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特開2023-11460ポリオール組成物、ウレタン樹脂組成物、及びポリウレタンフォーム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023011460
(43)【公開日】2023-01-24
(54)【発明の名称】ポリオール組成物、ウレタン樹脂組成物、及びポリウレタンフォーム
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20230117BHJP
   C08G 18/28 20060101ALI20230117BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20230117BHJP
   C08G 18/22 20060101ALI20230117BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20230117BHJP
【FI】
C08G18/00 H
C08G18/28 015
C08G18/32 003
C08G18/22
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021115340
(22)【出願日】2021-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】松本 泰輝
(72)【発明者】
【氏名】名藤 広晃
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034AA04
4J034AA06
4J034BA08
4J034CA02
4J034CA04
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4J034CC26
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4J034CD04
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4J034HA08
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4J034HC46
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4J034HC61
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4J034RA10
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4J034RA15
(57)【要約】
【課題】低沸点の発泡剤をポリオール組成物中に含有した状態でポリオール組成物を攪拌した場合においても突沸が抑制された、ポリオール組成物を提供する。
【解決手段】ポリオール、発泡剤、フィラー、及びアルコールAを含有するポリオール組成物であって、前記発泡剤が、沸点40℃以下の化合物を含み、前記アルコール群Aが、炭素数が5~24であり、かつ1つの水酸基、又はそれぞれ異なる炭素原子に結合する2つ以上の水酸基を有する、ポリオール組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール、発泡剤、フィラー、及びアルコールAを含有するポリオール組成物であって、
前記発泡剤が、沸点40℃以下の化合物を含み、
前記アルコールAが、炭素数が5~24であり、かつ1つの水酸基、又はそれぞれ異なる炭素原子に結合する2つ以上の水酸基を有する、ポリオール組成物。
【請求項2】
前記アルコールAの分配係数が-0.8以上である、請求項1に記載のポリオール組成物。
【請求項3】
前記アルコールAが、水酸基を2つ有する、請求項1又は2に記載のポリオール組成物。
【請求項4】
前記アルコールAが、ジプロピレングリコールを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリオール組成物。
【請求項5】
前記ジプロピレングリコールの含有量が、ポリオール組成物全量基準で0.5質量%以上である、請求項4に記載のポリオール組成物。
【請求項6】
前記ポリオール組成物が触媒を含有し、
前記触媒がカルボン酸の金属塩を含み、
前記金属塩の金属成分が、ビスマス、鉛、錫、亜鉛からなる群から選択されるいずれか1種である、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリオール組成物。
【請求項7】
前記沸点40℃以下の化合物が、ハイドロフルオロオレフィンである、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリオール組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のポリオール組成物と、ポリイソシアネートとを混合してなるウレタン樹脂組成物。
【請求項9】
建築物の施工現場における吹き付け用途に用いられる、請求項8に記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項10】
請求項8又は9に記載のウレタン樹脂組成物から形成される、ポリウレタンフォーム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオール組成物、ウレタン樹脂組成物、及びポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンフォームは、その優れた断熱性及び接着性から、例えば、マンションなどの集合住宅、戸建住宅、学校の各種施設、商業ビルなどの建築物の断熱材として用いられている。ポリウレタンフォームは、ポリオール組成物とイソシアネートとを混合して発泡させ、スプレー装置などを使用して天井や壁、屋根などの対象物に吹き付けることで得られる。このようなポリウレタンフォームは、建築物に使用されるものである以上、火災が発生した場合において、火が燃え移って延焼をもたらすことを防止するために難燃性が求められる。
【0003】
上記のようなポリウレタンフォームを得るためのポリオール組成物としては、例えば、特許文献1、2に記載されるように、発泡剤、触媒、及び難燃剤を含有するポリオール組成物が知られており、このようなポリオール組成物は、発泡剤としてHFO、難燃剤としてフィラーをそれぞれ含有することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-001971号公報
【特許文献2】特開2016-074886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、こうした従来のポリオール組成物は、保管中にフィラーが沈殿したり凝集したりすることがあるため、発泡させる前に攪拌する必要がある。さらに、発泡剤としてHFOを使用している場合、HFOは沸点が低いため、ポリオール組成物を攪拌している最中に、発泡剤が気化することで該組成物が沸き上がってしまい、取り扱い性や、ポリウレタンフォームの原料としての性能が悪化してしまう恐れがある。
【0006】
そこで、本発明は、低沸点の発泡剤をポリオール組成物中に含有した状態でポリオール組成物を攪拌した場合においても突沸を抑制できる、ポリオール組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討の結果、ポリオール、発泡剤、フィラー、及びアルコールAを含有するポリオール組成物であって、前記発泡剤が、沸点40℃以下の化合物を含み、前記アルコールAが、炭素数が5~24であり、かつ1つの水酸基、又はそれぞれ異なる炭素原子に2つ以上の水酸基を有する、ポリオール組成物に上記課題の解決を見出した。
【0008】
本発明は、下記[1]~[10]を要旨とする。
[1]ポリオール、発泡剤、フィラー、及びアルコールAを含有するポリオール組成物であって、前記発泡剤が、沸点40℃以下の化合物を含み、前記アルコールAが、炭素数が5~24であり、かつ1つの水酸基、又はそれぞれ異なる炭素原子に結合する2つ以上の水酸基を有する、ポリオール組成物。
[2]前記アルコールAの分配係数が-0.8以上である、[1]に記載のポリオール組成物。
[3]前記アルコールAが、水酸基を2つ有する、[1]又は[2]に記載のポリオール組成物。
[4]前記アルコールAが、ジプロピレングリコールを含む、[1]~[3]のいずれか1項に記載のポリオール組成物。
[5]前記ジプロピレングリコールの含有量が、ポリオール組成物全量基準で0.5質量%以上である、[4]に記載のポリオール組成物。
[6]前記ポリオール組成物が触媒を含有し、前記触媒がカルボン酸の金属塩を含み、前記金属塩の金属成分が、ビスマス、鉛、錫、亜鉛からなる群から選択されるいずれか1種である、[1]~[5]のいずれか1項に記載のポリオール組成物。
[7]前記沸点40℃以下の化合物が、ハイドロフルオロオレフィンである、[1]~[6]のいずれか1項に記載のポリオール組成物。
[8][1]~[7]のいずれか1項に記載のポリオール組成物と、ポリイソシアネートとを混合してなるウレタン樹脂組成物。
[9]建築物の施工現場における吹き付け用途に用いられる、[8]に記載のウレタン樹脂組成物。
[10][8]又は[9]に記載のウレタン樹脂組成物から形成される、ポリウレタンフォーム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低沸点の発泡剤をポリオール組成物中に含有した状態でポリオール組成物を攪拌した場合においても突沸を抑制できる、ポリオール組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[ポリオール組成物]
本発明のポリオール組成物は、ポリオール、発泡剤、フィラー、及びアルコールAを含有する。
【0011】
<アルコールA>
本発明のポリオール組成物は、アルコールAを含有するものである。アルコールAは、炭素数が5~24であり、かつ1つの水酸基、又はそれぞれ異なる炭素原子に結合する2つ以上の水酸基を有する。
アルコールAは、上記の特定の構造を有することにより、疎水性が向上して相溶化剤として機能するため、発泡剤が低沸点のものであっても、ポリオール組成物に対する発泡剤の相溶性が向上し、ポリオール組成物を攪拌する際のポリオール組成物の突沸を抑制することができる。他方、アルコールAの炭素数が5未満の場合、アルコールAの疎水性が十分向上しないため、ポリオール組成物に対する発泡剤の相溶性も十分に向上せず、ポリオール組成物の突沸を抑制できなくなる恐れがある。また、化合物Aの炭素数が24を超える場合、アルコールAが長鎖になることで、発泡性能(ポリオールとポリイソシアネートの反応性)が損なわれる。こうした観点を踏まえると、アルコールAの炭素数は、6以上であることが好ましい。他方、アルコールAの炭素数の上限については、16以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。
【0012】
アルコールAのうち、水酸基を1つ有する化合物としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルエーテル、1-ペンタノール、2-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、シクロペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、2-メチル-2-ペンタノール、オクチルアルコール、デシルアルコール、ステアリルアルコールなどが挙げられる。
【0013】
また、アルコールAのうち、水酸基を2つ有する化合物としては、例えば、ジプロピレングリコール(DPG)、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、シス-1,2-シクロペンタンジオール、トランス-1,2-シクロペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオールなどが挙げられる。
【0014】
水酸基以外のアルコールAの構造は、炭化水素基からなってもよいし、炭化水素基とエーテル結合の組み合わせでもよい。炭化水素基は、脂肪族基でもよいし、芳香族基でもよいし、脂肪族基と芳香族基が組み合わさったものでもよいが、脂肪族基であることが好ましい。炭化水素基が脂肪族基である場合、飽和脂肪族基でもよいし、不飽和脂肪族基でもよい。これら脂肪族基の構造は、直鎖状構造でもよいし、分枝状構造でもよいし、環状構造でもよいし、直鎖状構造、分枝状構造、及び環状構造から選択される2種以上が組み合わさったものでもよい。
本発明において、アルコールAを構成する炭化水素基は、ポリオール組成物に対する発泡剤の相溶性を高め、ポリオール組成物の突沸を有効に抑制する観点から、飽和脂肪族基であることがより好ましく、直鎖状飽和脂肪族基であることがさらに好ましい。
また、アルコールAにおける水酸基の位置も特に限定されず、アルコールAは第1級アルコール、第2級アルコール、第3級アルコールのいずれでもよいが、疎水性を向上してポリオール組成物の突沸を抑制しつつ、ポリオールとポリイソシアネートの反応性を担保する観点から、第1級アルコール、もしくは第2級アルコールが好ましい。一般的に、アルコールAの級数が少ないほど、ポリオールとポリイソシアネートの反応性を担保できる。
【0015】
本発明において使用されるアルコールAは、分配係数が-0.8以上であることが好ましく、-0.5以上であることがより好ましい。一般的に、アルコールAの分配係数が高い程、アルコールAの疎水性が向上する分、ポリオール組成物に対する発泡剤の相溶性が高くなり、ポリオール組成物の突沸を抑制しやすくなる。他方、分配係数の上限については、特に限定されるものではないが、好ましくは4以下、より好ましくは3以下であり、更に好ましくは1以下である。なお、分配係数とは、オクタノール/水分配係数(logPOW)を意味し、例えばフラスコ振盪法により算出できる。具体的には、よく精製した水とオクタノールを24時間以上混合してそれぞれ飽和させ、十分に精製した測定対象物質と共にフラスコに取り温度を保ってよく振盪する。次いで遠心分離器にかけ完全に相分離させたら、それぞれの相に含まれる試料量を物質に適した機器分析によって定量する。定量には、紫外・可視・近赤外分光法などの分光法、ガスクロマトグラフィーや高速液体クロマトグラフィー、特に金属元素を含む試料では放射性同位体を用いて線量測定するなどの方法が用いられる。オクタノール中の濃度Cと水中の濃度Cをそれぞれ求め、濃度比POW=C/Cまたはその常用対数logPOWを分配係数とする。
また、本発明において使用されるアルコールAの分配係数は、各種文献、各化合物の安全データシートなどに記載されたものを採用してもよい。
【0016】
アルコールAは、水溶性を低くしてポリオール組成物の突沸を抑制しつつ、ポリオールとポリイソシアネートの反応性を担保する観点から、水酸基を2つ有することが好ましい。水酸基数が2つであると、アルコールAがポリオールとポリイソシアネートの重合反応を阻害することがない。また、アルコールAの疎水性を適度に向上させ、ポリオール組成物の突沸を抑制しやすくなる。
【0017】
以上の点を踏まえると、本発明において使用するアルコールAとしては、炭素数が5~10であるものが好ましく、DPG、オクチルアルコールがより好ましく、DPGがさらに好ましい。DPGを含有することで、発泡剤の相溶性が適度に得られ、ポリオール組成物の突沸の発生を有効に抑制することができる。
なお、DPGとは、一般的に4-オキサ-2,5-ヘプタンジオールであるが、その構造異性体である4-オキサ-2,6-ヘプタンジオール、2-(2-ヒドロキシ-プロポキシ)-プロパン-1-オール、2-(2-ヒドロキシ-1-メチル-エトキシ)-プロパン-1-オールもDPGに含まれる。
アルコールAとしてDPGを含有する場合、DPGの含有量は、ポリオール組成物全量基準で例えば0.3質量%以上であるが、0.5質量%以上であることが好ましく、0.7質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上がさらに好ましい。DPGの含有量が上記下限値以上であることにより、ポリオール組成物の突沸の発生を有効に防止することができる。他方、DPGの含有量は、ポリオール組成物全量基準で4.5質量%以下が好ましく、4.0質量%以下がより好ましく、3.7質量%以下がさらに好ましい。DPGの含有量が上記上限値以下であることにより、ポリオールとポリイソシアネートの反応性を担保できる。
【0018】
ポリオール組成物は、上記したアルコールA以外の短鎖アルコールを含有してもよく、その化合物としては例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどが挙げられる。なお、ここでいう短鎖アルコールとは、炭素数が5未満のアルコールを意味する。
ポリオール組成物が短鎖アルコールを含む場合、ポリオールとポリイソシアネートの反応性を担保する観点から、アルコールAと短鎖アルコールの合計含有量(以下、「合計含有量」と表記することがある。)に対する、アルコールAの含有量の比(アルコールAの含有量/合計含有量)は、0.9以下が好ましく、0.7以下がより好ましく、0.45以下がさらに好ましい。含有量比が上記上限値以下であることで、短鎖アルコールの含有量を十分量確保でき、ポリオールとポリイソシアネートの反応性を担保できるという優位点がある。一般的に、立体障害の少ない短鎖アルコールは、イソシアネート基との反応性に富むことが知られている。他方、アルコールAの含有量/合計含有量は、ポリオール組成物の突沸を有効に抑制する観点から、0.15以上であることが好ましく、0.2以上であることがより好ましい。
【0019】
アルコールAの含有量は、ポリオール組成物の突沸防止と、ポリオールとポリイソシアネートの反応性担保とを両立できるようにする観点から、ポリオール組成物全量基準で、0.1~10質量%が好ましく、0.3~7質量%がより好ましく、0.4~4質量%がさらに好ましい。アルコールAは、上記した通りの構造を有していることにより、含有量が比較的少量でも、ポリオール組成物の突沸を抑制することが可能であるため、アルコールAを一定量含有することにより、上記の通り、突沸防止と、反応性担保とを両立することができる。
【0020】
アルコールAと、アルコールA以外の短鎖アルコールの合計含有量は、ポリオール組成物の突沸防止と、ポリオールとポリイソシアネートの反応性担保とを両立できる程度の範囲であれば、特に限定されないが、ポリオール組成物全量基準で、好ましくは2~15質量%、より好ましくは3~10質量%、さらに好ましくは3.5~8質量%である。
なお、アルコールA、短鎖アルコールの各含有量、及び合計含有量は、ガスクロマトグラフ質量分析(GC-MS)装置を用いて定量分析により測定できる。
【0021】
<ポリオール>
ポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールなどが挙げられる。なお、ポリオールは、上記したアルコールA及び短鎖アルコール以外のポリオールである。
ポリウレタンフォームの難燃性を向上させる観点から、ポリオールは、ポリエステルポリオールを含むことが好ましい。また難燃性を向上させるという観点から、含ハロゲンポリオールや含リンポリオールなどの使用も好ましい。
このような観点から、ポリオール100質量部のうち、ポリエステルポリオールを20質量部以上とすることが好ましく、50質量部以上とすることがより好ましく、80質量部以上とすることがさらに好ましく、100質量部とすることが特に好ましい。
【0022】
本発明で用いるポリオールの平均水酸基価は、ポリウレタンフォームの難燃性を向上させる観点から、100~500mgKOH/gが好ましく、150~450mgKOH/gがより好ましく、200~400mgKOH/gがさらに好ましい。
【0023】
なお、平均水酸基価とは、ポリオールが1種類である場合には、そのポリオールの水酸基価を意味する。また、2種類以上のポリオールを用いる場合は、ポリオールの水酸基価として、当該2種類以上のポリオールの配合比率に従った水酸基の加重平均値を平均水酸基価とする。
例えば、ポリオールとして、ポリオール(d1)、ポリオール(d2)の2種類を用いる場合、ポリオール(d1)の水酸基価をX、配合比率をm、ポリオール(d2)の水酸基価をX、配合比率をmとすると、該平均水酸基価は、以下の式で表される。なお、配合比率は、質量基準である。
平均水酸基価(mgKOH/g)=X×(m/(m+m))+X×(m/(m+m))
水酸基価は、JIS K1557-1:2007に準拠して測定される値である。
【0024】
(ポリエステルポリオール)
ポリエステルポリオールは、芳香環を有するポリエステルポリオールでもよいし、脂肪族ポリエステルポリオールでもよいが、得られるポリウレタンフォームの難燃性を考慮した場合、芳香環を有するポリエステルポリオールを使用することが好ましい。芳香環を有するポリエステルポリオールは、o-フタル酸(フタル酸)、m-フタル酸(イソフタル酸)、p-フタル酸(テレフタル酸)、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸とグリコールの縮合物であることが好ましい。中でも、ポリウレタンフォームの難燃性を高める観点から、ポリオールは、フタル酸とグリコールとの縮合物である、フタル酸系ポリエステルポリオールを含むことが好ましく、p-フタル酸とグリコールの縮合物である、p-フタル酸系ポリエステルポリオールを含むことがより好ましい。
グリコールとしては、特に限定されるものではないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等のポリエステルポリオールの構成成分として公知の低分子量脂肪族グリコールを使用することが好ましい。
【0025】
ポリエステルポリオールの水酸基価は、100~500mgKOH/gが好ましく、150~450mgKOH/gがより好ましく、200~400mgKOH/gがさらに好ましい。
【0026】
(ポリエーテルポリオール)
ポリエーテルポリオールは、2個以上の活性水素原子を有する開始剤に、アルキレンオキサイドを開環付加重合させて得られたポリオキシアルキレンポリオールである。開始剤としては、具体的には例えば、脂肪族多価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノールなどのグリコール類、トリメチロールプロパン、グリセリンなどのトリオール類、ペンタエリスリトールなどの4官能アルコール類、シュクロース類、ソルビトール類などの高官能類)、脂肪族アミン(例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ネオペンチルジアミンなどのアルキレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアルカノールアミン)、芳香族アミン(例えば、アニリン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、マンニッヒ縮合物など)などが挙げられる。
ポリエーテルポリオールは、芳香環を有することが好ましい。上記のうち、芳香環を有する開始剤を用いて製造したポリエーテルポリオールが、芳香環を有するポリエーテルポリオールであり、例えば芳香族アミンを開始剤として用いて製造したポリエーテルポリオールは、芳香環を有するポリエーテルポリオールである。芳香環を有するポリエーテルポリオールの中でも、トリレンジアミン系ポリエーテルポリオール、マンニッヒ系ポリエーテルポリオールなどを好適に使用することができる。
【0027】
トリレンジアミン系ポリエーテルポリオールとは、開始剤としてトリレンジアミンを用いて製造したトリレンジアミン系ポリエーテルポリオールである。
上記マンニッヒ系ポリエーテルポリオールとは、マンニッヒ反応を利用して得られるものであって、分子内に2個以上の水酸基を有するマンニッヒ縮合物、又はそのようなマンニッヒ縮合物に、アルキレンオキサイドを付加させたポリエーテルポリオールである。より具体的には、フェノール及びそのアルキル置換誘導体の少なくともいずれか、ホルムアルデヒド及びアルカノールアミンのマンニッヒ反応により得られたマンニッヒ縮合物、又はこの化合物にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドの少なくとも1種を開環付加重合させることによって得られるポリエーテルポリオールである。
【0028】
ポリエーテルポリオールの水酸基価は、200~2000mgKOH/gであることが好ましく、300~1000mgKOH/gであることがより好ましい。
【0029】
<発泡剤>
本発明で使用する発泡剤は、発泡性の観点から、沸点が40℃以下の化合物を含む。発泡剤は、本発明のポリオール組成物をポリイソシアネートと混合してポリウレタンフォームを製造する際、発泡を促進する。発泡剤として使用可能な、沸点が40℃以下の化合物としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、シクロプロパン、シクロブタン等の低沸点の炭化水素、プロピルクロリド、イソプロピルクロリド、等の塩素化脂肪族炭化水素化合物、ハイドロフルオロオレフィン(以下「HFO」と記載することがある。)、窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガス等の無機系物理発泡剤等が挙げられる。
本発明のポリオール組成物中に含有する発泡剤としては、上記したもののうち、発泡剤としての安定性が高く、かつ触媒活性が低下しにくくなり、さらに、環境負荷も低くなるHFOを含むことが好ましい。
【0030】
好適な発泡剤であるHFOとしては、炭素数が3~6個程度であるフルオロアルケン等を挙げることができる。また、HFOは塩素原子を有するハイドロクロロフルオロオレフィンであってもよく、したがって、炭素数が3~6個程度であるクロロフルオロアルケン等であってもよい。
HFOとしては、例えば、トリフルオロプロペン、HFO-1234等のテトラフルオロプロペン、HFO-1225等のペンタフルオロプロペン、クロロジフルオロプロペン、HFO-1233等のクロロトリフルオロプロペン、及びクロロテトラフルオロプロペン等が挙げられる。
より具体的には、3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1243zf、沸点:-18℃)、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(E)、沸点:-19℃)、シス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(Z)、沸点:10℃)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf、沸点:-29℃)、1,1,3,3-テトラフルオロプロペン(沸点:4℃)、トランス-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye(E)、沸点:-10℃)、シス-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペ(HFO-1225ye(Z)、沸点:-19℃)、1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225zc、沸点:-21℃)、1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225yc、沸点:2℃)、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1233zd(E)、沸点:19℃)、シス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(Z)、沸点:39℃)、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブト-2-エン(HFO-1336mzz、沸点:33℃)、1-クロロ-2,3,3,3,-テトラフルオロプロペン(Z)(HFO-1224yd(Z)、沸点:14℃)等が挙げられる。これらの中ではHFO-1233zd(E)が好ましい。
これらのHFOは、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
HFOの含有量は特に限定されず、ポリオール100質量部に対して、19~75質量部が好ましく、29~67質量部がより好ましく、34~58質量部が更に好ましい。発泡剤の含有量が前記下限値以上であると発泡が促進され、発泡性が良好となり、ポリウレタンフォームの密度を低減することができる。一方、発泡剤の含有量が前記上限値以下であると発泡が過度に進行することを抑制することができる。
【0032】
本発明で使用する発泡剤としては、HFOと共に、水を含有してもよい。水は取り扱いが容易であり、また、水を含有することでイソシアネートインデックスを調整しやすくなる。発泡剤として、HFOと共に水を含有する場合、水の含有量は、特に限定されないが、ポリオール100質量部に対して、0.1~5質量部が好ましく、0.2~3質量部がより好ましく、0.3~2質量部が更に好ましい。発泡剤の含有量が前記下限値以上であると発泡が促進され、発泡性が良好となり、ポリウレタンフォームの密度を低減することができる。一方、発泡剤の含有量が前記上限値以下であると発泡が過度に進行することを抑制することができる。
【0033】
発泡剤の含有量は特に限定されず、ポリオール100質量部に対して、20~80質量部が好ましく、30~70質量部がより好ましく、35~60質量部が更に好ましい。発泡剤の含有量が前記下限値以上であると発泡が促進され、発泡性が良好となり、ポリウレタンフォームの密度を低減することができる。一方、発泡剤の含有量が前記上限値以下であると発泡が過度に進行することを抑制することができる。
【0034】
<触媒>
本発明におけるポリオール組成物は、触媒を含有することが好ましい。触媒としては、ポリオールとポリイソシアネートの反応を活性化し、良質なポリウレタンフォームを得る観点から、樹脂化触媒を含むことが好ましい。
【0035】
(樹脂化触媒)
本発明のポリオール組成物に使用される樹脂化触媒としては、金属触媒を含むことが好ましい。この金属触媒は、一般的に樹脂化金属触媒と呼ばれるものである。本発明では、上記金属触媒を含有することで、該ポリオール組成物から構成される
ウレタン樹脂組成物のゲルタイムを所望の範囲に調整することができる。また、金属触媒を含有させることで、ポリウレタンフォームの発泡性を良好に維持しやすくなり、加えて、良好な施工性を得やすくなる。
上記金属触媒の金属成分は、発泡性、施工性などの観点から、典型金属及び遷移金属からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、ビスマス、鉛、錫、亜鉛からなる群から選択されるいずれか1種がより好ましく、ビスマスがさらに好ましい。こうした金属触媒は、有機酸金属塩であることが好ましく、より好ましくはカルボン酸の金属塩であり、さらに好ましくは炭素数5以上のカルボン酸の金属塩である。カルボン酸は、炭素数5以上であることで、発泡剤、特にハイドロフルオロオレフィンに対する安定性が良好となる。また、カルボン酸の炭素数は、触媒活性などの観点から、18以下が好ましく、12以下がより好ましい。カルボン酸は、脂肪族カルボン酸であることが好ましく、飽和脂肪族カルボン酸がより好ましい。カルボン酸は、直鎖であってもよいし、分岐構造を有してもよいが、分岐構造を有することが好ましい。
【0036】
カルボン酸の具体例としては、オクチル酸、ラウリル酸、バーサチック酸、ペンタン酸及び酢酸等が挙げられ、これらのなかではオクチル酸が好ましい。すなわち、遷移金属塩は、オクチル酸の金属塩が好ましい。これらカルボン酸は、上記の通り直鎖状であってもよいが、分岐構造を有してもよい。なお、分岐構造を有するオクチル酸としては、2-エチルヘキサン酸が挙げられる。
カルボン酸の金属塩としては、金属成分が、典型金属及び遷移金属からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、ビスマス、鉛、錫、及び亜鉛からなる群から選択されるいずれか1種がより好ましい。このようなカルボン酸の金属塩の中でも、オクチル酸のビスマス塩が好ましい。また、カルボン酸の金属塩は、アルキル金属のカルボン酸塩であってもよい。例えばカルボン酸錫塩はジアルキル錫カルボン酸塩等であってもよく、好ましくはジオクチル錫カルボン酸塩等である。
カルボン酸の金属塩の具体例としては、ビスマストリオクテート、ジオクチル錫バーサテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル酸錫等が挙げられ、好ましくはビスマストリオクテート、ジオクチル錫バーサテート、より好ましくはビスマストリオクテートである。
【0037】
樹脂化触媒のうち、金属触媒の含有量は、ポリオール100質量部に対し、0.05~18質量部であることが好ましく、0.1~15質量部がより好ましく、1~13質量部がさらに好ましい。金属触媒の含有量が上記下限値以上であることにより、ウレタン樹脂組成物の初期活性が良好となり、それに伴い、該組成物の発泡性も良好になる。一方、金属触媒の含有量が上記上限値以下であることにより、ポリオールとポリイソシアネートを適切な反応速度で反応させることができる。
【0038】
本発明のポリオール組成物の樹脂化触媒としては、上記した金属触媒に加え、アミノ化合物、アセチルアセトン金属塩等を含有してもよいが、中でもアミノ化合物が好ましい。
アミノ化合物としては、例えば1-メチルイミダゾール、1、2-ジメチルイミダゾール、1-イソブチル-2メチルイミダゾール、イミダゾール環中の第二級アミン官能基をシアノエチル基で置換したイミダゾール化合物などのイミダゾール系化合物等が挙げられる。イミダゾール系化合物としては、1、2-ジメチルイミダゾールが好ましい。
【0039】
樹脂化触媒としてアミノ化合物を含有する場合、アミノ化合物の含有量は、ポリオール100質量部に対し、2~14質量部が好ましく、3~10質量部がより好ましく、3.5~9質量部がさらに好ましい。
【0040】
アセチルアセトン金属塩としては、例えば、アセチルアセトンアルミニウム、アセチルアセトン鉄、アセチルアセトン銅、アセチルアセトン亜鉛、アセチルアセトンベリリウム、アセチルアセトンクロム、アセチルアセトンインジウム、アセチルアセトンマンガン、アセチルアセトンモリブデン、アセチルアセトンチタン、アセチルアセトンコバルト、アセチルアセトンバナジウム、アセチルアセトンジルコニウム等が挙げられる。
【0041】
本発明のポリオール組成物に含有される樹脂化触媒は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用して使用してもよい。樹脂化触媒として、金属触媒を含有する場合、ウレタン樹脂組成物を吹き付けることによりポリウレタンフォームを形成する際の発泡性を良好にする観点から、上記したビスマス化合物を含有することが好ましい。また、上記金属触媒に加え、金属触媒以外の樹脂化触媒を含有する場合は、樹脂化触媒としてビスマス化合物とアミノ化合物の併用が好ましく、ビスマス化合物とイミダゾール化合物の併用がより好ましい。
【0042】
本発明のポリオール組成物における樹脂化触媒の含有量は、ポリオール100質量部に対して、例えば2質量部以上であり、3質量部以上であることが好ましい。上記下限値以上とすることで、発泡性を良好にしつつ、適度な反応速度で、ポリオールとポリイソシアネートとの反応を促進できる。また、反応速度を向上させて、吹き付け用途に好適とするために、樹脂化触媒の上記含有量は、4質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましい。また、触媒の含有量に見合った発泡性、反応性を得る観点から、樹脂化触媒の上記含有量は、20質量部以下が好ましく、18質量部以下がより好ましく、15質量部以下がさらに好ましい。
【0043】
(三量化触媒)
本発明のポリオール組成物は、三量化触媒をさらに含有してもよい。三量化触媒は、イソシアネートに含まれるイソシアネート基を反応させて三量化させ、イソシアヌレート環の生成を促進する触媒である。三量化触媒を含有することで未反応のイソシアネート基の反応を完了させることで良好なポリウレタンフォームが得られるという優位点がある。三量化触媒としては、金属触媒及びアンモニウム塩等が挙げられる。
三量化触媒として使用される金属触媒(三量化金属触媒)としては、有機酸カリウムが挙げられ、好ましくは2-エチルヘキサン酸カリウム等のオクチル酸カリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、ブタン酸カリウム、安息香酸カリウム等の炭素数2~8のカルボン酸カリウムである。
アンモニウム塩としては、トリエチルアンモニウム塩、トリフェニルアンモニウム塩等の3級アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラフェニルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩等を使用することができるが、これらのなかでは、4級アンモニウム塩が好ましい。アンモニウム塩は、例えばカルボン酸のアンモニウム塩である。アンモニウム塩におけるカルボン酸としては、例えば炭素数1~10、好ましくは炭素数2~8の飽和脂肪酸が挙げられる。飽和脂肪酸は、炭化水素基が直鎖であってもよいし、分岐を有してもよいが、分岐を有することが好ましい。カルボン酸の具体例としては、2-エチルヘキサン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、酢酸、及びギ酸などが挙げられるが、これらの中では2,2-ジメチルプロパン酸が好ましい。三量化触媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上併用する場合には、4級アンモニウム塩と金属触媒とを併用することが好ましい。
【0044】
ポリオール組成物中の三量化触媒の含有量は、ポリオール100質量部に対して、0.5~30質量部が好ましく、1~25質量部がより好ましく、2~20質量部が更に好ましく、3~10質量部がより更に好ましい。三量化触媒の含有量が前記下限値以上であると、樹脂化と三量化との活性に大きな差が生まれず、発泡が2段階になることを抑制でき、発泡性が良好となる。一方、三量化触媒の含有量が前記上限値以下であると、樹脂化反応が活性に進行することで、樹脂化反応熱によって三量化の活性を助けることができ発泡性が良好となり、良好なポリウレタンフォームを形成することができる。
【0045】
<フィラー>
本発明に係るポリオール組成物は、フィラーを含む。フィラーを含有させることで、ポリウレタンフォームの難燃性などの各種性能を向上させやすくなる。また、フィラーを含有することで、発泡させる前にポリオール組成物を攪拌させることがあるが、上記の通り、ポリオール組成物は、攪拌しても、アルコールAを含有することで、突沸が防止できる。フィラーは、難燃剤を含むことが好ましい。フィラーとして難燃剤を使用することで、ポリウレタンフォームに高い難燃性能を付与できる。フィラーとして用いられる難燃剤は固形難燃剤である。本発明では、固形難燃剤を使用することで、より難燃性を効果的に高めることができる。なお、固形難燃剤とは、常温(23℃)、常圧(1気圧)において、固体となる難燃剤である。本発明に使用する固形難燃剤としては、リン酸塩含有難燃剤、赤燐系難燃剤、臭素含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、金属水酸化物、及び針状フィラーからなる群から選択される少なくとも1つが好ましい。
【0046】
リン酸塩含有難燃剤としては、例えば、各種リン酸と周期表IA族~IVB族の金属、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミン、環中に窒素を含む複素環式化合物から選ばれる少なくとも一種の金属または化合物との塩からなるリン酸塩が挙げられる。
リン酸は、特に限定されないが、亜リン酸、次亜リン酸などのモノリン酸類でもよいし、ピロリン酸、ポリリン酸等であってもよい。
周期表IA族~IVB族の金属として、リチウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、鉄(II)、鉄(III)、アルミニウム等が挙げられる。
前記脂肪族アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ピペラジン等が挙げられる。芳香族アミンとしては、アニリン、o-トリイジン、2,4,6-トリメチルアニリン、アニシジン、3-(トリフルオロメチル)アニリン等が挙げられる。環中に窒素を含む複素環式化合物としては、ピリジン、トリアジン、メラミン等が挙げられる。
【0047】
リン酸塩含有難燃剤の具体例としては、例えば、亜リン酸アルミニウム、第三リン酸アルミニウム等のモノリン酸塩類、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩等が挙げられる。ここで、ポリリン酸塩としては、特に限定されないが、例えば、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸ピペラジン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウムアミド、ポリリン酸アルミニウム等が挙げられる。
リン酸塩含有難燃剤は、上記したものから1種もしくは2種以上を使用することができる。本発明においては、第三リン酸アルミニウムが好ましい。
【0048】
赤燐系難燃剤は、赤燐単体からなるものでもよいが、赤燐に樹脂、金属水酸化物、金属酸化物などを被膜したものでもよいし、赤燐と樹脂、金属水酸化物、金属酸化物などとを混合したものでもよい。赤燐を被膜し、または赤燐と混合する樹脂は、特に限定されないがフェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、及びシリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。被膜ないし混合する化合物としては、難燃性の観点から、金属水酸化物が好ましい。金属水酸化物は、後述するものを適宜選択して使用するとよい。
【0049】
臭素含有難燃剤としては、分子構造中に臭素を含有し、常温、常圧で固体となる化合物であれば特に限定されないが、例えば、臭素化芳香環含有芳香族化合物等が挙げられる。
臭素化芳香環含有芳香族化合物としては、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモビフェニル、デカブロモビフェニル、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモジフェニルエーテル、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)、テトラブロモビスフェノールA等のモノマー系有機臭素化合物が挙げられる。
【0050】
また、臭素化芳香環含有芳香族化合物は、臭素化合物ポリマーであってもよい。具体的には、臭素化ビスフェノールAを原料として製造されたポリカーボネートオリゴマー、このポリカーボネートオリゴマーとビスフェノールAとの共重合物等の臭素化ポリカーボネート、臭素化ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジエポキシ化合物などが挙げられる。さらには、臭素化フェノール類とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるモノエポキシ化合物等の臭素化エポキシ化合物、ポリ(臭素化ベンジルアクリレート)、臭素化ポリフェニレンエーテルと臭素化ビスフェノールAと塩化シアヌールとの臭素化フェノールの縮合物、臭素化(ポリスチレン)、ポリ(臭素化スチレン)、架橋臭素化ポリスチレン等の臭素化ポリスチレン、架橋または非架橋臭素化ポリ(-メチルスチレン)等が挙げられる。
また、ヘキサブロモシクロドデカンなどの臭素化芳香環含有芳香族化合物以外の化合物であってもよい。
これら臭素含有難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、上記した中では、臭素化芳香環含有芳香族化合物が好ましく、中でも、ヘキサブロモベンゼンなどのモノマー系有機臭素化合物が好ましい。
【0051】
本発明で使用するホウ素含有難燃剤としては、ホウ砂、酸化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸塩等が挙げられる。酸化ホウ素としては、例えば、三酸化二ホウ素、三酸化ホウ素、二酸化二ホウ素、三酸化四ホウ素、五酸化四ホウ素等が挙げられる。
ホウ酸塩としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表第4族、第12族、第13族の元素およびアンモニウムのホウ酸塩等が挙げられる。具体的には、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸セシウム等のホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸バリウム等のホウ酸アルカリ土類金属塩、ホウ酸ジルコニウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸アンモニウム等が挙げられる。
ホウ素含有難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明に使用するホウ素含有難燃剤は、ホウ酸塩であることが好ましく、ホウ酸亜鉛がより好ましい。
【0052】
アンチモン含有難燃剤としては、例えば、酸化アンチモン、アンチモン酸塩、ピロアンチモン酸塩等が挙げられる。酸化アンチモンとしては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等が挙げられる。アンチモン酸塩としては、例えば、アンチモン酸ナトリウム、アンチモン酸カリウム等が挙げられる。ピロアンチモン酸塩としては、例えば、ピロアンチモン酸ナトリウム、ピロアンチモン酸カリウム等が挙げられる。
アンチモン含有難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明に使用する好ましいアンチモン含有難燃剤は三酸化アンチモンである。
【0053】
本発明に使用する金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化ニッケル、水酸化ジルコニウム、水酸化チタン、水酸化亜鉛、水酸化銅、水酸化バナジウム、水酸化スズ等が挙げられる。金属水酸化物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明に使用する好ましい金属水酸化物は水酸化アルミニウムである。
【0054】
針状フィラーとしては、例えば、チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、マグネシウム含有ウィスカー、珪素含有ウィスカー、ウォラストナイト、セピオライト、ゾノライト、エレスタダイト、ベーマイト、棒状ヒドロキシアパタイト、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、スラグ繊維、石膏繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、硼素繊維、ステンレス繊維等が挙げられる。
これらの針状フィラーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0055】
本発明に使用する針状フィラーのアスペクト比(長さ/直径)の範囲は、5~50の範囲であることが好ましく、10~40の範囲であればより好ましい。なお、当該アスペクト比は、走査型電子顕微鏡で針状フィラーを観察してその長さと幅を測定して求めることができる。
【0056】
本発明において使用する固体難燃剤は、いずれか1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用して使用してもよい。2種以上を併用して使用する場合、例えば、針状フィラーとして、チタン酸カリウムウィスカー及びホウ酸アルミニウムウィスカーを含有するなど、同じ分類の固体難燃剤を2種以上使用してもよいし、赤燐系難燃剤及び針状フィラーを含有するなど、異なる分類の固体難燃剤を1種以上ずつ使用してもよい。
本発明において使用する固体難燃剤としては、上記した中では、難燃性の付与効果を十分に発揮する観点から、赤燐系難燃剤を使用することが好ましい。
また、固体難燃剤の含有量は、特に限定されないが、ポリオール100質量部に対して、例えば10~130質量部、好ましくは20~120質量部、より好ましくは30~110質量部、更に好ましくは40~100質量部である。固体難燃剤の含有量を上記範囲内とすることで、固形分を必要以上に増加させることなく、固形難燃剤の沈降を防止し、その分散性を良好にできる。
【0057】
フィラーとしては、上記固形難燃剤以外の無機充填剤を使用してもよい。無機充填剤としては、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーソナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラスビーズ、シリカバルーン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素バルーン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、各種磁性粉、フライアッシュ、シリカアルミナ繊維、及びジルコニア繊維等が挙げられる。これらの無機充填剤は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
本発明に係るポリオール組成物がフィラーを含有する場合、その含有量は、特に限定されないが、ポリオール100質量部に対し10~150質量部が好ましく、21~135質量部がより好ましく、31~120質量部が更に好ましく、42~110質量部がより更に好ましい。フィラーの含有量が前記下限値以上であることにより、該ポリオール組成物から形成されるポリウレタンフォームの難燃性を向上させやすくなる。また、フィラーの含有量が前記上限値以下であることにより、該ポリオール組成物の粘度を一定以下に抑えることができ、取り扱い性が良好になる。
【0059】
<リン酸エステル>
本発明のポリオール含有組成物は、上記した固形難燃剤以外の難燃剤を含有してもよい。そのような難燃剤としては、常温(23℃)、常圧(1気圧)にて液体である液状難燃剤が挙げられ、具体的にはリン酸エステルが挙げられる。リン酸エステルを使用することで、ポリオール含有組成物の流動性を低下させることなく、ポリウレタンフォームの難燃性を向上させやすくなる。
【0060】
リン酸エステルとしては、モノリン酸エステル、縮合リン酸エステル等を使用できる。モノリン酸エステルとは、分子中にリン原子を1つ有するリン酸エステルである。モノリン酸エステルとしては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2-エチルヘキシル)ホスフェート等のトリアルキルホスフェート、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート等のハロゲン含有リン酸エステル、トリブトキシエチルホスフェート等のトリアルコキシホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2-エチルヘキシル)ホスフェート等の芳香環含有リン酸エステル、モノイソデシルホスフェート、ジイソデシルホスフェート等の酸性リン酸エステル等が挙げられる。
【0061】
縮合リン酸エステルとしては、例えば、トリアルキルポリホスフェート、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ビスフェノールAポリフェニルホスフェート等の芳香族縮合リン酸エステルが挙げられる。
縮合リン酸エステルの市販品としては、例えば、大八化学工業株式会社製の「CR-733S」、「CR-741」、「CR747」、ADEKA社製の「アデカスタブPFR」、「FP-600」等が挙げられる。
【0062】
リン酸エステルは、上記したものの中から1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリオール組成物の粘度を適切にしやすくする観点、及びポリウレタンフォームの難燃性を向上させる観点から、モノリン酸エステルが好ましく、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート等のハロゲン含有リン酸エステルがより好ましい。
ポリオール組成物におけるリン酸エステルの含有量は、ポリオール100質量部に対して、5~100質量部が好ましく、12~90質量部がより好ましく、20~75質量部がさらに好ましく、30~60質量部がよりさらに好ましい。
【0063】
<整泡剤>
本発明のポリオール組成物は、整泡剤を含有してもよい。整泡剤としては、例えば、オルガノポリシロキサン等のシリコーン整泡剤が挙げられるが、シリコーン成分がなくとも分子内に極性部分と非極性部分を有するような構造をもっていれば界面活性効果が得られるため、上記種類に捕らわれることはない。また、シリコーン整泡剤としては、ポリジメチルシロキサンとポリエチレングリコールのグラフト共重合体を含むものでもよい。
整泡剤の含有量は、ポリオール100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.1~8質量部であることがより好ましく、0.5~5質量部であることが更に好ましい。整泡剤は一種単独で使用してもよいし、二種以上を使用することができる。
【0064】
<その他成分>
ポリオール組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で、その他添加剤として、例えば、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、金属害防止剤、帯電防止剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、染料、粘着付与樹脂等を含むことができる。
【0065】
<製造方法>
本発明のポリオール組成物の製造方法に特に制限はなく、例えば、各成分を室温程度でホモディスパー等を用いて30秒~20分程度撹拌することにより製造することができる。本発明においては、ポリオール組成物が赤燐を含有しないので、製造時の取扱い性が良好である。
【0066】
[ウレタン樹脂組成物、ポリウレタンフォーム]
本発明のウレタン樹脂組成物は、上記ポリオール組成物とポリイソシアネートとを含む。より具体的には、ウレタン樹脂組成物は、少なくとも、上記ポリオール組成物とポリイソシアネートを混合することにより得られる。
【0067】
<ポリイソシアネート>
本発明のウレタン樹脂組成物に含まれるポリイソシアネートとしては、イソシアネート基を2個以上有する芳香族系、脂環族系、脂肪族系などの各種ポリイソシアネートを用いることができる。
【0068】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、及びポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)などが挙げられる。
【0069】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、及びジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0070】
これらの中では、取扱の容易さ、反応の速さ、得られるポリウレタンフォームの物理特性が優れていること、および低コストであることなどから、芳香族ポリイソシアネートを用いることが好ましく、液状ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を用いることが好ましい。液状MDIとしては、クルードMDI(ポリメリックMDIともいう)が挙げられる。液状MDIの具体的な市販品としては、「44V-10」,「44V-20」(住化コベストロウレタン株式会社製)、「ミリオネートMR-200」(日本ポリウレタン工業))などが挙げられる。また、ウレトンイミン含有MDI(例えば、市販品として「ミリオネートMTL」:日本ポリウレタン工業製)などでもよい。また、ポリイソシアネート内のイソシアネート活性基の一部を水酸基含有化合物と反応させ、予めポリオールとの親和性を高めた処置を施したものを使用してもよい。液状MDIに加えて、他のポリイソシアネートを併用してもよく、併用するポリイソシアネートとしては、ポリウレタンの技術分野において公知のポリイソシアネートなどが限定なく使用可能である。
【0071】
本発明のウレタン樹脂組成物のイソシアネートインデックスは、好ましくは600以下であり、より好ましくは550以下であり、さらに好ましくは500以下である。イソシアネートインデックスがこれら上限値以下であると、ポリウレタンフォーム形成時の2段発泡などが抑制されやすくなる。
また、ウレタン樹脂組成物のイソシアネートインデックスは、ポリウレタンフォームを適切に形成させる観点から、100以上であることが好ましく、150以上であることがより好ましく、200以上がさらに好ましい。
イソシアネートインデックス(INDEX)は、以下の方法にて算出される。
【0072】
INDEX=ポリイソシアネートの当量数÷(ポリオールの当量数+水の当量数)×100
ここで、
ポリイソシアネートの当量数=ポリイソシアネートの使用部数×NCO含有率(%)×100/NCO分子量
ポリオールの当量数=OHV×ポリオールの使用部数÷KOHの分子量、OHVはポリオールの水酸基価(mgKOH/g)、
水の当量数=水の使用部数×水のOH基の数/水の分子量
である。なお上記式において、使用部数の単位は重量(g)であり、NCO基の分子量は42、NCO含有率はポリイソシアネート中のNCO基の割合を質量%で表したものであり、上記式の単位換算の都合上KOHの分子量は56100とし、水の分子量は18、水のOH基の数は2とする。
【0073】
<ゲルタイム>
本発明のウレタン樹脂組成物は、ウレタン樹脂形成速度と整泡力のバランスを良好にし、ポリウレタンフォームにおいて、優れた断熱性を得る為に有効なセルを形成する観点から、25秒以下が好ましく、23秒以下がより好ましく、20秒以下がさらに好ましい。
ゲルタイムは、ポリオール組成物に含まれる触媒の種類及び量などを調節することにより、所望の値に調整できる。ゲルタイムは、カップ発泡法により測定した値であり、ポリオールとポリイソシアネートの反応の活性の指標となるものである。具体的な測定方法は、後述の実施例に記載する通りである。
【0074】
<用途>
本発明のウレタン樹脂組成物、及び該組成物から形成されるポリウレタンフォームの用途は、特に限定されないが、建築物、家具、自動車、電車、船等の構造物の空洞に充填する用途に用いたり、該構造物に対して吹き付ける用途に用いたりすることができる。中でも、構造物に対して吹き付ける用途、即ち、吹き付け用途に用いられることが好ましく、建築物の施工現場における吹き付け用途に用いられることがより好ましい。
吹き付けは、吹き付け装置(例えばGRACO社製:A-25)及びスプレーガン(例えばガスマー社製:Dガン)を利用して実施することができる。吹き付けは、別容器に入ったポリオール組成物とポリイソシアネートを吹き付け装置内で温度調整し、スプレーガンの先端で両者を衝突混合させ、混合液をエア圧によりミスト化することで実施できる。吹き付け装置及びスプレーガンは公知であり、市販品を使用することができる。また原液温度設定・圧力等は一般的なポリウレタンフォームの吹き付け条件が適応できる。
【実施例0075】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0076】
[使用材料]
<ポリオール組成物>
(ポリオール)
・p-フタル酸ポリエステルポリオール(川崎化成工業社製、製品名:マキシモールRLK-087、水酸基価=200mgKOH/g)
【0077】
(整泡剤)
・シリコーン系整泡剤(東レダウコーニング社製、製品名:SH-193)
【0078】
(触媒)
(1)樹脂化触媒
・アミン系触媒 1,2-ジメチルイミダゾール(東ソー社製、製品名:TOYOCAT DM70)1,2-ジメチルイミダゾール濃度65~75質量%、エチレングリコール(分配係数-1.36)濃度25~35質量%
・ビスマス化合物 2-エチルヘキサン酸ビスマス(日東化成社製、製品名:Bi28)濃度81~90質量%
(2)三量化触媒
・4級アンモニウム塩:2,2-ジメチルプロパン酸テトラメチルアンモニウム塩(エボニック社製、製品名:DABCO TMR7)2,2-ジメチルプロパン酸テトラメチルアンモニウム塩濃度45~55質量%、エチレングリコール濃度45~55質量%
【0079】
(発泡剤)
・水
・HFO-1233zd<ハイドロフルオロオレフィン>(ハネウェル製、製品名:ソルスティスLBA)
【0080】
(液状難燃剤)
・リン酸エステル系難燃剤 トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート(大八化学社製、製品名:TMCPP)
【0081】
(固形難燃剤(フィラー))
・赤燐系難燃剤(燐化学工業社製、製品名:ノーバエクセル140)
【0082】
(アルコールA)
・ジプロピレングリコール(DPG)(富士フィルム和光純薬株式会社社製、製品名:ジプロピレングリコール(異性体混合物))、分配係数-0.46
・オクチルアルコール(花王社製、製品名:カルコール0898)、分配係数3.5
なお、各分配係数は、いずれもMerck社発行の安全データシートから得られたものである。
【0083】
(短鎖アルコール)
・ブタンジオール(Merck社製、製品名:1,4-ブタンジオール)、分配係数-0.88
【0084】
<ポリイソシアネート>
・ジフェニルメタンジイソシアネート(住化コベストロウレタン株式会社社製、製品名:スミジュール44V20L)
【0085】
以下の方法により、測定及び評価を行った。
【0086】
[アルコールA、短鎖アルコールの含有量]
ポリオール組成物の溶液を1~2μL程度採取し、ガスクロマトグラフ質量分析(GC-MS)装置に投入して液中の複数成分からアルコールA、ブタンジオール、及び触媒中に希釈剤として含まれるエチレングリコールおよびジエチレングリコールの各成分を分離検出し、定量分析することにより、上記各アルコールの含有量を測定した。上記測定により得られた含有量により、アルコールAの含有量、並びにアルコールA及び短鎖アルコールの合計含有量を求めた。
【0087】
[沸き試験]
各成分を所定の部数にて混錬し生成した液状のポリオール組成物を遠心分離機に投入し、該遠心分離機によりポリオール組成物の遠心分離を行い、脱泡処理を施した。
(遠心分離条件・・・遠心時間:270秒、公転数:300rpm、自転数:700rpm)
上記脱泡処理後のポリオール組成物60gを容量100mlのバイアル(型番:1030-13113、京都理化学器械社製)に注入し、攪拌子を投入する。気密性を高くするためバイアルはアルミシールバイアルを用い、セプタムの上からアルミ製のキャップをかぶせて締める。その後、ポリオール組成物の入ったバイアルを33℃の温浴に1時間以上保管しポリオール組成物の温度を33℃に調節した後、バイアルを開栓してマグネティックスターラーを用いて撹拌子を1,500rpmで回転させ、液を攪拌する。攪拌の際の液面の沸きあがりを観察し、液面が最高点に達したときの高さを記録し、攪拌前の液面高さとの差を算出した値を沸き高さとする。沸き試験の評価基準は以下の通りである。
〇:沸き高さが30mm未満
△:沸き高さが30mm以上35mm未満
×:沸き高さが35mm以上
【0088】
[カップ発泡法]
以下の手順に示すようなカップ発泡法により、ウレタン樹脂組成物のゲルタイムを測定した。
(1)表1に記載の配合により、ポリオール組成物の各成分を混練し、液状のポリオール組成物を作製した。該ポリオール組成物を、該ポリオール組成物1質量部に対し、TMCPP3質量部の割合で、TMCPPにより希釈した。
(2)表1に記載のポリイソシアネート1質量部に対し、TMCPP1質量部により希釈し、ポリイソシアネート組成物とした。
(3)上記(1)で得られたポリオール組成物、及び上記(2)で得られたポリイソシアネート組成物の各液温をそれぞれ15℃に調節し、質量比1:1の割合で、120gずつ混合し、該混合物を、攪拌装置(IKA社製、製品名:EUROSTAR 20 high speed digital)を用い、回転数6000rpmにより5秒間攪拌した。
(4)攪拌開始時間を0秒とし、発泡中のフォームに棒を突き刺した際、フォームから抵抗を感じるようになるまでの時間(秒)を測定し、ゲルタイムを得た。
以上の手順で得られたゲルタイムについて、評価を行った。ゲルタイムの評価基準は以下の通りである。
〇:20秒以下
△:20秒超25秒以下
×:25秒超
【0089】
【表1】

表1に記載の触媒の各含有量は、製品としての含有量である。
【0090】
以上の点より、実施例にて作製したポリオール組成物は、アルコールAを含有しているため、発泡剤としてHFOを含有した状態でフィラーの凝集及び沈殿を防止するための攪拌を行っても、突沸を抑制することができた。
これに対し、比較例にて作製したポリオール組成物は、アルコール群Aを含有しているため、フィラーの凝集及び沈殿を防止するための攪拌を行った結果、突沸を抑制することができなかった。