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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114757
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】形状測定装置の調整方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20230810BHJP
   G01B 9/04 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
G01B11/24 D
G01B9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017252
(22)【出願日】2022-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】川田 善之
(72)【発明者】
【氏名】森山 克文
(72)【発明者】
【氏名】森井 秀樹
【テーマコード(参考)】
2F064
2F065
【Fターム(参考)】
2F064AA09
2F064CC10
2F064EE01
2F064FF07
2F064GG22
2F064HH03
2F064HH08
2F064JJ01
2F064MM03
2F064MM32
2F065AA50
2F065AA53
2F065BB05
2F065DD06
2F065FF52
2F065FF61
2F065GG24
2F065HH03
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065MM06
2F065PP02
2F065PP12
2F065PP24
2F065QQ25
2F065QQ31
(57)【要約】
【課題】 白色干渉顕微鏡の調整を容易に実施することが可能な形状測定装置の調整方法を提供する。
【解決手段】 光源からの光を測定光と参照光としてそれぞれ調整用マスターと参照面に照射し、調整用マスター及び参照面によりそれぞれ反射された測定光及び参照光の合波光を用いて測定対象物の被測定面の形状を測定する形状測定装置の調整方法であって、調整用マスターを測定して粗さパラメータを計算するステップと、粗さパラメータが最大となる位置に参照面を移動させるステップとを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を測定光と参照光としてそれぞれ調整用マスターと参照面に照射し、前記調整用マスター及び前記参照面によりそれぞれ反射された前記測定光及び前記参照光の合波光を用いて測定対象物の被測定面の形状を測定する形状測定装置の調整方法であって、
前記調整用マスターを測定して粗さパラメータを計算するステップと、
前記粗さパラメータが最大となる位置に前記参照面を移動させるステップと、
を備える形状測定装置の調整方法。
【請求項2】
前記粗さパラメータとして、算術平均粗さRa又はSaを計算する、請求項1に記載の形状測定装置の調整方法。
【請求項3】
前記参照面を収納する参照面収納部が可逆的に熱変形する材料で形成されており、
前記参照面収納部の温度を制御することにより前記参照面を移動させる、請求項1又は2に記載の形状測定装置の調整方法。
【請求項4】
直動機構により前記参照面を移動させる、請求項1又は2に記載の形状測定装置の調整方法。
【請求項5】
前記粗さパラメータと前記参照面の位置との関係を取得するステップと、
1か所以上の前記参照面の位置ごとに前記粗さパラメータを計算し、前記粗さパラメータと前記参照面の位置との関係に基づいて前記粗さパラメータが最大となる位置を計算するステップと、
を備える、請求項1から4のいずれか1項に記載の形状測定装置の調整方法。
【請求項6】
前記調整用マスターとして、対物レンズの視野範囲を覆う範囲で同一パターンの繰り返しパターンを有するマスターを用いる、請求項1から5のいずれか1項に記載の形状測定装置の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は形状測定装置の調整方法に係り、特に測定対象物の被測定面の形状を測定する形状測定装置の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象物の3次元形状を測定する装置としては、走査型白色干渉計を用いるものが知られている。走査型白色干渉計は、白色光源を光源として用いて、マイケルソン型又はミラウ型等の光路干渉計を利用して、測定対象物の被測定面の3次元形状を非接触で測定する。
【0003】
特許文献1には、光源から対物レンズを介して測定対象物の被測定面に照射され、被測定面で反射された測定光と、光源から対物レンズを介して参照面に照射され、参照面で反射された参照光とを干渉させることにより、被測定面の光軸方向の高さを計測する形状測定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-099787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図13に示す走査型白色干渉計(白色干渉顕微鏡)では、光源からの光L0が、ビームスプリッタ24bにより測定光L1iと参照光L2iに分割され、測定対象物Wの被測定面Waと参照面24cでそれぞれ反射される。被測定面Wa及び参照面24cでそれぞれ反射された測定光L1r及び参照光L2rは、ビームスプリッタ24bにより同一光路上で重ね合わされて合波光L3となる(以下の説明では、測定光L1i、L1r及び参照光L2i、L2rを、それぞれ測定光L1及び参照光L2と総称する場合がある。)。この合波光L3から得られる干渉パターン(干渉縞)のコントラスト又は位相の変化等を求めることにより、測定対象物Wの被測定面Waの形状(例えば、3次元形状、高さ等)を測定することができる。
【0006】
図13の(a)は、対物レンズ24aにより集光された測定光L1iが測定対象物Wの被測定面Waに合焦している例を示している。以下の説明では、図13の(a)に示すように、測定光L1iが被測定面Waに合焦する位置(測定光L1iが被測定面Waに合焦する場合の対物レンズ24aと測定対象物Wの位置関係)を合焦位置という。なお、図13の(a)に示す例では、測定光L1の光路長(測定光路長)D1(a)と、参照光L2の光路長(参照光路長)D2(a)とは異なっている(D1(a)≠D2(a))。
【0007】
一方、図13の(b)は、測定光路長D1(b)と参照光路長D2(b)とが一致している例を示している(D1(b)=D2(b))。この場合、測定光L1r及び参照光L2rの位相が一致する。以下の説明では、図13の(b)に示すように、測定光路長D1(b)と参照光路長D2(b)とが一致する位置(測定光路長D1(b)と参照光路長D2(b)とが一致する場合の対物レンズ24a、ビームスプリッタ24b、測定対象物W及び参照面24cの位置関係)を干渉位置(干渉縞発生位置)という。なお、図13の(b)に示す例では、対物レンズ24aにより集光された測定光L1iが測定対象物Wの被測定面Waに合焦していない。
【0008】
図13の(b)に示すように、測定光L1iが被測定面Waに合焦していない場合、合波光L3から求められる被測定面Waの形状(図14の測定形状F12)が、実際の形状(図14の実形状F10)よりも崩れてしまう。また、合波光L3の光強度が低下するため、感度の低下に起因する測定精度の低下が発生したり、測定不能となったりしてしまう場合がある。
【0009】
このため、上記のような白色干渉顕微鏡では、合焦位置と参照位置とが合致するように調整される。具体的には、対物レンズ24aにより集光された測定光L1iが測定対象物Wの被測定面Waに合焦し、かつ、測定光路長D1と参照光路長D2とが一致するように調整される。
【0010】
上記のような白色干渉顕微鏡の調整では、パターンが印刷された平面基板を観察し、作業者が合焦状態を目視で観察しながら手動で各光学要素の位置の調整を実施する。そして、作業者が、対物レンズ24aがパターンに合焦する合焦位置と干渉位置とが合致するように手動で調整を実施し、調整結果の確認を行っていた。
【0011】
上記のような白色干渉顕微鏡の測定精度を確保するためには、例えば、測定対象物W及び測定対象箇所が変更される都度、白色干渉顕微鏡の調整及び確認作業を高頻度で行うことが好ましい。しかしながら、白色干渉顕微鏡の調整及び確認作業の実施頻度は作業者に依存しているため、調整が十分に行われていない調整不良状態のまま測定対象物Wの測定を行われてしまう場合があり、その場合には精度の低い低信頼データが流出してしまうという問題がある。
【0012】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、白色干渉顕微鏡の調整を容易に実施することが可能な形状測定装置の調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、光源からの光を測定光と参照光としてそれぞれ調整用マスターと参照面に照射し、調整用マスター及び参照面によりそれぞれ反射された測定光及び参照光の合波光を用いて測定対象物の被測定面の形状を測定する形状測定装置の調整方法であって、調整用マスターを測定して粗さパラメータを計算するステップと、粗さパラメータが最大となる位置に参照面を移動させるステップとを備える。
【0014】
本発明の第2の態様に係る形状測定装置の調整方法は、第1の態様において、粗さパラメータとして、算術平均粗さRa又はSaを計算する。
【0015】
本発明の第3の態様に係る形状測定装置の調整方法は、第1又は第2の態様において、参照面を収納する参照面収納部が可逆的に熱変形する材料で形成されており、参照面収納部の温度を制御することにより参照面を移動させる。
【0016】
本発明の第4の態様に係る形状測定装置の調整方法は、第1又は第2の態様において、直動機構により参照面を移動させる。
【0017】
本発明の第5の態様に係る形状測定装置の調整方法は、第1から第4の態様のいずれかにおいて、粗さパラメータと参照面の位置との関係を取得するステップと、1か所以上の参照面の位置ごとに粗さパラメータを計算し、粗さパラメータと参照面の位置との関係に基づいて粗さパラメータが最大となる位置を計算するステップとを備える。
【0018】
本発明の第6の態様に係る形状測定装置の調整方法は、第1から第5の態様のいずれかにおいて、マスターとして、対物レンズの視野範囲を覆う範囲で同一パターンの繰り返しパターンを有するマスターを用いる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、粗さパラメータが最大となる位置に参照面を移動させることにより、形状測定装置の合焦位置と干渉位置が合致するように、形状測定装置の調整を容易に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る形状測定装置を示す図である。
図2図2は、粗さパラメータと参照面位置との関係を示すグラフである。
図3図3は、本発明の一実施形態に係る形状測定装置の調整方法を示すフローチャートである。
図4図4は、合焦度と測定形状の関係を示す図である。
図5図5は、実施例2に係る形状測定装置を示す図である。
図6図6は、実施例2の変形例に係る形状測定装置を示す図である。
図7図7は、粗さパラメータと参照面位置との関係を示すグラフである。
図8図8は、実施例4に係る形状測定装置を示す図である。
図9図9は、実施例5に係るマスターの例を示す平面図である。
図10図10は、実施例6に係るマスターの例を示す平面図である。
図11図11は、実施例7に係るマスターの例を示す平面図及び斜視図である。
図12図12は、図11に示すマスターを用いた場合のXY方向のそれぞれの断面における合焦度の評価結果を示す図である。
図13図13は、白色干渉顕微鏡の例を示す図である。
図14図14は、実形状と測定波形の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面に従って本発明に係る形状測定装置の調整方法の実施の形態について説明する。
【0022】
[形状測定装置]
図1は、本発明の一実施形態に係る形状測定装置を示す図である。なお、図中の互いに直交するXYZ方向のうちでXY方向は水平方向に平行な方向であり、Z方向は上下方向に平行な方向である。
【0023】
図1に示すように、形状測定装置1は、白色干渉顕微鏡10と、駆動機構12と、スケール14と、データ処理部100とを備える。
【0024】
白色干渉顕微鏡10は、マイケルソン型の走査型白色干渉顕微鏡である。白色干渉顕微鏡10は、光源部20と、ビームスプリッタ22と、干渉対物レンズ24と、結像レンズ26と、カメラ28とを備える。被測定面WaからZ方向上方側に沿って、干渉対物レンズ24と、ビームスプリッタ22と、結像レンズ26と、カメラ28の順で配置されている。また、ビームスプリッタ22に対してX方向(Y方向でも可)に対向する位置に光源部20が配置されている。
【0025】
光源部20は、データ処理部100の制御の下、ビームスプリッタ22に向けて平行光束の白色光L0(可干渉性の少ない低コヒーレンス光)を出射する。この光源部20は、図示は省略するが、発光ダイオード、半導体レーザ、ハロゲンランプ、及び高輝度放電ランプなどの白色光L0を出射可能な光源と、この光源から出射された白色光L0を平行光束に変換するコレクタレンズとを備える。
【0026】
ビームスプリッタ22は、例えばハーフミラーが用いられる。ビームスプリッタ22は、光源部20から入射した白色光L0の一部を測定光L1iとしてZ方向下方側の干渉対物レンズ24に向けて反射する。また、ビームスプリッタ22は、干渉対物レンズ24から入射する後述の合波光L3の一部をZ方向上方側に透過して、この合波光L3を結像レンズ26に向けて出射する。
【0027】
干渉対物レンズ24は、マイケルソン型であり、対物レンズ24aとビームスプリッタ24bと参照面24cとを備える。被測定面WaからZ方向上方側に沿ってビームスプリッタ24b及び対物レンズ24aが順に配置され、また、ビームスプリッタ24bに対してX方向(Y方向でも可)に対向する位置に参照面24cが配置されている。以下マイケルソン型の干渉光学系を用いて説明するが、干渉光学系はマイケルソン型に限るものでは無く、ミラウ型やリニック型等、公知の干渉光学系を採用する事ができる。
【0028】
対物レンズ24aは、集光作用を有しており、ビームスプリッタ22から入射した測定光L1を、ビームスプリッタ24bを通して被測定面Waに集光させる。
【0029】
ビームスプリッタ24bは、本発明の干渉部に相当するものであり、例えばハーフミラーが用いられる。ビームスプリッタ24bは、対物レンズ24aから入射する白色光L0の一部を参照光L2iとして分割し、残りの測定光L1iを透過して被測定面Waに出射し且つ参照光L2iを参照面24cに向けて反射する。なお、図中の符号D1は、ビームスプリッタ24bと被測定面Waとの間の測定光L1の光路長である測定光路長を示す。ビームスプリッタ24bを透過した測定光L1iは、被測定面Waに照射された後、被測定面Waにより反射されてビームスプリッタ24bに戻る。
【0030】
参照面24cは、例えば反射ミラーが用いられ、ビームスプリッタ24bから入射した参照光L2iをビームスプリッタ24bに向けて反射する。この参照面24cは、不図示の位置調整機構(例えば、ボールねじ機構、アクチュエータ等)によってX方向の位置を手動で調整可能である。これにより、ビームスプリッタ24bと参照面24cとの間の参照光L2の光路長である参照光路長D2を調整することができる。この参照光路長D2は、測定光路長D1と一致(略一致を含む)するように調整される。
【0031】
ビームスプリッタ24bは、被測定面Waから戻る測定光L1と参照面24cから戻る参照光L2との合波光L3を生成し、この合波光L3をZ方向上方側の対物レンズ24aに向けて出射する。この合波光L3は、対物レンズ24a及びビームスプリッタ22を透過して結像レンズ26に入射する。
【0032】
結像レンズ26は、ビームスプリッタ22から入射した合波光L3をカメラ28の撮像面(図示は省略)に結像させる。具体的には結像レンズ26は、対物レンズ24aの焦点面上における点を、カメラ28の撮像面上の像点として結像する。
【0033】
カメラ28は、図示は省略するがCCD(Charge Coupled Device)型又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型の撮像素子を備える。カメラ28は、結像レンズ26により撮像面に結像された合波光L3を撮像し、この撮像により得られた合波光L3の撮像信号を信号処理して撮像画像を出力する。
【0034】
駆動機構12は、本発明の走査部に相当する。駆動機構12は、リニアモータ或いはモータ駆動機構により構成されており、白色干渉顕微鏡10を走査方向であるZ方向に移動自在に保持している。この駆動機構12は、データ処理部100の制御の下、白色干渉顕微鏡10をZ方向に沿って走査する。
【0035】
なお、駆動機構12は、被測定面Waに対して白色干渉顕微鏡10をZ方向に相対的に走査可能であればよく、例えば被測定面Wa(被測定面Waを支持する支持部)をZ方向に走査してもよい。
【0036】
スケール14は、白色干渉顕微鏡10のZ方向位置を検出する位置検出センサであり、例えばリニアスケールが用いられる。このスケール14は、白色干渉顕微鏡10のZ方向位置を繰り返し検出し、その位置検出結果をデータ処理部100に対して繰り返し出力する。
【0037】
データ処理部100は、操作部108からの操作入力に応じて、白色干渉顕微鏡10(形状測定装置1)による被測定面Waの三次元形状の測定動作を制御し、被測定面Waの三次元形状の演算等を行う。データ処理部100は、各種の演算を実行するプロセッサ(例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等)と、プロセッサの作業領域となるメモリ(例えば、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等)と、各種のプログラム及びデータを保存するためのストレージデバイス(例えば、SSD(Solid State Drive)又はHDD(Hard Disk Drive)等)を含んでいる。
【0038】
データ処理部100は、ストレージに保存されたプログラムをプロセッサにより実行することにより、後述の各種の機能(形状測定部102、粗さパラメータ計算部104及び合致度判定部106)を実現可能となっている。
【0039】
なお、データ処理部100の機能は、1つのプロセッサにより実現されてもよいし、同種または異種の複数のプロセッサで実現されてもよい。また、データ処理部100の機能は、汎用のコンピュータにより実現されるようにしてもよい。
【0040】
操作部108は、データ処理部100に対する作業者の操作入力を受け付けるための操作部材(例えば、キーボード及びマウス等)を含んでいる。
【0041】
出力部110は、データ処理部100によるプログラムの実行結果、演算結果のデータ等を出力するための装置である。出力部110は、例えば、操作UI(User Interface)及び検出結果を表示するためのモニタ(例えば、液晶ディスプレイ等)を含んでいる。また、出力部110は、モニタに加えて又はモニタに代えて、プリンタ又はスピーカ等を含んでいてもよい。
【0042】
[形状測定装置の調整手順]
合焦位置と干渉位置が合致していない場合に周期的な凹凸形状パターンの形状を有する調整用マスター(以下、マスターという。)Mの表面形状の測定を行うと、図14に示した例と同様に、測定形状F12が実形状F10と比較して崩れてしまい、測定形状F12について求めた粗さパラメータは、実形状F10について求めた粗さパラメータよりも小さくなる。そして、合焦位置と干渉位置の合致度が低くなるほど(例えば、測定光L1iのマスターMに対する合焦度が低くなるほど、又は測定光路長D1と参照光路長D2との差が大きくなるほど)、測定形状F12の実形状F10からの乖離がより大きくなり、粗さパラメータがより小さくなる傾向を有する。
【0043】
本実施形態に係る形状測定装置1では、形状測定部102により、周期的な凹凸形状パターンを有するマスターMの表面形状を3次元計測し、粗さパラメータ計算部104により、測定形状について粗さパラメータを求める。そして、合致度判定部106により、この粗さパラメータを指標として合焦位置と干渉位置の合致度を判定する。ここで、粗さパラメータは、合焦位置と干渉位置が合致している度合を示す合致度パラメータ(測定光L1iがマスターMに合焦し、かつ、測定光L1r及び参照光L2rが干渉するための合致度を示す合致度パラメータ)として用いられる。
【0044】
ここで、マスターMとしては、例えば、周期的な凹凸形状パターンが表面に形成された平板状のものを用いることができる。マスターMの表面に形成されるパターンは、例えば、各種解像度チャートに用いられるパターン、例えば、放射状(スターチャート)、市松模様(checkered pattern)、グリッドチャート、USAF 1951ターゲット(United States Air Force MIL-STD-150A standard of 1951)、ISO12233準拠(ISO:International Organization for Standardization)の解像度チャート(CIPA(Camera & Imaging Products Association)解像度チャート)等の全部又は一部を使用することができる。また、マスターMとしては、粗さ標準片(例えば、疑似粗さ標準片、ランダム形状粗さ標準片等)を用いることも可能である。なお、マスターMの種類は上記に限定されるものではなく、一部に周期的なパターンを含むものであればよい。
【0045】
また、粗さパラメータとしては、ISO又はJIS(Japanese Industrial Standards)により定義された各種の粗さを表現するパラメータを活用することができる。具体的には、線粗さパラメータ(JIS B0601:2013)又は面粗さパラメータ(JIS B0681-2:2018)を利用することができる。線粗さパラメータとしては、例えば、Rz(最大高さ粗さ:測定形状において最も高い点から最も低い点までの距離)、Ra(算術平均粗さ:測定形状において表面の平均面に対する各点の高さの差の絶対値の平均)、又は複数の断面から計算したRz等の平均値や中央値など統計量等を用いることができる。面粗さパラメータとしては、例えば、Sz(最大高さ粗さ)又はSa(算術平均粗さ)等を用いることができる。
【0046】
(粗さパラメータに基づく合致度判定の具体例)
図2は、粗さパラメータとしてSaを用いた場合の粗さパラメータと参照面位置との関係を示すグラフである。
【0047】
本実施形態では、まず、測定光L1iをマスターMの表面に合焦させる。次に、測定光L1iをマスターMの表面に合焦させた状態で、参照面24cを移動させながら複数の位置でマスターMの測定を行って、粗さパラメータを求め、粗さパラメータの最大値(ピーク値)Poを求める。
【0048】
次に、粗さパラメータの最大値Poに対応する参照面24cの位置Aoを、合焦位置と干渉位置の合致度が最も高い参照面24cの設定目標位置とする。そして、この位置Aoに参照面24cを移動させることにより、形状測定装置1の調整を行う。
【0049】
これにより、合致度が最大となる位置に参照面24cを移動させることができ、形状測定装置1の調整を容易に行うことができる。
【0050】
なお、上記の例では、粗さパラメータの最大値Poに対応する参照面24cの位置Aoに参照面24cを移動させるようにしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、粗さパラメータの最大値Poを基準として、粗さパラメータの許容範囲内(例えば、Po×80%)に対応する位置に参照面24cを移動させるようにしてもよい。
【0051】
[形状測定装置の調整方法]
図3は、本発明の一実施形態に係る形状測定装置の調整方法を示すフローチャートである。
【0052】
まず、参照面24cの位置を初期位置に移動させる(ステップS10)。ここで、初期位置とは、形状測定装置1の調整の開始時における参照面24cの位置である。参照面24cの初期位置は、例えば、参照面24cの±X方向の移動可能な範囲(DOF:Depth of field)の端部、あるいは過去の調整において粗さパラメータが最大となった位置の近傍(例えば、過去のピーク位置を中心にDOFのR1%の範囲内の端部)等に設定することができる。ここで、一例でR1=20(%)である。
【0053】
次に、測定光L1iをマスターMの表面に合焦させる。そして、測定光L1iをマスターMの表面に合焦させた状態でマスターMの表面形状の測定を行って(ステップS12)、マスターMの表面形状の測定結果から粗さパラメータを算出する(ステップS14)。
【0054】
次に、参照面24cの位置を微小量移動させて(ステップS16)、粗さパラメータの算出を繰り返し、粗さパラメータのピーク位置(最大となる位置)を探索する(ステップS12~S18)。具体的には、粗さパラメータのピーク位置を山登り法(Hill climbing method)により探索し、粗さパラメータがピークとなる参照面24cの位置を検知した場合に(ステップS18のYes)、ステップS12~S18のループを終了する。
【0055】
なお、本実施形態では、山登り法の例について説明したが、本発明はこれに限定されず、山登り法以外の局所探索アルゴリズムを適用することも可能である。また、複数の粗さパラメータの測定値について近似曲線(例えば、最小2乗近似又は多項式近似等)を求めて、粗さパラメータの最大値(ピーク値)Poを求めてもよい。
【0056】
次に、粗さパラメータがピークとなる参照面24cの位置を検知すると、粗さパラメータのピーク位置に参照面24cの位置を移動させる(ステップS20)。
【0057】
本実施形態によれば、周期的な凹凸パターンを持つマスターMを用いるので、粗さパラメータによって傾向を適切かつ効果的に評価することができる。また、既存の粗さパラメータ計算プログラムを流用可能であるため、形状測定装置1の調整をより簡便に実現することができる。さらに、粗さパラメータにはフィルタが適用されているため、マスターMの傾斜又は歪み等の影響を受けることがないので、合焦位置と干渉位置の合致度を高精度に評価することができる。
【0058】
また、合焦位置と干渉位置の合致度を示す指標を粗さパラメータという数値で算出することができるため、再現性が高く、かつ高精度に調整することが可能になる。さらに、形状測定装置1の調整の自動化が可能となる。
【0059】
[実施例1]
実施例1は、粗さパラメータとして、特に算術平均粗さRa又はSaを利用するものである。
【0060】
図4に示すように、測定光L1iの合焦度を低くしていくと(ピントずれを大きくしていくと)、測定形状の波形F1~F3は、実形状F0から乖離していく。
【0061】
ここで、干渉位置において(測定光路長D1(b)と参照光路長D2(b)とが一致する場合)、合焦度が比較的高い場合(測定形状F1及びF2の場合)には、測定形状の波形は崩れるものの、波形のピークの高さに大きな差異が生じない場合がある。この場合、最大高さ粗さRz及びSzでは、合焦度を正確に評価することが困難になる場合がある。
【0062】
このため、実施例1では、粗さパラメータとして、算術平均粗さRa又はSaを用いることで、波形の崩れを粗さパラメータに含めて評価可能とする。これにより、より高精度に干渉位置の調整が可能となる。
【0063】
[実施例2]
図5は、実施例2に係る形状測定装置を示す図である。
【0064】
図5に示すように、実施例2に係る形状測定装置1Aは、温調機(温度センサ34及び温度制御ユニット112)を用いて参照面24cの位置の調整を行う。
【0065】
図5に示すように、形状測定装置1Aでは、干渉対物レンズ24はホルダ24dを含んでいる。
【0066】
ホルダ24dは、例えば真鍮のような金属材料、すなわち可逆的に熱変形する材料で形成されている。このホルダ24dは、レンズ鏡胴24d1と参照面収納部24d2とを備える。レンズ鏡胴24d1は、Z方向に延びた筒形状に形成されており、対物レンズ24a及びビームスプリッタ24bを収納(保持)する。参照面収納部24d2は、レンズ鏡胴24d1におけるビームスプリッタ24bの保持位置からX方向に延びた筒形状に形成されており、参照面24cを収納する。
【0067】
温度調整部32は、参照面収納部24d2の近傍に設けられており、温度制御ユニット112の制御の下、少なくともビームスプリッタ24bと参照面24cとの間の温度、すなわち参照面収納部24d2の温度を調整する。この温度調整部32としては、例えば、ヒータ及びペルチェ素子などが用いられる。
【0068】
参照面収納部24d2は、可逆的に熱変形する材料で形成されているので、温度変化に応じて可逆的に熱変形(膨張又は収縮)する。これにより、温度調整部32により参照面収納部24d2の温度を変化させることで、参照面収納部24d2を熱変形させてこの熱変形に応じて参照面24cのX方向位置を調整可能である。
【0069】
温度センサ34は、本発明の温度測定部に相当する。温度センサ34は、参照面収納部24d2の近傍に設けられており、ホルダ24dの中で少なくとも参照面収納部24d2(ビームスプリッタ24bと参照面24cとの間)の温度を測定し、その温度測定結果を温度制御ユニット112の温度取得部116へ出力する。この温度センサ34の測定結果は、温度制御ユニット112による温度調整部32の制御に利用される。
【0070】
断熱材30は、干渉対物レンズ24の全体、温度調整部32、及び温度センサ34を覆うように設けられている。これにより、断熱材30の内部の温度、特に参照面収納部24d2及びその近傍の温度が外部の影響を受けて変化することが防止される。
【0071】
図5に示すように、温度制御ユニット112は、制御目標温度保存部114、温度取得部116、計算処理部118及び出力制御部120を含んでいる。
【0072】
制御目標温度保存部114は、ホルダ24d内の温度(例えば、参照面収納部24d2の温度、ビームスプリッタ24bと参照面24cとの間の温度)と、参照面24cの位置(X方向の位置)との対応関係を示すルックアップテーブルLUTを保存する。
【0073】
計算処理部118は、制御目標温度保存部114に保存されたLUTを参照して、参照面24cの設定目標位置に移動させるために必要な温度調整部32の出力を計算する。具体的には、計算処理部118は、参照面24cの設定目標位置に対応するホルダ24d内の温度(制御目標温度)をLUTから読み出し、ホルダ24d内の温度を制御目標温度にするための温度調整部32の出力を計算する。
【0074】
出力制御部120は、計算処理部118による計算結果に基づいて温度調整部32の出力を制御して、ホルダ24d内の温度を制御目標温度にする。ここで、ホルダ24d内の温度制御は、例えば、フィードバック制御、PID制御(Proportional-Integral-Differential Controller)等により行うことが可能である。
【0075】
実施例2によれば、参照面24cの位置を温度という数値を用いて管理することができるので、より高精度、高分解能かつ高再現性での調整が可能となる。
【0076】
(変形例)
図6は、実施例2の変形例に係る形状測定装置を示す図である。
【0077】
図6に示すように、変形例に係る形状測定装置1Bは、モータMを用いた直動機構を用いて参照面24cの位置の調整を行う。
【0078】
モータ制御部130は、参照面24cのX方向の位置を取得してモータMの回転量を制御(フィードバック制御、PID制御)し、参照面24cを設定目標位置に移動させる。
【0079】
変形例によれば、モータMを用いて参照面24cの位置を制御することができるので、より高精度、高分解能かつ高再現性での調整が可能となる。
なお、本変形例では、モータMを用いた直動機構を採用したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ピエゾ素子等のアクチュエータを用いた直動機構を採用することも可能である。
【0080】
[実施例3]
実施例3は、あらかじめ粗さパラメータと参照面24cの位置との関係を取得しておき、マスターMの測定を行って得られた粗さパラメータと、この関係を参照して参照面24cの位置を確認可能としたものである。ここで、粗さパラメータと参照面24cの位置との関係としては、例えば、粗さパラメータの値と参照面24cの位置(相対位置)との相関関係を示す相関グラフ(図7のグラフG1参照)、又は粗さパラメータの最大値と、参照面24cの目標設定位置との対応関係を示すテーブル等を用いることができる。
【0081】
実施例3では、まず、データ処理部100により、マスターMの測定を行い、マスターMの測定結果から粗さパラメータの値を計算する。そして、粗さパラメータと参照面24cの位置との関係を参照して、参照面24cの位置が設定目標位置からずれていないかを点検する。
【0082】
例えば、図7に示す粗さパラメータと参照面24cの位置との関係において、「粗さパラメータの最大値Poに対して所定の割合R(%)以下の値となった場合には、形状測定装置1の再調整が必要」等の点検基準を作成する。なお、一例でR=75%である。
【0083】
マスターMの測定の結果得られた粗さパラメータの値が、Pt=R×Po以下の場合には、形状測定装置1の参照面24cの位置の調整を開始する。
【0084】
具体的には、まず、参照面24cの位置を変えて、少なくとも2か所でマスターMの測定を行い、少なくとも2か所の参照面24cの位置ごとの粗さパラメータを算出する。ここで、2か所の参照面24cの位置A1及びA2については、相対位置A2-A1(すなわち、位置A1とA2のX方向の相対的な位置関係(距離))のみが判明しており、絶対位置(X方向の座標)は判明していないものとする。
【0085】
次に、位置A1及びA2における粗さパラメータP1及びP2をそれぞれ計算し、図7に示すように、相関グラフG1と重ね合わせることにより、参照面24cの位置A1又はA2と目標設定位置Aoとの位置関係(移動の向き及び距離)が求められる。
【0086】
次に、この位置関係に基づいて、位置A1又はA2を起点(移動開始位置)として参照面24cを目標設定位置Aoまで移動させる。
【0087】
実施例3によれば、相関グラフG1を用いることにより、参照面24cの移動開始位置(A1又はA2)から目標設定位置Aoまでの移動の向き及び距離を計算することができる。
【0088】
なお、実施例3では、少なくとも2か所の参照面24cの位置について粗さパラメータを算出したが、本発明はこれに限定されない。例えば、相関グラフG1の増減の方向がわかっている場合には、参照面24cの位置1か所のみから目標設定位置Aoまでの移動の向き及び距離を計算してもよい。粗さパラメータP1及びP2の大小関係から相関グラフG1の増減の方向を特定し、(A1,P1)及び(A2,P2)のいずれかと相関グラフG1から目標設定位置Aoまでの移動の向き及び距離を計算してもよい。
【0089】
[実施例4]
実施例3では、マスターMの測定を行うことにより参照面24cの位置の再調整を行うようにしたが、所定のタイミングでマスターMの測定を行うことにより、参照面24cの状態の点検を行うことも可能である。
【0090】
例えば、長期間の使用や環境温度変化によって、合焦位置と干渉位置がずれる場合がある。このような場合には、測定精度が低い状態で、形状測定装置を使い続けてしまう懸念がある。
【0091】
このため、定期的にマスターMを測定し、粗さパラメータを算出して合焦位置と干渉位置の合致度を参照することで、上記のような感度低下状態を検知することが可能となる。これにより、形状測定装置の信頼性の向上を図ることができる。
【0092】
また、粗さパラメータの低下をトリガーとして自動的に合焦位置と干渉位置を合致させる調整を行うことも可能である。これにより、より信頼性の高い形状測定装置を提供することが可能となる。
【0093】
以下、実施例4に係る形状測定装置の具体例について説明する。図8は、実施例4に係る形状測定装置を示す図である。
【0094】
図8に示すように、本実施形態に係る形状測定装置1Cは、マスターMと測定対象物Wとを測定光L1iの光路上に選択的に進出させるための切替機構16を含んでいる。形状測定装置1Cでは、この切替機構16によりマスターMと測定対象物Wとを切り替え可能となっており、所定のタイミングでマスターMの測定を行うことにより、参照面24cの状態の点検を行うことが可能となっている。
【0095】
切替機構16としては、例えば、アクチュエータ又はモータ等により、マスターM及び測定対象物Wが載置されたステージSTを移動させる機構、又はマスターM及び測定対象物WをステージSTに移動させるためのロボットアーム等を用いることができる。
【0096】
切替制御部140は、所定のタイミングで切替機構16を制御して、マスターMと測定対象物Wとを切り替える。
【0097】
(合致度の確認を行うタイミング)
マスターMを用いて合致度を確認するタイミング(時期的条件)としては、下記の例が考えられる。
【0098】
(a)測定対象物Wの測定実行回数が一定値を超えた場合に確認を実施する。この場合、測定実行回数を制限することにより、調整不良状態で測定実行してしまう測定対象物Wの最大数を制限することが可能になる。
【0099】
(b)一定時間又は一定日数経過時に確認を実施する。この場合、調整不良状態で測定対象物Wの測定が実行されてしまった場合であっても、調整不良状態で測定された測定対象物W及び測定データを測定日等により特定することができる。これにより、調整不良状態で測定された測定データを容易にトレースすることができ、再測定を行うことが可能になる。
【0100】
(c)測定のバッチ(例えば、ロット等)の開始時に確認を実施する。この場合、調整不良状態で測定実行してしまう測定対象物Wがバッチに制限される。これにより、調整不良状態で測定された測定データを容易にトレースすることができ、再測定を行うことが可能になる。
【0101】
なお、確認の実施タイミングは、上記に例示列挙したものに限定されない。上記の(a)~(c)及びこれらの組み合せを作業者が選択又は設定可能としてもよい。
【0102】
[実施例5]
実施例5は、形状測定装置の調整のためのマスターMとして、対物レンズ24aの視野を十分に覆う範囲で同一パターンの繰り返しとなっているようなマスターM1を使用するものである。このようなマスターM1としては、例えば、ロンキールーリング、位相格子又は回折格子等を用いることができる。
【0103】
図9は、実施例5に係るマスターの例を示す平面図である。図9に示す例は、マスターM1としてロンキールーリングを用いたものである。図9において、符号VFは、対物レンズ24aの視野範囲を示している。ロンキールーリングは、例えば、ガラス基板上にクロムを蒸着し、エッチング処理を施して黒色塗料を充填することにより、一定間隔の縞状のパターンを形成したものである。
【0104】
実施例5によれば、対物レンズ24aの視野範囲VFの全域において、ピッチが一定の画像を取得することができる。すなわち、視野範囲VFの全域で同一情報を利用することができるので、統計的な処理が容易となり、高精度な調整が可能となる。
【0105】
さらに、実施例5によれば、対物レンズ24aを介して得られる画像がマスターM1と白色干渉顕微鏡10の相対位置決め精度に依存しないため、再現性及び信頼性が高い調整及び確認が可能となる。
【0106】
[実施例6]
実施例6は、実施例5と同様のマスターM1を回転させて測定を行うことを可能としたものである。実施例6に係る形状測定装置1は、ステージSTをZ軸回りに回転可能となっている。
【0107】
実施例6によれば、図10に示すように、マスターM1を90°回転させることにより、X方向及びY方向のそれぞれの光軸ずれを含めた焦点位置を確認することが可能となっている。これにより、白色干渉顕微鏡10の鏡筒のXY方向の光軸ずれを検出することが可能となる。さらに、XY方向のピッチ誤差を同時に確認することが可能となる。
【0108】
[実施例7]
実施例7は、形状測定装置の調整のためのマスターMとして、対物レンズ24aの視野を十分に覆う範囲で、2方向に同一パターンの繰り返しとなっているようなマスターM2を使用するものである。このようなマスターM2としては、互いに直交する2方向に沿って周期構造を持つマスター、例えば、表面に市松模様(checkered pattern)が形成されたマスターを採用することができる。
【0109】
図11は、市松模様が形成されたマスターの例を示す平面図及び斜視図であり、図12は、図11に示すマスターを用いた場合のXY方向のそれぞれの断面における合焦度の評価結果(実形状からの測定形状を乖離)を示す図である。
【0110】
実施例7によれば、X方向及びY方向のそれぞれの光軸ずれを含めた焦点位置を確認することが可能となっている。これにより、白色干渉顕微鏡10の鏡筒のXY方向の光軸ずれを検出することが可能となる。また、測定形状の算出をXY方向のいずれかに限定することにより、方向ごとの光軸ずれを検知することが可能になる。さらに、XY方向のピッチ誤差を同時に確認することが可能となる。
【0111】
また、実施例7では、市松模様のパターンを用いる場合について説明したが、例えば、互いに直交する方向に等間隔でグリッドが形成されたグリッドチャートでも同様の効果を得ることができる。また、図11及び図12に示す例では、XY方向に等間隔の正方形状のパターンの繰り返しパターンを用いたが、長方形パターンの繰り返し又は平行四辺形パターンの繰り返しであってもよい。長方形パターンの繰り返し又は平行四辺形パターンの場合であっても、パターンの各辺に直交する方向の光軸ずれを検知することが可能になる。
【符号の説明】
【0112】
1、1A、1B、1C…形状測定装置、10…白色干渉顕微鏡、12…駆動機構、14…スケール、16…切替機構、20…光源部、22…ビームスプリッタ、24…干渉対物レンズ、24a…対物レンズ、24b…ビームスプリッタ、24c…参照面、24d…ホルダ、26…結像レンズ、28…カメラ、30…断熱材、32…温度調整部、34…温度センサ、100…データ処理部、102…形状測定部、104…粗さパラメータ計算部、106…合致度判定部、108…操作部、110…出力部、112…温度制御ユニット、114…制御目標温度保存部、116…温度取得部、118…計算処理部、120…出力制御部、130…モータ制御部、140…切替制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14