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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114725
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】雄刃装置
(51)【国際特許分類】
   B23D 19/00 20060101AFI20230810BHJP
   B21D 39/02 20060101ALI20230810BHJP
   B23D 19/02 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
B23D19/00 A
B21D39/02 F
B23D19/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017202
(22)【出願日】2022-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】木村 栄昭
(72)【発明者】
【氏名】坂井 裕貴
【テーマコード(参考)】
3C039
【Fターム(参考)】
3C039CA01
3C039CA08
3C039CA13
3C039CB02
(57)【要約】
【課題】 補修コストを抑え得る雄刃装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 雄刃装置1は、軸線Lx回りに回転するローラ10と、ローラ10に取り付けられて金属板MPをかしめる少なくとも1つの刃部20と、を備え、刃部20は、ローラ10に固定される固定部21と、固定部21に着脱可能に取り付けられてローラ10の外周面13fから径方向外側に突出する刃先部22と、を含み、雄刃装置1を軸線Lxに沿って見る場合に、刃先部22の先端22Tが刃先部22の幅方向Wにおける中央よりもローラ10の回転方向R1側にずれている。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デッキプレートの製造に際して、雌刃装置との間に互いに折り重ねられた金属板を挟むことによって前記金属板同士をかしめて連結する回転型の雄刃装置であって、
軸線回りに回転するローラと、
前記ローラに取り付けられて前記金属板をかしめる少なくとも1つの刃部と、
を備え、
前記刃部は、
前記ローラに固定される固定部と、
前記固定部に着脱可能に取り付けられて前記ローラの外周面から径方向外側に突出する刃先部と、を含み、
前記雄刃装置を前記軸線に沿って見る場合に、前記刃先部の先端が前記刃先部の幅方向における中央よりも前記ローラの回転方向側にずれている
ことを特徴とする雄刃装置。
【請求項2】
前記刃先部には、前記刃先部を前記固定部に固定する締結具を挿通するための1つの挿通孔が形成されており、
前記雄刃装置を前記軸線に沿って見る場合に、前記挿通孔の中心は、前記刃先部の幅方向における中央を通り前記幅方向に垂直な直線上に位置している
ことを特徴とする請求項1に記載の雄刃装置。
【請求項3】
前記刃先部には、前記刃先部を前記固定部に固定する締結具を挿通するための複数の挿通孔が形成されており、
前記雄刃装置を前記軸線に沿って見る場合に、前記複数の挿通孔は、前記刃先部の幅方向における中央を通り前記幅方向に垂直な直線に対して線対称の位置関係にある
ことを特徴とする請求項1に記載の雄刃装置。
【請求項4】
前記雄刃装置は、複数の前記刃部を備え、
複数の前記刃部は、前記ローラの周方向において等間隔に配置されている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の雄刃装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雄刃装置に関し、具体的には、デッキプレートの製造の際に雌刃装置に対向して配置される回転型の雄刃装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄筋コンクリート床材等として用いられるデッキプレートが知られている。デッキプレートは、一枚の金属板を曲げ成形することによって、平板状の平板部と平板部に垂直な補強リブとが交互に並んだ構造を有する(例えば、特許文献1参照)。このようなデッキプレートの補強リブのそれぞれは、平板部の長手方向に平行な直線状の板部分を二重にしてなる垂直ウェブ部(板合わせ部)と、この垂直ウェブ部の端部に位置して長手方向に沿って延びるフランジ部とを含んでおり、フランジ部の長手方向に垂直な横断面は三角形状となっている。
【0003】
補強リブの板合わせ部は、デッキプレートにコンクリートを打設した際に、そのコンクリートの重量により拡開して変形することがあり、板合わせ部の拡開を防止する必要がある。そのため、デッキプレートの製造工程において、補強リブを挟んで互いに対向して配置された回転型の雄刃装置と固定型の雌刃装置とを協働させることによって、補強リブの板合わせ部を切り出してかしめて、二重の金属板同士を連結している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭60-89325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
雄刃装置の刃は、補強リブの板合わせ部を切り出しかしめる際に破損することがあり、このような場合には別の刃に取り替える必要がある。雄刃装置の刃のうち破損する部位は、板合わせ部に接触して当該板合わせ部を切り出す刃先である場合が多い。しかしながら、従来の雄刃装置では、雄刃装置のうち刃先等の一部のみが破損した場合であっても刃全体を交換する必要があった。そのため、雄刃装置の補修コストを抑えたいという要望がある。
【0006】
そこで、本発明は、補修コストを抑え得る雄刃装置を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的の達成のため、本発明は、デッキプレートの製造に際して、雌刃装置との間に互いに折り重ねられた金属板を挟むことによって前記金属板同士をかしめて連結する回転型の雄刃装置であって、軸線回りに回転するローラと、前記ローラに取り付けられて前記金属板をかしめる少なくとも1つの刃部と、を備え、前記刃部は、前記ローラに固定される固定部と、前記固定部に着脱可能に取り付けられて前記ローラの外周面から径方向外側に突出する刃先部と、を含み、前記雄刃装置を前記軸線に沿って見る場合に、前記刃先部の先端が前記刃先部の幅方向における中央よりも前記ローラの回転方向側にずれていることを特徴とするものである。
【0008】
なお、前記刃先部には、前記刃先部を前記固定部に固定する締結具を挿通するための1つの挿通孔が形成されており、前記雄刃装置を前記軸線に沿って見る場合に、前記挿通孔の中心は、前記刃先部の幅方向における中央を通り前記幅方向に垂直な直線上に位置していてもよい。あるいは、前記刃先部には、前記刃先部を前記固定部に固定する締結具を挿通するための複数の挿通孔が形成されており、前記雄刃装置を前記軸線に沿って見る場合に、前記複数の挿通孔は、前記刃先部の幅方向における中央を通り前記幅方向に垂直な直線に対して線対称の位置関係にあってもよい。
【0009】
また、前記雄刃装置は、複数の前記刃部を備え、複数の前記刃部は、前記ローラの周方向において等間隔に配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、補修コストを抑え得る雄刃装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態における雄刃装置を用いて、補強リブの板合わせ部を切り出して二重の金属板同士を連結している様子を概略的に示す平面斜視図である。
図2図1に示される雄刃装置を示す平面斜視図である。
図3図2に示される雄刃装置の底面図である。
図4図1に示される雄刃装置が備える刃部を示す平面図である。
図5図4に示されるV-V線に沿った断面図である。
図6図4に示される刃先部の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る雄刃装置を実施するための形態が添付図面とともに例示される。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、以下の実施形態から変更、改良することができる。また、上記添付図面では、理解を容易にするために各部材の寸法が誇張して示されていたり縮小して示されていたりする場合がある。
【0013】
雄刃装置について説明する前に、雄刃装置によって加工(切り出しやかしめ等)されるデッキプレートについて説明する。図1は、本実施形態の雄刃装置1を用いて、デッキプレート8における補強リブ81の板合わせ部82を切り出して二重の金属板同士を連結している様子を概略的に示す平面斜視図である。
【0014】
図1に示すように、デッキプレート8は、一枚の金属板MPが曲げ成形された部材であり、平板状の平板部80と平板部80に垂直な補強リブ81とが交互に並んだ構造を有する。補強リブ81のそれぞれは、板合わせ部82とフランジ部83とを含んでいる。板合わせ部82は、平板部80に垂直でかつ平板部80の長手方向に沿って延在する直線状の板部分が二重にされた部分である。フランジ部83は、板合わせ部82の端部に位置しており、平板部80の長手方向に沿って延びている。フランジ部83の長手方向に垂直な断面は概ね三角形状である。
【0015】
次に雄刃装置1について説明する。図1に示すように、雄刃装置1は、固定型の雌刃装置3との間に上述の板合わせ部82を挟むことによって二重の金属板MP同士を切り出してかしめて連結する、回転型の装置である。なお、雌刃装置3については後に再び言及する。
【0016】
図2は雄刃装置1を示す平面斜視図であり、図3は雄刃装置1を示す底面図である。図2及び図3に示すように、雄刃装置1は、ローラ10と、ローラ10に取り付けられる少なくとも1つ(本実施形態では、4つ)の刃部20と、を備えている。なお、刃部20の数は特に限定されない。また、図2では、便宜上、1つの刃部20のみが示されている。
【0017】
図2に示すように、ローラ10は、中空円筒状の小径円筒部11と、中空の円錐台部12と、小径円筒部11よりも大きな直径を有する中空円筒状の大径円筒部13と、を含んでいる。小径円筒部11と、円錐台部12と、大径円筒部13とは、共通の軸線Lxを有しており、軸線Lxの方向における上から下に向かって、小径円筒部11、円錐台部12、及び大径円筒部13の順に配置されている。なお、ここで言う「上」「下」とは、軸線Lxの方向における位置関係を表すためのものであり、必ずしも鉛直方向における上下を表すものではない。
【0018】
小径円筒部11の中央に形成された内部空間10Sには、モータ等の動力源の回転軸(図示せず)が取り付けられている。この回転軸の中心軸は軸線Lxに一致しており、当該回転軸は円錐台部12の内部空間を貫通して、大径円筒部13の内部空間まで延びている。この回転軸が軸線Lx回りに回転することによって、ローラ10は、軸線Lx回りに時計回りに又は反時計回りに回転する。なお、図1図3では、ローラ10の回転方向R1が上方から見る場合において反時計回りの例が示されている。
【0019】
図2に示すように、円錐台部12は、軸線Lxの方向において小径円筒部11の下端から大径円筒部13の上端まで、次第に径方向外側に拡径するように形成されている。また、円錐台部12は、軸線Lxに沿った断面が台形状になるように形成されている。この円錐台部12によって、小径円筒部11と大径円筒部13とが連結されている。
【0020】
大径円筒部13は、刃部20が取り付けられる部分であると共に、デッキプレート8の平板部80を臨む部分である。つまり、図3に示される大径円筒部13の底面13Bは、ローラ10の底面を構成しており、図1に示すように、デッキプレート8を加工する際には、この底面13Bが平板部80に接するように雄刃装置1がデッキプレート8上に配置される。
【0021】
図2及び図3に示すように、大径円筒部13の底面13Bには、少なくとも1つ(本実施形態では4つ)の切り欠き13nが形成されている。本実施形態では、4つの切り欠き13nはそれぞれ概ね同じ寸法及び形状に形成されており、ローラ10の周方向において等間隔に(すなわち、90度の間隔で)形成されている。本実施形態では、切り欠き13nのそれぞれは、概ね直方体状になるように大径円筒部13の全高の概ね半分の高さに亘って形成されている。それぞれの切り欠き13nの上方には、それぞれの切り欠き13nに連通する少なくとも1つ(本実施形態では2つ)の孔10hが形成されている。孔10hを形成する大径円筒部13の内周面には、後述するネジやボルト等の締結具B1を螺合するための溝(図示せず)が形成されている。これら切り欠き13nのそれぞれに、刃部20が装着されている。すなわち、本実施形態では、4つの刃部20は、ローラ10の周方向において等間隔に(すなわち、90度の間隔で)配置されている。
【0022】
次に、刃部20について説明する。図4は、4つの刃部20のうち図3において右側に位置する刃部20Aの平面図であり、より具体的には、雄刃装置1を上方から軸線Lx方向に沿って見た場合における刃部20Aの透視図である。図5は、図4に示されるV-V線に沿った断面図である。なお、4つの刃部20はそれぞれ同じ構成を有するため、以下、刃部20Aについてのみ説明する。
【0023】
図3から図5に示すように、刃部20Aは、固定部21と刃先部22とを含んでいる。
【0024】
固定部21は、軸線Lxに沿って見る場合に略矩形である板状の部材であり、刃部20Aの幅方向Wの中央を通り幅方向Wに垂直な直線Lcに対して線対称の外形を有している。なお、直線Lcは、上述のV-V線に一致する。固定部21は、ローラ10の内周側の側面21Cと外周側の側面21Dとを含んでいる。内周側の側面21Cは、軸線Lxに沿って見る場合に幅方向Wに平行な直線状であり、当該側面21Cの両端の角はカットされている。外周側の側面21Dは、軸線Lxに沿って見る場合に径方向外側に凸となる曲面状であり、図3に示すように、側面21Dの曲率は大径円筒部13の外周面13fの曲率よりも小さい。
【0025】
固定部21のうち内周側の側面21Cを含む第1部分21Aは、固定部21の大部分を占めており、軸線Lxに沿って見る場合に大径円筒部13と重なっている。第1部分21Aのうち直線Lcの方向における中央よりも内周側の部分には、固定部21を貫通して上述の大径円筒部13の孔10hに連通する2つの貫通孔21h1が形成されている。2つの貫通孔21h1は、直線Lcに対して線対称の位置に形成されている。図4及び図5に示すように、貫通孔21h1のうち下方の領域は、貫通孔21h1の他の領域に比べて拡径している拡径領域21h1aとなっている。なお、図4では、拡径領域21h1aの外縁が破線で示されている。図2及び図3に示すように、拡径領域21h1aを下方に向けた状態で固定部21を大径円筒部13の切り欠き13nにはめ込むと、固定部21の2つの貫通孔21h1と大径円筒部13の2つの孔10hとがそれぞれ連通する。この状態を維持しつつ拡径領域21h1a側から締結具B1を貫通孔21h1に挿入して、締結具B1の先端を孔10hの内周面に形成された上述の溝に螺合させることによって、固定部21が大径円筒部13に固定される。この際、締結具B1の頭部は拡径領域21h1aに収容される。
【0026】
上記のようにして固定部21が大径円筒部13に固定された状態において、固定部21のうち外周側の側面21Dを含む第2部分21Bは、図3に示すように、大径円筒部13の外周面13f(すなわち、ローラ10の外周面13f)から径方向外側にはみ出している。なお、図4では、第1部分21Aと第2部分21Bとの境界が便宜上破線で示されている。上記のように、外周側の側面21Dは大径円筒部13の外周面13fよりも緩く湾曲している。
【0027】
図4及び図5に示すように、固定部21の第1部分21Aのうち直線Lcの方向における中央よりも外周側の部分は、幅方向Wにおける両縁部を除いて、固定部21の全高の概ね半分の高さに亘って切り欠かれた切り欠き部21nとなっている。この切り欠き部21nは、図4に示すように、軸線Lxに沿って見る場合に概ね矩形状であり、図5に示すように、固定部21の両主面21f,21fに平行な底面21sと、底面21sに垂直な垂直面21pとによって規定されている。切り欠き部21nの底面21sには、少なくとも1つ(本実施形態では1つ)の孔21h2が形成されている。本実施形態では、この孔21h2の中心は直線Lc上に位置している。孔21h2を形成する固定部21の内周面には、後述するネジやボルト等の締結具B2を螺合するための溝が形成されている。
【0028】
図4及び図5に示すように、刃先部22は、固定部21の幅の半分よりも若干大きな幅を有する板状の部材であり、軸線Lxに沿って見る場合に概ね矩形状の基部22Aと概ね三角形状の先端部22Bとを含んでいる。
【0029】
図4に示すように、刃先部22の基部22Aは、軸線Lxに沿って見る場合に固定部21の外周側の側面21Dよりも内周側の部分であり、固定部21に重なっている。基部22Aは、上述の直線Lcに対して線対称の外形に形成されている。すなわち、直線Lcは、基部22Aの幅方向Wの中央を通っている。この基部22Aには、基部22Aを貫通する少なくとも1つ(本実施形態では1つ)の挿通孔22hが形成されている。本実施形態において、挿通孔22hの中心は直線Lc上に位置している。基部22Aは、固定部21の切り欠き部21nに対応する形状に形成されており、本実施形態では、切り欠き部21nに嵌合している。この嵌合状態において、基部22Aの挿通孔22hと固定部21の孔21h2とは連通している。図5に示すように、連通した挿通孔22h及び孔21h2に対して、挿通孔22h側から締結具B2が挿入されており、締結具B2の先端が上述した固定部21の内周面の溝に螺合されている。こうして、刃先部22は固定部21に着脱可能に取り付けられている。
【0030】
図4に示すように、刃先部22の先端部22Bは、軸線Lxに沿って見る場合に固定部21の外周側の側面21Dよりも外周側の部分であり、固定部21から外周側に突出している。先端部22Bは、直線Lcに対して非線対称の外形を有しており、先端部22Bの先端22Tは、軸線Lxに沿って見る場合に、刃先部22の幅方向Wにおける中央である直線Lcよりもローラ10の回転方向R1側にずれている。図2及び図3に示すように、刃先部22のうち基部22Aの一部及び先端部22Bは、大径円筒部13の外周面13fから径方向外側に突出している。
【0031】
以上説明したように、本実施形態に係る雄刃装置1は、軸線Lx回りに回転するローラ10と、ローラ10の外周面13fに設けられる4つの刃部20と、を備えており、刃部20のそれぞれは、ローラ10に固定される固定部21と、固定部21に着脱可能に取り付けられてローラ10の外周面13fから径方向外側に突出する刃先部22と、を含み、雄刃装置1を軸線Lxに沿って見る場合に、刃先部22の先端22Tが刃先部22の幅方向Wにおける中央よりもローラ10の回転方向R1側にずれている。
【0032】
次に、このような雄刃装置1の動作の一例及び雄刃装置1が奏する効果の一例について説明する。
【0033】
図1に示すように、デッキプレート8の製造設備において、雄刃装置1は、固定型の雌刃装置3に対向して配置されている。雌刃装置3のうち雄刃装置1の刃先部22に対向する部分は、回転方向R1に回転する刃先部22の先端部22Bが雌刃装置3内を通過できるように切り欠かれた切り欠き部31となっている。このような雄刃装置1と雌刃装置3との間には、デッキプレート8の板合わせ部82が介在している。また、デッキプレート8の製造設備では、デッキプレート8が搬送方向Tに搬送される。この搬送方向Tにおいて、互いに対向する雄刃装置1及び雌刃装置3よりも下流側には、板合わせ部82を挟んで互いに対向する一対の潰しローラ40が配置されている。一対の潰しローラ40は、回転方向R2に回転する。
【0034】
このような製造設備が動作すると、デッキプレート8が搬送方向Tに搬送され、雄刃装置1が回転方向R1に回転し、かつ、一対の潰しローラ40が回転方向R2に回転する。雄刃装置1が回転方向R1に回転することによって、搬送方向Tに搬送されるデッキプレート8における板合わせ部82のうち刃先部22が当接する部分が、刃先部22によって雌刃装置3の切り欠き部31内に短冊状に順次切り出される。このように、図1に示す製造設備では、板合わせ部82における二重の金属板MPが雄刃装置1と雌刃装置3との協働によって短冊状に切り出されてかしめられていく。ここで、雄刃装置1では、雄刃装置1を軸線Lxに沿って見る場合に、刃先部22の先端22Tが刃先部22の幅方向Wにおける中央よりもローラ10の回転方向R1側にずれている。このような構成によれば、雄刃装置を軸線Lxに沿って見る場合に刃先部の先端が刃先部の幅方向における中央に位置する場合やローラの回転方向側とは反対側にずれている場合に比べて、刃先部22の先端22Tが板合わせ部82に接触する時点における先端22Tの板合わせ部82へのアプローチ角度が大きくなる。このため、刃先部22が効果的に板合わせ部82に食い込み得る。したがって、板合わせ部82のうち刃先部22が当接する部分が、雌刃装置3の切り欠き部31内に良好に切り出されてかしめられ得る。
【0035】
切り出された二重の短冊状の金属板MPの部分は、下流側に配置されて回転方向R2に回転する一対の潰しローラ40によって順次潰されていく。こうして、板合わせ部82は、互いに拡開しないように連結され、デッキプレート8の補強リブ81が形成される。
【0036】
ところで、上記のようして金属板MPを切り出す場合、回転する雄刃装置の刃部の刃先が金属板MPとの接触や他の要因により摩耗したり破損したりすることがある。このような場合において、雄刃装置1の刃部20では、刃先部22が固定部21に対して着脱可能に取り付けられているため、刃部20全体を交換する必要がなく、刃先部22だけを交換すれば足りる。したがって、雄刃装置1によれば、補修コストを抑えることができる。
【0037】
また、図1では、雄刃装置1のローラ10の回転方向R1が反時計回りの例が示されているが、種々の事情により、ローラ10の回転方向R1を時計回りにすることが好ましい場合がある。この場合、上記の理由により、雄刃装置1を軸線Lxに沿って見る場合に、刃先部22の先端22Tが刃先部22の幅方向Wにおける中央よりもローラ10の新たな回転方向R1側にずれていることが好ましい。雄刃装置1の刃部20では、刃先部22が固定部21に対して着脱可能に取り付けられている。このため、雄刃装置1によれば、刃先部22を固定部21から一旦取り外して裏返しにした上で、裏返しにした刃先部22を固定部21に取り付け直すことによって、雄刃装置1を軸線Lxに沿って見る場合に、刃先部22の先端22Tが刃先部22の幅方向Wにおける中央よりもローラの新たな回転方向R1側(時計回り側)にずれた状態にすることができる。このように、雄刃装置1によれば、1種類の刃部20でローラ10の両回転方向に対応することができ、両回転方向に対応するために2種類の刃部を準備する必要がないため、部品コストを削減することができる。
【0038】
また、雄刃装置1の刃部20では、刃先部22を固定部21に固定する締結具B2を挿入するための挿通孔22hの中心が、雄刃装置1を軸線Lxに沿って見る場合に、刃先部22の幅方向Wにおける中央を通り幅方向Wに垂直な直線Lc上に位置している。このため、刃先部22を裏返した場合でも、挿通孔22hの位置が刃先部22を裏返す前から変化しない。そのため、ローラ10の両側の回転方向に対応するために、孔21h2の位置が異なる2種類の固定部21を準備する必要がなく、部品コストを削減することができる。
【0039】
また、雄刃装置1は、複数(4つ)の刃部20を備えており、これら4つの刃部20は、ローラ10の周方向において等間隔に配置されている。このような構成によれば、刃部20が1つの場合に比べて効果的に金属板MPを切り出すことができるとともに、それぞれの刃先部22に係る負担が分散されて刃先部22の寿命が向上し得る。また、複数の刃部20がローラ10の周方向において等間隔に配置されているため、雄刃装置1の重心が軸線Lxからずれ難い。
【0040】
以上、本発明について上記実施形態を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0041】
例えば、上記実施形態では、刃先部22に1つの挿通孔22hが形成される例を説明した。しかし、挿通孔22hの数は複数(2つ、或いは3つ以上)であってもよい。例えば、変形例として、図6に示すような刃先部22´を構成してもよい。この変形例に係る刃先部22´は、挿通孔22hの数が2つであることを除いて刃先部22と同じ構成を有する。2つの挿通孔22hは、雄刃装置1を軸線Lxに沿って見る場合に、刃先部22´の幅方向Wにおける中央を通り幅方向Wに垂直な直線Lcに対して線対称の位置関係にある。このような構成によれば、刃先部22´を裏返した場合でも、複数の挿通孔22hの位置関係が刃先部22´を裏返す前から変化しない。そのため、ローラ10の両側の回転方向に対応するために2種類の固定部を準備する必要がなく、部品コストを削減することができる。
【0042】
また、刃先部22の挿通孔22hが1つの場合において、挿通孔22hの中心が、刃先部22の幅方向Wにおける中央を通り幅方向Wに垂直な直線Lcからずれていても構わない。ただし、この場合、刃先部22を裏返した場合に、挿通孔22hの位置が刃先部22を裏返す前から変化するため、この挿通孔22hの新たな位置に対応する孔が形成された固定部を準備する必要がある。そのため、ローラ10の両側の回転方向に対して1種類の固定部で対応できる点に鑑みて、挿通孔22hの中心が、刃先部22の幅方向Wにおける中央を通り幅方向Wに垂直な直線Lc上に位置することが好ましい。
【0043】
また、刃先部22の挿通孔22hが複数の場合において、複数の挿通孔22hが、刃先部22の幅方向Wにおける中央を通り幅方向Wに垂直な直線Lcに対して線対称の位置関係になくても構わない。ただし、この場合、刃先部22を裏返した場合に、複数の挿通孔22hの位置関係が刃先部22を裏返す前から変化する。そのため、ローラ10の両側の回転方向に対して1種類の固定部で対応できる点に鑑みて、複数の挿通孔22hが、刃先部22の幅方向Wにおける中央を通り幅方向Wに垂直な直線Lcに対して線対称の位置関係にあることが好ましい。
【0044】
また、雄刃装置が複数の刃部20を備える場合、複数の刃部20は、ローラ10の周方向において等間隔に配置されていなくても構わない。また、刃部20は1つであっても構わない。
【符号の説明】
【0045】
1…雄刃装置、8…デッキプレート、3…雌刃装置、10…ローラ、13f…外周面、20,20A…刃部、21…固定部、22,22´…刃先部、22h…挿通孔、22T…先端、Lx…軸線、Lc…直線、MP…金属板、R1…回転方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6