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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114630
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/16 20060101AFI20230810BHJP
   H05K 5/03 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
G06F1/16 312Q
G06F1/16 312E
G06F1/16 312M
H05K5/03 H
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017057
(22)【出願日】2022-02-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 誠仁
(72)【発明者】
【氏名】塚本 英志
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼尾 穣
【テーマコード(参考)】
4E360
【Fターム(参考)】
4E360AA02
4E360AB02
4E360AB12
4E360AB42
4E360BA02
4E360BB22
4E360CA02
4E360EA12
4E360EA18
4E360EC05
4E360ED02
4E360GA23
4E360GB46
4E360GC02
4E360GC08
4E360GC14
(57)【要約】
【課題】カバー部材の取り外しを確実に検出することのできる電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器10のネジ固定部12は、ネジと、下カバー21に形成されてネジ30が挿通するネジ孔32と、上カバー22に設けられてネジ30が螺合するスタッド34と、メイン基板24における下カバー21とスタッド34との間に介在する箇所でネジ30が挿通する基板孔36と、下カバー21とメイン基板24との間に介在してネジ30の周囲に設けられる導電スポンジ38と、メイン基板24の表面で基板孔36を囲むようにして対向配置されて、ネジ30の締結によって導電スポンジ38が接触して導通する接点対40とを有する。複数の接点対40が直列に接続された直列回路46の一端はグランド48に接続されており、他端はプル抵抗50を介して電源52に接続されるとともに入力端子24baに接続されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1カバーと第2カバーとがネジ固定部によって固定されている筐体内に電子基板を有する電子機器であって、
前記ネジ固定部は、
ネジと、
前記第1カバーに形成されて前記ネジが挿通するネジ孔と、
前記第2カバーに設けられて前記ネジが螺合するスタッドと、
前記電子基板における前記第1カバーと前記スタッドとの間に介在する箇所で前記ネジが挿通する基板孔と、
前記第1カバーまたは前記スタッドと前記電子基板との間に介在して前記ネジの周囲に設けられる導通体と、
前記電子基板における前記導通体と対面する側の表面で前記基板孔を囲むようにして対向配置されて、前記ネジの締結によって前記導通体が接触して導通する接点対と、
を有し、
前記ネジ固定部は複数設けられ、複数の前記接点対は直列に接続された直列回路を形成し、
前記直列回路の一端は電源の一方の電極に接続されており、前記直列回路の他端はプル抵抗を介して前記電源の他方の電極に接続されるとともにコントローラチップの入力端子に接続されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、
前記ネジ固定部は前記接点対と並列接続される分圧抵抗を有し、
前記入力端子はアナログ入力可能な端子である
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項2に記載の電子機器において、
前記コントローラチップは、入力端子に印加される電圧から前記接点対が非導通となっている箇所数を検知し、該個所数が2以上であるときに操作制限処理を行うこと
を特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項2または3に記載の電子機器において、
前記分圧抵抗のそれぞれの抵抗値は、自身を除く他の前記分圧抵抗のうち任意の1以上の合計抵抗値と異なっている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の電子機器において、
前記導通体は導電スポンジである
ことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の電子機器において、
前記筐体は矩形であって、
前記ネジ固定部は、少なくとも前記筐体における3つの縁に沿った箇所に設けられている
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1カバーと第2カバーとがネジ固定部によって固定されている筐体内に電子基板を有する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ノートブック型のパーソナルコンピュータ(ノート型PC)やタブレット型のパーソナルコンピュータ(タブレット型PC)等の電子機器の筐体には、2つのカバー部材を重ねて連結することで扁平箱状に構成した構造が広く用いられている。
【0003】
ノート型PCでは、キーボードを設けた本体筐体として、上下2つのカバー部材を重ね、両筐体部材をネジ止めした構造体が用いられており、その内部空間にCPU、メモリ、バッテリ等の電子部品が収納されている。
【0004】
ところでネジはドライバーによって簡単に外すことができ、誰でもカバー部材を分解して内部の操作が可能になってしまうことから、不用意な操作がなされないようにカバーが分解されたことを検知するタンパースイッチを設けることがある。カバーが外されたことをタンパースイッチが検出すると画面上で所定のパスワード入力を求めて、権限のない者による内部の操作を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許6986607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなタンパースイッチはある程度のコストを要し、電子機器の一層の低廉化にはタンパースイッチを省略することが望ましい。タンパースイッチを省略する手段としては、2つのカバー部材を固定しているネジ固定部に所定の電気的構成を設けてネジが外されたことを検出すればよい。
【0007】
しかしながら、一般的なノートブック型のコンピュータで1か所のネジ固定部にネジ取り外しの検出機構を設けても、他のネジ固定部のネジを取り外せば2つのカバー部材は検出機構のあるネジ固定部を中心に相対的に回転させることも可能であり、内部が露呈されてしまう。また、ネジ検出機構が1か所だけであると誤検出の懸念がある。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、2つのカバー部材の取り外しを確実に検出することのできる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の態様に係る電子機器は、第1カバーと第2カバーとがネジ固定部によって固定されている筐体内に電子基板を有する電子機器であって、前記ネジ固定部は、ネジと、前記第1カバーに形成されて前記ネジが挿通するネジ孔と、前記第2カバーに設けられて前記ネジが螺合するスタッドと、前記電子基板における前記第1カバーと前記スタッドとの間に介在する箇所で前記ネジが挿通する基板孔と、前記第1カバーまたは前記スタッドと前記電子基板との間に介在して前記ネジの周囲に設けられる導通体と、前記電子基板における前記導通体と対面する側の表面で前記基板孔を囲むようにして対向配置されて、前記ネジの締結によって前記導通体が接触して導通する接点対と、を有し、前記ネジ固定部は複数設けられ、複数の前記接点対は直列に接続された直列回路を形成し、前記直列回路の一端は電源の一方の電極に接続されており、前記直列回路の他端はプル抵抗を介して前記電源の他方の電極に接続されるとともにコントローラチップの入力端子に接続されている。
【0010】
このような電子機器によれば、コントローラチップの入力端子に印加される電圧によって複数のネジ固定部における接点対の状態を一括的に検出することができる。また、ねじ固定部は複数設けられていることから、1か所のネジ固定部を中心に2つのカバー部材を相対的に回転させて内部が露呈させるような場合にも、他のネジ固定部の接点対が非導通となることから検出が可能となり、2つのカバー部材の取り外しを確実に検出することができる。
【0011】
前記ネジ固定部は前記接点対と並列接続される分圧抵抗を有し、前記入力端子はアナログ入力可能な端子であってもよい。このように各接点対に分圧抵抗を設けることにより、非導通となる箇所数の検知が可能となる。
【0012】
前記コントローラチップは、入力端子に印加される電圧から前記接点対が非導通となっている箇所数を検知し、該個所数が2以上であるときに操作制限処理を行ってもよい。これにより、1か所だけの非導通では操作制限処理を行わず、誤検出および誤処理を防止することができる。
【0013】
前記分圧抵抗のそれぞれの抵抗値は、自身を除く他の前記分圧抵抗のうち任意の1以上の合計抵抗値と異なっていてもよい。このような構成によれば非導通となった接点対の箇所を特定することができる。
【0014】
前記導通体は導電スポンジであってもよい。導電スポンジは導電性および弾性を有していて好適である。
【0015】
前記筐体は矩形であって、前記ネジ固定部は、少なくとも前記筐体における3つの縁に沿った箇所に設けられていてもよい。3つの縁は振動モードが異なるため、何らかの振動が加わったときの影響によって仮に1か所の接点対が非導通となっても他の箇所では振動の影響を受けることがなく、誤検出を防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の上記態様によれば、ネジ固定部が複数設けられていることから、第1カバーと第2カバーとの取り外しを確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る電子機器の斜視図である。
図2図2は、斜め下方向から見た本体筐体の分解斜視図である。
図3図3は、ネジ固定部の断面側面図である。
図4図4は、ネジ固定部の一部断面模式斜視図である。
図5図5は、接点対とエンベデッドコントローラとの接続態様を示す回路図である。
図6図6は、下カバーと上カバーとが閉じている状態における接点対とエンベデッドコントローラとの接続態様を示す回路図である。
図7図7は、下カバーと上カバーとの間で一部が開いている状態における接点対とエンベデッドコントローラとの接続態様を示す回路図である。
図8図8は、変形例にかかる回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明にかかる電子機器の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態である電子機器10を示す斜視図である。電子機器10はノート型PCである。本発明はデスクトップ型PC、タブレット型PC、スマートフォン又は携帯電話等、各種電子機器に利用可能である。また、本発明は、例えば折り畳み可能なディスプレイ(有機ELタイプなど)を備える、いわゆるフォルダブル型PCにも適用可能である。
【0020】
図1に示すように、電子機器10は、キーボード装置16やタッチパッド17等の入力手段を有する本体筐体14と、液晶ディスプレイ等からなるディスプレイ装置18を有する矩形平板状のディスプレイ筐体20とを備える。
【0021】
本体筐体(筐体)14は、下カバー(第1カバー)21と上カバー(第2カバー)22とを連結した扁平矩形の箱状である。下カバー21および上カバー22はネジ固定部12によって固定されて本体筐体14を構成している。下カバー21および上カバー22は、例えば樹脂材である。本体筐体14の内部にはメイン基板(電子基板)24やバッテリ26(図2参照)等の各種電子部品が収納されている。キーボード装置16及びタッチパッド17は、本体筐体14の上面を構成する上カバー22の中央部分に配設されている。
【0022】
ディスプレイ筐体20は、本体筐体14の後縁部に対してヒンジ23を介して開閉可能に連結されており、ヒンジ23を通過した図示しないケーブルにより本体筐体14と電気的に接続されている。ディスプレイ装置18は、例えば液晶ディスプレイである。
【0023】
図2は、斜め下方向から見た本体筐体14の分解斜視図である。図2に示すように本体筐体14における上カバー22には、メイン基板24、バッテリ26、ファン27などが収納されている。メイン基板24にはCPU24a、エンベデッドコントローラ(コントローラチップ)24bが実装されている。
【0024】
CPU24aは、OS(Operating System)に基づいて電子機器10の全体を統括的に制御する。エンベデッドコントローラ24bは、BIOS(Basic Input Output System)やUEFI(Unified Extensible Firmware Interface)に基づいて基本的な処理を行うものである。エンベデッドコントローラ24bの電力はいわゆるリアルタイムクロック電源であり、バッテリ26以外に所定のバックアップ電池からも供給され、電子機器10の非起動時やスリープ時にも動作が可能となっている。エンベデッドコントローラ24bはメイン基板24とは異なるサブ基板に設けられていてもよい。
【0025】
ネジ固定部12は、本体筐体14の後縁14aに沿った箇所と、両側の側縁14bに沿った箇所と、後縁14aと側縁14bとの隅部の各近傍の合計5箇所に設けられている。ネジ固定部12は2か所以上設けられているものとする。
【0026】
図3は、ネジ固定部12の断面側面図である。図4は、ネジ固定部12の一部断面模式斜視図である。ネジ固定部12は、ネジ30、ネジ孔32、スタッド34、基板孔36、導電スポンジ(導通体)38、接点対40、および分圧抵抗42を有する。
【0027】
ネジ孔32は、下カバー21に形成されておりネジ30が挿通する箇所である。ネジ孔32は下カバー21における凹部44の底壁44aに形成されている。スタッド34は、ネジ30が螺合するものであり上カバー22における内面22aに固定されている。基板孔36はネジ30が挿通する箇所であり、メイン基板24における下カバー21の底壁44aとスタッド34との間に介在する箇所に形成されている。メイン基板24には複数の凸部24c(図2参照)があり、基板孔36のいくつかは凸部24cに形成されている。
【0028】
導電スポンジ38は導電性および弾性を有するスポンジである。導電スポンジ38は下カバー21の底壁44aとメイン基板24との間に介在しており、ネジ30におけるネジ部30aの周囲を囲んでいる。導電スポンジ38は円環状であり、底壁44aとメイン基板24とによって弾性的に挟持される適度な厚みを有する。導電スポンジ38は、接着剤または粘着テープなどによって底壁44aに固定されている。下カバー38とメイン基板24との間でネジ30の周囲に設けられる導通体としては導電スポンジ38以外にも、金属ワッシャ、金属箔、底壁44aの内面の金属メッキなどとしてもよい。
【0029】
接点対40は2つのランド40aから構成されている。2つのランド40aは、180度よりやや角度の小さい略円弧形状である。2つのランド40aは、メイン基板24における導電スポンジ38と対面する側の表面(この実施例の場合は下面24d)で基板孔36を囲むようにして狭い隙間を介して対向配置されており、ネジ30の締結によって導電スポンジ38が接触することにより導通する。分圧抵抗42は接点対40に対して並列接続されている。分圧抵抗42はメイン基板24に表面実装されている。下カバー21の下面は絶縁塗膜21aで覆われている。図4では、接点対40およびその接続ラインを認識しやすいようにドット地で示している。
【0030】
図5は、接点対40とエンベデッドコントローラ24bとの接続態様を示す回路図である。5つの接点対40は直列に接続された直列回路46を形成している。直列回路46の一端はグランド48(電源の一方の電極)に接続されている。直列回路46の他端はプル抵抗50を介して電源52(電源の他方の電極)に接続されているとともにエンベデッドコントローラ24bの入力端子24baに接続されている。入力端子24baはアナログ入力が可能な端子である。電源52は上記のリアルタイムクロック電源である。
【0031】
図5図8では各ネジ固定部12における分圧抵抗42に抵抗値を示す符号R1,R2,R3,R4,R5を付している。また、プル抵抗50の抵抗値はR0とする。分圧抵抗42のそれぞれの抵抗値は、自身を除く他の分圧抵抗42のうち任意の1以上の合計抵抗値と異なっている。例えば、抵抗値R1は他の抵抗値R2~R5と異なるとともに、抵抗値R2~R5のうち2以上の合成抵抗値とも異なっている。
【0032】
図6は、下カバー21と上カバー22とが閉じている状態における接点対40とエンベデッドコントローラ24bとの接続態様を示す回路図である。図6図7では、電流の流れを矢印で示している。このように、下カバー21と上カバー22とが5つのネジ固定部12によって固定されて閉じた状態では、各接点対40は導電スポンジ38が当接することにより導通するため、エンベデッドコントローラ24bで検出する入力電圧は0Vになる。エンベデッドコントローラ24bでは、入力端子24baの電圧が0Vであることにより、下カバー21と上カバー22とが5つのネジ固定部12によって固定されて閉じた状態になっていることを認識可能となっている。
【0033】
図7は、下カバー21と上カバー22との間で一部が開いている状態における接点対40とエンベデッドコントローラ24bとの接続態様を示す回路図である。このように、抵抗値R2,R4の分圧抵抗42に対応するネジ固定部12でネジ30が外されて導電スポンジ38が存在しなくなると、この部分の接点対40は非導通となる。そうすると、電流の流れは矢印で示すように、接点対40が非導通となっている箇所ではバイパスするように分圧抵抗42を流れることになる。そのため、入力端子24baには抵抗値R0と抵抗値(R2+R4)とによる分圧が印加されるため、エンベデッドコントローラ24bでは、下カバー21と上カバー22との間で一部が開いている状態であることが認識される。この場合、エンベデッドコントローラ24bの作用下に、画面上で所定のパスワード入力を求め、正しいパスワードが入力されない場合には所定の操作制限処理を行い権原のない者による操作を防止する。
【0034】
エンベデッドコントローラ24bでは、入力端子24baの入力の電圧値に基づいて5つのネジ固定部12のうちネジ30および導電スポンジ38が外されて接点対40が非導通状態となっている箇所数の認識が可能であり、該箇所数が所定数以上(例えば、2か所以上)であると認識したときに上記のパスワード入力要請を介して操作制限処理を行うものとする。これにより、レアケースではあるが振動などによる何らかの要因により1か所だけ接点対40が非導通となることがあっても誤検出および誤処理を防止することができる。
【0035】
上記のとおり分圧抵抗42の各抵抗値は異なっているため、エンベデッドコントローラ24bでは入力端子24baの入力電圧により5つのネジ固定部12のうちネジ30および導電スポンジ38が外されているのがどの箇所であるか特定することができる。また、各抵抗値は、自身を除く他の分圧抵抗42のうち任意の1以上の合計抵抗値と異なって設定されていることから、所定の1か所の接点対40が非導通になったことと、他の複数個所の接点対40が非導通になったこととを区別して検出することができる。この特定により、例えば、いずれかの箇所の接点対40が頻繁に非導通となるような場合に当該箇所に機械的不具合が発生していると判断してその後の検出処理に反映させたり、または事後的設計の参考データとして用いることができる。
【0036】
本実施例ではネジ固定部12が5箇所に設けられているが、少なくとも本体筐体14における3つの縁、つまり後縁14aおよび両側の側縁14bに沿った3箇所に設けられているとよい。各縁は位置や向きが異なっていることから振動モードが異なり、何らかの振動が加わったときの影響によって仮に1か所の接点対40が非導通となっても他の箇所では振動の影響を受けることがなく、誤検出を防止することができる。
【0037】
エンベデッドコントローラ24bではネジ固定部12が複数(例えばN箇所)設けられており、全てのネジ固定部12のうち1か所以外(N―1箇所)の接点対40が非導通となったときにも当然に操作制限処理を行う。このため、1か所だけはネジ30をわずかに緩めておき、他の全てのネジ固定部12のネジ30を取り外して、ネジ30を緩めた箇所を中心として下カバー21を回転させて本体筐体14の内部を露呈させたとしても、ネジ30を取り外した4箇所の状態に基づいてエンベデッドコントローラ24bは操作制限処理を正しく実行することができる。
【0038】
なお設計条件によるが、このような下カバー21を回転させて本体筐体14の内部を露呈させることに対処するだけのためには、複数のネジ固定部12のうち1か所でも接点対40が非導通となったときに操作制限処理を行なえばよく、接点対40が非導通となった箇所の特定や箇所数の認識は不要であるため、各ネジ固定部12における分圧抵抗42は省略してもよい。また、この場合、エンベデッドコントローラ24bの入力端子24baに印加される電圧は二値的なものとなることから、デジタル入力端子を用いてもよい。
【0039】
このように、電子機器10においては、ネジ固定部12が複数設けられていることから、下カバー21の取り外しを確実に検出することができる。また、ネジ固定部12の接点対40は直列に接続されていることから、エンベデッドコントローラ24bでは、1つの入力端子24baで状態監視をすることができる。
【0040】
図8は、変形例にかかる回路図である。図8に示す回路図では図5に示すものと逆極性になるように接続されている。つまり、直列回路46の一端は電源52に接続されており、他端はプル抵抗50を介してグランド48に接続されているとともに入力端子24baに接続されている。このような回路であっても、極性が異なるだけであって上記と同様の作用効果が得られる。
【0041】
なお、上記の実施例では接点対40がメイン基板24の下面24dに設けられて導電スポンジ38がメイン基板24と第1カバー44の一部である底壁44aとの間に介在しているものとしたが、逆に図3の仮想線で示すように、接点対40がメイン基板24の上面24eに設けられて導電スポンジ38がメイン基板24とスタッド34との間に介在していてもよい。つまり、導電スポンジ38はメイン基板24における接点対40が設けられている表面と第1カバー44またはスタッド38との間に介在すればよい。
【0042】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0043】
10 電子機器
12 ネジ固定部
14 本体筐体(筐体)
14a 後縁
14b 側縁
21 下カバー(第1カバー)
22 上カバー(第2カバー)
23 ヒンジ
24 メイン基板(電子基板)
24b エンベデッドコントローラ
24ba 入力端子
30 ネジ
32 ネジ孔
34 スタッド
36 基板孔
38 導電スポンジ(導通体)
40 接点対
40a ランド
42 分圧抵抗
44 凹部
44a 底壁
46 直列回路
48 グランド
50 プル抵抗
52 電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-03-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1カバーと第2カバーとがネジ固定部によって固定されている筐体内に電子基板を有する電子機器であって、
前記ネジ固定部は、
ネジと、
前記第1カバーに形成されて前記ネジが挿通するネジ孔と、
前記第2カバーに設けられて前記ネジが螺合するスタッドと、
前記電子基板における前記第1カバーと前記スタッドとの間に介在する箇所で前記ネジが挿通する基板孔と、
前記第1カバーまたは前記スタッドと前記電子基板との間に介在して前記ネジの周囲に設けられる導通体と、
前記電子基板における前記導通体と対面する側の表面で前記基板孔を囲むようにして対向配置されて、前記ネジの締結によって前記導通体が接触して導通する接点対と、
を有し、
前記ネジ固定部は複数設けられ、複数の前記接点対は直列に接続された直列回路を形成し、
前記直列回路の一端は電源の一方の電極に接続されており、前記直列回路の他端はプル抵抗を介して前記電源の他方の電極に接続されるとともにコントローラチップの入力端子に接続されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、
前記ネジ固定部は前記接点対と並列接続される分圧抵抗を有し、
前記入力端子はアナログ入力可能な端子である
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項2に記載の電子機器において、
前記コントローラチップは、入力端子に印加される電圧から前記接点対が非導通となっている箇所数を検知し、該所数が2以上であるときに操作制限処理を行うこと
を特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項2または3に記載の電子機器において、
前記分圧抵抗のそれぞれの抵抗値は、自身を除く他の前記分圧抵抗のうち任意の1以上の合計抵抗値と異なっている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の電子機器において、
前記導通体は導電スポンジである
ことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の電子機器において、
前記筐体は矩形であって、
前記ネジ固定部は、少なくとも前記筐体における3つの縁に沿った箇所に設けられている
ことを特徴とする電子機器。