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特開2023-114652マルチリーフコリメータおよび放射線治療装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114652
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】マルチリーフコリメータおよび放射線治療装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20230810BHJP
【FI】
A61N5/10 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017085
(22)【出願日】2022-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(71)【出願人】
【識別番号】312005957
【氏名又は名称】三菱重工マシナリーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 宏輝
(72)【発明者】
【氏名】石塚 孝
(72)【発明者】
【氏名】荒井 智志
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082AC01
4C082AE01
4C082AG24
4C082AJ01
(57)【要約】
【課題】本発明は、マルチリーフコリメータについて、製造が容易な構成によって、各リーフの位置を高精度で求めることを目的とする。
【解決手段】マルチリーフコリメータは、複数のリーフ14を備えており、リーフ14における周囲の端面のうちコリメート端面aでない周辺端面に、光源20から発せられた光を反射する反射面28が形成されている。周辺端面は、コリメート端面aとは反対側にある縦端面dと、縦端面dの一端からコリメート端面a側に向かって延びる上側横端面bとを含む。反射面28は、周辺端面に反射加工が施された領域であってよい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のリーフを備えるマルチリーフコリメータにおいて、
各前記リーフにおける周囲の端面のうち放射線を臨むコリメート端面が、前記放射線の状態を調整し、
各前記リーフにおける周囲の端面のうち前記コリメート端面でない周辺端面に、光源から発せられた光を反射する反射面が形成されていることを特徴とするマルチリーフコリメータ。
【請求項2】
請求項1に記載のマルチリーフコリメータにおいて、
前記反射面は、前記周辺端面に反射加工が施された領域であることを特徴とするマルチリーフコリメータ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のマルチリーフコリメータにおいて、
前記周辺端面は、
前記コリメート端面とは反対側にある縦端面と、前記縦端面の一端から前記コリメート端面側に向かって延びる横端面とを含み、
前記横端面には、前記リーフを横方向に案内する係合溝に係合し、横方向に延びるガイドが形成され、
前記反射面は、前記ガイドに形成されていることを特徴とするマルチリーフコリメータ。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のマルチリーフコリメータにおいて、
前記周辺端面は、
前記コリメート端面とは反対側にある縦端面と、前記縦端面の一端から前記コリメート端面側に向かって延びる横端面とを含み、
前記横端面には、前記リーフを横方向に案内する係合溝に係合するガイドであって、前記縦端面と前記横端面とが形成する角部よりも、前記コリメート端面側に退いた位置から前記コリメート端面側に向かって延びるガイドが形成され、
前記反射面は、前記角部と前記ガイドとの間のオフセット領域に形成されていることを特徴とするマルチリーフコリメータ。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載のマルチリーフコリメータにおいて、
前記周辺端面に、異なる方向を臨む複数の前記反射面が形成されていることを特徴とするマルチリーフコリメータ。
【請求項6】
請求項5に記載のマルチリーフコリメータにおいて、
前記周辺端面は、
前記コリメート端面とは反対側にある縦端面と、前記縦端面の一端から前記コリメート端面側に向かって延びる横端面とを含み、
前記横端面には、前記リーフを横方向に案内する係合溝に係合するガイドであって、前記縦端面と前記横端面とが接する角部よりも、前記コリメート端面側に退いた位置から前記コリメート端面側に向かって延びるガイドが形成され、
複数の前記反射面のうちの少なくとも1つは、前記ガイドに形成されており、
複数の前記反射面のうちの残りは、前記角部と前記ガイドとの間のオフセット領域に形成されていることを特徴とするマルチリーフコリメータ。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載のマルチリーフコリメータにおいて、
前記反射面は、前記リーフの外周方向に沿って曲がった曲面であることを特徴とするマルチリーフコリメータ。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載のマルチリーフコリメータにおいて、
各前記リーフに形成された前記反射面が、各前記リーフで反射した光を検出する光検出部から見て凹んだ凹面を形成することを特徴とするマルチリーフコリメータ。
【請求項9】
請求項1または請求項2に記載のマルチリーフコリメータにおいて、
前記周辺端面でない領域に反射率低減加工面が形成されていることを特徴とするマルチリーフコリメータ。
【請求項10】
請求項1または請求項2に記載のマルチリーフコリメータと、
前記放射線を照射する放射線照射部と、
各前記リーフで反射した光を検出する光検出部と、
前記検出部で検出された光に基づいて各前記リーフの位置を求める解析部と、を備えることを特徴とする放射線治療装置。
【請求項11】
放射線を照射する放射線照射部と、
複数のリーフを備えるマルチリーフコリメータと、を備え、
各前記リーフにおける周囲の端面のうち前記放射線を臨むコリメート端面が、前記放射線の状態を調整し、
各前記リーフにおける周囲の端面のうち前記コリメート端面でない周辺端面に、光源から発せられた光を反射する反射面が形成されていることを特徴とする放射線治療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチリーフコリメータおよび放射線治療装置に関し、特に、マルチリーフコリメータが備えるリーフの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線治療装置が広く用いられている。放射線治療装置は、放射線を患部に照射することで患部を治療する。放射線が照射される領域を患部に制限するため、放射線治療装置はマルチリーフコリメータを備えている。
【0003】
マルチリーフコリメータは、対向配置された一対のリーフ集合体を備えている。各リーフ集合体は、厚み方向に重ねられた複数のリーフを備えている。リーフは放射線が透過しない材料で形成された板状の部材である。一対のリーフ集合体は、一方のリーフ集合体に属する複数のリーフのそれぞれの端面と、他方のリーフ集合体に属する複数のリーフのそれぞれの端面とが対向するように配置されている。一対のリーフ集合体の間には、放射線が通過する通過領域が形成される。
【0004】
各リーフ集合体に属する各リーフの表面方向に沿った位置を変化させることで、通過領域の形状および大きさが調整される。通過領域の形状および大きさに応じて、進行方向に垂直な断面内での放射線の形状(断面形状)や、放射線の広がりが調整される。
【0005】
各リーフの表面方向に沿った位置を調整するために、放射線治療装置は、各リーフを表面方向に沿って移動させる駆動機構を備えている。放射線治療装置では、各リーフの位置が検出され、各リーフの位置が適切な位置となるように駆動機構によって各リーフの位置が調整される。
【0006】
以下の特許文献1~3にはマルチリーフコリメータが記載されている。特許文献1には、各リーフにマーカ部が設けられたマルチリーフコリメータが記載されている。マーカ部には塗料によって認識マークが付されている。マーカ部に照明光が照射された上でマーカ部が撮影され、撮影された画像における認識マークの位置によってリーフの位置が特定される。特許文献2には、リーフ上にリフレクタが設けられたマルチリーフコリメータが記載されている。リフレクタに向けてレーザ光が照射され、リフレクタを反射したレーザ光が撮影され、撮影された画像におけるリフレクタの位置によってリーフの位置が特定される。特許文献3には、リーフブロック(集合体)の端面全体を撮影した画像によって端面全体の形状を解析し、各リーフの位置を特定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2015/107660号
【特許文献2】米国特許公開公報2013/00003080号明細書
【特許文献3】特開2010-104452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年では、患部の微小な領域に放射線を照射する治療が行われている。そこで、リーフを薄くして枚数を増やし、通過領域の形状を微細に調整可能とすることが考えられている。しかし、リーフを薄くすると、位置を検出するための構造をリーフに形成することが困難となることがある。例えば、特許文献1に記載されているようなマーカ部や、特許文献2に記載されているようなリフレクタを設けることが困難となることがある。また、特許文献3に記載のマルチリーフコリメータでは、リーフを薄くすると、リーフブロックの端面全体を撮影した画像の分解能が不十分である場合には、各リーフの位置を特定することが困難となる可能性がある。
【0009】
本発明は、マルチリーフコリメータについて、製造が容易な構成によって、各リーフの位置を高精度で求めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、複数のリーフを備えるマルチリーフコリメータにおいて、各前記リーフにおける周囲の端面のうち放射線を臨むコリメート端面が、前記放射線の状態を調整し、各前記リーフにおける周囲の端面のうち前記コリメート端面でない周辺端面に、光源から発せられた光を反射する反射面が形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る放射線治療装置は、放射線を照射する放射線照射部と、複数のリーフを備えるマルチリーフコリメータと、を備え、各前記リーフにおける周囲の端面のうち前記放射線を臨むコリメート端面が、前記放射線の状態を調整し、各前記リーフにおける周囲の端面のうち前記コリメート端面でない周辺端面に、光源から発せられた光を反射する反射面が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、製造が容易な構成によって、各リーフの位置を高精度で求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】照射ノズルの構成を示す図である。
図2】照射ノズルの構成を示す図である。
図3】リーフ駆動装置およびリーフ集合体の構成を示すである。
図4】上下の縁にガイドが形成されたリーフの例を示す図である。
図5】第1の応用実施形態に係るリーフを示す図である。
図6】オフセット領域の周辺の拡大図である。
図7】第1反射面および第2反射面で反射する光を模式的に示す図である。
図8】第2の応用実施形態に係るリーフを示す図である。
図9】第3の応用実施形態に係るリーフを示す図である。
図10】第4の応用実施形態に係るリーフを示す図である。
図11】第5の応用実施形態に係るリーフを示す図である。
図12】第6の応用実施形態に係るマルチリーフコリメータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
各図を参照して本発明の実施形態が説明される。複数の図面に示された同一の構成要素については同一の符号が付され、その説明が簡略化される。本明細書における上下左右等の方向を示す用語は、図面における方向を示す。方向を示すこれらの用語は、各構成要素が配置される際の姿勢を限定するものではない。
【0015】
図1には、放射線治療装置が備える照射ノズル100の構成が示されている。図1では、照射ノズル100から放射線を照射する方向がz軸正方向とされ、z軸に垂直な座標平面としてxy平面が定義されている。照射ノズル100は、放射線を患部16に照射する装置であり、放射線照射部10およびマルチリーフコリメータ102を備えている。
【0016】
放射線照射部10は、電子の衝突によって放射線を発生するターゲットを備えており、電子を加速してターゲットに衝突させ、ターゲットから放射線を照射する。放射線照射部10が照射した放射線は、マルチリーフコリメータ102(以下、MLCという。MLCは、Multi Leaf Collimatorを省略したものである。)の通過領域1を通って患部16に照射される。MLCは、患部16に照射される放射線の状態、すなわち放射線の断面形状や広がりを調整する。MLCの通過領域1の形状および大きさが調整されることで、適切な断面形状および広がりを有する放射線が患部16に照射される。
【0017】
MLCは、左右に配置された一対のリーフ集合体12Lおよび12Rを備えている。各リーフ集合体は、厚み方向に重ねられた複数のリーフ14を備えている。すなわち、各リーフ集合体は、隣接するリーフ14を接触させて、あるいは間隔を空けて厚み方向に連ねられた複数のリーフ14を備えている。リーフ集合体12Rを構成する複数のリーフ14のそれぞれは、左側に凸の曲線を描くコリメート端面aを左端に備えている。コリメート端面aの上端からは右方向に上側横端面bが延び、下端からは右方向に下側横端面cが延びている。上側横端面bの右端と、下側横端面cの右端との間には、縦方向に延びた縦端面dがある。
【0018】
ここで、「端面」の用語は、リーフ14の縁の表面を意味する。端面は、平面、曲面または凹凸面のいずれを含んでもよい。また、コリメート端面aは、放射線の進行を妨げる縁における端面である。コリメート端面aは、上下の角から横方向に延びた端面の一部を含んでもよい。
【0019】
リーフ集合体12Lを構成する複数のリーフ14のそれぞれは、右側に凸の曲線を描くコリメート端面aを右端に備えている。コリメート端面aの上端からは左方向に上側横端面bが延び、下端からは左方向に下側横端面cが延びている。上側横端面bの左端と、下側横端面cの左端との間には、縦方向に延びた縦端面dがある。
【0020】
照射ノズル100は、各リーフ集合体が備える各リーフ14を左右に移動させるリーフ駆動装置(図示せず)を備えており、各リーフ14は表面方向に沿って左右に移動自在となっている。図2には、移動前のリーフ14が二点鎖線で示され、移動後のリーフ14が実線で示されている。この図に示されているように、各リーフ14の表面方向の位置を左右に変化させることで、通過領域1のxy平面に平行な断面における形状および大きさが調整される。放射線照射部10が照射した放射線の一部は、各リーフ14のコリメート端面aに衝突し、その進行が妨げられる。放射線の残りの一部は、通過領域1を通過して患部16に照射される。
【0021】
照射ノズル100におけるリーフ駆動装置は、リーフ14の位置を検出し、検出された位置が目標位置に近付けられ、または一致するようにリーフ14を移動させる。図3には、リーフ駆動装置104の構成が、リーフ集合体12Rと共に模式的に示されている。以下の説明では、一対のリーフ集合体12Lおよび12Rのうち、主にリーフ集合体12Rの構成が示される。リーフ集合体12Lは、リーフ集合体12Rに対して略左右対称に形成されてよい。ここで、略左右対称な構造は、厳密な対称性がある構造のみならず、機能的な対称性が担保され、MLCの機能が確保される程度に変形が加えられた構造を含む。
【0022】
リーフ駆動装置104は、光源20、カメラ22、解析部24および駆動機構26を備えている。リーフ14の上側横端面bの右端の領域には、反射面28が直接形成されている。反射面28は、リーフ14の上側横端面bのうち反射加工が直接施された領域であってよい。反射加工には、表面研磨や鏡面加工等、表面の粗さを小さくする加工がある。反射面28を形成するために、必ずしも塗料等が用いられなくてもよい。反射面28が形成されている領域よりも左側には、リーフ14を左右方向に案内するためのガイドが形成されてよい。ガイドは、反射面28が形成された領域よりも高くなった左右に延びる領域であり、照射ノズル100に設けられた左右方向に延びる係合溝に嵌まり込む形状を有している。ガイドの詳細な構造の例については後に述べられる。
【0023】
光源20は、電球、LED等であってよい。光源20から発せられる光は、必ずしもコヒーレントな光でなくてもよい。光源20は、各リーフ14の反射面28に向けて光を照射する。光源20から発せられた光は反射面28で反射し、反射光の一部はカメラ22に向かう。光検出部としてのカメラ22は、各リーフ14で反射した光を検出する。すなわち、カメラ22は、反射面28を含む領域の画像を撮影し、画像データを解析部24に出力する。解析部24は、画像データが示す画像における反射光の位置を求める。解析部24は、各リーフ14について求められた反射光の位置に基づいて、各リーフ14の位置を求める。各リーフ14の位置は、反射面28の重心のx軸座標値で表されてよい。
【0024】
駆動機構26は、各リーフ14の位置を検出する位置センサ(図示せず)を備えている。解析部24は、位置センサによって検出された各リーフ14の位置が、予め定められた目標位置に近付きまたは一致するように駆動機構26を制御し、駆動機構26に各リーフ14を移動させる。解析部24は、反射光の位置に基づいて求めた各リーフ14の位置と、位置センサによって検出された各リーフ14の位置とを比較し、位置センサの動作に異常がないか否かの判定を行う。
【0025】
図4には、上下の縁にガイドが形成されたリーフ14の例が示されている。リーフ14の上側の縁には、上側に突出し横方向に延びた上側ガイド30が形成されている。リーフ14の上側横端面bには、上側ガイド30の上面および側面と、リーフ14の上側の縁のうち上側ガイド30でない領域の表面が含まれる。同様に、リーフ14の下側の縁には、下側に突出し横方向に延びた下側ガイド32が形成されている。リーフ14の下側横端面cには、下側ガイド32の下面および側面と、リーフ14の下側の縁のうち下側ガイド32でない領域の表面が含まれる。
【0026】
上側ガイド30は、縦端面dの上端から左側に退いた位置から左方向に延びている。縦端面dの上端と上側ガイド30の右端との間のオフセット領域34に反射面28が形成されている。一方、下側ガイド32の右端は、縦端面dの下端の位置にあってよい。
【0027】
照射ノズル100には、上側ガイド30が嵌め込まれる係合溝と、下側ガイド32が嵌め込まれる係合溝が形成されている。各係合溝は横方向に延び、駆動機構26によって力が与えられたリーフ14を横方向に案内する。これによって、リーフ14は、上側ガイド30、下側ガイド32および上下に形成された係合溝に沿って移動する。
【0028】
このように、本実施形態に係るMLCは、複数のリーフ14を備えており、リーフ14における周囲の端面のうちコリメート端面aでない周辺端面に、光源20から発せられた光を反射する反射面28が形成されている。周辺端面は、上側横端面b、下側横端面cおよび縦端面dを含む。すなわち、周辺端面は、コリメート端面aとは反対側にある縦端面dと、縦端面dの一端からコリメート端面a側に向かって延びる上側横端面b(横端面)とを含む。また、上側横端面bには、リーフ14を横方向に案内する係合溝に係合する上側ガイド30が形成されている。上側ガイド30は、縦端面dと上側横端面bとが形成する角部よりも、コリメート端面a側に退いた位置から、コリメート端面a側に向かって延びる。反射面28はオフセット領域34に形成されている。
【0029】
本実施形態に係るMLCでは、リーフ14に反射面28が直接形成されている。これによって、リーフ14が薄い場合であっても、反射面28を形成することが容易となる。また、リーフ14が薄い場合であっても、光が確実に反射する反射面28が形成される。これによって、リーフ14の位置が高精度に求められる。さらに、反射面28に塗料が用いられない場合には、塗料の性質が放射線によって経年変化するという問題が生じない。
【0030】
以下には、第1~第4の応用実施形態に係るリーフが示される。上記の実施形態に係るリーフ14は、各応用実施形態に係るリーフに置き換えられてもよい。
【0031】
図5には、第1の応用実施形態に係るリーフ40が示されている。このリーフ40では、オフセット領域34に形成された第1反射面28-1に加えて、上側ガイド30の右端に第2反射面28-2が形成されている。図6には、オフセット領域34の周辺の拡大図が示されている。オフセット領域34には、第1反射面28-1が形成されている。上側ガイド30の右端には、右側に向かうに従って低くなる傾斜面が形成されており、その傾斜面に第2反射面28-2が形成されている。
【0032】
ここでは、リーフ40が2つの反射面を有する実施形態が示された。リーフには、異なる方向を臨む3つ以上の反射面が形成されてもよい。この場合、複数の反射面のうちの少なくとも1つは、上側ガイド30に形成され、複数の反射面のうちの残りは、縦端面dと上側横端面bとが形成する角部と上側ガイド30との間のオフセット領域34に形成されてよい。
【0033】
図7には、第1反射面28-1および第2反射面28-2で反射する光が模式的に示されている。リーフ40が左側に位置しているときは、光源20から発せられた光は、第2反射面28-2で反射し、カメラ22に向かう。二点鎖線で示されるように、リーフ40が右側に移動したときは、光源20から発せられた光は、先に第1反射面28-1で反射して第2反射面28-2に入射し、さらに、第2反射面28-2で反射してカメラ22に向かう。
【0034】
このように、第1反射面28-1に加えて第2反射面28-2が設けられていることで、リーフ40が広い範囲で移動した場合であっても、十分な強度を有する反射光がカメラ22に入射する。したがって、リーフ40が位置する広い範囲に亘って高精度でリーフ40の位置が求められる。
【0035】
第1の応用実施形態に係るリーフ40は、オフセット領域34および第1反射面28-1を設けない構造に変形されてよい。この場合、上側ガイド30の最右端は縦端面dの上端と一致する。すなわち、上側ガイド30の右端には、右側に向かうに従って低くなって縦端面dの上端に至る傾斜面が形成され、この傾斜面に第2反射面28-2が形成される。光源20から発せられた光は第2反射面28-2で反射しカメラ22に向かう。この構造では、リーフ40の縦端面dと第2反射面28-2との間にオフセット領域34がないため、高精度な加工が容易となる。
【0036】
図8には、第2の応用実施形態に係るリーフ42の右上の領域が部分的に示されている。このリーフ42では、縦端面dと上側横端面bとの間に面取り傾斜面44が形成されている。面取り傾斜面44は、縦端面dの上端と、上側横端面bの右端との間に形成された右上方向を臨む平面である。面取り傾斜面44には反射面28が形成されている。
【0037】
図9には、第3の応用実施形態に係るリーフ46の右上の領域が部分的に示されている。このリーフ46では、上側に突出した凸形状反射部48がリーフ46の上側の縁に形成されている。図9に示されている例では、凸形状反射部48の右側に、右側に向かうに従って低くなる傾斜面50が形成されている。この傾斜面50は右上を臨む平面であってよい。凸形状反射部48に形成された傾斜面50には反射面28が形成されている。凸形状反射部48の上面は平坦であってよく、凸形状反射部48の上面にも反射面が形成されてよい。凸形状反射部48の上面にも反射面が形成されることで、リーフ46が広い範囲で移動した場合であっても、十分な強度を有する反射光がカメラ22に入射する。凸形状反射部48の左側の傾斜面52の形状は任意である。
【0038】
図10には、第4の応用実施形態に係るリーフ54の右上の領域が部分的に示されている。このリーフ54では、下方に凹んだ凹み形状部56がリーフ54の上側の縁に形成されている。図10に示されている例では、右側に向かうに従って低くなり最下部に至る第1傾斜面58と、最下部から右方向に向かうに従って高くなる第2傾斜面60によって凹み形状部56が形成されている。第1傾斜面58は右上を臨む平面であってよく、第2傾斜面60は左上を臨む平面であってよい。第1傾斜面58には反射面28が形成されている。第2傾斜面60にも反射面が形成されてよい。第2傾斜面60にも反射面が形成されることで、リーフ54が広い範囲で移動した場合であっても、十分な強度を有する反射光がカメラ22に入射する。
【0039】
図11には、第5の応用実施形態に係るリーフ62の右上の領域が部分的に示されている。このリーフ62では、縦端面dの上端と上側横端面bとの間に凹み曲面64が形成されている。凹み曲面64はリーフ62の外周方向に沿って曲がった曲面であり、左下方向に凹んでいる。凹み曲面64には反射面28が形成されている。反射面28は、入射した光をあらゆる方向に反射する。すなわち、反射面28は、あらゆる方向から入射した光をカメラ22の方向に向け得るといえる。したがって、凹み曲面64に反射面28が形成されることで、リーフ62が広い範囲で移動した場合であっても、十分な強度を有する反射光がカメラ22に入射する。
【0040】
図8図11にそれぞれ示された第2~第5の応用実施形態では、リーフの上側の縁に上側ガイド30が形成されてもよい。さらに、上側ガイド30の右端には、追加の反射面が形成されてもよい。追加の反射面が形成されることで、リーフが広い範囲で移動した場合であっても、十分な強度を有する反射光がカメラ22に入射する。
【0041】
図12には、第6の応用実施形態に係るMLCが示されている。図12には、yz平面に平行であり、各リーフ14が備える反射面28を通る平面でMLCを切断した場合に現れる断面が示されている。各リーフ14に形成された反射面28は、光検出部としてのカメラ22から見て凹んだ凹面を形成している。ここで、凹面の断面は、各反射面28が形成する直線を連結することによって曲線が近似されるものであってよい。図12には、各リーフ14に形成された反射面28において反射した光の光路70が示されている。光源から発せられ、各リーフ14で反射した光はカメラ22に向かう。なお、リーフ14は、第1~第5の応用実施形態に係るリーフ40,42,46,54および62のいずれかに置き換えられてもよい。
【0042】
このような構成によれば、複数のリーフ14の反射面28が平坦に配置された場合に比べて、カメラ22とMLCとの間の狭い範囲に反射光が向けられる。これによって、カメラ22とMLCとの間の距離が短くなり、照射ノズル100が小型化される。あるいは、視野角が狭く単位立体角当たりの画素数が多いカメラが使用可能となる。
【0043】
上記の各実施形態では、リーフの角の近傍、すなわち、上側横端面bの端に反射面が形成されている。反射面は、上側横端面bの中途の位置に形成されてもよい。また、各実施形態におけるリーフでは、反射面でない領域に反射率低減加工面が形成されてもよい。反射率低減加工面は、表面の粗さを所定の粗さよりも大きくし、入射した光をあらゆる方向に拡散する面であってよい。
【0044】
また、反射率低減加工面は、黒色等、光を反射し難い色彩の素材で覆われた面であってもよい。例えば、各図に示されているリーフの上側横端面bおよび縦端面dのうち、反射面でない端面は反射率低減加工面であってもよい。図6に示されているリーフでは、特に、縦端面d、上側横端面bのうち第1反射面28-1および第2反射面28-2でない端面が、反射率低減加工面であってよい。さらに、リーフのy軸に垂直な面(前面または後面)が、反射率低減加工面であってもよい。反射率低減加工面が設けられることで、カメラ22で撮影される画像のコントラストが強くなる。これによって、反射光の位置を求め、リーフの位置を求める処理が容易となる。
【符号の説明】
【0045】
1 通過領域、10 放射線照射部、12L,12R リーフ集合体、14,40,42,46,54,62 リーフ、16 患部、20 光源、22 カメラ(光検出部)、24 解析部、26 駆動機構、28 反射面、28-1 第1反射面、28-2 第2反射面、30 上側ガイド、32 下側ガイド、34 オフセット領域、44 面取り傾斜面、50,52 傾斜面、58 第1傾斜面、60 第2傾斜面、64 凹み曲面、70 光路、100 照射ノズル、102 マルチリーフコリメータ(MLC)、104 リーフ駆動装置、a コリメート端面、b 上側横端面、c 下側横端面、d 縦端面。
図1
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図12