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  • 特開-地下構造物用蓋 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114868
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】地下構造物用蓋
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/14 20060101AFI20230810BHJP
【FI】
E02D29/14 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017428
(22)【出願日】2022-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000227593
【氏名又は名称】日之出水道機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安東 健史
【テーマコード(参考)】
2D147
【Fターム(参考)】
2D147BB17
2D147BB21
2D147BB26
(57)【要約】
【課題】車両等の走行に伴う繰り返し荷重に起因して発生する蓋体のガタツキを抑制する地下構造物用蓋を提供する。
【解決手段】地下構造物用蓋1の蓋体5は、枠体4の開口部3の中心軸C1に対して平行な第1の方向D1の第1の向きD11に向けて、蓋本体部10から突出する突出部30を含む。突出部30は、弾性変形可能な変形可能部60を含み、変形可能部60は、第1の向きD11に向かうにつれて先細りする第1の部分80と、第1の部分80に対して第1の向きD11の側に連なり、最小厚みが第1の部分80の最小厚みである第2の部分90と、第2の部分90に対して第1の向きD11の側に連なり、第1の向きD11に向かうにつれて先細りする第3の部分100とを含む。第1の部分80は、枠体4に対して非接触であり、第2および第3の部分90,100は、枠体4に対して接触する第1および第2の接触部92,102をそれぞれ含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面と地下構造物とを繋ぐ開口部を形成する枠体により開閉可能に支持される蓋体を備える地下構造物用蓋であって、
前記蓋体は、前記開口部を閉塞可能な蓋本体部と、
前記蓋本体部の荷重を前記枠体に対して伝達する荷重伝達部と、
前記開口部の中心軸に対して平行な第1の方向における前記路面の側から前記地下構造物の側に向かう第1の向きに向けて、前記蓋本体部の第1の位置から突出する突出部とを含み、
前記突出部は、前記枠体に対する前記蓋体の振動を減衰させるように弾性変形可能な変形可能部を含み、
前記変形可能部は、前記第1の向きに向かうにつれて第1の厚みから第2の厚みに先細りする第1の部分と、
前記第1の部分に対して前記第1の向きの側に連なるとともに最小厚みが前記第2の厚みである第2の部分と、
前記第2の部分に対して前記第1の向きの側に連なるとともに前記第1の向きに向かうにつれて前記第2の厚みから第3の厚みに先細りする第3の部分とを含み、
前記第1の部分は、前記枠体に対して非接触であり、
前記第2の部分は、前記枠体に対して接触する第1の接触部を含み、
前記第3の部分は、前記枠体に対して接触する第2の接触部を含む、地下構造物用蓋。
【請求項2】
前記第1の部分は、前記第1の向きに向かうにつれて前記中心軸に近付くように傾斜する第1の傾斜面を含み、
前記第2の部分は、前記第1の向きに沿って延びる第1のストレート面を含み、
前記第3の部分は、前記第1の向きに向かうにつれて前記中心軸に近付くように傾斜する第2の傾斜面を含み、
前記第1のストレート面は、前記第1の接触部を含み、
前記第2の傾斜面は、前記第2の接触部を含む、請求項1に記載の地下構造物用蓋。
【請求項3】
前記第1の接触部は、前記第1のストレート面と前記第2の傾斜面とを連ねる屈曲部を含み、
前記第2の接触部は、前記屈曲部を含む、請求項2に記載の地下構造物用蓋。
【請求項4】
前記第1の向きに対する前記第2の傾斜面の傾斜角度は、前記第1の向きに対する前記第1の傾斜面の傾斜角度よりも小さい、請求項2または3に記載の地下構造物用蓋。
【請求項5】
前記蓋体を開閉可能に支持する前記枠体をさらに備え、
前記枠体は、前記変形可能部に対して弾性変形を誘起可能な変形誘起可能部を含み、
前記変形誘起可能部は、前記変形可能部に対して非接触の非接触面と、
前記非接触面に対して前記第1の向きの側に連なるとともに前記変形可能部に対して接触する接触面とを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の地下構造物用蓋。
【請求項6】
前記第1の向きに対する前記接触面の傾斜角度は、前記第1の向きに対する前記非接触面の傾斜角度よりも小さい、請求項5に記載の地下構造物用蓋。
【請求項7】
前記蓋体は、前記荷重伝達部と前記突出部とを繋ぐ接続部を含み、
前記荷重伝達部は、前記第1の方向に直交する第2の方向に延びる第2のストレート面を含み、
前記接続部は、前記第2のストレート面に対して前記第1の向きの反対側に向けて窪む凹部を含み、
前記凹部は、前記第1の位置に形成された底面を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の地下構造物用蓋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面と地下構造物とを繋ぐ開口部を形成する枠体により開閉可能に支持される蓋体を備える地下構造物用蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、受枠内の開口空間を広くとることができ、かつ、受枠と蓋本体とのガタツキも防止しうる地下構造物蓋用受枠を提供するために、蓋本体に設けられた蝶番具により開口部を開閉可能なように構成された地下構造物蓋用受枠であって、2つの短辺部と2つの長辺部とを有する略矩形状に形成し、短辺部の平面形状を曲線状に形成し、かつ、長辺部の断面積が短辺部の境界付近から長辺部の中央部に向って徐々に大きくなるように構成したことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-97817号公報(要約)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地下構造物用蓋においては、車両等の走行に伴う繰り返し荷重に起因して発生する蓋体のガタツキを抑制することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、路面と地下構造物とを繋ぐ開口部を形成する枠体により開閉可能に支持される蓋体を備える地下構造物用蓋である。蓋体は、開口部を閉塞可能な蓋本体部と、蓋本体部の荷重を枠体に対して伝達する荷重伝達部と、開口部の中心軸に対して平行な第1の方向における路面の側から地下構造物の側に向かう第1の向きに向けて、蓋本体部の第1の位置から突出する突出部とを含む。突出部は、枠体に対する蓋体の振動を減衰させるように弾性変形可能な変形可能部を含む。変形可能部は、第1の向きに向かうにつれて第1の厚みから第2の厚みに先細りする第1の部分と、第1の部分に対して第1の向きの側に連なるとともに最小厚みが第2の厚みである第2の部分と、第2の部分に対して第1の向きの側に連なるとともに第1の向きに向かうにつれて第2の厚みから第3の厚みに先細りする第3の部分とを含む。第1の部分は、枠体に対して非接触である。第2の部分は、枠体に対して接触する第1の接触部を含む。第3の部分は、枠体に対して接触する第2の接触部を含む。
【0006】
この地下構造物用蓋の蓋体においては、路面側から地下構造物側に向かう第1の向き(典型的には下向き)に向けて蓋本体部から突出する突出部が、枠体に対する蓋体の振動を減衰させるように弾性変形可能な変形可能部を含む。この変形可能部は、第1の向きに向けて順に第1、第2および第3の部分を含み、第1の向きに向かうにつれて共に先細りする第1および第3の部分の間に、最小厚みが第1の部分の最小厚み(第2の厚み)である第2の部分が配置されている。すなわち、共に先細りする第1および第3の部分は、第1の部分の最小厚み以上の厚みが確保された第2の部分を介して連なっている。このため、突出部の起点となる蓋本体部の位置(第1の位置)から第1の向きに向けた距離の増加率に比べて、変形可能部の厚みの減少率を低下させることができる。したがって、変形可能部の厚みを確保しつつ、第1の向きに向けた距離を伸ばしやすい。さらに、この地下構造物用蓋の蓋体においては、突出部の起点(第1の位置)に対する距離が第1の部分よりも遠い第2および第3の部分の接触部(第1の接触部および第2の接触部)を枠体に対して接触させることにより、変形可能部を弾性変形させることができる。このため、変形可能部を弾性変形させる際に、第1および第2の接触部に作用する外力(枠体からの反力)を低減させやすく、結果として、変形可能部の劣化も抑制しやすい。したがって、車両等の走行に伴う繰り返し荷重に起因して発生する蓋体のガタツキを長期間にわたり抑制しやすい地下構造物用蓋を提供することができる。
【0007】
第1の部分は、第1の向きに向かうにつれて中心軸に近付くように傾斜する第1の傾斜面を含み、第2の部分は、第1の向きに沿って延びる第1のストレート面を含み、第3の部分は、第1の向きに向かうにつれて中心軸に近付くように傾斜する第2の傾斜面を含み、第1のストレート面は、第1の接触部を含み、第2の傾斜面は、第2の接触部を含むことが好ましい。
【0008】
この地下構造物用蓋の蓋体においては、第1の向きに向かうにつれて共に先細りする第1および第3の部分が、それぞれ、第1の向きに向かうにつれて中心軸に近付くように傾斜する傾斜面(第1の傾斜面および第2の傾斜面)を含むため、枠体に対して蓋体を開閉する際に、蓋体の変形可能部が枠体に対して干渉することを抑制することができる。このため、変形可能部を弾性変形させる際以外に、変形可能部に対して外力が作用する確率を低減させやすい。さらに、第1および第2の傾斜面が、第1の向きに沿って延びる第1のストレート面を介して連なっているため、変形可能部を弾性変形させる際に、第1の部分を枠体に対して接触させず、第2の部分の第1の接触部を枠体に対して接触させやすい。このため、変形可能部を弾性変形させる際に作用する枠体からの反力を、第1の部分の最小厚み(第2の厚み)以下に先細りする第3の部分だけでなく、第1の部分の最小厚み(第2の厚み)以上の厚みが確保された第2の部分と協働して負担させることができる。したがって、変形可能部の劣化をより一層抑制しやすい。
【0009】
第1の接触部は、第1のストレート面と第2の傾斜面とを連ねる屈曲部を含み、第2の接触部は、この屈曲部を含むことが好ましい。第1の向きに対する傾斜角度が異なる第1のストレート面と第2の傾斜面との屈曲部を枠体に対して接触させることができるため、変形可能部を弾性変形させる際に、第1および第2の接触部の両方に対して間断なく枠体からの反力を作用させやすい。
【0010】
第1の向きに対する第2の傾斜面の傾斜角度は、第1の向きに対する第1の傾斜面の傾斜角度よりも小さいことが好ましい。第1の傾斜面よりも第1の向きの側に配置される第2の傾斜面の傾斜角度を第1の傾斜面の傾斜角度よりも小さくすることにより、第1の向きに向けた変形可能部の厚みの減少率をより一層低下させることができる。
【0011】
この地下構造物用蓋は、蓋体を開閉可能に支持する枠体をさらに備え、枠体は、変形可能部に対して弾性変形を誘起可能な変形誘起可能部を含み、変形誘起可能部は、変形可能部に対して非接触の非接触面と、非接触面に対して第1の向きの側に連なるとともに変形可能部に対して接触する接触面とを含むことが好ましい。突出部の起点(第1の位置)に対する距離が第2および第3の部分よりも近い第1の部分を枠体に対して接触させず、第2および第3の部分の接触部(第1の接触部および第2の接触部)を枠体に対して確実性高く接触させることができる。
【0012】
第1の向きに対する接触面の傾斜角度は、第1の向きに対する非接触面の傾斜角度よりも小さいことが好ましい。非接触面の傾斜角度を接触面の傾斜角度よりも大きくすることにより、第1の部分と枠体とが接触する確率をより一層低減させることができる。
【0013】
蓋体は、荷重伝達部と突出部とを繋ぐ接続部を含み、荷重伝達部は、第1の方向に直交する第2の方向に延びる第2のストレート面を含み、接続部は、第2のストレート面に対して第1の向きの反対側に向けて窪む凹部を含み、凹部は、第1の位置に形成された底面を含むことが好ましい。第2のストレート面に対して窪む凹部の底面が、突出部の起点となる蓋本体部の第1の位置に形成されているため、凹部の底面から突出部を突出させることができる。このため、蓋体自体の第1の方向におけるサイズを大型化することなく、第1および第2の接触部に作用する外力(枠体からの反力)を低減させることができる。したがって、コンパクトな蓋体により変形可能部の劣化を抑制可能な地下構造物用蓋を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る地下構造物用蓋の断面図である。
図2図2は、図1に示す地下構造物用蓋の分解斜視図である。
図3図3は、枠体に対して蓋体が閉じられた状態における地下構造物用蓋の要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る地下構造物用蓋1の断面図である。図2は、地下構造物用蓋1の分解斜視図である。地下構造物用蓋1は、路面RSと地下構造物2とを繋ぐ開口部3を形成する枠体4と、枠体4により開閉可能に支持される蓋体5と、枠体4に対して蓋体5を開閉する際に蓋体5が所定の移動軌跡に沿って移動するように蓋体5の移動を案内する案内機構6と、枠体4に対して蓋体5が閉じられた閉塞状態(以下単に「閉塞状態」という。)で枠体4と蓋体5との間に配置されるシール材7とを備える。地下構造物用蓋1の一例は、下水道における地下埋設物または地下構造施設等と地上とを通じる開口部を閉塞するマンホール蓋,大型鉄蓋,汚水桝蓋、電気設備または通信設備における地下施設機器または地下ケーブル等を保護する開閉可能な共同溝用鉄蓋,送電用鉄蓋,配電用鉄蓋、上水道またはガス配管における路面下の埋設導管およびその付属機器と地上とを結ぶ開閉扉としての機能を有する消火栓蓋,制水弁蓋,仕切弁蓋,空気弁蓋,ガス配管用蓋,量水器蓋等である。
【0016】
枠体4は、開口部3を画定し略円筒形状をなす内周面4aを有する。開口部3は、枠体4の内周面4aによって形成されているため、略円形状をなしている。本例の開口部3の中心軸C1は、鉛直方向VDに沿って延びている。なお、開口部3の中心軸C1は、路面RSに対して交差する方向であり、典型的には路面RSに対して直交する方向である。蓋体5は、開口部3を閉塞可能な蓋本体部10と、蓋本体部10の荷重を枠体4に対して伝達する荷重伝達部20と、蓋本体部10から突出する複数の突出部30と、蓋本体部10を補強する補強部40とを含む。蓋本体部10は、略円板形状であり、閉塞状態において路面RS上に露出する上面11と、閉塞状態において開口部3に対向する下面12と、上面11および下面12を連ねる外周面13とを有する。本例の蓋本体部10の中心軸C2は、閉塞状態において開口部3の中心軸C1と一致する。荷重伝達部20および複数の突出部30は、蓋本体部10と一体に形成されている。荷重伝達部20は、蓋本体部10の下面12の外周部に設けられており、本例では蓋本体部10の周方向CDの全域(全周)にわたり連続的に設けられている。各突出部30は、蓋本体部10に片持ち状に支持されている。複数の突出部30は、蓋本体部10の周方向CDに沿って並んでいる。補強部40は、蓋本体部10の下面12に設けられた格子状のリブを含む。
【0017】
案内機構6は、枠体4に設けられた案内部材45と、蓋体5に設けられ案内部材45に対して案内される被案内部材46とを含む。案内部材45は、被案内部材46を案内する案内孔45aを有する。被案内部材46は、蓋体5に固定され、かつ、案内孔45aに挿入された状態で案内部材45に対して移動する棒状の移動部47と、案内孔45aからの移動部47の抜けを防止する抜け止め部48とを含む。
【0018】
図3は、閉塞状態における地下構造物用蓋1の要部の断面図である。以下において特に記載がない限り、閉塞状態であることを前提として各部材について説明する。各突出部30は、蓋本体部10に設けられた第1の位置P1から、開口部3の中心軸C1に対して平行な第1の方向D1(典型的には鉛直方向VD)における路面RSの側から地下構造物2の側に向かう第1の向きD11(典型的には下向き)に向けて突出する。突出部30は、中心軸C1を中心とする半径方向RDの内側に位置する内側面31と、半径方向RDの外側に位置する外側面32と、内側面31および外側面32を連ねる先端面33とを含む。
【0019】
内側面31は、第1の向きD11に沿って延びるストレート面である。詳しくは後述するが、外側面32は、第1の向きD11における外側面32の端部が、第1の向きD11とは反対側の第2の向きD12(典型的には、上向き)における外側面32の端部よりも内側面31に近付くように、第1の向きD11に対して傾斜する部分を有しており、第1の向きD11に対する外側面32の傾斜角度は、第1の向きD11に向かう途中で変化している。先端面33は、たとえば、半径方向RDにおける中央部が第1の向きD11に突出する湾曲状面である。
【0020】
突出部30は、第1の位置P1において蓋本体部10に連なる根元部50と、根元部50に連なる変形可能部60と、変形可能部60に連なる先端部70とを含む。変形可能部60は、枠体4に接触することによって、蓋本体部10に対する蓋体5の振動を減衰させるように弾性変形している。
【0021】
変形可能部60は、第1の向きD11に向かうにつれて第1の厚みT1から第2の厚みT2に先細りする第1の部分80と、第1の部分80に対して第1の向きD11の側に連なり第1の向きD11に向かうにつれて略一定の厚みである第2の厚みT2を有する第2の部分90と、第2の部分90に対して第1の向きD11の側に連なるとともに第1の向きD11に向かうにつれて第2の厚みT2から第3の厚みT3に先細りする第3の部分100とを含む。本例では、第1の厚みT1>第2の厚みT2>第3の厚みT3となっている。第1の部分80の最大厚みは、第1の厚みT1であり、第1の部分80の最小厚みは、第2の厚みT2である。第2の部分90の最大厚みおよび最小厚みは、第2の厚みT2である。第3の部分100の最大厚みは、第2の厚みT2であり、第3の部分100の最小厚みは、第3の厚みT3である。また、第1の部分80は、根元部50に連なっており、第3の部分100は、先端部70に連なっている。
【0022】
第1の部分80は、第1の向きD11に向かうにつれて開口部3の中心軸C1に近付くように傾斜する第1の傾斜面81を含む。第2の部分90は、第1の向きD11に沿って延びる第1のストレート面91を含む。第3の部分100は、第1の向きD11に向かうにつれて開口部3の中心軸C1に近付くように傾斜する第2の傾斜面101を含む。第1の傾斜面81、第1のストレート面91および第2の傾斜面101は、突出部30の外側面32の一部を構成している。第1の向きD11に対する第2の傾斜面101の傾斜角度θ2は、第1の向きD11に対する第1の傾斜面81の傾斜角度θ1よりも小さい。
【0023】
第1の部分80は、枠体4に対して非接触である。第2の部分90の第1のストレート面91は、枠体4に対して接触する第1の接触部92を含む。第3の部分100の第2の傾斜面101は、枠体4に対して接触する第2の接触部102を含む。第1の接触部92および第2の接触部102は、第1のストレート面91と第2の傾斜面101とを連ねる屈曲部110を含む。
【0024】
なお、閉塞状態における変形可能部60は、第1の接触部92および第2の接触部102が枠体4に対して接触することにより弾性変形している。このため、厳密には、第1のストレート面91は、僅かに変形または傾斜している部分を含む場合があるが、その場合であっても、開口部3の中心軸C1に対して略平行に延びている。したがって、第1の向きD11に対する第1のストレート面91の傾斜角度は、第2の傾斜面101の傾斜角度θ2よりも極めて小さい。枠体4に対して蓋体5が開かれた状態、すなわち、第1の接触部92および第2の接触部102が枠体4に対して接触する前の状態において、開口部3の中心軸C1と蓋本体部10の中心軸C2とを一致させた場合、第1のストレート面91は、開口部3の中心軸C1に対して平行な第1の向きD11に延びている。
【0025】
本例において、第1の接触部92は、屈曲部110のみであり、第2の接触部102は、屈曲部110および第2の傾斜面101における屈曲部110よりも第1の向きD11の側の部分を含んでいるが、これらに限定されない。たとえば、第1の接触部92は、屈曲部110および第1のストレート面91における屈曲部110よりも第2の向きD12の側の部分を含み、第2の接触部102は、屈曲部110のみであってもよい。あるいは、第1の接触部92が、屈曲部110および第1のストレート面91における屈曲部110よりも第2の向きD12の側の部分を含み、かつ、第2の接触部102が、屈曲部110および第2の傾斜面101における屈曲部110よりも第1の向きD11の側の部分を含むものであってもよい。
【0026】
荷重伝達部20は、第1の方向D1に対して直交する第2の方向D2(典型的には、水平方向)に延びる第2のストレート面21を含む。第2のストレート面21は、たとえば、蓋本体部10の中心軸C2を中心とする円環形状を有している。蓋体5は、荷重伝達部20と複数の突出部30とを繋ぐ接続部120をさらに含む。接続部120は、第2のストレート面21に対して第2の向きD12に向けて窪む凹部121を含む。凹部121は、蓋本体部10の中心軸C2を中心とする円環形状を有している。凹部121は、第1の位置P1に形成された底面122と、底面122から第1の向きD11の側に立ち上がる一対の壁面(第1の壁面123および第2の壁面124)とを含む。第1の壁面123は、第2のストレート面21に連なり、第2の壁面124は、突出部30の外側面32に連なる。
【0027】
枠体4は、突出部30の変形可能部60に対して弾性変形を誘起可能な変形誘起可能部130と、荷重伝達部20から伝達される荷重を支持する荷重支持部140と、蓋本体部10を収容する本体収容部150とを含む。変形誘起可能部130は、突出部30に対して非接触の非接触面131と、非接触面131に対して第1の向きD11の側に連なるとともに変形可能部60に対して接触する接触面132とを含む。第1の向きD11に対する接触面132の傾斜角度θ4は、第1の向きD11に対する非接触面131の傾斜角度θ3よりも小さい。接触面132は、変形可能部60の第2の部分90の第1の接触部92と変形可能部60の第3の部分100の第2の接触部102とに接触している。荷重支持部140は、第2の方向D2に延び、荷重伝達部20の第2のストレート面21に接触する荷重支持面141を含む。荷重支持面141は、開口部3の中心軸C1を中心とする円環形状を有している。荷重支持面141は、変形誘起可能部130の非接触面131に連なっている。本体収容部150は、蓋本体部10の外周面13に対向する対向面151を含む。接触面132、非接触面131、荷重支持面141および対向面151は、枠体4の内周面4aの一部を構成している。
【0028】
本例では、第1の傾斜面81の傾斜角度θ1は、非接触面131の傾斜角度θ3よりも小さく、第2の傾斜面101の傾斜角度θ2は、接触面132の傾斜角度θ4よりも少なくとも小さくなるように設計されている。第2の傾斜面101の傾斜角度θ2と、接触面132の傾斜角度θ4とは同じであってもよい。
【0029】
シール材7は、たとえば、Oリング等の弾性部材である。シール材7は、凹部121に収容された第1のシール部152と、凹部121からはみ出した第2のシール部153とを含む。第2のシール部153は、複数の突出部30の根元部50と変形誘起可能部130の非接触面131との間の空間133に位置する。シール材7は、非接触面131および一対の壁面123,124に接触する。これにより、路面RSから流入する雨水や油等の液状体が、枠体4と蓋体5との隙間を通じて、荷重伝達部20よりも地下構造物2の側に浸入することを抑制できる。
【0030】
この地下構造物用蓋1によれば、蓋本体部10から突出する突出部30の変形可能部60は、第1の向きD11に向けて順に第1の部分80、第2の部分90、および、第3の部分100を含み、第1の向きD11に向かうにつれて共に先細りする第1の部分80および第3の部分100の間に、最小厚みが第1の部分80の最小厚み(第2の厚みT2)である第2の部分が配置されている。すなわち、共に先細りする第1の部分80および第3の部分100は、第1の部分80の最小厚み以上の厚みが確保された第2の部分90を介して連なっている。このため、突出部30の起点となる蓋本体部10の位置(第1の位置P1)から第1の向きD11に向けた距離の増加率に比べて、変形可能部60の厚みの減少率を低下させることができる。したがって、変形可能部60の厚みを確保しつつ、第1の向きD11に向けた距離を伸ばすことができる。さらに、この地下構造物用蓋1の蓋体5においては、突出部30の起点(第1の位置P1)に対する距離が第1の部分80よりも遠い第2の部分90および第3の部分100の接触部(第1の接触部92および第2の接触部102)を枠体4に対して接触させることにより、変形可能部60を弾性変形させることができる。このため、変形可能部60を弾性変形させる際に、第1の接触部92および第2の接触部102に作用する外力(枠体4の接触面132からの反力)を低減させることができ、結果として、変形可能部60の劣化も抑制することができる。したがって、車両等の走行に伴う繰り返し荷重に起因して発生する蓋体5のガタツキを長期間にわたり抑制可能な地下構造物用蓋1を提供することができる。
【0031】
さらに、この地下構造物用蓋1の蓋体5においては、第1の向きD11に向かうにつれて共に先細りする第1の部分80および第3の部分100が、それぞれ、第1の向きD11に向かうにつれて中心軸C1に近付くように傾斜する傾斜面(第1の傾斜面81および第2の傾斜面101)を含むため、枠体4に対して蓋体5を開閉する際に、蓋体5の変形可能部60が枠体4に対して干渉することを抑制することができる。このため、変形可能部60を弾性変形させる際以外に、変形可能部60に対して外力が作用する確率を低減させることができる。さらに、第1の傾斜面81および第2の傾斜面101が、第1の向きD11に沿って延びる第1のストレート面91を介して連なっているため、変形可能部60を弾性変形させる際に、第1の部分80を枠体4に対して接触させず、第2の部分90の第1の接触部92を枠体4に対して接触させることができる。このため、変形可能部60を弾性変形させる際に作用する枠体4の接触面132からの反力を、第1の部分80の最小厚み(第2の厚みT2)以下に先細りする第3の部分100だけでなく、第1の部分80の最小厚み(第2の厚みT2)が確保された第2の部分90と協働して負担させることができる。したがって、変形可能部60の劣化をより一層抑制することができる。
【0032】
この地下構造物用蓋1によれば、第1の接触部92は、第1のストレート面91と第2の傾斜面101とを連ねる屈曲部110を含み、第2の接触部102は、この屈曲部110を含む。このため、第1の向きD11に対する傾斜角度θ1,θ2が異なる第1のストレート面91と第2の傾斜面101とを連ねる屈曲部110を枠体4に対して接触させることができる。したがって、変形可能部60を弾性変形させる際に、第1の接触部92および第2の接触部102の両方に対して間断なく枠体4の接触面132からの反力を作用させることができる。
【0033】
さらに、この地下構造物用蓋1によれば、第1の傾斜面81よりも第1の向きD11の側に配置される第2の傾斜面101の傾斜角度θ2は、第1の傾斜面81の傾斜角度θ1よりも小さい。そのため、第1の向きD11に向けた変形可能部60の厚みの減少率をより一層低下させることができる。
【0034】
さらに、この地下構造物用蓋1によれば、枠体4は、変形可能部60に対して弾性変形を誘起可能な変形誘起可能部130を含み、変形誘起可能部130は、変形可能部60に対して非接触の非接触面131と、非接触面131に対して第1の向きD11の側に連なるとともに変形可能部60に対して接触する接触面132とを含む。このため、突出部30の起点(第1の位置P1)に対して第2の部分90および第3の部分100よりも近い第1の部分80を枠体4に対して接触させず、第2の部分90および第3の部分100の接触部(第1の接触部92および第2の接触部102)を枠体4の接触面132に対して確実に接触させることができる。さらに、第2の傾斜面101の傾斜角度θ2が、接触面132の傾斜角度θ4と同じか傾斜角度θ4よりも小さくなるように設計されているため、第2の接触部102と接触面132との接触面積を増加(接触領域を拡大)させやすい。したがって、第2の接触部102に作用する外力(枠体4の接触面132からの反力)を分散させやすく、変形可能部60の劣化も抑制しやすい。
【0035】
さらに、この地下構造物用蓋1によれば、非接触面131の傾斜角度θ3は、接触面132の傾斜角度θ4よりも大きい。このため、第1の部分80と枠体4の非接触面131とが接触する確率をより一層低減させることができる。さらに、第1の傾斜面81の傾斜角度θ1が、非接触面131の傾斜角度θ3よりも小さくなるように設計されているため、第1の部分80と枠体4の非接触面131との接触を確実に防止することができる。
【0036】
さらに、この地下構造物用蓋1によれば、第2のストレート面21に対して窪む凹部121の底面122が、突出部30の起点となる蓋本体部10の第1の位置P1に形成されているため、凹部121の底面122から突出部30を突出させることができる。このため、蓋体5自体の第1の方向D1におけるサイズを大型化することなく、第1の接触部92および第2の接触部102に作用する外力(枠体4の接触面132からの反力)を低減させることができる。したがって、コンパクトな蓋体5により変形可能部60の劣化を抑制可能な地下構造物用蓋1を提供することができる。
【0037】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されず、特許請求の範囲に規定されたものを含む。たとえば、上述の実施形態とは異なり、変形可能部60の第2の部分90は、最小厚みが第1の部分80の最小厚み(第2の厚みT2)であればよく、第1の部分80の最小厚み(第2の厚みT2)よりも厚みが大きい部分を有していてもよい。また、突出部30は、必ずしも複数設けられている必要はなく、蓋本体部10から第1の向きD11に向けて突出する単一の突出部が設けられていてもよい。
【0038】
また、上記の実施形態では、「水平」、「平行」、「鉛直」、「円板形状」、「円環形状」、「円筒形状」、「平坦」といった表現を用いたが、厳密にこれらの状態であることを要しない。すなわち、これらの各表現は、製造精度、設置精度等のずれを許容するものである。
【符号の説明】
【0039】
1 地下構造物用蓋、2 地下構造物、3 開口部、4 枠体、5 蓋体、10 蓋本体部、20 荷重伝達部、21 第2のストレート面、30 突出部、80 第1の部分、81 第1の傾斜面、90 第2の部分、91 第1のストレート面、92 第1の接触部、100 第3の部分、101 第2の傾斜面、102 第2の接触部、110 屈曲部、120 接続部、121 凹部、122 底面、130 変形誘起可能部、131 非接触面、132 接触面、C1 中心軸、D1 第1の方向、D11 第1の向き、D12 第2の向き(第1の向きの反対側)P1 第1の位置、RS 路面、T1 第1の厚み、T2 第2の厚み、T3 第3の厚み、θ1 傾斜角度、θ2 傾斜角度、θ3 傾斜角度、θ4 傾斜角度
図1
図2
図3