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特開2023-11465薬局に来局した複数の患者を管理するための装置、方法及びそのためのプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023011465
(43)【公開日】2023-01-24
(54)【発明の名称】薬局に来局した複数の患者を管理するための装置、方法及びそのためのプログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/10 20180101AFI20230117BHJP
【FI】
G16H20/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021115348
(22)【出願日】2021-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】516302270
【氏名又は名称】株式会社カケハシ
(74)【代理人】
【識別番号】100174078
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 寛
(72)【発明者】
【氏名】林 裕之
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 晋二
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA25
(57)【要約】
【課題】薬局に来局した複数の患者を管理するための方法であって、慢性疾患か否かを判定して、慢性疾患の患者を管理可能とする。
【解決手段】まず、装置100は、複数の処方情報を取得する(S201)。次に、装置100は、各処方情報に、単独で慢性疾患を表す単独薬剤が含まれるか否かを判定する(S202)。次に、装置100は、単独で慢性疾患を表す単独薬剤が含まれないと判定された場合、当該処方情報に、組み合わせで慢性疾患を表す一組の薬剤が含まれるか否かを判定する(S203)。そして、装置100は、単独薬剤又は一組の薬剤を含む処方情報に関連づけられた患者を慢性疾患患者と判定して、判定された1又は複数の慢性疾患患者の所定期間内の再来局率を算出する(S204)。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬局に来局した複数の患者を管理するための方法であって、
複数の処方情報を取得するステップと、
各処方情報について、単独又は組み合わせで慢性疾患を表す1又は複数の薬剤が含まれるか否かを判定するステップと、
前記1又は複数の薬剤が含まれると判定された1又は複数の処方情報に関連づけられた1又は複数の慢性疾患患者のうちの所定期間内に再来局した患者の数又はこれに応じた値を算出するステップと
を含む。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記値は、前記1又は複数の慢性疾患患者の所定期間内の再来局率又は離脱率である。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、
前記算出は、前記1又は複数の慢性疾患患者のそれぞれの過去の来局履歴に応じて区別して行う。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の方法であって、
前記所定期間は、前記1又は複数の薬剤のうちの少なくとも一部の処方日数に基づく期間である。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の方法であって、
前記1又は複数の慢性疾患患者のうちの少なくともいずれかの患者に対して介入するための介入支援情報を生成するステップをさらに含む。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、
前記介入の優先度を判定するステップをさらに含む。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、
前記患者の再来局時期を予測するステップをさらに含み、
前記優先度は、前記再来局時期を過ぎて前記所定期間経過前の患者を前記所定期間経過後の患者よりも高く評価する。
【請求項8】
請求項5から7のいずれかに記載の方法であって、
前記介入支援情報は、介入に用いる電話番号を含む。
【請求項9】
請求項5から8のいずれかに記載の方法であって、
前記1又は複数の慢性疾患患者のうちの介入がなされた患者のうちの所定期間内に再来局した患者の数又はこれに応じた値を算出するステップをさらに含む。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の方法であって、
前記判定するステップは、
前記各処方情報に、単独で慢性疾患を表す単独薬剤が含まれるか否かを判定する第1のステップと、
前記単独薬剤が含まれない場合、前記各処方情報に、組み合わせで慢性疾患を表す一組の薬剤が含まれるか否かを判定する第2のステップと
を含む。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
前記一組の薬剤が含まれるか否かの判定は、前記単独薬剤が含まれない場合のみに実行する。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の方法であって、
前記一組の薬剤が含まれるか否かの判定は、前記各処方情報に含まれる複数の薬剤の少なくとも一部の処方日数を用いて行う。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の方法であって、
前記一組の薬剤が含まれるか否かの判定は、機械学習により生成された推定モデルを用いて行う。
【請求項14】
コンピュータに、薬局に来局した複数の患者を管理するための方法を実行させるためのプログラムであって、前記方法は、
複数の処方情報を取得するステップと、
各処方情報について、単独又は組み合わせで慢性疾患を表す1又は複数の薬剤が含まれるか否かを判定するステップと、
前記1又は複数の薬剤が含まれると判定された1又は複数の処方情報に関連づけられた1又は複数の慢性疾患患者のうちの所定期間内に再来局した患者の数又はこれに応じた値を算出するステップと
を含む。
【請求項15】
薬局に来局した複数の患者を管理するための装置であって、
複数の処方情報を取得し、
各処方情報について、単独又は組み合わせで慢性疾患を表す1又は複数の薬剤が含まれるか否かを判定し、
前記1又は複数の薬剤が含まれると判定された1又は複数の処方情報に関連づけられた1又は複数の慢性疾患患者のうちの所定期間内に再来局した患者の数又はこれに応じた値を算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬局に来局した複数の患者を管理するための装置、方法及びそのためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
疾患には、一度の来局で治療が完了する疾患と、継続した治療のために再来局が必要な疾患がある。たとえば、風邪の場合、患者の風邪が回復すれば2回目以降の通院及び来局は不要となる。他方で、高血圧の場合、生活習慣病として治療を継続する必要性から2回目以降の通院及び来局がなされていくことが想定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
継続した治療が必要であるにもかかわらず、自らの判断で治療を中断してしまう患者も少なくない。たとえば、痛み等の症状を伴わない生活習慣病等の慢性疾患において顕著である。あるいは、治療は中断していないものの、患者が他の薬局に行ってしまうことがある。現状、薬局では毎月何枚の処方箋を受け取ったかといった統計的な管理はしているものの、こうした問題は、患者の疾患が慢性疾患か否かといった管理をすることができていないことに起因する。
【0004】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、薬局に来局した複数の患者を管理するための装置、方法及びそのためのプログラムであって、慢性疾患か否かを判定して、慢性疾患の患者を管理可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的を達成するために、本発明の第1の態様は、薬局に来局した複数の患者を管理するための方法であって、複数の処方情報を取得するステップと、各処方情報について、単独又は組み合わせで慢性疾患を表す1又は複数の薬剤が含まれるか否かを判定するステップと、前記1又は複数の薬剤が含まれると判定された1又は複数の処方情報に関連づけられた1又は複数の慢性疾患患者のうちの所定期間内に再来局した患者の数又はこれに応じた値を算出するステップとを含む。
【0006】
また、本発明の第2の態様は、第1の態様の方法であって、前記値は、前記1又は複数の慢性疾患患者の所定期間内の再来局率又は離脱率である。
【0007】
また、本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様の方法であって、前記算出は、前記1又は複数の慢性疾患患者のそれぞれの過去の来局履歴に応じて区別して行う。
【0008】
また、本発明の第4の態様は、第1から第3のいずれかの態様の方法であって、前記所定期間は、前記1又は複数の薬剤のうちの少なくとも一部の処方日数に基づく期間である。
【0009】
また、本発明の第5の態様は、第1から第4のいずれかの態様の方法であって、前記1又は複数の慢性疾患患者のうちの少なくともいずれかの患者に対して介入するための介入支援情報を生成するステップをさらに含む。
【0010】
また、本発明の第6の態様は、第5の態様の方法であって、前記介入の優先度を判定するステップをさらに含む。
【0011】
また、本発明の第7の態様は、第6の態様の方法であって、前記患者の再来局時期を予測するステップをさらに含み、前記優先度は、前記再来局時期を過ぎて前記所定期間経過前の患者を前記所定期間経過後の患者よりも高く評価する。
【0012】
また、本発明の第8の態様は、第5から第7のいずれかの態様の方法であって、前記介入支援情報は、介入に用いる電話番号を含む。
【0013】
また、本発明の第9の態様は、第5から第8のいずれかの態様の方法であって、前記1又は複数の慢性疾患患者のうちの介入がなされた患者のうちの所定期間内に再来局した患者の数又はこれに応じた値を算出するステップをさらに含む。
【0014】
また、本発明の第10の態様は、第1から第9のいずれかの態様の方法であって、前記判定するステップは、前記各処方情報に、単独で慢性疾患を表す単独薬剤が含まれるか否かを判定する第1のステップと、前記単独薬剤が含まれない場合、前記各処方情報に、組み合わせで慢性疾患を表す一組の薬剤が含まれるか否かを判定する第2のステップとを含む。
【0015】
また、本発明の第11の態様は、第10の態様の方法であって、前記一組の薬剤が含まれるか否かの判定は、前記単独薬剤が含まれない場合のみに実行する。
【0016】
また、本発明の第12の態様は、第10又は第11の態様の方法であって、前記一組の薬剤が含まれるか否かの判定は、前記各処方情報に含まれる複数の薬剤の少なくとも一部の処方日数を用いて行う。
【0017】
また、本発明の第13の態様は、第11又は第12の態様の方法であって、前記一組の薬剤が含まれるか否かの判定は、機械学習により生成された推定モデルを用いて行う。
【0018】
また、本発明の第14の態様は、コンピュータに、薬局に来局した複数の患者を管理するための方法を実行させるためのプログラムであって、前記方法は、複数の処方情報を取得するステップと、各処方情報について、単独又は組み合わせで慢性疾患を表す1又は複数の薬剤が含まれるか否かを判定するステップと、前記1又は複数の薬剤が含まれると判定された1又は複数の処方情報に関連づけられた1又は複数の慢性疾患患者のうちの所定期間内に再来局した患者の数又はこれに応じた値を算出するステップとを含む。
【0019】
また、本発明の第15の態様は、薬局に来局した複数の患者を管理するための装置であって、複数の処方情報を取得し、各処方情報について、単独又は組み合わせで慢性疾患を表す1又は複数の薬剤が含まれるか否かを判定し、前記1又は複数の薬剤が含まれると判定された1又は複数の処方情報に関連づけられた1又は複数の慢性疾患患者のうちの所定期間内に再来局した患者の数又はこれに応じた値を算出する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様によれば、薬局に来局した複数の患者を各患者に関連づけられた複数の処方情報に基づいて慢性疾患であるか否かを推測し、慢性疾患患者のうちの所定期間内に再来局した患者の数又はそれに応じた値を算出することによって、当該薬局における定量的な患者管理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1の実施形態にかかる薬局に来局した複数の患者を管理するための装置を示す図である。
図2】本発明の第1の実施形態にかかる薬局に来局した複数の患者を管理するための方法の流れを示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態にかかる慢性疾患患者の再来局率を示す図である。
図4】本発明の第1の実施形態にかかる介入支援画面の一例を示す図である。
図5】本発明の第3の実施形態にかかる介入のコンバージョン率を算出する方法の流れを示すである。
図6】本発明の第3の実施形態にかかる介入及びその成果の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0023】
(第1の実施形態)
図1に、本発明の第1の実施形態にかかる薬局に来局した患者を管理するための装置を示す。装置100は、複数の処方情報を取得し、各処方情報に関連づけられた患者が慢性疾患か否かを推測する。処方情報の数、すなわち来局した患者の数に加えて、慢性疾患患者の数を算出することが可能となる。
【0024】
装置100は、通信インターフェースなどの通信部101と、プロセッサ、CPU等の処理部102と、メモリ、ハードディスク等の記憶装置又は記憶媒体を含む記憶部103とを備え、処理部102において、各処理を行うためのプログラムを実行することによって構成することができる。装置100は、1又は複数の装置、コンピュータないしサーバを含むことがある。また、当該プログラムは、1又は複数のプログラムを含むことがあり、また、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記録して非一過性のプログラムプロダクトとすることができる。当該プログラムは、記憶部103又は装置100からIPネットワークを介してアクセス可能なデータベース104等の記憶装置又は記憶媒体に記憶しておき、処理部102において実行することができる。以下で記憶部103に記憶されるものとして記述されるデータはデータベース104に記憶してもよく、またその逆も同様である。
【0025】
処方情報は、薬局に来局した患者から受け取った処方箋に記載された情報を表す二次元コードを当該薬局に配置した撮像素子を有するコンピュータで撮像して生成することができる。薬局に配置したコンピュータに対する手入力によって処方情報が生成されてもよい。生成された処方情報は、当該コンピュータから直接的又は間接的に装置100に入力することができる。また、処方情報は、インターネット等のIPネットワークを介して装置100に送信することによって、装置100に入力することもできる。いずれにしても、処方箋に記載された情報を含む処方情報が装置100に入力されればよい。
【0026】
図2に、本発明の第1の実施形態にかかる薬局に来局した複数の患者を管理するための方法の流れを示す。まず、装置100は、複数の処方情報を取得する(S201)。次に、装置100は、各処方情報に、単独で慢性疾患を表す単独薬剤が含まれるか否かを判定する(S202)。
【0027】
各処方情報は、薬剤の薬剤名及び当該薬剤を識別する薬剤識別子の少なくとも一方を含み、当該薬剤の処方日数を含んでもよい。また、各処方情報は、各処方情報に関連づけられた患者の患者名又は当該患者を識別する患者識別子の少なくとも一方を含む。
【0028】
上記判定は、取得した処方情報に基づいて、1又は複数の薬剤と、各薬剤が用いられる疾患の種類との第1の対応づけを参照して行うことができる。当該種類には、たとえば、慢性、急性及び不明があり、処方情報に含まれるいずれかの薬剤に対応づけられた疾患の種類が慢性である場合に当該薬剤は慢性疾患を表す単独薬剤であると判定することができる。
【0029】
例として、処方情報に、PL配合顆粒、ロキソニン錠60mg及びアマリール1mg錠が薬剤として含まれる場合、アマリール1mg錠が、糖尿病という慢性疾患の治療薬であることから、単独で慢性疾患を表す単独薬剤が処方情報に含まれると判定される。PL配合顆粒は、総合感冒薬であるため急性の属性を有する薬剤であり、ロキソニン錠60mgは、解熱鎮痛剤であり、風邪等の急性疾患に使用する場合のほか、間接リウマチ、変形性関節症等の慢性疾患に使用する場合があるため、単体の薬剤名からは、当該処方情報に関連づけられた患者の疾患が慢性疾患であるか急性疾患であるかが不明である。
【0030】
第1の対応づけは、より一般的には、1又は複数の薬剤と、各薬剤が慢性疾患を表すか否かとの対応づけとすることができる。各薬剤が慢性疾患を表すか否かは、表す、表さない又は不明のように記述することができるほか、各薬剤が慢性疾患を表す確率によって記述することも考えられる。たとえば、薬剤毎又は薬剤共通に閾値を定めて、当該閾値以上又は超である場合に慢性疾患を表すと判定することができる。また、第1の対応づけは、1又は複数の薬剤と、各薬剤の処方日数と、各薬剤が慢性疾患を表すか否かとの対応づけとして、処方日数に応じて適用疾患の違いを区別することも考えられる。第1の対応づけは、一例として、薬剤及びその処方日数と、慢性疾患を表すか否かのラベルとの組み合わせを教師データとする機械学習によって生成した予測モデルとしてもよい。
【0031】
次に、装置100は、単独で慢性疾患を表す単独薬剤が含まれないと判定された場合、当該処方情報に、組み合わせで慢性疾患を表す一組の薬剤が含まれるか否かを判定する(S203)。単独では慢性疾患を表すか否か不明であっても、組み合わせで慢性疾患を表すことがあり、1又は複数の一組の薬剤と、各一組の薬剤が慢性疾患を表すか否かとの第2の対応づけを参照することにより、この判定を行うことができる。
【0032】
処方情報に含まれる複数の薬剤に基づく第2の対応づけを参照した判定は、装置100が取得した処方情報に単独で慢性疾患を表す単独薬剤が含まれない場合のみに実行してもよく、単独で慢性疾患を表す単独薬剤が含まれる場合にも実行してもよい。また、第2の対応づけは、処方情報に含まれる複数の薬剤に加えて、当該複数の薬剤の少なくとも一部の処方日数に基づいて参照されるものとしてもよい。第2の対応づけは、一例として、複数の薬剤及びそれらの処方日数と、慢性疾患を表すか否かのラベルとの組み合わせを教師データとする機械学習によって生成した予測モデルとしてもよい。
【0033】
そして、装置100は、単独薬剤又は一組の薬剤を含む処方情報に関連づけられた患者を慢性疾患患者と判定して、判定された1又は複数の慢性疾患患者の所定期間内の再来局率を算出する(S204)。
【0034】
当該所定期間は、慢性疾患患者共通の所定の日数とすることができるほか、各慢性疾患患者に関連づけられた処方情報に含まれる単独薬剤又は一組の薬剤の処方日数に基づいて定まる期間とすることもできる。たとえば、慢性疾患を表す単独薬剤が28日分処方されている場合を考えれば、処方日から服薬するとして、処方日から28日後には薬剤を飲み終えていることとなる。また、現実的には飲み忘れが生じることもあり、28日を経過しても薬剤が残っており、患者が服薬を継続していることもあるため、処方日数に予め定めた日数を加算した期間を所定期間として定めることもできる。本明細書において、処方日から処方日数を超えて服薬が継続されている可能性のある期間を「疑継続」の期間と呼ぶことがある。いずれにしても、処方日数に基づいて定まる期間を所定期間とし、当該所定期間内に再来局があれば治療を継続しており、なければ治療を中断して離脱したと評価することができる。
【0035】
図3に、本発明の第1の実施形態にかかる再来局率を示す。図3の再来局率表示画面300では、2021年5月から7月までの各月について、当該月に来局した患者のうちの慢性疾患患者の数を分母とし、当該慢性疾患患者のうちの所定期間内に再来局した患者の数を分子として、次回の再来局率を算出している。
【0036】
分母となる慢性疾患患者の数について、同一の患者が同一月に複数回来局して複数の処方情報が生成された場合に別の慢性疾患患者としてカウントしなくてもよく、あるいはカウントしてもよい。同一の患者が同一月に別の慢性疾患を理由に来局して複数の処方情報が生成された場合に別の慢性疾患患者としてカウントしてもよく、あるいはカウントしなくてもよい。ここでは、月単位で来局した患者を一群の患者として捉えているが、異なる単位で捉えてもよい。
【0037】
図3においては、各月の来局患者を新規の慢性疾患患者と再来の慢性疾患患者とに分けて示している。新規の慢性疾患患者とは、一例として、当該患者に関連づけられた過去の処方情報であって、同一の慢性疾患を表す単独薬剤又は一組の薬剤を含む処方情報が装置100により取得されていない患者をいう。再来の慢性疾患患者とは、一例として、当該患者に関連づけられた過去の処方情報であって、同一の慢性疾患を表す単独薬剤又は一組の薬剤を含む処方情報が装置100により取得されており、来局日が、当該過去の処方情報に含まれる単独薬剤又は一組の薬剤の処方日数に基づく所定期間を経過していない患者をいう。図3においては、当該患者に関連づけられた過去の処方情報であって、同一の慢性疾患を表す単独薬剤又は一組の薬剤を含む処方情報が装置100により取得されており、来局日が、当該過去の処方情報に含まれる単独薬剤又は一組の薬剤の処方日数に基づく所定期間を経過した患者を再度来局した新規の慢性疾患患者として区別して表示しているが、新規の慢性疾患患者と区別せずに表示してもよい。また、図3のように慢性疾患患者の過去の来局履歴に応じて区別せずに、各月に来局した慢性疾患患者全体を分母としてもよい。
【0038】
患者が所定期間内に再来局した場合には、当該再来局の前の来局に伴い装置100が取得した処方情報と関連づけて、再来局があったことを記憶する。患者が再来局したか否かは、たとえば、前回の来局に伴い取得された処方情報に含まれる1又は複数の薬剤が表すと判定された慢性疾患と同一の慢性疾患を表す1又は複数の薬剤が今回の来局に伴い取得された処方情報に含まれるか否かによって判定することができる。また、再来局は、同一の薬局に対する再来局であることは必ずしも必要ではなく、来局に伴い生成される処方情報が装置100から取得可能であればよい、たとえば、同一の事業者により経営される異なる店舗への来局であってもよい。
【0039】
以上説明したように、薬局に来局した複数の患者を各患者に関連づけられた複数の処方情報に基づいて慢性疾患であるか否かを推測し、慢性疾患患者の所定期間内の再来局率を算出することによって、当該薬局における定量的な患者管理が可能となる。
【0040】
ここまでの説明では、再来局率を算出するものとしたが、慢性疾患患者のうちの所定期間内に来局しなかった患者数の割合である離脱率を算出しても同様の効果がある。また、再来局率又は離脱率ではなく、慢性疾患患者のうちの所定期間内に来局した患者数又は来局しなかった患者数を算出することとしても、薬局としては、1月等の単位期間に来局した慢性疾患患者のその後の来局状況を把握して、同様の効果を得ることができる。来局しなかった患者数は、来局した患者数が定まれば論理的に定まる数であり、来局した患者数に応じた値であり、同様に再来局率及び離脱率も来局した患者数に応じた値である。
【0041】
なお、上述の説明では、単独で慢性疾患を表す薬剤の有無と組み合わせで慢性疾患を表す薬剤の有無を別処理において判定するものとして記述したが、これらを区別せずに同一の処理において判定するようにしてもよい。
【0042】
(第2の実施形態)
第1の実施形態にかかる装置100は、薬局に慢性疾患患者の定量的な把握を可能とし、当該薬局においては、慢性疾患患者の再来局を促すための介入を望むことがある。したがって、本実施形態においては、装置100はさらに、1又は複数の慢性疾患患者のうちの少なくともいずれかの患者に対して介入するための介入支援情報を生成する。
【0043】
図4に、本発明の第2の実施形態にかかる介入支援画面の一例を示す。介入支援画面400は、処方情報に基づいて慢性疾患であると推測された1又は複数の患者のうちの少なくともいずれかの患者に対する介入を支援するためのものであり、より具体的には、当該処方情報に含まれる処方日から所定期間経過した後に再来局していない患者を示している。これにより、再来局を促すべき1又は複数の患者を個別に判定することができる。
【0044】
図4は、2021年6月17日時点の患者の状況を示しており、酒井政次という氏名の患者は、6月2日に処方された薬剤が飲み終わる予定であり、そこから15日経過していることから、薬局から介入をして再来局を促すことが好ましい。偽継続の期間を30日と定めた場合、小澤徳子という氏名の患者は処方日数を経過したことに加えて、偽継続期間も経過しており、治療を中断してしまったおそれが高く、偽継続期間経過前の患者よりも介入の優先度が下がる。島袋忠治という氏名の患者は、小澤徳子という氏名の患者と来局予定日からの経過期間という観点からは同様であるが、すでに6月2日に架電による介入を薬局の薬剤師が行ったにもかかわらず再来局がない状況であることから、優先度をさらに低く評価している。志村佳典という氏名の患者は、偽継続期間という第1の付加期間よりも長い、たとえば60日等の第2の付加期間を経過しており、第1の付加期間を経過した患者よりも優先度を低く評価している。このように、装置100は、必要に応じて介入の優先度を判定する。
【0045】
装置100は、患者の再来局時期を予測してもよく、介入支援画面400では、次回来局予定日として示されている。再来局予定日は、一例として、処方日から処方日数が経過す日又はその前後数日以内の日として定めてもよく、より精度を高めるために、単独薬剤及びその処方日数又は一組の薬剤及びそれらの処方日数と、次回来局日との組み合わせを教師データとする機械学習によって生成した予測モデルとしてもよい。
【0046】
介入支援画面400は、装置100で生成されたHTML形式の介入支援情報を薬剤師が用いる端末で受信し、ウェブブラウザ上で表示することによって閲覧可能となる。あるいは、薬剤師が用いる端末にインストールされたアプリケーションを動作させ、当該アプリケーション上で、装置100で生成された介入支援情報を用いて介入支援画面400を表示することによって閲覧可能となる。
【0047】
介入支援画面400を閲覧した薬剤師は、SMS、電話、チャット等の手段を用いて介入を行うことができる。装置100において、患者の電話番号が記憶されている場合には、介入支援画面400に当該電話番号を表示することができる。薬局の患者は多くが高齢者であり、電話番号を用いたSMSによる介入が特に効果的である。
【0048】
なお、第1の実施形態にかかる方法によって慢性疾患患者の状況を定量的に把握した後に、薬局が介入支援画面400を閲覧して介入を検討するものとして記述したが、薬局における必要性に応じて、装置100は、定量的把握のための再来局率等の算出をせずに、介入支援情報を生成するようにすることも考えられる。
【0049】
(第3の実施形態)
第2の実施形態にかかる方法に従って表示された介入支援画面400を閲覧した薬剤師は、適宜再来局を促すべき1又は複数の患者に対して個別に介入を行う。薬剤師は、介入をした際に装置100に対して、患者名又は患者識別子及び介入日を含む介入情報を入力することができる。介入支援画面300上の操作で介入が可能であれば、装置100は、行われた介入に関する介入情報を記憶すればよい。
【0050】
図5に、本発明の第3の実施形態にかかる介入のコンバージョン率を算出する方法の流れを示す。複数の処方情報を装置100が取得し(S501)、各処方情報に対して、第1の実施形態にて説明したのと同様に、当該処方情報に、単独又は組み合わせで慢性疾患を表す1又は複数の薬剤が含まれるか否かを判定することで、当該処方情報に関連づけられた患者の疾患が慢性疾患であるか否かを推測する(S502)。当該1又は複数の薬剤が含まれると判定されたことを条件に、当該処方情報に関連づけられた患者に対する介入するための介入支援情報を生成して、薬剤師が用いる端末に送信する(S503)。当該薬剤師は、適宜患者に対して介入を行い、装置100は、各処方情報に関連づけられた患者が再来局したことを記憶する(S504)。そして、介入がなされた患者の数に対する再来局した患者の数を算出する(S505)。
【0051】
図6は、本発明の第3の実施形態にかかる介入及びその結果の一例を示す図である。コンバージョン率表示画面600では、201件の介入に対して175件の再来局があり、コンバージョン率82.4%が得られている。図示はしていないが、介入情報に薬剤師名又は薬剤師識別子を含めることで、薬剤師別のコンバージョン率算出が可能になる。算出する値は、介入した患者数を分母として、第1の実施形態と同様に、再来局した患者の数のほかに、再来局しなかった患者の数、コンバージョン率である再来局率、離脱率等の再来局した患者の数に応じた値とすることができる。
【0052】
なお、上述の実施形態において、「××のみに基づいて」、「××のみに応じて」、「××のみの場合」というように「のみ」との記載がなければ、本明細書においては、付加的な情報も考慮し得ることが想定されていることに留意されたい。また、一例として、「aの場合にbする」という記載は、明示した場合を除き、「aの場合に常にbする」こと、「aの直後にbする」ことを必ずしも意味しないことに留意されたい。また、「Aを構成する各a」という記載は、必ずしもAが複数の構成要素によって構成されることを意味するものではなく、構成要素が単数であることを含む。
【0053】
また、念のため、なんらかの方法、プログラム、端末、装置、サーバ又はシステム(以下「方法等」)において、本明細書で記述された動作と異なる動作を行う側面があるとしても、本発明の各態様は、本明細書で記述された動作のいずれかと同一の動作を対象とするものであり、本明細書で記述された動作と異なる動作が存在することは、当該方法等を本発明の各態様の範囲外とするものではないことを付言する。
【0054】
また、図2及び5において示される「開始」及び「終了」は、一例を示すものに過ぎず、本実施形態にかかる方法がS201及びS501によって必ず開始され、S204及びS505によって必ず終了することを意味するものではない。
【符号の説明】
【0055】
100 装置
101 通信部
102 処理部
103 記憶部
104 データベース
300 再来局率表示画面
400 介入支援画面
600 コンバージョン率表示画面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2021-09-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬局に来局した複数の患者を管理するための方法。