(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114608
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】作業管理方法、作業管理システム、基板処理装置、プログラムおよび記録媒体
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/0639 20230101AFI20230810BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20230810BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20230810BHJP
H05K 13/00 20060101ALN20230810BHJP
【FI】
G06Q10/06 332
G06Q50/04
G05B19/418 Z
H05K13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017024
(22)【出願日】2022-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】大塚 徹寛
【テーマコード(参考)】
3C100
5E353
5L049
【Fターム(参考)】
3C100AA56
3C100AA57
3C100AA63
3C100BB12
3C100BB17
3C100DD07
3C100EE07
5E353AA02
5E353CC01
5E353CC03
5E353CC23
5E353DD02
5E353GG01
5E353HH11
5E353JJ21
5E353JJ48
5E353KK01
5E353LL04
5E353NN18
5E353QQ01
5L049AA06
5L049CC03
(57)【要約】
【課題】オペレータに負担を掛けることなく、複数のオペレータの中から基板処理装置に対して作業を行った作業者を正確、かつ確実に特定する。
【解決手段】この発明は、基板処理装置に取り付けられた発信機からの信号を連続的または断続的に出力する発信工程と、複数のオペレータにそれぞれ携帯される携帯端末が信号を受信する毎に、各携帯端末から携帯端末を携帯するオペレータを識別するための識別情報および発信機から携帯端末までの離間距離に関連する情報を含むオペレータ情報を出力させるオペレータ情報出力工程と、作業中に出力されたオペレータ情報のうち、離間距離がエリア規定距離以下であるオペレータ情報から作業者を特定する作業者特定工程と、を備えている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を搭載した基板を生産するために前記基板に処理を施す基板処理装置から予め設定されたエリア規定距離だけ離れた、作業エリア内に滞在して前記基板処理装置に対して作業を行う作業者を複数のオペレータから特定する作業管理方法であって、
前記基板処理装置に取り付けられた発信機からの信号を連続的または断続的に出力する発信工程と、
前記複数のオペレータにそれぞれ携帯される携帯端末が前記信号を受信する毎に、各携帯端末から前記携帯端末を携帯するオペレータを識別するための識別情報および前記発信機から前記携帯端末までの離間距離に関連する情報を含むオペレータ情報を出力させるオペレータ情報出力工程と、
前記作業中に出力された前記オペレータ情報のうち、前記離間距離が前記エリア規定距離以下である前記オペレータ情報から前記作業者を特定する作業者特定工程と、
を備えることを特徴とする作業管理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の作業管理方法であって、
前記作業者特定工程は、前記離間距離が前記エリア規定距離以下である前記オペレータ情報に含まれる前記識別情報が前記複数のオペレータの中の第1オペレータを識別するための識別情報のみであるときには、前記第1オペレータを前記作業者として特定する工程を含む作業管理方法。
【請求項3】
請求項1に記載の作業管理方法であって、
前記作業者特定工程は、前記離間距離が前記エリア規定距離以下である前記オペレータ情報に含まれる前記識別情報が複数種類であるときには、前記識別情報で識別される複数のオペレータのうち、前記作業中において前記作業エリアに最も長く滞在したオペレータを前記作業者として特定する工程を含む作業管理方法。
【請求項4】
請求項3に記載の作業管理方法であって、
前記作業者特定工程は、前記識別情報で識別される複数のオペレータのうち、前記作業者以外の前記オペレータを副作業者として特定する工程をさらに含む作業管理方法。
【請求項5】
請求項3に記載の作業管理方法であって、
前記作業者特定工程は、前記作業中において前記作業エリアに最も長く滞在したオペレータが複数存在するときには、滞在時間が同じ前記複数のオペレータの一を前記作業者として特定する工程を含む作業管理方法。
【請求項6】
請求項3に記載の作業管理方法であって、
前記基板処理装置に対する作業が発生する毎に、前記作業を行ったオペレータの滞在頻度を更新する滞在頻度更新工程をさらに備え、
前記作業者特定工程は、前記作業中において前記作業エリアに最も長く滞在したオペレータが複数存在するときには、滞在時間が同じ前記複数のオペレータのうち前記滞在頻度が最も高いオペレータを前記作業者として特定する工程を含む作業管理方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の作業管理方法であって、
前記作業者特定工程は、滞在時間が同じ前記複数のオペレータのうち前記作業者以外の前記オペレータを副作業者として特定する工程を含む作業管理方法。
【請求項8】
請求項1に記載の作業管理方法であって、
前記作業者特定工程は、前記離間距離が前記エリア規定距離以下である前記オペレータ情報に含まれる前記識別情報が複数種類であるときには、前記識別情報で識別される複数のオペレータを前記作業者として特定する工程をさらに含む作業管理方法。
【請求項9】
請求項8に記載の作業管理方法であって、
前記作業者特定工程により前記作業者として特定された前記複数のオペレータを、前記作業中における前記作業エリアでの滞在時間の順序に並べて前記作業者として記録する作業者記録工程を、さらに備える作業管理方法。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか一項に記載の作業管理方法であって、
前記基板処理装置に対する作業が発生する毎に、前記作業を行ったオペレータの滞在時間を取得する滞在時間取得工程と、
前記オペレータ毎の滞在時間の累積時間または滞在頻度をランキング形式で報知する報知工程と、をさらに備える作業管理方法。
【請求項11】
部品を搭載した基板を生産するために前記基板に処理を施す基板処理装置から予め設定されたエリア規定距離だけ離れた、作業エリア内に滞在して前記基板処理装置に対して作業を行う作業者を複数のオペレータから特定する作業管理システムであって、
前記基板処理装置に取り付けられた発信機からの信号を連続的または断続的に出力する発信機と、
前記複数のオペレータにそれぞれ携帯される複数の携帯端末と、
前記複数の携帯端末からの出力を受信して前記作業者を特定する作業者特定部と、備え、
前記複数の携帯端末は、それぞれ前記信号を受信する毎に、前記携帯端末を携帯するオペレータを識別するための識別情報および前記発信機から前記携帯端末までの離間距離に関連する情報を含むオペレータ情報を出力し、
前記作業者特定部は、前記作業中に出力された前記オペレータ情報のうち、前記離間距離が前記エリア規定距離以下である前記オペレータ情報から前記作業者を特定する
ことを特徴とする作業管理システム。
【請求項12】
部品を搭載した基板を生産するために前記基板に処理を施す基板処理部と、
前記基板処理部を制御する制御部と、を備え、
前記基板処理部は、信号を連続的または断続的に出力する発信機を有し、
前記制御部は、
複数のオペレータにそれぞれ携帯される携帯端末が前記信号を受信する毎に、各携帯端末から前記携帯端末を携帯するオペレータを識別するための識別情報および前記発信機から前記携帯端末までの離間距離に関連する情報を含むオペレータ情報を受信する通信部と、
前記基板処理部から予め設定されたエリア規定距離だけ離れた、作業エリア内に滞在して前記基板処理部に対して作業を行う作業者を、前記作業中に出力された前記オペレータ情報のうち前記離間距離が前記エリア規定距離以下である前記オペレータ情報から特定する作業者特定部と、
を有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項13】
部品を搭載した基板を生産するために前記基板に処理を施す基板処理装置から予め設定されたエリア規定距離だけ離れた、作業エリア内に滞在して前記基板処理装置に対して作業を行う作業者を複数のオペレータから特定するためのプログラムであって、
前記基板処理装置に取り付けられた発信機からの信号を連続的または断続的に出力する発信工程と、
前記複数のオペレータにそれぞれ携帯される携帯端末が前記信号を受信する毎に、各携帯端末から前記携帯端末を携帯するオペレータを識別するための識別情報および前記発信機から前記携帯端末までの離間距離に関連する情報を含むオペレータ情報を出力させるオペレータ情報出力工程と、
前記作業中に出力された前記オペレータ情報のうち、前記離間距離が前記エリア規定距離以下である前記オペレータ情報から前記作業者を特定する作業者特定工程と、
をコンピュータに実現させることを特徴とするプログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のプログラムを記録した非一過性の記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、部品を搭載した基板を生産する部品実装システムを構成する、基板処理装置に対して作業を行った作業者を複数のオペレータから特定する作業管理技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、印刷装置、部品実装装置およびリフロー炉を装備する部品実装システムが記載されている。印刷装置は、はんだなどの接合材を基板に印刷する(印刷処理)。部品実装装置は、印刷済の基板を印刷装置から受け取り、当該基板に部品を実装する(部品実装処理)。リフロー炉は、部品実装された基板を部品実装装置から受け取り、リフロー処理を実行する。これらの装置を組み合わせることで、部品を搭載した基板の生産が実行される。また、部品実装システムでは、基板生産が良好に行われたことを確認するために、印刷装置と部品実装装置との間、部品実装装置とリフロー炉との間、リフロー炉の後段などに検査装置が配置されることがある。このように、部品実装システムは、部品を搭載した基板を生産するための基板処理装置を複数組み合わせて構成され、複数のオペレータによる保守作業を適宜受けながら稼働している。
【0003】
部品実装システムを構成する一の基板処理装置、例えば部品実装装置において、吸着ミスやテープ切断などの作業イベントが発生すると、当該部品実装装置にオペレータが駆け寄る。そして、オペレータは、部品実装装置に対して適切な保守作業を施し、上記作業イベントが解消されたことを確認すると、当該部品実装装置から離れる。このような保守作業を複数のオペレータが入れ替わりに行うことがある。
【0004】
そこで、従来では、どの基板処理装置において、いつ作業イベントが発生し、それをどのオペレータがどのような操作により上記作業イベントを解消したかなどの作業履歴を記録している。そして、作業履歴に基づき、オペレータ毎の操作履歴やエラーの発生率などの作業管理を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した作業管理を行う上で、最も管理し難い項目が作業を行ったオペレータの管理である。つまり、従来では、作業イベントが発生した基板処理装置に到着したオペレータが当該部品実装装置に対してログイン操作した上で保守作業を開始する。したがって、どのオペレータが保守作業をいつから作業を開始したのかという作業管理情報を取得するには、上記ログイン操作が確実に行われる必要がある。しかしながら、ログイン操作はオペレータの作業負担を増やす主要因のひとつとなっている。また、オペレータがログイン操作を行わないまま作業を開始すると、その作業は前回ログイン操作を行ったオペレータによるものであると認識されてしまい、作業管理情報に不確実性が含まれてしまう。
【0007】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、オペレータに負担を掛けることなく、複数のオペレータの中から基板処理装置に対して作業を行った作業者を正確、かつ確実に特定することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、部品を搭載した基板を生産するために基板に処理を施す基板処理装置から予め設定されたエリア規定距離だけ離れた、作業エリア内に滞在して基板処理装置に対して作業を行う作業者を複数のオペレータから特定する作業管理方法であって、基板処理装置に取り付けられた発信機からの信号を連続的または断続的に出力する発信工程と、複数のオペレータにそれぞれ携帯される携帯端末が信号を受信する毎に、各携帯端末から携帯端末を携帯するオペレータを識別するための識別情報および発信機から携帯端末までの離間距離に関連する情報を含むオペレータ情報を出力させるオペレータ情報出力工程と、作業中に出力されたオペレータ情報のうち、離間距離がエリア規定距離以下であるオペレータ情報から作業者を特定する作業者特定工程と、を備えることを特徴としている。
【0009】
また、本発明の第2の態様は、部品を搭載した基板を生産するために基板に処理を施す基板処理装置から予め設定されたエリア規定距離だけ離れた、作業エリア内に滞在して基板処理装置に対して作業を行う作業者を複数のオペレータから特定する作業管理システムであって、基板処理装置に取り付けられた発信機からの信号を連続的または断続的に出力する発信機と、複数のオペレータにそれぞれ携帯される複数の携帯端末と、複数の携帯端末からの出力を受信して作業者を特定する作業者特定部と、備え、複数の携帯端末は、それぞれ信号を受信する毎に、携帯端末を携帯するオペレータを識別するための識別情報および発信機から携帯端末までの離間距離に関連する情報を含むオペレータ情報を出力し、作業者特定部は、作業中に出力されたオペレータ情報のうち、離間距離がエリア規定距離以下であるオペレータ情報から作業者を特定することを特徴としている。
【0010】
また、本発明の第3の態様は、基板処理装置であって、部品を搭載した基板を生産するために基板に処理を施す基板処理部と、基板処理部を制御する制御部と、を備え、基板処理部は、信号を連続的または断続的に出力する発信機を有し、制御部は、複数のオペレータにそれぞれ携帯される携帯端末が信号を受信する毎に、各携帯端末から携帯端末を携帯するオペレータを識別するための識別情報および発信機から携帯端末までの離間距離に関連する情報を含むオペレータ情報を受信する通信部と、基板処理部から予め設定されたエリア規定距離だけ離れた、作業エリア内に滞在して基板処理部に対して作業を行う作業者を、作業中に出力されたオペレータ情報のうち離間距離がエリア規定距離以下であるオペレータ情報から特定する作業者特定部と、を有することを特徴としている。
【0011】
また、本発明の第4の態様は、部品を搭載した基板を生産するために基板に処理を施す基板処理装置から予め設定されたエリア規定距離だけ離れた、作業エリア内に滞在して基板処理装置に対して作業を行う作業者を複数のオペレータから特定するためのプログラムであって、基板処理装置に取り付けられた発信機からの信号を連続的または断続的に出力する発信工程と、複数のオペレータにそれぞれ携帯される携帯端末が信号を受信する毎に、各携帯端末から携帯端末を携帯するオペレータを識別するための識別情報および発信機から携帯端末までの離間距離に関連する情報を含むオペレータ情報を出力させるオペレータ情報出力工程と、作業中に出力されたオペレータ情報のうち、離間距離がエリア規定距離以下であるオペレータ情報から作業者を特定する作業者特定工程と、をコンピュータに実現させることを特徴としている。
【0012】
さらに、本発明の第5の態様は、上記プログラムを記録した非一過性の記録媒体である。
【0013】
このように構成された発明では、基板処理装置に取り付けられた発信機から連続的または断続的に出力される信号が各オペレータに携帯される携帯端末で受信される。そして、各携帯端末からオペレータ情報が上記信号に同期して出力される。オペレータ情報には、携帯端末を携帯するオペレータを識別するための識別情報と、発信機から携帯端末までの距離、つまり基板処理装置からのオペレータの離間距離に関連する情報が含まれている。そして、作業中に出力されたオペレータ情報のうち、離間距離がエリア規定距離以下であるオペレータ情報から作業者が特定される。このように、本発明では、上記離間距離に関する情報に基づいて複数のオペレータの中から作業者が特定される。したがって、オペレータに負担を掛けることなく、複数のオペレータのうち誰が作業者であるかが正確、かつ確実に特定される。
【0014】
ここで、離間距離がエリア規定距離以下であるオペレータ情報(後で説明する「滞在オペレータ情報」に相当)に含まれる識別情報が単一の場合には、次のように作業者を特定してもよい。すなわち、複数のオペレータのうちの第1オペレータを識別するための識別情報のみが含まれるとき、基板処理装置に対して作業を施すために第1オペレータが最初に基板処理装置に移動し、当該第1オペレータのみで作業を行ったことがわかる。そこで、第1オペレータを直ちに作業者として特定することができる。
【0015】
また、離間距離がエリア規定距離以下であるオペレータ情報、つまり上記滞在オペレータ情報に含まれる識別情報が複数種類であるときには、それらの識別情報で識別される複数のオペレータのうち、作業中において作業エリアに最も長く滞在したオペレータを作業者として特定してもよい。このように複数のオペレータが基板処理装置に対して作業を施す場合であっても、主たる作業者を高い蓋然性で特定することができ、高度な作業管理を行うことができる。このような場合、残りのオペレータについては、副作業者として特定してもよく、これにより上記残りのオペレータが作業したにもかかわらず作業実績なしと認識されるのを確実に防止し、作業実体に即した作業管理を行うことができる。
【0016】
また、作業中において作業エリアに最も長く滞在したオペレータが複数存在することがあるが、その場合には、滞在時間が同じ複数のオペレータの一を作業者として特定してもよい。これによって、作業を主として行ったオペレータを決めることができ、作業管理を円滑に進めることができる。
【0017】
また、基板処理装置に対する作業が発生する毎に、作業を行ったオペレータの滞在頻度を更新するように構成してもよく、作業中において作業エリアに最も長く滞在したオペレータが複数存在するときには、滞在時間が同じ複数のオペレータのうち滞在頻度が最も高いオペレータを作業者として特定してもよい。このように滞在時間のみでなく、滞在頻度を考慮した上で、作業者を特定することによって作業を主として行ったオペレータをより高い蓋然性で作業者とすることができる。その結果、作業管理の信頼性をさらに高めることができる。
【0018】
また、滞在時間が同じ複数のオペレータのうち作業者以外のオペレータを副作業者として特定してもよい。これにより、上記残りのオペレータが作業したにもかかわらず作業実績なしと認識されるのを確実に防止し、作業実体に即した作業管理を行うことができる。
【0019】
また、離間距離がエリア規定距離以下であるオペレータ情報に含まれる識別情報が複数種類であるときには、それらのオペレータを作業者として特定してもよい。これにより、作業者の漏れが確実に防止され、作業実体に即した作業管理を行うことができる。
【0020】
このように作業者として複数のオペレータが特定されるときには、作業中における作業エリアでの滞在時間の順序に並べて作業者として記録してもよい。これにより、作業実体をより正確に把握することができ、作業管理精度を高めることができる。
【0021】
さらに、基板処理装置に対する作業が発生する毎に、作業を行ったオペレータの滞在時間を取得しておき、オペレータ毎の滞在時間の累積時間または滞在頻度をランキング形式で報知するように構成してもよい。これにより、各オペレータの作業実績を容易に、かつ正確に把握することができ、作業管理精度を高めることができる。
【発明の効果】
【0022】
上記したように、本発明によれば、オペレータに負担を掛けることなく、複数のオペレータの中から基板処理装置に対して作業を行った作業者を正確、かつ確実に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る基板作業装置の第1実施形態である部品実装装置を装備する部品実装システムの構成を模式的に示すブロック図である。
【
図2】
図1に装備される部品実装装置の部品実装部の構成を模式的に示す部分平面図である。
【
図3】
図2の部品実装装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図4】ビーコン発信機、オペレータが携帯している携帯端末および制御ユニットとの間で行われる通信状況を模式的に示す図である。
【
図5】ビーコン発信機からのビーコン電波の発信毎に取得されるオペレータ距離データをまとめた図である。
【
図6】作業イベント毎に作業者の滞在時間および滞在頻度をまとめたイベント処理データを示す図である。
【
図7】本発明に係る作業管理方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【
図8】本発明に係る作業管理方法の他の実施形態において表示/操作ユニットに表示される表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は本発明に係る基板作業装置の第1実施形態である部品実装装置を装備する部品実装システムの構成を模式的に示すブロック図である。部品実装システム1は、基板搬送方向であるX方向(
図1中の左右方向)に直列に並ぶ印刷装置100、3台の部品実装装置200、リフロー炉300および検査装置400を備え、これらをホストコンピュータ500により統括的に制御することで、部品を実装した基板を生産する。ホストコンピュータ500は、CPU(= Central Processing Unit)やRAM(=Random Access Memory)等を有するコンピュータにより構成される演算処理部501の他、ハードディスクドライブなどの記憶部502、各種情報を表示して作業者に報知するディスプレイ530およびキーボードやマウス等の入力部440を備えている。
【0025】
また、ホストコンピュータ500は、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、USB(Universal Serial Bus)メモリー等のコンピュータ読み取り可能な非一過性の記録媒体RMaにアクセスして、記録媒体RMaから制御プログラムなどを読み出す読取部520を備える。そして、ホストコンピュータ500は、こうして読み出した制御プログラムに従って、印刷装置100、部品実装装置200、リフロー炉300および検査装置400の各制御ユニット110、210、310、410との間で各種情報や指令などの授受を行う。
【0026】
この部品実装システム1では、3台の部品実装装置200が設けられているが、これらは同一構成を有している。そこで、以下の説明では、一の部品実装装置200について説明し、残りの部品実装装置200に関する説明を省略する。
【0027】
図2は
図1に装備される部品実装装置の部品実装部の構成を模式的に示す部分平面図である。
図3は
図2の部品実装装置の電気的構成を示すブロック図である。
図2では、互いに直交するX方向、Y方向およびZ方向で構成されるXYZ直交座標系を適宜示す。なお、この座標系において、X方向は上記したように基板搬送方向であり、Y方向は基板搬送方向Xと直交する水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。
【0028】
部品実装装置200は、印刷装置100により半田が印刷された基板に部品を実装する部品実装部220(
図2)と、部品実装部220を統括的に制御する制御ユニット210(
図3)を備えている。
【0029】
部品実装部220は、本発明の「基板処理部」の一例に相当しており、
図2に示すように、基台11の上に設けられた一対のコンベア12、12を備える。そして、部品実装部220は、コンベア12によりX方向(基板搬送方向)の上流側から実装処理位置(
図2の基板Bの位置)に搬入した基板Bに対して部品を実装し、部品実装を完了した基板Bをコンベア12により実装処理位置からX方向の下流側へ搬出する。
【0030】
部品実装部220では、Y方向に延びる一対のY軸レール21、21と、Y方向に延びるY軸ボールネジ22と、Y軸ボールネジ22を回転駆動するY軸モーターMy(サーボモーター)とが設けられ、X軸レール23が一対のY軸レール21、21にY方向に移動可能に支持された状態でY軸ボールネジ22のナットに固定されている。X軸レール23には、X方向に延びるX軸ボールネジ24と、X軸ボールネジ24を回転駆動するX軸モーターMx(サーボモーター)とが取り付けられており、ヘッドユニット20がX軸レール23にX方向に移動可能に支持された状態でX軸ボールネジ24のナットに固定されている。したがって、駆動制御部213は、Y軸モーターMyによりY軸ボールネジ22を回転させてヘッドユニット20をY方向に移動させ、あるいはX軸モーターMxによりX軸ボールネジ24を回転させてヘッドユニット20をX方向に移動させることができる。
【0031】
一対のコンベア12、12のY方向の両側それぞれでは、2つの部品供給部3がX方向に並んでいる。各部品供給部3に対しては、複数のテープフィーダー31がX方向に並んで着脱可能に装着されている。テープフィーダー31はY方向に延設されており、Y方向におけるヘッドユニット20側の先端部に部品供給箇所32を有する。そして、集積回路、トランジスター、コンデンサ等の小片状の部品を所定間隔おきに収納したテープがテープフィーダー31に装填されている。各テープフィーダー31は、テープをヘッドユニット20側へ向けてY方向に間欠的に送り出す。これによって、テープ内の部品がY方向(フィード方向)に送り出されて、各テープフィーダー31の部品供給箇所32に順番に供給される。
【0032】
ヘッドユニット20は、X方向に等ピッチで一列に並ぶ複数の実装ヘッド4を有する。実装ヘッド4の下端にはノズル41が着脱可能に取り付けられており、実装ヘッド4はノズル41により部品の吸着・実装を行う。つまり、実装ヘッド4はノズル41をテープフィーダー31の部品供給箇所32の上方へ移動させて、部品供給箇所32に供給された部品をノズル41により吸着(ピックアップ)する。また、実装ヘッド4はノズル41に部品を保持した状態で、実装処理位置の基板Bの上方に移動して基板Bに部品を実装する。
【0033】
部品実装部220は、上方を向いて基台11に取り付けられた部品認識カメラ5をX方向に並ぶ2個の部品供給部3の間に備える。部品供給部3から部品を吸着した実装ヘッド4は、これらの部品認識カメラ5のうち近い方の部品認識カメラ5の上方へ移動し、部品に部品認識カメラ5の上方を通過させる。これに対して、部品認識カメラ5は、上方を通過する部品を下方から撮像する。
【0034】
さらに、
図2への図示を省略しているが、部品実装部220には、ビーコン発信機6が取り付けられている。
【0035】
図4はビーコン発信機、オペレータが携帯している携帯端末および制御ユニットとの間で行われる通信状況を模式的に示す図である。ビーコン発信機6には、取り付けられた部品実装装置200を特定するビーコンIDが設定されており、iBeacon(登録商標)の仕様のビーコン電波(ビーコン信号)により、上記ビーコンID(部品実装装置の特定情報)をビーコン情報として発信する。このiBeacon(登録商標)は、Apple社が発表したBLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)を用いたビーコンの規格である。本実施形態では、ビーコン電波の発信周期は5秒に設定されているが、オペレータの行動範囲や作業イベントなどに応じて適宜変更してもよい。
【0036】
ビーコン電波は、
図4に示すように、ビーコン発信機6から発信され、専用アプリがインストールされた携帯端末7で受信可能となっている。携帯端末7はビーコン電波を受信することで、ビーコンIDを取得可能に構成されている。また、携帯端末7は、受信したビーコン電波の強さに基づいてビーコン発信機6までの距離、つまりビーコン発信機6が取り付けられた部品実装部220からオペレータまでの距離(以下「離間距離」という)を測定し、その離間距離に関連する情報を制御ユニット210に与える。ここで、携帯端末7と制御ユニット210との間における通信プロトコルについては、例えばBluetooth(登録商標)を用いることができる。このように本実施形態では、部品実装部220から各オペレータまでの距離が携帯端末7により測定され、部品実装部220を制御する制御ユニット210に一定周期で与えられる。
【0037】
この制御ユニット210は、CPUやRAMで構成されたプロセッサーである演算処理部211およびHDDなどで構成された記憶部212を有するコンピュータである。さらに、制御ユニット210は、部品実装部220の駆動系を制御する駆動制御部213と、部品実装部220の撮像系を制御する撮像制御部214と、ビーコン発信機6を制御するビーコン制御部215と、携帯端末7およびホストコンピュータ500との間で各種情報の送受信する通信部216と、コンピュータ読み取り可能な非一過性の記録媒体RMbにアクセスして記録媒体RMbから作業管理プログラムPGなどを読み出す読取部217とを有している。
【0038】
ビーコン制御部215は、ビーコン発信機6に発信開始指令を与えることで、ビーコン発信機6からのビーコン電波の出力を開始させる。ビーコン電波は、ビーコン発信機6が取り付けられた部品実装装置200を中心として放射状に伝搬される。また、複数のオペレータがそれぞれ携帯している携帯端末7では、当該携帯端末7を携帯するオペレータを識別するための識別情報およびビーコン発信機6(部品実装装置200)から当該携帯端末7までの離間距離に関連する情報を含むオペレータ情報がビーコン電波の受信毎に出力される。これらの出力を通信部216が受信する。これによって、例えば
図5中の太枠で示すように、ビーコン電波の発信時刻毎に、複数のオペレータ(以下「オペレータA」、「オペレータB」、「オペレータC」、…と称する)がそれぞれ部品実装装置200から離間している距離が取得され、テーブル形式で記憶部212に記憶されている。この明細書では、説明の便宜から、当該テーブルにおいて時刻毎に取得された各オペレータの離間距離を示すデータを「オペレータ距離データ」と称する。なお、
図5中の「備考」欄は、後で説明する作業管理方法の一例(
図7)の理解を助けるための記載である。
【0039】
また、本実施形態では、記憶部212には、上記オペレータ距離データ以外に、例えば
図6に示すイベント処理データが記憶されている。このイベント処理データは、部品実装装置200において発生した作業イベント毎に、当該作業イベントに対処するために各オペレータが部品実装装置200に滞在した時間および頻度(以下、それぞれ「滞在時間」および「滞在頻度」という)とを関連付けたデータであり、イベント処理データがテーブル形式で記憶部212に記憶されている。なお、本実施形態では、
図4に示すように、ビーコン発信機6から所定の距離(ここでは、2m)を本発明の「エリア規定距離AD」とし、このエリア規定距離AD以内の領域をオペレータにより作業が実行される「作業エリアWA」としている。つまり、上記のようにして取得されたオペレータ距離データに含まれる「部品実装装置からの距離」がエリア規定距離AD以下であるという条件を満足するオペレータは作業エリアWAに滞在しており、部品実装装置200に対して作業を行っている蓋然性が高く、これに基づいて上記滞在時間および滞在頻度をカウントする。また、
図6中において、ハッチングが付された滞在時間は次に説明する作業管理方法により主たる作業者を決定する際の根拠となる滞在時間を示し、ドットが付された滞在時間は次に説明する作業管理方法により副作業者を決定する際の根拠となる滞在時間を示している。
【0040】
記憶部212には、オペレータ距離データおよびイベント処理データ以外に、読取部217により記録媒体RMbから読み出された作業管理プログラムPGが記憶されている。この実施形態では、記録媒体RMbにより作業管理プログラムPGが提供されるが、電気通信回線を介して作業管理プログラムPGが提供されるように構成してもよい。
【0041】
演算処理部211は、記憶部212に書き込まれた作業管理プログラムPGを読み出し、装置各部を以下のように制御する。これによって、作業エリアWA内に滞在して部品実装装置200に対して作業を行う作業者が、作業中に出力されたオペレータ情報のうち離間距離がエリア規定距離AD以下であるオペレータ情報(後で説明する「滞在オペレータ情報」に相当)から特定される。また、演算処理部211は、作業イベントが発生する毎に、作業を行ったオペレータの滞在頻度を更新する。さらに、演算処理部211は、作業者として複数のオペレータを特定した場合、作業エリアWAでの滞在時間の順序に並べて作業者として記録する。つまり、本実施形態では、演算処理部211が本発明の「作業者特定部」、「滞在頻度更新部」および「作業者記録部」として機能する。
【0042】
図7は本発明に係る作業管理方法の一実施形態を示すフローチャートである。演算処理部211は、ホストコンピュータ500で作成された生産プログラムをホストコンピュータ500から受け取り、当該生産プログラムにしたがって装置各部を制御して基板Bへの部品実装を行うが、部品実装に先立って、ビーコン制御部215を介してビーコン発信機6に発信開始指令を与える。この発信開始指令を受けたビーコン発信機6がビーコン電波の出力を開始する。これにより、部品実装装置200の稼働により部品実装が行われるのと並行して、ビーコン電波が一定の周期で出力される(発信工程)。また、当該ビーコン電波を受信する毎に、各携帯端末7からオペレータ情報が出力される(オペレータ情報出力工程)。さらに、ビーコン電波の発信時刻毎に、部品実装装置200からの各オペレータA、B、C、…の離間距離を含むオペレータ距離データが順次、記憶部212に記憶される。ここでは、例えば
図5に示すようにオペレータ距離データが蓄積され、特に作業イベント1の発生時刻(2022年1月22日12:25:25)から作業イベント1の解消時刻(2022年1月22日12:30:00)までに蓄積されるオペレータ距離データに基づく具体的な作業管理動作を適宜説明しながら作業管理動作について説明する。
【0043】
上記のようにして部品実装動作と並行してオペレータ距離データの蓄積が繰り返して行われている際に、吸着エラーやテープ切断などの作業イベントが発生することがある。そこで、演算処理部211は作業イベントが発生したか否かを常時監視している(ステップS1)。そして、作業イベントの発生を検知する(ステップS1で「YES」)と、演算処理部211は作業イベントの内容(以下「イベント内容」という)を取得する(ステップS2)。例えば
図5および
図6に示すケースでは、時刻(2022年1月22日12:25:25)に吸着エラーが作業イベントとして取得される。すると、演算処理部211は、新たなイベントNo.を新たに取得するとともに、当該イベントNo.に関連付けてイベント内容を記憶部212に記憶する。
【0044】
また、新たな作業イベントの発生に対応して制御ユニット210に付属する表示/操作ユニット218に作業イベントに関するメッセージが表示されるとともに、図示を省略するランプを点灯させ、オペレータA、B、C、…に報知する。これを受けて、作業イベントの発生に気付いたオペレータが当該部品実装装置200に駆け寄ってくる。一方、演算処理部211は、上記イベント発生時刻よりオペレータ距離データを順次読み出し、作業エリアWAに入って滞在するオペレータ(以下「滞在オペレータ」という)に関する情報(以下「滞在オペレータ情報」という)を取得するとともに、最初の滞在オペレータについて滞在時間の計測を開始する(ステップS3)。より具体的には、オペレータA、B、C、…の少なくとも一人の離間距離がエリア規定距離AD以下となったことを検知すると、その時刻で取得されたオペレータ情報を第1オペレータ情報として取得する。例えば作業イベント1に対しては、
図5においてドットを付した時刻2022年1月22日12:25:35)でのオペレータ情報(オペレータA:1m、オペレータB:15m、オペレータC:15m、…)が第1オペレータ情報として取得される。これに基づいて演算処理部211は、同時刻にオペレータAが部品実装装置200の作業エリアWAに入り、滞在および作業を開始したことを検知する。そして、オペレータAが最初の滞在オペレータであると認定し、これを最初の滞在オペレータ情報として取得する。また、演算処理部211はオペレータAの滞在時間の計測を開始する。なお、最初の滞在オペレータは1名に限定されるものではなく、後で説明するように2名以上が最初の滞在オペレータとなるケースも存在する。この最初の滞在オペレータが本発明の「第1オペレータ」の一例に相当する。
【0045】
こうして最初の滞在オペレータ情報を検知すると、演算処理部211はステップS1で検知された作業イベントの完了までに滞在オペレータの追加があるか否かを判定する(ステップS4~S6)。すなわち、ステップS4で、演算処理部211は、他のオペレータが部品実装装置200の作業エリアWAに入って来て、追加の滞在オペレータとなるか否かを判定する。そして、ステップS4で「YES」と判定して追加の滞在オペレータの存在を確認すると、演算処理部211は、当該判定の対象となったオペレータ情報を取得し、それに基づき追加の滞在オペレータ情報を取得するとともに、追加の滞在オペレータの滞在時間の計測を開始する(ステップS5)。このステップS5に続いて、またはステップS4で「NO」と判定されるのに続いて、演算処理部211は作業終了を判定する(ステップS6)。このステップS6で「NO」と判定される間、ステップS4に戻って上記処理が繰り返される。ステップS1において例えば作業イベント1が検知された場合には、作業中(時刻2022年1月22日12:25:35~時刻2022年1月22日12:30:00)に追加の滞在オペレータは検知されず、作業イベント1についてはオペレータAのみで保守作業が行われたことを演算処理部211は把握する。
【0046】
ステップS1で検知された作業イベントが完了する(ステップS6で「YES」)と、演算処理部211は上記滞在時間の計測を中止し、滞在オペレータ毎の滞在時間を取得する(ステップS7:滞在時間取得工程)。そして、演算処理部211は、滞在オペレータが一人であったか否かを判定する(ステップS8)。ここで、上記作業イベント1の場合と同様に、滞在オペレータが一人であったときには、そのオペレータを作業イベント1に対処した作業者として決定し(ステップS9)、その情報と一緒に、ステップS2で取得したイベント内容およびステップS7で取得した滞在時間をイベント処理データとして記憶部212に書き込む。例えば
図6に示すように、イベント内容として「吸着エラー」が書き込まれるとともに、作業イベント1に対処した作業者として「オペレータA」の欄に滞在時間が書き込まれる。また、同欄において、オペレータAの滞在頻度が「1」だけインクリメントされる(滞在頻度更新工程)。こうして、作業イベント1に対する作業管理が完了する。
【0047】
一方、滞在オペレータが複数であったと判定する、つまりステップS8で「NO」の場合には、演算処理部211は滞在オペレータの滞在時間に差が存在するか否かを判定する(ステップS10)。ここで、滞在時間差が存在する場合には、演算処理部211は、滞在時間が長い方の滞在オペレータを作業者として決定する一方で、それ以外の滞在オペレータを副作業者として決定する(ステップS11)。そして、上記ステップS9と同様に、それら情報と一緒に、イベント内容および各滞在時間を記憶部212に書き込むとともに、各滞在頻度を「1」だけインクリメントする(滞在頻度更新工程)。
【0048】
また、滞在オペレータの滞在時間に差がない場合(ステップS10で「NO」)、演算処理部211は滞在オペレータの滞在頻度に差が存在するか否かを判定する(ステップS12)。ここで、滞在頻度差が存在する場合には、演算処理部211は、滞在頻度が高い方の滞在オペレータを作業者として決定する一方で、それ以外の滞在オペレータを副作業者として決定する(ステップS13)。そして、上記ステップS9と同様に、それら情報と一緒に、イベント内容および各滞在時間を記憶部212に書き込むとともに、各滞在頻度を「1」だけインクリメントする(滞在頻度更新工程)。
【0049】
さらに、複数の滞在オペレータの間で、滞在時間および滞在頻度のいずれについても差が存在しない場合(ステップS12で「NO」)、演算処理部211は複数の滞在オペレータのうちの任意の一人を作業者として決定する一方で、それ以外の滞在オペレータを副作業者として決定する(ステップS14)。そして、上記ステップS9と同様に、それら情報と一緒に、イベント内容および各滞在時間を記憶部212に書き込むとともに、各滞在頻度を「1」だけインクリメントする(滞在頻度更新工程)。
【0050】
以上のように、オペレータ情報に含まれる離間距離に関する情報に基づいて複数のオペレータA、B、C、…の中から作業者を特定している。したがって、従来技術のようにオペレータに対してログイン操作などの負担を掛けることなく、作業者を特定することができる。また、ビーコン電波の発信に同期して取得されるオペレータ情報に基づいて作業者の特定を行っているため、複数のオペレータのうち誰が作業者であるかを漏れなく特定することができる。その結果、作業者の特定を正確、かつ確実に行うことができる。
【0051】
また、距離に関する情報に基づいてオペレータが部品実装装置200の作業エリアWAに滞在していることを検知しているため、次のような作用効果を得られる。オペレータが部品実装装置200の作業エリアWAに滞在しているか否かを判定するため、オペレータの位置情報を常時監視することも考えられるが、この場合、部品実装システム1が設置されている屋内を予めマッピングしておき、そのマッピングデータとオペレータの位置情報とに基づき上記判定を行う必要がある。これに対し、本実施形態では、ビーコン発信機6からの離間距離のみに基づき上記判定を行うことができる。したがって、本実施形態は低コストで作業管理を行うことができる。また、位置情報を用いる場合には、部品実装システム1の構成変更や配置変更のたびにマッピングデータを更新する必要がある。これに対し、本実施形態では、部品実装装置200にビーコン発信機6を取り付けるだけで作業管理を行うことができ、位置情報を用いる場合よりも簡易に、しかも迅速に対応することができる。
【0052】
また、ステップS8で最初の滞在オペレータが一人であったことを確認すると、その滞在オペレータを作業者として特定している。上記したように作業イベント1では、当該作業イベント1に対して一人で対処したオペレータAを直ちに作業者として決定しており、作業者を正確、かつ確実に特定することができる。
【0053】
また、上記においては、作業イベント1が発生した場合を具体例とし、本発明の「作業者特定工程」の一例であるステップS3~S14での具体的動作を説明しているが、例えば
図5に示すように、ステップS1で作業イベント2を検知したときには、演算処理部211は、ステップS3、S5、S11で、
ステップS3:「オペレータB」を最初の滞在オペレータとして取得する、
ステップS5:「オペレータA」を追加の滞在オペレータとして取得する、
ステップS11:「オペレータB」および「オペレータA」をそれぞれ作業者および副作業者として取得する、
という内容で処理する。このように、離間距離がエリア規定距離AD以下であるオペレータ情報に含まれる識別情報が複数種類であるときには、それらの識別情報で識別される複数のオペレータA、Bのうち、作業中において作業エリアWAに最も長く滞在したオペレータBを作業者として特定している。このように複数のオペレータA、B、C、…が部品実装装置200に対して作業を施す場合であっても、主たる作業者を高い蓋然性で特定することができ、高度な作業管理を行うことができる。また、残りのオペレータAについては、副作業者として特定している。これによりオペレータAが作業したにもかかわらず作業実績なしと認識されるのを確実に防止し、作業実体に即した作業管理を行うことができる。
【0054】
また、例えば
図5に示すように、ステップS1で作業イベント3を検知したときには、演算処理部211は、ステップS3、S5、S13で、
ステップS3:「オペレータB」、「オペレータC」を最初の滞在オペレータとして取得する、
ステップS5:追加の滞在オペレータなし
ステップS11:「オペレータB」および「オペレータC」をそれぞれ作業者および副作業者として取得する、
という内容で処理する。このように、作業中において作業エリアWAに最も長く滞在したのがオペレータB、Cであり、それらの在時間が同じである場合に、滞在頻度をさらに参酌してオペレータBを作業者として特定している。このように滞在時間のみでなく、滞在頻度を考慮した上で、作業者を特定することによって作業を主として行ったオペレータBをより高い蓋然性で作業者とすることができる。その結果、作業管理の信頼性をさらに高めることができる。また、オペレータCを副作業者として特定しているため、オペレータCが作業したにもかかわらず作業実績なしと認識されるのを確実に防止し、作業実体に即した作業管理を行うことができる。
【0055】
さらに、滞在時間および滞在頻度では作業者を特定することができない(ステップS13で「NO」)場合、それらのオペレータを作業者として特定してもよい。これにより、作業者の漏れが確実に防止され、作業実体に即した作業管理を行うことができる。
【0056】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、作業者や副作業者として複数のオペレータが特定された場合であっても、
図6に示すように、オペレータA、B、C、…毎に滞在時間および滞在頻度をリストアップしているが、表示順序などについては任意である。例えば副作業者が複数存在する際に、作業中における作業エリアWAでの滞在時間の順序に並べて記録してもよい。この点については、作業者が複数存在する場合も同様である。なお、これらが本発明の「作業者記録工程」の一例に相当している。
【0057】
また、作業管理プログラムPGが、例えばオペレータの作業行動を分析するための分析機能を有するように構成してもよい。この場合、分析機能を有する作業管理プログラムPGにしたがって演算処理部211が
図8に示すような分析画面を表示/操作ユニット218に表示させる。そして、分析画面に映し出された「ランキング」ボタンをオペレータなどがクリックすると、演算処理部211は、
図6に示すイベント処理データに基づきオペレータ毎の滞在頻度および累積滞在時間を算出し、ランキング形式で表示/操作ユニット218に表示させる。なお、同図中の棒グラフが滞在頻度を示し、折れ線グラフが累積滞在時間を示している。このように作業管理プログラムPGに分析機能を付加することで作業管理を高度に行うことができる。また、上記表示に代えて、または上記表示とともに印刷してもよい。このような表示や印刷を行う処理が本発明の「報知工程」の一例に相当している。
【0058】
また、上記実施形態では、3台の部品実装装置200にそれぞれ本発明を適用することで、部品実装装置200毎に作業管理を行っているが、一部の部品実装装置200のみに本発明を適用してもよい。また、本発明の適用は部品実装装置200に限定されず、部品実装システム1を構成する印刷装置100、リフロー炉300および検査装置400に対して本発明を適用してもよい。すなわち、部品実装システム1において基板Bに対して所定の処理を施す基板処理装置全般に本発明を適用することができる。
【0059】
また、部品実装システム1を構成する各装置の制御ユニットに作業管理プログラムPGをインストールする代わりに、
図1に示すように、記録媒体RMaに予め記録された作業管理プログラムPGや電気通信回線を介して提供される作業管理プログラムPGがホストコンピュータ500の記憶部502に保存され、上記実施形態と同様の作業管理を実行するように構成してもよい。この場合、部品実装装置200をはじめとする各基板処理装置に取り付けられたビーコン発信機と、各オペレータがそれぞれ携帯する複数の携帯端末と、各携帯端末からの出力を受信して作業者を特定する作業者特定部として機能するホストコンピュータ500との組み合わせが本発明の「作業管理システム」として機能する。
【0060】
また、上記実施形態では、本発明の「発信機」として、iBeacon(登録商標)の仕様のビーコン電波を発信するビーコン発信機6を用いているが、ビーコン発信機の種類はこれに限定されるものではなく、従来より提供されている種々の発信機を利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
この発明は、部品を搭載した基板を生産する部品実装システムを構成する、基板処理装置に対して作業を行った作業者を複数のオペレータから特定する作業管理技術全般に対して適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
6…ビーコン発信機
7…携帯端末
100…印刷装置(基板処理装置)
200…部品実装装置(基板処理装置)
211,501…演算処理部
218…表示/操作ユニット
220…部品実装部(基板処理部)
300…リフロー炉(基板処理装置)
A,B,C…オペレータ
B…基板
PG…作業管理プログラム
RMa,RMb…記録媒体