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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114633
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】遮音性構造体
(51)【国際特許分類】
   E06B 9/262 20060101AFI20230810BHJP
【FI】
E06B9/262
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017060
(22)【出願日】2022-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】阿部 将幸
【テーマコード(参考)】
2E043
【Fターム(参考)】
2E043AA00
2E043AA04
2E043AB00
2E043BA02
2E043BB15
2E043BC02
2E043DA00
(57)【要約】
【課題】設置が簡便であり、優れた遮音性を有する遮音性構造体を提供すること。
【解決手段】遮音性構造体は、一平面に対して垂直な方向に空洞が設けられた筒状体が、一平面の第1の方向および第1の方向と交差する第2の方向の各々に複数個密集して配列され、筒状体が変形することにより伸縮自在な態様を有する伸縮部材と、伸縮部材に接続され、伸縮部材の伸縮状態を固定する固定部と、を含む。また、遮音性構造体は、一平面に対して垂直な方向に貫通された貫通孔が、一平面の第1の方向および第1の方向と交差する第2の方向の各々に複数個密集して配列され、貫通孔が変形することにより伸縮自在な態様を有する伸縮部材と、伸縮部材に接続され、伸縮部材の伸縮状態を固定する固定部と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一平面に対して垂直な方向に空洞が設けられた筒状体が、前記一平面の第1の方向および前記第1の方向と交差する第2の方向の各々に複数個密集して配列され、前記筒状体が変形することにより伸縮自在な態様を有する伸縮部材と、
前記伸縮部材に接続され、前記伸縮部材の伸縮状態を固定する固定部と、を含む、遮音性構造体。
【請求項2】
一平面に対して垂直な方向に貫通された貫通孔が、前記一平面の第1の方向および前記第1の方向と交差する第2の方向の各々に複数個密集して配列され、前記貫通孔が変形することにより伸縮自在な態様を有する伸縮部材と、
前記伸縮部材に接続され、前記伸縮部材の伸縮状態を固定する固定部と、を含む、遮音性構造体。
【請求項3】
透明性板状部材と、
前記透明性板状部材の上において、前記透明性板状部材の表面に対して垂直な方向に空洞が設けられた筒状体が複数個密集して配列され、前記筒状体が変形することにより伸縮自在な態様を有する伸縮部材と、
前記透明性板状部材および前記伸縮部材に接続され、前記伸縮部材の伸縮長さを固定し、かつ、伸縮された前記伸縮部材を前記透明性板状部材の上に固定する固定部と、を含む、遮音性構造体。
【請求項4】
透明性板状部材と、
前記透明性板状部材の上において、前記透明性板状部材の表面に対して垂直な方向に貫通された貫通孔が複数個密集して配列され、前記貫通孔が変形することにより伸縮自在な態様を有する伸縮部材と、
前記透明性板状部材および前記伸縮部材に接続され、前記伸縮部材の伸縮長さを固定し、かつ、伸縮された前記伸縮部材を前記透明性板状部材の上に固定する固定部と、を含む、遮音性構造体。
【請求項5】
一対の透明性板状部材と、
前記一対の透明性板状部材の間において、前記一対の透明性板状部材の表面に対して垂直な方向に空洞が設けられた筒状体が複数個密集して配列され、前記筒状体が変形することにより伸縮自在な態様を有する伸縮部材と、
前記一対の透明性板状部材および前記伸縮部材に接続され、前記伸縮部材の伸縮長さを固定し、かつ、伸縮された前記伸縮部材を前記一対の透明性板状部材の間に固定する固定部と、を含む、遮音性構造体。
【請求項6】
一対の透明性板状部材と、
前記一対の透明性板状部材の間において、前記透明性板状部材の表面に対して垂直な方向に貫通された貫通孔が複数個密集して配列され、前記貫通孔が変形することにより伸縮自在な態様を有する伸縮部材と、
前記一対の透明性板状部材および前記伸縮部材に接続され、前記伸縮部材の伸縮長さを固定し、かつ、伸縮された前記伸縮部材を前記一対の透明性板状部材の間に固定する固定部と、を含む、遮音性構造体。
【請求項7】
前記筒状体の断面形状は多角形である、請求項1、請求項3、および請求項5のいずれか一項に記載の遮音性構造体。
【請求項8】
前記貫通孔の断面形状は多角形である、請求項2、請求項4、および請求項6のいずれか一項に記載の遮音性構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、建物の窓などに取り付けられ、音波の伝搬を遮断することができる遮音性構造体に関する。また、本発明の一実施形態は、建物の廊下または室内に設置され、音波の伝搬を遮断することができる遮音性構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラインドは、建物の窓から入射する光を遮る(遮光性)だけでなく、外部からの視線を遮る(遮視性)ことができる。また、特許文献1には、2枚のガラス板の間の空間にブラインドが設けられたブラインド内蔵型複層ガラスが開示されており、断熱性を有するブラインドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-227801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のブラインドは、音波の伝搬を遮断する遮音性が低いという問題があった。特許文献1に記載のブラインド内蔵型複層ガラスにおいても、ガラス板を厚くすれば遮音性は向上するが、ガラス板が厚くなるとコストが上昇し、また、重量が増加するため、運搬や設置が困難になるという問題があった。この問題は、ブラインドだけでなく、パーティションでも同様である。
【0005】
本発明の一実施形態は、上記問題に鑑み、設置が簡便であり、優れた遮音性を有する遮音性構造体を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る遮音性構造体は、一平面に対して垂直な方向に空洞が設けられた筒状体が、一平面の第1の方向および第1の方向と交差する第2の方向の各々に複数個密集して配列され、筒状体が変形することにより伸縮自在な態様を有する伸縮部材と、伸縮部材に接続され、伸縮部材の伸縮状態を固定する固定部と、を含む。
【0007】
また、本発明の一実施形態に係る遮音性構造体は、一平面に対して垂直な方向に貫通された貫通孔が、一平面の第1の方向および第1の方向と交差する第2の方向の各々に複数個密集して配列され、貫通孔が変形することにより伸縮自在な態様を有する伸縮部材と、伸縮部材に接続され、伸縮部材の伸縮状態を固定する固定部と、を含む。
【0008】
また、本発明の一実施形態に係る遮音性構造体は、透明性板状部材と、透明性板状部材の上において、透明性板状部材の表面に対して垂直な方向に空洞が設けられた筒状体が複数個密集して配列され、筒状体が変形することにより伸縮自在な態様を有する伸縮部材と、透明性板状部材および伸縮部材に接続され、伸縮部材の伸縮長さを固定し、かつ、伸縮された伸縮部材を透明性板状部材の上に固定する固定部と、を含む。
【0009】
また、本発明の一実施形態に係る遮音性構造体は、透明性板状部材と、透明性板状部材の上において、透明性板状部材の表面に対して垂直な方向に貫通された貫通孔が複数個密集して配列され、貫通孔が変形することにより伸縮自在な態様を有する伸縮部材と、透明性板状部材および伸縮部材に接続され、伸縮部材の伸縮長さを固定し、かつ、伸縮された伸縮部材を透明性板状部材の上に固定する固定部と、を含む。
【0010】
また、本発明の一実施形態に係る遮音性構造体は、一対の透明性板状部材と、一対の透明性板状部材の間において、一対の透明性板状部材の表面に対して垂直な方向に空洞が設けられた筒状体が複数個密集して配列され、筒状体が変形することにより伸縮自在な態様を有する伸縮部材と、一対の透明性板状部材および伸縮部材に接続され、伸縮部材の伸縮長さを固定し、かつ、伸縮された伸縮部材を一対の透明性板状部材の間に固定する固定部と、を含む。
【0011】
また、本発明の一実施形態に係る遮音性構造体は、一対の透明性板状部材と、一対の透明性板状部材の間において、透明性板状部材の表面に対して垂直な方向に貫通された貫通孔が複数個密集して配列され、貫通孔が変形することにより伸縮自在な態様を有する伸縮部材と、一対の透明性板状部材および伸縮部材に接続され、伸縮部材の伸縮長さを固定し、かつ、伸縮された伸縮部材を一対の透明性板状部材の間に固定する固定部と、を含む。
【0012】
筒状体の断面形状は多角形であってもよい。
【0013】
貫通孔の断面形状は多角形であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一実施形態に係る遮音性構造体は、優れた遮音性を有するとともに、低コストで製造することができる。また、本発明の一実施形態に係る遮音性構造体は、軽量な構造を有するため、簡便に設置することができる。また、本発明の一実施形態に係る遮音性構造体は、高い透光性を維持しながら遮視性を有するため、優れた採光性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る遮音性構造体の利用態様の一例を示す模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係る遮音性構造体の伸縮部材の構成を示す模式的な斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る遮音性構造体の伸縮部材の伸縮性を説明する模式図である。
図4】本発明の一実施形態に係る遮音性構造体の伸縮部材の伸縮性を説明する模式図である。
図5】本発明の一実施形態に係る遮音性構造体の伸縮部材の伸縮性を説明する模式図である。
図6】本発明の一実施形態に係る遮音性構造体の遮音性を説明する模式図である。
図7】本発明の一実施形態に係る遮音性構造体の伸縮部材の遮視性を説明する模式図である。
図8】本発明の一実施形態に係る遮音性構造体の構成を示す模式的な平面図である。
図9】本発明の一実施形態に係る遮音性構造体の本発明の一実施形態に係る遮音性構造体の構成を示す模式図である。
図10】本発明の一実施形態に係る遮音性構造体の利用態様の一例を示す模式図である。
図11】本発明の一実施形態に係る遮音性構造体の構成を示す模式図である。
図12】本発明の一実施形態に係る遮音性構造体の遮音性を評価する残響箱を説明する模式図である。
図13】本発明の一実施形態に係る遮音性構造体の遮音性の評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面などを参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様を含み、以下に例示される実施形態の内容に限定して解釈されるべきではない。図面は本発明の内容を理解しやすくするために、実際の構造に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、それはあくまで一例であって、本発明の内容を限定するものではない。また、本明細書において、ある図面に記載されたある要素と、他の図面に記載されたある要素とが同一又は対応する関係にあるときは、同一の符号(又は符号として記載された数字の後にa、b等を付した符号)を付して、繰り返しの説明を適宜省略することがある。さらに各要素に対する「第1」、「第2」と付記された文字は、各要素を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限りそれ以上の意味を有しない。
【0017】
本明細書において、ある部材が「透明性」を有するとは、高い光透過率を有し、部材を介して反対側の物体を明確に視認することができることをいう。
【0018】
本明細書において、ある部材が「透光性」を有するとは、高い光透過率を有するが、部材を介して反対側の物体を明確に視認することができないことをいう。すなわち、「透光性」は、「透明性」を含まず、「半透明性」および「不透明性」を含む。
【0019】
なお、以下の各実施形態は、技術的な矛盾を生じない限り、互いに組み合わせることができる。
【0020】
<第1実施形態>
図1図7を参照して、本発明の一実施形態に係る遮音性構造体10について説明する。
【0021】
[1.遮音性構造体10の構成の概要]
図1は、本発明の一実施形態に係る遮音性構造体10の利用態様の一例を示す模式図である。図1では、遮音性構造体10が、建物の窓500に取り付けられている。遮音性構造体10は、伸縮部材100、固定部200、および調整部300を含む。伸縮部材100の詳細な構成は後述するが、伸縮部材100は、少なくとも一方向(図1(A)および図1(B)のy方向)に伸縮することができる。固定部200は、伸縮部材100の上端と接続する第1の接続部210-1および伸縮部材100の下端と接続する第2の接続部210-2を含む。固定部200は、伸縮部材100の伸縮状態が保持されるように、伸縮部材100の伸縮状態(より具体的には、伸縮部材100の下端の位置)を固定することができる。調整部300は、固定部200と接続され、伸縮部材100の伸縮状態(より具体的には、伸縮部材100のy方向における長さ)を調整することができる。そのため、遮音性構造体10は、図1(A)に示す伸縮部材100が伸張された状態から、図1(B)に示す伸縮部材100が縮小された状態へと変化することができる。詳細は後述するが、遮音性構造体10は遮音性だけでなく、遮視性も有するため、遮音性構造体10は、いわゆるブラインドとして利用することができる。
【0022】
上述したように、固定部200は、第1の接続部210-1および第2の接続部210-2を含む。第1の接続部210-1と第2の接続部210-2とは、例えば、巻き取り可能な紐状部材を介して接続されている。紐状部材が巻き取られると、第2の接続部210-2が伸縮部材100を押し上げ、伸縮部材100を縮小させることができる。調整部300は、例えば、紐状部材を含み、調整部300の紐状部材は、固定部200の紐状部材と連動することができる。具体的には、調整部300の紐状部材を一方向に引っ張ると、第2の接続部210-2が伸縮部材100を押し上げるように、固定部200の紐状部材を巻き取ることができる。また、調整部300の紐状部材を他方向に引っ張ると、第2の接続部210-2が伸縮部材100を押し下げるように、固定部200の紐状部材を送り出すことができる。
【0023】
なお、固定部200および調整部300の構成は上述の構成に限られない。固定部200および調整部300は、伸縮部材100の伸縮状態を調整し、固定することができればよい。また、遮音性構造体10の取り付け場所は、窓500に限られない。例えば、遮音性構造体10は、建物の壁に設けられた開口を覆うように取り付けられていてもよい。
【0024】
[2.伸縮部材100の構成]
図2は、本発明の一実施形態に係る遮音性構造体10の伸縮部材100の構成を示す模式的な斜視図である。図2に示すように、伸縮部材100は、一平面550(図2のxy平面)に対して垂直な方向(図2のz方向)に空洞102が形成された筒状体104を含む。伸縮部材100は、複数の筒状体104が密集して配置されている。具体的には、複数の筒状体104の各々は、六角形の断面形状を有し、伸縮部材100は、隣接する筒状体104が密接し、最密となるように配置されている。
【0025】
なお、一平面550は、仮想的な平面である。例えば、建物の壁、床、天井、扉、または窓などの表面を一平面550と仮定することができる。
【0026】
筒状体104は、一平面550に接する一端とその反対側の他端が開放されており、他端の側から一端の側を透視できる形状を有する。筒状体104の口径(内径)Dは1mm~50mmの大きさを有する。また、筒状体104は一平面550に対して垂直方向の長さLが10mm~300mm大きさを有する。但し、長さLは、前記範囲に限定されるものではなく、要求される遮音性または遮視性によって適宜選択することができる。
【0027】
なお、詳細は後述するが、空洞102が形成された筒状体104の断面形状は、様々な形状が適用され得る。断面形状が多角形である場合は、口径は一つの角部と他の角部を結ぶ直線の内、最大長さを有する直線の長さを指すものとする。
【0028】
筒状体104は、可撓性および透光性を有する樹脂で形成されている。例えば、可撓性および透光性を有する樹脂として、塩化ビニルなどを用いることができる。伸縮部材100は、複数の筒状体104が相互に連結(接着)され、板状に形成されている。また、筒状体104は、紙などを含む植物繊維、再生繊維、もしくは合成繊維、または薄膜加工された金属などによって形成されていてもよい。
【0029】
[3.伸縮部材100の伸縮性]
図3は、本発明の一実施形態に係る遮音性構造体10の伸縮部材100の伸縮性を説明する模式図である。図3(A)は、伸縮部材100の伸長状態(または定常状態)を示す模式的な平面図であり、図3(B)は、伸縮部材100の縮小状態を示す模式的な平面図である。伸縮部材100は、筒状体104が可撓性を有するとともに空洞102を有しているため、y方向への力が加わると、筒状体104(または空洞102)が変形し、伸縮部材100はy方向に縮小することができる。図3(A)に示す伸縮部材100の伸縮状態が定常状態である場合、図3(B)に示す伸縮部材100の伸縮状態は付勢された状態であり、y方向への力が取り除かれると、伸縮部材100は、図3(A)に示す定常状態に戻ることができる。
【0030】
なお、筒状体104の断面形状は、六角形に限られない。筒状体104の断面形状は、三角形または四角形などの略多角形であってもよい。また、伸縮部材100は、異なる種類の略多角形の断面形状を有する筒状体104を組み合わせて形成されていてもよい。なお、伸縮部材100は、筒状体104を組み合わせて形成されてもよく、筒状体104が形成されるように複数の部品が組み合わされて形成されていてもよい。
【0031】
図4および図5は、本発明の一実施形態に係る遮音性構造体10の伸縮部材100の伸縮性を説明する模式図である。具体的には、図4(A)および図4(B)は、ひし形の断面形状を有する筒状体104を含む伸縮部材100の伸縮状態を示す模式的な平面図であり、図5(A)および図5(B)は、平行四辺形の断面形状を有する筒状体104を含む伸縮部材100の伸縮状態を示す模式的な平面図である。図4および図5に示すように、筒状体104の断面形状がひし形または平行四辺形などの四角形である場合においても、y方向への力が加わると、筒状体104(または空洞102)が変形し、伸縮部材100はy方向に縮小することができる。
【0032】
図3図5からわかるように、伸縮部材100がy方向に縮小する場合、伸縮部材100の筒状体104は、y方向に平行な面を有していない。筒状体104は可撓性を有する材料で構成されるが、筒状体104の面の厚さ方向に対して長さ方向は十分に大きいため、筒状体104は、面の長さ方向には高い剛性を有する。そのため、伸縮部材100がy方向に縮小する場合、筒状体104の面がy方向に平行であると、筒状体104(または空洞102)を十分に変形することができないため、伸縮部材100も十分に伸縮することができなくなる。したがって、筒状体104を構成する各面は、伸縮部材100の伸縮方向に平行でないことが好ましい。
【0033】
また、図3および図4からわかるように、筒状体104の断面形状が六角形およびひし形である場合、伸縮部材100が縮小すると、x方向に隣接する2つの筒状体104間のx方向の距離が広がる。この場合、第1の接続部210-1および第2の接続部210-2の各々は、筒状体104を摺動可能に伸縮部材100と接続されていてもよい。図示しないが、第1の接続部210-1および第2の接続部210-2の各々に、筒状体104をx方向に移動可能とするガイドが設けられていてもよい。
【0034】
また、図5からわかるように、筒状体104の断面形状が平行四辺形である場合、伸縮部材100が縮小しても、x方向に隣接する2つの筒状体104間のx方向の距離は変化しない。この場合、第1の接続部210-1および第2の接続部210-2の各々は、筒状体104のx方向の面が固定されるように伸縮部材100と接続されていてもよい。
【0035】
図5に示す伸縮部材100では、y方向において、対称性を有する2種類の筒状体104(鏡像関係にある2種類の筒状体104)が交互に配置されている。また、y方向において隣接する2種類の筒状体104の面同士が略一致するように配置されている。しかしながら、伸縮部材100における平行四辺形を有する筒状体104の配置は、これに限られない。伸縮部材100では、y方向において隣接する2種類の筒状体104の面がずれて配置されていてもよい。
【0036】
[4.伸縮部材100の遮音性]
図6は、本発明の一実施形態に係る遮音性構造体10の遮音性を説明する模式図である。図6では、音源600が、遮音性構造体10が設置された窓500の反対側に配置されている。音源600から発せられた音(音波)は、窓500にランダムな角度を有して入射する。音波は、窓500を透過し、遮音性構造体10の伸縮部材100に入射する。しかしながら、窓500のような面を有する板状部材では、音波が増幅される共振が起こり、遮音性が低下する場合がある。特に、窓500に対して垂直な方向に入射する場合(垂直入射)よりも、窓500に対して斜め方向から入射する場合(斜め入射)において、窓500における共振が顕著であり、遮音性が低下しやすい。しかしながら、図6に示すように、窓500に遮音性構造体10が設置されると、伸縮部材100に入射した音波が筒状体104の内面で反射され、窓500に対して垂直または略垂直な角度に制御されて放射される。結果として、窓500における共振が抑制されるため、遮音性構造体10が設置された場合には、遮音性が向上する。
【0037】
なお、図示しないが、遮音性構造体10が窓500の音源600側の面に設置された場合、音源600から発せられた音波は、伸縮部材100の筒状体104によって窓500に対して垂直入射されるように制御される。そのため、この場合においても、窓500における共振が抑制されるため、遮音性が向上する。したがって、遮音性構造体10は、板状部材の共振を抑制することによって、遮音性を向上させることができる。
【0038】
また、遮音性構造体10は、伸縮部材100を伸縮させることによって、特定範囲(伸縮部材100が覆う範囲)から伝搬される音波を遮断することができる。すなわち、遮音性構造体10は、特定範囲に遮音領域を形成することができる。
【0039】
[5.伸縮部材100の遮視性]
遮音性構造体10は、遮音性だけでなく、遮視性も有する。そこで、図7を参照して、遮音性構造体10の遮視性について説明する。
【0040】
図7は、本発明の一実施形態に係る遮音性構造体10の伸縮部材100の遮視性を説明する模式図である。図7では、視点Aまたは視点Bから、遮音性構造体10および窓500を通じて、人物700を眺めている。ここで、視点Aは、伸縮部材100の空洞102と平行な方向からの視点であり、視点Bは、伸縮部材100の空洞102と平行な方向から一定の傾きを有する方向からの視点である。
【0041】
光の反射などによって人物700から放射された光は、ランダムであり、様々な角度を有して伸縮部材100に入射する。伸縮部材100の空洞102に平行または略平行に入射した光710は、筒状体104による影響を受けることなく、視点Aに到達する。そのため、光710は、視点Aにおいて、人物700の像を形成することができる。一方、伸縮部材100の空洞102に平行または略平行でない方向から入射した光720は、筒状体104を形成する材料によって吸収され、または表面もしくは内部において散乱される。そのため、伸縮部材100が高い光透過率を有していたとしても、光720は、視点Bにおいて、人物700の像を形成することができない。
【0042】
したがって、伸縮部材100は、空洞102に平行または略平行でない特定の方向において、優れた遮視性を有する。また、伸縮部材100を伸縮し、空洞102の断面積を小さくすることにより、空洞102に平行または略平行に透過する光を減少させることができる。そのため、縮小された伸縮部材100は、さらに優れた遮視性を有する。
【0043】
以上説明したように、本実施形態に係る遮音性構造体10では、伸縮部材100が板状部材の共振を抑制する構造であるため、遮音性構造体10は優れた遮音性を有するとともに、伸縮状態に応じて、遮音領域を変化させることができる。また、遮音性構造体10は、遮音性だけでなく、高い透光性を維持しながら遮視性を有する。そのため、遮音性構造体10を、いわゆるブラインドとして利用する場合、遮音性構造体10が日光を遮ることがないため、優れた採光性を有する。
【0044】
また、遮音性構造体10は、伸縮部材100が複雑な構成ではなく、低コストで製造することができ、また、軽量であるため、簡便に設置することができる。
【0045】
<変形例>
図8を参照して、本発明の一実施形態に係る遮音性構造体10の一変形例である遮音性構造体10Aについて説明する。なお、以下では、遮音性構造体10Aの構成が、遮音性構造体10の構成と同様であるとき、遮音性構造体10Aの構成の説明を省略する場合がある。
【0046】
図8は、本発明の一実施形態に係る遮音性構造体10Aの構成を示す模式的な平面図である。図8に示すように、遮音性構造体10Aは、伸縮部材100A、固定部200、および調整部300を含む。
【0047】
伸縮部材100Aは、シート状部材106Aおよびシート状部材106Aを貫通する複数の貫通孔108Aを含む。複数の貫通孔108Aは、シート状部材106Aの略全面に亘って設けられている。シート状部材106Aは、10mm~300mmの厚さを有する。シート状部材106Aは、筒状体104と同様に、可撓性および透光性を有する樹脂で形成されている。貫通孔108Aの断面形状は、六角形だけでなく、筒状体104と同様に様々な形状とすることができ、その口径(内径)は1mm~50mmの大きさを有する。
【0048】
伸縮部材100Aは、シート状部材106Aが可撓性を有するとともに貫通孔108Aを有しているため、y方向への力が加わると、シート状部材106A(または貫通孔108A)が変形し、伸縮部材100Aはy方向に縮小することができる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態に係る遮音性構造体10Aでも、伸縮部材100Aが板状部材の共振を抑制する構造であるため、遮音性構造体10は優れた遮音性を有するとともに、伸縮状態に応じて、遮音領域を変化させることができる。また、遮音性構造体10Aは、遮音性だけでなく、高い透光性を維持しながら遮視性を有する。そのため、遮音性構造体10Aを、いわゆるブラインドとして利用する場合、遮音性構造体10Aが日光を遮ることがないため、優れた採光性を有する。
【0050】
また、遮音性構造体10Aも、伸縮部材100Aが複雑な構成ではなく、低コストで製造することができ、また、軽量であるため、簡便に設置することができる。
【0051】
<第2実施形態>
図9および図10を参照して、本発明の一実施形態に係る遮音性構造体20について説明する。なお、以下では、遮音性構造体20の構成が、遮音性構造体10の構成と同様であるとき、遮音性構造体20の構成の説明を省略する場合がある。
【0052】
図9は、本発明の一実施形態に係る遮音性構造体20の構成を示す模式図である。図9(A)および図9(B)は、それぞれ、遮音性構造体20の平面図および側面図を示す。また、図10は、本発明の一実施形態に係る遮音性構造体20の利用態様の一例を示す模式図である。図9(A)および図9(B)に示すように、遮音性構造体20は、伸縮部材100、固定部200、第1の調整部300-1、第2の調整部300-2、および透明性板状部材400を含む。伸縮部材100および固定部200は、透明性板状部材400上に配置されている。また、第1の接続部210-1および第2の接続部210-2の各々は、y方向に移動可能に透明性板状部材400と接続されている。例えば、第1の接続部210-1および第2の接続部210-2の各々は、側面にガイドレールを備え、ガイドレールと透明性板状部材400の側端部とが係合し、y方向に移動可能であってもよい。
【0053】
透明性板状部材400として、例えば、透明性を有するガラス基板などを用いることができる。
【0054】
第1の調整部300-1は、図10(A)に示すように、第2の接続部210-2を昇降させ、伸縮部材100の伸縮状態を変化させることができる。第1の調整部300-1の調整においては、第1の接続部210-1は透明性板状部材400に固定されている。また、第2の調整部300-2は、図10(B)に示すように、第1の接続部210-1を昇降させ、伸縮部材100の伸縮状態を変化させることができる。第2の調整部300-2の調整においては、第2の接続部210-2は透明性板状部材400に固定されている。すなわち、遮音性構造体20では、第1の調整部300-1および第2の調整部300-2によって、第2の接続部210-2および第1の接続部210-1の昇降を調整することができ、透明性板状部材400上の任意の位置に、任意の伸縮長さを有する伸縮部材100を配置することができる。したがって、遮音性構造体20をパーティションとして用いれば、利用者は、所望する高さに、所望の大きさを有する遮音領域を作り出すことができる。
【0055】
伸縮部材100は、透明性板状部材400と接していることが好ましく、透明性板状部材400と密接していることが特に好ましい。伸縮部材100が透明性板状部材400と接することにより、透明性板状部材400と伸縮部材との間隙から音が放射されることを防止し、遮音性を向上させることができる。
【0056】
また、遮音性構造体20は、透明性板状部材400を含むため、透明性板状部材400によっても音波の振幅を減衰させることができる。なお、透明性板状部材400が共振する場合であっても、遮音性構造体20では、伸縮部材100の筒状体104によって透明性板状部材400の共振を抑制することができる。そのため、遮音性構造体20は、透明性板状部材400を厚くすることなく、優れた遮音性を有する。
【0057】
以上説明したように、本実施形態に係る遮音性構造体20では、伸縮部材100が透明性板状部材400の共振を抑制する構造であるため、遮音性構造体20は優れた遮音性を有するとともに、伸縮部材100の位置および伸縮状態に応じて、遮音領域を変化させることができる。また、遮音性構造体20は、遮音性だけでなく、高い透光性を維持しながら遮視性を有する。そのため、遮音性構造体20をパーティションとして利用する場合であっても、採光性に影響することはない。
【0058】
また、遮音性構造体20は、伸縮部材100が複雑な構成ではなく、低コストで製造することができ、また、軽量であるため、簡便に設置することができる。
【0059】
<第3実施形態>
図11を参照して、本発明の一実施形態に係る遮音性構造体30について説明する。なお、以下では、遮音性構造体20の構成が、遮音性構造体10または遮音性構造体20の構成と同様であるとき、遮音性構造体30の構成の説明を省略する場合がある。
【0060】
図11は、本発明の一実施形態に係る遮音性構造体30の構成を示す模式図である。図11(A)および図11(B)は、それぞれ、遮音性構造体30の平面図および側面図を示す。図11(A)および図11(B)に示すように、遮音性構造体30は、伸縮部材100、固定部200、第1の調整部300-1、第2の調整部300-2、第1の透明性板状部材400-1、および第2の透明性板状部材400-2を含む。第1の透明性板状部材400-1および第2の透明性板状部材400-2は、互いに対向して配置され、伸縮部材100および固定部200は、第1の透明性板状部材400-1と第2の透明性板状部材400-2との間に配置されている。第1の接続部210-1および第2の接続部210-2の各々は、y方向に移動可能に、第1の透明性板状部材400-1および第2の透明性板状部材400-2の少なくとも一方と接続されていればよい。遮音性構造体30では、第1の透明性板状部材400-1および第2の透明性板状部材400-2が、伸縮部材100のz方向におけるガイドとして機能することができる。したがって、遮音性構造体30では、伸縮部材100のz方向への飛び出しが防止されているため、伸縮部材100の伸縮状態が安定する。
【0061】
また、遮音性構造体30は、第1の透明性板状部材400-1および第2の透明性板状部材400-2を含むため、第1の透明性板状部材400-1および第2の透明性板状部材400-2によっても音波の振幅を減衰させることができる。なお、第1の透明性板状部材400-1または第2の透明性板状部材400-2が共振する場合であっても、遮音性構造体30では、伸縮部材100の筒状体104によって第1の透明性板状部材400-1または第2の透明性板状部材400-2の共振を抑制することができる。そのため、遮音性構造体30は、第1の透明性板状部材400-1および第2の透明性板状部材400-2を厚くすることなく、優れた遮音性を有する。
【0062】
以上説明したように、本実施形態に係る遮音性構造体30では、伸縮部材100が第1の透明性板状部材400-1および第2の透明性板状部材400-2の共振を抑制する構造であるため、遮音性構造体30は優れた遮音性を有するとともに、伸縮部材100の位置および伸縮状態に応じて、遮音領域を変化させることができる。また、遮音性構造体30では、伸縮部材100が一対の透明性板状部材400の間に設けられているため、伸縮部材100の伸縮状態を安定させることができる。さらに、遮音性構造体20は、遮音性だけでなく、高い透光性を維持しながら遮視性を有する。そのため、遮音性構造体20をパーティションとして利用する場合であっても、採光性に影響することはない。
【0063】
また、遮音性構造体30は、伸縮部材100が複雑な構成ではなく、低コストで製造することができ、また、軽量であるため、簡便に設置することができる。
【実施例0064】
図12および図13を参照して、遮音性構造体30の遮音性を評価した実験結果について説明する。
【0065】
図12は、本発明の一実施形態に係る遮音性構造体30の遮音性を評価する残響箱800を説明する模式図である。残響箱800は、アクリル製の箱体内に、12面体構造のスピーカー810および複数の内部マイクロフォン820を含む。スピーカー810は中央部に配置され、スピーカー810を囲むように内部マイクロフォン820が配置されている。また、箱体の上部には、開口部830が設け、開口部830に評価するサンプルを設置することができるようになっている。また、開口部830にサンプルを設置した後、サンプル上に複数の表面マイクロフォン840が配置される。
【0066】
遮音性の評価として、スピーカー810から250Hz~8000Hzのピンクノイズを放射し、内部音圧レベルおよび表面音圧レベルを、それぞれ内部マイクロフォン820および表面マイクロフォン840で測定した。また、遮音性は、内部音圧レベルおよび表面音圧レベルは、複数のマイクロフォンで測定された測定値を平均化した平均内部音圧レベルおよび平均表面音圧レベルに基づいて評価した。
【0067】
実施例サンプルとして、3mm厚の300mm×300mmの2枚のガラスの間に、断面形状が口径3mmの六角形を有し、10mm厚の塩化ビニル製の筒状体が複数配置された遮音性構造体を用いた。また、比較例サンプルとして、実施例サンプルにおいて複数の筒状体が配置されていない遮音性構造体を用いた。
【0068】
図13に、実施例サンプルおよび比較例サンプルの遮音性の評価結果のグラフを示す。図13(A)のグラフの横軸は周波数(Hz)であり、縦軸は音圧レベル差(dB)である。音圧レベル差は、平均表面内部音圧レベルから平均表面音圧レベルを引いた値である。また、図13(B)のグラフの横軸は周波数(Hz)であり、縦軸は改善量(dB)である。改善量は、実施例サンプルの音圧レベル差から比較例サンプルの音圧レベル差を引いた値である。すなわち、改善量が大きければ、実施例サンプルが比較例サンプルよりも音を遮蔽し、より遮音性に優れていることを示す。
【0069】
図13(B)からわかるように、改善量が大きくなっており、実施例サンプルが比較例サンプルよりも遮音性に優れていることが確認された。換言すると、遮音性構造体30は、伸縮部材100を含むことにより、遮視性だけでなく、遮音性にも優れることが確認された。
【符号の説明】
【0070】
10、10A、20、30:遮音性構造体、 100、100A:伸縮部材、 102:空洞、 104:筒状体、 106A:シート状部材、 108A:貫通孔、 200:固定部、 210:接続部、 300:調整部、 400:透明性板状部材、 500:窓、 550:一平面、 600:音源、 700:人物、 710、720:光、 800:残響箱、 810:スピーカー、 820:内部マイクロフォン、 830:開口部、 840:表面マイクロフォン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13