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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114574
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/822 20060101AFI20230810BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20230810BHJP
   H10B 53/30 20230101ALI20230810BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20230810BHJP
   H01G 4/10 20060101ALI20230810BHJP
   H01G 4/00 20060101ALI20230810BHJP
   H01G 4/33 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
H01L27/04 C
H01L21/316 B
H01L27/11507
H01L29/78 301G
H01L29/78 617V
H01G4/10
H01G4/00 A
H01G4/33 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016963
(22)【出願日】2022-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000173522
【氏名又は名称】一般財団法人ファインセラミックスセンター
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(72)【発明者】
【氏名】小林 俊介
【テーマコード(参考)】
5E082
5F038
5F058
5F083
5F110
5F140
【Fターム(参考)】
5E082EE05
5E082EE23
5E082FF05
5E082FG03
5E082FG27
5E082FG42
5F038AC05
5F038AC15
5F038DF05
5F038EZ14
5F038EZ20
5F058BD05
5F058BF17
5F083FR01
5F083GA27
5F083JA02
5F083JA14
5F083JA19
5F083JA38
5F083JA39
5F083JA40
5F083JA44
5F083JA60
5F083PR21
5F110CC07
5F110DD02
5F110DD13
5F110EE02
5F110EE03
5F110EE04
5F110EE06
5F110FF01
5F110FF27
5F110GG01
5F110HK02
5F110HK03
5F110HK04
5F110HK06
5F110NN02
5F110NN22
5F110NN23
5F110NN24
5F140AC32
5F140AC36
5F140BA02
5F140BD11
5F140BE09
5F140BE10
5F140BF05
5F140BF07
(57)【要約】
【課題】電気的絶縁性層、導電性層及び半導体層から選ばれた下地層の少なくとも一部の表面に酸化ハフニウム含有層等を備える電子部品の効率よい製造方法を提供する。また、酸化ハフニウム含有層をカーボンフリーとした電子部品の効率よい製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、電気的絶縁性層、導電性層及び半導体層から選ばれた下地層を備える第1部材3の該下地層の表面に滞留させた、酸化ハフニウムの前駆体14からなる前駆体ガス5に、荷電粒子線を照射し、下地層の少なくとも一部の表面に、酸化ハフニウム含有層を形成する荷電粒子線照射工程を備える電子部品製造方法である。酸化ハフニウム含有層をカーボンフリーとするために、荷電粒子線照射工程において、プラズマガス7の存在下、下地層表面に滞留する前駆体ガス5に荷電粒子線を照射することが好ましい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的絶縁性層、導電性層及び半導体層から選ばれた下地層の少なくとも一部の表面に酸化ハフニウム含有層を備える電子部品を製造する方法であって、
前記下地層を備える第1部材の該下地層の表面に滞留させた、酸化ハフニウムの前駆体からなる前駆体ガスに、荷電粒子線を照射し、前記下地層の少なくとも一部の表面に、前記酸化ハフニウム含有層を形成する荷電粒子線照射工程を備えることを特徴とする、電子部品製造方法。
【請求項2】
前記荷電粒子線照射工程において、プラズマガスの存在下、前記前駆体ガスに前記荷電粒子線を照射する請求項1に記載の電子部品製造方法。
【請求項3】
前記プラズマガスが、酸素元素を含む物質からなる請求項2に記載の電子部品製造方法。
【請求項4】
前記電子部品が、コンデンサー装置、強誘電体メモリー装置及び半導体装置から選ばれた少なくとも一種である請求項1から3のいずれか一項に記載の電子部品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線誘起蒸着法を利用して、酸化ハフニウムを含む層又は膜を備える電子部品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化ハフニウムは、その高い誘電率を生かして、コンデンサー装置、強誘電体メモリー装置、半導体装置等における強誘電性層、電気的絶縁性層(以下、単に「絶縁層」ということがある)等の形成に用いられている。
例えば、特許文献1には、強誘電性/反強誘電性(FE/AFE)誘電層を有する可変コンデンサーを形成する方法であって、基板上にプラチナまたはイリジウムの金属電極層を形成するステップであって、金属電極層は、少なくとも80%の{111}結晶面を有する露出表面を有する、金属電極層を形成するステップと、金属電極層の露出表面上にFE/AFE誘電層を形成するステップであって、FE/AFE誘電層は、4族遷移金属酸化物である、FE/AFE誘電層を形成するステップと、FE/AFE誘電層の上に第2の金属電極層を形成するステップと、金属電極層、FE/AFE誘電層および第2の金属電極層をパターン形成して約20nmから約100nmの範囲の幅を有する可変コンデンサーを形成するステップとを含む、方法が開示されている。そして、FE/AFE誘電層の形成方法として、化学溶液堆積法、PVD(例、スパッタリング)、原子層堆積法(ALD:atomic layer deposition)、プラズマ強化原子層堆積法(PEALD:plasma enhanced atomic layer deposition)、化学蒸着法(CVD:chemical vapor deposition)、プラズマ強化化学蒸着法(PECVD:plasma enhanced chemical vapor deposition)、金属有機化合物化学蒸着法(MOCVD:metal-organic chemical vapor deposition)、プラズマ強化金属有機化合物化学蒸着法(PEMOCVD:plasma enhanced metal-organic chemical vapor deposition)等が例示されている。
【0003】
また、特許文献2には、(a)半導体基板上に、ハフニウムおよびジルコニウムの少なくとも一方と酸素とを主成分とする金属酸化膜を堆積する工程、(b)金属酸化膜上に導体膜を堆積する工程、(c)金属酸化膜にマイクロ波加熱処理を施す工程、(d)導体膜上に半導体膜を堆積する工程、(e)半導体膜、導体膜および金属酸化膜をパターニングして、ゲート電極および強誘電体膜を形成する工程を有し、ゲート電極および強誘電体膜は、強誘電体メモリセルを構成している、半導体装置の製造方法が開示されている。そして、金属酸化膜の堆積方法として、ALD法が例示されている。
【0004】
更に、特許文献3には、基板を準備する工程と、強誘電体薄膜を形成する酸化物の前駆体原料を含む液滴状の材料を利用して、基板上に、直方晶構造の酸化ハフニウム結晶を含む強誘電体薄膜を形成する工程とを含む強誘電体薄膜の製造方法が開示されている。そして、強誘電体薄膜を形成する工程として、ミストCVD法により、ハフニウム(Hf)と酸素(O)を含む少なくとも1種類の有機化合物とを含む化合物、ハフニウム(Hf)のハロゲン化物、ハフニウム(Hf)を含む硫酸塩、及び、ハフニウム(Hf)を含む硝酸塩の中から選択された前駆体原料を基板の表面に供給する方法が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-503717号公報
【特許文献2】特開2018-195767号公報
【特許文献3】特開2021-61360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2及び3に記載されたALD、CVD等の化学気相成長法や、PLD、MBE等の物理気相蒸着法の場合、例えば、微細なパターンを有する酸化ハフニウム膜又は酸化ハフニウム層の形成が困難であった。また、上記の化学気相成長法及び物理気相蒸着法によると、得られる酸化ハフニウム層等が、不可避的不純物として炭素成分(以下、「カーボン」という)を含むことがあり、酸化ハフニウムの特性を十分に発揮させるため、カーボンフリーの酸化ハフニウム層等を形成する方法が求められていた。
【0007】
本発明の目的は、荷電粒子線誘起蒸着法を利用して、下地層の表面に、酸化ハフニウムを含み、所望のパターンを有する酸化ハフニウム含有層を備える電子部品を効率よく製造する方法を提供することである。また、本発明の他の目的は、カーボンフリーの酸化ハフニウム含有層を備える電子部品を効率よく製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、基材の表面に、酸化ハフニウムの前駆体からなる前駆体ガスを滞留させて、該前駆体ガスに荷電粒子線を照射すると、基材の表面に酸化ハフニウム膜が効率よく製造されるという知見を得た。また、プラズマガスの存在下、上記と同様に、基材の表面に滞留する前駆体ガスに荷電粒子線を照射すると、基材の表面に、カーボンフリーの酸化ハフニウム膜が効率よく製造されるという知見を得た。
【0009】
本発明は、以下に示される。
(1)電気的絶縁性層、導電性層及び半導体層から選ばれた下地層の少なくとも一部の表面に酸化ハフニウム含有層を備える電子部品を製造する方法であって、
上記下地層を備える第1部材の該下地層の表面に滞留させた、酸化ハフニウムの前駆体からなる前駆体ガスに、荷電粒子線を照射し、上記下地層の少なくとも一部の表面に、上記酸化ハフニウム含有層を形成する荷電粒子線照射工程を備えることを特徴とする、電子部品製造方法。
(2)上記荷電粒子線照射工程において、プラズマガスの存在下、上記前駆体ガスに上記荷電粒子線を照射する上記(1)に記載の電子部品製造方法。
(3)上記プラズマガスが、酸素元素を含む物質からなる上記(2)に記載の電子部品製造方法。
(4)上記電子部品が、コンデンサー装置、強誘電体メモリー装置及び半導体装置から選ばれた少なくとも一種である上記(1)から(3)のいずれか一項に記載の電子部品製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明において、下地層が電気的絶縁性層を主とする場合の第1部材を用いると、例えば、コンデンサー装置等を効率よく製造することができる。
本発明において、導電性層が電気的絶縁性層を主とする場合の第1部材を用いると、例えば、強誘電体メモリー装置等を効率よく製造することができる。
また、本発明において、下地層が半導体層を主とする場合の第1部材を用いると、例えば、半導体装置等を効率よく製造することができる。
本発明に係る荷電粒子線照射工程において、酸素元素を含む物質からなるプラズマガスの存在下、滞留する前駆体ガスに荷電粒子線を照射することにより、カーボンフリーの酸化ハフニウム含有層を備える電子部品を確実に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の電子部品製造方法に用いる製造装置の一例を示す概略図である。
図2】本発明の電子部品製造方法に用いる製造装置の他例を示す概略図である。
図3】コンデンサー装置の製造方法の一例を示す概略図である。
図4】強誘電体メモリー装置の製造方法の一例を示す概略図である。
図5】半導体装置の製造方法の一例を示す概略図である。
図6】半導体装置の製造方法の他例を示す概略図である。
図7】実施例1で得られた酸化ハフニウム堆積物(I)~(VI)の表面の、走査電子顕微鏡(SEM)による反射電子像である。
図8】実施例1で得られた酸化ハフニウム堆積物の断面を表すものであり、(a)は走査透過電子顕微鏡(STEM)画像であり、(b)、(c)及び(d)は、それぞれ、電子エネルギー損失分光法(EELS)による、珪素原子、酸素原子及びハフニウム原子に係るマッピング画像である。
図9】実施例2で得られた各酸化ハフニウム堆積物の断面を表すものであり、(a)はSTEM画像であり、(b)及び(c)は、それぞれ、電子エネルギー損失分光法(EELS)による、炭素原子及びハフニウム原子に係るマッピング画像である。
図10】実施例2及び3で得られた各酸化ハフニウム堆積物の酸化ハフニウム膜におけるEELSスペクトルであり、(A)は、炭素-K吸収端及び酸素-K吸収端が検出される領域のスペクトルであり、(B)は、ハフニウム-M吸収端が検出される領域のスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の電子部品製造方法は、荷電粒子線誘起蒸着法により、絶縁層、電極層及び半導体層から選ばれた下地層の少なくとも一部の表面に酸化ハフニウム含有層を備える電子部品を製造する方法であり、下地層を備える第1部材の該下地層の表面に滞留させた、酸化ハフニウムの前駆体からなる前駆体ガスに、荷電粒子線を照射して前駆体を分解させ、下地層の表面に、酸化ハフニウム含有層を形成する荷電粒子線照射工程を備える。尚、「下地層」は、電気的絶縁性、導電性又は半導体特性を有する層であるため、本発明に係る「第1部材」は、下地層のみからなる物体であってよいし、下地層と、この下地層と異なる性質を有する支持体とからなる複合体であってもよい。また、「前駆体ガスを下地層の表面に滞留させる」とは、前駆体ガスを下地層に接触(吸着)させること、及び、前駆体ガスが下地層に接触しないが下地層に接近した状態にすること、の少なくとも一方を意味する。更に、「電子部品」は、最終製品であってよいし、更に他の層又は部分が積層されて最終製品となる前の、酸化ハフニウム含有層の全面又は一部が露出したままの前駆体製品であってもよい。本発明に係る電子部品は、好ましくは、コンデンサー装置、強誘電体メモリー装置及び半導体装置である。
【0013】
図1は、その内部に、下地層を備える第1部材3が載置され、該下地層の表面に酸化ハフニウム含有層が形成されるチャンバー11と、酸化ハフニウムの前駆体からなる前駆体ガス5を、チャンバー11の内部に供給する前駆体ガス供給部13と、下地層の表面に滞留する前駆体ガス5に荷電粒子線を放射する線源17とを備える製造装置1Aを用いて、電子部品を製造する方法を示す概略図である。
また、図2は、その内部に、下地層を備える第1部材3が載置され、該下地層の表面に酸化ハフニウム含有層が形成されるチャンバー11と、酸化ハフニウムの前駆体からなる前駆体ガス5を、チャンバー11の内部に供給する前駆体ガス供給部13と、プラズマガス7を、チャンバー11の内部に供給するプラズマガス供給部15と、下地層の表面に滞留する前駆体ガス5に荷電粒子線を放射する線源17とを備える製造装置1Bを用いて、電子部品を製造する方法を示す概略図である。
【0014】
尚、図1及び図2は、本発明において好ましい態様を示し、製造装置1A及び1Bは、チャンバー11の内部を減圧条件とするため、チャンバー11に連絡された真空ポンプ19を備える。図1の方法の場合、下地層の表面に滞留する前駆体ガス5に荷電粒子線が照射されると、酸化ハフニウムだけでなく、前駆体ガス5(前駆体14)に由来する副生成物が生じることがある。前駆体14が炭素原子を含む化合物である場合、副生成物は、カーボンを含むことがあるので、真空ポンプ19を駆動させると、このような副生成物の酸化ハフニウム含有層への混入を抑制することができるが、製造装置1Bを用いる図2の方法によれば、カーボンを含む副生成物が酸化ハフニウム含有層に取り込まれる前にプラズマガス7と反応し、その反応生成物を排除(排気)することができ、カーボンフリーの酸化ハフニウム含有層を確実に得ることができる。
製造装置1A及び1Bにおいて、前駆体ガス5又はプラズマガス7を供給する前のチャンバー11内の真空度は、特に限定されないが、上記の副生成物又は反応生成物が好適に排出(除去)されることから、好ましくは1×10-8~10Pa、より好ましくは1×10-6~1×10-1Paである。
【0015】
製造装置1A及び1Bにおいて、前駆体ガス供給部13は、酸化ハフニウムの製造原料である前駆体14からなる前駆体ガス5を、チャンバー11の内部に供給する。前駆体14としては、テトラ-tert-ブトキシハフニウム、HfCl、Hf[N(CH]、テトラキスジメチルアミノハフニウム、テトラキスエチルメチルアミノハフニウム、テトラキスエチルメチルアミノハフニウム等を用いることができる。
【0016】
図1及び図2における前駆体ガス供給部13は、本発明において好ましい態様を示し、前駆体収容部(図中、符号なし)に収容された前駆体14を気化させ、作製された前駆体ガス5を、配管(図中、符号なし)を通し、配管の先端からチャンバー11の内部に供給する。配管の先端は、ノズル形状とすることができる。また、前駆体ガス供給部13は、ガス量の調整又は管理を行うための流量計、前駆体ガスの加熱手段等を備えてもよい(図示せず)。
製造装置1A及び1Bにおける前駆体ガス供給部13の数は、特に限定されず、1又は2以上とすることができる。
【0017】
製造装置1A及び1Bは、第1部材3に対して荷電粒子線の入射角若しくは照射位置を変更又は調整する第1部材位置調整手段、チャンバー11の内部の温度、又は、第1部材3の下地層表面の温度を調整する温度調整手段、レーザー照射手段、各種ガスアシスト手段等を備えることができる(図示せず)。
【0018】
製造装置1A及び1Bにおいて、線源17は、荷電粒子線を放射するものであれば、特に限定されない。荷電粒子線としては、電子線;B、C、Al、Si、Cu、Ag、Au、Ar、N、O、Ge、H、Cs、P、Ga、As、Er、Eu、Sm、Nd、Sb、Sn、In、Br、Be、Ca、Cl、Cr、Cd、Fe、F、I、K、Li、Na、Mg、Pd、Pt、S、Se、Ti、Te、V、W、Zn、He、Kr、Ne若しくはXe元素のイオン又は該元素を少なくとも一つ含む分子のイオン等を用いることができる。
荷電粒子線が電子線の場合、線源17として、例えば、電界放出型電子銃、ショットキー電子銃、熱電子銃等を用いることができる。これらのうち、酸化ハフニウムが容易に得られることから、電界放出型電子銃が好ましい。
また、B、C、Al、Si、Cu、Ag、Au、Ar、N、O、Ge、H、Cs、P、Ga、As、Er、Eu、Sm、Nd、Sb、Sn、In、Br、Be、Ca、Cl、Cr、Cd、Fe、F、I、K、Li、Na、Mg、Pd、Pt、S、Se、Ti、Te、V、W、Zn、He、Kr、Ne若しくはXe元素のイオン又は該元素を少なくとも一つ含む分子のイオンからなる荷電粒子線の場合、線源17として、イオン銃を用いることができる。
【0019】
製造装置1Bにおいて、プラズマガス供給部15は、プラズマガス7を、チャンバー11の内部に供給する。
プラズマガス供給部15は、通常、プラズマ発生装置(図示せず)により作製されたプラズマガスをチャンバー11の内部に供給する。プラズマガス7の供給手段は、ノズル等によるものとすることができるが、特に限定されない。また、前駆体ガス供給部13は、下地層の表面に前駆体ガス5が滞留するように供給するために、配管の先端の向きが調整されるが、プラズマガス供給部15は、チャンバー11の内部全体にプラズマガス7が充満するように供給する構造のプラズマガス供給口を有することが好ましい。
製造装置1Bにおけるプラズマガス供給部15の数は、特に限定されず、1又は2以上とすることができる。
【0020】
ここで、プラズマ発生装置は、通常、プラズマガス源、即ち、原料ガス貯蔵部(図示せず)から供給された原料ガスに対して、例えば、誘導結合プラズマ(ICP)、容量結合プラズマ(CCP)、電子サイクロトロン共鳴プラズマ(ECRP)、ヘリコン波プラズマ(HP)、表面波プラズマ(SWP)、マイクロ波プラズマ等を利用したプラズマ発生装置とすることができる。これらのうち、3~100MHzの周波数領域のRFプラズマである、誘導結合プラズマ(ICP)、容量結合プラズマ(CCP)等を利用するRFプラズマ発生装置が好ましい。
【0021】
本発明において、上記プラズマガス7として、酸素元素を含むプラズマガス、具体的には、原子状酸素のラジカルを含むプラズマガスを用いることが好ましい。原子状酸素のラジカルは、不安定な状態にあるため、酸化還元反応によって、エネルギー的に他の原子又は分子と結合して安定化しようとする。そのため、酸素元素を含むプラズマガスの存在下、下地層の表面に滞留する前駆体ガス5に荷電粒子線を照射して、前駆体14に由来する物質(副生成物)が形成された場合に、酸素元素を含むプラズマガスと反応させて、例えば、CO、CO等の反応生成物とすることができる。このような反応生成物を真空ポンプ19により排気することにより、カーボンフリーの酸化ハフニウム含有層を効率よく形成することができる。
酸素元素を含むプラズマガスとしては、水、酸素、オゾン及び空気から選ばれた少なくとも1種により形成されたものが好ましい。
【0022】
製造装置1Bを用いる場合、下地層の表面に前駆体ガス5を滞留させる一方、プラズマガス7の配置場所は、特に限定されない。即ち、プラズマガス7を、前駆体ガス5とともに下地層の表面に滞留させてもよいし、下地層の表面に滞留させる前駆体ガス5の存在領域の周りに存在させてもよい。尚、用いる前駆体ガス5及びプラズマガス7の使用比率は、特に限定されないが、両者の合計体積を100体積%とした場合、前駆体ガス5及びプラズマガス7の使用量は、それぞれ、好ましくは0.01~50体積%及び50~99.99体積%、より好ましくは0.1~10体積%及び90~99.9体積%である。
【0023】
上記のように、真空ポンプ19を備える製造装置1A及び1Bにおいて、荷電粒子線を照射する際のチャンバー11の内部は、減圧条件下にあることが好ましい。製造装置1Bを用いる場合、プラズマガス及び前駆体ガスは、プラズマガス及び前駆体ガスを供給前のチャンバー11の内部の圧力に対して、それぞれ、好ましくは0.001~500000倍及び0.00001~10000倍、より好ましくは1~1000倍及び1~1000倍高い圧力となるように導入することが好ましい。
【0024】
本発明に係る荷電粒子線照射工程において、下地層若しくは第1部材3、又は、前駆体ガス5を加熱してもしなくてもよいが、酸化ハフニウムの収率の観点から、これらの温度は、好ましくは30℃~400℃、より好ましくは30℃~120℃である。
【0025】
本発明では、通常、ビーム径の小さい荷電粒子線を用いるため、下地層の表面に、酸化ハフニウムを含む微細なパターンを容易に形成することができる。例えば、点、線、円又はこれらの組み合わせからなる形状のパターンを得るために、荷電粒子線をスキャンさせながら照射する方法、又は、第1部材を移動させながら、光路を固定した荷電粒子線を照射する方法を適用することができる。
荷電粒子線として電子線を用いる場合、その照射条件は、特に限定されない。電子線の加速電圧は、好ましくは0.1~30kV、より好ましくは1~10kVである。
【0026】
以下、電子部品として、コンデンサー装置、強誘電体メモリー装置及び半導体装置を製造する方法について、説明する。これらの装置の製造に用いる第1部材は、装置の種類に依存するが、その下地層は、好ましくは、金属、合金、酸化物、窒化物、酸窒化物、炭化物、炭窒化物等の中から、荷電粒子線の受光により変質若しくは分解又は損傷を引き起こさないものからなる。
【0027】
〔1〕コンデンサー装置の製造方法
本発明により限定されない例として、図3を用いて、(V)で表されるコンデンサー装置の製造方法を説明する。尚、図3は、コンデンサー装置の部分断面図である。また、(II)及び(IV)はいずれも前駆体製品であり、本発明に係る電子部品に含まれる。
【0028】
図3の(I)は、予め、準備された、補助板20Aの表面に、パターン化された第1電極層22Aと、絶縁層24Aとが、順次、積層されてなる複合体である。絶縁層24Aを下地層としたこの複合体を、本発明に係る第1部材として用いる。ここで、補助板20Aは、例えば、ガラス、金属等からなるものとすることができる。第1電極層22Aは、例えば、Ni、Cu、Al、W、Ti、Ag、Au、Pt、Zn、Sn、Pb、Fe、Cr、Mo、Ru、Pd、Ta及びこれらの合金(CuNi、AuNi、AuSn等)や、TiN、TiAlN、TiON、TiAlON、TaN等の、金属窒化物又は金属酸窒化物等からなるものとすることができる。また、絶縁層24Aは、例えば、金属酸化物(AlO、SiO、AlTiO、SiTiO、TaO、ZrO、HfSiO、ZrSiO、TiZrO、TiZrWO、TiO、SrTiO、PbTiO、BaTiO、BaSrTiO、BaCaTiO、SiAlO等)、金属窒化物(AlN、SiN、AlScN等)、金属酸窒化物(AlO、SiO、HfSiO、SiC等)等からなるものとすることができる。尚、x、y又はzを含む上記化学式は、単に、材料の構成を表現するものであり、組成を限定するものではない。
【0029】
上記複合体を、図1又は図2のチャンバー11の内部の所定の位置に載置し、前駆体ガス5を、下地層である絶縁層24Aの表面に滞留させて、荷電粒子線を照射し、絶縁層24Aの表面に酸化ハフニウム含有層26を形成する(図3の(II)参照)。
次いで、図3の(III)及び(IV)に示すように、別途、準備された、補助板20Bの表面に、パターン化された第2電極層22Bと、絶縁層24Bとが、順次、積層されてなる複合体の絶縁層24Bを、酸化ハフニウム含有層26に面するように載置し、加圧処理等により、これらを一体化させる。尚、補助板20B、第2電極層22B及び絶縁層24Bの構成は、それぞれ、補助板20A、第2電極層22A及び絶縁層24Aの構成と同一であってよいし、異なってもよい。
その後、補助板20A及び20Bを排除し、必要に応じて、所望の形状に加工することにより、図3の(V)に示されるコンデンサー装置を得ることができる。
【0030】
〔2〕強誘電体メモリー装置の製造方法
本発明により限定されない例として、図4を用いて、(V)で表される、パターン化された第1電極層(導電性層、下部電極)32Aに、酸化ハフニウム層34と、常誘電体層36と、パターン化された第2電極層32B(上部電極)とが、順次、積層されてなる強誘電体メモリー装置の製造方法を説明する。尚、図4は、強誘電体メモリー装置の部分断面図である。また、(II)及び(IV)はいずれも前駆体製品であり、本発明に係る電子部品に含まれる。酸化ハフニウム層34は、外部から電場を印加しなくても自発的な分極があり、外部から電場を印加すると分極が反転する強誘電体層である。また、常誘電体層36は、電場を印加すると分極が生じ、電場を除去すると分極が消滅する層である。
【0031】
図4の(I)は、予め、準備された、補助板30Aの表面に、第1電極層32Aが積層された複合体である。第1電極層32Aを下地層としたこの複合体を、本発明に係る第1部材として用いる。ここで、補助板30Aは、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物等の電気的絶縁性材料からなるものとすることができる。第1電極層32Aは、酸化ランタンストロンチウムマンガン若しくは窒化チタンからなる、又は、窒化チタン層とイリジウム(Ir)層とからなるものとすることができる。
【0032】
上記複合体を、図1又は図2のチャンバー11の内部の所定の位置に載置し、前駆体ガス5を、下地層である第1電極層32Aの表面に滞留させて、荷電粒子線を照射し、第1電極層32Aの表面に酸化ハフニウム含有層34を形成する(図4の(II)参照)。
次いで、図4の(III)及び(IV)に示すように、別途、準備された、補助板20Bの表面に、第2電極層32Bと、常誘電体層36とが、順次、積層されてなる複合体の常誘電体層36を、酸化ハフニウム含有層26に面するように載置し、加圧処理等により、これらを一体化させる。尚、補助板30B及び第2電極層32Bの構成は、それぞれ、補助板30A及び第2電極層32Aの構成と同一であってよいし、異なってもよい。常誘電体層36は、例えば、SiO、SiN、SrTiO等からなるものとすることができる。尚、xを含む上記化学式は、単に、材料の構成を表現するものであり、組成を限定するものではない。
その後、補助板30A及び30Bを排除し、必要に応じて、所望の形状に加工することにより、図4の(V)に示されるコンデンサー装置を得ることができる。
【0033】
〔3〕半導体装置の製造方法
図5及び図6を用いて、半導体装置の製造方法を説明する。尚、本発明において、「半導体装置」は、半導体特性を利用することで機能する素子(トランジスター、ダイオード等)、該素子を備える回路、及び、該回路を備える装置を意味する。
【0034】
本発明により限定されない例として、図5を用いて、(III)で表される半導体装置の製造方法を説明する。尚、図5は、半導体装置の部分断面図である。また、(II)は前駆体製品であり、本発明に係る電子部品に含まれる。
【0035】
図5の(I)は、予め、準備された、基板40の表面に、ゲート電極41が積層された複合体である。ゲート電極41を下地層としたこの複合体を、本発明に係る第1部材として用いる。ここで、基板40は、ガラス、又は、ガラスの表面にSiO膜が形成されてなるものとすることができる。ゲート電極41は、Mo、Cr、Al、Ti若しくはCu又はこれらの金属元素の2種以上を含む合金からなるものとすることができる。
【0036】
上記複合体を、図1又は図2のチャンバー11の内部の所定の位置に載置し、前駆体ガス5を、下地層であるゲート電極41の表面に滞留させて、荷電粒子線を照射し、ゲート電極41の表面に酸化ハフニウム含有層43(ゲート絶縁層)を形成する(図5の(II)参照)。
次いで、酸化ハフニウム含有層43の表面に、半導体層45を形成し、その後、この半導体層45の周縁を被覆させつつ、酸化ハフニウム含有層43の表面にソース電極46及びドレイン電極47を形成し、更に、露出した酸化ハフニウム含有層43と、ソース電極46と、ドレイン電極47とを被覆する保護層49を形成し、図5の(III)に示される半導体装置を得ることができる。半導体層45は、例えば、インジウム、亜鉛、ガリウム及びスズから選ばれた少なくとも1種を含む酸化物等からなるものとすることができる。ソース電極46及びドレイン電極47は、例えば、Mo、Al、Ti若しくはCu又はこれらの金属元素の2種以上を含む合金からなるものとすることができる。保護層49は、例えば、SiO、SiN、SiO等からなるものとすることができる。尚、x又はyを含む上記化学式は、単に、材料の構成を表現するものであり、組成を限定するものではない。
【0037】
次に、本発明により限定されない他の製造例として、図6を用いて、(III)で表される半導体装置の製造方法を説明する。尚、図6は、半導体装置の部分断面図である。また、(II)は前駆体製品であり、本発明に係る電子部品に含まれる。
【0038】
図6の(I)は、予め、準備された、基板50の表面に、半導体層51が積層され、更にこの半導体層51の表面部に互いに離間させてソース領域52及びドレイン領域53を備える複合体である。半導体層51を下地層としたこの複合体を、本発明に係る第1部材として用いる。ここで、基板50は、例えば、n型炭化珪素からなるものとすることができる。半導体層51は、p型炭化珪素や、インジウム、亜鉛、ガリウム及びスズから選ばれた少なくとも1種を含む酸化物等からなるものとすることができる。また、ソース領域52及びドレイン領域53は、好ましくは、イオン注入されたSiO等からなる、それぞれ、n型ソース領域及びn型ドレイン領域である。
【0039】
上記複合体を、図1又は図2のチャンバー11の内部の所定の位置に載置し、前駆体ガス5を、下地層である半導体層51の表面に滞留させて、荷電粒子線を照射し、半導体層51の表面に酸化ハフニウム含有層54(ゲート絶縁層)を形成する(図6の(II)参照)。
次いで、酸化ハフニウム含有層54の表面にゲート電極57を形成し、ソース領域52及びドレイン領域53の一部表面を被覆させつつ、半導体層51の表面に跨るようにソース電極55及びドレイン電極56を形成し、図6の(III)に示す半導体装置を得ることができる。ソース電極55及びドレイン電極56は、例えば、Mo、Al、Ti若しくはCu又はこれらの金属元素の2種以上を含む合金からなるものとすることができる。
図6の(III)に示していないが、ゲート電極57、ソース電極55及びドレイン電極56を被覆するような、図5の(III)における保護層49と同様の保護層を形成してもよい。
【実施例0040】
以下、下地層が半導体層であり、その半導体層からなる第1部材3として、Pをドープしたn型シリコン基板(サイズ:5mm×5mm×0.5mm、以下、「Si板」という)を用い、その表面にパターン化させつつ酸化ハフニウム膜を形成して電子部品を模した複合体を製造する実施例を示す。尚、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。
【0041】
実施例1
日立ハイテクノロジーズ社製卓上顕微鏡「Miniscope TM4000」(型式名)に、そのチャンバー内に前駆体ガスを供給する前駆体ガス供給部13、及び、真空ポンプを配設した電子部品製造装置1Aを用いた(図1参照)。
図1の電子部品製造装置1Aは、第1部材3(Si板)の表面で、酸化ハフニウムの前駆体から酸化ハフニウムを合成、堆積させる装置の概略図である。図1の製造装置1Aは、第1部材3(Si板)に向けて前駆体ガス5を供給する前駆体ガス供給部13と、真空ポンプ19とを備える。尚、この卓上顕微鏡は電子顕微鏡であるため、線源17は電子銃である。また、前駆体ガス5は、前駆体ガス供給部13において、前駆体14を蒸発させて調製した。
【0042】
初めに、電子部品製造装置1Aにおいて、真空度が2×10-3Paのチャンバー11内に、35℃で揮発させてなる、テトラ-tert-ブトキシハフニウム(Hf(O-tert-C)からなる前駆体ガス5を、内径0.25mmのノズルを用いて、25℃の第1部材3(Si板)の表面に向けて供給した。ノズル及び第1部材3(Si板)の角度は30°であり、ノズルと第1部材3(Si板)との距離は1.4mmである。前駆体ガス供給後のチャンバー11内の真空度は2×10-2Paであった。
次に、前駆体ガス5が滞留する第1部材3(Si板)の表面に向けて、電子線を、加速電圧5kV及びワーキングディスタンス7mmで照射した。このとき、電子線を3.3~50μsec/pixelでスキャンさせ、第1部材3(Si板)の表面における、72μm×48μm(領域I)、15μm×10μm(領域II)、7.5μm×5μm(領域III)、5μm×3.3μm(領域IV)、3.7μm×2.5μm(領域V)、及び、3.0μm×2.0μm(領域VI)の、互いに面積の異なる6ヶ所にパターン化堆積膜を形成させて、複合体C1を得た(図7参照)。
【0043】
図8は、得られた複合体C1における堆積膜の、走査型透過電子顕微鏡による断面画像(a)、並びに、電子エネルギー損失分光法により取得したマッピング画像(酸素原子(b)、酸素原子(c)及びハフニウム原子(d))である。これらの撮影に際しては、予め、堆積膜の表面にカーボン保護層を施した。この図8によると、堆積膜においてハフニウム原子及び酸素原子のシグナルが確認されたことから、堆積膜は、酸化ハフニウム(HfO)からなることが分かる。
【0044】
実施例2
実施例1で用いた電子部品製造装置1Aに対し、そのチャンバー11内にプラズマガスを供給するプラズマガス供給部15を更に配設した電子部品製造装置1Bを用いた(図2参照)。
【0045】
電子部品製造装置1Bにおいて、真空度が2×10-3Paのチャンバー11内に、13.56MHzにおけるRF出力40Wで発生させた空気からなるプラズマガスを供給し、チャンバー11内を満たしたところに、35℃で揮発させてなる、テトラ-tert-ブトキシハフニウム(Hf(O-tert-C)からなる前駆体ガス5を、内径0.25mmのノズルを用いて、25℃の第1部材3(Si板)の表面に向けて供給した。ノズル及び第1部材3(Si板)の角度は30°であり、ノズルと第1部材3(Si板)との距離は1.4mmである。前駆体ガス供給後のチャンバー内の真空度は2×10-2Paであった。
尚、プラズマガスのみ、及び、前駆体ガスのみをチャンバー内に供給した後の真空度は、それぞれ、7×10-1Pa、及び、2×10-2Paであった。
次に、前駆体ガス5が滞留する第1部材3(Si板)の表面に向けて、電子線を、加速電圧5kV及びワーキングディスタンス7mmで照射した。このとき、電子線を3.3μsec/pixelで3分間スキャンさせ、第1部材3(Si板)の表面の7μm×3μmの領域に、厚さ150nmの堆積膜(以下、「酸化ハフニウム膜」という)を形成させ、複合体C2を得た(図9及び図10参照)。
【0046】
実施例3
プラズマガスを不使用とした以外は、実施例2と同様の操作を行って、第1部材3(Si板)の表面の一部に酸化ハフニウムからなる堆積膜を備える複合体C3を得た(図9及び図10参照)。
【0047】
図9は、実施例2及び3で得られた各複合体の、走査型透過電子顕微鏡による断面画像(a)、並びに、電子エネルギー損失分光法により取得したマッピング画像(炭素原子(b)及びハフニウム原子(c))である。これらの撮影に際しても、予め、酸化ハフニウム膜の表面にカーボン保護層を施した。この図9における実施例2のマッピング画像(b)によると、カーボンのシグナルが確認されないため、形成された酸化ハフニウム膜に不純物が含まれないことが分かる。一方、図9における実施例3のマッピング画像(b)によると、カーボンの弱いシグナルが確認されたため、形成された酸化ハフニウム膜にカーボンを含む不純物が含有されることが分かる。
【0048】
図10は、図9において「HfO」で示した部分(酸化ハフニウム膜)の内部に対して電子エネルギー損失分光測定して得られたスペクトルである。この図10の(A)によると、実施例3では、炭素-K吸収端が検出されているため、形成された酸化ハフニウム膜は、カーボンを含有することが明らかである。一方、実施例2では、炭素-K吸収端が検出されないため、カーボンを含まないことが明らかである。尚、図10の(B)から明らかなように、実施例2及び3のいずれにおいても、酸化ハフニウム膜の酸化ハフニウムに由来するHf-M,M吸収端が検出された。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の電子部品製造方法では、荷電粒子線を用いることから、中間体又は最終製品の構造に応じて、その照射方法を改良して、微細なパターン、薄膜等の酸化ハフニウム含有層を備える電子部品を製造することができる。特に、プラズマガスの存在下、前駆体ガスに荷電粒子線を照射した場合には、カーボンフリーの高純度酸化ハフニウム層を形成することができるので、酸化ハフニウムの化学的性質及び物理的性質を如何なく発揮する電子部品を製造することができる。従って、本発明により得られる電子部品は、例えば、コンデンサー装置、強誘電体メモリー装置、半導体装置等として好適である。
【符号の説明】
【0050】
1A,1B:電子部品製造装置
3:下地層を有する第1部材
5:前駆体ガス
7:プラズマガス
9:副生成物
11:チャンバー
13:前駆体ガス供給部
14:前駆体
15:プラズマガス供給部
17:線源
19:真空ポンプ
20A,20B:補助板
22A:第1電極層
22B:第2電極層
24A,24B:電気的絶縁性層
26:酸化ハフニウム含有層(誘電体層)
30A,30B:補助板
32A:第1電極層
32B:第2電極層
34:酸化ハフニウム含有層
36:常誘電体層
40:基板
41:ゲート電極
43:酸化ハフニウム含有層(ゲート絶縁層)
45:半導体層
46:ソース電極
47:ドレイン電極
49:保護層
50:基板
51:半導体層
52:ソース領域
53:ドレイン領域
54:酸化ハフニウム含有層(ゲート絶縁層)
55:ソース電極
56:ドレイン電極
57:ゲート電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10