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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114721
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】四肢動物用の衣類
(51)【国際特許分類】
   A01K 13/00 20060101AFI20230810BHJP
【FI】
A01K13/00 J
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017193
(22)【出願日】2022-02-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】508179545
【氏名又は名称】東洋紡STC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 智之
(72)【発明者】
【氏名】表 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】小松 陽子
(57)【要約】
【課題】四肢動物に着用させた衣類に対し、四肢動物の胴回り方向に力が加わった場合でも四肢動物の生体情報を精度良く計測できる四肢動物用の衣類を提供する。
【解決手段】四肢動物の胴体周りに配置される衣類であって、前記衣類は、四肢動物の胴体周りに配置される帯状本体部と、該帯状本体部の肌側の面に形成された電極とを有しており、前記帯状本体部は、少なくとも前記電極が形成されている領域において該帯状本体部1cm当たりに対して該帯状本体部の厚み方向に5kgの荷重をかけたときに、厚みが10mm以上小さくなる四肢動物用の衣類。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
四肢動物の胴体周りに配置される衣類であって、
前記衣類は、
四肢動物の胴体周りに配置される帯状本体部と、
該帯状本体部の肌側の面に形成された電極と
を有しており、
前記帯状本体部は、少なくとも前記電極が形成されている領域において該帯状本体部1cm当たりに対して該帯状本体部の厚み方向に5kgの荷重をかけたときに、厚みが10mm以上小さくなる四肢動物用の衣類。
【請求項2】
前記帯状本体部は、発泡体を含む請求項1に記載の四肢動物用の衣類。
【請求項3】
前記帯状本体部は、厚みが11mm~50mmである請求項1または2に記載の四肢動物用の衣類。
【請求項4】
前記帯状本体部は、少なくとも前記電極が形成されている領域において該帯状本体部1cm当たりに対して該帯状本体部の厚み方向に5kgの荷重をかけたときに、非荷重時の厚みに対して50%以上圧縮されるものである請求項1~3のいずれかに記載の四肢動物用の衣類。
【請求項5】
前記帯状本体部は、長手方向の第一端に第1連結部材が配されており、長手方向の第二端に第2連結部材が配されている請求項1~4のいずれかに記載の四肢動物用の衣類。
【請求項6】
前記帯状本体部は、下記条件による5%伸張時の引張強さが2.8N/cm以下であり、10%伸張時の引張強さが4.0N/cm以下である請求項1~5のいずれかに記載の四肢動物用の衣類。
[条件]
引張試験機を用いてチャック間の中心に前記帯状本体部の中心を配置し、且つチャック間距離が45cmとなるように前記帯状本体部をチャックで挟み、引張速度を100mm/分で伸長を行い、引張強さを測定する。
【請求項7】
前記帯状本体部は、肌側の面とは反対側に、該帯状本体部の上に配置される締付け部材が配されている請求項1~6のいずれかに記載の四肢動物用の衣類。
【請求項8】
前記締付け部材は、前記帯状本体部に脱着可能に構成されている請求項7に記載の四肢動物用の衣類。
【請求項9】
前記帯状本体部は、肌側の面に平均摩擦係数MIUが0.40以上である高摩擦部を有している請求項1~8のいずれかに記載の四肢動物用の衣類。
【請求項10】
前記衣類は、前記帯状本体部の肌側の面に更にベース生地を有しており、
前記電極は、前記ベース生地の肌側の面に形成されている請求項1~8のいずれかに記載の四肢動物用の衣類。
【請求項11】
前記帯状本体部と前記ベース生地は、互いに固定されていない非固定領域を有し、
前記電極は、前記非固定領域に形成されている請求項10に記載の四肢動物用の衣類。
【請求項12】
前記ベース生地は、肌側の面に平均摩擦係数MIUが0.40以上である高摩擦部を有している請求項10または11に記載の四肢動物用の衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、四肢動物の衣類に関するものであり、詳細には、四肢動物の胴体周りに配置することにより四肢動物の生体情報を計測できる衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヘルスモニタリング分野や医療分野、療育分野、リハビリテーション分野において、人間が着用することにより生体情報を計測できる衣類が注目されている。また、近年では、ペットや家畜として飼っている犬、猫、牛などの四肢動物の健康状態を把握するために、四肢動物の生体情報を計測したいというニーズがある。そこで本発明者らは、特許文献1において、身体接触型の電極、コネクタ、電極とコネクタを接続する電気配線を有する衣服本体と、前記コネクタに着脱可能な電子ユニットを少なくとも構成要素とする動物用の生体情報計測用衣服を提案した。また、本発明者らは、特許文献2において、牛の健康状態を把握するための牛用の生体情報計測衣類を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/035420号
【特許文献2】国際公開第2021/153329号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1、2において提案されている衣類を四肢動物の胴体周りに着用させて四肢動物の生体情報を測定する際には、衣類の肌側の面に形成されている電極と四肢動物の身体とを密着させると共に、衣類が四肢動物の身体からズレないように、四肢動物の胴回り方向に衣類を締付ける必要がある。
【0005】
ところで、四肢動物は、体表面に虫などの異物が付着したり、ストレスを感じたり、寒さを感じたときなど、身体を震わせることがある。四肢動物が身体を震わせると、四肢動物の身体は胴体周りの方向に大きく動く。そのため、四肢動物に着用させた衣類の胴回り方向への締付けをきつくしても、四肢動物が身体を震わせると、四肢動物の肌に接触していた電極が、所定の位置からズレてしまい、生体情報の計測精度が低下することがあった。また、四肢動物が横臥すると、四肢動物に着用させた衣類に四肢動物の胴回り方向への力が加わり、四肢動物の肌に接触していた電極が所定の位置からズレてしまい、生体情報の計測精度が低下することがあった。また、衣類を着用している四肢動物に、例えば他の四肢動物等が接触すると、四肢動物が着用している衣類に対し、四肢動物の胴回り方向へ力が加わることがあった。
【0006】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、四肢動物に着用させた衣類に対し、四肢動物の胴回り方向に力が加わった場合でも四肢動物の生体情報を精度良く計測できる四肢動物用の衣類を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の通りである。
[1] 四肢動物の胴体周りに配置される衣類であって、前記衣類は、四肢動物の胴体周りに配置される帯状本体部と、該帯状本体部の肌側の面に形成された電極とを有しており、
前記帯状本体部は、少なくとも前記電極が形成されている領域において該帯状本体部1cm当たりに対して該帯状本体部の厚み方向に5kgの荷重をかけたときに、厚みが10mm以上小さくなる四肢動物用の衣類。
[2] 前記帯状本体部は、発泡体を含む[1]に記載の四肢動物用の衣類。
[3] 前記帯状本体部は、厚みが11mm~50mmである[1]または[2]に記載の四肢動物用の衣類。
[4] 前記帯状本体部は、少なくとも前記電極が形成されている領域において該帯状本体部1cm当たりに対して該帯状本体部の厚み方向に5kgの荷重をかけたときに、非荷重時の厚みに対して50%以上圧縮されるものである[1]~[3]のいずれかに記載の四肢動物用の衣類。
[5] 前記帯状本体部は、長手方向の第一端に第1連結部材が配されており、長手方向の第二端に第2連結部材が配されている[1]~[4]のいずれかに記載の四肢動物用の衣類。
[6] 前記帯状本体部は、下記条件による5%伸張時の引張強さが2.8N/cm以下であり、10%伸張時の引張強さが4.0N/cm以下である[1]~[5]のいずれかに記載の四肢動物用の衣類。
[条件] 引張試験機を用いてチャック間の中心に前記帯状本体部の中心を配置し、且つチャック間距離が45cmとなるように前記帯状本体部をチャックで挟み、引張速度を100mm/分で伸長を行い、引張強さを測定する。
[7] 前記帯状本体部は、肌側の面とは反対側に、該帯状本体部の上に配置される締付け部材が配されている[1]~[6]のいずれかに記載の四肢動物用の衣類。
[8] 前記締付け部材は、前記帯状本体部に脱着可能に構成されている[7]に記載の四肢動物用の衣類。
[9] 前記帯状本体部は、肌側の面に平均摩擦係数MIUが0.40以上である高摩擦部を有している[1]~[8]のいずれかに記載の四肢動物用の衣類。
[10] 前記衣類は、前記帯状本体部の肌側の面に更にベース生地を有しており、前記電極は、前記ベース生地の肌側の面に形成されている[1]~[8]のいずれかに記載の四肢動物用の衣類。
[11] 前記帯状本体部と前記ベース生地は、互いに固定されていない非固定領域を有し、前記電極は、前記非固定領域に形成されている[10]に記載の四肢動物用の衣類。
[12] 前記ベース生地は、肌側の面に平均摩擦係数MIUが0.40以上である高摩擦部を有している[10]または[11]に記載の四肢動物用の衣類。
【発明の効果】
【0008】
本発明の四肢動物用の衣類によれば、四肢動物が着用している衣類に対し、四肢動物の胴回り方向に力が加わった場合でも四肢動物の生体情報を精度良く計測できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態に係る衣類は、四肢動物の胴体周りに配置される衣類であって、四肢動物の胴体周りに配置される帯状本体部と、該帯状本体部の肌側の面に形成された電極とを有している。そして、前記帯状本体部は、少なくとも前記電極が形成されている領域において該帯状本体部1cm当たりに対して該帯状本体部の厚み方向に5kgの荷重をかけたときに、厚みが10mm以上小さくなるものである。これにより、電極の位置がズレ難くなるため、生体情報の測定精度が向上する。即ち、帯状本体部の素材としてある程度の厚みがあり、しかも荷重に応じて変形しやすいものを選択することにより、四肢動物が着用している衣類に対し、四肢動物の胴回り方向に力が加わっても帯状本体部が身体の動きに追随して変形し、帯状本体部が緩衝材として作用する。そのため、帯状本体部の肌側の面に形成された電極は、四肢動物の肌に密着した状態を維持でき、生体情報を計測できる。
【0010】
帯状本体部1cm当たりに対して該帯状本体部の厚み方向に5kgの荷重をかけたときの厚みは、15mm以上小さくなることが好ましく、より好ましくは20mm以上である。帯状本体部の厚み方向に5kgの荷重をかけたときの厚みは、できるだけ小さくなることが好ましい。帯状本体部の厚み方向に5kgの荷重をかけたときに小さくなる厚みの上限は、荷重をかける前における帯状本体部の厚みによるが、例えば、45mm以下が好ましい。
【0011】
本発明の実施形態に係る衣類は、少なくとも電極が形成されている領域に配される帯状本体部の厚みが、上記の範囲を満足していればよく、電極が形成されている領域を含む帯状本体部全体の厚みが、上記の範囲を満足していてもよい。
【0012】
帯状本体部は、少なくとも前記電極が形成されている領域において該帯状本体部1cm当たりに対して該帯状本体部の厚み方向に5kgの荷重をかけたときに、非荷重時の厚みに対して50%以上圧縮されるものが好ましい。非荷重時の厚みに対して圧縮される割合は、60%以上がより好ましく、更に好ましくは70%以上であり、特に好ましくは80%以上である。非荷重時の厚みに対して圧縮される割合の上限は特に限定されず、100%未満であればよく、98%以下がより好ましく、更に好ましくは95%以下、特に好ましくは90%以下である。
【0013】
本発明の実施形態に係る衣類は、少なくとも電極が形成されている領域に配される帯状本体部の圧縮割合が、上記の範囲を満足していればよく、電極が形成されている領域を含む帯状本体部全体の圧縮割合が、上記の範囲を満足していてもよい。
【0014】
帯状本体部の素材は特に限定されないが、例えば、発泡体や網状構造体を含むことが好ましく、発泡体を含むことがより好ましく、発泡体のみで構成されることも好ましい。発泡体や網状構造体を用いることにより帯状本体部を厚くしても軽量化できるため、四肢動物に着用させたときの負担を軽減できる。また、発泡体を用いることにより保温効果を高めることもできる。
【0015】
発泡体を形成する材料としては、例えば、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル、ユリア樹脂、シリコーン、ポリイミド、メラミン樹脂などが挙げられる。これらのなかでもポリウレタンが好ましい。
【0016】
発泡体は、例えば、メッシュ状でもよい。これにより、通気性を高められるため、夏場でも快適に着用できる。
【0017】
網状構造体とは、熱可塑性樹脂からなる線状体が、該線状体の交点で融着して網状を形成している構造を有する。
【0018】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂、ポリエステル系熱可塑性樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン系熱可塑性樹脂、ポリウレタン系熱可塑性樹脂、ポリアミド系熱可塑性樹脂などが挙げられる。中でも、柔軟性に優れることから前記熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂、ポリエステル系熱可塑性樹脂またはエチレン酢酸ビニル共重合体が好ましく、より好ましくはポリオレフィン系熱可塑性樹脂である。これらの熱可塑性樹脂は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
線状体の形状は特に限定されず、線状体の内部は中実または中空のいずれであってもよく、線状体の断面形状は円形または異形のいずれであってもよい。
【0020】
線状体の繊維径は、例えば、0.20mm以上、より好ましくは0.22mm以上、更に好ましくは0.24mm以上であり、1.0mm以下、より好ましくは0.50mm以下、更に好ましくは0.35mm以下である。
【0021】
網状構造体としては、例えば、東洋紡社製「ブレスエアー(登録商標)」、呉羽テック社製「クレバルカー(登録商標)」、旭化成社製「フュージョン(登録商標)」等の市販品や、これらの圧縮体が好ましく用いられる。
【0022】
帯状本体部の厚みは特に限定されないが、例えば、11mm~50mmが好ましい。帯状本体部の厚みが11mm以上であることにより、四肢動物の動きが吸収されやすくなるため、電極がズレにくくなり、生体情報の測定精度が向上する。帯状本体部の厚みは、15mm以上がより好ましく、更に好ましくは20mm以上である。しかし、帯状本体部が厚くなり過ぎると重くなるため、四肢動物への負担が大きくなる。従って帯状本体部の厚みは、50mm以下が好ましい。帯状本体部の厚みは、45mm以下がより好ましく、更に好ましくは40mm以下である。
【0023】
帯状本体部は、長手方向の第一端に第1連結部材が配されており、長手方向の第二端に第2連結部材が配されていることが好ましい。第1連結部材と第2連結部材を接続することにより、四肢動物の胴回りに帯状本体部を固定できる。
【0024】
第1連結部材と第2連結部材としては、例えば、マジックテープ(登録商標)やフリーマジックテープ(登録商標)等の面ファスナー、バックル、ボタン、ホック、ファスナー等が挙げられる。
【0025】
第1連結部材と第2連結部材は、直接接続してもよいし、第1連結部材と第2連結部材の間に、帯状の長さ調節部材を配して間接的に接続してもよい。第1連結部材と第2連結部材の間に、長さ調節部材を配し、長さを調節することにより、四肢動物の胴回りの長さが長くても衣類を着用させることができる。長さ調節部材としては、例えば、マジックテープ(登録商標)やフリーマジックテープ(登録商標)等の面ファスナー、アジャスター、コキなどが挙げられる。
【0026】
帯状本体部は、下記条件による5%伸張時の引張強さが2.8N/cm以下であり、10%伸張時の引張強さが4.0N/cm以下であることが好ましい。帯状本体部の引張強さが上記範囲を満足することにより、四肢動物の成長に応じて帯状本体部が伸長しやすくなる。その結果、長期間に亘って四肢動物に衣類を着用させることができる。また、衣類による圧迫を低減できるため、四肢動物の皮膚の異常や、毛色の変色等を低減できる。
[条件] 引張試験機を用いてチャック間の中心に前記帯状本体部の中心を配置し、且つチャック間距離が45cmとなるように前記帯状本体部をチャックで挟み、引張速度を100mm/分で伸長を行い、引張強さを測定する。
【0027】
四肢動物のなかでも、特に仔牛や仔馬は成長速度が早く、一日単位で身体の周長が大きくなるため、仔牛や仔馬用の衣類とする際に上記範囲を満足する帯状本体部を用いることが好ましい。
【0028】
5%伸長時の引張強さは、2.0N/cm以下がより好ましく、更に好ましくは1.4N/cm以下である。5%伸長時の引張強さの下限は特に限定されないが、例えば、0.2N/cm以上である。これにより、帯状本体部に形成されている電極と四肢動物の身体との密着性を向上させることができる。5%伸長時の引張強さは0.3N/cm以上がより好ましく、更に好ましくは0.4N/cm以上である。
【0029】
10%伸長時の引張強さは、3.0N/cm以下がより好ましく、更に好ましくは2.0N/cm以下である。10%伸長時の引張強さの下限は特に限定されないが、例えば、0.8N/cm以上である。これにより、帯状本体部に形成されている電極と四肢動物の身体との密着性を向上させることができる。10%伸長時の引張強さは0.9N/cm以上がより好ましく、更に好ましくは1.0N/cm以上である。
【0030】
引張試験のチャック間において、帯状本体部の幅方向Yの長さが均一で無い場合、引張強さ(N/cm)を算出するに当たっては、上記チャック間における幅方向Yの平均幅を求めて、その平均幅で荷重(N)を除すことにより引張強さ(N/cm)を求めることができる。平均幅は、幅方向Yの長さが異なる複数の領域の幅方向Yの長さの平均である。当該平均幅は、チャック間距離(45cm)に対する各領域の体周方向X長さの割合と、各領域の幅方向Yの長さとをそれぞれ乗じた数の合計を求めることにより算出することができる。
【0031】
帯状本体部は、肌側の面とは反対側に、該帯状本体部の上に四肢動物の胴回りを締付ける締付け部材が配されていてもよい。締付け部材を用いて締め付けることにより、電極と四肢動物との密着性を高めることができるため、生体情報の測定精度が向上する。
【0032】
締付け部材は、長尺状であり、例えば、紐、ロープ、ベルトなどが挙げられる。締付け部材は、伸縮性を有していなくてもよいが、伸縮性を有していることが好ましい。締付け部材が伸縮性を有していることにより、四肢動物に接触している電極が身体に密着した状態を維持できる。伸縮性を有している締付け部材としては、例えば、ゴム紐を用いることができ、特に平ゴムを好適に用いることができる。
【0033】
締付け部材の両端部は、互いに連結できるように構成されていることが好ましい。締付け部材の両端部に、例えば、マジックテープ(登録商標)やフリーマジックテープ(登録商標)等の面ファスナー、ボタン、ホック、粘着テープ、バックル等の連結部材が配されていることが好ましい。
【0034】
締付け部材は、帯状本体部の肌側の面とは反対側の面側に配されていればよく、帯状本体部に固定されていてもよいし、非固定であってもよいし、脱着可能に構成されていてもよいが、脱着可能に構成されていることが好ましい。脱着可能に構成されることにより、衣類から締付け部材を取り外して衣類のみを洗濯、交換等したり、締付け部材のみを洗濯、交換等できる。締付け部材は、例えば、マジックテープ(登録商標)やフリーマジックテープ(登録商標)等の面ファスナー、ボタン、ホック等を用いて脱着可能とすることができる。
【0035】
帯状本体部は、肌側の面に平均摩擦係数MIUが0.40以上である高摩擦部を有していることが好ましい。高摩擦部を有していることにより、四肢動物の身体に対して衣類がズレ難くなるため、生体情報の測定精度を高めることができる。高摩擦部は、平均摩擦係数MIUが0.42以上であることがより好ましく、更に好ましくは0.44以上である。平均摩擦係数MIUは1.0以下であってもよく、0.8以下であってもよく、0.7以下であってもよく、0.6以下であってもよい。
【0036】
高摩擦部は、体周方向Xと幅方向Yの少なくとも一方における平均摩擦係数MIUが上記範囲を満たすことが好ましく、体周方向Xと幅方向Yの両方向における平均摩擦係数MIUが上記範囲を満たすことがより好ましい。
【0037】
高摩擦部として、細繊維が露出している生地を配することが好ましい。細繊維としては、マイクロファイバー、ナノファイバーが好ましく挙げられる。細繊維は、海島型複合繊維の海成分を溶解除去して得られたものであってもよい。細繊維の素材としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維等が好ましい。ポリエステル繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ステレオコンプレックスポリ乳酸等を含むものが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
細繊維の単繊維径は、好ましくは8μm以下、より好ましくは1000nm以下、更に好ましくは1000nm未満、更により好ましくは800nm以下、特に好ましくは750nm以下である。細繊維の単繊維径は、100nm以上であってもよく、300nm以上であってもよく、500nm以上であってもよい。
【0039】
細繊維の単繊維径は、樹脂包埋法により求めることができる。例えば、生地から取り出した糸一本の繊維束を真っ直ぐな状態にして樹脂で包埋し、繊維軸に対して直角方向に切断し、切片を切り出した後、電子顕微鏡により繊維断面を撮影する。この写真の繊維束の直径と写真倍率スケールから繊維断面の直径を求め、n=20の直径の算術平均値を求めて、これを細繊維の単繊維径とすることができる。細繊維としては、具体的には、帝人ファイバー株式会社製のナノフロント(登録商標)、東レ株式会社製のトレシー(登録商標)、KBセーレン株式会社製のベリーマ(登録商標)などを用いることができる。
【0040】
高摩擦部は、帯状本体部の肌側の面の一箇所に存在していてもよいし、二箇所以上に存在していてもよい。
【0041】
高摩擦部の面積率は、帯状本体部の肌側の面の露出面積を100面積%としたとき、5面積%以上が好ましく、より好ましくは10面積%以上である。これにより四肢動物が動いても帯状本体部がズレにくくなるため、測定精度が向上する。高摩擦部の面積率は、70面積%以下が好ましく、より好ましくは60面積%以下、更に好ましくは50面積%以下、特に好ましくは40面積%以下である。これにより装着時に位置を調整し易くすることができる。なお当該面積率は、高摩擦部が複数存在している場合には、合計の面積率である。
【0042】
高摩擦部は、電極の外縁から最短距離で1cm以上離れた領域に存在していることが好ましい。これにより帯状本体部の装着時に電極等の位置を調整し易くすることができる。当該最短距離は、より好ましくは2cm以上であり、更に好ましくは3cm以上である。当該最短距離は、50cm以下であってもよく、30cm以下であってもよく、20cm以下であってもよい。
【0043】
高摩擦部を構成する生地は、細繊維を含む糸と、弾性糸を含むことが好ましい。弾性糸は、ゴム状弾性を持った糸である。弾性糸は、モノフィラメント、マルチフィラメントのいずれも用いることができる。弾性糸として、具体的には、ポリウレタン弾性糸、ポリエステル系弾性糸、ポリオレフィン系弾性糸、天然ゴム糸、合成ゴム糸、伸縮性を有する複合繊維からなる糸等が挙げられる。弾性糸は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。これらのうちポリウレタン弾性糸は、糸の弾性、熱セット性、耐薬品性等に優れているため好ましい。ポリウレタン弾性糸として、例えば融着タイプのポリウレタン弾性糸、合着タイプのポリウレタン弾性糸等を用いることができる。弾性糸として、具体的には東レ・オペロンテックス株式会社製のライクラ(登録商標)ファイバー等が挙げられる。
【0044】
弾性糸は、破断伸度が100%以上であることが好ましく、200%以上であることがより好ましく、400%以上であることが更に好ましい。弾性糸の破断伸度は、1000%以下であってもよく、900%以下であってもよい。なお当該破断伸度は、例えば、引張後にチャック間距離が2倍になったときの伸度が100%である。
【0045】
高摩擦部を構成する生地は、上記弾性糸以外の糸(以下では、非弾性糸と呼ぶ)を含んでいてもよい。非弾性糸を含むことにより生地の伸び過ぎを防止できる。非弾性糸として、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン66、アラミド、アクリル、アクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアリレート、ポリベンザゾール等に代表される合成繊維のマルチフィラメント;レーヨン、アセテート、リヨセル、キュプラに代表される化学繊維(半合成繊維);綿、羊毛、シルクに代表される天然繊維;炭素繊維;等を含む糸が挙げられる。非弾性糸は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0046】
非弾性糸としては、フィラメント糸、紡績糸のいずれであってもよいがフィラメント糸が好ましい。フィラメント糸としては、マルチフィラメント糸が好ましく、ポリエチレンマルチフィラメント糸、ポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント糸、及びナイロン6マルチフィラメント糸よりなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、ポリエチレンマルチフィラメント糸が更に好ましい。
【0047】
高摩擦部を構成する生地を100質量%としたとき、弾性糸の混率は、5質量%以上であることが好ましい。これにより伸長時の引張強さを低減し易くすることができる。弾性糸の混率は、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上である。一方、弾性糸の混率は、60質量%以下であることが好ましい。これにより、生地の伸び過ぎに伴う摩擦力の低下を防止することができる。弾性糸の混率は、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
【0048】
高摩擦部を構成する生地は、織物、または編物であることが好ましい。例えば織物として、一重織物、多重織物が挙げられ、多重織物が好ましい。このうち細繊維を含む糸を裏糸に入れた二重織物がより好ましい。
【0049】
編物として、細繊維を含む糸を、肌側面に露出して肌に接触できるように挿入した挿入編物、パイル編物が好ましい。また、編物は、緯編物であってもよいし、経編物であってもよい。緯編物には丸編物も含まれる。緯編物の場合には、複数の編み糸を表と裏に編み分けるプレーテイング方式であって、片側に細繊維を含む糸が配置される編み方で得られるものが好ましい。丸編物の場合、天竺編、ベア天竺編、ウエルト天竺編等のシングルニットが好ましく、両面編(スムース編)や、少なくとも肌側面がオールニット組織であるダブルニットが好ましい。経編物の場合には、弾性糸を経方向に挿入したラッセル編でバック筬に細繊維を含む糸を挿入したサテンネット組織を有するものが好ましい。細繊維を含む糸が生地の肌側面に配置されるようにするためには、例えば細繊維を含む糸がミドル筬やバック筬に挿入組織で配置されることが好ましい。また、イベイションラップ組織を用いたり、シンカーループ面に細繊維を含む糸を配置させてもよい。イベイションラップ組織とは、挿入糸が生地に編み込まれることなく編地の表面に横たわる編組織を言い、例えば、日本マイヤー株式会社出版の経編全集を参照することができる。
【0050】
衣類は、帯状本体部の肌側の面に更にベース生地を有していてもよく、この場合、電極は、前記ベース生地の肌側の面に形成されていればよい。
【0051】
帯状本体部の肌側の面に更にベース生地を有することにより、積層構造となる。四肢動物が身震い等して身体を動かしたり、横臥した場合は、四肢動物の胴回り方向に力が働き、四肢動物が着用している衣類に対しても、四肢動物の胴回り方向に力が加わる。この場合であっても、ベース生地は、四肢動物の身体に接した状態を維持して動くが、ベース生地の上に配されている帯状本体部には四肢動物の身体の動きは伝わりにくいため、帯状本体部は四肢動物の胴回りの所定位置からズレにくくなる。また、本発明の衣類を着用している四肢動物に、例えば他の四肢動物等が接触し、四肢動物の胴回り方向に力が加わった場合には、四肢動物が着用している衣類に対しても、四肢動物の胴回り方向に力が加わる。この場合には、ベース生地の上に配されている帯状本体部は外力に応じて動くが、ベース生地は四肢動物の身体に接した状態を維持するため、ベース生地に配されている電極は四肢動物の胴回りの所定位置からズレにくくなる。その結果、生体情報の測定精度が向上する。
【0052】
ベース生地の素材としては、編物、織物、不織布等が挙げられる。これらのうち伸縮性に優れるため編物が好ましい。
【0053】
編物としては、緯編物または経編物が挙げられる。なお緯編物には丸編物も含まれる。緯編物(丸編物)としては、例えば、天竺編(平編)、ベア天竺編、ウエルト天竺編、フライス編(ゴム編)、パール編、片袋編、スムース編、タック編、浮き編、片畔編、レース編、添え毛編等が挙げられる。経編物としては、例えば、シングルデンビー編、開目デンビー編、シングルアトラス編、ダブルコード編、ハーフ編、ハーフベース編、サテン編、シングルトリコット編、ダブルトリコット編、ハーフトリコット編、シングルラッセル編、ダブルラッセル編、ジャガード編等が挙げられる。
【0054】
織物としては、例えば、平織り、綾織り、朱子織り等で形成された織物が挙げられる。また織物は、一重織物に限定されず、二重織物、三重織物等の多重織物であってもよい。なお、ベース生地は、メッシュ状に形成されていてもよい。
【0055】
ベース生地の厚みは特に限定されないが、例えば、1mm~10mmが好ましい。
【0056】
帯状本体部とベース生地は、互いに固定されていてもよいが、互いに固定されていない非固定領域を有することが好ましい。非固定領域を有する場合は、電極は、帯状本体部の非固定領域に形成されていればよい。これにより四肢動物が身震い等して身体を動かしたり、横臥したり、他の四肢動物等と接触しても、帯状本体部の非固定領域とベース生地は別々に動くため、ベース生地は四肢動物の身体に接した状態を維持しやすくなる。その結果、生体情報の測定精度が向上する。
【0057】
ベース生地は、肌側の面に平均摩擦係数MIUが0.40以上である高摩擦部を有していることが好ましい。高摩擦部を有していることにより、四肢動物の身体に対し、衣類がズレ難くなるため、生体情報の測定精度を高めることができる。高摩擦部は、平均摩擦係数MIUが0.42以上であることがより好ましく、更に好ましくは0.44以上である。一方、平均摩擦係数MIUは1.0以下であってもよく、0.8以下であってもよく、0.7以下であってもよく、0.6以下であってもよい。
【0058】
高摩擦部は、体周方向Xと幅方向Yの少なくとも一方における平均摩擦係数MIUが上記範囲を満たすことが好ましく、体周方向Xと幅方向Yの両方向における平均摩擦係数MIUが上記範囲を満たすことがより好ましい。
【0059】
衣類は、帯状本体部の肌側の面とは反対側の面に保護生地を有していてもよい。保護生地を有することにより、帯状本体部の劣化を抑制できる。
【0060】
保護生地の素材としては、上記ベース生地の素材として例示した、編物、織物、不織布等を用いることができる。保護生地の素材は、上記ベース生地の素材と異なってもよいし、同じであってもよい。保護生地の厚みは特に限定されないが、例えば、1mm~10mmが好ましい。
【0061】
帯状本体部と保護生地は、互いに固定されていてもよいし、互いに固定されていない非固定領域を有してもよい。
【0062】
保護生地を有する場合は、上記締付け部材は、保護生地の上に配されていればよく、保護生地に固定されていてもよいし、非固定であってもよいし、脱着可能に構成されていてもよいが、脱着可能に構成されていることが好ましい。
【0063】
電極は、(1)帯状本体部の肌側の面に形成されている絶縁層と、絶縁層の上に形成されている導電層とを備えるものであるか、(2)導電性組織で構成されており、導電性組織は、身丈方向または身幅方向に14.7Nの荷重をかけたときに、少なくとも一方の伸長率が3%以上60%以下であることが好ましい。
【0064】
(1)絶縁層と導電層を備える電極
絶縁層は、例えば、絶縁性を有する樹脂で構成すればよい。樹脂の種類は絶縁性を有するものであれば特に制限されないが、例えば、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステルエラストマー等を好ましく用いることができる。これらの中でも、ポリウレタン系樹脂がより好ましく、導電層との接着性に優れる。これらの樹脂は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0065】
絶縁層の形成方法は特に限定されないが、例えば、絶縁性を有する樹脂を、溶剤(好ましくは水)に溶解または分散させて、離型紙または離型フィルム上に塗布または印刷し、塗膜を形成し、該塗膜に含まれる溶剤を揮発させて乾燥させることによって形成できる。また、市販されている樹脂シートまたは樹脂フィルムを用いることもできる。絶縁層の平均膜厚は10~200μmが好ましい。
【0066】
導電層は、導通を確保するための層である。導電層は、導電フィラーと樹脂を含むものが好ましい。導電層に含まれる樹脂は、伸縮性を有することが好ましい。伸縮性を有する樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、天然ゴム、合成ゴム、エラストマー、シリコーンゴム、フッ素ゴム等が好ましく、硫黄原子を含有するゴムおよび/またはニトリル基を含有するゴムを少なくとも含むものがより好ましい。硫黄原子やニトリル基は、導電フィラー(特に金属粉)との親和性が高く、またゴムは伸縮性が高いため伸長時のクラック等の発生を回避し易くできる。また、導電フィラーを均一な分散状態で保持し易くすることができ、伸長時における電気抵抗の変化倍率を低減できる。硫黄原子を含有するゴムとしては、硫黄原子を含有するゴムの他、硫黄原子を含有するエラストマーが挙げられる。硫黄原子は、ポリマーの主鎖のスルフィド結合やジスルフィド結合、側鎖や末端のメルカプト基等の形で含有される。ニトリル基を含有するゴムとしては、ニトリル基を含有するゴムの他、ニトリル基を含有するエラストマーが挙げられる。特に、ブタジエンとアクリロニトリルの共重合体であるアクリロニトリルブタジエン共重合体ゴムが好ましく挙げられる。ニトリル基を含有するゴムとして用いることのできる市販品としては、日本ゼオン製の「Nipol(登録商標)1042」等が好ましく挙げられる。導電層に含まれる伸縮性を有する樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0067】
導電層の全樹脂中、硫黄原子を含有するゴムおよびニトリル基を含有するゴムの合計量は、95質量%以上が好ましく、より好ましくは98質量%以上、更に好ましくは99質量%以上である。
【0068】
導電フィラーとしては、例えば、金属粉、金属ナノ粒子、或いは金属粉以外の導電材料等を用いることができる。金属粉としては、例えば、銀粉、金粉、白金粉、パラジウム粉等の貴金属粉;銅粉、ニッケル粉、アルミニウム粉、真鍮粉等の卑金属粉;卑金属やシリカ等の無機物からなる異種粒子を銀等の貴金属でめっきしためっき粉;卑金属と銀等の貴金属で合金化した合金化卑金属粉;等が挙げられる。導電層に含まれる導電フィラーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0069】
導電層は、例えば各成分を有機溶剤に溶解または分散させた組成物(以下、導電性ペーストということがある)を用いて形成できる。
【0070】
導電層に占める樹脂(換言すれば、導電層形成用の導電性ペーストの全固形分に占める伸縮性を有する樹脂の固形分)の量は、5~50質量%が好ましく、より好ましくは10~40質量%である。一方、導電層に占める導電フィラーの量は、50~95質量%が好ましく、より好ましくは60~90質量%である。これにより導電性と伸縮性を両立し易くすることができる。
【0071】
導電層は、各成分を有機溶剤に溶解または分散させた組成物(導電性ペースト)を用い、絶縁層上に直接形成するか、所望のパターンに塗布または印刷して塗膜を形成し、該塗膜に含まれる有機溶剤を揮散させて乾燥させることによって形成できる。
【0072】
導電層は、例えば、導電性ペーストを離型シート等の上に塗布または印刷して塗膜を形成し、該塗膜に含まれる有機溶剤を揮散させて乾燥させることによって予めシート状の導電層を形成しておき、それを所望のパターンで絶縁層上に積層してもよい。
【0073】
導電層の乾燥膜厚は、10~150μmが好ましく、より好ましくは20~130μm、更に好ましくは30~100μmである。これにより耐久性と着心地のよさとを両立し易くすることができる。
【0074】
導電層のうち四肢動物の身体に接する部分(電極部)及びコネクタの接続部等のむき出しになる部分以外は絶縁層で被覆しておくことが好ましい。かかる絶縁層を第二絶縁層と呼ぶ。第二絶縁層を設けることによって、例えば、雨、雪、汗等の水分が導電層に接触することを防止できる。
【0075】
第二絶縁層を構成する樹脂としては、上述した帯状本体部の肌側の面に形成されている絶縁層(以下では第一絶縁層と呼ぶ)を構成する樹脂の記載を参照することができる。第二絶縁層を構成する樹脂は、第一絶縁層を構成する樹脂と、同じであってもよいし、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。同じ樹脂を用いることによって、導電層と絶縁層の伸縮時における応力の偏りによる導電層の損傷を低減できる。第二絶縁層は、第一絶縁層と同じ形成方法で形成できる。第二絶縁層の平均膜厚は10~200μmが好ましい。
【0076】
(2)導電性組織で構成される電極
電極は、導電性組織で構成されており、導電性組織は、身丈方向または身幅方向に14.7Nの荷重をかけたときに、少なくとも一方の伸長率が3%以上60%以下であることが好ましい。伸長率が3%以上であることにより、電極が帯状本体部の動きに追従し易くなり、電極が帯状本体部から剥がれ難くなる。伸長率は、5%以上がより好ましく、更に好ましくは10%以上である。一方、伸長率が60%以下であることにより、電極の伸び過ぎによる生体情報の測定精度の低下を防止し易くなる。伸長率は、55%以下がより好ましく、更に好ましくは50%以下である。
【0077】
伸長率は、例えば、所定のサイズの試験片を採取して、それをインストロン型引張試験機に取付け、300mm/分の速度で14.7Nの荷重をかけることにより測定できる。
【0078】
導電性組織で構成される電極としては、例えば、基材繊維に導電性高分子を被覆した導電性繊維または導電糸;銀、金、銅、ニッケル等の導電性金属により表面を被覆した繊維;導電性金属の微細線からなる導電糸;導電性金属の微細線と非導電性繊維とを混紡した導電糸;等を用いた織物、編物、不織布が挙げられる。導電性組織で構成される電極としては、上記導電糸を非導電性の布帛に刺繍したものも用いることができる。
【0079】
本発明の実施形態に係る衣類は、心電情報測定用であることが好ましい。本発明の衣類は、電極の位置がズレ難いものであるため、心電情報の測定に好適に用いることができる。
【0080】
本発明の実施形態に係る衣類は、電極で取得した電気信号を演算する機能を有する電子機器を備えることが好ましい。電極で取得した電気信号を電子機器で演算、処理することにより、例えば、心電、心拍数、脈拍数、呼吸数、血圧、体温、筋電、発汗等の生体情報が得られる。
【0081】
電子機器は、衣類に着脱できることが好ましい。電子機器は、例えば、帯状本体部の肌側の面に電子機器接続部を形成しておき、スナップファスナー等のコネクタを介して帯状本体部の肌側の面に取り付けることが好ましい。電子機器は、更に、表示手段、記憶手段、通信手段、USBコネクタ等を有することが好ましい。電子機器は、更に、気温、湿度、気圧等の環境情報を計測できるセンサや、GPSを用いた位置情報を計測できるセンサ等を有してもよい。
【0082】
本発明の実施形態に係る衣類によれば、例えば、二つ以上の生体情報計測用電極を衣類の肌側の面に形成することにより、心電位、筋電位等を測定できる。
【0083】
本発明の実施形態に係る衣類は、該衣類の肌側の面や反対側の面に非接触電極を設けて、身体のインピーダンス変化を測定することにより脈拍、呼吸、運動状態などを計測することも可能である。
【0084】
本発明の実施形態に係る衣類は、胸部、腹部、背部、前脚部、後脚部、頸部、及び顔部のうち少なくとも一部を覆うものが好ましく、胸部、及び腹部のうち少なくとも一部を覆うものであることがより好ましい。
【0085】
本発明の実施形態に係る衣類を着用させる四肢動物としては、サンショウウオ、カエル等の両生類、ワニ、トカゲ、ヘビ、カメ、イグアナ等の爬虫類、または哺乳類であり、これらのなかでも哺乳類が好ましい。哺乳類としては、人間を除き、例えば、畜産用の四肢動物、酪農用の四肢動物、ペット用の四肢動物等が挙げられ、具体的には、牛、羊、馬、豚、犬、猫などが挙げられる。