(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114788
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】小麦若葉搾汁乾燥粉末の青汁用飲食品組成物及び該飲食品組成物の嗜好性を高める方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/10 20160101AFI20230810BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20230810BHJP
A23L 2/39 20060101ALI20230810BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20230810BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20230810BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20230810BHJP
【FI】
A23L7/10 H
A23L2/00 B
A23L2/00 Q
A23L2/52
A23L2/00 F
A23L2/38 C
A23L33/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017300
(22)【出願日】2022-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】501028574
【氏名又は名称】日本薬品開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165685
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 信治
(72)【発明者】
【氏名】木曽 博士
(72)【発明者】
【氏名】永尾 純三
【テーマコード(参考)】
4B018
4B023
4B117
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LE03
4B018MD49
4B018MD61
4B018ME02
4B018ME14
4B018MF06
4B018MF07
4B018MF14
4B023LC09
4B023LE26
4B023LG06
4B023LK08
4B023LP14
4B117LC03
4B117LC04
4B117LE01
4B117LG13
4B117LK13
4B117LP03
4B117LP20
(57)【要約】
【課題】小麦若葉を利用した青汁であっても美味しく、飲みやすい小麦若葉搾汁乾燥粉末の青汁用飲食品組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】小麦若葉搾汁乾燥粉末の青汁用飲食品組成物であって、小麦の品種がサトノソラ、シロガネコムギ、又はフクサヤカの中から選択される少なくとも1品種であることを特徴とする青汁用飲食品組成物であり、小麦若葉搾汁乾燥粉末の青汁用飲食品組成物の嗜好性を高める方法であって、小麦若葉を搾汁する搾汁工程を有し、小麦の品種がサトノソラ、シロガネコムギ、又はフクサヤカの中から選択される少なくとも1品種である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦若葉搾汁乾燥粉末の青汁用飲食品組成物であって、前記小麦の品種がサトノソラ、シロガネコムギ、又はフクサヤカの中から選択される少なくとも1品種であることを特徴とする青汁用飲食品組成物。
【請求項2】
前記小麦の品種がサトノソラであることを特徴とする請求項1に記載の青汁用飲食品組成物。
【請求項3】
前記小麦の品種がシロガネコムギであることを特徴とする請求項1に記載の青汁用飲食品組成物。
【請求項4】
前記小麦の品種がフクサヤカであることを特徴とする請求項1に記載の青汁用飲食品組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4何れか1項に記載の青汁用飲食品組成物を含有する機能性飲食品。
【請求項6】
小麦若葉搾汁乾燥粉末の青汁用飲食品組成物の嗜好性を高める方法であって、
小麦若葉を搾汁する搾汁工程を有し、
前記小麦の品種がサトノソラ、シロガネコムギ、又はフクサヤカの中から選択される少なくとも1品種であることを特徴とする方法。
【請求項7】
前記小麦の品種がサトノソラであることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記小麦の品種がシロガネコムギであることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記小麦の品種がフクサヤカであることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小麦若葉搾汁乾燥粉末の青汁用飲食品組成物及び該飲食品組成物の嗜好性を高める方法に関する。
【背景技術】
【0002】
麦類若葉粉末は、ビタミンやミネラルなどの栄養素を補給する目的で、いわゆる「青汁」の原料として広く利用されている。麦類若葉の搾汁乾燥粉末は、搾汁によって麦葉の細胞壁が破壊されているため、麦類若葉の乾燥粉砕末に比べて栄養素の消化吸収が良好である。麦類若葉の搾汁乾燥や乾燥粉砕の異なる製法を含めて麦類若葉粉末の原料は、ケール、笹等と比較して、味、食感、香りが優れている大麦の若葉が使用されている。その一方で小麦若葉は、葉が小さく、繊維質が多いため青汁の原料として積極的に採用されず、小麦若葉粉末としての青汁は一般消費者に普及してこなかった。
【0003】
特許文献1は、植物の破砕粉末(植物粉末)と若葉の搾汁乾燥粉末とを植物粉末20重量部に対し搾汁乾燥物1~40重量部で、好ましくは植物粉末20重量部に対し搾汁乾燥物2~20重量部の重量比で混合造粒することにより、分散性と喉越しが良い粉末植物飲料となることが記載されている。
【0004】
特許文献2は、緑葉粉末及び/又は緑葉搾汁と白きくらげ粉末とを含む青汁食品であることから、喉越しなどの良い飲料の造粒物となることが記載されている。
【0005】
特許文献3には、緑葉粉末と野菜及び/又は果汁とを用いて造粒して得られた緑葉造粒物であることから、栄養価の高い美味しい青汁食品となることが記載されている。
【0006】
特許文献4には、麦類若葉の葉肉部粗砕物の粒度を一定範囲内とすることにより、良好な食感と風味を有する麦類若葉粉末が製造できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-27926号公報
【特許文献2】特開2006-166776号公報
【特許文献3】特許第3769274号公報
【特許文献4】特許第3560939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の発明では、搾汁乾燥粉末として小麦若葉、ハト麦若葉、大麦若葉、明日葉、アルファルファに各々置きかえた飲料用造粒物が記載されている。しかし、搾汁乾燥粉末として小麦若葉を使用した時の評価試験は行われておらず、小麦若葉搾汁乾燥粉末の青汁用飲食品組成物としては十分なものとは言えなかった。
【0009】
特許文献2の発明では、緑葉粉末として小麦若葉の粉砕乾燥粉末の記載はあるが、搾汁乾燥粉末として小麦若葉を使用した時の評価は行われておらず、小麦若葉搾汁乾燥粉末の青汁用飲食品組成物としては十分なものとは言えなかった。
【0010】
特許文献3の発明では、小麦若葉の粉砕乾燥粉末の記載はあるが、搾汁乾燥粉末として小麦若葉を使用した時の評価は行われておらず、小麦若葉搾汁乾燥粉末の青汁用飲食品組成物としては十分なものとは言えなかった。
【0011】
特許文献4の発明では、小麦若葉の粉砕乾燥粉末の記載はあるが、搾汁乾燥粉末として小麦若葉を使用した時の評価は行われておらず、小麦若葉搾汁乾燥粉末の青汁用飲食品組成物としては十分なものとは言えなかった。
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、小麦若葉を利用した青汁であっても美味しく、飲みやすい小麦若葉搾汁乾燥粉末の青汁用飲食品組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
即ち、本発明は以下の発明を含む。
[発明1]
小麦若葉搾汁乾燥粉末の青汁用飲食品組成物であって、小麦の品種がサトノソラ、シロガネコムギ、又はフクサヤカの中から選択される少なくとも1品種であることを特徴とする青汁用飲食品組成物。
[発明2]
小麦の品種がサトノソラであることを特徴とする発明1に記載の青汁用飲食品組成物。
[発明3]
小麦の品種がシロガネコムギであることを特徴とする発明1に記載の青汁用飲食品組成物。
[発明4]
小麦の品種がフクサヤカであることを特徴とする発明1に記載の青汁用飲食品組成物。
[発明5]
発明1乃至4何れか1の発明に記載の青汁用飲食品組成物を含有する機能性飲食品。
[発明6]
小麦若葉搾汁乾燥粉末の青汁用飲食品組成物の嗜好性を高める方法であって、
小麦若葉を搾汁する搾汁工程を有し、
小麦の品種がサトノソラ、シロガネコムギ、又はフクサヤカの中から選択される少なくとも1品種であることを特徴とする方法。
[発明7]
小麦の品種がサトノソラであることを特徴とする発明6に記載の方法。
[発明8]
小麦の品種がシロガネコムギであることを特徴とする発明6に記載の方法。
[発明9]
小麦の品種がフクサヤカであることを特徴とする発明6に記載の方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の青汁用飲食品組成物及び青汁用飲食品組成物の嗜好性を高める方法は、小麦若葉を使用しているにもかかわらず青汁の味、食感共に優れたものであるため、今まで青汁を敬遠していた消費者に対しても問題なく提供することができ、ひいては青汁の市場を増加させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた結果、小麦若葉の搾汁粉末を使用するとともに品種を選別することで、青汁独特の苦み、えぐ味、青臭さが低減し、甘味を強く感じることを見出し、本発明を完成させた。本発明に係る小麦若葉搾汁乾燥粉末の青汁用飲食品組成物を、以下詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に記載される構成に限定されることを意図しない。
【0016】
[小麦若葉搾汁乾燥粉末の青汁用飲食品組成物]
本発明の青汁用飲食品組成物は、小麦若葉搾汁乾燥粉末の原料に使用する小麦品種を「サトノソラ」、「シロガネコムギ」、又は「フクサヤカ」の中から選択される少なくとも1品種であることから、非常に飲みやすいのもとなっている。
【0017】
本発明の青汁用飲食品組成物では、小麦の成熟期前の緑葉、好ましくは分げつ開始期から穂揃期までの小麦の緑葉(茎および葉を総称する)を、好ましくは機械的手段で熱変性を与えることなしに搾汁し、粗大固形分を除去して得られた小麦若葉搾汁を使用する。なお、搾汁工程に先立って、麦類の成熟期前の緑葉を次亜塩素酸ソーダ等の殺菌剤で殺菌処理してから搾汁処理することもできる。次いで、得られた小麦若葉搾汁をpH5~9程度に調節し、噴霧乾燥、凍結乾燥等の実質的に熱変性を与えない方法で粉末化して本発明で利用される小麦若葉搾汁乾燥粉末を得る。
【0018】
本発明の青汁用飲食品組成物は、必要に応じて、例えば賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、食品添加物、及び調味料の群から選択される少なくとも1種の添加剤を更に添加することができる。例えば、デキストリン、シクロデキストリン、ラクトース、デンブン、マルトース、マルチトール、グルコース、フラクトース等の賦形剤、食品用増量剤を、必要に応じて添加することができる。
【0019】
本発明の青汁用飲食品組成物は、上記の添加剤とは別の調剤用添加剤を含むことができる。この調剤用添加剤としては、例えば、アスコルビン酸、ビオチン、パントテン酸カルシウム、カロテン、ナイアシン、ピリドキシン塩酸塩、リボフラビン、パントテン酸ナトリウム、チアミン塩酸塩、トコフェロール、ビタミンA、ビタミンB12、ビタミンD等のビタミン類;メタリン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム等のリン酸ナトリウム類;ソルビン酸カルシウム、安息香酸、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム等の保存料;アラビアガム、トラガント、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、マンニット、ソルビトール、ラクトース、可溶性澱粉、アミノ酸類、グルコース、フラクトース、スクロース、ハチミツ、脂肪酸エステル、二酸化ケイ素等が挙げられる。
【0020】
本発明の青汁用飲食品組成物は、食品、加工食品、飲料、医薬品、又は医薬部外品に配合することが可能である。本実施形態に係る青汁用飲食品組成物は栄養豊かで、食物繊維を多く含むため栄養補助や、整腸作用の改善のために用いることが可能である。また、本実施形態に係る青汁用飲食品組成物は機能性飲食品として提供することも可能である。機能性飲食品には、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、老人用食品、健康補助食品(バランス栄養食、サプリメント)等が挙げられる。
【0021】
[小麦若葉の栽培方法]
各小麦品種の種子を順次、圃場で区別が出来るように播種した。成長度合いを揃えるため、播種の際には土の深さを約2cmとした。小麦若葉の刈り取りは、分げつ開始期から穂揃期までの若葉であり、好ましくは草丈が20cm~40cm、さらに好ましくは25cm~35cmに成長した若葉を順次刈り取った。この際、単位面積当たりの収量、若葉と茎の割合等を確認した。
【0022】
[小麦若葉乾燥粉末の製造方法]
小麦若葉の搾汁乾燥粉末は、小麦若葉の搾汁液を低温濃縮により所定の固形分濃度にまで濃縮し、当該濃縮液を噴霧乾燥または凍結乾燥することで製造される。これは、新鮮な生の小麦若葉の風味と栄養価を保ったまま搾汁乾燥粉末を製造するためである。以下に示す実施例の小麦若葉搾汁乾燥粉末の製造も同様の方法で行っている。
【実施例0023】
味覚は、五感の一つであり、生理学的には「甘味、酸味、塩味、苦味、旨味」が基本の味(五味)となる。しかし、青汁に対する消費者の嗜好性を高めるためには、この味覚の5感「甘味、酸味、塩味、苦味、旨味」のバランスだけでなく、香り、食感、及び視覚に訴える色を含む総合評価が重要となる。以下、実施例を示して本発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0024】
[官能試験について]
官能試験では、予備試験を実施し品種間の味覚の傾向を確認すると共に味の良い品種を複数選択した後、本試験を実施して品種間の詳細な評価を行った。本試験では、予備試験で選択された品種の嗜好性を更に詳しく評価し、味の良い品種を選定した。官能試験は、官能試験1(予備試験1、本試験1)及び官能試験2(予備試験2、本試験2)を実施した。官能試験1では5品種から1品種が選択され、官能試験2では官能試験1で選択された1品種にさらに4品種を追加して試験を実施した。被験者は、予備試験、本試験いずれも官能試験の資質がある経験者の説明を受けた成人健常者とした。
【0025】
予備試験は、「味覚」を「甘味」、「塩味」、「苦味」、「酸味」、「旨味」と5項目に分け、その味の強さの程度を強い順から3、2、1と点数化し、味の傾向を確認した。夫々の検体の味覚に関しては、好きか嫌いかを5点満点で総合的な味覚の評価を行った。予備試験では、味覚の傾向を確認すると共に味の良い品種を複数選択した。
【0026】
本試験では、予備試験で選択した小麦品種を使用して味のよい品種を選択した。評価方法は、1品種を標準検体として、他の検体と比較することにより行った。「香り(若葉の香り)」、「色(緑色の鮮やかさ)」、「味(甘味、えぐ味のなさ、苦味のなさ、味の強さ、コク)」、及び「食感(舌触りの良さ、口当たりの良さ、粉っぽさの程度、あと味のよさ、のど越しの良さ)」は、それぞれ7段階(7:非常に良い、6:良い、5:やや良い、4:同じ、3:やや悪い、2:悪い、1:非常に悪い)で評価した。総合評価(嗜好性の高さ)は香り、色、味、食感の全ての項目の平均値の合計を評価点とした。
【0027】
[官能試験1]
(小麦品種の栽培と小麦若葉搾汁液の作製方法)
管理がされた圃場にて小麦5品種(農林61号、イワイノダイチ、チクゴイズミ、ミナミノカオリ、ニシノカオリ)を順次、区別が出来るように播種した。成長度合いを揃えるため、播種の際には土の深さを約2cmとした。小麦若葉の刈り取りは、分げつ開始期から穂揃期までの若葉で、草丈が25cm~35cmに成長した若葉を収穫した。
【0028】
収穫した小麦若葉3~6kgを洗浄後、ジューサー機に投入し粉砕・搾汁した。搾汁から得られた搾汁液は、デキストリンを加えて噴霧乾燥を行って、搾汁乾燥粉末300~900gを得た。得られた小麦5品種の搾汁乾燥粉末を予備試験1及び本試験1に供した。
【0029】
(予備試験1)
予備試験1では、小麦5品種の小麦若葉搾汁乾燥粉末3gの夫々に水道水(10℃~15℃)150mlを加え、粉末を溶解させた各溶液を検体として使用した。各5検体をア,イ,ウ,エ,オと割り付け品種名を伏せたコップに入れて官能試験に供した。官能試験は12名で実施した。
【0030】
被験者は1検体ずつランダムに味覚の試験を行った。試飲手順は、水で口をすすぎ吐き出してから被検物を口に含み、すぐに舌の全面に広げよく味わってから吐き出す。次に、水で口をすすぎ吐き出してから次の被検物を口に含み、すぐに舌の全面に広げよく味わってから吐き出す。この作業を繰り返し、ア~オについて試験を行った。この作業を2~3回繰り返した。評価は、「味覚」を「甘味」、「塩味」、「苦味」、「酸味」、「旨味」の5項目に分け、その味の強さの程度を強い順から3、2、1と評価した。夫々の検体の味覚に関しては、好きか嫌いか(嗜好性の高さ)を5点満点で総合的に評価した。
【0031】
【0032】
(予備試験1の結果及び考察)
味覚の各項目の平均値と総合的な味覚の評価(味覚評価)の平均値について、コクランのQ検定で評価を行った。5品種の小麦若葉の搾汁乾燥粉末は、「甘味」、「塩味」、「苦味」、「酸味」、「旨味」の味覚5項目がP<0.01と有意差ありとなった。味覚評価もP<0.02と有意差があった。従って各品種の味覚項目は区別でき各品種の味の傾向を判別可能である。農林61号、ニシノカオリ、ミナミノカオリは、5品種のうち味覚の総合評価である「味覚評価」が2.50と高かった。
【0033】
予備試験1では、各5検体の味覚の傾向を味覚5項目の夫々の平均値により評価し、総合的な味覚の評価(味覚評価)についても平均値により評価した。味覚5項目の評価によって品種ごとに味覚の傾向が確認された。イワイノダイチ、チクゴイズミは、甘みは強いが塩味、苦味、酸味も強かった。これら2品種と比較して農林61号、ニシノカオリ、ミナミノカオリは、甘味が抑えられて旨味が強いという傾向があり、「味覚評価」が3品種ともに評価点2.50と高くなった。本試験で使用する品種は、総合的な味覚の評価から農林61号、ニシノカオリ、ミナミノカオリの3品種とした。
【0034】
(本試験1)
本試験1では、小麦3品種(農林61号、ニシノカオリ、ミナミノカオリ)の小麦若葉搾汁乾燥粉末3g夫々に水道水(10℃~15℃)150mlを加え、粉末を溶解させた各溶液を検体として使用した。各3検体をA,B,Cと割り付け品種名を伏せたコップに入れて官能試験に供した。3検体のうち予備試験で苦味が強いと評価された農林61号を標準検体Aとした。官能試験は13名で実施した。
【0035】
被験者は「香り」、「色」、「味」、及び「食感」について、標準検体Aと、比較検体B及びCの夫々とを比較して評価した。比較は、夫々7段階で評価した。
【0036】
試飲手順は、水で口をすすぎ吐き出してから被検物を口に含み、すぐに舌の全面に広げよく味わってから吐き出す。水で口をすすぎ吐き出してから次の比較検体がどれだけ標準検体Aから各試験項目について離れているかについて評価した。各項目は標準を4として、7 段階の点数を官能試験検査表の各項目にチェックをいれて実施した。味覚の比較は、項目ごとに続けて3回繰り返し、上記同様の試飲手順で実施した。味覚の各項目の評価は、3回実施した合計点数の平均値を評価点とし、総合評価は全ての項目の平均値の合計を評価点とした。
【0037】
【0038】
(本試験1の結果及び考察)
「香り・色」の評価点の合計はニシノカオリが7.41、ミナミノカオリが7.15と農林61号より低くなった。「味」の項目の「えぐ味のなさ」では、ニシノカオリが4.21、ミナミノカオリが4.33と、「苦味のなさ」の項目ではニシノカオリが4.59、ミナミノカオリが4.51と農林61号よりやや高くなったが、「味」の全ての項目の合計点ではニシノカオリが19.87、ミナミノカオリが20.23と農林61号の20.00と同程度となり予備試験と略同じ結果となった。ミナミノカオリは、「食感」では「粉っぽさ」の項目のみ良く、「食感」の全ての項目の合計点では19.49と農林61号(合計点20点)よりも悪くなり、「総合評価」も46.87(農林61号の合計点48点)と低かった。ニシノカオリは「食感」の全ての項目の合計点は21.15となり、総合評価も48.44と農林61号よりも高くなった。しかし総合評価について「t検定(10%両側検定)」を行ったところ有意差なしとなった(表2に参照)。本試験1の結果は、予備試験と同じく味の良い品種が農林61号、ニシノカオリ、ミナミノカオリの3品種となった。
【0039】
[官能試験2]
官能試験2は、官能試験1の結果を踏まえて他の小麦品種を追加して実施した。官能試験2の予備試験2及び本試験2は、官能試験1で行った試験方法と同様の方法で実施した。
【0040】
(小麦品種の栽培と小麦若葉搾汁液の作製方法)
管理がされた圃場にて小麦5品種(ニシノカオリ、フクサヤカ、ユメノカオリ、サトノソラ、シロガネコムギ)を順次、区別が出来るように播種した。成長度合いを揃えるため、播種の際には土の深さを約2cmとした。小麦若葉の刈り取りは、分げつ開始期から穂揃期までの若葉で、草丈が25cm~35cmに成長した若葉を収穫した。
【0041】
収穫した小麦若葉3~5kgを洗浄後、ジューサー機に投入し粉砕・搾汁した。搾汁から得られた搾汁液は、デキストリンを加えて噴霧乾燥を行って、搾汁乾燥粉末300~700gを得た。得られた小麦5品種の搾汁乾燥粉末を予備試験2及び本試験2に供した。
【0042】
(予備試験2)
予備試験2では、小麦5品種の小麦若葉搾汁乾燥粉末3gの夫々に水道水(10℃~15℃)150mlを加え、粉末を溶解させた各溶液を検体として使用した。各5検体をア,イ,ウ,エ,オと割り付け品種名を伏せたコップに入れて官能試験に供した。官能試験は20名で実施した。試飲手順及び評価は、予備試験1と同じ方法で行った。
【0043】
【0044】
(予備試験2の結果及び考察)
味覚の各項目の平均値と味覚の総合的評価(味覚評価)の平均値についてコクランのQ検定で評価を行った。5品種の小麦若葉の搾汁乾燥粉末は、「甘味」、「塩味」、「苦味」、「酸味」、「旨味」の味覚5項目に関して、P<0.01からP<0.001と有意差があり判別可能となった。味覚評価の平均値もP<0.01と有意差があり順位付け可能となった。従って味覚の各項目からは、前回と同様に品種毎に区別され、味の傾向が確認可能である。ニシノカオリは、甘味が少ないと評価されたためか総合的に味覚評価が2.72と最も低く、ユメノカオリは、苦みが強いと評価され総合的に評価が2.83とやや低くなった。味覚評価の高い品種は、甘味、酸味、旨味の強いフクサヤカが3.11、やや甘味と旨味が強いシロガネコムギが2.94、塩味が強いサトノソラの2.89の3品種となった。
【0045】
(本試験2)
本試験2では、予備試験2で選択したフクサヤカ、シロガネコムギ、サトノソラの小麦3品種を詳細に比較して最も味のよい品種を選択した。
【0046】
本試験2では、小麦3品種(フクサヤカ、シロガネコムギ、サトノソラ)の小麦若葉搾汁乾燥粉末3gの夫々に水道水(10℃~15℃)150mlを加え、粉末を溶解させた各溶液を検体として使用した。各3検体をA,B,Cと割り付け品種名を伏せたコップに入れて官能試験に供した。3検体のうち予備試験で苦味が強いと評価されたフクサヤカを標準検体Aとした。官能試験は、官能試験の資質がある経験者の説明を受けた成人の健常者で、2年以上継続的に青汁を飲用している22名で実施した。試飲手順及び評価は、予備試験2と同じ方法で行った。
【0047】
【0048】
(本試験2の結果及び考察)
「香り・色」の項目の評価点は、「香り」の項目では、サトノソラが3.95、シロガネコムギが3.73と低く、「色」の項目ではサトノソラが4.32、シロガネコムギが4.35と高かった。「香り・色」の評価点の合計は、サトソラが8.27、シロガネコムギが8.08と高かった。予備試験2ではフクサヤカ、シロガネコムギ、サトノソラの順位で評価が良かったが、本試験2の「味」の項目の合計の評価点は、シロガネコムギが19.74とサトノソラ19.94より低くなった。これは予備試験2の項目としてなかった「苦味のなさ」、「味の強さ」、「コク」の項目の影響と考えられる。「食感」の項目の評価点は、サトノソラが20.79、シロガネコムギが20.61となりフクサヤカ(合計点20点)より高い評価となった(表4参照)。
【0049】
官能試験2では、サトノソラは総合評価点が49.00と一番高くt検定(10%両側検定)を行ったところ有意差ありの結果となった。官能試験2では、小麦若葉の搾汁乾燥粉末としてサトノソラが一番良い結果となり、続いてシロガネコムギ、フクサヤカの順となった。小麦若葉の搾汁乾燥粉末が青汁として飲用した際に品種による味覚の差があることも明確となった。尚、サトノソラ、シロガネコムギ、フクサヤカの若葉の搾汁乾燥粉末の成分分析では、いずれの品種もカリウム含有量や総クロロフィル含有量の数値が比較的大きく、青汁として適していることが確認された(未掲載)。