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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114740
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】果実の黒変を減少させる方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20230810BHJP
   A01G 17/00 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
A01G7/00 604Z
A01G17/00
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017226
(22)【出願日】2022-02-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-08-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年9月20日 第7回カキ国際シンポジウムにて公開
(71)【出願人】
【識別番号】522050701
【氏名又は名称】板村 裕之
(71)【出願人】
【識別番号】591201686
【氏名又は名称】株式会社日本トリム
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】板村 裕之
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼渦 恭臣
(72)【発明者】
【氏名】樺山 繁
(57)【要約】
【課題】カキなどの果実の果皮に黒変を生じる作物に適用することで、果皮の黒変を減少させる新規な方法を提供する。
【解決手段】果実の果皮に黒変を生じる作物に、水素を含む水を噴霧することなく接触させることにより、前記黒変を減少させる方法。カキに水素を含む水を接触させることにより、当該カキにおいてホスホリパーゼ遺伝子の発現を抑制する方法。カキに水素を含む水を接触させることにより、当該カキにおいてリポキシゲナーゼ遺伝子の発現を抑制する方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
果実の果皮に黒変を生じる作物に、水素を含む水を噴霧することなく接触させることにより、前記黒変を減少させる方法。
【請求項2】
水素を含む水が電解水素水である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
果皮に黒変を生じる果実がカキ、リンゴ、二ホンナシ、洋ナシまたはブドウである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
果皮に黒変を生じる果実がカキである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
カキに水素を含む水を接触させることにより、当該カキにおいてホスホリパーゼ遺伝子の発現を抑制する方法。
【請求項6】
カキに水素を含む水を接触させることにより、当該カキにおいてリポキシゲナーゼ遺伝子の発現を抑制する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カキなどの果実の果皮に黒変を生じる作物に適用することで、果皮の黒変を減少させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カキ、リンゴ、二ホンナシ、洋ナシ、ブドウなどの果実は、成育中に雨に曝されたり、成育中や貯蔵中に傷害などのストレスを受けると果実の表面が黒くなり(黒変)、果皮が汚れてしまう。このような黒変が生じた果実は、黒変が生じていない果皮が綺麗な果実と比較すると、その価格が著しく低下するため、作物生産農家にとっては果皮の黒変を減少させることが切望されている。
【0003】
たとえば特開2002-335859号公報(特許文献1)には、果実又はその加工品を、非加熱状態で搾汁、擂潰もしくは切断されたネギ類と接触処理することで、果実又はその加工品の変色を防止する方法が提案されている。また、特開2013-188148号公報(特許文献2)には、桜の抽出物を用いて食品(特にリンゴ)の黒変・褐変を防止することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-335859号公報
【特許文献2】特開2013-188148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、カキなどの果実の果皮に黒変を生じる作物に適用することで、果皮の黒変を減少させる新規な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特許文献1、2とは全く異なるアプローチによって、カキなどの果実の果皮の黒変を減少させる新規な方法を見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0007】
本発明は、果実の果皮に黒変を生じる作物に、水素を含む水を噴霧することなく接触させることにより、前記黒変を減少させる方法である。
【0008】
本発明の方法において、水素を含む水は電解水素水であることがより好ましい。
【0009】
本発明の方法において、果皮に黒変を生じる果実がカキ、リンゴ、二ホンナシ、洋ナシまたはブドウであることが好ましく、カキであることが特に好ましい。
【0010】
本発明はまた、カキに水素を含む水を接触させることにより、当該カキにおいてホスホリパーゼ遺伝子の発現を抑制する方法についても提供する。
【0011】
本発明はさらに、カキに水素を含む水を接触させることにより、当該カキにおいてリポキシゲナーゼ遺伝子の発現を抑制する方法についても提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、比較的簡便に、カキなどの果実の果皮の黒変を効果的に減少できる方法が提供される。また、本発明によれば、カキにおいてホスホリパーゼ遺伝子の発現を抑制する方法、カキにおいてリポキシゲナーゼ遺伝子の発現を抑制する方法についても提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実験例1の結果を示すグラフであり、左側には条紋について地下水区、電解水素水区で比較して示しており、右側には黒変について地下水区、電解水素水区で比較して示している。
図2】実験例2の結果を示すグラフであり、左側には条紋について地下水区、電解水素水区で比較して示しており、右側には黒変について地下水区、電解水素水区で比較して示している。
図3】実験例3におけるホスホリパーゼD(DkPLDα1)遺伝子についての結果を示すグラフであり、地下水区、電解水素水区で比較して示している。
図4】実験例3におけるリポキシゲナーゼ(DkLOX3)遺伝子についての結果を示すグラフであり、地下水区、電解水素水区で比較して示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、果実の果皮に黒変を生じる作物に、水素を含む水を噴霧することなく、たとえば土壌潅水などによって接触させることにより、前記黒変を減少させる方法に関する。本発明において、果実の果皮に黒変を生じる作物としては、カキ、リンゴ、二ホンナシ、洋ナシ、ブドウなどが挙げられ、中でもカキが好ましい。
【0015】
カキの果実は、秋に雨に曝されると、果実の表面が黒くなり(黒変)、果実が汚れる。これは、果実が夏から秋にかけて肥大するにしたがって、果皮のクチクラ層が損傷を受けて細かいひび割れが果皮に生じ、その際に、ホスホリパーゼやリポキシゲナーゼの働きが活発となり、生体膜が劣化し微細な穴があくことで、液胞内に局在していたポリフェノールやタンニンがその穴から液胞外の細胞質に漏出し、同じく細胞小器官内に局在していたポリフェノールオキシダーゼやペルオキシダーゼも細胞質に漏出することで、基質と酵素が細胞質内で反応してポリフェノールが酸化される、というようなメカニズムによって生じると考えられている。
【0016】
ここで、図1は、実験例1の結果を示すグラフであり、図1の右側には黒変について地下水区(対照として地下水を供給した区画)、電解水素水区(水素を含む水を供給した区画)で比較して示している。図1に示されるとおり、電解水素水区での黒変程度は0.25であったのに対して、地下水区での黒変程度は1.14であり、水素を含む水を用いたことにより、カキの果皮の黒変が有意に減少された(P<0.05)。これは、水に含まれる水素が、果皮の還元性を高めることで、上述した黒変のメカニズムにおける酸化を抑え、黒変を減少させたものであると考えられる。
【0017】
本発明において、果実の果皮に黒変を生じる作物に、水素を含む水を噴霧することなく接触させる。ここで、図2は実験例2の結果を示すグラフであり、図2の右側には黒変について地下水区、電解水素水区で比較して示している。図2に示されるように、樹体に散水噴霧することにより電解水素水または地下水を供給した実験例2では、電解水素水区と地下水区とで有意差が見られなかった。これは、水素を含む水を噴霧させた場合、噴霧の過程で溶存水素が飛散し減少するためではないかと考えられる。
【0018】
本発明において、水素を含む水であれば特に制限されるものではないが、電解水素水を好適に用いることができる。電解水素水は、水を電解したときに陰極から得られる多くの水素分子を含むアルカリ水であり、高い還元強度を示すことが知られている。電解水素水は、具体的には、後述する実験例のように還元野菜整水器「TRIM AG-10」(株式会社日本トリム製)を用いることで好適に取得することができる。
【0019】
本発明においては、溶存水素濃度(Dissolved Hydrogen:DH)が220±200ppbの電解水素水を使用することが望ましい。電解水素水の溶存水素濃度は電解水素水生成装置を改造することで、飽和溶存水素濃度(1600ppb)まで増加させることができる。一方、飽和溶存水素濃度以上に水素を含む水を作る場合、爆発性を有する水素ガスを加圧溶解させる必要があり、危険性が高い。
【0020】
本発明において、水素を含む水を前記作物に土壌潅水で接触させる頻度は、成育期間中1カ月間に1~2回、10L/樹冠1.5m程度の量であればよい。水素を含む水をどのように接触させるかは、水素を含む水を噴霧させること以外特に制限されるものではないが、たとえば土壌潅水するか樹上から散水するようにして水素を含む水を前記作物に接触させるようにすることが好ましい。
【0021】
ここで、図3は、実験例3におけるホスホリパーゼD(DkPLDα1)遺伝子についての結果を示すグラフであり、また図4は、実験例3におけるリポキシゲナーゼ(DkLOX3)遺伝子についての結果を示すグラフであり、それぞれ地下水区、電解水素水区で比較して示している。図3および図4から分かるように、電解水素水での処理後、ホスホリパーゼ遺伝子の発現は37%抑制され、リポキシゲナーゼ遺伝子の発現は33%抑制された。
【0022】
ホスホリパーゼは、生体膜のリン脂質の塩基とリン酸を切り離す酵素であり、生体膜に穴が開く原因となる。またリポキシゲナーゼはリン脂質の過酸化を起こし生体膜の劣化の原因となる酵素である。上述のように、夏から秋にかけて果実が成長するにつれて、果皮のクチクラ層が損傷し、表皮に細かい亀裂が発生し、そのとき、ホスホリパーゼとリポキシゲナーゼが活性化し、生体膜が劣化し、生体膜に微細な穴が形成される。図3および図4は、水素を含む水による処理が、膜劣化遺伝子の発現を抑制し、生体膜の劣化を抑制したことを示している。これにより結果として果実の果皮の黒変が減少されることになる。
【0023】
このことから、本発明は、以下の方法についても提供するものである。
・カキに水素を含む水を接触させることにより、当該カキにおいてホスホリパーゼ遺伝子の発現を抑制する方法、
・カキに水素を含む水を接触させることにより、当該カキにおいてリポキシゲナーゼ遺伝子の発現を抑制する方法。
【0024】
これらの方法は、水素を含む水を樹上散布(噴霧)によって接触させたものであり、黒変防止効果は認められなくても、当該遺伝子発現において抑制効果が認められていることから(後述する実験例3を参照)、黒変防止効果の顕著な土壌潅水では、さらに大きな当該遺伝子発現抑制効果が予想される。溶存水素濃度など好ましいものについては、果皮の黒変を減少させる方法について上述したものと同様であればよい。
【0025】
以下に実験例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
<実験例1-幼木への土壌潅水->
兵庫県神戸市の松下農園植栽のカキ‘太秋’幼木(4年生)を用い、実験を行った。3本の4年生の幼木に電解水素水(EHW)を潅水し(電解水素水区)、さらに3本の幼木には対照として地下水を潅水した(地下水区)。電解水素水は、還元野菜整水器「TRIM AG-10」(株式会社日本トリム製)を使用して取得した。電解水素水と地下水との性質の違いを表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
なお、表1中、電気伝導率:EC(Electrical Conductivity)、水素イオン指数:pH(potential of hydrogen)はEC/pH計 WM-32EP(東亜DKK(株)製)、酸化還元電位:ORP(Oxidation-reduction Potential)はORP計 RM-30P(東亜DKK(株)製)、溶存酸素濃度:DO(Dissolved Oxygen)はDO計 HQ30d(HACH製)、溶存水素濃度:DH(Dissolved Hydrogen)はDH計 DH-35A(東亜DKK(株)製)、温度は前記DO計に付帯する温度センサにて測定した。
【0029】
電解水素水は、220ppbの溶存水素を含み、弱アルカリ性であった。生成された電解水素水は20Lのバケツに入れられ、電解水素水区において1本の木あたり10Lの電解水素水を、3月から9月までの合計12回、月に1~3回、樹冠に土壌潅水することで供給した(散水)。また、地下水区では電解水素水の代わりに地下水を用いたこと以外は同様にした。
【0030】
9月28日に電解水素水区、地下水区でそれぞれ12個と7個の果実を樹上で観察して、0から3までのスケールで目視にて条紋と黒変の程度を評価した。
【0031】
(条紋)
0:条紋が全く観察されない、
1:条紋が果頂部の1/3程度に確認される、
2:条紋が果頂部の1/3~2/3程度に確認される、
3:条紋が果頂部全体に確認される。
【0032】
(黒変)
0:黒変が全く観察されない、
1:黒変が果皮の一部に確認される、
2:黒変が果皮の一部から1/3程度に確認される、
3:黒変が果皮の1/3以上に確認される。
【0033】
図1は、実験例1(幼木への土壌潅水)の結果を示すグラフであり、左側には条紋について地下水区、電解水素水区で比較して示しており、右側には黒変について地下水区、電解水素水区で比較して示している。図1において、縦軸は、条紋、黒変の程度(0~3)であり、*とNSはt検定で5%レベルにて有意差がある、または有意差がないことを示しており(n=反復数7;地下水区、n=反復数12;電解水素水区)、縦棒は標準誤差を示す。図1から分かるように、潅水(散水)すると黒変に関しては、電解水素水区が地下水区に比べて有意に減少した。
【0034】
<実験例2-成木への樹上散布->
電解水素水区、地下水区それぞれについて、背負い式動力噴霧器20L容((株)共立社製)を用いて実験例1と同じ電解水素水または地下水を樹上散布(噴霧)した。10年生の‘太秋’成木に、各樹10L、6月からから9月までの合計6回、月に1~2回、それぞれ3本について樹上散布(噴霧)を行った。9月28日に電解水素水区、地下水区でそれぞれ166個と61個の果実を樹上で観察して、実験例1と同様に0から3までのスケールで目視にて条紋と黒変の程度を評価した。
【0035】
図2は、実験例2の結果を示すグラフであり、左側には条紋について地下水区、電解水素水区で比較して示しており、右側には黒変について地下水区、電解水素水区で比較して示している。図2において、縦軸は、条紋、黒変の程度(0~3)であり、NSはt検定で5%レベルにて有意差がないことを示しており(n=反復数61;地下水区、n=反復数166;電解水素水区)、縦棒は標準誤差を示す。図2から分かるように、噴霧では条紋、黒変とも、電解水素水区と地下水区とで有意差は見られなかった。
【0036】
また、実験例1と実験例2の結果の比較を表2に示す。
【0037】
【表2】
【0038】
上述のように、バケツを用いて散水した実験例1では、電解水素水区と地下水区とで1%の有意差(*)が見られた一方で、噴霧により電解水素水または地下水を供給した実験例2では有意差が見られなかった。
【0039】
<実験例3>
実験例1と同じ電解水素水または地下水を用いて、6月から10月まで月に1~2回、合計7回、樹上散布(噴霧)を行った実験例2と同じ成木から、10月30日に各区から10個の果実を採取し、液体窒素で凍結し、分析まで-80℃で保存した。
【0040】
採取した果実からのRNA抽出はRNeasyPlant Miniキット(Qiagen)を使用して行った。cDNA合成とリアルタイムqPCRは、Nakatsuka et al.,「Gene Expression of Pectic Polysaccharide Degrading Enzymes in On-tree Softened ‘Hiratanenashi’ Persimmon Fruit」, Food Preservation Science(27)VOL.40, NO.4, (2014)の方法に準じて行った。対照遺伝子としてペプチド鎖の伸長段階で機能する伸長因子(DkEF1)を用い、生体膜の劣化に関連する遺伝子であるホスホリパーゼD(DkPLDα1)およびリポキシゲナーゼ(DkLOX3)遺伝子の発現解析を行った。
【0041】
ホスホリパーゼは、生体膜の脂質二重膜の成分であるリン脂質のリン酸部位を加水分解する酵素であり、リポキシゲナーゼは、そのリン脂質の脂肪酸部位のヒドロキシル基を過酸化する酵素である。どちらの酵素も膜を劣化させると考えられている。DkPLDα1、DkLOX3およびDkEF1遺伝子の配列データは、カキ果実のESTデータベースから取得された(Nakagawa et al., 「Expressed sequence tags from persimmon at different developmental stages」, Plant Cell Rep (2008) 27:931-938;Nakatsuka et al., 「Analysis of Expressed Sequence Tags from Rapidly Softened Pulp of Persimmon (Diospyros kaki Thunb.)」, Acta Hort. 996, ISHS(2013))。DkPLDα1遺伝子の塩基配列を配列番号1、DkLOX3遺伝子の塩基配列を配列番号2、DkEF1遺伝子の塩基配列を配列番号3に示す。
【0042】
また用いた各プライマーの塩基配列は以下のとおりである。
DkPLDα1遺伝子
F-cgcagactaggaggattgtgag(配列番号4)
R-tatcatgccaaggctccctt(配列番号5)
DkLOX3遺伝子
F-cactgctcttccctacca(配列番号6)
R-cagagggagaaatcagtgatacac(配列番号7)
DkEF1遺伝子
F-tctggcaaggagcttgaga(配列番号8)
R-agcagccttggtgacc(配列番号9)
電解水素水区、地下水区それぞれについて2回分析され、DkEF1遺伝子による発現比の平均値として表した。
【0043】
図3は、実験例3におけるホスホリパーゼD(DkPLDα1)遺伝子についての結果を示すグラフであり、地下水区、電解水素水区で比較して示している。また図4は、実験例3におけるリポキシゲナーゼ(DkLOX3)遺伝子についての結果を示すグラフであり、地下水区、電解水素水区で比較して示している。図3および図4から分かるように、電解水素水での処理後、ホスホリパーゼ遺伝子の発現は37%抑制され、リポキシゲナーゼ遺伝子の発現は33%抑制された。これは、電解水素水による処理が膜の劣化を抑制したことを示している。なお、遺伝子発現解析は、噴霧による接触を行った結果電解水素水の黒変防止効果が得られなかった成木からの検体を用いているため、効果の顕著であった潅水(散水)による接触(噴霧することなく接触)を行った幼木からの検体を用いれば、さらに顕著な発現の差が確認できるものと予測される。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
2023114740000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-07-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カキ樹体に、水素を含む水を土壌灌水させることにより、当該カキの果実においてホスホリパーゼ遺伝子またはリポキシゲナーゼ遺伝子の発現を抑制し、前記果実の黒変を減少させる方法。
【請求項2】
水素を含む水が電解水素水である、請求項1に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0002
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0002】
カキ、リンゴ、ニホンナシ、洋ナシ、ブドウなどの果実は、成育中に雨に曝されたり、成育中や貯蔵中に傷害などのストレスを受けると果実の表面が黒くなり(黒変)、果皮が汚れてしまう。このような黒変が生じた果実は、黒変が生じていない果皮が綺麗な果実と比較すると、その価格が著しく低下するため、作物生産農家にとっては果皮の黒変を減少させることが切望されている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明の方法において、果皮に黒変を生じる果実がカキ、リンゴ、ニホンナシ、洋ナシまたはブドウであることが好ましく、カキであることが特に好ましい。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
本発明は、果実の果皮に黒変を生じる作物に、水素を含む水を噴霧することなく、たとえば土壌潅水などによって接触させることにより、前記黒変を減少させる方法に関する。本発明において、果実の果皮に黒変を生じる作物としては、カキ、リンゴ、ニホンナシ、洋ナシ、ブドウなどが挙げられ、中でもカキが好ましい。