(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114845
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】板材温度測定方法およびサーモグラフィカメラ冷却箱
(51)【国際特許分類】
F27D 21/00 20060101AFI20230810BHJP
【FI】
F27D21/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017390
(22)【出願日】2022-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】馬場 健輔
(72)【発明者】
【氏名】爲我井 郁也
(72)【発明者】
【氏名】鴨木 理祥
(72)【発明者】
【氏名】中尾 大輝
【テーマコード(参考)】
4K056
【Fターム(参考)】
4K056AA09
4K056AA12
4K056CA02
4K056CA15
4K056FA10
4K056FA12
(57)【要約】
【課題】ホーロー鋼板などの板材を焼成する焼成炉内における工程が正常に実施されているかを確実に確認することができる技術の提供。
【解決手段】焼成炉10内に送り込まれた板材Pの表面温度を、板材Pが焼成炉10内に送り込まれる入口12および板材Pが焼成炉10外へ送り出される出口13の少なくとも一方を通じてサーモグラフィカメラ6によって測定する板材温度測定方法であって、サーモグラフィカメラ6を収容した筐体2と、筐体2内に空気を供給する空気流入路3と、筐体2内から空気を排出する空気流出路4と、サーモグラフィカメラ6と対向して筐体2に設けられた開口部22wを開放および閉鎖可能な開閉機構5と、を備えるサーモグラフィカメラ冷却箱1の開閉機構5により開口部22wを開放する工程と、開放された開口部22wを介して焼成炉10内の板材Pの温度をサーモグラフィカメラ6により測定する工程と、を含むことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼成炉内に送り込まれた板材の表面温度を、前記板材が前記焼成炉内に送り込まれる入口および前記板材が前記焼成炉外へ送り出される出口の少なくとも一方を通じてサーモグラフィカメラによって測定する板材温度測定方法であって、
前記サーモグラフィカメラを収容した筐体と、前記筐体内に空気を供給する空気流入路と、前記筐体内から空気を排出する空気流出路と、前記サーモグラフィカメラと対向して前記筐体に設けられた開口部を開放および閉鎖可能な開閉機構と、を備えるサーモグラフィカメラ冷却箱の前記開閉機構により前記開口部を開放する工程と、
開放された前記開口部を介して前記焼成炉内の前記板材の温度を前記サーモグラフィカメラにより測定する工程と、
を含むことを特徴とする板材温度測定方法。
【請求項2】
前記板材の表面温度を前記入口の側から測定することを特徴とする請求項1に記載の板材温度測定方法。
【請求項3】
サーモグラフィカメラを収容可能な筐体と、
前記筐体内に空気を供給する空気流入路と、
前記筐体内から空気を排出する空気流出路と、
前記サーモグラフィカメラと対向して前記筐体に設けられた開口部を開放および閉鎖可能な開閉機構と、
を備え、
焼成炉内の板材の表面温度を前記焼成炉の外側から測定することを特徴とするサーモグラフィカメラ冷却箱。
【請求項4】
前記筐体の壁の少なくとも一部が二重壁となっていることを特徴とする請求項3に記載のサーモグラフィカメラ冷却箱。
【請求項5】
前記二重壁の内部に断熱材を有することを特徴とする請求項4に記載のサーモグラフィカメラ冷却箱。
【請求項6】
前記開閉機構は、遠隔操作可能であることを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載のサーモグラフィカメラ冷却箱。
【請求項7】
前記開閉機構は、空気圧制御されていることを特徴とする請求項3から6までのいずれか一項に記載のサーモグラフィカメラ冷却箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板材温度測定方法およびサーモグラフィカメラ冷却箱に関する。
【背景技術】
【0002】
ホーロー(琺瑯)鋼板は、二酸化ケイ素を主成分とするガラス質のホーロー層を冷延鋼板の表面に形成したものであり、チョークボード、マーカーボード、内装用建材など様々な用途に用いられている。ホーロー鋼板は、例えば、冷延鋼板の表面をニッケル処理した後、下地ホーロー層用の釉薬を塗布し、焼成して下地ホーロー層を形成した後、表面ホーロー層用の釉薬を塗布し、焼成して表面ホーロー層を形成する方法等で製造される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ホーロー層を形成するための焼成炉においては、通常、加熱体としてラジアントチューブが用いられている。例えば、ラジアントチューブに割れなどの異常が発生した場合、焼成炉内のホーロー鋼板に対する加熱温度は、必要な温度より低くなり、その結果、製品としての光沢度が基準に達しないことがある。
【0005】
通常、焼成炉内の温度管理は、熱電対等の温度センサによる雰囲気温度の測定により行われる。しかしながら、ラジアントチューブに異常が発生して、ラジアントチューブが必要な加熱出力を発揮できていない場合であっても、加熱出力の低下は焼成炉内の雰囲気温度の変化としては表れにくい。そのため、全製造工程を点検する必要があり、例えば、焼成炉におけるラジアントチューブに異常がある場合であっても、熱電対による焼成炉内の雰囲気温度の測定からでは、例えば、ラジアントチューブの異常を検出することができなかった。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ホーロー鋼板などの板材を焼成する焼成炉内における工程が正常に実施されているかを確実に確認することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の板材温度測定方法は、焼成炉内に送り込まれた板材の表面温度を、前記板材が前記焼成炉内に送り込まれる入口および前記板材が前記焼成炉外へ送り出される出口の少なくとも一方を通じてサーモグラフィカメラによって測定する板材温度測定方法であって、前記サーモグラフィカメラを収容した筐体と、前記筐体内に空気を供給する空気流入路と、前記筐体内から空気を排出する空気流出路と、前記サーモグラフィカメラと対向して前記筐体に設けられた開口部を開放および閉鎖可能な開閉機構と、を備えるサーモグラフィカメラ冷却箱の前記開閉機構により前記開口部を開放する工程と、開放された前記開口部を介して前記焼成炉内の前記板材の温度を前記サーモグラフィカメラにより測定する工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
さらに、上記課題を解決するために、本発明のサーモグラフィカメラ冷却箱は、サーモグラフィカメラを収容可能な筐体と、前記筐体内に空気を供給する空気流入路と、前記筐体内から空気を排出する空気流出路と、前記サーモグラフィカメラと対向して前記筐体に設けられた開口部を開放および閉鎖可能な開閉機構と、を備え、焼成炉内の板材の表面温度を前記焼成炉の外側から測定することを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様にかかるサーモグラフィカメラ冷却箱は、前記筐体の壁の少なくとも一部が、二重壁となっていてもよい。その際、前記筐体は、前記二重壁の内部に断熱材を有していてもよい。
前記開閉機構は、遠隔操作可能であってもよい。その際、前記開閉機構は、空気圧制御されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ホーロー鋼板などの板材を焼成する焼成炉内における工程が正常に実施されているかを確実に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施の形態にかかるサーモグラフィカメラ冷却箱を側面から見た断面図であり、
図5(a)におけるA-A断面図である。
【
図2】本発明の一実施の形態にかかるサーモグラフィカメラ冷却箱の蓋の斜視図である。
【
図3】本発明の一実施の形態にかかるサーモグラフィカメラ冷却箱の蓋の他の斜視図である。
【
図4】本発明の一実施の形態にかかるサーモグラフィカメラ冷却箱の蓋を外した状態における背面図である。
【
図5】本発明の一実施の形態にかかるサーモグラフィカメラ冷却箱の開閉機構の、(a)閉鎖状態および(b)開放状態を示す正面図である。
【
図6】本発明の一実施の形態にかかるサーモグラフィカメラ冷却箱を用いて焼成炉内の板材の温度を測定している状態を示す図である。
【
図7】本発明の一実施の形態にかかるサーモグラフィカメラ冷却箱、焼成炉、および温度測定箇所の位置関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態などについて、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、実施の形態などにおいて共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0013】
本発明にかかるサーモグラフィカメラ冷却箱1は、例えば、ホーロー鋼板を製造する製造ラインにおいて、焼成炉10内を通過している板材Pの表面温度を測定するサーモグラフィカメラ6を収容するものである。本発明にかかるサーモグラフィカメラ冷却箱1は、サーモグラフィカメラ6を収容可能な筐体2と、筐体2内に空気を供給する空気流入路3と、筐体2内から空気を排出する空気流出路4と、サーモグラフィカメラ6と対向して筐体2に設けられた開口部22wを開放および閉鎖可能な開閉機構5と、を備え、焼成炉10内の板材Pの表面温度を焼成炉10の外側から測定することを特徴とする。以下、本発明にかかるサーモグラフィカメラ冷却箱1について
図1~
図5を参照しながら具体的に説明する。
【0014】
以下の説明では、便宜上、筐体2のケース22の底壁22bから天壁22tへ向かう方向を上方、その逆方向を下方とする。典型的な使用方法において、上方および下方は、それぞれ鉛直方向上方および鉛直方向下方に対応する。また、サーモグラフィカメラ6の撮影方向を前方とし、その逆方向を後方とする。なお、上方と下方をまとめて上下方向と、前方と後方をまとめて前後方向と、それぞれ呼称する。この際、上下方向と前後方向は互いに直交する。さらに、上下方向および前後方向の両方に直交する方向を、左右方向と呼称する。
【0015】
図1は、サーモグラフィカメラ冷却箱1を側面(前方から見て右側の側面)から見た断面図であり、
図5(a)におけるA-A断面図である。サーモグラフィカメラ冷却箱1は、筐体2と、空気流入路3と、空気流出路4と、開閉機構5と、を備える。筐体2は、蓋21およびケース22を有する。筐体2は、全体として略直方体状の箱となっており、蓋21およびケース22によって内部にサーモグラフィカメラ6を収容可能な空間を画定する。
【0016】
図2は、サーモグラフィカメラ冷却箱の蓋21を斜め後方から見た斜視図である。
図3は、サーモグラフィカメラ冷却箱の蓋21を斜め前方から見た斜視図である。蓋21は、蓋本体211および蓋側断熱材212を有する。本実施の形態において、蓋本体211は、例えば、SUS304等のステンレスにより形成されている。ただし、蓋本体211は、ステンレス以外の金属または合金、樹脂、木材等のその他の素材により形成されていてもよい。蓋本体211は、蓋側包囲部211aおよび蓋側フランジ部211fを有する。
【0017】
蓋側包囲部211aは中空であり、前後方向の寸法が、上下方向および左右方向の寸法よりもかなり小さい略直方体状(または、厚みのある長方形の平板状)である。蓋側フランジ部211fは、蓋側包囲部211aの後方の面から周囲(上下方向および左右方向)に延在し、蓋側包囲部211aの後方の面と面を共有する。蓋側フランジ部211fの四隅近傍には、孔211hがそれぞれ1つずつ、計4つ形成されている。
【0018】
蓋側断熱材212は、中空である蓋側包囲部211aの内部に収容されている。蓋側断熱材212は、蓋側包囲部211aの内壁により画定される空間の形状(本実施の形態の場合、略直方体状、または厚みのある長方形の平板状)と略同一の形状を有する。蓋側断熱材212は、断熱性を有する素材により形成されている。蓋側断熱材212としては、例えば、無機繊維系断熱材、木質繊維系断熱材、発泡樹脂系断熱材などが挙げられる。なお、蓋側断熱材212の代わりに、空気等の流体を蓋側包囲部211aの内部に封入してもよく、また、蓋側包囲部211aの内部を実質的に真空状態としてもよい。
【0019】
蓋21には、蓋本体211および蓋側断熱材212を前後方向に貫通する4つの円形の貫通孔213a,213b,214,215が形成されている。貫通孔213a,213bには、後述する空気流入路3が接続可能となっている。貫通孔214には、後述する空気流出路4が接続可能となっている。貫通孔215は、後述する覗き窓9を構成する。本実施の形態では、後方から見て、蓋21の蓋側包囲部211aの左下の角の近傍に貫通孔213aが、右下の角の近傍に貫通孔213bが、左上の角の近傍に貫通孔215が、右上の角の近傍に貫通孔214が、それぞれ形成されている。
【0020】
図4は、サーモグラフィカメラ冷却箱1の蓋21を外した状態において後方から見た背面図である。ケース22は、上方の壁である天壁22t、下方の壁である底壁22b、前方の壁である前壁22f(
図1参照)、前方から見て右側の壁である右側壁22r、および前方から見て左側の壁である左側壁22lを有する。ケース22は、天壁22t、底壁22b、前壁22f、右側壁22r、および左側壁22lにより、5方向を囲まれつつ、後方が開放された箱状となっている。ケース22の底壁22bの下方(外側)の面の中央部には、柱8が垂直に接続されており、ケース22は、柱8を介して床に固定されている。
【0021】
ケース22は、ケース本体221およびケース側断熱材222を有する。ケース本体221は、例えば、SUS304等のステンレスにより形成されている。ただし、ケース本体221は、ステンレス以外の金属または合金、樹脂、木材等のその他の素材により形成されていてもよい。ケース本体221は、ケース側包囲部221aおよびケース側フランジ部221fを有する。
【0022】
ケース側包囲部221aは中空であり、後方が開放された箱状となっている。ケース側フランジ部221fは、四角筒部221faおよび接続部221fbを有する。四角筒部221faは、ケース側包囲部221aの上下方向および左右方向の外側の4つの面から後方に延在し、当該4つの面と面を共有する部分である。接続部221fbは、四角筒部221faの後方の端部から周囲(上下方向および左右方向)に垂直に立ち上がり広がる部分である。
【0023】
接続部221fbの四隅近傍には、それぞれ1つずつの孔221hが、計4つ形成されている。それぞれの孔221hは、蓋21の蓋本体211の蓋側フランジ部211fに形成された、それぞれの孔211hに対応する位置に形成されている。蓋21およびケース22は、孔221hおよび孔211hを介して、蓋側フランジ部211fとケース側フランジ部221fとを4本の蓋固定ボルトB1により締結することで接続されている。
【0024】
ケース側断熱材222は、中空であるケース側包囲部221aの壁の内部に収容されている。ケース側断熱材222は、ケース側包囲部221aの内壁により画定される空間の形状(本実施の形態の場合、後方が開放された箱状)と略同一の形状を有する。ケース側断熱材222は、断熱性を有する素材により形成されている。ケース側断熱材222としては、例えば無機繊維系断熱材、木質繊維系断熱材、発泡樹脂系断熱材などが挙げられる。なお、ケース側断熱材222の代わりに、空気等の流体をケース側包囲部221aの内部に封入してもよく、また、ケース側包囲部221aの内部を実質的に真空状態としてもよい。
【0025】
以上述べたように構成されることで、筐体2の壁の少なくとも一部(すなわち、ケース22の天壁22t、底壁22b、前壁22f、右側壁22r、および左側壁22l、ならびに蓋21の蓋側包囲部211aから構成される壁の少なくとも一部)は、二重壁となっている。
【0026】
特に、本実施の形態においては、筐体2の全ての壁において、実質的に全体(すなわち、貫通孔213a,213b,214,215、および開口部22wが形成されていない部分や、ケース22と蓋21との接続部分に生じる僅かな隙間を除いた全体)が二重壁となっている。筐体2は、当該二重壁の内部に断熱材(蓋側断熱材212およびケース側断熱材222)を有する構造となっている。
【0027】
図5は、サーモグラフィカメラ冷却箱1の正面図であって、開閉機構5の、(a)閉鎖状態および(b)開放状態を示す正面図である。筐体2のケース22には、前壁22fを前後方向(厚さ方向)に貫通する円形の開口部22wが形成されている。開口部22wは、サーモグラフィカメラ6の前方のレンズと対向する位置に形成されている(
図1参照)。本実施の形態において、開口部22wは、前方から見て前壁22fの中央部から僅かに左上に形成されている。なお、開口部22wの形状は円形に限られず、サーモグラフィカメラ6による撮影(温度測定)を妨げない限り、任意の形状であってよい。
【0028】
サーモグラフィカメラ6は、固定台7を介してケース22の底壁22bに着脱自在に固定されている(
図4参照)。サーモグラフィカメラ6は、撮影方向がケース22の前壁22fの広がる方向に直交するように固定されている。サーモグラフィカメラ6は、筐体2のケース22の開口部22wを介して、後述する焼成炉10内の板材Pの温度、具体的には表面温度を測定できるようになっている。
【0029】
固定台7は、台座71、2つの治具72、および2つのスペーサ73を有する。台座71は、後方から見て上下が反転したU字状の部品であり、サーモグラフィカメラ6の下端に接続されている。治具72は、後方から見てL字状に屈曲した、前後方向の長さが台座71よりも長い板状の部品であり、台座71の左右方向のそれぞれの側面の外側に接続されている。スペーサ73は、前後方向の長さが治具72よりも長い板状の部品であり、それぞれの治具72の下方の面に接続されている。治具72およびスペーサ73は、4本の固定台固定ボルトB2により、ケース22の底壁22bに固定されている。
【0030】
なお、固定台7の構成はこれに限られず、サーモグラフィカメラ6を固定可能であればいかなる構成であってもよい。また、サーモグラフィカメラ6は、固定台7を介さず、直接ケース22の底壁22bに固定されていてもよい。
【0031】
図2および
図3に戻って、空気流入路3は、導管31、ロッド32a、ロッド32b、リング33aおよびリング33bを有する。導管31は筐体2の外側にあり、蓋21の僅か後方において左右方向で二股に分岐し、後方から見て左側の流路が、リング33aを介して貫通孔213aに接続されている。また、後方から見て右側の流路が、リング33bを介して貫通孔213bに接続されている。
【0032】
ロッド32a,32bは、円筒状の部材である。ロッド32aは、筐体2の内側(蓋21の前方)において、リング33aを介して蓋21および導管31に接続され、蓋21から垂直に立ち上がり前方に延在している。同様に、ロッド32bは、筐体2の内側(蓋21の前方)において、リング33bを介して蓋21および導管31に接続され、蓋21から垂直に立ち上がり前方に延在している。なお、導管31およびロッド32a,32bは、リング33a,33bを介さずに蓋21に直接接続されていてもよい。ロッド32a,32bの前方の端部(導管31に接続された側とは反対側の端部)は閉塞されている。
【0033】
ロッド32aの外周面には、ロッド32aの延在する方向に沿って一列かつ等間隔に、例えば、5つの孔32ahが形成されている。同様に、ロッド32bの外周面には、ロッド32bの延在する方向に沿って一列かつ等間隔に、例えば、5つの孔32bhが形成されている。全ての孔32ahおよび孔32bhは、上方やや内向きにサーモグラフィカメラ6に向いている。導管31からロッド32a,32bに流入した空気は、孔32ahおよび孔32bhを介して筐体2の内部に流入するようになっている。なお、ロッド32a,32bに形成された孔32ah,32bhの数は特に限定されない。
【0034】
空気流出路4は、導管41、サイレンサー42およびリング43を有する。導管41はL字状に屈曲した短いパイプである、導管41は筐体2の外側にあり、リング43を介して蓋21の貫通孔214に接続されている。なお、導管41は、リング43を介さずに蓋21に直接接続されていてもよい。導管41の、蓋21に接続された側とは反対側の端部には、サイレンサー42が接続されている。筐体2の内部に流入した空気は、導管41を通じて筐体2の外部に流出するようになっている。すなわち、空気流入路3から筐体2の内部に流入した空気は、空気流出路4から流出するようになっている。なお、空気流出路4は、サイレンサー42を有していなくてもよい。
【0035】
蓋21の貫通孔215には、リング92を介して窓蓋91が接続されており、これらにより覗き窓9が構成されている。窓蓋91は、貫通孔215に対して着脱自在に接続されている。窓蓋91は、円筒部91aおよび角柱部91bを有する。円筒部91aの直径は、リング92の内径と略同一となっている。リング92の内周部には、図示しない雌ねじが形成されており、窓蓋91の円筒部91aの外周部には、図示しない雄ねじが形成されている。したがって、窓蓋91の円筒部91aは、リング92に螺合するようになっている。なお、覗き窓9は存在しなくてもよい。
【0036】
角柱部91bは略正四角柱状であり、円筒部91aの後方の端面(円形面)の中心において、後方に立ち上がるように固定されている。角柱部91bの寸法は、円筒部91aとの接続面が円筒部91aの後方の端面内に収まる程度である。作業者の手で、または工具を用いて角柱部91bを回転させることにより、窓蓋91を蓋21から外し、貫通孔215を介して筐体2の内部を観察することができる。
【0037】
開閉機構5は、筐体2の前方の外側に配置されており、上側シャッタ51uと、下側シャッタ51dと、上側エアシリンダ52uと、下側エアシリンダ52dと、を有する(
図5参照)。上側シャッタ51uおよび下側シャッタ51dは同一形状を有し、それぞれ開口部22wの上半分および下半分を、筐体2の前方の外側から閉鎖可能な寸法となっている。なお、上側シャッタ51uおよび下側シャッタ51dは同一形状でなくてもよい。
【0038】
上側エアシリンダ52uは、筐体2のケース22の前壁22fの外側の上端近傍において、開口部22wの上方に固定されている。また、下側エアシリンダ52dは、筐体2のケース22の前壁22fの外側において、開口部22wの下方に固定されている。上側シャッタ51uの上端は上側エアシリンダ52uに接続され、下側シャッタ51dの下端は下側エアシリンダ52dに接続されている。開閉機構5は、上側エアシリンダ52uおよび下側エアシリンダ52dを有することにより、空気圧制御による遠隔操作が可能となっている。
【0039】
図5(a)は、上側シャッタ51uおよび下側シャッタ51dにより開口部22wが閉鎖された状態を示す。この際、上側シャッタ51uの下端および下側シャッタ51dの上端は互いに接触し、開口部22wを閉鎖している。上側エアシリンダ52uおよび下側エアシリンダ52dが稼働し、上側エアシリンダ52uが上側シャッタ51uを上方に移動させ、下側エアシリンダ52dが下側シャッタ51dを下方に移動させると、開口部22wが開放された状態となる(
図5(b)参照)。
【0040】
その後、上側エアシリンダ52uおよび下側エアシリンダ52dが再度稼働し、上側エアシリンダ52uが上側シャッタ51uを下方に移動させ、下側エアシリンダ52dが下側シャッタ51dを上方に移動させると、開口部22wが閉鎖された状態となる。このように、開口部22wは、開閉機構5により開放および閉鎖可能となっている(
図5(a)参照)。
【0041】
次に、本発明にかかる板材温度測定方法について説明する。本発明にかかる板材温度測定方法は、焼成炉10内に送り込まれた板材Pの表面温度を、板材Pが焼成炉10内に送り込まれる入口12を通じてサーモグラフィカメラ6によって測定する方法であって、サーモグラフィカメラ6を収容した筐体2と、筐体2内に空気を供給する空気流入路3と、筐体2内から空気を排出する空気流出路4と、サーモグラフィカメラ6と対向して筐体2に設けられた開口部22wを開放および閉鎖可能な開閉機構5と、を備えるサーモグラフィカメラ冷却箱1の開閉機構5により開口部22wを開放する工程と、開放された開口部22wを介して焼成炉10内の板材Pの温度をサーモグラフィカメラ6により測定する工程と、を含むことを特徴とする。以下、サーモグラフィカメラ冷却箱1により焼成炉10内の板材P(ホーロー鋼板など)の温度を測定する本発明にかかる方法について具体的に説明する。
図6は、サーモグラフィカメラ冷却箱1を用いて焼成炉10内の板材Pの温度を測定している状態を示す図である。
図7は、サーモグラフィカメラ冷却箱1、焼成炉10および温度測定箇所Tの位置関係を示す模式図である。
【0042】
板材Pの表面温度を入口12の側から測定する場合、サーモグラフィカメラ冷却箱1を、焼成炉10の上流側の外部(焼成炉10の入口12付近であって、焼成炉10に導入される直前の板材Pの側方)に配置する。この際、サーモグラフィカメラ6が、入口12を介して、焼成炉10の内部下流側における板材Pの上面(表面)の温度を測定することができるよう、サーモグラフィカメラ冷却箱1を焼成炉10に対して斜めに設置する。
【0043】
なお、板材Pは、入口12から焼成炉10に送り込まれ、自重により下方に若干撓みつつ、焼成炉10内の複数のラジアントチューブ11により、例えば、約1000℃で加熱されながら、複数のラジアントチューブ11の上方を下流側へ移動し、出口13から送り出される。焼成炉10内の雰囲気温度は、例えば、約800℃となっている。
【0044】
サーモグラフィカメラ冷却箱1の筐体2から蓋21を取り外した状態で、ケース22の底壁22bに固定台7を介してサーモグラフィカメラ6を固定した後、蓋21をケース22に取り付け、蓋固定ボルトB1で固定する。このようにして、サーモグラフィカメラ冷却箱1の筐体2の内部にサーモグラフィカメラ6を配置する。この際、ケース22の開口部22wは、開閉機構5により閉鎖された状態とする。
【0045】
任意のタイミングで、開閉機構5によりケース22の開口部22wを開放する。サーモグラフィカメラ6により、開放された開口部22wを介して焼成炉10内の板材Pの温度測定箇所Tの表面温度を測定する。測定後、開閉機構5によりケース22の開口部22wを閉鎖する。(1)開口部22wの開放、(2)温度測定、(3)開口部22wの閉鎖、の(1)~(3)の一連の工程を、任意の時間間隔(例えば、10分間隔)において繰り返すことにより、板材Pの温度の継続的なモニタリングを行う。
【0046】
焼成炉10の入口12付近は、焼成炉10の外部でありながらも比較的高温となっているため、ここに直接サーモグラフィカメラ6を設置すると、熱によるサーモグラフィカメラ6の故障または動作不良に繋がる恐れがある。本実施の形態にかかるサーモグラフィカメラ冷却箱1によれば、サーモグラフィカメラ6が筐体2の内部に収容されていることから、サーモグラフィカメラ6に対する熱の影響を抑制することができる。
【0047】
したがって、本実施の形態にかかるサーモグラフィカメラ冷却箱1によれば、焼成炉10内におけるホーロー鋼板などの板材Pの表面温度を、サーモグラフィカメラ6により直接測定することができる。これにより、例えば、製品として光沢度が基準に達しないホーロー鋼板が検出された場合、焼成炉10、具体的には、ラジアントチューブ11の異常によるものか否かを素早く判断することができる。
【0048】
例えば、開閉機構5の代わりに開口部22wをガラスなどにより閉鎖して、焼成炉10から筐体2内部への熱影響を抑制する態様も考えられる。ガラスによって開口部22wを閉鎖した場合、サーモグラフィカメラ6の測定波長がガラスを透過しない。そのため、焼成炉10からの熱影響を抑制する手段として開口部22wをガラスによって閉鎖することはできない。
【0049】
本実施の形態にかかるサーモグラフィカメラ冷却箱1においては、撮影(温度測定)のための開口部22wが、開閉機構5により開放および閉鎖可能となっていることから、温度測定時のみ開口部22wを開放し、それ以外の時間においては常に開口部22wを閉鎖することで、開口部22wからの筐体2内部への熱の侵入を最低限とすることができる。開閉機構5は空気圧制御により遠隔操作可能となっているため、作業者は、焼成炉10から離れた安全な場所から開閉機構5を操作することができる。
【0050】
さらに、本実施の形態にかかるサーモグラフィカメラ冷却箱1においては、空気流入路3から筐体2の内部に流入した空気が、空気流出路4から流出するようになっていることから、空気により筐体2の内部を常時冷却することができ、サーモグラフィカメラ6に対する熱の影響をさらに抑制することができる。
【0051】
加えて、本実施の形態にかかるサーモグラフィカメラ冷却箱1においては、筐体2の壁の少なくとも一部が二重壁となっており、前記二重壁の内部に蓋側断熱材212およびケース側断熱材222を有することから、筐体2自体の断熱性能が高く、サーモグラフィカメラ6に対する熱の影響をさらに抑制することができる。
【0052】
[その他の実施の形態]
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。また、例えば、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。例えば、上記実施の形態においては、サーモグラフィカメラ冷却箱1は、焼成炉10内の板材Pの温度測定用であったが、本発明のサーモグラフィカメラ冷却箱はこれに限らず、サーモグラフィカメラに対する熱の影響が懸念されるいかなる用途に用いるものであってもよい。
【0053】
また、上記の実施の形態においては、板材Pの表面温度は、入口12の側から測定されていたが、本発明のサーモグラフィカメラ冷却箱1を焼成炉10の出口13の側に設けて、出口13の側から焼成炉10内の板材Pの表面温度を測定してもよい。
【0054】
また、上記実施の形態においては、筐体2の壁の少なくとも一部が二重壁となっているが、本発明のサーモグラフィカメラ冷却箱1はこれに限らず、筐体2の壁に二重壁となる部分が存在しなくてもよい。
【0055】
また、上記実施の形態においては、開閉機構5が、筐体2の前方の外側に配置されているが、本発明のサーモグラフィカメラ冷却箱1はこれに限らず、開閉機構5が筐体2の内側に配置されていてもよい。
【0056】
また、上記実施の形態においては、開閉機構5が、上側エアシリンダ52uおよび下側エアシリンダ52dを有することにより、空気圧制御による遠隔操作が可能となっているが、本発明のサーモグラフィカメラ冷却箱1はこれに限らず、開閉機構5がモータ等により電気的に制御されていてもよい。また、シャッタに接続された紐などを引っ張ること等により、シャッタを移動させて開口部22wを開放および閉鎖する方式を採用してもよい。
【0057】
また、上記実施の形態においては、開閉機構5が作業者により手動で操作されているが、本発明のサーモグラフィカメラ冷却箱1はこれに限らず、所定の時間になったら自動でシャッタを移動させて開口部22wを開放および閉鎖するタイマー制御となっていてもよい。また、サーモグラフィカメラ6により測定されたデータは、サーモグラフィカメラ6内部に収容された記憶媒体に記録されていてもよく、無線で外部に送信されるように構成されていてもよい。
【0058】
また、上記実施の形態の開閉機構5においては、上側シャッタ51uおよび下側シャッタ51dがそれぞれ開口部22wの上半分および下半分を閉鎖可能となっているが、本発明のサーモグラフィカメラ冷却箱1はこれに限らず、開口部22wを閉鎖可能であれば、2つのシャッタが開口部22wの右半分および左半分を閉鎖可能となっていてもよいし、一方のシャッタが閉鎖する開口部22wの部分が、他方のシャッタが閉鎖する開口部22wの部分よりも大きくなっていてもよい。
【0059】
また、上記実施の形態の開閉機構5においては、上側シャッタ51uおよび下側シャッタ51dの移動方向が上下方向となっているが、本発明のサーモグラフィカメラ冷却箱はこれに限らず、各シャッタの移動方向が左右方向であってもよい。また、各シャッタの移動方向は、前壁の広がる方向に沿った方向でなくてもよく、例えば、シャッタの一端が前方に向かって旋回するように開いてもよい。さらに、開口部22wを閉鎖可能である限り、シャッタの数は2つに限られず、1つであっても、3つ以上であってもよい。
【0060】
また、上記実施の形態においては、筐体2の後方の壁が蓋21となっているが、本発明のサーモグラフィカメラ冷却箱1はこれに限らず、筐体の天壁22t、底壁22b、前壁22f、右側壁22rおよび左側壁22lからなる群より選択される少なくとも1つの壁が蓋となっていてもよい。
【0061】
また、上記実施の形態においては、空気流入路3および空気流出路4が蓋21に接続されているが、本発明のサーモグラフィカメラ冷却箱1はこれに限らず、筐体2の任意の場所に空気流入路3および空気流出路4が接続されていてもよい。
【0062】
上記実施の形態においては、二股に分かれた導管31からロッド32a,32bに流入した空気が、孔32ahおよび孔32bhを介して筐体2の内部に流入するようになっているが、本発明のサーモグラフィカメラ冷却箱1はこれに限らず、導管が二股に分かれておらず、ロッドが1本であってもよい。また、空気流入路3はロッド32a,32bを有していなくてもよい。空気流入路3は、筐体2の内部に空気を流入できるようになっている限り、任意の構成であってよい。同様に、空気流出路4は、筐体2の内部から空気を流出できるようになっている限り、任意の構成であってよい。
【符号の説明】
【0063】
1…サーモグラフィカメラ冷却箱、2…筐体、21…蓋、211…蓋本体、211a…蓋側包囲部、211f…蓋側フランジ部、211h…孔、212…蓋側断熱材、213a,213b,214,215…貫通孔、22…ケース、221…ケース本体、221a…ケース側包囲部、221f…ケース側フランジ部、221fa…四角筒部、221fb…接続部、221h…孔、222…ケース側断熱材、22b…底壁、22f…前壁、22l…左側壁、22r…右側壁、22t…天壁、22w…開口部、3…空気流入路、31…導管、32a,32b…ロッド、32ah,32bh…孔、33a,33b…リング、4…空気流出路、41…導管、42…サイレンサー、43…リング、5…開閉機構、51d…下側シャッタ、51u…上側シャッタ、52d…下側エアシリンダ、52u…上側エアシリンダ、6…サーモグラフィカメラ、7…固定台、71…台座、72…治具、73…スペーサ、8…柱、9…窓、91…窓蓋、91a…円筒部、91b…角柱部、92…リング、10…焼成炉、11…ラジアントチューブ、12…入口、13…出口、B1…蓋固定ボルト、B2…固定台固定ボルト、P…板材、T…温度測定箇所