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特開2023-114873混練物の分散度評価装置、シート成形装置及び混練物の分散度評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114873
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】混練物の分散度評価装置、シート成形装置及び混練物の分散度評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/17 20060101AFI20230810BHJP
   B29B 7/22 20060101ALI20230810BHJP
   B29B 7/58 20060101ALI20230810BHJP
   B29C 48/25 20190101ALI20230810BHJP
   B29C 48/07 20190101ALI20230810BHJP
   G01N 33/44 20060101ALI20230810BHJP
   B29C 43/32 20060101ALI20230810BHJP
   B29C 43/24 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
G01N21/17 A
B29B7/22
B29B7/58
B29C48/25
B29C48/07
G01N33/44
B29C43/32
B29C43/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017441
(22)【出願日】2022-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000229047
【氏名又は名称】日本スピンドル製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】木嶋 敬昌
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 久司
【テーマコード(参考)】
2G059
4F201
4F204
4F207
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB08
2G059EE02
2G059EE04
2G059EE09
2G059FF01
2G059HH01
2G059HH02
2G059HH03
2G059HH05
2G059KK04
4F201AB11
4F201AB13
4F201AG01
4F201AP02
4F201AP12
4F201AP15
4F201AQ01
4F201AQ03
4F201AR02
4F201AR13
4F201AR16
4F201BA01
4F201BC02
4F201BD05
4F201BK01
4F201BK02
4F201BK13
4F201BK14
4F201BK75
4F204AB13
4F204AC03
4F204AG01
4F204AM29
4F204AR20
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4F204FG08
4F204FJ09
4F204FN11
4F204FN15
4F204FQ31
4F207AB11
4F207AB13
4F207AG01
4F207AP02
4F207AP12
4F207AP15
4F207AQ01
4F207AQ03
4F207AR02
4F207AR13
4F207AR16
4F207KA01
4F207KA17
4F207KK26
4F207KK64
(57)【要約】      (修正有)
【課題】混練後の混練物の状態そのものが反映され、迅速かつ精度の高い分散度評価を行うことが可能な混練物の分散度評価装置を提供する。
【解決手段】高分子材料と分散質とを混練する混練装置1Aの後段に設けられ、混練装置から排出された混練物を移送する移送部20と、移送部上にある混練物に対する測定によって混練物の分散度を検出する検出部30Aとを備え、混練物から切片(評価試験体)を切り出すなどの前処理を行うことなく、混練装置から排出された混練物の状態をそのまま反映した形での分散度を的確に把握し、迅速かつ高精度な分散度評価を容易に行うことができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子材料と分散質との混練物の分散度を評価する装置であって、
前記高分子材料と前記分散質とを混練する混練装置の後段に設けられ、
前記混練装置から排出された前記混練物を移送する移送部と、
前記移送部上にある前記混練物に対する測定によって前記高分子材料への前記分散質の分散度を検出する検出部と、を備えることを特徴とする、混練物の分散度評価装置。
【請求項2】
前記混練物をシート状に成形する成形手段を備え、
前記検出部は、前記成形手段によってシート状に成形された混練物に対する測定を行うことを特徴とする、請求項1に記載の混練物の分散度評価装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記混練物に対する多点測定を行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載の混練物の分散度評価装置。
【請求項4】
前記検出部は、
前記混練物からの電磁波を観測する電磁波測定部を備えることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の混練物の分散度評価装置。
【請求項5】
前記検出部は、
前記混練物に接触する受圧部を有し、前記混練物にかかる圧力値を測定する圧力測定部と、
前記混練物に接触する電極部と、前記電極部が有する一対の電極の間に所定の測定用電圧を印加する電圧印加部と、を有し、前記混練物の電気特性値を測定する電気特性測定部と、
前記電気特性測定部により測定した電気特性値と分散度との関係に対し、前記圧力測定部により測定される圧力値を用いた補正を加えることにより、前記高分子材料への前記分散質の分散度を算出する補正演算部と、を備えることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の混練物の分散度評価装置。
【請求項6】
高分子材料と分散質との混錬物をシート状に成形するシート成形装置であって、
前記混錬物が供給される押出機と、圧延ロールと、を備える成形手段と、
前記成形手段の後段に、請求項1~5のいずれか一項に記載の混練物の分散度評価装置と、を備えることを特徴とする、シート成形装置。
【請求項7】
高分子材料と分散質との混練物の分散度を評価する方法であって、
前記高分子材料と前記分散質とを混練する混練ステップと、
前記混練ステップから排出された前記混練物を移送する移送ステップと、
前記移送ステップ中に、前記混練物に対する測定を行い、前記高分子材料への前記分散質の分散度を検出する検出ステップと、を備えることを特徴とする、混練物の分散度評価方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子材料と分散質とを混練した混練物において、高分子材料への分散質の分散度(以下、「混練物の分散度」とも呼ぶ)を評価する装置及び方法に関するものである。
また、本発明は、高分子材料と分散質とを混練した混練物の分散度を評価することのできるシート成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原料ゴムや原料プラスチックなどの高分子材料と分散質とを混練した混練物は、様々な分野において製品として利活用されている。この混練物を製品として提供するに当たり、製品の物性や品質の良・不良に係る状態は、高分子材料への分散質の分散度(混練物の分散度)と関連することから、この分散度を適切に評価することが求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、未加硫ゴム又は加硫ゴムに分散質(フィラー)を含有するゴム素材におけるフィラー分散度の評価において、ゴム素材から評価試験体を得るための前処理方法として、冷却手段によってゴム素材を冷却した後、切断手段による切断を行うことが記載されており、この前処理方法によって得られた評価試験体の切断面を撮像手段によって撮像することでフィラー分散度を評価することが記載されている。また、特許文献1に記載された分散度評価では、評価試験体を得るための前処理方法を経ることにより、評価試験体の切断面が乱れることがなく、撮像手段によるフィラー分散度評価を適切に行うことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-237177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるように、これまでの混練物の分散度評価においては、混練物から評価試験体として切片を切り出し、その切片に対して分散度を評価することが行われていた。しかし、混練物から切り出した評価試験体を用いて分散度を評価する場合、その評価結果を得るまでに時間を要し、作業効率の面から好ましくないことに加え、分散度の評価結果を混練物の混練工程における運転条件に速やかに反映させることが困難である。また、特許文献1のように、混練物から評価試験体を切り出すため、冷却工程などの前処理を経る場合、混練工程後の混練物の状態そのものを反映した評価とはならないことから、混練物の品質管理の面から適切な分散度評価を行うことが困難である。
【0006】
一方、混練工程における混練物の状態を直接確認するために、混練装置内で混練物の分散度を評価することも検討されている。しかし、混練工程中に混練装置内における混練物の分散度を測定する場合、混練物の状態がドラスティックに変化するため、分散度を得るための測定・演算が困難であることに加え、混練装置の更新によりイニシャルコストの増加や混練条件の再検討等が生じるため、運用及びコストの面で課題がある。
【0007】
本発明の課題は、混練物の分散度評価において、混練後の混練物の状態そのものが反映され、迅速かつ精度の高い分散度評価を容易に行うことが可能な混練物の分散度評価装置、シート成形装置及び混練物の分散度評価方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、混練装置から排出された混練物に対し、切片(評価試験体)の切り出しなどの前処理を行うことなく、混練装置から排出された状態のまま分散度の検出を行うことで、混練物における分散質の分散状態を迅速かつ高精度で把握し、分散度評価を行うことができるという知見に至り、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の混練物の分散度評価装置、シート成形装置及び混練物の分散度評価方法である。
【0009】
上記課題を解決するための本発明の混練物の分散度評価装置は、高分子材料と分散質との混練物の分散度を評価する装置であって、高分子材料と分散質とを混練する混練装置の後段に設けられ、混練装置から排出された混練物を移送する移送部と、移送部上にある混練物に対する測定によって高分子材料への分散質の分散度を検出する検出部と、を備えることを特徴とするものである。
本発明の混練物の分散度評価装置によれば、混練装置から排出された混練物を移送する箇所で分散度の検出を行うことで、混練物から切片(評価試験体)を切り出すなどの前処理を行うことなく、混練物における分散質の分散状態について、混練装置から排出された混練物の状態をそのまま反映した形で的確に把握できるとともに、迅速かつ高精度な分散度評価を容易に行うことができる。
【0010】
また、本発明の混練物の分散度評価装置に係る一実施態様としては、混練物をシート状に成形する成形手段を備え、検出部は、成形手段によってシート状に成形された混練物に対する測定を行うことを特徴とするものである。
この特徴によれば、混練物をシート状に成形した状態における分散度について把握することができる。これにより、製品あるいは製品に近い形での分散度評価を行うことが可能となり、製品の品質管理に係る精度を高めることが可能となる。
【0011】
また、本発明の混練物の分散度評価装置に係る一実施態様としては、検出部は、混練物に対する多点測定を行うことを特徴とするものである。
混練物における分散質の分散状態は必ずしも一様ではなく、混練物の分散度評価において、混練物の極一部で分散度の検出を行っても混練物全体の分散状態を適切に反映したものとはならないことがある。特に成形後の混練物においては、混練物における分散質の分散状態に偏りが発生する可能性があり、この分散状態に係る情報を適切に把握することが必要となる。
一方、この特徴によれば、混練物の複数箇所における分散度の検出を行うことができ、混練物の分散度について、検出箇所間におけるばらつきの有無やその程度に関する情報を得ることが可能となる。これにより、混練物における分散質の分散状態をより的確に把握することが可能となり、特に成形品(製品)の品質管理に係る精度をより一層高めることが可能となる。
【0012】
また、本発明の混練物の分散度評価装置に係る一実施態様としては、検出部は、混練物からの電磁波を観測する電磁波測定部を備えることを特徴とするものである。
この特徴によれば、混練物からの電磁波を観測することで、混練物の表面の凹凸を把握することが可能となる。これにより、混練物における分散質の分散状態を示す指標である分散度は、混練物表面に露出した分散質の大きさや数から求めることができ、混練物の分散度の検出を非接触かつ迅速に行うことができる。
【0013】
また、本発明の混練物の分散度評価装置に係る一実施態様としては、検出部は、混練物に接触する受圧部を有し、混練物にかかる圧力値を測定する圧力測定部と、混練物に接触する電極部と、電極部が有する一対の電極の間に所定の測定用電圧を印加する電圧印加部と、を有し、混練物の電気特性値を測定する電気特性測定部と、電気特性測定部により測定した電気特性値と分散度との関係に対し、圧力測定部により測定される圧力値を用いた補正を加えることにより、高分子材料への分散質の分散度を算出する補正演算部と、を備えることを特徴とするものである。
高分子材料に対し導電性を有する分散質を分散させる混練物においては、分散質の分散状態を示す指標である分散度は、混練物の電気特性値を用いて算出することができる。また、このときの分散度は、混練物にかかる圧力値により変動する。よって、この特徴によれば、混練物の電気特性値を測定して、この電気特性値により混練物中の導電性を有する分散質の分散状態を把握し、さらに圧力測定部により測定される圧力値による補正を加えることで、混練物の分散度を直接的かつ正確に評価することが可能となる。
【0014】
上記課題を解決するための本発明のシート成形装置は、押出機と、圧延ローラとを備える成形手段と、成形手段の後段に上述した混練物の分散度評価装置とを備えることを特徴とするものである。
このシート成形装置によれば、混練物をシート状に成形するとともに、シート状に成形した混練物を移送する箇所で分散度の検出を行うことで、混練物から切片(評価試験体)を切り出すなどの前処理を行うことなく、シート状に成形した状態における混練物の分散度について把握することができる。これにより、製品あるいは製品に近い形での分散度評価を行うことが可能となり、製品の品質管理に係る精度を高めることが可能となる。
【0015】
上記課題を解決するための本発明の混練物の分散度評価方法は、高分子材料と分散質との混練物の分散度を評価する方法であって、高分子材料と分散質とを混練する混練ステップと、混練ステップから排出された混練物を移送する移送ステップと、移送ステップ中に、混練物に対する測定を行い、高分子材料への分散質の分散度を検出する検出ステップと、を備えることを特徴とするものである。
この混練物の分散度評価方法によれば、混練ステップから排出された混練物の移送ステップ中に分散度の検出ステップを行うことで、混練物から切片(評価試験体)を切り出すなどの前処理を行うことなく、混練物における分散質の分散状態について、混練ステップから排出された混練物の状態をそのまま反映した形で的確に把握できるとともに、迅速かつ高精度な分散度評価を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、混練物の分散度評価において、混練後の混練物の状態そのものが反映され、迅速かつ精度の高い分散度評価を容易に行うことが可能な混練物の分散度評価装置及び混練物の分散度評価方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施態様における混練物の分散度評価装置の構造を示す概略説明図である。
図2】本発明の第1の実施態様における混練装置の構造を示す概略説明図である。(A)正面断面図である。(B)平面図である。
図3】本発明の第1の実施態様における成形手段の構造を示す概略説明図である。(A)側面図である。(B)平面図である。
図4】本発明の第1の実施態様における検出部の構造を示す概略説明図である。(A)側面図である。(B)正面図である。
図5】本発明の第1の実施態様における検出部の別態様を示す概略説明図である。(A)全体図である。(B)拡大図である。
図6】本発明の第2の実施態様における混練物の分散度評価装置の構造を示す概略説明図である。(A)側面図である。(B)平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る混練物の分散度評価装置及び混練物の分散度評価方法の実施態様を詳細に説明する。
なお、実施態様に記載する混練物の分散度評価装置については、本発明に係る混練物の分散度評価装置を説明するために例示したに過ぎず、これに限定されるものではない。
また、本発明の混練物の分散度評価方法については、以下に記載する混練物の分散度評価装置の構造及び作動の説明に置き換えるものとする。
【0019】
本発明の混練物の分散度評価装置は、高分子材料と分散質とを混練した混練物において、高分子材料への分散質の分散度(混練物の分散度)を評価するための装置である。
なお、本発明における「分散度」とは、高分子材料への分散質の分散の度合いを示すものであればよく、例えば、数値で表すもの、パーセンテージで表すもの、段階的な指標(例えば、分散度低、分散度中、分散度高)で表すものなどが挙げられる。さらに他の例としては、例えば、ある大きさの分散質の塊(集合体)の数・有無に係るものや、存在する分散質の塊の大きさの最大値で表すものなどが挙げられる。
【0020】
本発明において評価対象となる混練物を形成する高分子材料と分散質については、公知の材料から適宜選択することができ、特に限定されない。
本発明における高分子材料の一例としては、例えば、ゴム製品やプラスチック製品などを作製するための原料ゴムや原料プラスチックなどの樹脂材料が挙げられる。
また、本発明における分散質は、ゴム製品やプラスチック製品などを作製する際に用いられる粒状の物質である。分散質としては、例えば、カーボン粒子等のフィラー、金属粉などの導電性の高い分散質が好ましい。しかしながら、導電性が高くない分散質であっても本発明に適応可能なことは言うまでもない。
【0021】
〔第1の実施態様〕
図1は、本発明の第1の実施態様における混練物の分散度評価装置の構造を示す概略説明図である。なお、図1(A)~(C)は、本実施態様における混練物の分散度評価装置に係る各構成の配置が異なるものを示している。
本実施態様における混練物の分散度評価装置10A(以下、単に「評価装置10A」と呼ぶ)は、図1に示すように、混練装置1Aの後段に設けられ、混練装置1Aから排出された混練物Mを移送する移送部20と、混練物Mの分散度を検出する検出部30Aとを備えるものである。
また、本実施態様における評価装置10Aは、混練装置1Aから排出された混練物Mをシート状に成形する成形手段40を備え、検出部30Aは、シート状に成形された混練物M(シートS)に対する測定を行うものである。
【0022】
本実施態様の評価装置10Aは、混練後の混練物Mにおける分散度を検出して評価を行うものであり、混練装置1Aの後段に成形手段40及び検出部30Aを備えるものであればよく、各構成の位置関係については特に限定されない。
例えば、図1(A)に示すように、本実施態様の評価装置10Aの一例としては、混練装置1Aの上方から高分子材料と分散質を投入し、混練装置1Aの下方から排出された混練物Mが成形手段40に供給され、成形手段40を介して成形された混練物M(シートS)は、移送部20によって地面と略水平方向に移送されるとともに、検出部30Aによる測定を行うものが挙げられる。
また、本実施態様の評価装置10Aの他の例としては、図1(B)に示すように、混練装置1Aの上方から高分子材料と分散質を投入し、混練装置1Aの側面から排出された混練物M(シートS)が成形手段40に供給され、成形手段40を介して成形された混練物Mは、移送部20によって地面と略水平方向に移送されるとともに、検出部30Aによる測定を行うものや、図1(C)に示すように、混練装置1Aの上方から高分子材料と分散質を投入し、混練装置1Aの下方から排出された混練物Mが成形手段40に供給され、成形手段40を介して成形された混練物M(シートS)は、移送部20によって地面と略垂直方向に移送されるとともに、検出部30Aによる測定を行うもの等が挙げられる。
以下、本実施態様における評価装置10Aに係る各構成について説明する。
【0023】
(混練装置)
本実施態様における混練装置1Aは、高分子材料と分散質から混練物Mを得るためのものであり、高分子材料と分散質とを混練する混練ステップを行うためのものである。
ここで、本実施態様の混練装置1Aの構造については、高分子材料と分散質とを混練する混練ステップを行うことができるものであれば特に限定されず、公知の構造を用いることができる。
【0024】
図2は、本実施態様における混練装置1Aの一例を示す概略説明図である。なお、図2(A)は正面断面図であり、図2(B)は上方から見た平面図である。
図2(A)に示すように、本実施態様における混練装置1Aの主要部は、高分子材料と分散質を内部に収容するケーシング2と、ケーシング2の内部に配置された一対のロータ3を備え、いわゆる密閉式の混練装置に係る構造を有するものである。なお、図2に示した混練装置1Aは、混練装置1Aの上方から高分子材料と分散質とを投入し、下方から混練物Mを排出する構造を有するものを示しており、図1(A)や図1(C)における混練装置1Aとして好適に用いられるものである。
【0025】
ケーシング2は、図2(A)、図2(B)に示すように、半円筒状左壁部2c、半円筒状右壁部2d、前壁部2e、後壁部2fにより囲まれた混合室4が形成され、混合室4の天面には、混練材料(高分子材料と分散質)を投入するための投入口2a、混合室4の底面には、混練物Mを排出するための排出口2bを有する。投入口2a及び排出口2bには、それぞれ投入口蓋部2g及び排出口蓋部2hを備えており、混合室4を密閉することが可能である。投入口蓋部2g及び排出口蓋部2hの内面形状は、半円筒状左壁部2cと半円筒状右壁部2dの内面形状と共に半円筒形状となるように形成されている。半円筒状左壁部2cと半円筒状右壁部2dは、ケーシング2における一対のロータ3の周囲を覆う部位となる。また、前壁部2e、後壁部2fは、ケーシング2におけるロータ3の軸部3aに対して直交して配置される。
なお、ケーシング2の内面形状は、ロータ3の羽根部3bの形状等に応じて適宜決定されるものであり、また、投入口蓋部2gや排出口蓋部2hの内面形状は、設置位置等に応じて適宜決定するものである。例えば、投入口蓋部2gをケーシング2の天面に配置する場合には、内面形状は平らな形状としてもよい。
【0026】
投入口蓋部2gは、ケーシング2に対して上下に移動できるように配置される。投入口蓋部2gを上方に移動してケーシング2の上部を開放した状態で、混合室4内に混練材料として高分子材料と分散質が投入される。そして、投入口蓋部2gを下方に移動し、混合室4を密閉する。混合室4が密閉された状態で、ロータ3が回転することにより混練材料の混練が行われる。また、投入口蓋部2gは、混練時において混合室4の方向にエアシリンダなどの駆動装置を利用して加圧することができる。
高分子材料と分散質が混合されると、得られた混練物Mは、排出口2bから排出する。排出口蓋部2hは、排出口2bを開閉可能な状態でケーシング2に設置する。
【0027】
ロータ3は、軸部3aと軸部3aの表面に形成された羽根部3bを有している。羽根部3bは、混合室4内において軸部3aに沿って螺旋状に形成される。ロータ3は、電動モータなどのロータ駆動装置(不図示)により回転して混練を行う。
なお、ロータ3の回転方向や速度は、十分な混練が可能であれば特に限定されるものではない。例えば、ロータ3の回転は、一対のロータ3が互いに異回転の非噛み合い型であっても、同回転の噛み合い型としてもよい。
また、羽根部3bの羽根の大きさや形状、螺旋構造の周期は、混合室4内における混練材料の流動挙動を最適にして十分な混練が可能であれば任意のものでよい。
【0028】
なお、ロータ3により混練すると、混練物Mのせん断や変形等により発熱して、混練物Mが高温化することがある。混練物Mが高温化すると、混練物Mの品質を低下させるおそれがあることから、混合室4の内部の温度を調節するための温度調節機構を設置してもよい(不図示)。温度調節機構としては、ケーシング2の外周面に配置されたジャケットや、ロータの内部に形成した空洞などに、冷媒を流通して間接的に混練物Mを冷却する手段や、冷気を混合室4の内部に流通して直接的に混練物Mを冷却する手段等が挙げられる。
【0029】
(成形手段)
本実施態様の評価装置10Aにおける成形手段40は、混練装置1Aで混練を行った後の混練物Mをシート状に成形するものであればよく、具体的な構造については特に限定されない。本実施態様の成形手段40としては、押出機や圧延ロール、またはこれらを組み合わせた成形装置等が挙げられる。なお、本実施態様における成形手段40は、本発明におけるシート成形装置に係る成形手段として適用可能なものである。
【0030】
図3は、本実施態様の成形手段40の一例を示す概略説明図であり、押出機と圧延ロールを備える成形装置を示している。なお、図3(A)は側面図であり、図3(B)は上方向から見た平面図である。
図3に示すように、成形手段40の主要部は、押出機41と、対をなす圧延ロール42a及び42bを備える。
【0031】
押出機41は、筐体43と、筐体43内部に収納されたコーン型のスクリューロール44を備え、筐体43の上部には混練装置1から供給される混練物Mの投入口45が形成されている。このスクリューロール44は先端側が低くなるように設けられており、回転が与えられることで、供給された混練物Mを順次押し出し、スクリューロール44の先端側に隣接して設けられる対をなす圧延ロール42a及び42bに供給される。このとき、図3(B)に示すように、スクリューロール44と圧延ロール42a及び42bとの間に、2枚の側板46が配置された空間を形成し、この両側板46の間隔によって成形するシートSのシート幅Wが決定される。また、圧延ロール42a及び/又は圧延ロール42bに昇降機構を設け(不図示)、圧延ロール42a及び42bの間の距離を調整し、成形するシートSの厚みを調整するものとしてもよい。
そして、スクリューロール44によって押し出された混練物Mは、圧延ロール42a及び42bによって所定のシート幅Wを有するシートSに成形される。
なお、図3では、押出機41として、スクリューロール44を2本備える2軸型の押出機を示しているが、これに限定されるものではなく、1軸や3軸以上の押出機の構造を用いるものとしてもよい。
【0032】
(移送部)
本実施態様の移送部20は、混練装置1A及び成形手段40を経た混練物M(シートS)を移送する移送ステップを行うためのものである。
本実施態様の移送部20は、混練物M(シートS)を移送できるものであればよく、具体的な構造としては特に限定されない。例えば、図1(A)及び図1(B)に示すように、成形手段40(圧延ロール42a及び42b)の排出側に設けられ、シートSを地面と略水平方向に移送するコンベア21からなるものや、図1(C)に示すように、成形手段40の下方に設けられ、重力(自重)により垂直方向に移動するシートSに対して進行方向をガイドするガイドローラーなどのガイド用部材22を備えるものなどが挙げられる。
なお、移送部20としてのコンベア21及びガイド用部材22の形状や設置個数等については、後述する検出部30Aによる測定に支障を及ぼさない範囲内であれば、特に限定されない。例えば、シートSの両面に対し、対となるように設けるものとしてもよい。
【0033】
(検出部)
本実施態様の検出部30Aは、移送部20上のシートSに対する測定を行い、混練物Mの分散度を検出する検出ステップを行うためのものである。
本実施態様の検出部30Aは、混練装置1Aから排出された混練物Mを移送する箇所である移送部20において分散度の検出を行うことで、混練物Mから切片(評価試験体)を切り出すなどの前処理を行うことなく、混練物Mにおける分散質の分散状態について、混練装置1Aから排出された混練物Mの状態をそのまま反映した形で的確に把握することができる。
また、本実施態様における検出部30Aでは、成形手段40を介して混練物Mをシート状に成形した混練物M(シートS)の分散度を検出することができる。したがって、製品あるいは製品に近い形での混練物Mにおける分散度評価を行うことが可能となる。
【0034】
本実施態様の検出部30Aとしては、混練物Mの表面状態や内部状態の観測、あるいは混練物Mの物性に係る測定など、分散度の検出において公知の測定手段を用いることができる。
【0035】
図4は、本実施態様における検出部30Aの一例を示す概略説明図である。なお、図4(A)は側面図であり、図4(B)は正面図である。
本実施態様の検出部30Aの一例としては、混練物Mの表面状態や内部状態を観測するものとして、図4に示すように、混練物Mからの電磁波を観測する電磁波測定部31を備えるものが挙げられる。
このとき、観測される電磁波としては、混練物Mの表面及び内部から放射される混練物M自体からの電磁波のほか、混練物M表面に照射され、混練物M表面から反射した電磁波などが挙げられる。
また、電磁波の種類は特に限定されない。電磁波としては、例えば、可視光、遠赤外線、近赤外線、紫外線、マイクロ波や短波・長波等の電波、X線などが挙げられる。また、観測される電磁波は、単一波長からなるものであってもよく、連続波長(連続スペクトル)であってもよい。
【0036】
ここで、電磁波測定部31により観測する電磁波としては、混練物M表面に照射されて反射した電磁波とすることが好ましい。これにより、混練物Mの組成等に応じて、分散度の検出に適した電磁波の種類や強度(照射量)を選択・調整することが可能となり、分散度の検出に係る精度を高めることが可能となる。
したがって、本実施態様の検出部30Aとしては、図4に示すように、電磁波測定部31のほかに、混練物M表面に電磁波を照射する照射部32を備えるものが挙げられる。
【0037】
電磁波測定部31としては、電磁波の観測を行うことができるものであればよく、電磁波測定器として公知の測定装置のほか、カメラのような撮像装置を用いることができる。また、混練物Mに対する測定精度の観点から、電磁波測定部31の検知面31a(カメラのレンズ等)が移送部20上の混練物M(シートS)に対して平行になるように設置することが好ましい。
なお、電磁波測定部31として撮像装置(カメラ)を用いる場合、撮像装置が取得する撮影画像は静止画、動画のいずれであってもよい。また、撮像装置を用いる場合、撮像装置に設けられた拡大レンズ等の視野・ピント調整手段を用い、混練物M(シートS)を拡大して分散状態を明確にして測定するものとしてもよい。
【0038】
照射部32は、電磁波測定部31で測定可能な電磁波を、移送部20上の混練物M(シートS)に照射することができるものであればよく、例えば、白色LED光源が挙げられる。なお、照射部32には、照射する電磁波の波長調整や強度(照射量)調整を行うための制御手段を設けることが好ましい(不図示)。これにより、混練物Mの組成等に応じ、照射する電磁波の種類や強度(照射量)を容易に調整することができ、精度の高い分散度の検出が可能となる。
【0039】
また、照射部32は、混練物Mの表面に対し、斜めの方向に設置される。つまり、照射部32の電磁波の照射方向32aは、混練物M(シートS)の表面に対して斜めの方向に向けられている。したがって、照射部32の電磁波の照射方向32aと、電磁波測定部31の電磁波の観測方向31bとが平行ではない。つまり、電磁波の照射方向が電磁波の観測方向と交差しており、電磁波の観測方向が電磁波の照射方向と異なるため、混練物M表面で反射された電磁波を効率よく観測することができる。
このとき、照射部32の電磁波の照射方向32aと混練物M表面とがなす角は特に限定されないが、20度以上、40度以下となることが好ましい。
【0040】
また、照射部32から照射して、混練物M表面で反射した電磁波を、電磁波測定部31の検知面31aに対して効果的に入射させるための構造物を設けるものとしてもよい。例えば、図4に示すように、電磁波測定部31及び照射部32の近傍において、混練物M(シートS)に対して垂直方向に配置される仕切板33を設けることが挙げられる。これにより、混練物M表面で反射した電磁波を効果的に検知面31aに入射させ、分散度の検出精度を高めることが可能となる。
【0041】
本実施態様の検出部30Aとしては、電磁波測定部31で検出した結果をそのまま外部へ出力し、混練物Mにおける分散質の分散状態を示す指標(分散度)として用いるものとしてもよいが、品質管理等の観点からは、データ管理や比較検証が容易な形で混練物Mの分散度を検出することが好ましい。したがって、本実施態様の検出部30Aとしては、図4に示すように、演算部34を設けることが挙げられる。
【0042】
演算部34は、電磁波測定部31で観測した電磁波に係る情報を取得し、高分子材料への分散質の分散度を演算するものである。このとき、演算部34と、電磁波測定部31との情報の伝達は、配線等により直接接続された通信手段を用いてもよく、無線等の通信手段を用いてもよい。
【0043】
演算部34における演算手段については特に限定されないが、例えば、演算部34としては、電磁波測定部31により混練物Mを撮影して取得した撮影画像から、混練物M表面の凸部を観測し、分散度を演算することが挙げられる。
より具体的には、照射部32により電磁波(白色LED光)を混練物M(シートS)に照射した後、電磁波測定部31で混練物M(シートS)を撮影し、撮影画像を取得する。このとき、混練物M表面には、分散質が露出し凸部として現れることから、電磁波測定部31が取得した混練物Mの撮影画像には、表面に露出した分散質が、輝度の高い領域、すなわち白い領域として現れる。なお、輝度が高くなるのは、例えば、混練物Mに照射された電磁波が、分散質の凸部によって散乱、屈折、反射、回折及び干渉等が生じることによるものと考えられる。
そして、演算部34は、得られた画像に対して二値化等の種々の画像処理を行い、分散質の大きさや数等を算定する。さらに、撮影画像から得られた分散質の大きさ・数等に基づいて、分散度の演算を行う。このとき、演算部34では、分散度の演算とともに、分散度の評価を行うものとしてもよい。
【0044】
演算部34における分散度の演算及び評価に係る一例について説明する。
例えば、高分子材料への分散質の分散が進むと、混練物M表面が滑らかになる。このとき、混練物M表面の凹凸が少ないため、混練物M(シートS)から反射された電磁波の撮影画像からは、輝度の高い領域が少ないという演算結果が得られる。また、この場合、演算部34において、混練物Mの分散度が大きいという評価をすることができる。
一方、例えば、混練物M表面において、分散質が露出した凸部が多く生じている場合には、混練物M表面が粗く、高分子材料への分散質の分散が進んでいないことになる。このとき、混練物M表面の凹凸が多いため、混練物M表面から反射された電磁波の撮影画像からは、輝度の高い領域が多いという演算結果が得られる。また、この場合、演算部34において、混練物Mの分散度が小さいという評価をすることができる。
なお、演算部34における分散度の演算及び評価については、あらかじめ目標値を設定し、その目標値との差分に応じた分散度の評価を行うものとしてもよい。
【0045】
上述したように、本実施態様の検出部30Aとして、混練物Mからの電磁波を観測する電磁波測定部31を備えることで、混練物M表面の凹凸を把握することが可能となる。これにより、混練物Mにおける分散質の分散状態を示す指標である分散度について、混練物M表面に露出した分散質の大きさや数から求めることができ、混練物Mの分散度の検出を非接触かつ迅速に行うことが可能となる。
【0046】
図5は、本実施態様における検出部30Aの別態様を示す概略説明図である。図5(A)は本実施態様の検出部30Aを備える評価装置1Aの全体図であり、図5(B)は本実施態様の検出部30A周辺の拡大図である。
本実施態様の検出部30Aの別の例としては、混練物Mの物性に係る測定をするものとして、図5に示すように、混練物Mにかかる圧力値を測定する圧力測定部35と、混練物Mの電気特性値を測定する電気特性測定部36と、圧力測定部35と電気特性測定部36の測定結果に基づき、混練物Mの分散度を算出する補正演算部37を備えるものが挙げられる。なお、図5に示す検出部30Aは、分散質として導電性を有するものを用いる場合に、特に好適なものである。
【0047】
圧力測定部35は、混練物Mにかかる圧力値を測定できるものであればよく、例えば、図5(B)に示すように、混練物M(シートS)と接触する箇所に受圧部35aが設けられ、その上部に緩衝部35b、圧力センサ35cを備えるものが挙げられる。ここで、図5(B)に示した圧力測定部35においては、混練物M(シートS)と受圧部35aとが接触して生じた圧力を、緩衝部35bを介して圧力センサ35cで測定する。混練物Mは、分散質の分散が進み、滑らかな状態になるに従って圧力値が一定になることから、圧力測定部5により圧力値を測定することで混練物Mの分散状態を把握することができる。
【0048】
電気特性測定部36は、図5(B)に示すように、混練物M(シートS)と接触する箇所に設置された一対の電極(第1電極36a、第2電極36b)と、この一対の電極間に測定用電圧を印加するための電圧印加部36cを備える。また、図5(B)に示すように、第1電極36aと第2電極36bを電気的に絶縁するための絶縁部材36dを有して構成される。
【0049】
第1電極36aと第2電極36bの一対の電極において、電圧印加部36cにより測定用電圧が印加されると、第1電極36aと第2電極36bに接触する混練物Mに電流が流れる。そして、電気特性測定部36では、混練物Mに流れる電流の電気特性値が得られる。ここで、電気特性値とは、混練物Mに流れる電流の流れやすさを示すパラメータを指すものであり、例えば、電流値、電圧値、抵抗値などが挙げられる。
【0050】
絶縁部材36dの材質や配置は、第1電極36aと第2電極36bの間を絶縁できればよい。絶縁部材36dの材質としては、例えば、電気抵抗の大きな樹脂製の部材が挙げられる。
【0051】
電気特性測定部36は、第1電極36aと第2電極36bの間を流れる電流に関する電気特性値を、後述する補正演算部37に送信し、補正演算部37では、当該電気特性値から、混練物Mの分散度を演算する。混練物Mが混練され、導電性を有する分散質の分散が均一になるに従って、混練物Mの電気抵抗値は一定になることから、例えば、電気特性測定部36により混練物Mの電気抵抗値を測定することで、混練物M中の分散質の分散状態を直接把握することが可能となる。
【0052】
圧力測定部35及び電気特性測定部36は、混練物Mに対し受圧部35aや電極(第1電極36aと第2電極36b)を直接接触させて測定を行うものである。このため、図5における検出部30Aとして、移送部20により混練物Mが移送されている間、圧力測定部35及び電気特性測定部36が混練物Mと常に接触する配置とすると、混練物M(シートS)表面に傷がつくなどの不具合が生じるおそれがある。
したがって、図5(A)に示すように、移送部20の一部に測定台38を設けるとともに、測定台38に対向する位置に、圧力測定部35及び電気特性測定部36を昇降可能となるように設け、分散度の検出を行うときにのみ圧力測定部35及び電気特性測定部36と測定台38との間に混練物Mを挟み込み、圧力測定部35及び電気特性測定部36を混練物Mと接触させて測定を行うことが好ましい。これにより、検出部30Aの接触による混練物Mの品質低下を抑制することが可能となる。
なお、測定台38の構造及び材質については特に限定されない。例えば、測定台38の材質としては、混練物Mの移送を阻害しないよう、摩擦が少ないものが好ましく、具体的には金属(ステンレス等)や樹脂等が挙げられる。また、併せて、圧力測定部35及び電気特性測定部36との間に混練物Mを挟み込むことができる形状及び強度を有することが好ましい。さらに、測定台38にも昇降機能を備えるものとしてもよい。
【0053】
本実施態様の検出部30Aとしては、圧力測定部35及び電気特性測定部36に加え、混練物Mの温度を測定する温度測定部を設けるものとしてもよい(不図示)。例えば、温度測定部は、混練物Mと接触する感熱部を備え、感熱部で検出した温度値を補正演算部37に送信するものが挙げられる。
温度測定部により測定された温度から、温度上昇により低下する電気抵抗値を補正することができる。なお、温度測定部を設ける場合、温度測定部の設置場所は、混練物Mの分散度をより正確に把握するために、圧力測定部35の近傍に設置することが望ましい。
【0054】
ここで、電気特性測定部36により得られた電気特性値と分散度の関係は、混練物Mの圧力値や温度値により変動することが知られている。
電気特性値と分散度との関係が、混練物Mの圧力値により変動する現象は、混練物Mに圧力がかかることにより混練物Mが圧縮されて、高分子材料中の分散質の距離が変動することに起因すると推察される。つまり、混練物Mに圧力がかかると、分散質同士の距離が小さくなり、電気抵抗値が下がると推察される。
また、電気特性値と分散度との関係が、混練物Mの温度値により変動する現象は、温度値が大きくなると、高分子材料の電気抵抗値が低下することに起因すると推察される。
よって、電気特性値と分散度の関係に、圧力値や温度値、又はその両方の値による補正を加えることによって、混練物Mの分散度を適切に評価することができる。
【0055】
電気特性値と分散状態の関係に、圧力値や温度値による補正を加えるという観点から、同じ状態の混練物Mに対する電気特性値と、圧力値及び温度値とを得ることが好ましい。よって、電気特性測定部36と、圧力測定部35及び温度測定部とは近傍に配置することが好ましい。
また、電気特性測定部36の電極(第1電極36aと第2電極36b)をそれぞれ筒形状とし、圧力測定部35の受圧部35aや温度測定部の感熱部を筒形状の電極の内側に配置し、電気特性測定部36と、圧力測定部35若しくは温度測定部、又はその両方が一体となった複合測定部を形成するものとしてもよい。これにより、混練物Mにおける略同一箇所について圧力値(及び温度値)と電気特性値を測定することができるので、圧力値(及び温度値)と電気特性値の相関関係を正確に維持した上で、混練物Mの分散度を検出することができる。また、検出部30Aとしての省スペース化が可能となる。
なお、複合測定部における電極(第1電極36aと第2電極36b)の形状は、特に限定されず、例えば、円筒形状、楕円筒形状、角筒形状などが挙げられる。また、電極(第1電極36aと第2電極36b)の内側に配置する受圧部35aや感熱部の形状についても、特に限定されず、例えば、円柱形状、楕円柱形状、角柱形状などが挙げられる。
【0056】
補正演算部37は、圧力測定部35、電気特性測定部36、温度測定部と電気的に接続され、電気特性測定部36で測定された電気特性値と、圧力測定部35で測定された圧力値と、温度測定部で測定された温度値に係る情報を取得する。このとき、補正演算部37と、電気特性測定部36、圧力測定部35及び温度測定部との情報の伝達は、配線等により直接接続された通信手段を用いてもよく、無線等の通信手段を用いてもよい。
また、補正演算部37は、電気特性測定部36で測定された電気特性値、圧力測定部35で測定された圧力値と温度測定部で測定された温度値から、混練物Mの分散度を算出するものであり、併せて分散度の評価を行うものとしてもよい。
上述したように、電気特性値と分散度の関係は、混練物Mの圧力値や温度値による影響を受けることから、補正演算部37における演算としては、電気特性測定部36で測定された電気特性値と分散度との関係に対し、圧力測定部35により測定される圧力値や温度測定部により測定される温度値を用いた補正演算を行うことが挙げられる。
【0057】
ここで、補正演算部37における分散度の算出及び評価は、事前の試験結果に基づいて行ってもよい。混練物Mの状態と電気特性値、圧力値、温度値の関係は、高分子材料と分散質の組み合わせによって異なる可能性があるため、混練物Mの組成ごとに、あらかじめ所望の分散状態(分散度)における電気特性値、圧力値及び温度値を測定しておくのが望ましい。特に、高分子材料や分散質が天然物である場合には、ロット間の品質に差があるので事前の試験を実施することが好ましい。
【0058】
上述したように、本実施態様の検出部30Aとして、混練物Mにかかる圧力値及び混練物Mの電気特性値を測定する圧力測定部35及び電気特性測定部36と、電気特性測定部36により測定した電気特性値と分散度との関係に対し、圧力測定部35により測定される圧力値を用いた補正を加えることにより、高分子材料への分散質の分散度を算出する補正演算部37とを備えることで、混練物Mの電気特性値を測定して、この電気特性値により混練物M中の導電性を有する分散質の分散状態を把握し、さらに圧力測定部35により測定される圧力値による補正を加えることで、混練物Mの分散度を直接的かつ正確に評価することが可能となる。
【0059】
以上のように、本実施態様の評価装置10Aにより、混練装置から排出された混練物を移送する箇所で分散度の検出を行うことで、混練物から切片(評価試験体)を切り出すなどの前処理を行うことなく、混練物における分散質の分散状態について、混練装置から排出された混練物の状態をそのまま反映した形で的確に把握できるとともに、迅速かつ高精度な分散度評価を容易に行うことが可能となる。
なお、本実施態様の評価装置10Aにおいて、成形手段40を省略し、混練装置1Aから排出された混練物Mに対して、直接分散度の検出を行うものとしてもよい。一方、上述したように、本実施態様の評価装置10Aにおいて成形手段40を設けることにより、混練物Mについて製品あるいは製品に近い形での分散度評価を行うことが可能となり、製品の品質管理に係る精度を高めることが可能となるという利点を有する。
【0060】
また、本実施形態の評価装置10Aに加えて、混練装置1Aにも分散度を検出する評価装置を設けてもよい。このようにすれば、混合室4内の分散度測定結果とシートSの測定結果の両方を評価することができるので、分散度をより正確に評価することができる。
【0061】
本実施態様における移送部20と、検出部30Aと、成形手段40(押出機41及び圧延ロール42a、42b)の組み合わせは、本発明のシート成形装置に相当する。なお、図3に示した構造は、本発明におけるシート成形装置に係る構造の一例に相当するものとなる。
本発明のシート成形装置は、混練物Mをシート状に成形するとともに、シート状に成形した混練物Mを移送する箇所で分散度の検出を行うことで、混練物Mから切片(評価試験体)を切り出すなどの前処理を行うことなく、シート状に成形した状態における混練物Mの分散度について把握することができる。これにより、製品あるいは製品に近い形での分散度評価を行うことが可能となり、製品の品質管理に係る精度を高めることが可能となる。
【0062】
〔第2の実施態様〕
図6は、本発明の第2の実施態様における混練物の分散度評価装置の構造を示す概略説明図である。なお、図6(A)は側面図であり、図6(B)は上方から見た平面図である。
第2の実施態様における混練物の分散度評価装置10B(以下、単に「評価装置10B」と呼ぶ)は、図6に示すように、第1の実施態様における評価装置10Aにおける検出部30Aを、多点測定可能な検出部30Bに代えるものである。なお、第1の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。
【0063】
本実施態様の評価装置10Bは、多点測定が可能な検出部30Bを設けることで、混練物Mに対する多点測定を行うものである。
混練物Mにおける分散質の分散状態は必ずしも一様ではなく、混練物Mの分散度評価において、混練物Mの極一部に対する分散度の検出を行っても混練物M全体の分散状態を適切に反映したものとはならないことがある。特に、成形手段40を介し、成形した後の混練物M(シートS)においては、シートSの端部と中心部では分散質の分散状態に偏りが発生する可能性がある。したがって、精度の高い品質管理のためには、混練物M全体における分散状態を反映した情報を取得し、混練物Mの分散度を適切に把握して評価することが必要となる。
【0064】
本実施態様の検出部30Bとしては、図6に示すように、複数の電磁波測定部31を、シートSのシート幅W方向に直線的に並べ、各電磁波測定部31と演算部34を接続するものが挙げられる。これにより、シート幅W方向に対し、複数の検出領域39(図6(B)中、検出領域39a~39e)で分散度の検出が可能となる。なお、図6では、照射部32については図示を省略しているが、電磁波測定部31ごとに照射部32を設けるものとしてもよく、1つの照射部32で複数の電磁波測定部31に係る電磁波照射を行うものとしてもよい。また、図6(B)では、検出領域39として5つの領域(検出領域39a~39e)を示しているが、これに限定されるものではなく、シート幅Wと、検出部30Bの大きさの関係などから適宜選択することができる。
【0065】
また、検出部30Bの他の例としては、電磁波測定部31に代えて、上述した圧力測定部35及び電気特性測定部36を備えるものを複数並べるものとしてもよい。このとき、圧力測定部35及び電気特性測定部36、並びに温度測定部を備える複合測定部とすることが好ましい。これにより、検出部30Bとして配置する機器の省スペース化を図り、シート幅Wにおいて、より多くの箇所に対する多点測定が容易となる。
【0066】
本実施態様の演算部34は、複数の電磁波測定部31を介し、検出領域39a~39eにおいて検出した分散度に係る情報を取得する。
演算部34における演算の一例としては、取得した分散度に係る情報について、検出領域39a~39eごとに演算を行い、分散度の評価を行うことが挙げられる。これにより、検出領域39a~39eごとの分散度を把握することができるため、シート幅W方向における分散度のばらつきの有無やその程度について的確に把握することができ、成形後の混練物M(シートS)に対する品質管理に係る精度を高めることが可能となる。
また、演算部34における演算の他の例としては、検出領域39a~39eから得られた分散度に係る情報を平均化する演算を行い、分散度の評価を行うものとしてもよい。このとき、分散度の評価としては、シートSの異なる箇所で分散度の検出を複数回行い、平均化した分散度同士を比較することが挙げられる。これにより、シートS全体における分散状態の傾向を把握することが容易となる。あるいは、複数データの標準偏差を用いて分散度を把握してもよい。この場合、標準偏差から大きく外れた外れ値は除外して、分散度を評価することで、より分散度の評価を的確に把握することができる。
【0067】
以上のように、本実施態様の評価装置10Bによれば、混練物の複数箇所における分散度の検出を行うことができ、混練物の分散度について、検出領域(検出箇所)間におけるばらつきの有無やその程度に関する情報を得ることが可能となる。これにより、混練物における分散質の分散状態をより的確に把握することが可能となり、特に成形品(製品)の品質管理に係る精度をより一層高めることが可能となる。
【0068】
また、本実施態様の評価装置10Bにおける検出部30Bは、本発明におけるシート成形装置における検出部としても適用可能である。すなわち、本発明のシート成形装置の別態様としては、移送部20と、検出部30Bと、成形手段40を組み合わせてなるものが挙げられる。これにより、シート成形装置によって成形された製品の品質管理に係る精度をより一層高めることが可能となる。
【0069】
なお、上述した実施態様は、混練物の分散度評価装置、シート成形装置及び混練物の分散度評価方法の一例を示すものである。本発明に係る混練物の分散度評価装置、シート成形装置及び混練物の分散度評価方法は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る混練物の分散度評価装置シート成形装置及び混練物の分散度評価方法を変形してもよい。
【0070】
例えば、本実施態様における混練物の分散度評価装置及び混練物の分散度評価方法による分散度の検出結果及び評価結果に基づき、混練装置の駆動を制御する制御装置を設けるものとしてもよい。この制御装置で制御する対象としては、ロータの回転数を制御するロータ駆動機構や、ケーシング内部の混練物を押圧する加圧力を制御する蓋部移動機構、及びケーシング内部の混練物の温度を制御する温度調節機構等と接続され、各機構の制御を行うことが挙げられる。これにより、混練物の分散度を評価した結果に基づいて、混練に係る動作を制御し、混練物の品質を安定化することができる。
【0071】
また、本実施態様における混練物の分散度評価装置、シート成形装置及び混練物の分散度評価方法による分散度の検出結果及び評価結果に基づき、移送部上にある混練物を再度混練装置に返送する返送手段を設けるものとしてもよい。これにより、混練物の分散度を評価した結果に基づき、混練が不十分な混練物については再度混練を行うことができ、混練物の品質向上及び品質安定化を図ることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の混練物の分散度評価装置及び混練物の分散度評価方法は、高分子材料と分散質とを混練した混練物の分散状態(分散度)を評価するために利用することができる。また、本発明のシート成形装置は、混練物をシート状に成形するとともに、シート状に成形した混練物の分散状態(分散度)を評価するために利用することができる。
本発明は、特に成形後の混練物に係る分散度を直接評価することができ、品質管理に係る精度向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0073】
1A…混練装置、2…ケーシング、2a…投入口、2b…排出口、2c…半円筒状左壁部、2d…半円筒状右壁部、2e…前壁部、2f…後壁部、2g…投入口蓋部、2h…排出口蓋部、3…ロータ、3a…軸部、3b…羽根部、4…混合室、10A,10B…評価装置、20…移送部、21…コンベア、22…ガイド用部材、30A,30B…検出部、31…電磁波測定部、31a…検知面、31b…観測方向、32…照射部、32a…照射方向、33…仕切板、34…演算部、35…圧力測定部、35a…受圧部、35b…緩衝部、35c…圧力センサ、36…電気特性測定部、36a…第1電極、36b…第2電極、36c…電圧印加部、36d…絶縁部材、37…補正演算部、38…測定台、39,39a~39e…検出領域、40…成形手段、41…押出機、42a,42b…圧延ロール、43…筐体、44…スクリューロール、45…投入口、46…側板、M…混練物、S…シート、W…シート幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6