(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114638
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】平衡不平衡変換素子
(51)【国際特許分類】
H01F 19/06 20060101AFI20230810BHJP
H01F 27/00 20060101ALI20230810BHJP
H01G 4/40 20060101ALI20230810BHJP
H03H 7/42 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
H01F19/06
H01F27/00 S
H01G4/40 321A
H03H7/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017066
(22)【出願日】2022-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(72)【発明者】
【氏名】青木 瑠也
【テーマコード(参考)】
5E070
5E082
【Fターム(参考)】
5E070AA16
5E070AB10
5E082AA01
5E082BB05
5E082DD08
(57)【要約】
【課題】位相特性が良好な平衡不平衡変換素子を提供する。
【解決手段】平衡不平衡変換素子A10は、第1インダクタL1および第2インダクタL2と、第1キャパシタC1および第2キャパシタC2と、不平衡端子T1と、接地端子T2と、第1平衡端子T3と、第2平衡端子T4とを備える。第1インダクタL1および第2インダクタL2は、第2方向yに並ぶ。不平衡端子T1および接地端子T2は、第2方向yに並ぶ。第1平衡端子T3および第2平衡端子T4は、第2方向yに並ぶ。第1平衡端子T3は、不平衡端子T1に対して、第3方向xの一方側に位置し、第2平衡端子T4は、接地端子T2に対して、第3方向xの一方側に位置する。第1インダクタL1の第1方向zに見た第1中心P1は、第2インダクタL2の第1方向zに見た第2中心P2よりも第3方向xの他方側にずれている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が第1方向に直交する平面に沿って巻回された第1インダクタおよび第2インダクタと、
第1キャパシタおよび第2キャパシタと、
前記第1インダクタおよび前記第1キャパシタに導通する不平衡端子と、
前記第2インダクタおよび前記第2キャパシタに導通する接地端子と、
前記第1インダクタおよび前記第2キャパシタに導通する第1平衡端子と、
前記第2インダクタおよび前記第1キャパシタに導通する第2平衡端子と、
を備え、
前記第1インダクタおよび前記第2インダクタは、前記第1方向に直交する第2方向に並んでおり、
前記不平衡端子および前記接地端子は、前記第2方向に並んでおり、
前記第1平衡端子および前記第2平衡端子は、前記第2方向に並んでおり、
前記第1平衡端子は、前記不平衡端子に対して、前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向の一方側に位置し、
前記第2平衡端子は、前記接地端子に対して、前記第3方向の一方側に位置し、
前記第1インダクタの前記第1方向に見た第1中心は、前記第2インダクタの前記第1方向に見た第2中心よりも前記第3方向の他方側にずれている、
平衡不平衡変換素子。
【請求項2】
前記不平衡端子と前記第1平衡端子とは、前記第1方向に見て、前記第2方向に延びる仮想線を対称軸として、線対称となるようにされ、
前記接地端子と前記第2平衡端子とは、前記第1方向に見て、前記仮想線を対称軸として、線対称となるように配置される、
請求項1に記載の平衡不平衡変換素子。
【請求項3】
前記第1方向に見て、前記第1中心は、前記仮想線に対して、前記第3方向の他方側に位置し、
前記第1方向に見て、前記第2中心は、前記仮想線に対して、前記第3方向の一方側に位置する、
請求項2に記載の平衡不平衡変換素子。
【請求項4】
前記第1方向に見た前記第1中心と前記仮想線との前記第3方向に沿う距離と、前記第1方向に見た前記第2中心と前記仮想線との前記第3方向に沿う距離とは、同じである、
請求項3に記載の平衡不平衡変換素子。
【請求項5】
前記第1インダクタおよび前記第2インダクタを覆う封止部材をさらに備え、
前記封止部材は、前記第1方向の一方を向く主面および前記第1方向の他方を向く裏面を有し、
前記不平衡端子、前記接地端子、前記第1平衡端子および前記第2平衡端子は、前記主面に形成されている、
請求項2ないし請求項4のいずれかに記載の平衡不平衡変換素子。
【請求項6】
前記第1方向に見て、前記仮想線は、前記封止部材の前記第3方向の中央に重なる、
請求項5に記載の平衡不平衡変換素子。
【請求項7】
前記主面は、前記第1方向に見て、矩形状であり、
前記不平衡端子、前記接地端子、前記第1平衡端子および前記第2平衡端子は、前記主面の四隅に配置されている、
請求項5または請求項6に記載の平衡不平衡変換素子。
【請求項8】
前記封止部材に覆われた第1配線部をさらに備え、
前記第1配線部は、前記不平衡端子と、前記第1インダクタおよび前記第1キャパシタとに接続される、
請求項5ないし請求項7のいずれかに記載の平衡不平衡変換素子。
【請求項9】
前記封止部材に覆われた第2配線部をさらに備え、
前記第2配線部は、前記接地端子と、前記第2インダクタおよび前記第1キャパシタとに接続される、
請求項8に記載の平衡不平衡変換素子。
【請求項10】
前記封止部材に覆われた第3配線部をさらに備え、
前記第3配線部は、前記第1平衡端子と、前記第1インダクタおよび前記第2キャパシタとに接続される、
請求項9に記載の平衡不平衡変換素子。
【請求項11】
前記封止部材に覆われた第4配線部をさらに備え、
前記第4配線部は、前記第2平衡端子と、前記第2インダクタおよび前記第2キャパシタとに接続される、
請求項10に記載の平衡不平衡変換素子。
【請求項12】
前記封止部材は、前記第1方向に積層された第1絶縁層、第2絶縁層および第3絶縁層を含み、
前記第2絶縁層は、前記第1絶縁層および前記第3絶縁層に挟まれ、
前記第1インダクタおよび前記第2インダクタは、前記第2絶縁層に形成されている、
請求項5ないし請求項11のいずれかに記載の平衡不平衡変換素子。
【請求項13】
前記封止部材に対して前記第1方向の他方側に配置された絶縁基板をさらに備え、
前記第1キャパシタおよび前記第2キャパシタは、前記第1方向において、前記絶縁基板と前記封止部材とに挟まれている、
請求項5ないし請求項12のいずれかに記載の平衡不平衡変換素子。
【請求項14】
前記第1インダクタは、前記第1方向に見て、前記不平衡端子および前記第1平衡端子に重なり、
前記第2インダクタは、前記第1方向に見て、前記接地端子および前記第2平衡端子に重なる、
請求項1ないし請求項13のいずれかに記載の平衡不平衡変換素子。
【請求項15】
前記第1インダクタの前記第1方向に見た前記第3方向の第1寸法と、前記第2インダクタの前記第2方向に見た前記第3方向の第2寸法とは、同じである、
請求項1ないし請求項14のいずれかに記載の平衡不平衡変換素子。
【請求項16】
前記第1中心と前記第2中心との前記第3方向に沿う距離は、前記第1寸法に対して0%よりも大きく10%以下である、
請求項15に記載の平衡不平衡変換素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、平衡不平衡変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平衡信号と不平衡信号とを変換する平衡不平衡変換回路がある。この平衡不平衡変換回路は、バラン回路とも呼ばれる。特許文献1には、従来の平衡不平衡変換回路が開示されている。特許文献1に記載の平衡不平衡変換回路は、2つのインダクタと、2つのコンデンサと、入力端子と、第1出力端子と、第2出力端子とを備える。2つのインダクタの一方は、入力端子と第1出力端子間に接続される。2つのインダクタの他方は、第2出力端子と接地間に接続される。2つのコンデンサの一方は、入力端子と第2出力端子間に接続される。2つのコンデンサの他方は、第1出力端子と接地間に接続される。入力端子には、不平衡信号が入力される。第1出力端子および第2出力端子には、平衡信号が出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
平衡不平衡変換回路は、その位相特性が良好であることを求められる。位相特性が良好であることの一例としては、平衡不平衡変換回路によって、不平衡信号を平衡信号(2つの信号)に変換した際、当該平衡信号(2つの信号)の位相差が180度に近いことである。位相差が180度であると、平衡信号(2つの信号)の対称性を保証することになり、また、平衡信号から不平衡信号への変換の際に、不平衡信号に歪が生じることを防止することにもなる。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みて考え出されたものであり、その目的は、位相特性が良好な平衡不平衡変換素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の平衡不平衡変換素子は、各々が第1方向に直交する平面に沿って巻回された第1インダクタおよび第2インダクタと、第1キャパシタおよび第2キャパシタと、前記第1インダクタおよび前記第1キャパシタに導通する不平衡端子と、前記第2インダクタおよび前記第2キャパシタに導通する接地端子と、前記第1インダクタおよび前記第2キャパシタに導通する第1平衡端子と、前記第2インダクタおよび前記第1キャパシタに導通する第2平衡端子と、を備え、前記第1インダクタおよび前記第2インダクタは、前記第1方向に直交する第2方向に並んでおり、前記不平衡端子および前記接地端子は、前記第2方向に並んでおり、前記第1平衡端子および前記第2平衡端子は、前記第2方向に並んでおり、前記第1平衡端子は、前記不平衡端子に対して、前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向の一方側に位置し、前記第2平衡端子は、前記接地端子に対して、前記第3方向の一方側に位置し、前記第1インダクタの前記第1方向に見た第1中心は、前記第2インダクタの前記第1方向に見た第2中心よりも前記第3方向の他方側にずれている。
【発明の効果】
【0007】
本開示の平衡不平衡変換素子によれば、位相特性を良好にできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態にかかる平衡不平衡変換素子の回路構成図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態にかかる平衡不平衡変換素子の斜視図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態にかかる平衡不平衡変換素子の平面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態にかかる平衡不平衡変換素子の要部平面図であって、封止部材の第1絶縁層と第1絶縁層に形成された配線とを示している。
【
図5】
図5は、第1実施形態にかかる平衡不平衡変換素子の要部平面図であって、封止部材の第2絶縁層と第2絶縁層に形成された配線とを示している。
【
図6】
図6は、第1実施形態にかかる平衡不平衡変換素子の要部平面図であって、封止部材の第3絶縁層と第3絶縁層に形成された配線とを示している。
【
図7】
図7は、第1実施形態にかかる平衡不平衡変換素子の要部平面図であって、絶縁基板と第1キャパシタおよび第2キャパシタとを示している。
【
図8】
図8は、第1実施形態にかかる平衡不平衡変換素子を示す正面図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態にかかる平衡不平衡変換素子を示す背面図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態にかかる平衡不平衡変換素子を示す左側面図である。
【
図11】
図11は、第1実施形態にかかる平衡不平衡変換素子を示す右側面図である。
【
図16】
図16は、第1実施形態にかかる平衡不平衡変換素子の製造方法の一工程を示す断面図である。
【
図17】
図17は、第1実施形態にかかる平衡不平衡変換素子の製造方法の一工程を示す断面図である。
【
図18】
図18は、第1実施形態にかかる平衡不平衡変換素子の製造方法の一工程を示す断面図である。
【
図19】
図19は、第1実施形態にかかる平衡不平衡変換素子の製造方法の一工程を示す断面図である。
【
図20】
図20は、第1実施形態にかかる平衡不平衡変換素子の製造方法の一工程を示す断面図である。
【
図21】
図21は、第1実施形態の変形例にかかる平衡不平衡変換素子を示す要部平面図である。
【
図22】
図22は、第1実施形態の変形例にかかる平衡不平衡変換素子を示す要部平面図である。
【
図23】
図23は、第2実施形態の変形例にかかる平衡不平衡変換素子を示す要部平面図である。
【
図24】
図24は、第3実施形態の変形例にかかる平衡不平衡変換素子を示す要部平面図である。
【
図25】
図25は、第3実施形態の変形例にかかる平衡不平衡変換素子を示す断面図であって、
図12の断面に対応する。
【
図26】
図26は、第3実施形態の変形例にかかる平衡不平衡変換素子を示す断面図であって、
図14の断面に対応する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の平衡不平衡変換素子の好ましい実施の形態について、図面を参照して、以下に説明する。以下では、同一あるいは類似の構成要素に、同じ符号を付して、重複する説明を省略する。本開示における「第1」、「第2」、「第3」等の用語は、単にラベルとして用いたものであり、必ずしもそれらの対象物に順列を付することを意図していない。
【0010】
本開示において、「ある物Aがある物Bに形成されている」および「ある物Aがある物B(の)上に形成されている」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bに直接形成されていること」、および、「ある物Aとある物Bとの間に他の物を介在させつつ、ある物Aがある物Bに形成されていること」を含む。同様に、「ある物Aがある物Bに配置されている」および「ある物Aがある物B(の)上に配置されている」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bに直接配置されていること」、および、「ある物Aとある物Bとの間に他の物を介在させつつ、ある物Aがある物Bに配置されていること」を含む。同様に、「ある物Aがある物B(の)上に位置している」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bに接して、ある物Aがある物B(の)上に位置していること」、および、「ある物Aとある物Bとの間に他の物が介在しつつ、ある物Aがある物B(の)上に位置していること」を含む。また、「ある方向に見てある物Aがある物Bに重なる」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bのすべてに重なること」、および、「ある物Aがある物Bの一部に重なること」を含む。また、「ある物A(の構成材料)がある材料Cを含む」とは、「ある物A(の構成材料)がある材料Cからなる場合」、および、「ある物A(の構成材料)の主成分がある材料Cである場合」を含む。
【0011】
<第1実施形態>
図1~
図15は、第1実施形態にかかる平衡不平衡変換素子A10を示している。平衡不平衡変換素子A10は、第1インダクタL1、第2インダクタL2、第1キャパシタC1、第2キャパシタC2、不平衡端子T1、接地端子T2、第1平衡端子T3、第2平衡端子T4、絶縁基板1、封止部材2、第1配線部51、第2配線部52、第3配線部53および第4配線部54を備える。
【0012】
まず、平衡不平衡変換素子A10の回路構成について、
図1を参照して、説明する。
図1に示すように、平衡不平衡変換素子A10は、その回路構成において、次のように構成される。第1インダクタL1の一端と第1キャパシタC1の一端とが接続される。第2インダクタL2の一端と第2キャパシタC2の一端とが接続される。第1インダクタL1の他端と第2キャパシタC2の他端とが接続される。第2インダクタL2の他端と第1キャパシタC1の他端とが接続される。第1インダクタL1および第2キャパシタC2は、ローパスフィルタを構成する。第2インダクタL2および第1キャパシタC1は、ハイパスフィルタを構成する。不平衡端子T1は、第1インダクタL1と第1キャパシタC1との接続点に接続される。不平衡端子T1は、不平衡信号を入出力する。接地端子T2は、第2インダクタL2と第2キャパシタC2との接続点に接続される。接地端子T2は、グランドGNDに接続される。第1平衡端子T3は、第1インダクタL1と第2キャパシタC2との接続点に接続される。第2平衡端子T4は、第2インダクタL2と第1キャパシタC1との接続点に接続される。第1平衡端子T3および第2平衡端子T4は、平衡信号を入出力する。平衡不平衡変換素子A10は、たとえば5.4GHzの周波数の信号に対して、50Ωの不平衡信号と100Ωの平衡信号との変換を行う。なお、平衡不平衡変換素子A10が変換する信号の周波数およびインピーダンスは、この数値例に限定されない。
【0013】
平衡不平衡変換素子A10は、上記位相特性が最も良好な場合において、平衡信号と不平衡信号との変換を、次のように行う。不平衡端子T1に不平衡信号が入力された場合には、この信号は、先述のローパスフィルタ(第1インダクタL1および第2キャパシタC2)によって、位相が90度遅れて第1平衡端子T3に伝送されるとともに、先述のハイパスフィルタ(第2インダクタL2および第1キャパシタC1)によって、位相が90度進んで第2平衡端子T4に伝送される。これにより、第1平衡端子T3および第2平衡端子T4から、互いに位相が180度異なる2つの信号が出力される。この2つの信号が、平衡信号である。なお、不平衡信号の位相を0度としたとき、第1平衡端子T3に伝送される信号の位相は、+90度であり、第2平衡端子T4に伝送される信号の位相は、-90度である。一方、第1平衡端子T3および第2平衡端子T4に平衡信号を構成する2つの信号がそれぞれ入力された場合には、第1平衡端子T3に入力された信号は、先述のローパスフィルタによって、位相が90度遅れて不平衡端子T1に伝送され、且つ、第2平衡端子T4に入力された信号は、先述のハイパスフィルタによって、位相が90度進んで不平衡端子T1に伝送される。これにより、不平衡端子T1および接地端子T2から、不平衡信号が出力される。
【0014】
次に、平衡不平衡変換素子A10の構造について、
図2~
図15を参照して、説明する。以下の説明では、説明の便宜上、平衡不平衡変換素子A10の厚さ方向を「第1方向z」という。また、第1方向zの一方を上方といい、他方を下方ということがある。なお、「上」、「下」、「上方」、「下方」、「上端」、「下端」、「上面」および「下面」などの記載は、第1方向zにおける各部品等の相対的位置関係を示すものであり、必ずしも重力方向との関係を規定する用語ではない。また、「平面視」とは、第1方向zに見たときをいう。第1方向zに対して直交する方向を「第2方向y」という。第2方向yは、平衡不平衡変換素子A10の平面図(
図3~
図7参照)における上下方向である。第1方向zおよび第2方向yに直交する方向を「第3方向x」という。第3方向xは、平衡不平衡変換素子A10の平面図(
図3~
図7参照)における左右方向である。
【0015】
絶縁基板1は、封止部材2、第1キャパシタC1、第2キャパシタC2、第1インダクタL1、第2インダクタL2、第1配線部51、第2配線部52、第3配線部53および第4配線部54を支持する。絶縁基板1は、例えば半導体基板である。当該半導体基板の構成材料は、たとえばSi(ケイ素)を含む。絶縁基板1は、半導体基板ではなく、ガラス基板であってもよいし、セラミック基板であってもよい。絶縁基板1は、平面視において矩形状である。
【0016】
絶縁基板1は、基板主面11、基板裏面12および複数の基板側面131~134を有する。
図8~
図15に示すように、基板主面11および基板裏面12は、第1方向zに離間する。基板主面11は、第1方向z上方を向き、基板裏面12は、第1方向z下方を向く。複数の基板側面131~134はそれぞれ、第1方向zにおいて、基板主面11および基板裏面12に挟まれている。
図7~
図9、
図12および
図13に示すように、一対の基板側面131,132は、第3方向xにおいて互いに離間し、且つ、第3方向xにおいて互いに反対側を向く。
図7、
図10、
図11、
図14および
図15に示すように、一対の基板側面133,134は、第2方向yにおいて互いに離間し、且つ、第2方向yにおいて互いに反対側を向く。図示された例では、基板主面11、基板裏面12および複数の基板側面131~134はそれぞれ、平坦である。
【0017】
封止部材2は、
図2および
図8~
図15に示すように、絶縁基板1の基板主面11上に配置される。封止部材2は、第1キャパシタC1、第2キャパシタC2、第1インダクタL1、第2インダクタL2、第1配線部51、第2配線部52、第3配線部53および第4配線部54を覆う。図示された例では、封止部材2は、平面視において矩形状である。封止部材2の第3方向xに沿う寸法は、たとえば200μm以上1200μm以下であり、封止部材2の第2方向yに沿う寸法は、たとえば100μm以上600μm以下である。
【0018】
封止部材2は、主面201、裏面202および複数の側面203~206を有する。主面201および裏面202は、第1方向zに互いに離間する。主面201は、第1方向z上方を向き、裏面202は、第1方向z下方を向く。裏面202は、基板主面11に対向する。主面201は、平面視において、第3方向xを長手方向とする矩形状である。一対の側面203,204は、第3方向xにおいて互いに離間し、且つ、第3方向xにおいて互いに反対側を向く。一対の側面205,206は、第2方向yにおいて互いに離間し、且つ、第2方向yにおいて互いに反対側を向く。本実施形態では、主面201、裏面202および複数の側面203~206はそれぞれ、平坦である。複数の側面203~206は、複数の基板側面131~134とそれぞれ面一である。
【0019】
封止部材2は、第1絶縁層21、第2絶縁層22および第3絶縁層23を含む。第1絶縁層21、第2絶縁層22および第3絶縁層23は、第1方向zに積層されている。第1絶縁層21、第2絶縁層22および第3絶縁層23の各構成材料は、たとえば感光性樹脂を含む。当該感光性樹脂は、たとえばエポキシ樹脂である。第1絶縁層21、第2絶縁層22および第3絶縁層23は、たとえばドライフィルムレジストから形成される。本実施形態では、封止部材2は、3つの絶縁層(第1絶縁層21、第2絶縁層22および第3絶縁層23)が積層された構成であるが、封止部材2を構成する絶縁層の数は、1つであってもよいし、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0020】
第1絶縁層21は、第2絶縁層22の第1方向z上方に積層される。
図4および
図8~
図15に示すように、第1絶縁層21は、第1主面211、第1裏面212および複数の第1側面213~216を有する。第1主面211および第1裏面212は、第1方向zに互いに離間する。第1主面211は、第1方向z上方を向き、第1裏面212は、第1方向z下方を向く。複数の第1側面213~216はそれぞれ、第1方向zにおいて、第1主面211および第1裏面212に挟まれている。一対の第1側面213,214は、第3方向xにおいて互いに離間し、且つ、第3方向xにおいて互いに反対側を向く。一対の第1側面215,216は、第2方向yにおいて互いに離間し、且つ、第2方向yにおいて互いに反対側を向く。
【0021】
第2絶縁層22は、第3絶縁層23の第1方向z上方に積層される。
図5および
図8~
図15に示すように、第2絶縁層22は、第2主面221、第2裏面222および複数の第2側面223~226を有する。第2主面221および第2裏面222は、第1方向zに互いに離間する。第2主面221は、第1方向z上方を向き、第2裏面222は、第1方向z下方を向く。第2主面221は、第1裏面212に接する。第1絶縁層21は、第2主面221上に積層されている。複数の第2側面223~226はそれぞれ、第1方向zにおいて、第2主面221および第2裏面222に挟まれている。一対の第2側面223,224は、第3方向xにおいて互いに離間し、且つ、第3方向xにおいて互いに反対側を向く。
【0022】
第3絶縁層23は、基板主面11に積層される。
図6および
図8~
図15に示すように、第3絶縁層23は、第3主面231、第3裏面232および複数の第3側面234~236を有する。第3主面231および第3裏面232は、第1方向zに互いに離間する。第3主面231は、第1方向z上方を向き、第3裏面232は、第1方向z下方を向く。第3主面231は、第2裏面222に接する。第2絶縁層22は、第3主面231上に積層されている。複数の第3側面233~236はそれぞれ、第1方向zにおいて、第3主面231および第3裏面232に挟まれている。一対の第3側面233,234は、第3方向xにおいて互いに離間し、且つ、第3方向xにおいて互いに反対側を向く。一対の第3側面235,236は、第2方向yにおいて互いに離間し、且つ、第2方向yにおいて互いに反対側を向く。
【0023】
図8~
図15に示すように、第1側面213、第2側面223および第3側面233は、面一であり、上記側面203を構成する。第1側面214、第2側面224および第3側面234は、面一であり、上記側面204を構成する。第1側面215、第2側面225および第3側面235は、面一であり、上記側面205を構成する。第1側面216、第2側面226および第3側面236は、面一であり、上記側面206を構成する。
【0024】
不平衡端子T1、接地端子T2、第1平衡端子T3および第2平衡端子T4はそれぞれ、
図8~
図15に示すように、主面201に形成される。不平衡端子T1、接地端子T2、第1平衡端子T3および第2平衡端子T4はそれぞれ、
図3に示すように、平面視矩形状である。本実施形態においては、不平衡端子T1、接地端子T2、第1平衡端子T3および第2平衡端子T4は、平面視において同じ形状であり、且つ、平面視において同じサイズである。不平衡端子T1、接地端子T2、第1平衡端子T3および第2平衡端子T4の各構成材料は、導電性材料を含む。この導電性材料は、何ら限定されないが、たとえば銅または銅合金である。不平衡端子T1、接地端子T2、第1平衡端子T3および第2平衡端子T4の表面(露出する表面)には、めっきが施されていてもよい。このめっきは、たとえばニッケル層、パラジウム層および金層、あるいは、ニッケル層および金層が順に積層された多層構造であってもよいし、ニッケル層あるいは金層などの単層構造であってもよい。
【0025】
図3に示すように、不平衡端子T1と接地端子T2とは、第2方向yに並ぶ。第1平衡端子T3と第2平衡端子T4とは、第2方向yに並ぶ。第1平衡端子T3は、不平衡端子T1の第3方向xの一方側(
図3における右側)に位置する。第2平衡端子T4は、接地端子T2の第3方向xの一方側に位置する。本実施形態では、不平衡端子T1と第1平衡端子T3とは、平面視において、第2方向yに延びる仮想線M1(
図3参照)を対称軸として、線対称に配置される。接地端子T2と第2平衡端子T4とは、平面視において、仮想線M1を対称軸として、線対称に配置される。つまり、不平衡端子T1と第1平衡端子T3との対称軸と、接地端子T2と第2平衡端子T4との対称軸とは、共通する。また、不平衡端子T1と接地端子T2とは、平面視において、第3方向xに延びる仮想線M2(
図3参照)を対称軸として、線対称に配置される。第1平衡端子T3と第2平衡端子T4とは、平面視において、仮想線M2を対称軸として、線対称に配置される。つまり、不平衡端子T1と接地端子T2との対称軸と、第1平衡端子T3と第2平衡端子T4との対称軸とは、共通する。本実施形態では、仮想線M1は、平面視において、封止部材2の第3方向xの中央に重なり、仮想線M2は、平面視において、封止部材2の第2方向yの中央に重なる。仮想線M1は、平面視において、第1インダクタL1および第2インダクタL2に交差する。本実施形態では、
図2~
図4に示すように、不平衡端子T1、接地端子T2、第1平衡端子T3および第2平衡端子T4は、主面201の四隅に配置される。
【0026】
平衡不平衡変換素子A10を電子機器などの回路基板に実装する際、不平衡端子T1、接地端子T2、第1平衡端子T3および第2平衡端子T4が、導電性接合材(たとえばはんだまたは焼結金属)によって回路基板に接合される。よって、平衡不平衡変換素子A10は、第1方向zの上下が図示された例とは反対となる姿勢で回路基板に実装される。
【0027】
第1インダクタL1および第2インダクタL2はそれぞれ、第2絶縁層22に形成されている。第1インダクタL1および第2インダクタL2は、第1方向zに直交する平面(x-y平面)に沿って、平面巻回されている。第1インダクタL1および第2インダクタL2の各巻数は、図示された例に限定されない。なお、第1インダクタL1および第2インダクタL2の各巻数は、平衡不平衡変換素子A10の平面視寸法および各インダクタンス値に応じて適宜変更される。図示された例では、第1インダクタL1および第2インダクタL2の各巻数は、互いに同じである。第1インダクタL1および第2インダクタL2の各構成材料は、導電性材料を含む。この導電性材料は、何ら限定されないが、たとえば銅または銅合金である。第1インダクタL1および第2インダクタL2は、第2方向yに沿って配置されている。
【0028】
図4に示すように、第1インダクタL1は、平面視において、不平衡端子T1および第1平衡端子T3に重なる。第2インダクタL2は、平面視において、接地端子T2および第2平衡端子T4に重なる。
【0029】
本実施形態では、第1インダクタL1の第3方向xに沿う第1寸法W1(
図5参照)および第2インダクタL2の第3方向xに沿う第2寸法W2(
図5参照)は、たとえば同じである。この構成とは異なり、第1インダクタL1の第3方向xに沿う第1寸法W1と第2インダクタL2の第3方向xに沿う第2寸法W2とは、互いに異なっていてもよい。第1寸法W1および第2寸法W2はそれぞれ、たとえば200μm以上800μm以下であるが、この範囲に限定されない。
【0030】
図5に示すように、第1インダクタL1の平面視における第1中心P1と、第2インダクタL2の平面視における第2中心P2とは、第3方向xにずれている。当該第1中心P1とは、平面視における第1インダクタL1の巻回中心(巻回軸)のことであり、当該第2中心P2とは、平面視における第2インダクタL2の巻回中心(巻回軸)のことである。第1中心P1と第2中心P2との第3方向xに沿う距離dx(
図5参照)は、たとえば0μmよりも大きく50μm以下であるが、この範囲に限定されない。本実施形態では、距離dxは、上記第1寸法W1および第2寸法W2の各々に対して、たとえば0%よりも大きく10%以下である。第1中心P1と第2中心P2との第2方向yに沿う距離dy(
図5参照)は、たとえば300μm以上320μm以下であるが、この範囲に限定されない。これらの距離dx,dyは、第1インダクタL1および第2インダクタL2の各平面視における寸法および各巻数と封止部材2の平面視における寸法とにより適宜変更される。
【0031】
本実施形態では、
図5に示すように、第1中心P1は、平面視において、仮想線M1よりも、第3方向xの他方側(
図5における左側)に位置する。また、第2中心P2は、平面視において、仮想線M1よりも、第3方向xの一方側(
図5における右側)に位置する。つまり、第3方向xにおいて、第1中心P1と第2中心P2とは、仮想線M1を挟んで、互いに反対側に位置する。これにより、
図5に示すように、第1中心P1は、第2中心P2よりも第3方向xの他方側(
図5における左側)にずれている。
【0032】
本実施形態では、平面視における第1中心P1と仮想線M1との第3方向xに沿う距離dx1(
図5参照)と、平面視における第2中心P2と仮想線M1との第3方向xに沿う距離dx2(
図5参照)とは、同じである。この構成とは異なり、2つの距離dx1,dx2とは、異なっていてもよい。第1中心P1と第2中心P2とが、第3方向xにおいて、仮想線M1を挟んで互いに反対側に位置する構成では、上記距離dxは、2つの距離dx1,dx2の和となる。2つの距離dx1,dx2はそれぞれ、たとえば0μm以上50μm以下であるが、この範囲に限定されない。
【0033】
第1キャパシタC1および第2キャパシタC2はそれぞれ、絶縁基板1と第3絶縁層23との間に形成され、第1方向zにおいて、これらに挟まれている。第1キャパシタC1および第2キャパシタC2はそれぞれ、たとえばMIM(Metal-Insulator-Metal)構造である。
【0034】
図14および
図15に示すように、第1キャパシタC1および第2キャパシタC2はそれぞれ、一対の金属層31,32、絶縁体層33および接続配線34を含む。第1キャパシタC1および第2キャパシタC2の各々において、金属層32、絶縁体層33および金属層31は、第1方向zにおいて、絶縁基板1に近い側からこの順で積層される。第1キャパシタC1および第2キャパシタC2の各々において、接続配線34は、柱状に形成されており、金属層32に繋がるが、金属層31には繋がらない。
図14に示すように、第1キャパシタC1の接続配線34の上端は、第4配線部54(後述の接続部543)に繋がる。第2キャパシタC2の接続配線34の上端は、第2配線部52(後述の接続部523)に繋がる。
【0035】
第1配線部51、第2配線部52、第3配線部53および第4配線部54の各構成材料は、導電性材料を含む。この導電性材料は、何ら限定されないが、たとえば銅または銅合金である。
【0036】
第1配線部51は、不平衡端子T1と、第1インダクタL1および第1キャパシタC1とを電気的に接続する。
図4~
図7、
図12および
図14に示すように、第1配線部51は、複数の接続部511,512,513を含む。
【0037】
図12および
図14に示すように、接続部511は、第1絶縁層21を第1方向zに貫通する。接続部511の上端は、不平衡端子T1に接する。接続部511の下端は、第1インダクタL1に接する。
図12に示すように、接続部512は、第2絶縁層22を第1方向zに貫通する。接続部512の上端は、接続部511に接する。接続部512の下端は、接続部513に接する。
図12および
図14に示すように、接続部513は、第3絶縁層23を第1方向zに貫通する。接続部513の上端は、第1インダクタL1および接続部512に接する。接続部513の下端は、第1キャパシタC1に接する。
【0038】
図12に示すように、接続部511を介して、不平衡端子T1と第1インダクタL1とが導通する。接続部511,512,513を介して、不平衡端子T1と第1キャパシタC1とが導通する。なお、不平衡端子T1と第1キャパシタC1との導通においては、接続部512の代わりに、第1インダクタL1の一部を通る経路もある。接続部513を介して、第1インダクタL1と第1キャパシタC1とが導通する。
【0039】
第2配線部52は、接地端子T2と、第2インダクタL2および第2キャパシタC2および第2インダクタL2とを電気的に接続する。
図4~
図7、
図13および
図15に示すように、第2配線部52は、複数の接続部521,522,523を含む。
【0040】
図13および
図15に示すように、接続部521は、第1絶縁層21を第1方向zに貫通する。接続部521の上端は、接地端子T2に接する。接続部521の下端は、第2インダクタL2に接する。接続部522は、第2絶縁層22を第1方向zに貫通する。接続部522の上端は、接続部521に接する。接続部522の下端は、接続部523に接する。
図13および
図15に示すように、接続部523は、第3絶縁層23を第1方向zに貫通する。接続部523の上端は、第2インダクタL2および接続部522に接する。接続部523の下端は、第2キャパシタC2に接する。
【0041】
図13に示すように、接続部521を介して、接地端子T2と第2インダクタL2とが導通する。接続部521,522,523を介して、接地端子T2と第2キャパシタC2とが導通する。なお、接地端子T2と第2キャパシタC2との導通においては、接続部522の代わりに第2インダクタL2の一部を通る経路もある。接続部523を介して、第2インダクタL2と第2キャパシタC2とが導通する。
【0042】
第3配線部53は、第1平衡端子T3と、第1インダクタL1および第2キャパシタC2とを電気的に接続する。
図4~
図7、
図12および
図15に示すように、第3配線部53は、複数の接続部531,532,533を含む。
【0043】
図12および
図15に示すように、接続部531は、第1絶縁層21を第1方向zに貫通する。接続部531の上端は、第1平衡端子T3に接する。接続部531の下端は、第1インダクタL1に接する。
図12に示すように、接続部532は、第2絶縁層22を第1方向zに貫通する。接続部532の上端は、接続部531に接する。接続部532の下端は、接続部533に接する。
図12および
図15に示すように、接続部533は、第3絶縁層23を第1方向zに貫通する。接続部533の上端は、第1インダクタL1および接続部532に接する。接続部533の下端は、第2キャパシタC2に接する。
【0044】
図12に示すように、接続部531を介して、第1平衡端子T3と第1インダクタL1とが導通する。接続部531,532,533を介して、接地端子T2と第2キャパシタC2とが導通する。なお、第1平衡端子T3と第2キャパシタC2との導通においては、接続部532の代わりに第1インダクタL1の一部を通る経路もある。接続部533を介して、第1インダクタL1と第2キャパシタC2とが導通する。
【0045】
第4配線部54は、第2平衡端子T4と、第2インダクタL2および第1キャパシタC1とを電気的に接続する。
図4~
図7および
図13~
図15に示すように、第4配線部54は、複数の接続部541,542,543を含む。
【0046】
図13および
図14に示すように、接続部541は、第1絶縁層21を第1方向zに貫通する。接続部541の上端は、第2平衡端子T4に接する。接続部541の下端は、第2インダクタL2および接続部542に接する。
図13および
図14に示すように、接続部542は、第2絶縁層22を第1方向zに貫通する。接続部542の上端は、接続部541に接する。接続部542の下端は、接続部543に接する。接続部542は、平面視において、第2キャパシタC2の一部に交差する。
図13および
図14に示すように、接続部543は、第3絶縁層23を第1方向zに貫通する。接続部543の上端は、接続部542に接する。接続部543の下端は、第1キャパシタC1に接する。
【0047】
図13に示すように、接続部541を介して、第2平衡端子T4と第2インダクタL2とが導通する。
図14に示すように、接続部541,542,543を介して、第2平衡端子T4と第1キャパシタC1とが導通する。接続部541,542,543を介して、第2インダクタL2と第1キャパシタC1とが導通する。
【0048】
次に、平衡不平衡変換素子A10の製造方法について、
図16~
図20を参照して、説明する。
図16~
図20は、平衡不平衡変換素子A10の製造方法の一工程を示す断面図であって、
図12に示す平衡不平衡変換素子A10の断面に対応する。
【0049】
まず、
図16に示すように、絶縁基板1を準備し、準備した絶縁基板1に第1キャパシタC1および第2キャパシタC2を形成する。準備する絶縁基板1は、たとえば半導体基板である。本実施形態では、半導体基板としてSiウエハを用いる。なお、準備する絶縁基板1は、半導体基板ではなくガラス基板であってもよいし、セラミック基板であってもよい。また、形成する第1キャパシタC1および第2キャパシタC2は、たとえばMIM構造であって、上述の一対の金属層31,32、絶縁体層33および接続配線34を含む。
【0050】
次いで、
図17に示すように、第3絶縁層23を形成し、形成した第3絶縁層23に、各接続部513,523,533,543を形成する。
図17は、第3絶縁層23および各接続部513,533が形成された状態を示している。この工程では、まず、絶縁基板1の第1キャパシタC1および第2キャパシタC2を形成した面(基板主面11)に、ドライフィルムレジストを貼付する。当該ドライフィルムレジストは、感光性樹脂としてのエポキシ樹脂を含む。続いて、貼付したドライフィルムレジストを露光および現像することで、当該ドライフィルムレジストをパターニングする。このパターニングによって、ドライフィルムレジストを貫通するパターンが形成される。このパターンは、各接続部513,523,533,543を形成する部分に対応する。これにより、パターンを有する第3絶縁層23が形成される。続いて、第3絶縁層23に形成されたパターンに、銅めっきを充填させる。これにより、各接続部513,523,533,543が形成される。銅めっきの充填では、先述のパターンが形成された第3絶縁層23の上面に、たとえばシード層をスパッタ法および/または蒸着法によって形成した後、所定パターンを有するマスクを形成する。その後、シード層を用いた電解めっきにより銅めっきを形成する。シード層は、たとえばチタン層および銅層の積層構造をなす。電解めっきの形成後は、不要なシード層および不要なマスクを除去する。なお、銅めっきの充填方法は、これに限定されない。
【0051】
次いで、
図18に示すように、第2絶縁層22を形成し、形成した第2絶縁層22に、第1インダクタL1、第2インダクタL2および各接続部512,522,532,542を形成する。
図18は、第2絶縁層22、第1インダクタL1および各接続部512,513が形成された状態を示している。この工程では、まず、第3絶縁層23上に、ドライフィルムレジストを貼付する。このドライフィルムレジストは、感光性樹脂としてのエポキシ樹脂を含む。続いて、貼付したドライフィルムレジストを露光および現像することで、当該ドライフィルムレジストをパターニングする。このパターニングによって、第3絶縁層23上のドライフィルムレジストを貫通するパターンが形成される。このパターンは、第1インダクタL1、第2インダクタL2および各接続部512,522,532,542のそれぞれを形成する部分に対応する。これにより、パターンを有する第2絶縁層22が形成される。続いて、第2絶縁層22に形成されたパターンに、銅めっきを充填させる。これにより、第1インダクタL1、第2インダクタL2および各接続部512,522,532,542が形成される。銅めっきの充填は、たとえば、接続部513,523,533,543を形成する処理と同様に、シード層の形成および電解めっきにより行われる。なお、当該銅めっきの充填方法は、これに限定されない。
【0052】
次いで、
図19に示すように、第1絶縁層21を形成し、形成した第1絶縁層21に、各接続部511,521,531,541を形成する。
図19は、第1絶縁層21および各接続部511,531が形成された状態を示している。この工程では、まず、第2絶縁層22上に、ドライフィルムレジストを貼付する。このドライフィルムレジストは、感光性樹脂としてのエポキシ樹脂を含む。続いて、貼付したドライフィルムレジストを露光および現像することで、当該ドライフィルムレジストをパターニングする。このパターニングによって、第2絶縁層22上のドライフィルムレジストを貫通するパターンが形成される。このパターンは、各接続部511,521,531,541を形成する部分に対応する。これにより、パターンを有する第1絶縁層21が形成される。続いて、第1絶縁層21に形成されたパターンに、銅めっきを充填させる。これにより、各接続部511,521,531,541が形成され、上述の第1配線部51、第2配線部52、第3配線部53および第4配線部54が形成される。銅めっきの充填は、たとえば、接続部513,523,533,543を形成する処理と同様に、シード層の形成および電解めっきにより行われる。なお、当該銅めっきの充填方法は、これに限定されない。
【0053】
次いで、
図20に示すように、不平衡端子T1、接地端子T2、第1平衡端子T3および第2平衡端子T4を形成する。
図20は、不平衡端子T1および第1平衡端子T3が形成された状態を示している。この時点では、
図20から理解されるように、不平衡端子T1、接地端子T2、第1平衡端子T3および第2平衡端子T4は、第2方向yまたは第3方向xに接するものがあり、当該接するもの同士は、互いに一体化されている。不平衡端子T1、接地端子T2、第1平衡端子T3および第2平衡端子T4の形成は、たとえばスパッタ法および/または蒸着法によってシード層を形成した後、所定パターンを有するマスクを形成する。その後、シード層を用いた電解めっきにより銅めっきを形成する。シード層は、たとえばチタン層および銅層の積層構造をなす。電解めっき後は、不要なマスクおよび不要なシード層を除去する。不要なマスクおよび不要なシード層を除去した後は、不平衡端子T1、接地端子T2、第1平衡端子T3および第2平衡端子T4の露出表面に、たとえば無電解めっきによりめっきを施してもよい。
【0054】
その後、
図20に示す切断線CLに沿って、絶縁基板1などを切断する。切断方法は、何ら限定されないが、たとえばブレードダイシングまたはレーザダイシングなどを用いる。これにより、絶縁基板1が平衡不平衡変換素子A10ごとに分割される。また、不平衡端子T1、接地端子T2、第1平衡端子T3および第2平衡端子T4がそれぞれ分割される。以上の工程を経ることで、
図1~
図15に示す平衡不平衡変換素子A10が製造される。上記した平衡不平衡変換素子A10の製造方法は、一例であって、これに限定されない。たとえば、各接続部511,521,531,541の形成と、不平衡端子T1、接地端子T2、第1平衡端子T3および第2平衡端子T4の形成とを、一括してもよい。
【0055】
平衡不平衡変換素子A10の作用および効果は、次の通りである。
【0056】
平衡不平衡変換素子A10では、不平衡端子T1と接地端子T2とが第2方向yに並んでおり、第1平衡端子T3と第2平衡端子T4とが第2方向yに並んでいる。第1平衡端子T3は、不平衡端子T1に対して第3方向xの一方側に位置し、第2平衡端子T4は、接地端子T2に対して第3方向xの一方側に位置する。そして、第1インダクタL1および第2インダクタL2は、第2方向yに並んでいる。不平衡端子T1、接地端子T2、第1平衡端子T3および第2平衡端子T4がこのように配置されている場合、不平衡端子T1、接地端子T2、第1平衡端子T3、第2平衡端子T4、第1インダクタL1、第2インダクタL2、第1キャパシタC1および第2キャパシタC2を電気的に接続する配線が、平面視において交差する部分が生じる。このような配線の交差によって、平衡信号(2つの信号)の位相差が180度からずれることがあった。このような平衡信号の位相差のずれに対して、本願発明者の研究によれば、第1インダクタL1と第2インダクタL2との第3方向xにおける相対的な位置関係をずらすことで、平衡信号の位相差のずれを抑制できるとの知見を得た。そこで、平衡不平衡変換素子A10では、第1インダクタL1の平面視における第1中心P1は、第2インダクタL2の平面視における第2中心P2よりも第3方向xの他方側にずれている。これにより、平衡不平衡変換素子A10は、位相特性を180度に近づけることができるので、位相特性を良好にできる。
【0057】
平衡不平衡変換素子A10では、第1中心P1と第2中心P2との第3方向xに沿う距離dxは、第1インダクタL1の第3方向xの第1寸法W1(または第2インダクタL2の第3方向xの第2寸法W2)に対して0%よりも大きく10%以下である。本願発明者の先述の研究によれば、第1インダクタL1の平面視における第1中心P1と、第2インダクタL2の平面視における第2中心P2との、第3方向xに沿う距離dxを大きくした方が、位相特性を180度に近づくとの知見を得た。一方で、第3方向xに沿う距離dxが大きいと、平衡不平衡変換素子A10の第3方向xの寸法の増大化を招く。そこで、平衡不平衡変換素子A10では、距離dxを、第1寸法W1(または第2寸法W2)に対して、先述の範囲(0%よりも大きく10%以下)内とすることで、平衡不平衡変換素子A10の第3方向xの寸法を大きくすることなく、距離dxを適度な大きさにできる。つまり、平衡不平衡変換素子A10は、平衡不平衡変換素子A10の第3方向xの寸法の増大化を抑制しつつ、位相特性を良好にできる。
【0058】
平衡不平衡変換素子A10では、平面視において、第1中心P1は、仮想線M1に対して、第3方向xの他方側に位置し、また、平面視において、第2中心P2は、仮想線M1に対して、第3方向xの一方側に位置する。この構成によると、第1中心P1または第2中心P2のいずれか一方を、仮想線M1から第3方向xにずらす場合よりも、平衡不平衡変換素子A10の第3方向xの寸法を大きくすることなく、距離dxを大きくすることができる。つまり、平衡不平衡変換素子A10は、平衡不平衡変換素子A10の第3方向xの寸法の増大化を抑制しつつ、位相特性を良好にできる。特に、平衡不平衡変換素子A10では、平面視における第1中心P1と仮想線M1との第3方向xに沿う距離dx1と、平面視における第2中心P2と仮想線M1との第3方向xに沿う距離dx2とが同じである。このように、2つの距離dx1,dx2が同じ場合には、2つの距離dx1,dx2が異なる場合に比べて、平衡不平衡変換素子A10の第3方向xの寸法を大きくすることなく、距離dxを大きくすることができる。
【0059】
以下に、本開示の平衡不平衡変換素子の他の実施形態および変形例について、説明する。なお、各実施形態および各変形例における各部の構成は、技術的な矛盾が生じない範囲において相互に組み合わせ可能である。
【0060】
上記第1実施形態では、第1中心P1および第2中心P2が、平面視において、仮想線M1に対して、第3方向xにずれた例を示したが、第1中心P1または第2中心P2のいずれか一方が、平面視において、仮想線M1に重なっていてもよい。たとえば、
図21は、このような変形例にかかる平衡不平衡変換素子A11を示している。
図21に示す平衡不平衡変換素子A11は、平面視において、第1中心P1が仮想線M1に重なる(すなわち仮想線M1上に位置する)。一方で、平衡不平衡変換素子A11の第2中心P2は、平衡不平衡変換素子A10と同様に、仮想線M1に対して第3方向xの一方側に位置する。
図21に示す平衡不平衡変換素子A11であっても、第1中心P1と第2中心P2とが第3方向xにずれているので、平衡不平衡変換素子A10と同様に、位相特性を良好にできる。なお、
図21では、第1中心P1が仮想線M1に重なる構成を示したが、第2中心P2が仮想線M1に重なり、且つ、第1中心P1が仮想線M1に対して第3方向xの一方側(または他方側)に位置する構成であってもよい。
【0061】
上記第1実施形態では、第1中心P1が、仮想線M1に対して、第3方向xの他方側に位置し、且つ、第2中心P2が仮想線M1に対して第3方向xの一方側に位置する例を示したが、反対に、第1中心P1が、仮想線M1に対して、第3方向xの一方側に位置し、且つ、第2中心P2が、仮想線M1に対して、第3方向xの他方側に位置する構成であってもよい。あるいは、第1中心P1および第2中心P2の両方が、仮想線M1に対して、第3方向xの一方側または他方側のいずれかに位置してもよい。ただし、このように、第1中心P1および第2中心P2の両方を仮想線M1に対して第3方向xの一方側(または他方側)にずらす場合には、上記2つの距離dx1,dx2を互いに異なる値にする必要がある。
【0062】
上記第1実施形態では、不平衡端子T1、接地端子T2、第1平衡端子T3および第2平衡端子T4が、主面201の四隅にそれぞれ重なる例を示したが、不平衡端子T1、接地端子T2、第1平衡端子T3および第2平衡端子T4は、平面視において、主面201の四隅に重なっていなくてもよい。たとえば、
図22は、このような変形例にかかる平衡不平衡変換素子A12を示している。
図22に示す平衡不平衡変換素子A12は、不平衡端子T1、接地端子T2、第1平衡端子T3および第2平衡端子T4は、平面視において、主面201の四隅よりも少し内方に配置されている。つまり、平面視において、不平衡端子T1は、2つの側面203,206が交差する角に重ならない。平面視において、接地端子T2は、2つの側面203,205が交差する角に重ならない。平面視において、第1平衡端子T3は、2つの側面204,206が交差する角に重ならない。平面視において、第2平衡端子T4は、2つの側面204,205が交差する角に重ならない。
図22に示す平衡不平衡変換素子A12であっても、第1中心P1と第2中心P2とが第3方向xにずれているので、平衡不平衡変換素子A10と同様の効果を奏する。
【0063】
<第2実施形態>
図23は、第2実施形態にかかる平衡不平衡変換素子A20を示している。平衡不平衡変換素子A20は、平衡不平衡変換素子A10と比較して、次の点で異なる。すなわち、
図23に示すように、不平衡端子T1と第1平衡端子T3との対称軸(後述の仮想線M13)と、接地端子T2と第2平衡端子T4との対称軸(後述の仮想線M24)とが、異なる。
【0064】
図23に示すように、平衡不平衡変換素子A20では、不平衡端子T1と第1平衡端子T3とは、第2方向yに延びる仮想線M13を対称軸として、線対称に配置される。仮想線M13は、封止部材2の第3方向x中央を示す仮想線M3に対して、第3方向xの他方側(
図23における左側)に位置する。また、接地端子T2と第2平衡端子T4とは、第2方向yに延びる仮想線M24を対称軸として、線対称に配置される。仮想線M24は、封止部材2の第3方向x中央を示す仮想線M3に対して、第3方向xの一方側(
図23における右側)に位置する。
図23に示すように、2つの仮想線M13,M24は、第3方向xにずれている。つまり、上述したように、不平衡端子T1と第1平衡端子T3との対称軸(仮想線M13)と、接地端子T2と第2平衡端子T4との対称軸(仮想線M24)とは、異なる。
【0065】
また、平衡不平衡変換素子A20では、第1インダクタL1の第1中心P1は、平面視において、仮想線M13に重なる(すなわち仮想線M13上に位置する)。また、第2インダクタL2の第2中心P2は、平面視において、仮想線M24に重なる(すなわち仮想線M24上に位置する)。このように、第1中心P1が仮想線M13上に位置し、第2中心P2が仮想線M24上に位置していても、上述の通り、2つの仮想線M13,M24は、第3方向xにずれていることから、第1中心P1と第2中心P2とは、第3方向xにずれる。
【0066】
平衡不平衡変換素子A20では、接地端子T2は、第3方向xにおいて、不平衡端子T1よりも第3方向xの一方側にずれている。また、第2平衡端子T4は、第3方向xにおいて、第1平衡端子T3よりも第3方向xの一方側にずれている。このように、平衡不平衡変換素子A20では、不平衡端子T1、接地端子T2、第1平衡端子T3および第2平衡端子T4の相対的な位置関係が、平衡不平衡変換素子A10と異なっている。
【0067】
平衡不平衡変換素子A20においても、平衡不平衡変換素子A10と同様に、第1インダクタL1の平面視における第1中心P1が、第2インダクタL2の平面視における第2中心P2に対して第3方向xにずれているので、位相特性を良好にできる。その他、平衡不平衡変換素子A20は、平衡不平衡変換素子A10と共通する構成により、各平衡不平衡変換素子A10と同様の効果を奏する。
【0068】
<第3実施形態>
図24~
図26は、第3実施形態にかかる平衡不平衡変換素子A30を示している。平衡不平衡変換素子A30は、平衡不平衡変換素子A10と比較して、次の点で異なる。すなわち、
図24~
図26から理解されるように、不平衡端子T1、接地端子T2、第1平衡端子T3および第2平衡端子T4は、主面201から複数の側面203~206のいずれかに跨って形成されている。
【0069】
平衡不平衡変換素子A30では、封止部材2の複数の側面203~206はそれぞれ、平坦ではなく、段差がある。
図24に示すように、第1絶縁層21の複数の第1側面213~216および第2絶縁層22の複数の第2側面223~226は、第3絶縁層23の複数の第3側面233~236からそれぞれ、平面視において絶縁基板1の内方に配置されている。
【0070】
図24~
図26に示す例では、不平衡端子T1は、主面201の一部を覆いつつ、第1側面213および第2側面223の一部ずつと、第1側面216および第2側面226の一部ずつとを覆う。
図24に示すように、接地端子T2は、主面201の一部を覆いつつ、第1側面213および第2側面223の一部ずつと、第1側面215および第2側面226の一部ずつとを覆う。
図24および
図25に示すように、第1平衡端子T3は、主面201の一部を覆いつつ、第1側面214および第2側面224の一部ずつと、第1側面216および第2側面226の一部ずつとを覆う。
図24および
図26に示すように、第2平衡端子T4は、主面201の一部を覆いつつ、第1側面214および第2側面224の一部ずつと、第1側面215および第2側面225の一部ずつとを覆う。なお、不平衡端子T1、接地端子T2、第1平衡端子T3および第2平衡端子T4は、複数の第2側面223~226のいずれも覆っていなくてもよい。
【0071】
以上のような平衡不平衡変換素子A30は、上述の平衡不平衡変換素子A10の製造方法において、第1絶縁層21、第2絶縁層22および第3絶縁層23の形成範囲および不平衡端子T1、接地端子T2、第1平衡端子T3および第2平衡端子T4の形成範囲を適宜調整することで形成される。
【0072】
平衡不平衡変換素子A30においても、平衡不平衡変換素子A10と同様に、第1インダクタL1の平面視における第1中心P1が、第2インダクタL2の平面視における第2中心P2に対して第3方向xにずれているので、位相特性を良好にできる。その他、平衡不平衡変換素子A30は、各平衡不平衡変換素子A10,A20と共通する構成により、各平衡不平衡変換素子A10,A20と同様の効果を奏する。
【0073】
平衡不平衡変換素子A30では、不平衡端子T1、接地端子T2、第1平衡端子T3および第2平衡端子T4はそれぞれ、封止部材2の側方にも形成される。この構成によれば、平衡不平衡変換素子A30を電子機器などの回路基板に実装した際、不平衡端子T1、接地端子T2、第1平衡端子T3および第2平衡端子T4と、当該回路基板に実装するための導電性接合材(たとえばはんだまたは焼結金属)との接触面積を、平衡不平衡変換素子A10を用いる場合よりも、大きくできる。これにより、平衡不平衡変換素子A30は、平衡不平衡変換素子A10よりも、回路基板への接合強度を高めることができる。さらに、平衡不平衡変換素子A30では、電子機器などの回路基板に実装した際、当該回路基板に実装するための導電性接合材にフィレットが形成されるので、外観目視が容易となる。
【0074】
上記第3実施形態では、複数の側面203~206は、第1方向zにおける第2絶縁層22と第3絶縁層23との境界部分に段差がある例を示したが、第1方向zにおける第1絶縁層21と第2絶縁層22との境界部分に段差があってもよい。この場合、複数の第2側面223~226は、不平衡端子T1、接地端子T2、第1平衡端子T3、第2平衡端子T4のいずれにも覆われない。
【0075】
上記第3実施形態では、複数の側面203~206に段差がある例を示したが、複数の側面203~206のいずれにも段差はなく、第1方向zにおける封止部材2と絶縁基板1との境界部分に段差があってもよい。
【0076】
本開示にかかる平衡不平衡変換素子は、上記した実施形態に限定されるものではない。本開示の平衡不平衡変換素子の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。たとえば、本開示の平衡不平衡変換素子は、以下の付記に関する実施形態を含む。
付記1.
各々が第1方向に直交する平面に沿って巻回された第1インダクタおよび第2インダクタと、
第1キャパシタおよび第2キャパシタと、
前記第1インダクタおよび前記第1キャパシタに導通する不平衡端子と、
前記第2インダクタおよび前記第2キャパシタに導通する接地端子と、
前記第1インダクタおよび前記第2キャパシタに導通する第1平衡端子と、
前記第2インダクタおよび前記第1キャパシタに導通する第2平衡端子と、
を備え、
前記第1インダクタおよび前記第2インダクタは、前記第1方向に直交する第2方向に並んでおり、
前記不平衡端子および前記接地端子は、前記第2方向に並んでおり、
前記第1平衡端子および前記第2平衡端子は、前記第2方向に並んでおり、
前記第1平衡端子は、前記不平衡端子に対して、前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向の一方側に位置し、
前記第2平衡端子は、前記接地端子に対して、前記第3方向の一方側に位置し、
前記第1インダクタの前記第1方向に見た第1中心は、前記第2インダクタの前記第1方向に見た第2中心よりも前記第3方向の他方側にずれている、平衡不平衡変換素子。
付記2.
前記不平衡端子と前記第1平衡端子とは、前記第1方向に見て、前記第2方向に延びる仮想線を対称軸として、線対称となるようにされ、
前記接地端子と前記第2平衡端子とは、前記第1方向に見て、前記仮想線を対称軸として、線対称となるように配置される、付記1に記載の平衡不平衡変換素子。
付記3.
前記第1方向に見て、前記第1中心は、前記仮想線に対して、前記第3方向の他方側に位置し、
前記第1方向に見て、前記第2中心は、前記仮想線に対して、前記第3方向の一方側に位置する、付記2に記載の平衡不平衡変換素子。
付記4.
前記第1方向に見た前記第1中心と前記仮想線との前記第3方向に沿う距離と、前記第1方向に見た前記第2中心と前記仮想線との前記第3方向に沿う距離とは、同じである、付記3に記載の平衡不平衡変換素子。
付記5.
前記第1インダクタおよび前記第2インダクタを覆う封止部材をさらに備え、
前記封止部材は、前記第1方向の一方を向く主面および前記第1方向の他方を向く裏面を有し、
前記不平衡端子、前記接地端子、前記第1平衡端子および前記第2平衡端子は、前記主面に形成されている、付記2ないし付記4のいずれかに記載の平衡不平衡変換素子。
付記6.
前記第1方向に見て、前記仮想線は、前記封止部材の前記第3方向の中央に重なる、付記5に記載の平衡不平衡変換素子。
付記7.
前記主面は、前記第1方向に見て、矩形状であり、
前記不平衡端子、前記接地端子、前記第1平衡端子および前記第2平衡端子は、前記主面の四隅に配置されている、付記5または付記6に記載の平衡不平衡変換素子。
付記8.
前記封止部材に覆われた第1配線部をさらに備え、
前記第1配線部は、前記不平衡端子と、前記第1インダクタおよび前記第1キャパシタとに接続される、付記5ないし付記7のいずれかに記載の平衡不平衡変換素子。
付記9.
前記封止部材に覆われた第2配線部をさらに備え、
前記第2配線部は、前記接地端子と、前記第2インダクタおよび前記第1キャパシタとに接続される、付記8に記載の平衡不平衡変換素子。
付記10.
前記封止部材に覆われた第3配線部をさらに備え、
前記第3配線部は、前記第1平衡端子と、前記第1インダクタおよび前記第2キャパシタとに接続される、付記9に記載の平衡不平衡変換素子。
付記11.
前記封止部材に覆われた第4配線部をさらに備え、
前記第4配線部は、前記第2平衡端子と、前記第2インダクタおよび前記第2キャパシタとに接続される、付記10に記載の平衡不平衡変換素子。
付記12.
前記封止部材は、前記第1方向に積層された第1絶縁層、第2絶縁層および第3絶縁層を含み、
前記第2絶縁層は、前記第1絶縁層および前記第3絶縁層に挟まれ、
前記第1インダクタおよび前記第2インダクタは、前記第2絶縁層に形成されている、付記5ないし付記11のいずれかに記載の平衡不平衡変換素子。
付記13.
前記封止部材に対して前記第1方向の他方側に配置された絶縁基板をさらに備え、
前記第1キャパシタおよび前記第2キャパシタは、前記第1方向において、前記絶縁基板と前記封止部材とに挟まれている、付記5ないし付記12のいずれかに記載の平衡不平衡変換素子。
付記14.
前記第1インダクタは、前記第1方向に見て、前記不平衡端子および前記第1平衡端子に重なり、
前記第2インダクタは、前記第1方向に見て、前記接地端子および前記第2平衡端子に重なる、付記1ないし付記13のいずれかに記載の平衡不平衡変換素子。
付記15.
前記第1インダクタの前記第1方向に見た前記第3方向の第1寸法と、前記第2インダクタの前記第2方向に見た前記第3方向の第2寸法とは、同じである、付記1ないし付記14のいずれかに記載の平衡不平衡変換素子。
付記16.
前記第1中心と前記第2中心との前記第3方向に沿う距離は、前記第1寸法に対して0%よりも大きく10%以下である、付記15に記載の平衡不平衡変換素子。
【符号の説明】
【0077】
A10,A11,A12,A20,A30:平衡不平衡変換素子
1 :絶縁基板
11 :基板主面
12 :基板裏面
131,132,133,134:基板側面
2 :封止部材
201 :主面
202 :裏面
203,204,205,206:側面
21 :第1絶縁層
211 :第1主面
212 :第1裏面
213,214,215,216:第1側面
22 :第2絶縁層
221 :第2主面
222 :第2裏面
223,224,225,226:第2側面
23 :第3絶縁層
231 :第3主面
232 :第3裏面
233,234,235,236:第3側面
31,32:金属層
33 :絶縁体層
34 :接続配線
51 :第1配線部
511,512,513:接続部
52 :第2配線部
521,522,523:接続部
53 :第3配線部
531,532,533:接続部
54 :第4配線部
541,542,543:接続部
C1 :第1キャパシタ
C2 :第2キャパシタ
L1 :第1インダクタ
L2 :第2インダクタ
M1,M2,M3,M13,M24:仮想線
P1 :第1中心
P2 :第2中心
T1 :不平衡端子
T2 :接地端子
T3 :第1平衡端子
T4 :第2平衡端子