(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114564
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】ラーメン高架橋の制震補強構造
(51)【国際特許分類】
E01D 1/00 20060101AFI20230810BHJP
E01D 19/02 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
E01D1/00 Z
E01D19/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016946
(22)【出願日】2022-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504242342
【氏名又は名称】株式会社免制震ディバイス
(74)【代理人】
【識別番号】100095566
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 友雄
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(72)【発明者】
【氏名】岩田 秀治
(72)【発明者】
【氏名】土屋 正宏
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佑斗
(72)【発明者】
【氏名】中南 滋樹
(72)【発明者】
【氏名】木田 英範
(72)【発明者】
【氏名】尾家 直樹
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA03
2D059AA05
2D059GG13
2D059GG55
(57)【要約】
【課題】比較的簡易な施工により、高架橋の橋軸方向及び橋軸直角方向の振動を効果的に抑制することができ、耐震性を高めることができるラーメン高架橋の制震補強構造を提供する。
【解決手段】ラーメン高架橋1に制震装置20を設置することにより、ラーメン高架橋1の振動抑制を補強するラーメン高架橋の制震補強構造であって、制震装置20は、所定長さを有しかつその長さ方向に減衰機能を発揮する左右2つのダンパ21、21を一組とする複数組の制震装置20で構成されており、各組の制震装置20における2つのダンパ21、21は、左右対称な状態に設置されるとともに、各々が、対応する組の橋脚3における柱2とそれに接合された梁4とを含む第1平面P1、柱2とそれに接合された桁5とを含む第2平面P2、及び梁4とそれに接合された桁5とを含む第3平面P3に対し、傾斜した状態に延びるように設置される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに左右方向に所定間隔を隔てて立設された左右2つの柱を一組とし、所定方向に沿って互いに所定距離を隔てて配置された複数組の橋脚と、いずれも水平に延び、前記複数組の橋脚における前記2つの柱の上端部間にそれぞれ接合された複数の梁と、いずれも水平に延び、前記複数組の橋脚における左右同じ側の柱同士の上端部間にそれぞれ接合されかつ前記複数の梁に接合された左右2つの桁と、を備えたラーメン高架橋において、制震装置を設置することにより、当該ラーメン高架橋の振動抑制を補強するラーメン高架橋の制震補強構造であって、
前記制震装置は、所定長さを有しかつその長さ方向に減衰機能を発揮する左右2つのダンパを一組とする複数組の制震装置で構成されており、
前記各組の制震装置における前記2つのダンパは、左右対称な状態に設置されるとともに、各々が、対応する組の前記橋脚における前記柱とそれに接合された前記梁とを含む第1平面、前記柱とそれに接合された前記桁とを含む第2平面、及び前記梁とそれに接合された前記桁とを含む第3平面に対し、傾斜した状態に延びるように設置されることを特徴とするラーメン高架橋の制震補強構造。
【請求項2】
互いに隣り合う組の前記橋脚にそれぞれ対応する前記梁同士の間において、前記2つの桁の間に水平に延び、当該2つの桁に接合された第1補強梁を、備え、
一組の前記制震装置が前記隣り合う組の一方の橋脚と前記第1補強梁との間に設置される場合、当該一組の制震装置における左側のダンパは、前記一方の橋脚における左側の前記柱の所定位置に設けられた左柱側取付部と、前記第1補強梁の長さ方向の中央に設けられた第1補強梁側取付部とを連結するように取り付けられ、前記一組の制震装置における右側のダンパは、前記一方の橋脚における右側の前記柱の所定位置に設けられた右柱側取付部と、前記第1補強梁側取付部とを連結するように取り付けられることを特徴とする請求項1に記載のラーメン高架橋の制震補強構造。
【請求項3】
前記一組の制震装置が前記一方の橋脚と前記第1補強梁との間に設置されるのに加えて、他の組の制震装置が前記隣り合う組の他方の橋脚と前記第1補強梁との間に設置される場合、当該他の組の制震装置における左側のダンパは、前記他方の橋脚における左側の前記柱の所定位置に設けられた左柱側取付部と、前記第1補強梁側取付部とを連結するように取り付けられ、前記他の組の制震装置における右側のダンパは、前記他方の橋脚における右側の前記柱の所定位置に設けられた右柱側取付部と、前記第1補強梁側取付部とを連結するように取り付けられることを特徴とする請求項2に記載のラーメン高架橋の制震補強構造。
【請求項4】
互いに隣り合う組の前記橋脚のそれぞれの左側の柱同士の間、及び右側の柱同士の間にそれぞれ接合され、前記左右2つの桁の下方にかつ当該桁の長さ方向に沿って延びる左右2つの第2補強梁を、備え、
一組の前記制震装置が前記隣り合う組の一方の橋脚に対応する梁と前記2つの第2補強梁との間に設置される場合、当該一組の制震装置における左側のダンパは、前記梁の長さ方向の中央に設けられた梁側取付部と、前記左側の第2補強梁の長さ方向の所定位置に設けられた左第2補強梁側取付部とを連結するように取り付けられ、前記一組の制震装置における右側のダンパは、前記梁側取付部と、前記右側の第2補強梁の長さ方向の所定位置に設けられた右第2補強梁側取付部とを連結するように取り付けられることを特徴とする請求項1に記載のラーメン高架橋の制震補強構造。
【請求項5】
互いに隣り合う組の前記橋脚のそれぞれの左側の柱同士の間、及び右側の柱同士の間にそれぞれ立設され、各々の上端部が前記左右の桁にそれぞれ接合された左右2つの間柱を備え、
一組の前記制震装置が前記隣り合う組の一方の橋脚に対応する梁と前記2つの間柱との間に設置される場合、当該一組の制震装置における左側のダンパは、前記梁の長さ方向の中央に設けられた梁側取付部と、前記左側の間柱の長さ方向の所定位置に設けられた左間柱側取付部とを連結するように取り付けられ、前記一組の制震装置における右側のダンパは、前記梁側取付部と、前記右側の間柱の長さ方向の所定位置に設けられた右間柱側取付部とを連結するように取り付けられることを特徴とする請求項1に記載のラーメン高架橋の制震補強構造。
【請求項6】
互いに隣り合う組の前記橋脚のそれぞれの左側の柱同士の間、及び右側の柱同士の間にそれぞれ接合され、前記左右2つの桁の下方にかつ当該桁の長さ方向に沿って延びる左右2つの第2補強梁を、備え、
前記隣り合う組の一方の橋脚に対応する梁は、当該橋脚の左右の柱よりも外方に張り出すように延びる左右2つの張出し部を有しており、
一組の前記制震装置が前記2つの張出し部と前記2つの第2補強梁との間に設置される場合、当該一組の制震装置における左側のダンパは、前記左側の張出し部の所定位置に設けられた左張出し部側取付部と、前記左側の第2補強梁の長さ方向の所定位置に設けられた左第2補強梁側取付部とを連結するように取り付けられ、前記一組の制震装置における右側のダンパは、前記右側の張出し部の所定位置に設けられた右張出し部側取付部と、前記右側の第2補強梁の長さ方向の所定位置に設けられた右第2補強梁側取付部とを連結するように取り付けられることを特徴とする請求項1に記載のラーメン高架橋の制震補強構造。
【請求項7】
互いに隣り合う組の前記橋脚のそれぞれの左側の柱同士の間、及び右側の柱同士の間にそれぞれ立設され、各々の上端部が前記左右の桁にそれぞれ接合された左右2つの間柱を備え、
前記隣り合う組の一方の橋脚に対応する梁は、当該橋脚の左右の柱よりも外方に張り出すように延びる左右2つの張出し部を有しており、
一組の前記制震装置が前記2つの張出し部と前記2つの間柱との間に設置される場合、当該一組の制震装置における左側のダンパは、前記左側の張出し部の所定位置に設けられた左張出し部側取付部と、前記左側の間柱の長さ方向の所定位置に設けられた左間柱側取付部とを連結するように取り付けられ、前記一組の制震装置における右側のダンパは、前記右側の張出し部の所定位置に設けられた右張出し部側取付部と、前記右側の間柱の長さ方向の所定位置に設けられた右間柱側取付部とを連結するように取り付けられることを特徴とする請求項1に記載のラーメン高架橋の制震補強構造。
【請求項8】
前記ダンパは、所定の粘性体を利用して減衰力を発生させる粘性ダンパであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のラーメン高架橋の制震補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道高架橋などに適用されたラーメン高架橋において、制震装置を設置することにより、そのラーメン高架橋の振動抑制を補強するラーメン高架橋の制震補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の制震補強構造として、例えば特許文献1及び2に記載されたものが知られている。特許文献1の制震補強構造では、互いに左右方向に間隔を隔てて配置された左右2つの柱と、これらの柱の上端部間に接合された梁とによって、正面形状がほぼ矩形状のラーメン架構が構成され、その構面、すなわち上記2つの柱及び梁で囲まれた平面内に、制震装置が設置されている。この制震装置は、履歴減衰型のダンパと、4本のブレースとを備えており、ラーメン架構の構面の中央にダンパが配置されるとともに、そのダンパに各ブレースの一端部が接合されかつ他端部がラーメン架構の隅部に接合され、4本のブレースが、ラーメン架構の構面全体においてX字状に延びるように配置されている。
【0003】
一方、特許文献2の制震補強構造では、梁の両端側の部位が左右2つの柱よりも外方に大きく張り出した張出し部を有するラーメン架構において、左側の柱の上部と左側の張出し部の下面との間、及び右側の柱の上部と右側の張出し部の下面との間をそれぞれ連結するように、左右2つの摩擦ダンパが傾斜した状態で配置されている。つまり、左右2つの摩擦ダンパはいずれも、ラーメン架構の構面の外側において、その構面に対して平行に延びた状態に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-270816号公報
【特許文献2】特開2017-110345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1の制震補強構造では、ダンパ及び4本のブレースによる制震装置が、ラーメン架構の構面全体に設けられている。このため、そのラーメン高架橋において、ラーメン架構の内部空間を有効に活用することができない。一方、特許文献2の制震補強構造では、各摩擦ダンパがラーメン架構の構面の外側に設置されるため、上記特許文献1と異なり、ラーメン架構の内部空間を有効に活用することが可能である。
【0006】
また、上記特許文献2の制震補強構造では、左右2つの摩擦ダンパにより、高架橋の左右方向、すなわち高架橋の長さ方向である橋軸方向に対して水平に直交する橋軸直角方向の振動が抑制される。しかし、上記の摩擦ダンパでは、高架橋の橋軸方向の振動を抑制することができないため、その振動を抑制するための他のダンパやブレースなどを設置する必要がある。そのため、既存の高架橋に対し、橋軸方向及び橋軸直角方向の振動抑制を補強するための制震装置を設置する場合には、その補強工事が大規模なものになってしまう。
【0007】
さらに、ラーメン高架橋には、橋軸方向に隣接するラーメン架構同士の距離が異なる構造、いわゆる異径間構造があり、そのような構造を有するラーメン高架橋においては、制震装置をシンメトリックに設置することが困難な場合がある。加えて、異径間構造などにより、構造物としてのラーメン高架橋の重心と構造上の中心位置とが異なる場合、従来のブレースを用いた工法では、ラーメン高架橋の剛性バランスや偏心率の設定など、補強工事の設計が非常に煩雑で困難になるおそれがある。
【0008】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、比較的簡易な施工により、高架橋の橋軸方向及び橋軸直角方向の振動を効果的に抑制することができ、その結果として、耐震性を高めることができるラーメン高架橋の制震補強構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、互いに左右方向に所定間隔を隔てて立設された左右2つの柱を一組とし、所定方向に沿って互いに所定距離を隔てて配置された複数組の橋脚と、いずれも水平に延び、複数組の橋脚における2つの柱の上端部間にそれぞれ接合された複数の梁と、いずれも水平に延び、複数組の橋脚における左右同じ側の柱同士の上端部間にそれぞれ接合されかつ複数の梁に接合された左右2つの桁と、を備えたラーメン高架橋において、制震装置を設置することにより、ラーメン高架橋の振動抑制を補強するラーメン高架橋の制震補強構造であって、制震装置は、所定長さを有しかつその長さ方向に減衰機能を発揮する左右2つのダンパを一組とする複数組の制震装置で構成されており、各組の制震装置における2つのダンパは、左右対称な状態に設置されるとともに、各々が、対応する組の橋脚における柱とそれに接合された梁とを含む第1平面、柱とそれに接合された桁とを含む第2平面、及び梁とそれに接合された桁とを含む第3平面に対し、傾斜した状態に延びるように設置されることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、ラーメン高架橋は、左右2つの柱を一組とする複数組の橋脚と、それらの複数組の橋脚における2つの柱の上端部間にそれぞれ接合された複数の梁と、複数組の橋脚における左右同じ側の柱同士の上端部間及び複数の梁に接合された左右2つの桁と、を備えている。また、このラーメン高架橋に設置される制震装置は、左右2つのダンパを一組とする複数組の制震装置で構成されており、各ダンパは、所定長さを有しかつその長さ方向に減衰機能を発揮するように構成されている。そして、各組の制震装置における2つのダンパは、左右対称な状態に設置され、各ダンパは、ラーメン高架橋の構造材による上記3つの平面、すなわち、対応する組の橋脚における柱とそれに接合された梁とを含む第1平面、柱とそれに接合された桁とを含む第2平面、及び梁とそれに接合された桁とを含む第3平面に対し、傾斜した状態に延びるように設置される。つまり、各ダンパは、第1~第3平面のいずれに対しても、平行にならない状態に設置される。
【0011】
各組の制震装置における左右2つのダンパが、ラーメン高架橋に対して上記のように設置されることにより、ラーメン高架橋に生じる振動、具体的には、ラーメン高架橋の長さ方向である橋軸方向と、ラーメン高架橋の左右方向、すなわち橋軸方向に対して水平に直交する橋軸直角方向の振動を、各ダンパの減衰機能によって効果的に抑制することができる。また、地震による振動がラーメン高架橋に作用する場合には、各ダンパの減衰機能により、応答変位や応答加速度を低減でき、ラーメン高架橋の耐震性を高めることができる。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のラーメン高架橋の制震補強構造において、互いに隣り合う組の橋脚にそれぞれ対応する梁同士の間において、2つの桁の間に水平に延び、2つの桁に接合された第1補強梁を、備え、一組の制震装置が隣り合う組の一方の橋脚と第1補強梁との間に設置される場合、一組の制震装置における左側のダンパは、一方の橋脚における左側の柱の所定位置に設けられた左柱側取付部と、第1補強梁の長さ方向の中央に設けられた第1補強梁側取付部とを連結するように取り付けられ、一組の制震装置における右側のダンパは、一方の橋脚における右側の柱の所定位置に設けられた右柱側取付部と、第1補強梁側取付部とを連結するように取り付けられることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、互いに隣り合う組の橋脚にそれぞれ対応する梁同士の間には、左右2つの桁の間に水平に延びる第1補強梁が設けられ、この第1補強梁が2つの桁に接合されている。また、一組の制震装置が上記の隣り合う組の一方の橋脚と第1補強梁との間に設置される場合、制震装置における左側のダンパは、上記橋脚の左側の柱における左柱側取付部と、第1補強梁における第1補強梁側取付部とを連結するように取り付けられる。一方、右側のダンパは、上記橋脚の右側の柱における右柱側取付部と、第1補強梁における上記第1補強梁側取付部とを連結するように取り付けられる。一組の制震装置における左右2つのダンパを、第1補強梁と一組の橋脚における左右の柱との間に取り付けることにより、各ダンパを、前記第1~第3平面に対し、傾斜した状態に延びるよう、容易に設置することができる。また、2つのダンパの第1補強梁側の取付部(第1補強梁側取付部)を、共通化するので、第1補強梁においてダンパごとに取付部を設ける場合に比べて、施工の簡易化及び施工コストの低減を図ることができる。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載のラーメン高架橋の制震補強構造において、一組の制震装置が一方の橋脚と第1補強梁との間に設置されるのに加えて、他の組の制震装置が隣り合う組の他方の橋脚と第1補強梁との間に設置される場合、他の組の制震装置における左側のダンパは、他方の橋脚における左側の柱の所定位置に設けられた左柱側取付部と、第1補強梁側取付部とを連結するように取り付けられ、他の組の制震装置における右側のダンパは、他方の橋脚における右側の柱の所定位置に設けられた右柱側取付部と、第1補強梁側取付部とを連結するように取り付けられることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、前述した請求項2による一組の制震装置の設置に加えて、他の組の制震装置が上記の隣り合う組の他方の橋脚と第1補強梁との間に設置される場合、他の組の制震装置における左側のダンパは、他方の橋脚の左側の柱における左柱側取付部と、第1補強梁における第1補強梁側取付部とを連結するように取り付けられる。一方、右側のダンパは、他方の橋脚の右側の柱における右柱側取付部と、第1補強梁における第1補強梁側取付部とを連結するように取り付けられる。このように、互いに隣り合う組の橋脚と、それらの間の第1補強梁との間に、2組の制震装置による計4つのダンパを取り付けることにより、両橋脚の振動抑制を高めることができる。また、請求項2による2つのダンパに加えて、他の組の制震装置における2つのダンパの計4つのダンパの第1補強梁側の取付部(第1補強梁側取付部)を共通化するので、施工の簡易化及び施工コストの低減を、より一層図ることができる。
【0016】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載のラーメン高架橋の制震補強構造において、互いに隣り合う組の橋脚のそれぞれの左側の柱同士の間、及び右側の柱同士の間にそれぞれ接合され、左右2つの桁の下方にかつ桁の長さ方向に沿って延びる左右2つの第2補強梁を、備え、一組の制震装置が隣り合う組の一方の橋脚に対応する梁と2つの第2補強梁との間に設置される場合、一組の制震装置における左側のダンパは、梁の長さ方向の中央に設けられた梁側取付部と、左側の第2補強梁の長さ方向の所定位置に設けられた左第2補強梁側取付部とを連結するように取り付けられ、一組の制震装置における右側のダンパは、梁側取付部と、右側の第2補強梁の長さ方向の所定位置に設けられた右第2補強梁側取付部とを連結するように取り付けられることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、互いに隣り合う組の橋脚のそれぞれの左側の柱同士の間、及び右側の柱同士の間に、左右2つの第2補強梁がそれぞれ接合されている。各第2補強梁は、対応する桁の下方にかつ当該桁の長さ方向に沿って延びている。また、一組の制震装置が上記の隣り合う組の一方の橋脚に対応する梁と左右2つの第2補強梁との間に設置される場合、制震装置における左側のダンパは、上記梁における梁側取付部と、左側の第2補強梁における左第2補強梁側取付部とを連結するように取り付けられる。一方、右側のダンパは、上記の梁側取付部と、右側の第2補強梁における右第2補強梁側取付部とを連結するように取り付けられる。一組の制震装置における左右2つのダンパを、梁と左右の第2補強梁との間に取り付けることにより、各ダンパを、前記第1~第3平面に対し、傾斜した状態に延びるよう、容易に設置することができる。また、2つのダンパの梁側の取付部(梁側取付部)を、共通化するので、梁においてダンパごとに取付部を設ける場合に比べて、施工の簡易化及び施工コストの低減を図ることができる。
【0018】
請求項5に係る発明は、請求項1に記載のラーメン高架橋の制震補強構造において、互いに隣り合う組の橋脚のそれぞれの左側の柱同士の間、及び右側の柱同士の間にそれぞれ立設され、各々の上端部が左右の桁にそれぞれ接合された左右2つの間柱を備え、一組の制震装置が隣り合う組の一方の橋脚に対応する梁と2つの間柱との間に設置される場合、一組の制震装置における左側のダンパは、梁の長さ方向の中央に設けられた梁側取付部と、左側の間柱の長さ方向の所定位置に設けられた左間柱側取付部とを連結するように取り付けられ、一組の制震装置における右側のダンパは、梁側取付部と、右側の間柱の長さ方向の所定位置に設けられた右間柱側取付部とを連結するように取り付けられることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、互いに隣り合う組の橋脚のそれぞれの左側の柱同士の間、及び右側の柱同士の間に、左右2つの間柱がそれぞれ立設されている。各間柱は、対応する桁に上端部が接合されている。また、一組の制震装置が上記の隣り合う組の一方の橋脚に対応する梁と左右2つの間柱との間に設置される場合、制震装置における左側のダンパは、上記梁における梁側取付部と、左側の間柱における左間柱側取付部とを連結するように取り付けられる。一方、右側のダンパは、上記の梁側取付部と、右側の間柱における右間柱側取付部とを連結するように取り付けられる。一組の制震装置における左右2つのダンパを、梁と左右の間柱との間に取り付けることにより、各ダンパを、前記第1~第3平面に対し、傾斜した状態に延びるよう、容易に設置することができる。また、2つのダンパの梁側の取付部(梁側取付部)を、共通化するので、梁においてダンパごとに取付部を設ける場合に比べて、施工の簡易化及び施工コストの低減を図ることができる。
【0020】
請求項6に係る発明は、請求項1に記載のラーメン高架橋の制震補強構造において、互いに隣り合う組の橋脚のそれぞれの左側の柱同士の間、及び右側の柱同士の間にそれぞれ接合され、左右2つの桁の下方にかつ桁の長さ方向に沿って延びる左右2つの第2補強梁を、備え、隣り合う組の一方の橋脚に対応する梁は、橋脚の左右の柱よりも外方に張り出すように延びる左右2つの張出し部を有しており、一組の制震装置が2つの張出し部と2つの第2補強梁との間に設置される場合、一組の制震装置における左側のダンパは、左側の張出し部の所定位置に設けられた左張出し部側取付部と、左側の第2補強梁の長さ方向の所定位置に設けられた左第2補強梁側取付部とを連結するように取り付けられ、一組の制震装置における右側のダンパは、右側の張出し部の所定位置に設けられた右張出し部側取付部と、右側の第2補強梁の長さ方向の所定位置に設けられた右第2補強梁側取付部とを連結するように取り付けられることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、互いに隣り合う組の橋脚のそれぞれの左側の柱同士の間、及び右側の柱同士の間に、左右2つの第2補強梁がそれぞれ接合されている。各第2補強梁は、対応する桁の下方にかつ当該桁の長さ方向に沿って延びている。また、隣り合う組の一方の橋脚に対応する梁には、その橋脚の左右の柱よりも外方に張り出すように延びる左右2つの張出し部が設けられている。一組の制震装置が上記の左右2つの張出し部と左右2つの第2補強梁との間に設置される場合、制震装置における左側のダンパは、左側の張出し部における左張出し部側取付部と、左側の第2補強梁における左第2補強梁側取付部とを連結するように取り付けられる。一方、右側のダンパは、右側の張出し部における右張出し部側取付部と、右側の第2補強梁における右第2補強梁側取付部とを連結するように取り付けられる。一組の制震装置における左右2つのダンパを、梁における張出し部と第2補強梁との間に取り付けることにより、各ダンパを、前記第1~第3平面に対し、傾斜した状態に延びるよう、容易に設置することができる。また、各ダンパは、橋脚における左右の柱の外側に配置されるので、両柱間に比較的広い空間が確保でき、その空間を有効に活用することが可能になる。
【0022】
請求項7に係る発明は、請求項1に記載のラーメン高架橋の制震補強構造において、互いに隣り合う組の橋脚のそれぞれの左側の柱同士の間、及び右側の柱同士の間にそれぞれ立設され、各々の上端部が左右の桁にそれぞれ接合された左右2つの間柱を備え、隣り合う組の一方の橋脚に対応する梁は、橋脚の左右の柱よりも外方に張り出すように延びる左右2つの張出し部を有しており、一組の制震装置が2つの張出し部と2つの間柱との間に設置される場合、一組の制震装置における左側のダンパは、左側の張出し部の所定位置に設けられた左張出し部側取付部と、左側の間柱の長さ方向の所定位置に設けられた左間柱側取付部とを連結するように取り付けられ、一組の制震装置における右側のダンパは、右側の張出し部の所定位置に設けられた右張出し部側取付部と、右側の間柱の長さ方向の所定位置に設けられた右間柱側取付部とを連結するように取り付けられることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、互いに隣り合う組の橋脚のそれぞれの左側の柱同士の間、及び右側の柱同士の間に、左右2つの間柱がそれぞれ立設されている。各間柱は、対応する桁に上端部が接合されている。また、隣り合う組の一方の橋脚に対応する梁には、その橋脚の左右の柱よりも外方に張り出すように延びる左右2つの張出し部が設けられている。一組の制震装置が上記の左右2つの張出し部と左右2つの間柱との間に設置される場合、制震装置における左側のダンパは、左側の張出し部における左張出し部側取付部と、左側の間柱における左間柱側取付部とを連結するように取り付けられる。一方、右側のダンパは、右側の張出し部における右張出し部側取付部と、右側の間柱における右間柱側取付部とを連結するように取り付けられる。一組の制震装置における左右2つのダンパを、梁における張出し部と間柱との間に取り付けることにより、各ダンパを、前記第1~第3平面に対し、傾斜した状態に延びるよう、容易に設置することができる。また、各ダンパは、橋脚における左右の柱の外側に配置されるので、両柱間に比較的広い空間が確保でき、その空間を有効に活用することが可能になる。
【0024】
請求項8に係る発明は、請求項1から7のいずれかに記載のラーメン高架橋の制震補強構造において、ダンパは、所定の粘性体を利用して減衰力を発生させる粘性ダンパであることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、ラーメン高架橋に設置される制震装置のダンパとして、所定の粘性体を利用して減衰力を発生させる粘性ダンパを用いることにより、ラーメン高架橋が振動する際に、ダンパが設置された2つの部位間の変位速度に比例する減衰力を得ることができる。これにより、ラーメン高架橋の振動を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態による制震補強構造が適用される鉄道高架橋の一部を模式的に示す図であり、(a)は3組の橋脚並びにそれらの各柱が梁及び桁で接合された状態を示す斜視図、(b)は鉄道高架橋を橋軸方向から見たときの図である。
【
図2】
図1(a)の鉄道高架橋において、柱、梁及び桁のいずれか2つを含む平面を説明するための図であり、(a)は手前側及び上部の平面を斜線で示しており、(b)は奥側の平面を斜線で示している。
【
図3】本発明の第1実施形態による制震補強構造を説明するための斜視図であり、(a)及び(b)はそれぞれ、鉄道高架橋におけるダンパの設置前後の状態を示している。
【
図4】
図3(b)の制震補強構造を適用した鉄道高架橋を模式的に示す図であり、(a)は平面図、(b)は鉄道高架橋を橋軸方向から見たときの図、(c)は鉄道高架橋を橋軸直角方向から見たときの図である。
【
図5】本発明の第2実施形態による制震補強構造を説明するための斜視図であり、(a)及び(b)はそれぞれ、鉄道高架橋におけるダンパの設置前後の状態を示している。
【
図6】本発明の第3実施形態による制震補強構造を説明するための斜視図であり、(a)及び(b)はそれぞれ、鉄道高架橋におけるダンパの設置前後の状態を示している。
【
図7】本発明の第4実施形態による制震補強構造を説明するための斜視図であり、(a)及び(b)はそれぞれ、鉄道高架橋におけるダンパの設置前後の状態を示している。
【
図8】本発明の第5実施形態による制震補強構造を説明するための斜視図であり、(a)及び(b)はそれぞれ、鉄道高架橋におけるダンパの設置前後の状態を示している。
【
図9】本発明の第6実施形態による制震補強構造を説明するための斜視図であり、(a)及び(b)はそれぞれ、鉄道高架橋におけるダンパの設置前後の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態による制震補強構造が適用される鉄道高架橋の一部について、主要な構造材を模式的に示している。この鉄道高架橋1は、各構造材がRC造で構成され、例えば2線2柱式のRCビームスラブ式ラーメン高架橋である。
図1(a)に示すように、鉄道高架橋1は、左右2つの柱2、2を一組とする複数組(
図1(a)では3組のみ図示)の橋脚3を備えており、各組の橋脚3に、梁4及び桁5が接合されている。具体的には、各組の橋脚3は、互いに左右方向に所定間隔(例えば5.2m)を隔てて立設された左右2つの柱2、2を有しており、複数組の橋脚3が、鉄道高架橋1の橋軸方向に所定距離(例えば6m)を隔てて配置されている。また、梁4は、水平に延び、各組の橋脚3における左右2つの柱2、2の上端部間に接合されている。さらに、桁5は、互いに平行にかつ水平に延びる左右2つの桁5、5で構成されており、これらの桁5、5は、複数組の橋脚3における左右同じ側の柱2、2同士の上端部間にそれぞれ接合されかつ各組の橋脚3に対応する梁4の両端部にそれぞれ接合されている。
【0028】
上記の鉄道高架橋(以下、単に「高架橋」という)1では、
図1(b)に示すように、各組の橋脚3に対応する梁4及び左右の桁5、5の上側に、高架橋1の橋軸方向に沿って延びる床版6が設けられている。また、床版6上には、各々が2本のレール7、7を有する2つの線路8、8が設けられ、各線路8を列車9が走行する。
【0029】
なお、以下の説明では、高架橋1における3組の橋脚3を区別する場合、
図1(a)の左側から順に、第1橋脚3A、第2橋脚3B及び第3橋脚3Cというものとする。
【0030】
ここで、上述した高架橋1の各構造材、すなわち、柱2、梁4及び桁5によって構成される平面について、
図2を参照して簡単に説明する。
図2は、各構造材によって構成される平面を、ハッチングを用いて示しており、同図(a)は高架橋1の手前側及び上部の平面を示しており、同図(b)は高架橋1の奥側の平面を示している。以下の説明では、各組の橋脚3における柱2とそれに接合された梁4とを含む平面を、第1平面P1といい、上記柱2とそれに接合された桁5とを含む平面を、第2平面P2といい、さらに、梁4とそれに接合された桁5とを含む平面を、第3平面P3というものとする。
【0031】
図3は、本発明の第1実施形態による制震補強構造を説明するための斜視図であり、(a)及び(b)はそれぞれ、高架橋1に対する制震装置としてのダンパの設置前後の状態を示している。なお、同図(b)では、図示の便宜上、柱2、梁4及び桁5の一部を破断した状態で示しており、また、同図(b)に示す高架橋1Aの一部が、高架橋1Aの橋軸方向に多数、並設されている。以上の点は、後述する他の実施形態の高架橋についても同様である。
【0032】
図3に示すように、第1実施形態による制震補強構造を適用した高架橋1Aでは、互いに隣り合う橋脚3、3にそれぞれ対応する梁4、4同士の間に、RC造で構成された第1補強梁11が設けられている。具体的には、第1橋脚3A及び第2橋脚3Bにそれぞれ対応する梁4、4間の中央、並びに第2橋脚3B及び第3橋脚3Cにそれぞれ対応する梁4、4間の中央にそれぞれ、これらの梁4と平行で水平に延びる第1補強梁11、11が配置されている。各第1補強梁11は、左右の端部がそれぞれ、左側及び右側の桁5、5に接合されている。
【0033】
そして、
図3(a)に示す高架橋1Aに対し、同図(b)に示すように、第1補強梁11と橋脚3との間に、左右2つのダンパ21、21を一組とする制震装置20が設置されている。具体的には、第1橋脚3Aと第2橋脚3Bにそれぞれ対応する梁4、4同士の間の第1補強梁11と、第1橋脚3Aとの間に、一組の制震装置20が設置され、また、第2橋脚3Bと第3橋脚3Cにそれぞれ対応する梁4、4同士の間の第1補強梁11と、第3橋脚3Cとの間に、他の組の制震装置20が設置されている。
【0034】
各組の制震装置20における各ダンパ21は、所定長さ(例えば約2m)を有しかつその長さ方向に減衰機能を発揮する粘性ダンパで構成されている。粘性ダンパについての詳細な構造の説明は省略するが、例えば、所定の粘性体(例えばシリコーンオイル)の流動抵抗力をダンパ力として利用したり、これに加えてダンパの長さ方向の運動を回転運動に変換し、粘性体に作用する速度を増幅させることで、より大きな減衰力を発生させたりするなどの各種の粘性ダンパを採用することが可能である。
【0035】
図4は、
図3(b)の制震補強構造を適用した高架橋1Aを三方から模式的に示しており、(a)は平面図、(b)は高架橋1Aを橋軸方向から見たときの図、(c)は高架橋1Aを橋軸直角方向から見たときの図である。
図4及び前述した
図3に示すように、各制震装置20の左右2つのダンパ21L、21Rは、左右対称な状態(
図4(a)及び(b)では上下対称な状態)に設置されている。
【0036】
より具体的には、左側のダンパ21Lは、第1橋脚3A及び第3橋脚3Cのそれぞれの左側の柱2の上部の所定位置に設けられた左柱側取付部22Lと、第1補強梁11の長さ方向の中央に設けられた第1補強梁側取付部23とを連結するように取り付けられている。また、右側のダンパ21Rは、第1橋脚3A及び第3橋脚3Cのそれぞれの右側の柱2の上部の所定位置に設けられた右柱側取付部22Rと、第1補強梁11の上記の第1補強梁側取付部23とを連結するように取り付けられている。上記の各ダンパ21の両端部と第1橋脚3A及び第3橋脚3Cの柱2、2及び第1補強梁11との取付部、すなわち、左柱側取付部22L、右柱側取付部22R及び第1補強梁側取付部23は、いずれも自在継手で構成されている。
【0037】
そして、上記の各ダンパ21はいずれも、
図4に示すように、前述した第1平面P1、第2平面P2及び第3平面P3に対し、平行に延びた状態ではなく、傾斜した状態に延びるように設置されている。
【0038】
本実施形態では、左右2つのダンパ21L、21Rを有する2組の制震装置20が、高架橋1Aに対して上述したように設置されることにより、高架橋1Aに生じる振動、具体的には、高架橋1Aの橋軸方向及び橋軸直角方向の振動を、各ダンパ21の減衰機能によって効果的に抑制することができる。また、地震による振動が高架橋1Aに作用する場合には、各ダンパ21の減衰機能により、応答変位や応答加速度を低減でき、高架橋1Aの耐震性を高めることができる。さらに、本実施形態では、左右2つのダンパ21L、21Rの第1補強梁11側の取付部23を共通化するので、第1補強梁11においてダンパごとに取付部を設ける場合に比べて、施工の簡易化及び施工コストの低減を図ることができる。
【0039】
次に、
図5を参照して、本発明の第2実施形態による制震補強構造について説明する。なお、以下の各実施形態の説明では、前述した第1実施形態と同一の構成部分については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略するものとする。
【0040】
この第2実施形態の制震補強構造を適用した高架橋1Bでは、
図5(b)に示すように、互いに隣り合う第1橋脚3A及び第2橋脚3Bにそれぞれ対応する梁4、4同士の間に設けられた第1補強梁11と、第1橋脚3Aとの間に、前述した第1実施形態の制震装置20と同様の制震装置20Aが設置され、加えて、上記の第1補強梁11と、第2橋脚3Bとの間に、第1実施形態の制震装置20と同様の制震装置20Bが設置されている。
【0041】
上記の制震装置20Bは、第1実施形態の制震装置20と同様、左右2つのダンパ21L、21Rを有しており、左右対称な状態で配置されている。すなわち、制震装置20Bにおいて、左側のダンパ21Lは、第2橋脚3Bの左側の柱2の上部の所定位置に設けられた左柱側取付部22Lと、第1補強梁11における前記第1補強梁側取付部23とを連結するように取り付けられている。また、右側のダンパ21Rは、第2橋脚3Bの右側の柱2の上部の所定位置に設けられた右柱側取付部22Rと、第1補強梁11における第1補強梁側取付部23とを連結するように取り付けられている。
【0042】
上記の制震装置20A及び20Bの各ダンパ21はいずれも、前述した第1実施形態の各ダンパ21と同様、第1平面P1、第2平面P2及び第3平面P3に対し、傾斜した状態に延びるように設置されている。これにより、本実施形態では、前述した第1実施形態と同様の作用、効果、すなわち、高架橋1Bの橋軸方向及び橋軸直角方向の振動を、各ダンパ21の減衰機能によって効果的に抑制でき、その結果、高架橋1Bの耐震性を高めることができる。特に、互いに隣り合う第1橋脚3A及び第2橋脚3Bと、それらの間の第1補強梁11との間に、2つの制震装置20A及び20Bによる計4つのダンパ21を取り付けることにより、第1橋脚3A及び第2橋脚3Bの振動抑制を高めることができる。また、上記の第1補強梁11において、制震装置20Aの2つのダンパ21L、21Rに加えて、制震装置20Bの2つのダンパ21L、21Rの計4つのダンパ21の第1補強梁11側の取付部23を共通化するので、施工の簡易化及び施工コストの低減を、より一層図ることができる。
【0043】
次に、
図6を参照して、本発明の第3実施形態による制震補強構造について説明する。この第3実施形態の制震補強構造が適用される高架橋1Cでは、前述した第1及び第2実施形態の高架橋1A及び1Bの第1補強梁11に代えて、互いに隣り合う橋脚3、3の左側の柱2、2同士の間、及び右側の柱2、2同士の間に、RC造で構成された左右2つの第2補強梁12、12がそれぞれ接合されている。
【0044】
図6(a)に示すように、この高架橋1Cでは、左側の第2補強梁12Lは、第2橋脚3Bの左側の柱2と第3橋脚3Cの左側の柱2との間に、左側の桁5の下方にかつその桁5の長さ方向に沿って水平に延び、左側の柱2、2の上部に接合されている。一方、右側の第2補強梁12Rは、第2橋脚3Bの右側の柱2と第3橋脚3Cの右側の柱2との間に、右側の桁5の下方にかつその桁5の長さ方向に沿って水平に延び、右側の柱2、2の上部に接合されている。
【0045】
そして、
図6(a)に示す高架橋1Cに対し、同図(b)に示すように、第3橋脚3Cに対応する梁4と左右の第2補強梁12L、12Rとの間に、制震装置20Cが設置されている。具体的には、制震装置20Cの左側のダンパ21Lは、第3橋脚3Cに対応する梁4の長さ方向の中央に設けられた梁側取付部24と、左側の第2補強梁12Lの長さ方向の所定位置に設けられた左第2補強梁側取付部25Lとを連結するように取り付けられている。一方、右側のダンパ21Rは、上記の梁側取付部24と、右側の第2補強梁12Rの長さ方向の所定位置に設けられた右第2補強梁側取付部25Rとを連結するように取り付けられている。上記のダンパ21L、21Rの両端部と梁4及び左右の第2補強梁12L、12Rとの取付部、すなわち、梁側取付部24及び左右の第2補強梁側取付部25L、25Rは、いずれも自在継手で構成されている。
【0046】
上記の制震装置20Cの左右のダンパ21L、21Rはいずれも、前述した第1実施形態の各ダンパ21と同様、第1平面P1、第2平面P2及び第3平面P3に対し、傾斜した状態に延びるように設置されている。これにより、本実施形態では、前述した第1実施形態と同様の作用、効果、すなわち、高架橋1Cの橋軸方向及び橋軸直角方向の振動を、両ダンパ21L、21Rの減衰機能によって効果的に抑制でき、その結果、高架橋1Cの耐震性を高めることができる。また、本実施形態では、左右2つのダンパ21L、21Rの梁4側の取付部24を共通化するので、梁4においてダンパごとに取付部を設ける場合に比べて、施工の簡易化及び施工コストの低減を図ることができる。
【0047】
次に、
図7を参照して、本発明の第4実施形態による制震補強構造について説明する。この第4実施形態の制震補強構造が適用される高架橋1Dでは、前述した第1及び第2実施形態の高架橋1A及び1Bの第1補強梁11、並びに第3実施形態の高架橋1Cの第2補強梁12に代えて、互いに隣り合う橋脚3、3の左側の柱2、2同士の間、及び右側の柱2、2同士の間に、RC造で構成された左右2つの間柱13、13がそれぞれ立設されている。
【0048】
図7(a)に示すように、この高架橋1Dでは、左側の間柱13Lは、第2橋脚3Bの左側の柱2と第3橋脚3Cの左側の柱2との間の中央において、下端部が他の柱2と同様の図示しない地盤に固定されるとともに、上端部が左側の桁5に接合されている。一方、右側の間柱13Rは、第2橋脚3Bの右側の柱2と第3橋脚3Cの右側の柱2との間の中央において、下端部が左側の間柱13Lと同様に地盤に固定されるとともに、上端部が右側の桁5に接合されている。
【0049】
そして、
図7(a)に示す高架橋1Dに対し、同図(b)に示すように、第3橋脚3Cに対応する梁4と左右の間柱13L、13Rとの間に、制震装置20Dが設置されている。具体的には、制震装置20Dの左側のダンパ21Lは、第3橋脚3Cに対応する梁4の長さ方向の中央に設けられた梁側取付部24と、左側間柱13Lの上部の所定位置に設けられた左間柱側取付部26Lとを連結するように取り付けられている。一方、右側のダンパ21Rは、上記の梁側取付部24と、右側間柱13Rの上部の所定位置に設けられた右間柱側取付部26Rとを連結するように取り付けられている。前述した第3実施形態と同様、上記のダンパ21L、21Rの一端部と梁4との取付部である梁側取付部24は自在継手で構成され、また、ダンパ21L、21Rの他端部と左右の間柱13L、13Rとの取付部、すなわち、左間柱側取付部26L及び右間柱側取付部26Rも、自在継手で構成されている。
【0050】
上記の制震装置20Dの左右のダンパ21L、21Rはいずれも、前述した第1実施形態の各ダンパ21と同様、第1平面P1、第2平面P2及び第3平面P3に対し、傾斜した状態に延びるように設置されている。これにより、本実施形態では、前述した第1実施形態と同様の作用、効果、すなわち、高架橋1Dの橋軸方向及び橋軸直角方向の振動を、両ダンパ21L、21Rの減衰機能によって効果的に抑制でき、その結果、高架橋1Dの耐震性を高めることができる。本実施形態では、前述した第3実施形態と同様、左右2つのダンパ21L、21Rの梁4側の取付部24の共通化により、施工の簡易化及び施工コストの低減を図ることができる。
【0051】
次に、
図8を参照して、本発明の第5実施形態による制震補強構造について説明する。この第5実施形態の制震補強構造が適用される高架橋1Eでは、前述した
図6に示す第3実施形態の高架橋1Cと同様に、第2橋脚3Bと第3橋脚3Cの左側の柱2、2同士の間、及び右側の柱2、2同士の間に、左右2つの第2補強梁12、12がそれぞれ接合されている。また、本実施形態の高架橋1Eでは、第3橋脚3Cに対応する梁4は、外方に張り出すように延びる左右2つの張出し部4a、4aを有している。より具体的には、各張出し部4aは、第3橋脚3Cの対応する柱2よりも外方に所定長さ延びており、上記梁4と一体に構成されている。
【0052】
そして、
図8(a)に示す高架橋1Eに対し、同図(b)に示すように、梁4の左右の張出し部4a、4aと左右の第2補強梁12L、12Rとの間に、制震装置20Eが設置されている。具体的には、制震装置20Eの左側のダンパ21Lは、左側の張出し部4aLの先端部に設けられた左張出し部側取付部27Lと、左側の第2補強梁12Lにおける左第2補強梁側取付部25Lとを連結するように取り付けられている。一方、右側のダンパ21Rは、右側の張出し部4aRの先端部に設けられた右張出し部側取付部27Rと、右側の第2補強梁12Rにおける右第2補強梁側取付部25Rとを連結するように取り付けられている。前述した第3実施形態と同様、上記のダンパ21L、21Rの一端部と第2補強梁12との取付部である左第2補強梁側取付部25L及び右第2補強梁側取付部25Rは自在継手で構成され、また、ダンパ21L、21Rの他端部と梁4の左右の張出し部4aL、4aRとの取付部、すなわち、左張出し部側取付部27L及び右張出し部側取付部27Rも、自在継手で構成されている。
【0053】
上記の制震装置20Eの左右のダンパ21L、21Rはいずれも、前述した第1実施形態の各ダンパ21と同様、第1平面P1、第2平面P2及び第3平面P3に対し、傾斜した状態に延びるように設置されている。これにより、本実施形態では、前述した第1実施形態と同様の作用、効果、すなわち、高架橋1Eの橋軸方向及び橋軸直角方向の振動を、両ダンパ21L、21Rの減衰機能によって効果的に抑制でき、その結果、高架橋1Eの耐震性を高めることができる。また、本実施形態では、制震装置20Eの両ダンパ21L、21Rが橋脚3における左右の柱2、2の外側に配置されるので、両柱2、2間に比較的広い空間が確保でき、その空間を有効に活用することが可能になる。
【0054】
次に、
図9を参照して、本発明の第6実施形態による制震補強構造について説明する。この第6実施形態の制震補強構造が適用される高架橋1Fでは、前述した
図7に示す第4実施形態の高架橋1Dと同様に、第2橋脚3Bと第3橋脚3Cの左側の柱2、2同士の間、及び右側の柱2、2同士の間に、左右2つの間柱13、13がそれぞれ立設され、各間柱13の上端部が対応する桁5に接合されている。また、本実施形態の高架橋1Fでは、前述した第5実施形態の高架橋1Eと同様に、第3橋脚3Cに対応する梁4に、左右2つの張出し部4a、4aが設けられている。
【0055】
そして、
図9(a)に示す高架橋1Fに対し、同図(b)に示すように、梁4の左右の張出し部4a、4aと左右の間柱13L、13Rとの間に、制震装置20Fが設置されている。具体的には、制震装置20Fの左側のダンパ21Lは、左側の張出し部4aLにおける左張出し部側取付部27Lと、左側の間柱13Lにおける左間柱側取付部26Lとを連結するように取り付けられている。一方、右側のダンパ21Rは、右側の張出し部4aRにおける右張出し部側取付部27Rと、右側の間柱13Rにおける右間柱側取付部26Rとを連結するように取り付けられている。前述した第4及び第5実施形態と同様、上記ダンパ21L、21Rの各端部と間柱13及び張出し部4aとの取付部である左間柱側取付部26L、右間柱側取付部26R、左張出し部側取付部27L及び右張出し部側取付部27Rは、自在継手で構成されている。
【0056】
上記の制震装置20Fの左右のダンパ21L、21Rはいずれも、前述した第1実施形態の各ダンパ21と同様、第1平面P1、第2平面P2及び第3平面P3に対し、傾斜した状態に延びるように設置されている。これにより、本実施形態では、前述した第1実施形態と同様の作用、効果、すなわち、高架橋1Fの橋軸方向及び橋軸直角方向の振動を、両ダンパ21L、21Rの減衰機能によって効果的に抑制でき、その結果、高架橋1Fの耐震性を高めることができる。また、本実施形態では、前述した第5実施形態と同様、橋脚3の両柱2、2間に広い空間が確保でき、その空間を有効に活用することが可能になる。
【0057】
なお、本発明は、説明した各実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、本発明の制震補強構造を鉄道高架橋に適用した場合について説明したが、本発明を他の高架橋、例えば自動車等の車両が走行する道路高架橋にも、もちろん適用することが可能である。また、実施形態では、既存の高架橋1に対して、第1補強梁11、第2補強梁12又は間柱13を設けるとともに、制震装置20を設置することにより、高架橋1の振動抑制を補強するようにしたが、本発明の制震補強構造を、高架橋1の建設時に併せて施工することも可能である。さらに、高架橋1の全体に対して、上述した複数の実施形態のいずれか1つの制震補強構造を適用する他、複数の実施形態の制震補強構造を適宜組み合わせて適用することも可能である。
【0058】
また、各制震装置20における左右2つのダンパ21として、粘性ダンパを用いたが、その長さ方向に減衰機能を発揮するものであれば、各種のダンパを採用することが可能である。
【0059】
また、実施形態で示した高架橋1の各構造材や制震装置20、ダンパ21の細部の構成などは、あくまで例示であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 鉄道高架橋
1A 第1実施形態の制震補強構造を適用した鉄道高架橋
1B 第2実施形態の制震補強構造を適用した鉄道高架橋
1C 第3実施形態の制震補強構造を適用した鉄道高架橋
1D 第4実施形態の制震補強構造を適用した鉄道高架橋
1E 第5実施形態の制震補強構造を適用した鉄道高架橋
1F 第6実施形態の制震補強構造を適用した鉄道高架橋
2 柱
3 橋脚
3A 第1橋脚
3B 第2橋脚
3C 第3橋脚
4 梁
4a 梁の張出し部
4aL 左側の張出し部
4aR 右側の張出し部
5 桁
6 床版
7 レール
8 線路
9 列車
11 第1補強梁
12 第2補強梁
12L 左側の第2補強梁
12R 右側の第2補強梁
13 間柱
13L 左側の間柱
13R 右側の間柱
20 第1実施形態の制震装置
20A 第2実施形態の前側の制震装置
20B 第2実施形態の後側の制震装置
20C 第3実施形態の制震装置
20D 第4実施形態の制震装置
20E 第5実施形態の制震装置
20F 第6実施形態の制震装置
21 ダンパ
21L 左側のダンパ
21R 右側のダンパ
22L 左柱側取付部
22R 右柱側取付部
23 第1補強梁側取付部
24 梁側取付部
25L 左第2補強梁側取付部
25R 右第2補強梁側取付部
26L 左間柱側取付部
26R 右間柱側取付部
27L 左張出し部側取付部
27R 右張出し部側取付部
P1 第1平面
P2 第2平面
P3 第3平面