(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114581
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/6582 20110101AFI20230810BHJP
H01R 24/44 20110101ALI20230810BHJP
H01R 13/6473 20110101ALI20230810BHJP
【FI】
H01R13/6582
H01R24/44
H01R13/6473
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016974
(22)【出願日】2022-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 雅美
(72)【発明者】
【氏名】康 麗萍
【テーマコード(参考)】
5E021
5E223
【Fターム(参考)】
5E021FA02
5E021FA14
5E021FA16
5E021FB11
5E021FC21
5E021FC23
5E021FC40
5E021LA09
5E021LA15
5E223AB21
5E223AB59
5E223AB60
5E223AB65
5E223BA12
5E223BA15
5E223BB12
5E223CA13
5E223CC09
5E223DA42
5E223GA08
5E223GA52
(57)【要約】
【課題】接続した際の位置を定まり易くするとともに、良好に接続することができるコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ10は、円筒状をなし、芯線51を有するシールド電線Wの端部に加締め付けられる外導体15を備えている。外導体15は、周方向において、1つの第1領域15Kと、1つの第2領域15Lと、の2つに二分されている。外導体15は、第1領域15Kに設けられ、第1領域15Kに対して位置が固定され、相手側外導体65の内面に接触する固定接点部15Hと、第2領域15Lに設けられ、相手側外導体65の内面に弾性接触する弾性接点部15Jと、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状をなし、芯線を有するケーブルの端部に加締め付けられる外導体を備え、
前記外導体は、周方向において、1つの第1領域と、1つの第2領域と、の2つに二分され、
前記第1領域に設けられ、前記第1領域に対して位置が固定され、相手側外導体の周面に接触する固定接点部と、
前記第2領域に設けられ、前記相手側外導体の前記周面に弾性接触する弾性接点部と、
を有するコネクタ。
【請求項2】
前記弾性接点部は、前記第2領域に形成したスリットによって区画され、複数の前記弾性接点部が前記周方向に並んで配置され、
隣合う前記弾性接点部は、共通する一つの前記スリットに臨んでいる請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記相手側外導体に前記外導体が挿入されるようになっており、
前記スリットは、前記相手側外導体によって包囲される請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記外導体の内側に配置される誘電体を備え、
前記誘電体のうち、前記第1領域の内面と対向する部位の径方向の厚みは、
前記誘電体のうち、前記第2領域の内面と対向する部位の前記径方向の厚みよりも厚い請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記第2領域には、前記芯線の軸線方向における前記弾性接点部の端と、前記外導体と、を仕切り、前記スリットに連なる連結スリットが形成されており、
相手側のタブを挿入させる内導体を備え、前記誘電体内において、前記タブのうち、前記内導体から露出した露出部位が収容されるようになっており、
前記芯線の前記軸線方向における前記連結スリットの位置と、前記タブの露出部位とは、異なっている請求項2を直接的又は間接的に引用する請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記第2領域の内側には、前記弾性接点部が弾性変形した際に進入可能な撓み空間が形成されている請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、同軸コネクタが開示されている。このものは、同軸ケーブルの外部導体に基端部が圧着される円筒状のシェルを有している。シェルの先端部には、軸方向に延びるスリットが周方向に等間隔に並んで形成されている。これによって、隣合うスリットの間の部分が弾性変形可能となり、シェルの先端部を相手物であるリセプタクルに挿入した際に、隣合うスリットの間の部分がリセプタクルの内面に対して弾性接触する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-51872号公報
【特許文献2】米国特許第10348044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のシェルの先端部は、リセプタクルの内面の全周に渡って弾性接触する。このため、特許文献1のものは、リセプタクルに対するシェルの先端部の径方向の位置が定まり難くなる懸念がある。
【0005】
本開示のコネクタは、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、接続した際の位置を定まり易くするとともに、良好に接続することができるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、
円筒状をなし、芯線を有するケーブルの端部に加締め付けられる外導体を備え、
前記外導体は、周方向において、1つの第1領域と、1つの第2領域と、の2つに二分され、
前記第1領域に設けられ、前記第1領域に対して位置が固定され、相手側外導体の周面に接触する固定接点部と、
前記第2領域に設けられ、前記相手側外導体の前記周面に弾性接触する弾性接点部と、
を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、接続した際の位置を定まり易くするとともに、良好に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示のコネクタの側断面図である。
【
図3】
図3は、第4筒部の第1領域を軸線に対して直交する方向から見た側面図である。
【
図4】
図4は、第4筒部の第2領域を軸線に対して直交する方向から見た側面図である。
【
図5】
図5は、誘電体が挿入された第2外導体が第1外導体に外挿された様子を示す側面図である。
【
図7】
図7は、本開示のコネクタと相手側コネクタとを接続した状態を示す側断面図である。
【
図9】
図9は、第2外導体の第4筒部が相手側外導体に挿入された状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
(1)円筒状をなし、芯線を有するケーブルの端部に加締め付けられる外導体を備えている。外導体は、周方向において、1つの第1領域と、1つの第2領域と、の2つに二分されている。外導体は、第1領域に設けられ、第1領域に対して位置が固定され、相手側外導体の周面に接触する固定接点部と、第2領域に設けられ、相手側外導体の周面に弾性接触する弾性接点部と、を有する。
【0010】
この構成によれば、第2領域の弾性接点部が相手側外導体の周面に弾性接触することによって、第1領域の固定接点部が相手側外導体の周面に接触した状態を維持するので、相手側外導体と外導体との径方向の位置が定まり易くなる。
【0011】
(2)弾性接点部は、第2領域に形成したスリットによって区画され、複数の弾性接点部が周方向に並んで配置されている。隣合う弾性接点部は、共通する一つのスリットに臨んでいることが好ましい。この構成によれば、隣合う弾性接点部を一つのスリットで仕切るので、隣合う弾性接点部の間の寸法を狭め易くでき、これによって、スリットの面積を小さくすることができる。このため、外導体の軸方向において、スリットを形成した部分と、スリットを形成していない部分とで、インピーダンスの差を小さく抑え易くすることができる。
【0012】
(3)(2)において相手側外導体に外導体が挿入されるようになっており、スリットは、相手側外導体によって包囲されることが好ましい。この構成によれば、相手側外導体によってスリットを包囲するので、スリットからの電磁ノイズの漏れを防止することができ、シールド性能を向上させ得る。
【0013】
(4)外導体の内側に配置される誘電体を備えている。誘電体のうち、第1領域の内面と対向する部位の径方向の厚みは、誘電体のうち、第2領域の内面と対向する部位の径方向の厚みよりも厚いことが好ましい。この構成によれば、第1領域側のインピーダンスを低めて第2領域側のインピーダンスに近づけることができ、これによって、径方向の全体としてのインピーダンスを目的とする大きさに近づけることができる。
【0014】
(5)(2)を直接的又は間接的に引用する(4)において、第2領域には、芯線の軸線方向における弾性接点部の端と、外導体と、を仕切り、スリットに連なる連結スリットが形成されており、相手側のタブを挿入させる内導体を備え、誘電体内において、タブのうち、内導体から露出した露出部位が収容されるようになっており、芯線の軸線方向における連結スリットの位置と、タブの露出部位とは、異なっていることが好ましい。外導体においてスリットが形成された位置と、タブの露出部位とは、インピーダンスが高くなりがちな部分である。このため、芯線の軸線方向において、これらの位置を揃えた場合、その位置のインピーダンスが過剰に大きくなってしまう。よって、この構成によれば、これらの位置を異ならせるので、インピーダンスが過剰に大きくなる部分が生じることを防ぐことができる。
【0015】
(6)第2領域の内側には、弾性接点部が弾性変形した際に進入可能な撓み空間が形成されていることが好ましい。この構成によれば、撓み空間によって、弾性接点部が弾性変形することを妨げ難くすることができる。
【0016】
[本開示の実施形態の詳細]
[実施形態1]
本明細書に開示された技術の実施形態1を
図1から
図9を参照しつつ説明する。以下の説明において、前後の方向については、
図1における右方を前方、左方を後方と定義する。前方は、コネクタ10に対して相手側コネクタ60が位置する方向である。
【0017】
[コネクタの構成]
図1に示すように、コネクタ10は、スリーブ11、内導体13、誘電体14、外導体15を備えている。コネクタ10は、シールド電線Wの端部に取り付けられる。外導体15は、第1外導体15A、及び第2外導体15Bを備えている。スリーブ11、第1外導体15A、内導体13、及び第2外導体15Bは、金属で形成されている。誘電体14は、合成樹脂製である。コネクタ10は、相手側コネクタ60に電気的に接続される(
図7参照)。
【0018】
ケーブルであるシールド電線Wは、いわゆる同軸線である。シールド電線Wは、複数の素線を撚り合わせた導電性の芯線51と、芯線51の外周を包囲する絶縁性の被覆52と、被覆52の外周を包囲し、素線を網状に編成してなる導電性の編組線53と、編組線53の外周を包囲する絶縁性のシースと、を有している。芯線51は高周波信号を伝送する機能を有している。編組線53は、電磁波をシールドする機能を有している。シールド電線Wは、シースと被覆52とを皮剥ぎすることによって、先端側から順に芯線51と、編組線53と、が露出する形態になっている。
【0019】
スリーブ11は、環状をなしている。スリーブ11は、編組線53の外周を包囲して配置され、折り返された編組線53の前端部によって外面が覆われている。スリーブ11は、圧着荷重を受ける機能を有している。
【0020】
内導体13は、金属板を曲げ加工等して成形されている。内導体13は、前側から後側にかけて順に、相手接続部13A、筒状部13B、及び中心導体圧着部13Cを連なって構成される。
【0021】
筒状部13Bは、前後方向に細長い円筒状をなしている。相手接続部13Aは、筒状部13Bから前方へ突出する一対の弾性片13Dによって構成される(
図2参照)。各弾性片13Dは、筒状部13Bの軸線を挟んで対向して配置されている。相手接続部13Aには、相手側内導体61のタブ64が挿入される。各弾性片13Dの間に相手側内導体61のタブ64が挿入されると、各弾性片13Dは、拡開してタブ64を誘い込むとともに、タブ64を径方向から挟み込む(
図8参照)。中心導体圧着部13Cは、オープンバレル状をなしており、筒状部13Bの後端に連なっている。中心導体圧着部13Cには、シールド電線Wの露出した芯線51が挿通される。中心導体圧着部13Cは、芯線51に加締め付けられ、これによって内導体13と、芯線51とが連結される。
【0022】
誘電体14は、筒状をなし、前後方向に貫通する断面円形の内導体挿入孔14Aが形成されている。誘電体14の前端部には、内導体挿入孔14Aの内径が小さく形成された厚肉部14Bが設けられている。厚肉部14Bは、芯線51の軸線からの放射方向の厚みが誘電体14における他の部位よりも厚くされている。誘電体14の内導体挿入孔14Aには、後方から内導体13が挿入される。内導体13には、当て止め部13Eが設けられており、この当て止め部13Eが、内導体挿入孔14A内に形成された当て止め受部14Cの前端に後方から当接することによって、内導体13が誘電体14に対して前止まり状態にされる。
【0023】
図1、2に示すように、誘電体14の軸線方向における前側は、周方向の一方側が他方側よりも厚く形成されている。誘電体14の軸線方向における前側の放射方向における肉厚は、他方側(
図2における下側)から一方側(
図2における上側)に向けて徐々に厚くなるように形成されている(
図2参照)。
【0024】
第1外導体15Aは、金属板を曲げ加工等して円筒状に形成されている。
図1に示すように、第1外導体15Aは、第1筒部15C、及び第1筒部15Cよりも前方に位置する第2筒部15Dを有している。第1筒部15C、及び第2筒部15Dは、同軸状に配置されている。第1筒部15Cの外径は、第2筒部15Dの外径よりも大きい。第1筒部15C、及び第2筒部15Dの間には、縮径部15Eが形成されている。縮径部15Eの外径は、第1筒部15C、及び第2筒部15Dの外径よりも小さい。第1筒部15Cは、折り返された編組線53の前端部に覆われたスリーブ11を包囲している。第2筒部15Dは、第1筒部15Cよりも前方であって、シールド電線Wの被覆52の端部に配置される。第1外導体15Aは、シールド電線Wのシースに加締め付けられることによって、シールド電線Wに連結される。第2筒部15Dの先端には、誘電体14の後端が隣合って配置されている。誘電体14の後端部は、芯線51を包囲している。
【0025】
第2外導体15Bは、金属板を曲げ加工等して円筒状に形成されている。第2外導体15Bは、第3筒部15F、及び第3筒部15Fよりも前方に位置する第4筒部15Gを有している。第3筒部15F、及び第4筒部15Gは、同軸状に配置されている。第3筒部15Fの外径は、第4筒部15Gの外径よりも大きい。第3筒部15Fには、第1外導体15Aの第2筒部15Dが嵌め込まれる。第4筒部15Gは、第3筒部15Fよりも前方に位置している。第4筒部15Gは、第1領域15Kと、第2領域15Lとに二分されている(
図2参照)。第1領域15Kは、第2外導体15Bを周方向において2つに二分した一方の領域である(
図2参照)。第2領域15Lは、第2外導体15Bを周方向において2つに二分した他方の領域である(
図2参照)。第1領域15K、及び第2領域15Lは、半円等状をなした形態である。
【0026】
図2、3、4に示すように、第4筒部15Gには、三つの固定接点部15H、及び三つの弾性接点部15Jが設けられている。三つの固定接点部15Hは、第1領域15Kのみに設けられている(
図2参照)。これら固定接点部15Hは、第2外導体15Bの軸線方向に延び、且つ第2外導体15Bの軸線から放射方向に突出して形成されている(
図2、3参照)。これら固定接点部15Hは、第1領域15Kに、周方向に等間隔に並んで配置されている(
図2参照)。これら固定接点部15Hは、第1領域15Kに対して位置が固定されている。つまり、固定接点部15Hは、第2外導体15Bに対して相対変位しない。
【0027】
三つの弾性接点部15Jは、第2領域15Lに設けられている(
図2参照)。つまり、第2外導体15Bの第4筒部15Gは、周方向において、1つの第1領域15Kと、1つの第2領域15Lと、の2つに二分されている。これら弾性接点部15Jは、第2領域15Lに形成したスリット15Mによって区画されており、第2外導体15Bの周方向に並んで配置されている。
【0028】
スリット15Mは、第2外導体15Bの軸線方向に延びる四つの区画スリット15Nと、周方向に延びて、これら区画スリット15Nの前端部同士を連結する連結スリット15Pとによって形成されている(
図4参照)。連結スリット15Pは、第2領域15Lに形成されている。連結スリット15Pは、各区画スリット15Nに連なっている(
図4参照)。連結スリット15Pは、芯線51の軸線方向における弾性接点部15Jの前端と、第2外導体15Bの第4筒部15Gと、を仕切っている(
図4参照)。芯線51の軸線方向における連結スリット15Pの位置と、誘電体14の厚肉部14Bの位置と、は異なっている(
図1参照)。
【0029】
三つの弾性接点部15Jは、隣合う区画スリット15N間に1つずつ配置され、後端を支点として放射方向に弾性変形可能とされている。各弾性接点部15Jは、後端から前端部にかけて外向きに(第4筒部15Gの軸線から離れる向きに)徐々に広がるように形成され、前端部が内向きに(第4筒部15Gの軸線に近づく向きに)屈曲している。各弾性接点部15Jは、外向きに突出する山型に形成されている。第4筒部15Gにおいて、各弾性接点部15Jの前端は、固定接点部15Hの前端よりも第3筒部15F寄り(後方)に位置している(
図1参照)。各弾性接点部15Jの山型の頂部には、外向きに膨らむように丸みを帯びて突出するビード15Qが形成されている。第4筒部15Gにおいて、各ビード15Qは、弾性接点部15Jの前端よりも第3筒部15F寄り(後方)に位置し、且つ固定接点部15Hの前端よりも第3筒部15F寄り(後方)に位置している(
図1参照)。周方向に隣合う弾性接点部15Jは、共通する1つの区画スリット15Nに臨んでいる(
図4参照)。
【0030】
図2に示すように、三つの固定接点部15H、及び三つのビード15Qは、周方向に等間隔に配置されている。一つの固定接点部15Hと、一つのビード15Qとは、第2外導体15Bの第4筒部15Gの軸線を挟んで反対側に配置されている。第2外導体15Bは、相手側外導体65に挿入されると、三つの固定接点部15Hが相手側外導体65の周面である内面に接触する。これとともに、三つのビード15Qが相手側外導体65の周面である内面に弾性接触する(
図8参照)。これにより、第2外導体15Bの三つの固定接点部15H、及び三つのビード15Qは、相手側外導体65に対して、径方向において、一定の位置関係(すなわち、同軸状の位置関係)が保持され、確実に接触することができる。
【0031】
第2外導体15Bには、後方から誘電体14が挿入される。つまり、誘電体14は、第2外導体15Bの内側に配置される。
図5に示すように、第2外導体15Bの第3筒部15Fには、内向きに突出した突出部15Rが設けられている。この突出部15Rが、誘電体14の外面に形成された窪み部14Dの後端に前方から当接することによって、誘電体14は、第2外導体15Bに対して前止まり状態にされる。
【0032】
図2に示すように、誘電体14の軸線方向における前側において、放射方向に厚肉に形成された一方側の部分14Eが第2外導体15Bの第1領域15Kの内面に隣合って配置されている。そして、誘電体14の軸線方向における前側において、放射方向に薄肉に形成された他方側の部分14Fが第2外導体15Bの第2領域15Lの内面に隣合って配置されている。つまり、誘電体14は、第1領域15K、及び第2領域15Lの内側に配置される。そして、誘電体14のうち、第1領域15Kの内面と対向する部位の径方向の厚みは、誘電体14のうち、第2領域15Lの内面と対向する部位の径方向の厚みよりも厚い。
【0033】
第2領域15Lの内面と、この内面に位置する誘電体14の外面との間は、第1領域15Kの内面と、この内面に位置する誘電体14の外面との間よりも広く形成されている。第2領域15Lの内面と、この内面に配置される誘電体14の外面との間には、内向きに弾性変形した弾性接点部15Jが進入可能な撓み空間Rが形成されている。つまり、第2領域15Lの内側には、撓み空間Rが形成されている。
【0034】
第2外導体15Bの第3筒部15Fには、第1外導体15Aの第2筒部15Dが嵌め込まれ、第2筒部15Dの外面と、第3筒部15Fの内面とが接触した状態にされる(
図1参照)。第1外導体15Aの第2筒部15Dと、第2外導体15Bの第3筒部15Fとは、例えば、スポット溶接を施すことによって連結される。
【0035】
〔相手側コネクタの構成〕
図6に示すように、相手側コネクタ60は、スリーブ66、相手側内導体61、第1外導体63、相手側外導体65、及び相手側誘電体62を備えている。相手側コネクタ60は、コネクタ10が取り付けられるシールド電線Wとは別のシールド電線Wの端部に取り付けられる。スリーブ66は、スリーブ11と同様の構成である。第1外導体63は、第1外導体15Aと同様の構成である。
【0036】
相手側内導体61は、金属製である。相手側内導体61は、シールド電線Wの芯線51に圧着して接続され、先方に突出するタブ64を有している。相手側外導体65は、金属製であり、円筒状をなしている。相手側外導体65の基端部には、第1外導体63の第2筒部15Dが嵌め込まれる。相手側外導体65と、第1外導体63とは、例えば、スポット溶接を施すことによって連結される。相手側外導体65は、相手側内導体61の全体を包囲している。
【0037】
相手側誘電体62は、合成樹脂製である。相手側誘電体62は、相手側内導体61と相手側外導体65との間に配置されている。相手側誘電体62は、相手側内導体61の先端部(タブ64)を除いた部分を包囲している。
【0038】
[相手側コネクタとの接続について]
コネクタ10を相手側コネクタ60に接続する際のコネクタ10の動作について説明する。具体的には、相手側コネクタ60の相手側外導体65の先端に、コネクタ10の第2外導体15Bの第4筒部15Gの先端を向かい合わせる。これとともに、相手側外導体65と、第2外導体15Bとを同軸状になるように付き合わせる。
【0039】
そして、相手側外導体65に、第2外導体15Bの第4筒部15Gを挿入する。すると、先ず、三つの固定接点部15Hが相手側外導体65の内面に接触する。次に、三つの弾性接点部15Jの前端部が相手側外導体65の内面に接触する。
【0040】
さらに、相手側外導体65への第2外導体15Bの第4筒部15Gの挿入を進めると、三つの弾性接点部15Jは、相手側外導体65によって内向きに押圧されて、弾性変形する。このとき、三つの弾性接点部15Jは、相手側外導体65の内面に弾性接触しつつ、誘電体14と、第2外導体15Bと、の間に形成された撓み空間Rに進入する(
図7参照)。
【0041】
次に、三つの弾性接点部15Jの各々に設けられたビード15Qが相手側外導体65の内面に接触する。こうして、三つの固定接点部15Hと、三つの弾性接点部15Jの各々に設けられたビード15Qと、が相手側外導体65の内面に接触する(
図8参照)。
【0042】
これとともに、内導体13の相手接続部13Aに相手側内導体61のタブ64が挿入される。さらに、相手側外導体65への第2外導体15Bの第4筒部15Gの挿入を進めると、誘電体14の前端が相手側誘電体62の先端に面接触する(
図7参照)。こうして、コネクタ10と相手側コネクタ60とを電気的に接続する接続動作が完了する。これにより、内導体13及び相手側内導体61を介して、2つのシールド電線Wが電気的に接続され、コネクタ10と相手側コネクタ60との間に、信号用の導電路が形成される。誘電体14の厚肉部14Bには、タブ64のうち、内導体13から露出した露出部位64Aが収容されている(
図7参照)。タブ64の露出部位64Aは、芯線の軸線方向における連結スリット15Pの位置と、異なっている(
図7参照)。
【0043】
相手側外導体65の内面に三つの固定接点部15Hが接触することによって、相手側外導体65と第2外導体15Bの第4筒部15Gとが同軸状になるように位置が決まる(
図8参照)。そして、相手側外導体65の内面に三つの弾性接点部15Jが弾性接触することによって、相手側外導体65の内面に三つの固定接点部15Hが接触した状態を保持することができる(
図8参照)。つまり、三つの弾性接点部15J及び三つの固定接点部15Hによって、相手側外導体65と、第2外導体15Bの第4筒部15Gとは、同軸に配置された状態が維持される。
【0044】
図9に示すように、相手側外導体65に第2外導体15Bが挿入されるようになっている。相手側外導体65に第2外導体15Bが挿入された状態において、第2外導体15Bの軸線に直交する方向から見ると、第2外導体15Bの第4筒部15Gに形成されたスリット15Mは、相手側外導体65によって包囲された状態となる。これによって、スリット15Mを介して外部に電磁ノイズが放射されることを防止する。
【0045】
次に、実施形態1の作用効果を説明する。
【0046】
本開示のコネクタ10は、円筒状をなし、芯線51を有するシールド電線Wの端部に加締め付けられる外導体15を備えている。外導体15は、周方向において、1つの第1領域15Kと、1つの第2領域15Lと、の2つに二分される。外導体15は、固定接点部15Hと、弾性接点部15Jと、を有する。固定接点部15Hは、第1領域15Kに設けられ、第1領域15Kに対して位置が固定され、相手側外導体65の内面に接触する。弾性接点部15Jは、第2領域15Lに設けられ、相手側外導体65の内面に弾性接触する。この構成によれば、第2領域15Lの弾性接点部15Jが相手側外導体65の内面に弾性接触することによって、第1領域15Kの固定接点部15Hが相手側外導体65の内面に接触した状態を維持するので、相手側外導体65と外導体15との径方向の位置が定まり易くなる。
【0047】
本開示のコネクタ10の弾性接点部15Jは、第2領域15Lに形成したスリット15Mによって区画され、複数の弾性接点部15Jが周方向に並んで配置される。隣合う弾性接点部15Jは、共通する一つの区画スリット15Nに臨んでいる。この構成によれば、隣合う弾性接点部15Jを一つの区画スリット15Nで仕切るので、隣合う弾性接点部15Jの間の寸法を狭め易くでき、これによって、スリット15Mの面積を小さくすることができる。このため、外導体15の軸方向において、スリット15Mを形成した部分と、スリット15Mを形成していない部分とで、インピーダンスの差を小さく抑え易くすることができる。
【0048】
本開示のコネクタ10において、相手側外導体65に外導体15が挿入されるようになっており、スリット15Mは、相手側外導体65によって包囲される。この構成によれば、相手側外導体65によってスリット15Mを包囲するので、スリット15Mからの電磁ノイズの漏れを防止することができ、シールド性能を向上させ得る。
【0049】
本開示のコネクタ10は、外導体15の内側に配置される誘電体14を備えている。誘電体14のうち、第1領域15Kの内面と対向する部位の径方向の厚みは、誘電体14のうち、第2領域15Lの内面と対向する部位の径方向の厚みよりも厚い。この構成によれば、第1領域15K側のインピーダンスを低めて第2領域15L側のインピーダンスに近づけることができ、これによって径方向の全体としてのインピーダンスを目的とする大きさに近づけることができる。
【0050】
本開示のコネクタ10の第2領域15Lには、芯線51の軸線方向における弾性接点部15Jの端と、外導体15と、を仕切り、区画スリット15Nに連なる連結スリット15Pが形成されている。コネクタ10は、相手側のタブ64を挿入させる内導体13を備え、誘電体14内において、タブ64のうち、内導体13から露出した露出部位64Aが収容されるようになっており、芯線51の軸線方向における連結スリット15Pの位置と、タブ64の露出部位64Aとは、異なっている。外導体15において連結スリット15Pが形成された位置と、タブ64の露出部位64Aとは、インピーダンスが高くなりがちな部分である。このため、芯線51の軸線方向において、これらの位置を揃えた場合、その位置のインピーダンスが過剰に大きくなってしまう。よって、この構成によれば、これらの位置を異ならせるので、インピーダンスが過剰に大きくなる部分が生じることを防ぐことができる。
【0051】
本開示のコネクタ10において、第2領域15Lの内側には、弾性接点部15Jが弾性変形した際に進入可能な撓み空間Rが形成されている。この構成によれば、撓み空間Rによって、弾性接点部15Jが弾性変形することを妨げ難くすることができる。
【0052】
[他の実施形態]
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0053】
実施形態1とは異なり、固定接点部及び弾性接点部の各々の数を、4つ以上としてもよい。また、固定接点部と弾性接点部との各々の数を、異ならせてもよい。また、固定接点部を複数設けるとともに、弾性接点部を1つ設けた構成としてもよい。
【0054】
実施形態1とは異なり、連結スリットを形成しない構成としてもよい。この場合、区画スリットのみで、弾性接点部を区画する。
【0055】
実施形態1とは異なり、区画スリットの後端部同士を連結するように連結スリットを配置してもよい。
【0056】
実施形態1とは異なり、固定接点部と、弾性接点部と、を内向きに突出するように形成し、相手側外導体の周面である外面に接触するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0057】
10…コネクタ
11,66…スリーブ
13…内導体
13A…相手接続部
13B…筒状部
13C…中心導体圧着部
13D…弾性片
13E…当て止め部
14…誘電体
14A…内導体挿入孔
14B…厚肉部
14C…当て止め受部
14D…突起部
14E…誘電体の軸線方向における前側において、放射方向に厚肉に形成された一方側の部分
14F…誘電体の軸線方向における前側において、放射方向に薄肉に形成された他方側の部分
15…外導体
15A,63…第1外導体
15B…第2外導体
15C…第1筒部
15D…第2筒部
15E…縮径部
15F…第3筒部
15G…第4筒部
15H…固定接点部
15J…弾性接点部
15K…第1領域
15L…第2領域
15M…スリット
15N…区画スリット
15P…連結スリット
15Q…ビード
15R…突出部
51…芯線
52…被覆
53…編組線
60…相手側コネクタ
61…相手側内導体
62…相手側誘電体
64…タブ
64A…露出部位(タブ)
65…相手側外導体
R…撓み空間
W…シールド電線(ケーブル)