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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114637
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】クランプ装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/06 20060101AFI20230810BHJP
【FI】
B23Q3/06 302L
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017064
(22)【出願日】2022-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】515086908
【氏名又は名称】株式会社トヨタプロダクションエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100114306
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 史郎
(74)【代理人】
【識別番号】100148655
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 淳一
(72)【発明者】
【氏名】中里 義人
【テーマコード(参考)】
3C016
【Fターム(参考)】
3C016CA09
3C016CB02
3C016CB13
3C016CC02
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で高いクランプ力を維持し、かつ、クランプ力の調整が可能なクランプ装置を提供すること。
【解決手段】水平スライダ20をスライドして第1リンク31の下端の接続点P2にクランプ操作力を加え、クランプアームがクランプ状態となる第1状態まで上下直動リンク11を上昇させ、さらに第1リンク31と第2リンク32とが直線状となる第2状態まで水平スライダ20をスライドし、第1状態から第2状態までの間、上下直動リンク11の下端の接続点P1を固定端として固定端部材40の固定端である接続点P4をバネ機構50の押圧を受けつつ下降させ、さらに水平スライダ20をスライドさせてバネ機構50の押圧を受けつつ第1リンク31と第2リンク32とを逆に屈曲させた第3状態にして水平スライダ20を停止させ、第3状態においてクランプアームによるクランプを維持させる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1上下直動ガイドに案内される上下直動リンクが上方にスライドしてクランプアームをクランプ状態にし、前記上下直動リンクが下方にスライドしてクランプアームをアンクランプ状態にするリンククランプ機構と、
水平直動ガイドに案内されて水平方向にスライドする水平スライダと、
上端が前記上下直動リンクの下端に回動自在に接続され、下端が前記水平スライダに回動自在に接続された第1リンクと、上端が前記第1リンクの上端と下端との間の接続点で回動自在に接続され、下端が前記上下直動リンクの直動スライド方向の下方位置に形成された固定端に回動自在に接続された第2リンクとを有したトグルリンク機構と、
前記固定端を形成し、第2上下直動ガイドに案内されて所定間隔の上下移動が許容される固定端部材と、
前記固定端部材の下部に設けられ、前記固定端部材を上方に押圧するバネ機構と
を備え、
前記水平スライダをスライドして前記第1リンクの下端にクランプ操作力を加え、前記クランプアームがクランプ状態となる第1状態まで前記上下直動リンクを上昇させ、さらに前記第1リンクと前記第2リンクとが直線状となる第2状態まで前記水平スライダをスライドし、前記第1状態から前記第2状態までの間、前記上下直動リンクの下端を固定端として前記固定端部材の固定端を前記バネ機構の押圧を受けつつ下降させ、さらに前記水平スライダをスライドさせて前記バネ機構の押圧を受けつつ前記第1リンクと前記第2リンクとを逆に屈曲させた第3状態にして前記水平スライダを停止させ、前記第3状態において前記クランプアームによるクランプを維持させることを特徴とするクランプ装置。
【請求項2】
上下直動ガイドに案内される上下直動リンクが上方にスライドしてクランプアームをクランプ状態にし、前記上下直動リンクが下方にスライドしてクランプアームをアンクランプ状態にするリンククランプ機構と、
水平直動ガイドに案内されて水平方向にスライドする水平スライダと、
上端が前記上下直動リンクの下端に回動自在に接続され、下端が前記水平スライダに回動自在に接続された第1リンクと、上端が前記第1リンクの上端と下端との間の接続点で回動自在に接続され、下端が前記上下直動リンクの直動スライド方向の下方位置に形成された固定端に回動自在に接続された第2リンクとを有したトグルリンク機構と、
前記上下直動リンクを形成する上部上下直動リンクと下部上下直動リンクとの間に形成され、前記下部上下直動リンクの移動に伴って前記上部上下直動リンクを上方に押圧するバネ機構と、
前記上部上下直動リンクと前記下部上下直動リンクとを連結し、前記上部上下直動リンクと前記下部上下直動リンクとの間における所定間隔の上下移動を許容する連結部と
を備え、
前記水平スライダをスライドして前記第1リンクの下端にクランプ操作力を加え、前記クランプアームがクランプ状態となる第1状態まで前記上下直動リンクを上昇させ、さらに前記第1リンクと前記第2リンクとが直線状となる第2状態まで前記水平スライダをスライドし、前記第1状態から前記第2状態までの間、前記上部上下直動リンクの下端に前記バネ機構の押圧を受けつつ上昇させ、さらに前記水平スライダをスライドさせて前記バネ機構の押圧を受けつつ前記第1リンクと前記第2リンクとを逆に屈曲させた第3状態にして前記水平スライダを停止させ、前記第3状態において前記クランプアームによるクランプを維持させることを特徴とするクランプ装置。
【請求項3】
前記バネ機構は、バネの押圧力を調整する調整機構を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のクランプ装置。
【請求項4】
前記バネ機構は、皿バネであることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載のクランプ装置。
【請求項5】
前記第1リンクは、前記水平スライダとの連結部に長孔を形成していることを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載のクランプ装置。
【請求項6】
前記水平スライダのスライドを前記第3状態において停止させるストッパを設けたことを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載のクランプ装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一つに記載のクランプ装置から前記水平スライダを除いた部分クランプ機構を複数備え、各部分クランプ機構の各第1リンクの下端と1つの前記水平スライダとが連結部材を介して接続され、1つの前記水平スライダの移動によって各部分クランプ機構を動作させることを特徴とするクランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易な構成で高いクランプ力を維持し、かつ、クランプ力の調整が可能なクランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の溶接工程等においては、プレス品同士を重ね合わせてクランプするためのクランプ装置が用いられる。また、切削加工等に機械加工においても、ワークを加工治具にクランプした状態にするためのクランプ装置が用いられる。
【0003】
このクランプ装置として、例えば特許文献1には、支持台に配置されたワークを押圧するクランプアームと、前記クランプアームの一端に設けた第1軸周りに回転可能に支持する第1連結部材と、前記クランプアームの他端に設け、かつ前記第1連結部材に併設した第2連結部材と、を有するクランプユニットと、前記第1連結部材と前記クランプアームとの間に設け、この両者を緊張するスプリングと、を備えたクランプ装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、トグル部材がトグル姿勢にある状態において該トグル部材を介してクランプアームにクランプ方向の力を付勢するバネを備えるクランプ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013―35084号公報
【特許文献2】特開2005―52958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、リンククランプ機構を用いたクランプ装置は、油圧やエアーなどを用いたアクチュエータを用いてリンクアームを駆動し、リンクアームがクランプ状態を維持するようにアクチュエータが制御をし続ける。このためリンククランプ機構を用いたクランプ装置は、クランプ後もアクチュエータを制御し続ける必要があり、各クランプ装置にそれぞれアクチュエータとこれを制御する制御機構とを設ける必要がある。
【0007】
一方、トグルクランプ機構を用いたクランプ装置は、リンク機構のみによってクランプでき、高いクランプ力を得ることができるが、クランプ力の調整が難しい。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、簡易な構成で高いクランプ力を維持し、かつ、クランプ力の調整が可能なクランプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明は、第1上下直動ガイドに案内される上下直動リンクが上方にスライドしてクランプアームをクランプ状態にし、前記上下直動リンクが下方にスライドしてクランプアームをアンクランプ状態にするリンククランプ機構と、水平直動ガイドに案内されて水平方向にスライドする水平スライダと、上端が前記上下直動リンクの下端に回動自在に接続され、下端が前記水平スライダに回動自在に接続された第1リンクと、上端が前記第1リンクの上端と下端との間の接続点で回動自在に接続され、下端が前記上下直動リンクの直動スライド方向の下方位置に形成された固定端に回動自在に接続された第2リンクとを有したトグルリンク機構と、前記固定端を形成し、第2上下直動ガイドに案内されて所定間隔の上下移動が許容される固定端部材と、前記固定端部材の下部に設けられ、前記固定端部材を上方に押圧するバネ機構とを備え、前記水平スライダをスライドして前記第1リンクの下端にクランプ操作力を加え、前記クランプアームがクランプ状態となる第1状態まで前記上下直動リンクを上昇させ、さらに前記第1リンクと前記第2リンクとが直線状となる第2状態まで前記水平スライダをスライドし、前記第1状態から前記第2状態までの間、前記上下直動リンクの下端を固定端として前記固定端部材の固定端を前記バネ機構の押圧を受けつつ下降させ、さらに前記水平スライダをスライドさせて前記バネ機構の押圧を受けつつ前記第1リンクと前記第2リンクとを逆に屈曲させた第3状態にして前記水平スライダを停止させ、前記第3状態において前記クランプアームによるクランプを維持させることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上下直動ガイドに案内される上下直動リンクが上方にスライドしてクランプアームをクランプ状態にし、前記上下直動リンクが下方にスライドしてクランプアームをアンクランプ状態にするリンククランプ機構と、水平直動ガイドに案内されて水平方向にスライドする水平スライダと、上端が前記上下直動リンクの下端に回動自在に接続され、下端が前記水平スライダに回動自在に接続された第1リンクと、上端が前記第1リンクの上端と下端との間の接続点で回動自在に接続され、下端が前記上下直動リンクの直動スライド方向の下方位置に形成された固定端に回動自在に接続された第2リンクとを有したトグルリンク機構と、前記上下直動リンクを形成する上部上下直動リンクと下部上下直動リンクとの間に形成され、前記下部上下直動リンクの移動に伴って前記上部上下直動リンクを上方に押圧するバネ機構と、前記上部上下直動リンクと前記下部上下直動リンクとを連結し、前記上部上下直動リンクと前記下部上下直動リンクとの間における所定間隔の上下移動を許容する連結部とを備え、前記水平スライダをスライドして前記第1リンクの下端にクランプ操作力を加え、前記クランプアームがクランプ状態となる第1状態まで前記上下直動リンクを上昇させ、さらに前記第1リンクと前記第2リンクとが直線状となる第2状態まで前記水平スライダをスライドし、前記第1状態から前記第2状態までの間、前記上部上下直動リンクの下端に前記バネ機構の押圧を受けつつ上昇させ、さらに前記水平スライダをスライドさせて前記バネ機構の押圧を受けつつ前記第1リンクと前記第2リンクとを逆に屈曲させた第3状態にして前記水平スライダを停止させ、前記第3状態において前記クランプアームによるクランプを維持させることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記の発明において、前記バネ機構は、バネの押圧力を調整する調整機構を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記の発明において、前記バネ機構は、皿バネであることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記の発明において、前記第1リンクは、前記水平スライダとの連結部に長孔を形成していることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上記の発明において、前記水平スライダのスライドを前記第3状態において停止させるストッパを設けたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、上記の発明のいずれか一つに記載のクランプ装置から前記水平スライダを除いた部分クランプ機構を複数備え、各部分クランプ機構の各第1リンクの下端と1つの前記水平スライダとが連結部材を介して接続され、1つの前記水平スライダの移動によって各部分クランプ機構を動作させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡易な構成で高いクランプ力を維持し、かつ、クランプ力の調整が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本実施の形態に係るクランプ装置の構成を示す図である。
図2図2は、図1に示したクランプ装置の下部構成を示す図である。
図3図3は、バネ機構の構成を示す図である。
図4図4は、水平スライダのスライドに伴うクランプ力の変化を説明する説明図である。
図5図5は、水平スライダのスライドに伴う、第1リンクにかかるクランプ操作力と上下直動リンクにかかるクランプ力との推移を示す図である。
図6図6は、本発明の実施の形態の変形例に係るクランプ装置の構成を示す図である。
図7図7は、図6に示したクランプ装置のバネ機構の構成を示す拡大断面図である。
図8図8は、本発明の実施の形態の応用例に係るクランプ装置の概要構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態に係るクランプ装置について説明する。
【0019】
<装置構成>
図1は、本実施の形態に係るクランプ装置1の構成を示す図である。また、図2は、図1に示したクランプ装置1の下部構成を示す図である。さらに、図3は、バネ機構50の構成を示す図である。なお、図1は、クランプを維持している状態を示しており、図2は、水平スライダ20のスライドに伴ってクランプが開始される状態を示している。クランプ装置1は、支持部2の上部に配置された支持台3に載置されたクランプ対象100をクランプアーム13によってクランプする装置であり、水平スライダ20の-Y方向へのスライドによって、クランプアーム13がクランプ対象100をクランプし、水平スライダ20の+Y方向へのスライドによって、クランプアーム13がアンクランプ状態になる。
【0020】
クランプ装置1は、リンククランプ機構10、水平スライダ20、トグルリンク機構30、固定端部材40及びバネ機構50を有する。リンククランプ機構10は、上下直動ガイド4aに案内される上下直動リンク11が上方にスライドしてクランプアーム13をクランプ状態にし、上下直動リンク11が下方にスライドしてクランプアーム13をアンクランプ状態にする。上下直動リンク11は、支持部2の側面に上下方向(±Z方向)に敷かれた案内レール4上を直動する上下直動ガイド4aに接続され、上下方向の直動スライドのみに規制される。この上下直動リンク11は、リンククランプ機構10を動作させるスライダとしての機能も有する。
【0021】
クランプアーム13のクランプ端とは反対側の一端と、上下直動リンク11の上端とは接続点P11で回動自在に接続される。リンク12の下端は接続点P10で支持台3に回動自在に接続され、接続点P10は、固定端として機能する。リンク12の上端は、クランプアーム13のクランプ端と一端との間に位置する接続点P12を介してクランプアーム13に対して回動自在に接続される。これにより、クランプアーム13は、上下直動リンク11の上下直動に伴い、接続点P10を固定端としてクランプ動作及びアンクランプ動作を行う。なお、クランプアーム13がクランプ動作を行う際、クランプアーム13の±X方向の位置ずれを防止するために、V溝キャッチャー14が設けられている。
【0022】
水平スライダ20は、水平方向(±Y方向)に延びる案内レール5上を直動する水平直動ガイド5aに接続され、水平方向の直動スライドのみに規制される。なお、案内レール5には、水平スライダ20のスライド範囲を規制するストッパ21,22が設けられる。ストッパ21は、水平スライダ20がクランプ状態を維持する位置で停止させるものである。ストッパ22は、水平スライダ20がアンクランプ状態で待機する位置で停止させるものである。
【0023】
トグルリンク機構30は、第1リンク31と第2リンク32とを有する。第1リンク31の上端は、上下直動リンク11の下端の接続点P1で回動自在に接続される。第1リンク31の下端は、接続点P2で水平スライダ20に対し回動自在に接続される。第2リンク32の上端は、第1リンク31の上端と下端との間の接続点P3に回動自在に接続される。第2リンク32の下端は、上下直動リンク11の直動スライド方向の下方位置に形成された固定端である接続点P4に回動自在に接続される。
【0024】
固定端部材40は、固定端である接続点P4を形成し、上下直動ガイド4bに案内されて所定間隔d1の上下スライドが許容される。したがって、接続点P4は、固定端であるものの、ストッパ42によって規制された所定間隔d1の上下スライドが許容される。これは、後述するように、クランプ力が過剰に加わらないようにするためである。
【0025】
バネ機構50は、固定端部材40の下部に設けられ、固定端部材40を上方に押圧するバネ51を有する。バネ51は、皿バネであるが、コイルバネであってもよい。皿バネの場合、コイルバネに比べて省スペースで高い圧縮バネ力を固定端部材40に与えることができる。この圧縮バネ力は、バネ51に対するネジ52の抑え込み量、すなわち、つぶし代を変化させることによって調整することができる。ネジ52の上部には、バネ51の脱落を防止するための凸部52aが形成されており、固定端部材40の下端にはこの凸部52aの進行を許容するためのニガシ穴41が形成されている。
【0026】
なお、第1リンク31の下端の接続点P2は、水平スライダ20の水平スライドに伴って第1リンク31上の位置が上下動するため、第1リンク31の下端には、この上下動を許容する長孔Hが形成されている。このため、接続点P2は、カムフォロワによって接続される。
【0027】
クランプ動作の概要は、まず、水平スライダ20を-Y方向(方向A1)にスライドさせるクランプ操作力をトグルリンク機構30に加えることにより、クランプアーム13がクランプ状態となる第1状態まで上下直動リンク11を+Z方向(方向A2)側に上昇させ、これにより、クランプアーム13を半時計方向(方向A3)に沿って移動させてクランプ力を与える。さらに、第1リンク31と第2リンク32とが直線状となる第2状態まで水平スライダ20をスライドし、第1状態から第2状態までの間、上下直動リンク11の下端の接続点P1を固定端として固定端部材40の固定端(接続点P4)をバネ機構50の押圧を受けつつ-Z方向(方向A4)側に下降させる。さらに、水平スライダ20をストッパ21までスライドさせてバネ機構50の押圧を受けつつ第1リンク31と第2リンク32とを逆に屈曲させた第3状態にして水平スライダ20を停止させ、第3状態においてクランプアーム13によるクランプを維持させる。なお、水平スライダ20を+Y方向にスライドさせることによってアンクランプすることができる。
【0028】
この第3状態では、バネ機構50から、調整された圧縮バネ力が破線矢印で示すように、固定端部材40、第2リンク32、第1リンク31、上下直動リンク11を介して上方向(+Z方向)に加えられえるとともに、接続点P1を支点、接続点P2を力点、接続点P3を作用点として、接続点P3から-Y方向に力が加わり、この力がクランプの戻し防止力として機能し、クランプが維持される。
【0029】
<クランプ力の調整>
図4は、水平スライダ20のスライドに伴うクランプ力F20の変化を説明する説明図である。図4(a)に示した水平スライダ20がアンクランプ状態の待機位置から、水平スライダ20を-Y方向(A1方向)にスライドすると、図4(b)に示すように上下直動リンク11の上端は、+Z方向(A2方向)に移動して最大上昇位置hmまで達する。この最大上昇位置hmでは、クランプアーム13のクランプ端はクランプ状態になる(第1状態)。
【0030】
図4(b)に示した第1状態からクランプ操作力F10を加えて水平スライダ20を-Y方向にスライドすると、上下直動リンク11は上昇することができず、固定端としての接続点P4は、下方(-Z方向)に移動し、バネ機構50のバネ51が縮み始める。なお、接続点P3では、バネ51の反力の水平成分F31が+Y方向に作用する。クランプ操作力F10は、このバネの反力の水平成分F31に抗して水平スライダ20を-Y方向に加えることになる。このクランプ操作力F10を-Y方向に加えていくことによってクランプ力F20は増大していく。そして、図4(c)に示すように、第1リンク31と第2リンク32とが直線状となった第2状態になると、バネ51が最も圧縮された状態になる。この第2状態では、上下直動リンク11の上端の位置は、最大上昇位置hmのままであり、接続点P3には、バネの反力はなく、バネ51の反力がすべてクランプ力F20となって上下直動リンク11にかかる。
【0031】
その後、第2状態から、さらに水平スライダ20をストッパ21の位置、すなわちクランプ操作端までスライドすると、図4(d)に示すように、第3状態になる。第3状態では、第1リンク31と第2リンク32とが逆に屈曲し、接続点P1,P4間の距離が短くなるため、上下直動リンク11の上端の位置は、最大上昇位置hmのまま、接続点P4は、上方(+Z方向)に移動する。この際、バネ51の反力の水平成分F32が-Y方向に作用するため、接続点P3が元の方向(+Y方向)に戻ることがなく、最大上昇位置hmでのクランプ状態を維持する。
【0032】
なお、図4に示すように、第1状態から第3状態までの間、上下直動リンク11の上端の位置は、最大上昇位置hmのままのクランプ状態となっている。
【0033】
図5は、水平スライダ20のスライドに伴う、第1リンク31の接続点P2にかかるクランプ操作力F10と上下直動リンク11の接続点P1にかかるクランプ力F20との推移を示す図である。図5に示すように、水平スライダ20が第1状態(上下直動リンク11が最大上昇位置hmに到達した状態)になると、この第1状態からクランプ操作力F10が徐々に大きくなり、これに伴ってクランプ力F20も大きくなる。クランプ操作力F10は、第1状態から第2状態(第1リンク31と第2リンク32とが直線となる状態)までの間にピーク値をとり、第2状態で再び、0となる。一方、クランプ力F20は、第2状態のときに最大値をとる。
【0034】
その後、さらに水平スライダ20がさらに-Y方向にスライドすると、バネ51の反力の水平成分F32によりクランプ操作力F10は負の値になり、-Y方向に引っ張られる。水平スライダ20のスライドとともにクランプ操作力F10の負の値は、徐々に大きくなる。これにより、水平スライダ20が+Y方向への戻りが防止される。一方、クランプ力F20は、第2状態から第3状態まで徐々に小さくなるが、クランプ力F20の減少は小さいため、第3状態でのクランプ力F20は十分なものとなる。
【0035】
本実施の形態では、トグルリンク機構30による高いクランプ力を発生させることができるとともに、バネ機構50によるクランプの戻し防止力を発生させてクランプを維持するようにしている。この場合、圧縮バネ力によってクランプを維持しているため、各クランプ装置1にアクチュエータなどを駆動機構及び駆動制御機構を設ける必要がない。例えば、作業ロボットにより水平スライダ20をスライドさせてクランプ動作を行わせ、その後、作業ロボットは、クランプ装置1から離れ、クランプされたクランプ対象に対する溶接作業などを行うことができる。なお、手動で水平スライダ20をスライドさせてもよい。クランプ操作力F10が大きい場合には、別途、トグル機構などの倍力機構を用いて、レバー操作によって水平スライダ20をスライドさせてもよい。
【0036】
バネ機構50の圧縮バネ力と、固定端部材40の固定端の上下スライドとにより、クランプ力が過荷重にならないようにしているため、クランプ対象に与える影響を抑えることができるとともに、バネ機構50の圧縮バネ力によって高いクランプ力を発生させることができる。また、バネ機構50の圧縮バネ力の調整により、クランプ対象に適したクランプ力を加えることもできる。
【0037】
<変形例>
図6は、本発明の実施の形態の変形例に係るクランプ装置101の構成を示す図である。また、図7は、図6に示したクランプ装置101のバネ機構150の構成を示す拡大断面図である。上記の実施の形態ではバネ機構50を第2リンク32の下端に設けていたが、本変形例では、バネ機構50に対応するバネ機構150を、上下直動リンク11の途中に設けている。バネ機構150は、上下直動リンク11を形成する上部上下直動リンク11bと下部上下直動リンク11aとの間に形成され、下部上下直動リンク11aの移動に伴って上部上下直動リンク11bを上方に押圧する。上下直動リンク11は、上部上下直動リンク11bと下部上下直動リンク11aとを連結し、上部上下直動リンク11bと下部上下直動リンク11aとの間における所定間隔の上下移動を許容する連結部140を有する。
【0038】
バネ151は、バネ51と同じであり、具体的には皿バネである。このバネ151は、バネ51と同様に、調整ネジ152によってバネ151の抑え込み量が調整される。調整ネジ152は、ダブルナットが上部上下直動リンク11bに螺合する。なお、ダブルナットとバネ151との間には、座金が挿入される。
【0039】
上部上下直動リンク11bは、下部上下直動リンク11aに対し、摺動可能に挿入される。すなわち、上部上下直動リンク11bは、円柱形状であり、外筒形状の下部上下直動リンク11aの内部空間に挿入され、直動シリンダのように結合される。なお、下部上下直動リンク11aの下端部には、第1リンク31の上端が接続点P1として連結される。ここで、連結部140は、連結ガイド孔141及びピン142であり、連結ガイド孔141は、上部上下直動リンク11bに形成され、ピン142は、下部上下直動リンク11aの上端側に設けられ、連結ガイド孔141に係合する。連結ガイド孔141は、上下方向(±Z方向)に延びる長孔形状であり、上下方向の長さが所定間隔である。この所定間隔は、固定端部材40の所定間隔d1と同じである。また、図7に示すように、連結ガイド孔141にピン142が係合することによって、上部上下直動リンク11bと下部上下直動リンク11aとの離間が制限されるとともに、バネ151の伸長状態が維持される。
【0040】
上下直動ガイド104aは、支持台3に固定配置され、上下直動リンク11の上下移動を案内する。なお、実施の形態では、上下直動ガイド4aが上下直動リンク11とともに、案内レール4上をスライドしている。
【0041】
図6において、水平スライダ20がスライドすると、第1リンク31の下端にクランプ操作力F10が加えられ、クランプアーム13がクランプ状態となる、図4における第1状態まで上下直動リンク11が上昇する。さらに第1リンク31と第2リンク32とが直線状となる、図4における第2状態まで水平スライダ20をスライドすると、第1状態から第2状態までの間、上部上下直動リンク11bの下端にバネ151の押圧を受けつつ上部上下直動リンク11aが上昇する。さらに水平スライダ20をスライドさせてバネ151の押圧を受けつつ第1リンク31と第2リンク32とを逆に屈曲させた、図4における第3状態にして水平スライダ20を停止させると、第3状態においてクランプアーム13によるクランプ状態が維持される。
【0042】
本変形例では、実施の形態と同様に、トグルリンク機構30による高いクランプ力を発生させることができるとともに、バネ機構150によるクランプの戻し防止力を発生させてクランプアーム13によるクランプ状態を維持することができる。本変形例では、実施の形態に比して、さらにクランプ装置を簡易な構成とすることができる。
【0043】
<応用例>
図8は、本発明の実施の形態の応用例に係るクランプ装置の概要構成を示す斜視図である。図8に示すように、本応用例では、クランプ装置101から水平スライダ20を除いた複数の部分クランプ機構101a~101cを備え、各部分クランプ機構101a~101cの各第1リンク31の下端と1つの水平スライダ20とが連結部材120を介して接続され、1つの水平スライダ20の移動によって各部分クランプ機構101a~101cを同時に動作させることができる。このようなクランプ装置では、クランプアーム13が複数の離散したクランプ箇所を同時に多点クランプすることができる。なお、実施の形態では、第1リンク31の下端に長孔Hを設けて第1リンク31とスライダ20とを連結していたが、これに限らず、変形例及び応用例に示すように、スライダ20側の連結部材120に、長孔Hに対応する切欠溝を設けて連結するようにしてもよい。
【0044】
なお、上記の実施の形態、変形例及び応用例で図示した各構成は機能概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成をされていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のクランプ装置は、簡易な構成で高いクランプ力を維持し、かつ、クランプ力の調整を可能としたい場合に有用である。
【符号の説明】
【0046】
1,101 クランプ装置
2 支持部
3 支持台
4,5 案内レール
4a,4b,104a 上下直動ガイド
5a 水平直動ガイド
10 リンククランプ機構
11 上下直動リンク
11a 下部上下直動リンク
11b 上部上下直動リンク
12 リンク
13 クランプアーム
14 V溝キャッチャー
20 水平スライダ
21,22,42 ストッパ
30 トグルリンク機構
31 第1リンク
32 第2リンク
40 固定端部材
41 ニガシ穴
50,150 バネ機構
51,151 バネ
52 ネジ
100 クランプ対象
101a~101c 部分クランプ機構
120 連結部材
141 連結ガイド孔
142 ピン
152 調整ネジ
A1~A4 方向
d1 所定間隔
F10 クランプ操作力
F20 クランプ力
F31,F32 反力の水平成分
H 長孔
hm 最大上昇位置
P1~P4,P10~P12 接続点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8