断しないため、下部構造LSに対する上部構造USの移動がストッパSBによって制限される。このため、
図8に示すように、第2層の変位、速度及び加速度はいずれも、非常に小さく抑制される。それに伴い、ダンパ変位が抑制される結果、
図9に示すように、ダンパ反力が小さく抑制されるとともに、粘性マスダンパD1及びすべり支承7の応答による残留変形も抑制されることが分かる。
【0059】
一方、
図10及び
図11に示すように、L2地震動の場合には、その入力開始時から約10秒が経過するまでは、線路直交方向の外力が小さく、ストッパSBが破断しないため、L1地震動の場合と同様、上部構造USの移動がストッパSBで制限される結果、第2層の変位、速度及び加速度とダンパ反力は、いずれも非常に小さく抑制されることが分かる。
【0060】
そして、地震動の入力開始時から約10秒が経過した時に、線路直交方向の外力が所定値に達することで、ストッパSBのボルトBがせん断で破断する。これにより、地震動が第2層に伝達され、第2層の変位、速度及び加速度が大きく振動する。また、ストッパSBの反力が0になるとともに、大きなダンパ反力が得られ、粘性マスダンパD1の制震効果が有効に発揮されることが分かる。また、これらの結果から、ストッパSBの破断荷重を十分に小さく設定することにより、比較的早い段階でストッパSが破断し、その後の遅いタイミングで第2層が最大応答値を迎えるようにすることで、ストッパSBの破断が第2層の最大応答値にほとんど影響しないようにすることができると推定される。
【0061】
次に、上述した時刻歴応答解析の妥当性を検証するために実施した動的加振実験について説明する。この動的加振実験は、実施形態の移動制限装置を模擬した、粘性マスダンパD1を含む試験体を作製し、この試験体を強制的に加振したときのダンパ反力やダンパ変位などを検出するものである。以下、
図12~
図14を参照しながら、第2実施形態の移動制限装置DBを模擬した場合を例にとり、動的加振実験について説明する。
【0062】
図12に示すように、実験装置51は、左右の柱LP、RP及び上下の梁UB、LBを連結したラーメン構造の実験フレームTFを有する。この実験フレームTF内に、粘性マスダンパD1、ストッパSB、支持部材D2、第1及び第2接続部材D3、D4や、加振を行うためのアクチュエータVA及び加振梁VBなどが配置されている。これらの構成要素は、粘性マスダンパD1及びアクチュエータVAを除き、鋼材で構成されており、また、実験フレームTFの設備の配置上、
図5に示す第2実施形態の移動制限装置SBとは上下逆に配置されている。
【0063】
具体的には、加振梁VBは、複数のレールRを介して、下梁LBに左右方向に移動自在に設けられている。アクチュエータVAは、連結部材52を介して、加振梁VBの右端部に連結されている。このアクチュエータVAは、加振梁VBを左右方向に加振する動的アクチュエータであり、その諸元は、例えば最大荷重:3000(kN) 、最大速度:30(cm/s)、ストローク:±100(mm)である。
【0064】
支持部材D2は、上端部が上梁UBにボルトなどで連結され、下方に延びている。第1接続部材D3は、支持部材D2の下端部に、ボルトなどで連結されている。第2接続部材D4は、加振梁VBの上面に、ボルトなどで連結されている。また、粘性マスダンパD1は、第1接続部材D3と第2接続部材D4の間に直列かつ水平に設けられている。さらに、ストッパSBは、第1接続部材D3と左柱LPの間に配置され、ボルトBで緊結されている。粘性マスダンパD1の等価質量は2800(ton)、支持部材D2のばね定数は33000(kN/m)とした。また、ストッパSBのボルトBの径はM16、強度区分は8.8、本数は1本とした。
【0065】
以上の構成の実験装置51において、アクチュエータVAから加振梁VBを介して加振したときのダンパ変位及び支持部材D2の変位(以下「支持部材変位」という)を、それぞれの変位センサ(図示せず)によって検出した。この場合、アクチュエータVAから入力される入力波は、
図13及び
図14にそれぞれ示すようなL1地震動及びL2地震動に基づくサイン波であり、その振幅は、スケール則を考慮して設定した。また、動的加振実験とは別個に、上述した実験装置51及び入力波の条件に基づき、時刻歴応答解析を行った。
【0066】
図13及び
図14は、動的加振実験の結果を示す。
図13に示すように、L1地震動の場合には、ダンパ変位及び支持部材変位がいずれも小さく抑制されている。この結果は、図示しない時刻歴応答解析の結果とほぼ同じである。このことから、上部構造USの移動がストッパSにより有効に制限されることが確認された。
【0067】
また、
図14に示すように、L2地震動の場合には、ストッパSが破断した後、ダンパ変位及び支持部材変位がいずれも大きくなっている。この結果は、図示しない時刻歴応答解析の結果とほぼ同じである。このことから、ストッパSの破断後、粘性マスダンパD1が大きな変位で作動し、上部構造USの振動が良好に抑制されることが確認された。また、ストッパSの破断後、ダンパ変位及び支持部材変位の波形に乱れが認められないことや、図示しないが、ダンパ反力と全体変位(=ダンパ変位+支持部材変位)との関係を表す履歴ループが安定していることから、ストッパ破断による衝撃荷重の影響がほとんど無いことが確認された。
【0068】
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態は、本発明の移動制限装置を鉄道橋に適用し、列車の走行安定性を確保する例である。本発明は、これに限らず、下部構造に対する上部構造の水平方向の移動を制限することが要求されるような他の構造物に、広く適用することが可能である。
【0069】
また、実施形態では、粘性マスダンパD1は、ボールねじ式のものであるが、これに代えて歯車モータ式のものを採用してもよい。さらに、移動制限装置の構成として、説明した第1~第3実施形態や変形例以外の適当なものを採用することができる。また、実施形態で示したストッパや粘性マスダンパなどの諸元・数値は、あくまで例示であり、適宜、変更される。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
【符号の説明】
【0070】
DA 第1実施形態の移動制限装置
DA’ 変形例の移動制限装置
DB 第2実施形態の移動制限装置
DC 第3実施形態の移動制限装置
2 鉄道橋(構造物)
US 上部構造
LS 下部構造
SA 第1実施形態のストッパ
SA’ 変形例のストッパ
SB 第2実施形態のストッパ
SC 第3実施形態のストッパ
D1 粘性マスダンパ
23 回転マス
30 粘性体
D2 支持部材
md 回転マスの等価質量
cd 粘性体の粘性係数
f 固有振動数
fr 所定振動数
B ストッパのボルト