(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114570
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】人形玩具の顔部構造及び人形玩具
(51)【国際特許分類】
A63H 3/36 20060101AFI20230810BHJP
A63H 3/38 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
A63H3/36 C
A63H3/38 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016958
(22)【出願日】2022-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】509159414
【氏名又は名称】有限会社ダイスプロジェクト
(74)【代理人】
【識別番号】100073210
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100173668
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 吉之助
(72)【発明者】
【氏名】吉永 恒
【テーマコード(参考)】
2C150
【Fターム(参考)】
2C150AA05
2C150BC02
2C150CA04
2C150FB43
(57)【要約】
【目的】軟質合成樹脂製の顔部品における目の表現において製品不良を起こすことなく正確な目の表現が得られる人形玩具の顔部構造及び人形玩具を提供する。
【構成】人形玩具の顔部構造において、
該顔部構造が、
少なくとも顔面の略全域を構成し、目の位置に孔部が設けられた軟質合成樹脂製の顔部品と、
前記孔部に取り付けられ、黒目部(瞳孔、虹彩)と白目部(結膜)と目の縁部(目の輪郭線)が一回の成形で一つの部品として一体成形された目部品と、
を有して成る構成であり、
前記目部品が、目の縁部の色と同色と成る樹脂で成形され、黒目部と白目部が成形後の着色によって施される構成である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人形玩具の顔部構造において、
該顔部構造が、
少なくとも顔面の略全域を構成し、目の位置に孔部が設けられた軟質合成樹脂製の顔部品と、
前記孔部に取り付けられ、黒目部(瞳孔、虹彩)と白目部(結膜)と目の縁部(目の輪郭線)が一回の成形で一つの部品として一体成形された目部品と、
を有して成る構成であり、
前記目部品が、目の縁部の色と同色と成る樹脂で成形され、黒目部と白目部が成形後の着色によって施される構成であること、
を特徴とする人形玩具の顔部構造。
【請求項2】
前記顔部品がポリ塩化ビニル(PVC)製であることを特徴とする請求項1に記載の人形玩具の顔部構造。
【請求項3】
前記目部品が一回の射出成形で形成される構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載の人形玩具の顔部構造。
【請求項4】
前記目部品が硬質合成樹脂製であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の人形玩具の顔部構造。
【請求項5】
前記目部品の黒目部と白目部がインクジェット印刷によって施される構成であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の人形玩具の顔部構造。
【請求項6】
前記孔部が、顔面に形成された凹部であり、該凹部に目部品が外側から嵌め込まれる構成であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の人形玩具の顔部構造。
【請求項7】
前記目の縁部が、まつ毛を含む構成であることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の人形玩具の顔部構造。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の人形玩具の顔部構造を有する顔部が設けられる構成であることを特徴とする人形玩具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人形玩具の顔部構造及び人形玩具に関し、詳しくは人形玩具の頭部における顔部の構成であって、軟質合成樹脂製の顔部品に別体構成の目部品が取り付けられる構成の人形玩具の顔部構造、及びこの顔部構造を用いた人形玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
人形玩具の顔部は、加工性に優れると共に人肌等の質感を表現し易い素材であるポリ塩化ビニル(PVC)に代表される軟質合成樹脂で形成されたものが多く、この顔部において目部分である黒目部(瞳孔、虹彩)と白目部(結膜)はマスク塗装やタンポ印刷を顔面に直接施すことによって表現されていることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、軟質合成樹脂製である顔部品は変形し易いため、成形時の歪み等によってマスク塗装時やタンポ印刷時に目の位置ズレが生じ易く、僅かな位置ズレによって所望の目の表現や顔の表情が得られなかったり、場合によっては規定する目の位置から外れることによって製品不良が生じ易い等の問題があった。特に、人形玩具の顔の表現において「目は命」とされており、目の出来如何によって人形玩具の価値が決まることもあるため正確な目の表現は極めて重要である。
【0004】
そこで本発明の課題は、軟質合成樹脂製の顔部品における目の表現において製品不良を起こすことなく正確な目の表現が得られる人形玩具の顔部構造及び人形玩具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する本発明は下記構成を有する。
【0006】
1.人形玩具の顔部構造において、
該顔部構造が、
少なくとも顔面の略全域を構成し、目の位置に孔部が設けられた軟質合成樹脂製の顔部品と、
前記孔部に取り付けられ、黒目部(瞳孔、虹彩)と白目部(結膜)と目の縁部(目の輪郭線)が一回の成形で一つの部品として一体成形された目部品と、
を有して成る構成であり、
前記目部品が、目の縁部の色と同色と成る樹脂で成形され、黒目部と白目部が成形後の着色によって施される構成であること、
を特徴とする人形玩具の顔部構造。
【0007】
2.前記顔部品がポリ塩化ビニル(PVC)製であることを特徴とする上記1に記載の人形玩具の顔部構造。
【0008】
3.前記目部品が一回の射出成形で形成される構成であることを特徴とする上記1又は2に記載の人形玩具の顔部構造。
【0009】
4.前記目部品が硬質合成樹脂製であることを特徴とする上記1~3のいずれかに記載の人形玩具の顔部構造。
【0010】
5.前記目部品の黒目部と白目部がインクジェット印刷によって施される構成であることを特徴とする上記1~4のいずれかに記載の人形玩具の顔部構造。
【0011】
6.前記孔部が、顔面に形成された凹部であり、該凹部に目部品が外側から嵌め込まれる構成であることを特徴とする上記1~5のいずれかに記載の人形玩具の顔部構造。
【0012】
7.前記目の縁部が、まつ毛を含む構成であることを特徴とする上記1~6のいずれかに記載の人形玩具の顔部構造。
【0013】
8.上記1~7のいずれかに記載の人形玩具の顔部構造を有する顔部が設けられる構成であることを特徴とする人形玩具。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に及び8に示す発明によれば、軟質合成樹脂製の顔部品における目の表現において製品不良を起こすことなく正確な目の表現が得られる人形玩具の顔部構造及び人形玩具を提供することができる。
特に、軟質合成樹脂製の顔部品とは別に目部品を形成し、目の縁部(目の輪郭線)はこの目の縁部を表現する色と同色の樹脂で成形されるため、目の輪郭が位置ズレを起こしたり、目の輪郭線が顔部品に描かれてしまう等の不良が生じてしまうこともない。
また、目の黒目部(瞳孔、虹彩)と白目部(結膜)は、目部品の成形後に目部品そのものに着色することによって施される構成のため、軟質合成樹脂製である顔部品の変形や歪みの影響を受けることないだけでなく、顔部品に黒目部や白目部の塗料等の着色材が付着してしまうこともない。
従って、目の縁部(目の輪郭線)、黒目部(瞳孔、虹彩)、白目部(結膜)を正確且つ確実に表現することができるので製品不良率を著しく下げることができる。
【0015】
請求項2に示す発明によれば、変形し易く成形時の歪み等が生じることが有る軟質合成樹脂を顔部品の材料として適用しても、目の縁部(目の輪郭線)、黒目部(瞳孔、虹彩)、白目部(結膜)を正確且つ確実に表現することができるため、顔部品の材料として加工性に優れると共に人肌等の質感を表現し易い素材であるポリ塩化ビニル(PVC)を用いることができる。
【0016】
請求項3に示す発明によれば、複数種類や複数色の樹脂を用いて複数回インサート成形する等の手間及びコストのかかる成形手段を採ることなく、目の縁部(目の輪郭線)、黒目部(瞳孔、虹彩)、白目部(結膜)が正確且つ確実に表現された目部品を低コストで得ることができる。
【0017】
請求項4に示す発明によれば、着色を施す際に変形や歪み等が生じ難いため目の縁部(目の輪郭線)、黒目部(瞳孔、虹彩)、白目部(結膜)を正確且つ確実に表現することができる。
【0018】
請求項5に示す発明によれば、目部品の樹脂色にかかわらず黒目部(瞳孔、虹彩)と白目部(結膜)の色彩を正確且つ確実に表現することができる。
また、黒目部(瞳孔、虹彩)と白目部(結膜)とを同時に印刷することができる。
【0019】
請求項6に示す発明によれば、目部品を顔部品の目の位置の凹部に外側から圧入したり嵌め込むだけで取付けることができる。
【0020】
請求項7に示す発明によれば、まつ毛を表現する際も位置ズレを起こして顔部品側に塗料等の着色材を付着させることなく正確且つ確実に表現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に用いられる顔部構造の一実施例を示す斜め前方斜視図
【
図5】本発明に用いられる目部品の成形直後の状態を示す前方斜視図
【
図6】本発明に用いられる目部品の黒目部と白目部の着色後の状態を示す前方斜視図
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、添付の図面に従って本発明を詳細に説明する。
【0023】
本発明に係る人形玩具の顔部構造(以下、単に「顔部構造」ということもある。)は、人形玩具の頭部における顔部の構成であって、軟質合成樹脂製の顔部品に別体構成の目部品が取り付けられる構成の人形玩具の顔部構造であり、
図1~
図7に示すように、
該顔部構造1が、
少なくとも顔面の略全域を構成し、目の位置に孔部21・21が設けられた軟質合成樹脂製の顔部品2と、
前記孔部21・21に取り付けられ、黒目部(瞳孔、虹彩)31と白目部(結膜)32と目の縁部(目の輪郭線)33が一回の成形で一つの部品として一体成形された目部品3・3と、
を有して成る構成であり、
前記目部品3が、目の縁部33の色と同色と成る樹脂で成形され、黒目部31と白目部32が成形後の着色によって施される構成であること、
を主構成とするものである。
【0024】
上記の顔部構造1は、図示しない頭髪部や後頭部等が取り付けられると共に首部を介して胴体部に取り付けられ、この胴体部に腕や脚が取り付けられると共に衣装が施されることにより人形玩具を構成することになるものである。この人形玩具の構成としては、関節部が可動するものなどの種々公知公用の様々な構成の人形を特別の制限なく挙げることができ、その素材についても種々公知公用の素材(例えば、硬質合成樹脂や軟質合成樹脂等)を特別の制限なく挙げることができる。尚、適用される人形玩具としては、人間(ヒト)に限らず、顔面に目を有する動物・生物(実在する生物、想像上の生物等を含む)等を挙げることができる。
【0025】
前記顔部品2を形成する軟質合成樹脂としては、この種の人形玩具の顔部品として公知公用の合成樹脂を挙げることができるが、加工性に優れると共に人肌等の質感を表現し易い素材であるポリ塩化ビニル(PVC)が最も好ましい。
【0026】
前記顔部品2の目の位置に設けられた孔部21・21は凹部であることが好ましく、この凹部の夫々に目部品3・3が外側から嵌め込まれる構成である。また、本実施例では、凹部である孔部21の奥底部に+型孔22が穿かれており、この+型孔22に嵌入する+型突起34が目部品3の背面に設けられている。かかる構成によれば、目部品3・3を顔部品2の目の位置の凹部である孔部21・21に外側から圧入したり嵌め込むだけで極めて容易且つ正確に取付けることができる。
【0027】
前記目部品3は、特に着色時において変形や歪み等が生じ難いため硬質合成樹脂製であることが好ましく、中でもABS樹脂が最も好ましい。
【0028】
前記目部品3は、上記したように、黒目部(瞳孔、虹彩)31と白目部(結膜)32と目の縁部(目の輪郭線)33が一回の成形で一つの部品として一体成形され、且つ、目の縁部33の色と同色と成る樹脂で成形される構成である。例えば、目の縁部33を黒色で表現する場合は成形後に黒色を呈する合成樹脂が用いられ、目の縁部33を茶色で表現する場合は成形後に茶色を呈する合成樹脂が用いられる。尚、目部品3の成形は射出成形で形成されることが好ましい。尚また、この射出成形は一回で行われることが特に好ましい。
【0029】
図5~
図7において、符号35は樹脂成形時のランナー、符号36はランナー35と目部品3とをつなぐゲートであり、目部品3・ランナー35・ゲート36を含むこの部品全体は目の縁部33を表現する色の合成樹脂によって成形されることになるため、目の縁部33と同色の単色構成となる。
【0030】
また、目の縁部33としては、目の輪郭線だけでなく、まつ毛(図示しない)を含む構成であってもよい。まつ毛を含む構成においても、まつ毛の部分は印刷や塗装等による着色ではなく樹脂の成形色であるため、塗料等の着色材が位置ズレを起こして顔部品2側に付着する等の製品不良を起こすことなく正確且つ確実にまつ毛を表現することができる。
【0031】
前記目部品3は、成形後、ランナー35にゲート36でつながった状態で
図6に示すように黒目部31と白目部32が着色によって施され、その後、目部品3はゲート36との境目からゲートカットすることで切り離されて用いられることになる。黒目部31は黒目を表現する瞳孔や虹彩の色・模様が施され、白目部32は通常は結膜の色である白色が施されるが、この人形玩具の種類(求められるキャラクター設定等)によって黒目部31・白目部32の色・模様は種々様々な着色が適宜設定されて施されることになる。
【0032】
黒目部31・白目部32に施す着色手段としては、インクジェット印刷が好ましい。インクジェット印刷によって着色を施す構成によれば、目部品3の樹脂色にかかわらず黒目部31と白目部32の色彩を正確且つ確実に表現することができる。また、黒目部31と白目部32とを同時に印刷することも可能である。従って、黒目部31・白目部32の着色が正確且つ確実に、しかも短時間で可能となる。
【0033】
以上、本発明に係る人形玩具の顔部構造について実施例に基づき説明したが、本発明は上記実施例に限定されず、本発明の範囲内において種々様々な他の態様を採ることもできる。
【0034】
例えば、上記実施例では顔部品2に設けられて目部品3が取り付けられる孔部21・21は凹部であったが、貫通孔であってもよく、またこの貫通孔である孔部21・21への目部品3・3の取付けは外側からの圧入や嵌め込みに限らず、内側からの圧入や嵌め込みであってもよい。
【0035】
顔部品2の孔部21・21への目部品3・3の取付手段としては、圧入や嵌め込みに限らず、接着、溶着、貼着、ネジ留め等の固定手段であってもよい。
【0036】
また、目部品3・3は上記実施例では左右一つずつ独立した部品構成であったが、連結部等を介して左右の目部品3・3が連結した一つの部品構成であってもよい。この場合、孔部21・21への取付けは顔部品2の内側から取り付けられ、前記連結部は外部から見えない構成となることは勿論である。
【符号の説明】
【0037】
1 顔部構造
2 顔部品
21 孔部
22 +型孔
3 目部品
31 黒目部(瞳孔、虹彩)
32 白目部(結膜)
33 目の縁部(目の輪郭線)
34 +型突起
35 ランナー
36 ゲート