(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114565
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】シングルジェット用パッキン及びシングルジェット
(51)【国際特許分類】
F04F 5/10 20060101AFI20230810BHJP
F04D 13/12 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
F04F5/10 A
F04D13/12 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016948
(22)【出願日】2022-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000148209
【氏名又は名称】株式会社川本製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】濱田 憲
(72)【発明者】
【氏名】疋田 開士
(72)【発明者】
【氏名】豊田 耕司
【テーマコード(参考)】
3H079
3H130
【Fターム(参考)】
3H079AA15
3H079AA23
3H079BB10
3H079CC20
3H079CC23
3H079DD46
3H130AA03
3H130AB22
3H130AB41
3H130AC06
3H130BA51F
3H130DC01X
3H130EB01F
3H130EB01J
3H130ED02F
3H130ED02J
(57)【要約】
【課題】水封性能が高く、グリップ力の制御が可能であって、且つ、固着を抑制できるシングルジェット用パッキン及びシングルジェットを提供すること。
【解決手段】水封部13は、基部11及びジェット部12の間の距離が変化するシングルジェット1に設けられる。水封部13は、基部11及びジェット部12により軸方向に支持される一対の支持部51、52と、一対の支持部51、52の間に、一対の支持部51、52に一体に環状に形成され、径方向の外方及び内方に交互に突出する複数の山部53a、及び、外方に突出する複数の山部53aのそれぞれの頂部に環状に形成された複数の突起53cを有し、外方に突出する隣り合う山部53a間の谷53bの深さが、内方に突出する隣り合う山部53a間の谷53bの深さよりも浅いパッキン部53と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部及びジェット部が相対回転することで前記基部及び前記ジェット部の間の距離が変化するシングルジェットに設けられ、前記基部及び前記ジェット部によって両端が軸方向に押圧されて圧縮するシングルジェット用パッキンであって、
前記基部及び前記ジェット部により軸方向に支持される一対の支持部と、
前記一対の支持部の間に、前記一対の支持部に一体に環状に形成され、径方向の外方及び内方に交互に突出する複数の山部、及び、前記外方に突出する前記複数の山部のそれぞれに設けられ、前記山部の頂部に環状に形成された複数の突起を有し、前記外方に突出する隣り合う前記山部の間に形成される谷の深さが、前記内方に突出する隣り合う前記山部の間に形成される谷の深さよりも浅いパッキン部と、
を備えるシングルジェット用パッキン。
【請求項2】
前記パッキン部は、前記一対の支持部が前記基部及び前記ジェット部により近接する方向に押圧されたときに、軸方向に圧縮され、隣り合う前記山部が密着し、前記複数の突起同士は接触する、請求項1に記載のシングルジェット用パッキン。
【請求項3】
前記複数の突起は、前記山部の頂部に3つ設けられ、
前記3つの突起は、離間して形成されるとともに、隣り合う前記突起は相対的に所定の角度で傾斜する、請求項1又は請求項2に記載のシングルジェット用パッキン。
【請求項4】
前記3つの突起のうち軸方向で中央側の前記突起は前記径方向に延び、前記3つの突起のうち前記軸方向で両端側の前記突起は、前記径方向及び前記軸方向に対して、前記中央側の突起から離間するように傾斜する、請求項3に記載のシングルジェット用パッキン。
【請求項5】
前記外方に突出する隣り合う前記山部の間に形成される谷の表面形状は、シボ形状に形成される、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のシングルジェット用パッキン。
【請求項6】
前記一対の支持部の一方を支持し、前記パッキン部のばね力で前記軸方向に移動できる、前記基部及び前記ジェット部により前記軸方向に押圧されるパッキン押さえを有する、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のシングルジェット用パッキン。
【請求項7】
基部と、
前記基部と流体的に連続するジェット部と、
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のシングルジェット用パッキンと、
を備えるシングルジェット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、井戸ケーシングを水封するシングルジェット用パッキン及びシングルジェットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、井戸ケーシングに固定されるシングルジェットの水封部に用いられるゴムパッキンとして、セパレートタイプ(例えば、特許文献1乃至特許文献4参照)とジャバラタイプ(例えば、特許文献5及び特許文献6参照)とが知られている。
【0003】
セパレートタイプのパッキンは、単数又は複数のパッキンを単数又は複数のパッキン押えで挟み込むことで、パッキンを潰して径方向に広げることで、井戸ケーシングに密着する。
【0004】
ジャバラタイプのパッキンは、ジャバラ形状の単体のパッキンを潰して押し広げることで、井戸ケーシングに密着する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭57-068200号公報
【特許文献2】実開昭51-080704号公報
【特許文献3】特開昭50-053907号公報
【特許文献4】実開昭48-054302号公報
【特許文献5】特開昭63-243499号公報
【特許文献6】実開昭57-101192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したシングルジェットのパッキンでは、セパレートタイプ及びジャバラタイプのそれぞれにおいて、以下の課題がある。
【0007】
セパレートタイプのパッキンは、複数の部品があり、水封部の形成及び解除の際に、動きが連動せずに、パッキンが個別でひっくり返る虞やめくれる虞があり、水封機能が安定しない場合がある。また、セパレートタイプのパッキンは、高強度のパッキン押えでパッキンを挟んでいることから、パッキンの広がり方向(形状)を制御しやすいため、比較的高圧に耐えられることから、比較的高い水封性能やグリップ力を得ることができるが、パッキン押えの型がパッキンについてしまい、井戸ケーシングからシングルジェットを抜き出すことが困難となる場合がある。また、シングルジェットを井戸ケーシングから抜き出せたとしても、パッキンにパッキン押えの型がついていることから、シングルジェットを井戸ケーシングに再挿入することが難しい。
【0008】
ジャバラタイプのパッキンは、水封動作の連動性がよく、引っ掛かりやめくれが生じることは無いが、広がり方向(形状)の制御が困難なため、水封性能やグリップ力がセパレートタイプに比べて低い。また、ジャバラタイプのパッキンは、性能向上のための奇抜な形状をとることができない。また、ジャバラタイプのパッキンは、ジャバラの山同士が密着するため、山同士が密着しやすく、固着する虞がある。固着防止として、別の引っかけ部品で強制的に引きはがす構造も知られているが、シングルジェットの部品数が多くなるという問題がある。
【0009】
そこで本発明は、水封性能が高く、グリップ力の制御が可能であって、且つ、固着を抑制できるシングルジェット用パッキン及びシングルジェットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態に係るシングルジェット用パッキンは、基部及びジェット部が相対回転することで前記基部及び前記ジェット部の間の距離が変化するシングルジェットに設けられ、前記基部及び前記ジェット部によって両端が軸方向に押圧されて圧縮するシングルジェット用パッキンであって、前記基部及び前記ジェット部により軸方向に支持される一対の支持部と、前記一対の支持部の間に、前記一対の支持部に一体に環状に形成され、径方向の外方及び内方に交互に突出する複数の山部、及び、前記外方に突出する前記複数の山部のそれぞれに設けられ、前記山部の頂部に環状に形成された複数の突起を有し、前記外方に突出する隣り合う前記山部の間に形成される谷の深さが、前記内方に突出する隣り合う前記山部の間に形成される谷の深さよりも浅いパッキン部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、水封性能が高く、グリップ力の制御が可能であって、且つ、固着を抑制できるシングルジェット用パッキン及びシングルジェットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係るシングルジェット及びシングルジェットを用いるポンプ装置の構成を模式的に示す説明図。
【
図2】同シングルジェットの水封部の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係るパッキンを用いたシングルジェットを、
図1乃至
図5を用いて以下説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係るシングルジェット1及びシングルジェット1を用いるポンプ装置100の構成を模式的に示す説明図である。
図2は、シングルジェット1の水封部13の構成を示す断面図であり、
図3は、水封部13の構成を示すとともに、設置の一例を示す断面図であり、
図4は、水封部13の構成を示すとともに、設置の一例を示す断面図である。
図5は、水封部13の構成を拡大して示す断面図である。
【0015】
図1に示すように、シングルジェット1は、ポンプ装置100に接続されるとともに、井戸200の井戸ケーシング210内に配置される。
【0016】
まず、ポンプ装置100について説明する。
図1に示すように、ポンプ装置100は、例えば、井戸200に配置される。
【0017】
ポンプ装置100は、ポンプ部110と、ポンプ部110に接続された吸込管120と、ポンプ部110に接続された圧力管130と、ポンプ部110に接続された吐出管140と、を備える。
【0018】
ポンプ部110は、例えば、ケーシングと、吸込管120、圧力管130及び吐出管140が接続されたポンプと、ポンプを駆動するモータと、モータを制御する制御装置と、を備える。ポンプ部110は、例えば、地上に設置される。ポンプ部110は、吸込管120から吸い込んだ水を増圧するとともに、増圧した水の一部を圧力管130から吐出するとともに、増圧した水の他の一部を吐出管140から給水先である二次側に給水する。
【0019】
吸込管120は、ポンプ部110及びシングルジェット1を流体的に接続する。
【0020】
圧力管130は、井戸ケーシング210に接続され、井戸ケーシング210にポンプ部110で増圧された水の一部を供給する。即ち、圧力管130は、ポンプ部110で増圧された圧力水を、井戸ケーシング210を介してシングルジェット1に供給する。
【0021】
吐出管140は、ポンプ部110と、ポンプ部110に接続された、例えば、シャワーヘッドや水道蛇口等の供給先とを接続する配管である。
【0022】
次に、井戸200について説明する。井戸200は、例えば、地面220等に樹脂材料等により形成された井戸ケーシング210が配置されることで設けられる。井戸200は、重力方向に沿って延設される。井戸ケーシング210は、水面より下方において、シングルジェット1によって水封された上下二つの室211、212が形成されており、上方の第1室211は、圧力管130及びシングルジェット1と接続され、下方の第2室212は、シングルジェット1に接続される。
【0023】
シングルジェット1は、例えば、基部11と、ジェット部12と、水封部13と、を備えている。基部11は、円筒状の本体部21と、本体部21の外周面に設けられた複数の固定部材22と、本体部21内に設けられた逆止弁23と、逆止弁23に接続されたストレーナ24と、を備えている。
【0024】
本体部21は、例えば、円筒状に形成される。本体部21は、その内周面に雌ねじ部21aが形成される。本体部21は、その外周面に、固定部材22を固定可能に形成される。また、本体部21のストレーナ24側とは反対側の端部(上端部)21bは、水封部13を支持する。
【0025】
固定部材22は、
図1に示すように、板状に形成され、一部が本体部21の軸方向に直交する径方向に突起するように曲折して形成されている。複数の固定部材22は、本体部21に固定された状態において、本体部21の外周面から径方向外方に突出することで、複数の固定部材22の頂部の外接円が井戸ケーシング210の内径よりも大径に形成される。よって、基部11が井戸ケーシング210内に挿入されたときに、複数の固定部材22の頂部が井戸ケーシング210の内周面と接触し、当該接触により弾性変形する。弾性変形した複数の固定部材22は、ばね力によって本体部21を井戸ケーシング210に固定できる。
【0026】
逆止弁23は、本体部21の端部に設けられ、重力方向に落下する方向の水の流れを規制可能に形成されている。即ち、逆止弁23は、ポンプ部110側から逆止弁23よりも下方の井戸ケーシング210への水の逆流を防止する。
【0027】
ストレーナ24は、井戸水中の所定の大きさや粒径の異物がシングルジェット1から吸い込まれることを防止する。
【0028】
ジェット部12は、その一端が吸込管120に接続されるとともに、その他端が基部11に接続され、中途部が井戸ケーシング210の第1室211を介して圧力管130に接続される。具体例として、ジェット部12は、ディフューザ31と、ディフューザ31の下方に設けられるケーシング32と、ケーシング32内に設けられるジェットノズル33と、ケーシング32の下端に接続される、本体と接続される管部34と、を備える。
【0029】
ディフューザ31は、吸込管120に接続される。ケーシング32は、円筒状に形成される。ケーシング32は、圧力管130及び第1室211及びジェットノズル33を接続する第1流路32aと、管部34及びディフューザ31を接続する第2流路32bと、を有する。また、ケーシング32は、管部34が接続される側の端部に水封部13の一方の端部を支持する座面を形成する座部32cを有する。
【0030】
ここで、第1流路32aは、ケーシング32の下方の外周面の一部が開口するとともに、中央側、且つ、上方の端部に向かって湾曲する流路であり、ケーシング32の外周面に形成された開口32d及びケーシング32内を仕切る壁32eとにより形成される。
【0031】
ジェットノズル33は、ディフューザ31の端部と所定の距離を開けて対向する。ジェットノズル33は、中心に、第1流路32aと連続する開口を有する。ジェットノズル33は、例えば、ディフューザ31と対向する先端から後端に向かって外径が漸次拡径する。そして、ジェットノズル33は、ジェットノズル33の先端側の外周面とディフューザ31の下端の内周面との隙間が第2流路32bと連続する。
【0032】
管部34は、円筒状の配管である。管部34は、一端がネジ等の締結部材35によってケーシング32に固定される。管部34は、他端(下端)の外周面に形成され、本体部21の雌ねじ部21aと螺合可能な雄ねじ部34aを有する。管部34は、水封部13を挿入可能な外径に形成される。ケーシング32に固定された管部34は、雄ねじ部34aと本体部21の雌ねじ部21aとが螺合することで、本体部21に対して移動可能に形成されている。即ち、シングルジェット1は、管部34の本体部21へのねじ込み量によって、ケーシング32及び本体部21の間の距離を可変可能に形成される。
【0033】
水封部13は、軸方向に圧縮されることで弾性変形し、井戸ケーシング210及び管部34に密着することで、井戸ケーシング210内を液密に第1室211及び第2室212を区画するパッキンである。水封部(パッキン)13は、パッキン本体41と、パッキン押え42と、を備える。
【0034】
パッキン本体41は、第1支持部51と、第2支持部52と、第1支持部51及び第2支持部52の間に形成されたパッキン部53と、を備える。第1支持部51、第2支持部52及びパッキン部53は、例えば、ゴム材料等の樹脂材料によって一体成型される。
【0035】
第1支持部51及び第2支持部52は、基部11及びジェット部12に直接的に、又は、間接的に支持される一対の支持部を構成する。
【0036】
第1支持部51は、円筒状に形成される。第1支持部51の内径は、例えば、管部34の外径と同一径か、又は、管部34の外径よりも若干小径に形成される。第1支持部51は、本体部21のディフューザ31の座部32cに支持される。
【0037】
第2支持部52は、円筒状に形成される。第2支持部52の内径は、例えば、管部34の外径よりも若干大経に形成される。即ち、パッキン本体41が軸方向に圧縮されるか、又は、圧縮された状態から復元されたとき、第1支持部51は移動せず、第2支持部52が軸方向に移動する。第2支持部52は、パッキン押え42の端部(上端部)と当接し、パッキン押え42を介して本体部21の上端に支持される。
【0038】
パッキン部53は、第1支持部51及び第2支持部52の間に、この一対の支持部51、52に一体に形成される。パッキン部53は、環状に形成され、径方向の外方及び内方に交互に突出する複数の山部53aが形成される。よって、パッキン部53は、同方向に突出する隣り合う山部53aに隣接する部位に、山部53aの突出方向とは逆方向に窪む複数の谷部(谷)53bが形成される。即ち、同方向に突出する隣り合う山部53aの間の谷部53bは、谷部53bに隣接する山部53aとは反対方向に突出する山部53aの裏面側を構成する。
【0039】
複数の谷部53bは、パッキン部53の径方向の外方側が径方向の内方側よりも浅い。換言すると、パッキン部53の外周面から中心軸側に窪む複数の谷部53bの深さは、パッキン部53の内周面から径方向外方側に窪む複数の谷部53bの深さよりも浅い。また、少なくとも径方向内方側に窪む複数の谷部53bの外面(深さが浅い複数の谷部53bの表面)は、シボ加工等によってシボ形状に形成される。なお、径方向内方側及び外方側に窪む全ての複数の谷部53bの外面がシボ形状に形成されることが好ましい。
【0040】
また、パッキン部53は、複数の山部53aのそれぞれに設けられ、山部53aの頂部に環状に形成された複数の突起53cを有する。
【0041】
突起53cは、例えば、
図5に示すように、3つ設けられる。3つの突起53cは、離間する。また、3つの突起53cのうち隣り合う突起53cは、相対的に所定の角度で傾斜する。例えば、3つの突起53cのうち、中央に設けられる第1突起53c1は、非圧縮状態において、パッキン部53の径方向で外方に向かって突出する。3つの突起53cのうち、パッキン部53の軸方向で両端側に設けられる2つの第2突起53c2は、第1突起53c1に対して所定の形状に形成される。換言すると、第2突起53cは、パッキン部53の軸方向及び径方向に対して傾斜する。例えば、3つの突起53cは、パッキン部53が軸方向に圧縮されると、複数の山部53aが圧縮されていき、径方向外方に突出する山部53aが径方向に広がると、先ず、中央の第1突起53c1が井戸ケーシング210に当接し、さらに、パッキン部53の圧縮が進むと、第2突起53c2も井戸ケーシング210に当接する。
【0042】
パッキン押え42は、円筒状に形成され、管部34の外径よりも内径が大径であって、且つ、第2支持部52を支持可能な径に形成される。パッキン押え42は、パッキン部53の軸方向の復元力によって、管部34に沿って軸方向に移動する。
【0043】
このように構成されたシングルジェット1によれば、パッキン本体41は、例えば、一端がジェット部12のケーシング32の座部32cに直接的に支持され、他端がパッキン押え42を介して基部11の本体部21の端部(上端部)21bに間接的に支持される。そして、ジェット部12の管部34が本体部21に螺合することで、本体部21への管部34の挿入長さを変えることで、ジェット部12の座部32cと基部11の端部21bとの間の距離が変わる。
【0044】
このため、管部34を本体部21に対して回転させることで、パッキン部53の軸方向の潰れ量を変えることで、径方向外方に突出する複数の山部53aの径方向外方への広がる量を変えることができる。
【0045】
次に、シングルジェット1の井戸ケーシング210への取り付け(水封動作)及びシングルジェット1の井戸ケーシング210からの取り外し(水封解除動作)について、
図2乃至
図4を用いて説明する。先ず、シングルジェット1を井戸ケーシング210内に挿入する。このとき、
図2に示すように、井戸ケーシング210の内周面に複数の固定部材22が当接した状態であって、且つ、井戸ケーシング210の内周面にパッキン本体41が非接触の状態で、シングルジェット1が井戸ケーシング210内に挿入される。
【0046】
複数の固定部材22により、シングルジェット1は、下方に押し込むことで井戸ケーシング210に軸方向に移動可能であるが、下方への押し込みが成されない場合には、シングルジェット1は、井戸ケーシング210に保持される。また、周方向に回転が規制される。
【0047】
シングルジェット1を井戸ケーシング210内の水面よりも下に配置したら、次に、ジェット部12を、ジェット部12が基部11に近づく方向に回転させる。このとき、基部11は、複数の固定部材22によって井戸ケーシング210に固定されている。よって、ジェット部12は、基部11に対して回転し、ジェット部12の管部34が、基部11の本体部21に螺合し、ケーシング32の座部32cが下方に移動する。これにより、本体部21の端部21b及びケーシング32の座部32cの距離が短くなり、パッキン本体41が本体部21の端部21b及びケーシング32の座部32cにより軸方向に圧縮(押圧)される。このとき、第1支持部51が第2支持部52に向かって軸方向に移動することから、パッキン部53が圧縮される。パッキン部53が軸方向に圧縮されると、パッキン部53の山部53aが潰れる。
【0048】
これにより、先ず、
図3に示すように、パッキン部53の径方向に突出する複数の山部53aに設けられた3つの突起53cのうち、中央にある第1突起53c1が井戸ケーシング210の内周面に密着する。
【0049】
さらにジェット部12が基部11に対して回転すると、本体部21の端部21b及びケーシング32の座部32cの距離がさらに短くなり、パッキン部53が軸方向にさらに圧縮され、パッキン部53の山部53aがさらに潰れる。
【0050】
これにより、
図4に示すように、複数の山部53aに設けられた3つの突起53cのうち残りの第2突起53c2も井戸ケーシング210の内周面に密着する。また、パッキン部53が軸方向に圧縮されることから、
図5に示すように、第2突起53c2は、第1突起53c1に軸方向で密着する。また、
図5に示すように、隣接する山部53aの第2突起53c2同士も軸方向で密着する。
【0051】
パッキン部53は、井戸ケーシング210に密着することから、井戸ケーシング210に高いグリップ力を生じさせるため、シングルジェット1が強固に井戸ケーシング210に保持されるとともに、井戸ケーシング210内を2つの第1室211及び第2室212に区画するとともに、第1室211及び第2室212を水封する。
【0052】
また、シングルジェット1を深井戸から取り外す場合には、ジェット部12を、ジェット部12が基部11に離れる方向に回転させる。これにより、ジェット部12が基部11に対して回転し、ジェット部12の管部34が、基部11の本体部21から離れ、ケーシング32の座部32cが上方に移動する。
【0053】
これにより、本体部21の端部21b及びケーシング32の座部32cの距離が長くなり、パッキン本体41が軸方向に復元される。また、複数の谷部53b(複数の山部53a)の外面がシボ形状であることから、潰れた複数の山部53aの復元が促される。また、パッキン押え42は、パッキン本体41よりも下方にあることから、自重によって下方への移動が促される。これらにより、パッキン本体41が復元し、井戸ケーシング210から離間する。
【0054】
そして、
図2に示すように、シングルジェット1は、井戸ケーシング210に複数の固定部材22によって保持された状態であることから、シングルジェット1を吊り上げることで、シングルジェット1を井戸ケーシング210から取り出すことができる。
【0055】
このように構成されたシングルジェット1は、パッキン本体41が軸方向に潰れて、パッキン部53が径方向外方へ広がったときに、複数の突起53cが井戸ケーシング210に密着することで、高い水封性とグリップ力を得ることができる。また、パッキン部53が潰れたときに、各山部53aに設けられた隣り合う突起53c同士が密着し、井戸ケーシング210と接触することで、高いグリップ力を得るとともに、パッキン部53の強度を向上させることができる。
【0056】
また、
図3及び
図4に示すように、先ず、パッキン部53の第1突起53c1が井戸ケーシング210内に接触し、その後、第2突起53c2が井戸ケーシング210内に接触する。よって、パッキン部53により生じるグリップ力も第1突起53c1が接触したときよりも第2突起53c2が接触したときに大きくなる。このため、パッキン部53のグリップ力をジェット部12の回転量によって制御できることから、水封性能を所定の能力だけ確保する前に、パッキン部53によるグリップ力が増加して、ジェット部12が回転しなくなることを防止できる。このため、シングルジェット1は、水封性能を確実に得ることができる。
【0057】
また、第2突起53c2が第1突起53c1に対して傾斜することで、
図5に矢印で示すように、圧力管130側から供給される圧力水の圧力が上端側に位置する第2突起53c2に印加されると、線接触を促進できる。即ち、パッキン部53の複数の突起53cは、井戸ケーシング210と線接触を促進する形状を有することから、パッキン部53は、高い密封性を有する。
【0058】
また、パッキン本体41の第2支持部52の内径及びパッキン押え42の内径を、管部34の外径よりも大径としていることから、水封動作及び水封解除動作として、ジェット部12を回転させたときに、パッキン本体41及びパッキン押え42の軸方向の移動をスムースに行うことが可能となる。よって、水封解除動作において、圧縮されたパッキン本体41が復元するときに、隣り合う複数の山部53a同士が固着することを抑制できる。
【0059】
また、少なくとも径方向内方側に窪む複数の谷部53bの外面、即ち、少なくともパッキン本体41の外面である、複数の山部53a及び複数の谷部53bの山谷面は、シボ加工等によってシボ形状に形成される。よって、水封解除動作において、圧縮されたパッキン本体41が復元するときに、隣り合う複数の山部53a同士が固着することを抑制できる。
【0060】
上述したように、本発明の一実施形態に係る水封部(パッキン)13を有するシングルジェット1によれば、水封性能が高く、且つ、グリップ力の制御が可能であって、且つ、固着を抑制できる。
【0061】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されない。例えば、上述した例では、下方に位置する第2支持部52をパッキン押え42で支持する構成を説明したがこれに限定されない。即ち、下方に位置する第2支持部52の内径を管部34の外径よりも大径とすることで、水封解除動作時に、パッキン部53の復元がスムースとなる為、パッキン部53の固着を抑制できる。但し、シングルジェット1は、パッキン押え42を有する方が好ましい。
【0062】
また、パッキン部53が3つの突起53cを有する構成を説明したがこれに限定されない。例えば、突起53cは、4以上であってもよい。また、パッキン本体41は、パッキン部53の外方の複数の谷部53bの外面をシボ形状とする構成を説明したがこれに限定されず、パッキン部53の複数の突起53cを除くパッキン部53の全表面、パッキン部53の全表面、又は、パッキン本体41の全表面をシボ形状とする構成であってもよい。
【0063】
また、パッキン本体41は、シボ形状の表面を有さない構成としてもよい。但し、シボ形状の表面を有した方が圧縮したパッキンが固着することを抑制できることから、パッキン本体41は、圧縮したときに表面(外面)同士が接触する部位を少なくともシボ形状することが好ましい。
【0064】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0065】
1…シングルジェット、11…基部、2…ジェット部、13…水封部、21…本体部、32…ケーシング、33…ジェットノズル、34…管部、34a…雄ねじ部、35…締結部材、41…パッキン本体、42…パッキン押え、51…第1支持部、52…第2支持部、53…パッキン部、53a…山部、53b…谷部(谷)、53c…突起、53c1…第1突起、53c2…第2突起、100…ポンプ装置、110…ポンプ部、120…吸込管、130…圧力管、140…吐出管、200…井戸、210…井戸ケーシング、211…第1室、212…第2室。