(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114582
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 24/38 20110101AFI20230810BHJP
【FI】
H01R24/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016975
(22)【出願日】2022-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 雅美
(72)【発明者】
【氏名】康 麗萍
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AC23
5E223BA15
5E223BB12
5E223CA13
5E223CB26
5E223CC09
5E223CC12
5E223GA08
5E223GA52
(57)【要約】
【課題】容易に組み立てることができるコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ10は、第1外導体15Aと、第2外導体15Bと、重畳部20と、を備えている。第1外導体15Aは、円筒状をなし、シールド電線Wの前端部に加締め付けられる。第2外導体15Bは、円筒状をなし、第1外導体15Aの前端部に同軸状に外嵌されて第1外導体15Aの前方に延びる。重畳部20は、第1外導体15Aの前端部と、第2外導体15Bのうち第1外導体15Aの前端部に重なった後端部と、によって構成されている。重畳部20は、コネクタ10の組立てを補助する補助部20Aを有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状をなし、ケーブルの前端部に加締め付けられる第1外導体と、
円筒状をなし、前記第1外導体の前端部に同軸状に外嵌されて前記第1外導体の前方に延びる第2外導体と、
前記第1外導体の前端部と、前記第2外導体のうち前記第1外導体の前記前端部に重なった後端部と、によって構成された重畳部と、
を備え、
前記重畳部は、該コネクタの組立てを補助する補助部を有しているコネクタ。
【請求項2】
前記補助部は、
前記第1外導体に設けられ、径方向外向きに突出する第1突出部と、
前記第2外導体に設けられ、前記第1突出部が係止する係止部と、
を有している請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記係止部の周方向の両側の各々には、前記第2外導体の後端から、前向きに延びるスリットが形成されている請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記第2外導体を挿入するハウジングをさらに備え、
前記ハウジングの後方から前記第2外導体が前記ハウジングに挿入され、
前記補助部は、前記第2外導体に設けられ径方向外向きに突出し、前記第2外導体が前記ハウジングに対して正規挿入位置を超えて挿入されることを規制する第2突出部を有している請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記補助部は、前記第2外導体に設けられ、径方向外向きに突出する第3突出部を有し、
前記第3突出部と前記第2突出部とは、前記第2外導体の周方向に並んで配置され、
前記ハウジングは、前記第3突出部と前記第2突出部とに対応して凹んで形成され、前記第3突出部と前記第2突出部との各々が収容される収容部を有している請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記第2突出部及び前記第3突出部は、前記第2外導体を径方向外側に切り起こして形成されており、
前記第2突出部及び前記第3突出部のうちの少なくとも一方が前記スリットに臨んでいる請求項3を間接的に引用する請求項5に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、同軸コネクタが開示されている。このものは、同軸ケーブルに取り付けられる一方の接触部品に設けられた接触部を、ソケットやカップリングに挿入されるプラグヘッドを有する他方の接触部品に挿入して連結する。連結の手法として、接触部を加締めたり、スポット溶接したりする手法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第10348044号公報
【特許文献2】特開2021-51872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1における接触部の外形形状は、凹凸のない円筒状である。このため、接触部を他方の接触部品に挿入した後、接触部を加締めたり、スポット溶接したりするまでの間、一方の接触部品と他方の接触部品との相対位置がずれる懸念がある。
【0005】
本開示のコネクタは、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、容易に組み立てることができるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、
円筒状をなし、ケーブルの前端部に加締め付けられる第1外導体と、
円筒状をなし、前記第1外導体の前端部に同軸状に外嵌されて前記第1外導体の前方に延びる第2外導体と、
前記第1外導体の前端部と、前記第2外導体のうち前記第1外導体の前記前端部に重なった後端部と、によって構成された重畳部と、
を備え、
前記重畳部は、該コネクタの組立てを補助する補助部を有している。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、容易に組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示のコネクタの側断面図である。
【
図2】
図2は、本開示のコネクタを後方から見た背面図である。
【
図4】
図4は、シールド電線に加締め付けられた第1外導体を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、誘電体が挿入された第2外導体が第1外導体に外嵌された様子を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
(1)第1外導体と、第2外導体と、重畳部と、を備えている。第1外導体は、円筒状をなし、ケーブルの前端部に加締め付けられる。第2外導体は、円筒状をなし、第1外導体の前端部に同軸状に外嵌されて第1外導体の前方に延びる。重畳部は、第1外導体の前端部と、第2外導体のうち第1外導体の前端部に重なった後端部と、によって構成された部分である。重畳部は、コネクタの組立てを補助する補助部を有している。
【0010】
この構成によれば、重畳部に補助部を設けることによって、第1外導体と第2外導体を容易に組み立てることができる。
【0011】
(2)補助部は、第1外導体に設けられ、径方向外向きに突出する第1突出部と、第2外導体に設けられ、第1突出部が係止する係止部と、を有していることが好ましい。この構成によれば、第1突出部が係止部に係止することによって、第1外導体と第2外導体との相対的な位置が安定し易くなり、第1外導体と第2外導体とを容易に組み立てることができる。
【0012】
(3)(2)において係止部の周方向の両側の各々には、第2外導体の後端から、前向きに延びるスリットが形成されていることが好ましい。この構成によれば、第1外導体の端部に第2外導体を外嵌する際に、係止部を外側に弾性変形させて、係止部が第1突出部に係止し易くすることができる。
【0013】
(4)第2外導体を挿入するハウジングをさらに備え、ハウジングの後方から第2外導体がハウジングに挿入される。補助部は、第2外導体に設けられ径方向外向きに突出し、第2外導体がハウジングに対して正規挿入位置を超えて挿入されることを規制する第2突出部を有していることが好ましい。この構成によれば、重畳部におけるシールド機能を第1外導体によって担保しつつ、第2外導体に第2突出部を設けることができるので、シールド機能を考慮することなく第2突出部の形状を決めることができる。このため、第2突出部の形状に自由度を持たせ易い。
【0014】
(5)(4)において補助部は、第2外導体に設けられ、径方向外向きに突出する第3突出部を有し、第3突出部と第2突出部とは、第2外導体の周方向に並んで配置されている。ハウジングは、第3突出部と第2突出部とに対応して凹んで形成され、第3突出部と第2突出部との各々が収容される収容部を有していることが好ましい。この構成によれば、ハウジングに対して、第2突出部及び第3突出部以外の突出部が設けられた部品(すなわち、収容部に対応しない突出部が設けられた部品)が挿入されることを防止することができる。
【0015】
(6)(3)を間接的に引用する(5)において、第2突出部及び第3突出部は、第2外導体を径方向外側に切り起こして形成されており、第2突出部及び第3突出部のうちの少なくとも一方がスリットに臨んでいることが好ましい。この構成によれば、スリットの数を抑えつつ様々な機能を有する補助部を設けることができるので、重畳部において第1外導体と第2外導体との連結に用いる面積を確保することができる。また、補助部の形状を簡素化し易い。
【0016】
[本開示の実施形態の詳細]
[実施形態1]
本明細書に開示された技術の実施形態1を
図1から
図8を参照しつつ説明する。以下の説明において、前後の方向については、
図1における右方を前方、左方を後方と定義する。上下の方向については、
図1における上側をそのまま上方とし、下側をそのまま下方と定義する。
【0017】
[コネクタの構成]
図1に示すように、コネクタ10は、スリーブ11、内導体13、誘電体14、第1外導体15A、第2外導体15B、重畳部20、及びハウジング16を備えている。コネクタ10は、シールド電線Wの端部に取り付けられる。スリーブ11、第1外導体15A、内導体13、及び第2外導体15Bは、金属で形成されている。誘電体14、及びハウジング16は、合成樹脂製である。
【0018】
ケーブルであるシールド電線Wは、いわゆる同軸線である。シールド電線Wは、複数の素線を撚り合わせた導電性の芯線51と、芯線51の外周を包囲する絶縁性の被覆52と、被覆52の外周を包囲し、素線を網状に編成してなる導電性の編組線53と、編組線53の外周を包囲する絶縁性のシース54と、を有している。芯線51は高周波信号を伝送する機能を有している。編組線53は、電磁波をシールドする機能を有している。シールド電線Wは、シース54と被覆52とを皮剥ぎすることによって、先端側から順に芯線51と、編組線53と、が露出する形態になっている。
【0019】
スリーブ11は、環状をなしている。スリーブ11は、編組線53の外周を包囲して配置され、折り返された編組線53の先端部によって外面が覆われている。スリーブ11は、圧着荷重を受ける機能を有している。
【0020】
内導体13は、金属板を曲げ加工等して成形されている。内導体13は、前側から後側にかけて順に、相手接続部13A、筒状部13B、及び中心導体圧着部13Cを連なって構成される。
【0021】
筒状部13Bは、前後方向に細長い円筒状をなしている。相手接続部13Aは、筒状部13Bから前方へ突出する一対の弾性片13Dによって構成される。各弾性片13Dは、筒状部13Bの軸線を挟んで対向して配置されている。各弾性片13Dの間に前方から相手側内導体のタブ(図示せず)が挿入されると、各弾性片13Dは、拡開してタブを誘い込むとともに、タブを挟み込む。中心導体圧着部13Cは、オープンバレル状をなしており、筒状部13Bの後端に連なっている。中心導体圧着部13Cには、シールド電線Wの露出した芯線51が挿通される。中心導体圧着部13Cは、芯線51に加締め付けられ、これによって内導体13と、芯線51とが連結される。
【0022】
誘電体14は、筒状をなし、前後方向に貫通する断面円形の内導体挿入孔14Aが形成されている。誘電体14の内導体挿入孔14Aには、後方から内導体13が挿入される。
図3に示すように、内導体13には、当て止め部13Eが設けられており、この当て止め部13Eが、内導体挿入孔14A内に形成された当て止め受部14Cの前端に後方から当接することによって、内導体13が誘電体14に対して前止まり状態にされる。
【0023】
第1外導体15Aは、金属板を曲げ加工等して円筒状に形成されている。
図4に示すように、第1外導体15Aは、第1筒部15C、第2筒部15Dを有している。第1筒部15C、及び第2筒部15Dは、同軸状に配置されている。第1筒部15Cの外径は、第2筒部15Dの外径よりも大きい。第1筒部15C、及び第2筒部15Dの間には、縮径部15Eが形成されている。縮径部15Eの外径は、第1筒部15C、及び第2筒部15Dの外径よりも小さい。第1筒部15Cは、折り返された編組線53の先端部に覆われたスリーブ11を包囲している(
図1参照)。第2筒部15Dは、第1筒部15Cよりも前方であって、シールド電線Wの被覆52の端部に配置される。第1外導体15Aは、シールド電線Wの前端部に加締め付けられることによって、シールド電線Wに連結される(
図1参照)。第2筒部15Dの先端には、誘電体14の後端が隣合って配置されている(
図1参照)。
【0024】
第1外導体15Aの第2筒部15Dには、径方向外向きに突出する一対の第1突出部15Sが設けられている。これら第1突出部15Sは、第2筒部15Dの軸線を挟んで反対に配置されている。これら第1突出部15Sは、第2筒部15Dの一部を切り起こして形成されている。これら第1突出部15Sは、後向きに互いの間の寸法が大きくなるように傾斜している。これら第1突出部15Sの後端は、軸線方向に直交する向きに切り立っている。
【0025】
第2外導体15Bは、金属板を曲げ加工等して円筒状に形成されている。
図5に示すように、第2外導体15Bは、第3筒部15F、及び第4筒部15Gを有している。第3筒部15F、及び第4筒部15Gは、同軸状に配置されている。第3筒部15Fの外径は、第4筒部15Gの外径よりも大きい。第3筒部15Fには、第1外導体15Aの第2筒部15Dが嵌め込まれる(
図1参照)。第4筒部15Gは、第3筒部15Fよりも前方に位置している。
【0026】
第2外導体15Bの第3筒部15Fの後端部には、一対の係止部15T、複数のスリット15W、第2突出部15U、及び第3突出部15Vが設けられている。一対の係止部15Tは、第3筒部15Fの軸線を挟んで反対に配置されている。これら係止部15Tの各々は、一対のスリット15Wによって形成されている。換言すると、第3筒部15Fにおいて、係止部15Tの周方向の両側の各々には、スリット15Wが形成されている。
【0027】
各スリット15Wは、第3筒部15Fの後端から前向きに延びて形成されている。係止部15Tは、一対のスリット15Wに挟まれた部分である。各係止部15Tには、板厚方向に貫通した貫通孔15Xが形成されている。各係止部15Tは、スリット15Wの前端(奥端)を支点として径方向外向きに弾性変形可能とされる。
【0028】
第2突出部15Uは、第2外導体15Bを形成するために金属板の端同士を突き合せた部分に設けられている。具体的には、第2突出部15Uは、突き合せた金属板の端の各々の一部を径方向外向きに周方向の一方向及び他方向に起き上がるように切り起こして、周方向に隣接させて形成されている。
【0029】
第3突出部15Vは、一方の係止部15Tに連続して設けられている。第3突出部15Vは、第3筒部15Fの一部を径方向外向き且つ周方向に起き上がるように切り起こして形成されている。第3突出部15Vは、一方の係止部15Tにおいて、周方向における一方の辺から径方向外向きに立ち上がっている。第3突出部15Vは、スリット15Wに臨んでいる。つまり、一方の係止部15Tの外形と、第3突出部15Vの外形とは、共通の一つのスリット15Wに臨んでいる。
【0030】
第2突出部15Uと第3突出部15Vとは、第2外導体15Bの第3筒部15Fに周方向に並んで配置されている。第2突出部15Uと第3突出部15Vとは、一対の係止部15Tによって第3筒部15Fが周方向に二分された一方側に配置されている。第3筒部15Fの周方向における第2突出部15Uの厚みは、第3突出部15Vの厚みよりも大きい。第4筒部15Gには、筒状に形成された相手側外導体(図示せず)の内面に接触する複数の接点部15Hが設けられている。
【0031】
第2外導体15Bには、後方から誘電体14が挿入される(
図1参照)。
図6に示すように、第2外導体15Bの第3筒部15Fには、内向きに突出した突出部15Rが設けられている。この突出部15Rが、誘電体14の外面に形成された窪み部14Dの後端に前方から当接することによって、誘電体14は、第2外導体15Bに対して前止まり状態にされる。第2外導体15Bは、第1外導体15Aの前端部に同軸状に連なりシールド電線Wの前方に延びるように配置される(
図1参照)。
【0032】
図6、7に示すように、重畳部20は、第1外導体15Aの前端部に第2外導体15Bが外嵌されて、第1外導体15Aの前端部と、第2外導体15Bのうち第1外導体15Aの前端部に重なった後端部と、によって構成された部分である。重畳部20は、コネクタ10の組み立てを補助する補助部20Aを有している。補助部20Aは、上述した一対の第1突出部15Sと、一対の係止部15Tと、第2突出部15U、及び第3突出部15Vを有している。そして、スリット15Wは、係止部15Tの重畳部20における周方向の両側の各々に形成されている(
図6参照)。
【0033】
重畳部20は、第2外導体15Bの第3筒部15Fに第1外導体15Aの第2筒部15Dが嵌め込まれることによって形成される。このとき、第3筒部15Fの一対の係止部15Tは、第2筒部15Dの第1突出部15Sに乗り上がり、径方向外向きに弾性変形する。そして、弾性変形した各係止部15Tは、各第1突出部15Sの後端が各係止部15Tの貫通孔15Xに入り込んだところで元の姿勢に復帰する(
図7参照)。こうして、第1突出部15Sは、係止部15Tに係止する。第1突出部15Sが係止部15Tに係止することによって、第2外導体15Bは、第1外導体15Aの前端部に同軸状に連なりシールド電線Wの前方に延び、且つ第2筒部15Dの外面と、第3筒部15Fの内面とが接触した状態が保持される。
【0034】
そして、重畳部20において、係止部15T、スリット15W、第2突出部15U、及び第3突出部15Vが形成されていない領域の複数の異なる位置にスポット溶接を施すことによって、第1外導体15Aと、第2外導体15Bと、が連結される。ここで、重畳部20において、係止部15T、スリット15W、第2突出部15U、及び第3突出部15Vが形成されていない領域とは、重畳部20において、第3筒部15F及び第2筒部15Dがともに円筒形状に保たれた領域である。こうして、第1突出部15Sと、係止部15Tとは、第1外導体15A、及び第2外導体15Bの組み立てを補助する補助部20Aとして機能する。
【0035】
図1に示すように、ハウジング16は、前後方向に貫通するキャビティ16Aが形成され前後方向に長く延びたブロック状をなしている。ハウジング16は、図示しない相手ハウジングに嵌合可能とされている。ハウジング16の上面には、ロックアーム16Bが弾性変形可能に設けられている。ロックアーム16Bは、図示しない相手ハウジングのロック部に弾性的に係止し、ハウジング16と相手ハウジングとを嵌合状態に保持する機能を有している。
【0036】
図2に示すように、ハウジング16は、収容部16Cを有している。収容部16Cは、キャビティ16Aと連通しつつ前後方向に延びる第1溝16D、及びキャビティ16Aと連通しつつ前後方向に延びる第2溝16Eを有している(
図3、8参照)。第1溝16D、及び第2溝16Eは、キャビティ16Aの軸線から離れる方向に凹んで形成されている。第1溝16D、及び第2溝16Eは、キャビティ16Aの内面の上側に、周方向に並んで配置されている。キャビティ16Aの内面の周方向における第1溝16Dの幅は、第2溝16Eの幅よりも大きい。
【0037】
第1溝16Dの前端、及び第2溝16Eの前端は、ハウジング16の前後方向中央で閉塞されている(
図3、8参照)。第1溝16Dの後端、及び第2溝16Eの後端は、ハウジング16の後面に開口している(
図2参照)。前後方向において、第1溝16Dの前端、及び第2溝16Eの前端の位置は、揃っている。
【0038】
ハウジング16のキャビティ16Aに後方からスリーブ11、内導体13、誘電体14、第1外導体15A、第2外導体15Bが取り付けられたシールド電線Wを挿入する。このとき、ハウジング16の後方から第2外導体15Bがハウジング16のキャビティ16Aに挿入される。そして、第1溝16Dには、後方から第2突出部15Uが挿入され、第2溝16Eには、後方から第3突出部15Vが挿入される。つまり、収容部16Cは、第3突出部15Vと、第2突出部15Uと、に対応して凹んで形成され、第3突出部15Vと第2突出部15Uとの各々が収容される。
【0039】
図1に示すように、ハウジング16のキャビティ16Aの下壁には、前向きに片持ち状に突出した形態とされたランス16Fが設けられている。ランス16Fは、先端部(前端部)にキャビティ16A内に突出する係止突起16Gを有している。係止突起16Gの前端は、上下方向に切り立つ係止面16Hとされている。
【0040】
ハウジング16の下壁であってランス16Fの周囲には、キャビティ16Aと交差(直交)する方向に開口するリテーナ挿入孔16Jが貫通して形成されている。リテーナ挿入孔16Jには、下方から図示しないリテーナが挿入される。
【0041】
[ハウジングへのシールド電線の挿入について]
ハウジング16にスリーブ11、内導体13、誘電体14、第1外導体15A、第2外導体15Bが取り付けられたシールド電線Wを挿入する動作について説明する。先ず、ハウジング16の後方に、第2外導体15Bの第4筒部15Gの先端を突き合せるように配置する。このとき、ハウジング16のキャビティ16Aと、第2外導体15Bと、を同軸状に配置するとともに、第1溝16Dの後方に第2突出部15Uを配置し、第2溝16Eの後方に第3突出部15Vを配置する。
【0042】
そして、ハウジング16のキャビティ16Aに、第2外導体15Bの第4筒部15Gを挿入する。キャビティ16Aへの第2外導体15Bの挿入を進めると、第1溝16Dに後方から第2突出部15Uが挿入され、第2溝16Eに後方から第3突出部15Vが挿入される(
図2参照)。キャビティ16Aへの第2外導体15Bの挿入を進めると、第2突出部15Uが第1溝16D内を前向きに移動する。そして、第3突出部15Vが第2溝16E内を前向きに移動する。
【0043】
すると、ランス16Fの係止突起16Gに第3筒部15Fの前端が接触する。ランス16Fは、第3筒部15Fによって下向きに押しのけられて弾性変形する。そして、係止突起16Gの係止面16Hよりも前方に第3筒部15Fの後端が到達すると、弾性変形したランス16Fが元の姿勢に復帰する(
図1参照)。
【0044】
さらに、キャビティ16Aへの第2外導体15Bの挿入を進めると、第1溝16Dの前端に第2突出部15Uが当接するとともに、第2溝16Eの前端に第3突出部15Vが当接する(
図3、8参照)。こうして、第2突出部15U及び第3突出部15Vは、第1溝16D及び第2溝16Eによって前止まり状態にされ、第2外導体15Bがハウジング16に対して正規挿入位置を超えて挿入されることを規制する。つまり、第2突出部15U、及び第3突出部15Vは、第2外導体15Bがハウジング16に対して正規挿入位置を超えて挿入されることを規制して、コネクタ10の組み立てを補助する補助部20Aとして機能する。そして、第2外導体15Bは、ランス16Fによって抜け止めされる。
【0045】
次に、実施形態1の作用効果を説明する。
【0046】
本開示のコネクタ10は、第1外導体15Aと、第2外導体15Bと、重畳部20と、を備えている。第1外導体15Aは、円筒状をなし、シールド電線Wの前端部に加締め付けられる。第2外導体15Bは、円筒状をなし、第1外導体15Aの前端部に同軸状に外嵌されて第1外導体15Aの前方に延びる。重畳部20は、第1外導体15Aの前端部と、第2外導体15Bのうち第1外導体15Aの前端部に重なった後端部と、によって構成されている。重畳部20は、コネクタ10の組立てを補助する補助部20Aを有している。この構成によれば、重畳部20に補助部20Aを設けることによって、第1外導体15Aと第2外導体15Bとを容易に組み立てることができる。
【0047】
本開示のコネクタ10の補助部20Aは、第1外導体15Aに設けられ、径方向外向きに突出する第1突出部15Sと、第2外導体15Bに設けられ、第1突出部15Sが係止する係止部15Tと、を有している。この構成によれば、第1突出部15Sが係止部15Tに係止することによって、第1外導体15Aと、第2外導体15Bと、の相対的な位置が安定し易くなり、第1外導体15Aと、第2外導体15Bと、を容易に組み立てることができる。
【0048】
本開示のコネクタ10において、係止部15Tの周方向の両側の各々には、第2外導体15Bの後端から、前向きに延びるスリット15Wが形成されている。この構成によれば、第1外導体15Aの端部に第2外導体15Bを外嵌する際に、係止部15Tを外側に弾性変形させて、係止部15Tが第1突出部15Sに係止し易くすることができる。
【0049】
本開示のコネクタ10は、第2外導体15Bを挿入するハウジング16をさらに備え、ハウジング16の後方から第2外導体15Bがハウジング16に挿入される。補助部20Aは、第2外導体15Bに設けられ径方向外向きに突出し、第2外導体15Bがハウジング16に対して正規挿入位置を超えて挿入されることを規制する第2突出部15Uを有している。この構成によれば、重畳部20におけるシールド機能を第1外導体15Aによって担保しつつ、第2外導体15Bに第2突出部15Uを設けることができるので、シールド機能を考慮することなく第2突出部15Uの形状を決めることができる。このため、第2突出部15Uの形状に自由度を持たせ易い。
【0050】
本開示のコネクタ10の補助部20Aは、第2外導体15Bに設けられ、径方向外向きに突出する第3突出部15Vを有し、第3突出部15Vと第2突出部15Uとは、第2外導体15Bの周方向に並んで配置されている。ハウジング16は、第3突出部15Vと第2突出部15Uとに対応して凹んで形成され、第3突出部15Vと第2突出部15Uとの各々が収容される収容部16Cを有している。この構成によれば、ハウジング16に対して、第2突出部15U及び第3突出部15V以外の突出部が設けられた部品(すなわち、収容部16Cに対応しない突出部が設けられた部品)が挿入されることを防止することができる。
【0051】
本開示のコネクタ10の第2突出部15U及び第3突出部15Vは、第2外導体15Bを径方向外側に切り起こして形成されており、第3突出部15Vがスリット15Wに臨んでいる。この構成によれば、スリット15Wの数を抑えつつ様々な機能を有する補助部20Aを設けることができるので、重畳部20において第1外導体15Aと第2外導体15Bとの連結に用いる面積を確保することができる。また、補助部20Aの形状を簡素化し易い。
【0052】
[他の実施形態]
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0053】
実施形態1とは異なり、第2突出部を一方の係止部に連続して設け、第2外導体を形成するために金属板の端同士を突き合せた部分を利用して第3突出部を設けてもよい。
【0054】
係止部及び第1突出部の数は、実施形態1の数に限らず、1つでもよく、3つ以上でもよい。
【0055】
実施形態1とは異なり、第3突出部を一方の係止部に連続して設け、第2突出部を他方の係止部に連続して設ける構成としてもよい。つまり、第2突出部を第3突出部と同様の構成として、第2突出部及び第3突出部をスリットに臨む構成としてもよい。
【0056】
実施形態1とは異なり、シールド電線に代えてツイストペア線等を用いた構成であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
10…コネクタ
11…スリーブ
13…内導体
13A…相手接続部
13B…筒状部
13C…中心導体圧着部
13D…弾性片
13E…当て止め部
14…誘電体
14A…内導体挿入孔
14C…当て止め受部
14D…突起部
15A…第1外導体
15B…第2外導体
15C…第1筒部
15D…第2筒部
15E…縮径部
15F…第3筒部
15G…第4筒部
15H…接点部
15R…突出部
15S…第1突出部
15T…係止部
15U…第2突出部
15V…第3突出部
15W…スリット
15X…貫通孔
16…ハウジング
16A…キャビティ
16B…ロックアーム
16C…収容部
16D…第1溝
16E…第2溝
16F…ランス
16G…係止突起
16H…係止面
16J…リテーナ挿入孔
20…重畳部
20A…補助部
51…芯線
52…被覆
53…編組線
54…シース
W…シールド電線(ケーブル)