(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114741
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】電圧調整装置
(51)【国際特許分類】
H02J 3/12 20060101AFI20230810BHJP
H01F 29/02 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
H02J3/12
H01F29/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017227
(22)【出願日】2022-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】前田 博宣
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066DA01
(57)【要約】
【課題】矯絡スイッチ及び抵抗器を含む直列回路を1次巻線の端子に接続する必要がない電圧調整装置を提供する。
【解決手段】電圧調整装置1は交流電圧の実効値を調整する。切換え器5は、単巻線40に接続されている3つのタップT1,T2,T3の中で、1次巻線31の特定端子が電気的に接続するタップを切換える。タップT1,T2間の交流電圧の実効値は、2つの配電線U,V間の交流電圧の実効値に応じて調整される。2つの直列変圧器3u,3vが有する2つの2次巻線32それぞれは、2つの配電線U,Vの中途に配置されている。切換え器5では、制御器53は、通流状態の上側スイッチ回路を介して流れる回路電流の電流値に応じて、通流状態の上側スイッチ回路を介して流れる回路電流の通流方向を第1方向又は第2方向に制限する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧の実効値を調整する電圧調整装置であって、
複数のタップが接続されるタップ巻線と、
1次巻線及び2次巻線を有する複数の変圧器と、
前記複数のタップの中で、前記1次巻線の特定端子が電気的に接続するタップを切換える切換え器と
を備え、
前記複数のタップ中の2つの間の交流電圧の実効値は、複数の配電線中の2つの配電線間の交流電圧の実効値に応じて調整され、
前記複数の変圧器が有する複数の2次巻線それぞれは、前記複数の配電線の中途に配置され、
前記切換え器は、
電流の通流が可能な通流状態、又は、電流の通流が遮断される遮断状態に状態が切換わる複数のスイッチ回路と、
前記複数のスイッチ回路に関する制御を行う制御器と
を有し、
前記制御器は、前記通流状態のスイッチ回路を介して流れる回路電流の電流値に応じて、前記通流状態のスイッチ回路を介して流れる回路電流の通流方向を第1方向又は第2方向に制限する
電圧調整装置。
【請求項2】
各スイッチ回路は、
第1スイッチと、
前記第1スイッチと直列に接続される第2スイッチと、
前記第1スイッチの両端間に接続される第1ダイオードと、
前記第2スイッチの両端間に接続される第2ダイオードと
を有し、
前記第1ダイオード及び第2ダイオードのカソード又はアノードは相互に接続されており、
前記制御器は、
前記通流状態のスイッチ回路にて、前記第1スイッチ及び第2スイッチそれぞれをオフ及びオンに切換えることによって、前記通流方向を前記第1方向に制限し、
前記通流状態のスイッチ回路にて、前記第1スイッチ及び第2スイッチそれぞれをオン及びオフに切換えることによって、前記通流方向を前記第2方向に制限する
請求項1に記載の電圧調整装置。
【請求項3】
前記制御器は、
前記回路電流の前記通流方向を前記第1方向に制限している場合にて、前記回路電流の電流値の絶対値が第1閾値未満の値に低下したとき、前記回路電流の前記通流方向の制限をなくし、
前記回路電流の前記通流方向を前記第2方向に制限している場合にて、前記回路電流の電流値の絶対値が第2閾値未満の値に低下したとき、前記回路電流の前記通流方向の制限をなくし、
前記通流方向の制限がない場合にて、前記通流方向が前記第1方向である前記回路電流の電流値の絶対値が前記第1閾値以上の値に上昇したとき、前記回路電流の前記通流方向を前記第1方向に制限し、
前記通流方向の制限がない場合にて、前記通流方向が前記第2方向である前記回路電流の電流値の絶対値が前記第2閾値以上の値に上昇したとき、前記回路電流の前記通流方向を前記第2方向に制限する
請求項1又は請求項2に記載の電圧調整装置。
【請求項4】
前記制御器は、前記タップ巻線に接続されている2つのタップ間の交流電圧の傾きが0度となった場合に、前記複数のスイッチ回路の中で、前記通流状態のスイッチ回路を変更する
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電圧調整装置。
【請求項5】
前記制御器は、
前記傾きが0度となった場合、前記傾きが0度となる時点と、前記通流状態のスイッチ回路を介して流れる前記回路電流の電流値が0Aとなる時点との差が差分閾値未満であるか否かを判定し、
前記差が前記差分閾値未満であると判定した場合、前記通流状態のスイッチ回路の前記通流方向を制限した後に、前記複数のスイッチ回路の中で、前記通流状態のスイッチ回路を変更する
請求項4に記載の電圧調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は電圧調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2つの配電線間の交流電圧の実効値を調整する電圧調整装置が開示されている。この電圧調整装置では、複数のタップが接続されているタップ巻線が配置されている。タップ巻線の複数のタップそれぞれには、複数の第1スイッチの一端子が接続されている。タップ巻線の複数のタップそれぞれには、更に、複数の第2スイッチの一端子が接続されている。複数の第1スイッチの他端子は、2つの変圧器が有する2つの1次巻線の一端子に接続されている。複数の第2スイッチの他端子は、2つの変圧器が有する2つの1次巻線の他端子に接続されている。
【0003】
2つの変圧器が有する2つの2次巻線それぞれは、2つの配電線の中途に配置されている。タップ巻線に関して、2つのタップから出力される交流電圧の実効値は、2つの配電線間の交流電圧の実効値に応じて調整される。複数の第1スイッチ中の1つと、複数の第2スイッチ中の1つとがオンに切換わった場合、タップ巻線から2つの1次巻線に交流電圧が印加され、2つの配電線間の交流電圧の実効値が上昇するか又は低下する。複数の第1スイッチ又は複数の第2スイッチの中でオンのスイッチが変更された場合、2つの1次巻線に印加される交流電圧が変更される。これにより、外部に出力される交流電圧が変更される。
【0004】
特許文献1の電圧調整装置では、1次巻線の両端間には、矯絡用スイッチ及び抵抗器の直列回路が接続されている。複数の第1スイッチ又は複数の第2スイッチの中でオンのスイッチを変更する場合、矯絡用スイッチをオンに切換える。次に、複数の第1スイッチ又は複数の第2スイッチの中でオンのスイッチを変更する。最後に、矯絡スイッチをオフに切換える。このため、1次巻線を介した電流の通流が中断することはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の電圧調整装置では、矯絡スイッチがオンである場合、抵抗器を介して流れ、電力が消費される。矯絡スイッチ及び抵抗器を含む直列回路を1次巻線の端子に接続する必要がない構成を実現することができた場合、低消費電力の電圧調整装置を実現することができる。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、矯絡スイッチ及び抵抗器を含む直列回路を1次巻線の端子に接続する必要がない電圧調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る電圧調整装置は、交流電圧の実効値を調整する電圧調整装置であって、複数のタップが接続されるタップ巻線と、1次巻線及び2次巻線を有する複数の変圧器と、前記複数のタップの中で、前記1次巻線の特定端子が電気的に接続するタップを切換える切換え器とを備え、前記複数のタップ中の2つの間の交流電圧の実効値は、複数の配電線中の2つの配電線間の交流電圧の実効値に応じて調整され、前記複数の変圧器が有する複数の2次巻線それぞれは、前記複数の配電線の中途に配置され、前記切換え器は、電流の通流が可能な通流状態、又は、電流の通流が遮断される遮断状態に状態が切換わる複数のスイッチ回路と、前記複数のスイッチ回路に関する制御を行う制御器とを有し、前記制御器は、前記通流状態のスイッチ回路を介して流れる回路電流の電流値に応じて、前記通流状態のスイッチ回路を介して流れる回路電流の通流方向を第1方向又は第2方向に制限する。
【発明の効果】
【0009】
上記の態様によれば、矯絡スイッチ及び抵抗器を含む直列回路を1次巻線の端子に接続する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1における電圧調整装置の回路図である。
【
図2】上側スイッチ回路及び下側スイッチ回路の回路図である。
【
図4】通流状態の上側スイッチ回路又は下側スイッチ回路の変更と、回路電流の通流方向の制限とを説明するためのタイミングチャートである。
【
図5】方向制限処理の手順を示すフローチャートである。
【
図6】タップ切換え処理の手順を示すフローチャートである。
【
図7】実施の形態2における電圧調整装置の回路図である。
【
図8】実施の形態3における電圧調整装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1における電圧調整装置1の回路図である。2つの配電線U,V間に交流電源2が接続されている。交流電源2は、例えば変電所であり、2つの配電線U,Vを介して交流電圧を電圧調整装置1に出力する。電圧調整装置1は、2つの配電線U,V及び中性線Qを介して交流電圧を出力する。電圧調整装置1は、出力側の配電線U,V間の交流電圧の実効値を、入力側の配電線U,V間の交流電圧の実効値に基づいて調整する。
【0012】
電圧調整装置1は、2つの直列変圧器3u,3v、調整変圧器4及び切換え器5を有する。直列変圧器3u,3vそれぞれでは、磁性体である環状のコア30に、1次巻線31及び2次巻線32が巻き付いている。調整変圧器4では、図示しないコアに単巻線40が巻き付いている。単巻線40には、3つのタップT1,T2,T3が接続されている。単巻線40の2つの端子それぞれにタップT1,T3が接続されている。単巻線40の中途にタップT2が接続されている。タップT1,T2間の単巻線40の巻数は、タップT2,T3間の単巻線40の巻数とは異なる。単巻線40はタップ巻線として機能する。
【0013】
2つの2次巻線32それぞれの一端子は、入力側の配電線U,Vに接続されている。2つの2次巻線32それぞれの他端子は、出力側の配電線U,Vに接続されている。一方の1次巻線31の一端子及び他端子それぞれは、他方の1次巻線31の一端子及び他端子に接続されている。出力側の配電線U,V間に単巻線40が接続されている。タップT1,T3それぞれは、配電線U,V側に位置する。単巻線40の中途に中性線Qの一端子が接続されている。単巻線40に関して、配電線U及び中性線Q間の巻数は、配電線V及び中性線Q間の巻数と一致している。
【0014】
切換え器5は、集合体50、電流センサ51、電圧センサ52及び制御器53を有する。集合体50は、3つの上側スイッチ回路A1,A2,A3及び3つの下側スイッチ回路B1,B2,B3を有する。以下では、任意の整数をiで表す。整数iは1,2及び3のいずれであってもよい。上側スイッチ回路Ai及び下側スイッチ回路Biそれぞれの一端子は、タップTiに接続されている。3つの上側スイッチ回路A1,A2,A3それぞれの他端子は、共通の電流センサ51を介して、1次巻線31の一端子間の第1接続ノードに接続されている。3つの下側スイッチ回路B1,B2,B3それぞれの他端子は、1次巻線31の他端子間の第2接続ノードに接続されている。
図1では、第1接続ノード及び第2接続ノードそれぞれは右側及び左側に位置している。電流センサ51は、更に、制御器53に接続されている。電圧センサ52は、タップT1,T2及び制御器53に接続されている。
【0015】
制御器53は、3つの上側スイッチ回路A1,A2,A3及び下側スイッチ回路B1,B2,B3それぞれについて、状態を、電流の通流が可能な通流状態、又は、電流の通流が遮断される遮断状態に切換える。通常、3つの上側スイッチ回路A1,A2,A3中の1つの状態が通流状態であり、残りの上側スイッチ回路の状態は遮断状態である。同様に、通常、3つの下側スイッチ回路B1,B2,B3中の1つの状態が通流状態であり、残りの下側スイッチ回路の状態は遮断状態である。第1ノード及び第2ノードそれぞれには、3つのタップT1,T2,T3中の1つが電気的に接続されている。
【0016】
単巻線40の両端には、出力側の配電線U,V間の交流電圧が印加されている。単巻線40は、3つのタップT1,T2,T3中の2つから、2つの1次巻線31に、共通の交流電圧を印加する。通流状態の上側スイッチ回路又は下側スイッチ回路が変更された場合、単巻線40が2つの1次巻線31に印加する交流電圧の実効値又は位相が変更される。
【0017】
2つの1次巻線31に交流電圧が印加された場合、2つの2次巻線32は、入力側の配電線U,V間の交流電圧の実効値を上昇させるか又は低下させる。実効値が上昇又は低下した交流電圧は、出力側の配電線U,V間の交流電圧として外部に出力される。実効値の上昇又は低下させる方法は周知の方法であるので、この方法の詳細な説明を省略する。
【0018】
図1では、配電線Vの電位を基準とした配電線Uの電圧の極性が正である場合において、交流電圧の実効値が上昇するときに流れる電流の方向が破線の矢印で示されている。1次巻線31において、第1ノードから第2ノードに電流が流れる。同様の場合において、交流電圧の実効値が低下するとき、電流は、1次巻線31において、第2ノードから第1ノードに電流が流れる。配電線Uの電圧の極性が負である場合、電流の方向は、配電線Uの極性が正である場合の電流の方向とは反対である。1次巻線31に印加される交流電圧の実効値が大きい程、上昇幅又は低下幅は大きい。1次巻線31を介して流れる電流の方向の変更は、1次巻線31に印加される交流電圧の位相の変更に相当する。
【0019】
制御器53は、通流状態の上側スイッチ回路又は下側スイッチ回路を変更することによって、3つのタップT1,T2,T3の中で、第1ノード又は第2ノードに電気的に接続されるタップを切換える。2つの1次巻線31の一端子及び他端子それぞれは、特定端子として機能する。
【0020】
3つのタップT1,T2,T3中の2つの間の交流電圧の実効値は、2つの配電線U,V間の交流電圧の実効値に応じて調整される。2つのタップ間の交流電圧の実効値は、2つの配電線U,V間の交流電圧の実効値と巻数比との積で表される。巻数比は、2つのタップ間の単巻線40の巻数を、単巻線40全体の巻数で除算することによって得られる値である。
【0021】
電圧センサ52は、タップT1,T2間の交流電圧の電圧値(瞬時値)を検出し、検出した電圧値を示す電圧信号を制御器53に出力する。タップT1,T2間の交流電圧の実効値は、出力側の配電線U,V間の交流電圧の実効値と、タップT1,T2に関する巻数比との積で表される。タップT1,T2間の交流電圧の位相は、出力側の配電線U,V間の交流電圧の位相と一致している。
【0022】
以下では、上側スイッチ回路A1,A2,A3及び下側スイッチ回路B1,B2,B3の中で通流状態のスイッチ回路を介して流れる電流を回路電流と記載する。電流センサ51は、3つの上側スイッチ回路A1,A2,A3の中で、通流状態の上側スイッチ回路を介して流れる回路電流の電流値(瞬時値)を検出する。電流センサ51は、検出した電流値を示す電流信号を制御器53に出力する。以下では、集合体50から第1ノードに向かって流れる回路電流の通流方向を左方向と記載する。第1ノードから集合体50に向かって流れる回路電流の通流方向を右方向と記載する。通流状態の上側スイッチ回路を介して流れる回路電流の通流方向が左方向である場合、電流信号が示す電流値は正値である。通流状態の上側スイッチ回路を介して流れる回路電流の通流方向が右方向である場合、電流信号が示す電流値は負値である。
【0023】
図2は上側スイッチ回路A1及び下側スイッチ回路B2の回路図である。上側スイッチ回路A2,A3それぞれの構成は上側スイッチ回路A1の構成と同様である。下側スイッチ回路B1,B3それぞれの構成は下側スイッチ回路B1の構成と同様である。
図2では、上側スイッチ回路A1及び下側スイッチ回路B2の第1例及び第2例が示されている。
【0024】
上側スイッチ回路A1,A2,A3及び下側スイッチ回路B1,B2,B3それぞれは、第1スイッチG1、第2スイッチG2、第1ダイオードD1及び第2ダイオードD2を有する。第1スイッチG1及び第2スイッチG2それぞれは、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。第1スイッチG1は第2スイッチG2に直列に接続されている。第1スイッチG1のコレクタ及びエミッタそれぞれに、第1ダイオードD1のカソード及びアノードが接続されている。同様に、第2スイッチG2のコレクタ及びエミッタそれぞれに、第2ダイオードD2のカソード及びアノードが接続されている。第1スイッチG1及び第2スイッチG2のゲートは制御器53に各別に接続されている。
【0025】
第1例では、第1ダイオードD1及び第2ダイオードD2のアノードは相互に接続されている。上側スイッチ回路A1,A2,A3それぞれの第1スイッチG1のコレクタは第1ノードに接続されている。上側スイッチ回路A1,A2,A3それぞれの第2スイッチG2のコレクタは、タップT1,T2,T3に接続されている。下側スイッチ回路B1,B2,B3それぞれの第1スイッチG1のコレクタは第2ノードに接続されている。下側スイッチ回路B1,B2,B3それぞれの第2スイッチG2のコレクタは、タップT1,T2,T3に接続されている。
【0026】
第2例では、第1ダイオードD1及び第2ダイオードD2のカソードが相互に接続されている。上側スイッチ回路A1,A2,A3それぞれの第2スイッチG2のエミッタは第1ノードに接続されている。上側スイッチ回路A1,A2,A3それぞれの第1スイッチG1のエミッタは、タップT1,T2,T3に接続されている。下側スイッチ回路B1,B2,B3それぞれの第2スイッチG2のエミッタは第2ノードに接続されている。下側スイッチ回路B1,B2,B3それぞれの第1スイッチG1のエミッタは、タップT1,T2,T3に接続されている。
【0027】
制御器53は、第1スイッチG1のゲートの電圧を調整することによって第1スイッチG1をオン又はオフに切換える。同様に、制御器53は、第2スイッチG2のゲートの電圧を調整することによって、第2スイッチG2をオン又はオフに切換える。第1スイッチG1及び第2スイッチG2それぞれについて、状態がオンである場合、電流はコレクタ及びエミッタの順に通流することが可能である。第1スイッチG1及び第2スイッチG2それぞれについて、状態がオフである場合、コレクタ及びエミッタを介した電流の通流が遮断されている。
【0028】
通流状態の上側スイッチ回路又は下側スイッチ回路において、制御器53が第1スイッチG1及び第2スイッチG2をオフに切換えた場合、状態は遮断状態に遷移する。遮断状態の上側スイッチ回路又は下側スイッチ回路において、制御器53が第1スイッチG1及び第2スイッチG2の少なくとも一方をオンに切換えた場合、状態は遮断状態から通流状態に遷移する。
【0029】
制御器53は、通流状態の上側スイッチ回路又は下側スイッチ回路において、第1スイッチG1及び第2スイッチG2それぞれをオフ及びオンに切換えることによって、回路電流の通流方向を左方向に制限する。通流方向が左方向に制限されている場合、回路電流は、第2スイッチG2及び第1ダイオードD1の順に流れる。制御器53は、通流状態の上側スイッチ回路又は下側スイッチ回路において、第1スイッチG1及び第2スイッチG2それぞれをオン及びオフに切換えることによって、通流方向を右方向に制限する。通流方向が右方向に制限されている場合、回路電流は、第1スイッチG1及び第2ダイオードD2の順に流れる。制御器53は、通流状態の上側スイッチ回路又は下側スイッチ回路において、第1スイッチG1及び第2スイッチG2の両方をオンに切換えることによって、通流方向の制限をなくす。左方向及び右方向それぞれは第1方向及び第2方向に相当する。
【0030】
図2に示すように、制御器53は、通流状態の上側スイッチ回路を介して流れる回路電流の通流方向を左方向に制限する場合、通流状態の下側スイッチ回路を介して流れる回路電流の通流方向を右方向に制限する。これにより、実線の矢印で示すように電流が流れる。同様に、制御器53は、通流状態の上側スイッチ回路を介して流れる回路電流の通流方向を右方向に制限する場合、通流状態の下側スイッチ回路を介して流れる回路電流の通流方向を左方向に制限する。これにより、破線の矢印で示すように電流が流れる。
【0031】
従って、通流状態の上側スイッチ回路を介して流れる左方向の回路電流の電流値は、通流状態の下側スイッチ回路を介して流れる右方向の回路電流の電流値と一致する。同様に、通流状態の上側スイッチ回路を介して流れる右方向の回路電流の電流値は、通流状態の下側スイッチ回路を介して流れる左方向の回路電流の電流値と一致する。
【0032】
なお、第1スイッチG1及び第2スイッチG2はFET(Field Effect Transistor)であってもよい。この場合、ドレイン及びソースそれぞれはコレクタ及びエミッタに対応する。FETの状態がオンである場合、ドレイン及びソースを介して双方向に電流が通流することが可能である。第1スイッチG1及び第2スイッチG2がFETである場合、第1ダイオードD1及び第2ダイオードD2それぞれとして、第1スイッチG1及び第2スイッチG2の寄生ダイオードを用いてもよい。第1スイッチG1及び第2スイッチG2がオンである場合、第1ダイオードD1又は第2ダイオードD2を介して電流が流れない。
【0033】
図3は制御器53の要部構成を示すブロック図である。制御器53は、微分回路60、傾きゼロ検出回路61、電流ゼロ検出回路62及び制御回路63を有する。電圧センサ52は電圧信号を微分回路60に出力する。微分回路60は、電圧信号が示す交流電圧、即ち、タップT1,T2間の交流電圧の微分値を示す微分信号を傾きゼロ検出回路61に出力する。傾きゼロ検出回路61は、微分信号が示す微分値が0となる傾きゼロ時点を示す傾きゼロ信号を制御回路63に出力する。微分値が0である場合、配電線U,V間の交流電圧の傾きは0度である。
【0034】
電流センサ51は電流ゼロ検出回路62及び制御回路63に電流信号を出力する。電流ゼロ検出回路62は、電流信号が示す回路電流の電流値が0Aとなる電流ゼロ時点を示す電流ゼロ信号を制御回路63に出力する。制御回路63には、1次巻線31の一端子又は他端子が接続されるタップの切換えを指示する切換え信号が入力される。
【0035】
制御回路63は、6つの第1スイッチG1及び6つの第2スイッチG2のゲートの電圧を各別に制御することによって、6つの第1スイッチG1及び6つの第2スイッチG2それぞれをオン又はオフに切換える。制御回路63は、傾きゼロ信号、電流ゼロ信号、電流信号又は切換え信号に基づいて、通流状態の上側スイッチ回路又は下側スイッチ回路の変更と、回路電流の通流方向の制限とを行う。
【0036】
制御回路63は、論理回路又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等を用いて構成されることが好ましい。制御回路63は処理素子を有する。制御回路63の処理素子はコンピュータプログラムを実行することによって、種々の処理を実行する。
【0037】
図4は、通流状態の上側スイッチ回路又は下側スイッチ回路の変更と、回路電流の通流方向の制限とを説明するためのタイミングチャートである。
図4では、電圧信号が示す電圧値の推移は一点鎖線で示されている。電流信号が示す回路電流の電流値の推移は細い実線で示されている。微分信号が示す微分値の推移は太い実線で示されている。電圧信号が示す電圧値は、タップT2の電位を基準としたタップT1の電圧値である。
【0038】
電圧信号が示す電圧値の推移は、タップT1,T2間の交流電圧の波形である。3つのタップT1,T2,T3中の2つのタップ間の交流電圧の位相は、出力側の配電線U,V間の交流電圧の位相と一致している。タップT1,T2間の交流電圧の傾きが0度である場合、微分信号が示す微分値は0である。
図4には、傾きゼロ信号が示す電圧値の推移が示されている。傾きゼロ信号は、ハイレベル電圧値又はローレベル電圧値を示す。
図4では、ハイレベル電圧値及びローレベル電圧値それぞれは「H」及び「L」で示されている。微分信号が示す微分値が0となる都度、傾きゼロ信号が示す電圧値は、ハイレベル電圧値又はローレベル電圧値に切換わる。
【0039】
電流ゼロ信号も、ハイレベル電圧値又はローレベル電圧値を示す。電流信号が示す回路電流の電流値が0Aとなる都度、電流ゼロ信号が示す電圧値は、ハイレベル電圧値又はローレベル電圧値に切換わる。
【0040】
図4には、上側スイッチ回路A1,A2それぞれの第1スイッチG1及び第2スイッチG2の状態の推移と、下側スイッチ回路B2,B3それぞれの第1スイッチG1及び第2スイッチG2の状態の推移とが示されている。
図4の説明では、上側スイッチ回路A3及び下側スイッチ回路B1の状態は遮断状態に維持されている。
【0041】
図4の左側では、上側スイッチ回路A1及び下側スイッチ回路B2について、第1スイッチG1及び第2スイッチG2の少なくとも一方がオンである。このため、上側スイッチ回路A1及び下側スイッチ回路B2の状態は通流状態である。1次巻線31の一端子及び他端子それぞれは、タップT1,T2に電気的に接続されている。上側スイッチ回路A2及び下側スイッチ回路B3について、第1スイッチG1及び第2スイッチG2の両方がオフである。このため、上側スイッチ回路A2及び下側スイッチ回路B3の状態は遮断状態である。
【0042】
通流状態の上側スイッチ回路A1の第1スイッチG1がオフである。このため、上側スイッチ回路A1において、回路電流の通流方向は左方向に制限される。通流状態の下側スイッチ回路B2の第2スイッチG2がオフである。このため、下側スイッチ回路B2において、回路電流の通流方向は右方向に制限される。電流信号が示す電流値は正値である。
【0043】
通流状態の上側スイッチ回路A1を介して流れる回路電流の電流値が正の上側閾値未満の値に低下した場合、制御回路63は、上側スイッチ回路A1の第1スイッチG1をオフからオンに切換える。更に、制御回路63は、下側スイッチ回路B2の第2スイッチG2をオフからオンに切換える。これにより、通流状態の上側スイッチ回路A1及び下側スイッチ回路B2それぞれでは、第1スイッチG1及び第2スイッチG2がオンであり、回路電流の通流方向の制限がなくなる。通流状態の上側スイッチ回路A1及び下側スイッチ回路B2を介して回路電流は双方向に流れることが可能である。
【0044】
回路電流の通流方向の制限がない場合において、通流状態の上側スイッチ回路A1を介して流れる回路電流の電流値が負の下側閾値以下の値に低下したとき、制御回路63は、上側スイッチ回路A1の第2スイッチG2をオンからオフに切換える。更に、制御回路63は下側スイッチ回路B2の第1スイッチG1をオンからからオフに切換える。これにより、上側スイッチ回路A1及び下側スイッチ回路B2それぞれを介して流れる回路電流の通流方向は、右方向及び左方向に制限される。
【0045】
上側スイッチ回路A1及び下側スイッチ回路B2それぞれを介して流れる回路電流の通流方向は、右方向及び左方向に制限されている場合において、通流状態の上側スイッチ回路A1を介して流れる回路電流の電流値が負の下側閾値を超える値に上昇したとき、制御回路63は、上側スイッチ回路A1の第2スイッチG2をオフからオンに切換える。更に、制御回路63は、下側スイッチ回路B2の第1スイッチG1をオフからからオンに切換える。これにより、回路電流の通流方向の制限がなくなる。
【0046】
回路電流の通流方向の制限がない場合において、通流状態の上側スイッチ回路A1を介して流れる回路電流の電流値が正の上側閾値以上の値に上昇した場合、制御回路63は、上側スイッチ回路A1の第1スイッチG1をオンからオフに切換える。更に、制御回路63は、下側スイッチ回路B2の第2スイッチG2をオンからからオフに切換える。これにより、上側スイッチ回路A1及び下側スイッチ回路B2それぞれを介して流れる回路電流の通流方向は、左方向及び右方向に制限される。
【0047】
以上のように、制御回路63は、通流状態の上側スイッチ回路A1を介して流れる回路電流の電流値に応じて、通流状態の上側スイッチ回路A1及び下側スイッチ回路B2それぞれを介して流れる回路電流の通流方向を、左方向又は右方向に制限する。通流状態の上側スイッチ回路A1及び下側スイッチ回路B2を介して流れる回路電流の電流値の絶対値が小さい場合、制御回路63は、回路電流の通流方向の制限をなくす。このため、回路電流の通流方向がスムーズに変更される。
【0048】
上側スイッチ回路Aiを介して流れる回路電流に関して、上側閾値は第1閾値に相当し、下側閾値の絶対値は第2閾値に相当する。下側スイッチ回路Biを介して流れる回路電流に関しては、下側閾値の絶対値は第1閾値に相当し、上側閾値は第2閾値に相当する。
【0049】
1次巻線31の一端子及び他端子それぞれの接続先をタップT2,T3に切換える切換え信号が制御回路63に入力された場合、微分信号の微分値が0となるまで待機する。微分信号の微分値が0となった場合、制御回路63は、上側スイッチ回路A2及び下側スイッチ回路B3それぞれにおいて、第1スイッチG1又は第2スイッチG2をオフからオンに切換える。これにより、上側スイッチ回路A2及び下側スイッチ回路B3それぞれの状態は遮断状態から通流状態に遷移する。
【0050】
図4の例では、傾きゼロ時点において、上側スイッチ回路A1の第2スイッチG2と、下側スイッチ回路B2の第1スイッチG1とがオンである。このため、制御回路63は、上側スイッチ回路A2の第2スイッチG2と、下側スイッチ回路B3の第1スイッチG1とをオンに切換える。これにより、上側スイッチ回路A1,A2を介して流れる回路電流の通流方向は左方向に制限される。下側スイッチ回路B2,B3を介して流れる回路電流の通流方向は右方向に制限される。
【0051】
このとき、上側スイッチ回路A1,A2及び下側スイッチ回路B2,B3が通流状態であるため、1次巻線31を介して電流の通流が中断することはない。更に、上側スイッチ回路A1,A2を介して流れる回路電流の通流方向は同一方向に制限されている。下側スイッチ回路B2,B3を介して流れる回路電流の通流方向も同一方向に制限されている。このため、3つのタップT1,T2,T3中の2つのタップ間が短絡することはない。従って、1次巻線31の両端子間に、矯絡用のスイッチ及び抵抗が互いに直列に接続された直列回路を接続する必要はない。矯絡用の抵抗を介して電流が流れないため、消費電力は小さい。
【0052】
なお、傾きゼロ時点において、上側スイッチ回路A1の第1スイッチG1と、下側スイッチ回路B2の第2スイッチG2とがオンである場合においては、制御回路63は、上側スイッチ回路A2の第1スイッチG1と、下側スイッチ回路B3の第2スイッチG2とをオンに切換える。
【0053】
上側スイッチ回路A1,A2及び下側スイッチ回路B2,B3が通流状態に遷移した後、制御回路63は、上側スイッチ回路A1及び下側スイッチ回路B2それぞれについて、第1スイッチG1及び第2スイッチG2の中でオンであるスイッチをオフに切換える。これにより、上側スイッチ回路A1,A2,A3の中で通流状態の上側スイッチ回路は、上側スイッチ回路A2に変更される。下側スイッチ回路B1,B2,B3の中で通流状態の下側スイッチ回路は、下側スイッチ回路B3に変更される。
【0054】
その後、制御回路63は、通流状態の上側スイッチ回路A2を介して流れる回路電流の電流値に応じて、通流状態の上側スイッチ回路A2及び下側スイッチ回路B3それぞれを介して流れる回路電流の通流方向を、左方向又は右方向に制限する。通流状態の上側スイッチ回路A2,A3それぞれを介して流れる回路電流の通流方向の制限方法は、通流状態の上側スイッチ回路A1を介して流れる回路電流の通流方向の制限方法と同様である。通流状態の下側スイッチ回路B1,B3それぞれを介して流れる回路電流の通流方向の制限方法は、通流状態の下側スイッチ回路B2を介して流れる回路電流の通流方向の制限方法と同様である。
【0055】
制御器53の制御回路63は、コンピュータプログラムを実行することによって、方向制限処理及びタップ切換え処理を実行する。方向制限処理は、通流状態の上側スイッチ回路及び下側スイッチ回路それぞれを介して流れる回路電流の通流方向を制限する処理である。通流状態の上側スイッチ回路は、3つの上側スイッチ回路A1,A2,A3の中で適宜変更される。同様に、通流状態の下側スイッチ回路は、3つの下側スイッチ回路B1,B2,B3の中で適宜変更される。タップ切換え処理は、1次巻線31の一端子及び他端子の少なくとも一方が電気的に接続されるタップを切換える処理である。
【0056】
図5は方向制限処理の手順を示すフローチャートである。方向制限処理では、制御回路63は、まず、電流信号が示す回路電流の電流値が上側閾値未満であるか否かを判定する(ステップS1)。次に、制御回路63は、回路電流の電流値が上側閾値未満であると判定した場合(S1:YES)、電流信号が示す回路電流の電流値が下側閾値以上であるか否かを判定する(ステップS2)。前述したように、下側閾値は負値である。
【0057】
制御回路63は、回路電流の電流値が上側閾値以上であると判定した場合(S1:NO)、又は、回路電流の電流値が下側閾値未満であると判定した場合(S2:NO)、通流状態の上側スイッチ回路及び下側スイッチ回路を介して流れる回路電流の通流方向が制限されているか否かを判定する(ステップS3)。制御回路63は、通流方向が制限されていないと判定した場合(S3:NO)、通流状態の上側スイッチ回路及び下側スイッチ回路を介して流れる回路電流の通流方向を制限する(ステップS4)。
【0058】
ステップS4では、制御回路63は、通流状態の上側スイッチ回路及び下側スイッチ回路それぞれについて、第1スイッチG1及び第2スイッチG2の中の1つをオフに切換える。第1スイッチG1がオフに切換わった場合、通流方向は左方向に制限される。第2スイッチG2がオフに切換わった場合、通流方向は右方向に制限される。電流信号が示す回路電流が上側閾値以上の値に上昇した場合、ステップS4では、通流状態の上側スイッチ回路及び下側スイッチ回路それぞれを介して流れる回路電流の通流方向を左方向及び右方向に制限する。電流信号が示す回路電流が下側閾値未満の値に低下した場合、ステップS4では、通流状態の上側スイッチ回路及び下側スイッチ回路それぞれを介して流れる回路電流の通流方向を右方向及び左方向に制限する。
【0059】
制御回路63は、回路電流の電流値が下側閾値以上であると判定した場合(S2:YES)、通流状態の上側スイッチ回路及び下側スイッチ回路を介して流れる回路電流の通流方向が制限されているか否かを判定する(ステップS5)。制御回路63は、通流方向が制限されていると判定し場合(S5:YES)、通流状態の上側スイッチ回路及び下側スイッチ回路それぞれを介して流れる回路電流の通流方向の制限をなくす(ステップS6)。ステップS6では、具体的には、通流状態の上側スイッチ回路及び下側スイッチ回路それぞれについて、第1スイッチG1及び第2スイッチG2の中でオフであるスイッチをオンに切換える。
【0060】
制御回路63は、通流方向が制限されていると判定した場合(S3:YES)、ステップS4,S6の一方を実行した後、又は、通流方向が制限されていないと判定した場合(S5:NO)、方向制限処理を終了する。制御回路63は、方向制限処理を終了した後、再び方向制限処理を実行する。制御回路63が方向制限処理を実行することによって、
図4に示すように、通流状態の上側スイッチ回路及び下側スイッチ回路を介して流れる回路電流の通流方向が制限される。
【0061】
図6は、タップ切換え処理の手順を示すフローチャートである。タップ切換え処理では、制御回路63は、切換え信号が入力されたか否かを判定する(ステップS11)。制御回路63は、切換え信号が入力されていないと判定した場合(S11:NO)、再び、ステップS11を実行する。制御回路63は、切換え信号が入力されるまで待機する。
【0062】
制御回路63は、切換え信号が入力されたと判定した場合(S11:YES)、微分信号が示す微分値が0であるか否かを判定する(ステップS12)。制御回路63は、微分値が0ではないと判定した場合(S12:NO)、再び、ステップS12を実行する。制御回路63は、微分信号の微分値が0となるまで待機する。
【0063】
制御回路63は、微分値が0であると判定した場合(S12:YES)、通流状態の上側スイッチ回路及び下側スイッチ回路を介して流れる回路電流の通流方向が制限されているか否かを判定する(ステップS13)。制御回路63は、回路電流の通流方向が制限されていると判定した場合(S13:YES)、2つのゼロ時点の差が一定の差分閾値未満であるか否かを判定する(ステップS14)。
【0064】
一方のゼロ時点は傾きゼロ時点である。他方のゼロ時点は電流ゼロ時点である。ステップS14に関して、2つのゼロ時点の差は、例えば、ステップS12で検出された今回の傾きゼロ時点よりも前に検出された前回の傾きゼロ時点と、前回の傾きゼロ時点の後に最初に検出された電流ゼロ時点との差である。ステップS14では、制御回路63は、近い将来、通流方向の制限がなくなるか否かを判定する。
【0065】
なお、制御回路63は、微分信号及び電流信号が示す正弦波状の波形に関して、最新の2つのピーク点の差を、2つのゼロ時点の差とみなしてもよい。
【0066】
制御回路63は、通流方向が制限されていないと判定した場合(S13:NO)、又は、2つのゼロ時点の差が差分閾値未満であると判定した場合(S14:YES)、通流状態の上側スイッチ回路及び下側スイッチ回路それぞれを介して流れる回路電流の通流方向が制限されているか否かを判定する(ステップS15)。制御回路63は、通流方向が制限されていないと判定した場合(S15:NO)、再び、ステップS15を実行する。制御回路63は、方向制限処理において、通流方向を制限するまで待機する。
【0067】
制御回路63は、2つのゼロ時点の差が差分閾値以上であると判定した場合(S14:NO)、又は、通流方向が制限されていると判定した場合(S15:YES)、通流状態の上側スイッチ回路及び下側スイッチ回路の少なくとも一方を変更する(ステップS16)。
図4の説明で述べたように、制御回路63は、遮断状態の上側スイッチ回路の状態を通流状態に変更し、その後、通流状態の上側スイッチ回路の状態を遮断状態に変更する。これにより、通流状態の上側スイッチ回路が変更される。制御回路63は、通流状態の上側スイッチ回路と同様に、通流状態の下側スイッチ回路を変更する。
【0068】
制御回路63は、ステップS16を実行した後、タップ切換え処理を終了する。制御回路63は、タップ切換え処理を終了した後、再び、タップ切換え処理を実行する。
【0069】
直列変圧器3u,3vそれぞれにおいて、単巻線40から1次巻線31の両端に印加される交流電圧の傾きが0度である場合、コア30に残留している残留磁束は0[Wb]である。制御回路63は、単巻線40の出力の傾きが0度となった場合、通流状態の上側スイッチ回路及び下側スイッチ回路の少なくとも一方を変更する。従って、通流状態の上側スイッチ回路及び下側スイッチ回路の少なくとも一方が変更された後、直列変圧器3u,3vそれぞれのコア30の磁束は0[Wb]から変化する。従って、直列変圧器3u,3vそれぞれでは、コア30の磁束が飽和磁束を超える可能性が低い。
【0070】
コア30の磁束が飽和磁束を超えている間、2つの1次巻線31のインピーダンスは著しく低い。結果、2つの1次巻線31それぞれを介して過大な電流が流れる。電圧調整装置1では、2つのコア30それぞれの磁束が飽和磁束を超える可能性が低いので、1次巻線31を介して過大な電流が流れる可能性は低い。
【0071】
通流状態の上側スイッチ回路及び下側スイッチ回路それぞれを介して流れる回路電流の通流方向が制限されていない状態で、通流状態の上側スイッチ回路又は下側スイッチ回路が変更された場合、3つのタップT1,T2,T3中の2つのタップが短絡する可能性がある。電圧調整装置1では、2つのゼロ時点の差が小さい場合には、通流方向が制限されるまで、通流状態の上側スイッチ回路又は下側スイッチ回路を変更することなく待機する。このため、回路電流の通流方向が制限されていない状態で、通流状態の上側スイッチ回路又は下側スイッチ回路が変更される可能性は低い。
【0072】
(実施の形態2)
実施の形態1では配電線の数は2である。しかしながら、配電線の数は、2に限定されず、3であってもよい。
以下では、実施の形態2について、実施の形態1と異なる点を説明する。後述する構成を除く他の構成については、実施の形態1と共通しているため、実施の形態1と共通する構成部には実施の形態1と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0073】
図7は、実施の形態2における電圧調整装置1の回路図である。実施の形態2では、配電線U,Vに加えて、配電線Wが交流電源2に接続されている。交流電源2は、3つの配電線U,V,Wを介して、3つの交流電圧を電圧調整装置1に出力する。電圧調整装置1は、2つの直列変圧器3u,3vに加えて、直列変圧器3wを有する。直列変圧器3wは直列変圧器3uと同様に構成されている。交流電源2と直列変圧器3wの2次巻線32の一端子とは入力側の配電線Wによって接続されている。直列変圧器3wの2次巻線32の他端子は出力側の配電線Wに接続されている。3つの直列変圧器3u,3v,3wの2次巻線32は、出力側の配電線U,V,Wに関する3つの交流電圧の実効値を調整する。入力側の配電線U,V,Wの3つの交流電圧の実効値が変化した場合、出力側の配電線U,V,Wの3つの交流電圧の実効値も変化する。
【0074】
電圧調整装置1は、更に、2つの調整変圧器4a,4bを有する。調整変圧器4a,4bそれぞれは、1次巻線41及び2次巻線42を有する。1次巻線41及び2次巻線42それぞれは、例えば環状のコアに巻き付いている。調整変圧器4aの1次巻線41は、配電線U,V間に接続されている。調整変圧器4bの1次巻線41は、配電線V,W間に接続されている。2つの1次巻線41の結線はV結線である。調整変圧器4a,4bそれぞれの2次巻線42それぞれには、3つのタップT1,T2,T3が接続されている。各2次巻線42はタップ巻線として機能する。
【0075】
調整変圧器4a,4bそれぞれでは、2次巻線42に接続されている2つのタップから交流電圧が出力される。この交流電圧の実効値は、1次巻線41の両端に印加される交流電圧の実効値と巻数比との積で表される。ここで、巻数比は、(2つのタップ間の巻数)/(1次巻線41の巻数)で表される。調整変圧器4aの1次巻線41の両端には出力側の配電線U,V間の交流電圧が印加される。調整変圧器4bの1次巻線41の両端には出力側の配電線V,W間の交流電圧が印加される。調整変圧器4aのタップT1,T2間の交流電圧の位相は、出力側の配電線U,V間の交流電圧の位相と一致している。調整変圧器4bのタップT1,T2間の交流電圧の位相は、出力側の配電線V,W間の交流電圧の位相と一致している。
【0076】
切換え器5は、実施の形態1の集合体50と同様に構成されている2つの集合体50a,50bを有する。集合体50aは、実施の形態1の集合体50と同様に、調整変圧器4aの2次巻線42に接続されている3つのタップT1,T2,T3に接続されている。集合体50bは、実施の形態1の集合体50と同様に、調整変圧器4bの2次巻線42に接続されている3つのタップT1,T2,T3に接続されている。
【0077】
3つの1次巻線31の一端子は特定端子として機能する。直列変圧器3uの1次巻線31の特定端子は、集合体50aの上側スイッチ回路A1,A2,A3に接続されている。直列変圧器3vの1次巻線31の特定端子は、集合体50aの下側スイッチ回路B1,B2,B3及び集合体50bの上側スイッチ回路A1,A2,A3に接続されている。直列変圧器3wの1次巻線31の特定端子は、集合体50bの下側スイッチ回路B1,B2,B3に接続されている。1つの1次巻線31の他端子は、残り2つの1次巻線の他端子に接続されている。3つの1次巻線31の結線はY結線である。
【0078】
切換え器5は、2つの電流センサ51a,51b及び2つの電圧センサ52a,52bを有する。電流センサ51a,51bそれぞれは、集合体50a,50bの通流状態の上側スイッチ回路を介して流れる回路電流の電流値を検出する。電圧センサ52a,52bそれぞれは、調整変圧器4a,4bそれぞれのタップT1,T2間の交流電圧の電圧値(瞬時値)を検出する。
【0079】
切換え器5は、実施の形態1と同様に、制御器53を有する。制御器53は、集合体50a,50bが有する6つの上側スイッチ回路A1,A2,A3及び6つの下側スイッチ回路B1,B2,B3の状態を各別に変更する。これにより、制御器53は、2つの2次巻線42に接続されている6つのタップT1,T2,T3の中で、3つの1次巻線31の端子中の3つの特定端子それぞれが電気的に接続するタップを切換える。
【0080】
制御器53は、電流センサ51a及び電圧センサ52aが検出した検出値に基づいて、集合体50aが有する上側スイッチ回路A1,A2,A3及び下側スイッチ回路B1,B2,B3の状態に関する制御を実施の形態1と同様に行う。制御器53は、電流センサ51b及び電圧センサ52bが検出した検出値に基づいて、集合体50bが有する上側スイッチ回路A1,A2,A3及び下側スイッチ回路B1,B2,B3の状態に関する制御を実施の形態1と同様に行う。集合体50a,50bは集合体50に対応する。電流センサ51a,51bは電流センサ51に対応する。電圧センサ52a,52bは電圧センサ52に対応する。実施の形態2における電圧調整装置1は、実施の形態1における電圧調整装置1が奏する効果を同様に奏する。
【0081】
(実施の形態3)
実施の形態2では、調整変圧器の数は2である。しかしながら、調整変圧器の数は3であってもよい。
以下では、実施の形態3について、実施の形態2と異なる点を説明する。後述する構成を除く他の構成については、実施の形態2と共通しているため、実施の形態2と共通する構成部には実施の形態2と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0082】
図8は、実施の形態3における電圧調整装置1の回路図である。実施の形態2と比較して、電圧調整装置1は、更に、調整変圧器4aと同様に構成されている調整変圧器4cを有する。調整変圧器4cの1次巻線41は配電線U,W間に接続されている。3つの1次巻線41の結線はデルタ結線である。調整変圧器4cの1次巻線41の両端には、出力側の配電線U,W間の交流電圧が印加される。調整変圧器4cの2次巻線42には、3つのタップT1,T2,T3が接続されている。3つの調整変圧器4a,4b,4cそれぞれの2次巻線42はタップ巻線として機能する。
【0083】
実施の形態2と比較して、切換え器5は、実施の形態1の集合体50と同様に構成されている集合体50cを更に有する。3つの1次巻線31の一端子は特定端子として機能する。直列変圧器3uの1次巻線31の他端子は直列変圧器3wの1次巻線31の特定端子に接続されている。直列変圧器3vの1次巻線31の他端子は直列変圧器3uの1次巻線31の特定端子に接続されている。直列変圧器3wの1次巻線31の他端子は直列変圧器3vの1次巻線31の特定端子に接続されている。3つの1次巻線31の結線はデルタ結線である。集合体50cは、実施の形態2の集合体50aと同様に、調整変圧器4cの2次巻線42に接続されている3つのタップT1,T2,T3に接続されている。
【0084】
直列変圧器3wの1次巻線31の特定端子は、集合体50aの上側スイッチ回路A1,A2,A3に接続されている。直列変圧器3vの1次巻線31の特定端子は、集合体50bの上側スイッチ回路A1,A2,A3に接続されている。直列変圧器3uの1次巻線31の特定端子は、集合体50cの上側スイッチ回路A1,A2,A3に接続されている。
【0085】
切換え器5は、更に、電流センサ51c及び電圧センサ52cを有する。電流センサ51cは、集合体50cの通流状態の上側スイッチ回路を介して流れる回路電流の電流値を検出する。電圧センサ52cは、調整変圧器4cのタップT1,T2間の交流電圧の電圧値(瞬時値)を検出する。
【0086】
切換え器5の制御器53は、集合体50a,50b,50cが有する9つの上側スイッチ回路A1,A2,A3及び9つの下側スイッチ回路B1,B2,B3の状態を各別に変更する。これにより、制御器53は、3つの2次巻線42に接続されている9つのタップT1,T2,T3の中で、3つの1次巻線31の端子中の3つの特定端子それぞれが電気的に接続するタップを切換える。
【0087】
制御器53は、電流センサ51c及び電圧センサ52cが検出した検出値に基づいて、集合体50cが有する上側スイッチ回路A1,A2,A3及び下側スイッチ回路B1,B2,B3の状態に関する制御を実施の形態1と同様に行う。集合体50cは集合体50に対応する。電流センサ51cは電流センサ51に対応する。電圧センサ52cは電圧センサ52に対応する。実施の形態3における電圧調整装置1は、実施の形態2における電圧調整装置1が奏する効果を同様に奏する。
【0088】
なお、実施の形態1~3において、タップ巻線に設けられるタップの数は、3に限定されず、2又は4以上であってもよい。集合体50,50a,50b,50cそれぞれに関して、上側スイッチ回路の数は、1つのタップ巻線に接続されているタップの数と同じである。下側スイッチ回路の数も、1つのタップ巻線に接続されているタップの数と同じである。電圧センサ52,52a,52b,52cそれぞれが検出する交流電圧の電圧値は、タップT1,T2間の交流電圧の電圧値に限定されない。電圧センサ52,52a,52b,52cそれぞれが検出する交流電圧の電圧値は、1つの巻線に接続されている2つのタップ間の交流電圧の電圧値であれば、問題はない。
【0089】
実施の形態1~3で記載されている技術的特徴(構成要件)はお互いに組み合わせ可能であり、組み合わせすることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
開示された実施の形態1~3はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0090】
1 電圧調整装置、3u,3v,3w 直列変圧器、5 切換え器、31 1次巻線、32 2次巻線、40 単巻線(タップ巻線)、42 2次巻線(タップ巻線)、53 制御器、A1,A2,A3 上側スイッチ回路、B1,B2,B3 下側スイッチ回路、
D1 第1ダイオード、D2 第2ダイオード、G1 第1スイッチ、G2 第2スイッチ