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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114877
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】刃先交換式切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23B 27/16 20060101AFI20230810BHJP
【FI】
B23B27/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017446
(22)【出願日】2022-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】菅原 健治
【テーマコード(参考)】
3C046
【Fターム(参考)】
3C046EE01
3C046EE09
(57)【要約】
【課題】切削インサートを着脱する際の作業性がよい刃先交換式切削工具を提供する。
【解決手段】ホルダ10は、締結部材70が螺着される雌ネジ孔11を有し、雌ネジ孔11は、周方向一方側へ向かうに従い、中心軸方向においてクランプ駒30から離れるように螺旋状に延びるホルダ雌ネジ14を有し、締結部材70は、第一ネジ部材40と、第一ネジ部材40の内部に挿入される第二ネジ部材50と、を有し、第一ネジ部材40は、ホルダ雌ネジ14と螺着する第一雄ネジ43と、周方向一方側へ向かうに従い中心軸方向においてクランプ駒30に近づくように螺旋状に延びる第一雌ネジ44と、を有し、第二ネジ部材50は、第一雌ネジ44と螺着する第二雄ネジ54と、クランプ駒30に雌ネジ孔11とは反対側から接触可能な第一フランジ部52と、を有し、規制部材60は、第二ネジ部材50の中心軸C回りの回転を規制しつつ、中心軸方向の移動を許容する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インサート取付座が形成されたホルダと、
前記インサート取付座に着脱可能に取り付けられる切削インサートと、
前記切削インサートを前記インサート取付座に固定するクランプ駒と、
前記クランプ駒を前記ホルダに締結する締結部材と、
前記ホルダに設けられ、前記締結部材の一部と接触する規制部材と、を備え、
前記ホルダは、前記締結部材が螺着される雌ネジ孔を有し、
前記雌ネジ孔は、
前記クランプ駒に向けて開口する開口部と、
前記雌ネジ孔の中心軸回りの周方向一方側へ向かうに従い、中心軸方向において前記クランプ駒から離れるように螺旋状に延びるホルダ雌ネジと、を有し、
前記締結部材は、
前記中心軸方向に延びる円筒状をなす第一ネジ部材と、
前記第一ネジ部材の内部に挿入される第二ネジ部材と、を有し、
前記第一ネジ部材は、
前記第一ネジ部材の外周面に配置され、前記ホルダ雌ネジと螺着する第一雄ネジと、
前記第一ネジ部材の内周面に配置され、前記周方向一方側へ向かうに従い、前記中心軸方向において前記クランプ駒に近づくように螺旋状に延びる第一雌ネジと、を有し、
前記第二ネジ部材は、
前記第二ネジ部材の外周面に配置され、前記第一雌ネジと螺着する第二雄ネジと、
前記クランプ駒に対して、前記中心軸方向において前記雌ネジ孔とは反対側から接触可能な第一フランジ部と、を有し、
前記規制部材は、前記第二ネジ部材の前記中心軸回りの回転を規制しつつ、前記中心軸方向の移動を許容する、
刃先交換式切削工具。
【請求項2】
前記クランプ駒は、前記クランプ駒を前記中心軸方向に貫通する長孔を有し、
前記長孔は、前記中心軸方向から見て、前記中心軸に直交する方向に延び、
前記第二ネジ部材は、
前記第一フランジ部が前記長孔を前記中心軸方向に通過可能な開放位置と、
前記中心軸方向から見て前記第一フランジ部と前記クランプ駒とが重なる締結位置と、の間で前記中心軸回りに回動可能である、
請求項1に記載の刃先交換式切削工具。
【請求項3】
前記第二ネジ部材は、前記クランプ駒に対して、前記中心軸方向において前記雌ネジ孔側から接触可能な第二フランジ部をさらに有する、
請求項1又は2に記載の刃先交換式切削工具。
【請求項4】
前記第一ネジ部材は、
前記中心軸を中心とする円筒状をなし、外周面に前記第一雄ネジが形成された円筒部と、
前記円筒部と一体に形成され、前記中心軸と垂直な方向に広がる円盤部と、を有し、
前記円盤部は、前記中心軸方向に延び、作業用工具と係合可能な係合孔を有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の刃先交換式切削工具。
【請求項5】
前記第二ネジ部材は、前記第二ネジ部材を前記中心軸方向に貫通する貫通孔を有し、
前記貫通孔は、前記中心軸方向から見て前記係合孔と重なる、
請求項4に記載の刃先交換式切削工具。
【請求項6】
前記ホルダは、前記中心軸に交差する方向から前記雌ネジ孔に向かって延び、前記規制部材が挿入される横孔を有し、
前記第二ネジ部材は、前記横孔と対向する係合部を有し、
前記係合部には、前記規制部材の先端部が係合する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の刃先交換式切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刃先交換式切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
刃先交換式切削工具の一例として、特許文献1に記載されたものが知られている。この刃先交換式切削工具は、ホルダと、ホルダに形成されたインサート取付座に取り付けられる切削インサートと、切削インサートをホルダに対して押圧するクランプ駒と、クランプ駒のねじ挿通孔に挿入され、ホルダに螺着されるクランプねじと、を備える。
【0003】
切削インサートをホルダに取り付ける際には、クランプねじをねじの中心軸回りに所定回数以上、回転させる。これにより、クランプ駒が切削インサートを押圧しつつ工具後端側にも引き込んで、切削インサートがインサート取付座に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2701514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の刃先交換式切削工具では、切削インサートの着脱時の作業性を向上する点に改善の余地があった。
【0006】
本発明は、切削インサートをホルダに着脱する際の作業性がよい刃先交換式切削工具を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の刃先交換式切削工具の一つの態様は、インサート取付座が形成されたホルダと、前記インサート取付座に着脱可能に取り付けられる切削インサートと、前記切削インサートを前記インサート取付座に固定するクランプ駒と、前記クランプ駒を前記ホルダに締結する締結部材と、前記ホルダに設けられ、前記締結部材の一部と接触する規制部材と、を備え、前記ホルダは、前記締結部材が螺着される雌ネジ孔を有し、前記雌ネジ孔は、前記クランプ駒に向けて開口する開口部と、前記雌ネジ孔の中心軸回りの周方向一方側へ向かうに従い、中心軸方向において前記クランプ駒から離れるように螺旋状に延びるホルダ雌ネジと、を有し、前記締結部材は、前記中心軸方向に延びる円筒状をなす第一ネジ部材と、前記第一ネジ部材の内部に挿入される第二ネジ部材と、を有し、前記第一ネジ部材は、前記第一ネジ部材の外周面に配置され、前記ホルダ雌ネジと螺着する第一雄ネジと、前記第一ネジ部材の内周面に配置され、前記周方向一方側へ向かうに従い、前記中心軸方向において前記クランプ駒に近づくように螺旋状に延びる第一雌ネジと、を有し、前記第二ネジ部材は、前記第二ネジ部材の外周面に配置され、前記第一雌ネジと螺着する第二雄ネジと、前記クランプ駒に対して、前記中心軸方向において前記雌ネジ孔とは反対側から接触可能な第一フランジ部と、を有し、前記規制部材は、前記第二ネジ部材の前記中心軸回りの回転を規制しつつ、前記中心軸方向の移動を許容する。
【0008】
本発明の刃先交換式切削工具によれば、作業者が作業用工具により、第一ネジ部材を中心軸回りに例えば1回転させた場合に、第二ネジ部材は、ホルダ雌ネジ及び第一雄ネジのネジピッチと、第一雌ネジ及び第二雄ネジのネジピッチとの和だけ、ホルダの雌ネジ孔に沿って中心軸方向に移動する。
このため、作業用工具を回転操作する回転量を少なく抑えつつ、第二ネジ部材でクランプ駒を押圧でき、クランプ駒を介して切削インサートをインサート取付座に押圧固定できる。
【0009】
詳しくは、例えば本発明と異なり、従来のように単一のクランプねじを用いてクランプ駒をホルダに締結する場合と比べて、本発明によれば、作業用工具を中心軸回りに回転させる回転数や回転角度を小さく抑えつつ、締結部材によってクランプ駒をホルダに締結できる。
【0010】
したがって本発明によれば、切削インサートをホルダに着脱する際の作業性がよい。切削インサートの着脱作業が容易にかつ短時間で完了するため、刃先交換式切削工具を使用する際の作業性をさらに向上させることができる。また、着脱作業が容易となることで、より安定した取り付け精度で切削インサートをホルダに固定できる。
【0011】
前記刃先交換式切削工具において、前記クランプ駒は、前記クランプ駒を前記中心軸方向に貫通する長孔を有し、前記長孔は、前記中心軸方向から見て、前記中心軸に直交する方向に延び、前記第二ネジ部材は、前記第一フランジ部が前記長孔を前記中心軸方向に通過可能な開放位置と、前記中心軸方向から見て前記第一フランジ部と前記クランプ駒とが重なる締結位置と、の間で前記中心軸回りに回動可能であることが好ましい。
【0012】
この場合、第二ネジ部材を開放位置とすることで、クランプ駒の長孔に第一フランジ部を挿通させることができ、クランプ駒を容易に着脱することが可能となる。また、第二ネジ部材を締結位置とした場合には、中心軸方向から見て、第一フランジ部が、長孔の延びる方向と交差する方向に延びて、クランプ駒と重なり合う。これにより、第一フランジ部によってクランプ駒を安定して押圧することができる。その結果、クランプ駒によって切削インサートをホルダに対してより安定的に固定することができる。
【0013】
前記刃先交換式切削工具において、前記第二ネジ部材は、前記クランプ駒に対して、前記中心軸方向において前記雌ネジ孔側から接触可能な第二フランジ部をさらに有することが好ましい。
【0014】
この場合、クランプ駒をホルダから取り外す際に、第二フランジ部が雌ネジ孔側(下側)からクランプ駒に接触することで、クランプ駒をホルダから離間する方向に押圧できる。このため、クランプ駒をより簡単にホルダから取り外すことができる。
【0015】
前記刃先交換式切削工具において、前記第一ネジ部材は、前記中心軸を中心とする円筒状をなし、外周面に前記第一雄ネジが形成された円筒部と、前記円筒部と一体に形成され、前記中心軸と垂直な方向に広がる円盤部と、を有し、前記円盤部は、前記中心軸方向に延び、作業用工具と係合可能な係合孔を有することが好ましい。
【0016】
この場合、第一ネジ部材の円盤部に係合孔が形成されているため、この係合孔に作業用工具を係合させて中心軸回りに回転させることで、容易かつ迅速に第一ネジ部材を回転させることができる。その結果、切削インサートを交換する際などの作業性をさらに向上させることができる。
【0017】
前記刃先交換式切削工具において、前記第二ネジ部材は、前記第二ネジ部材を前記中心軸方向に貫通する貫通孔を有し、前記貫通孔は、前記中心軸方向から見て前記係合孔と重なることが好ましい。
【0018】
この場合、第二ネジ部材の貫通孔を通して、係合孔に作業用工具を係合させることができる。このため、作業者が、ホルダのクランプ駒側(上側)から、作業用工具によって第一ネジ部材を回転操作することが可能となり、より作業性が高められる。
【0019】
前記刃先交換式切削工具において、前記ホルダは、前記中心軸に交差する方向から前記雌ネジ孔に向かって延び、前記規制部材が挿入される横孔を有し、前記第二ネジ部材は、前記横孔と対向する係合部を有し、前記係合部には、前記規制部材の先端部が係合することが好ましい。
【0020】
この場合、シンプルな構造により、第二ネジ部材の中心軸回りの回転を安定して規制できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の前記態様の刃先交換式切削工具によれば、切削インサートをホルダに着脱する際の作業性がよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本実施形態の刃先交換式切削工具を示す分解斜視図である。
図2図2は、本実施形態の刃先交換式切削工具の一部を示す上面図である。
図3図3は、図2のIII-III断面を示す断面図である。
図4図4は、刃先交換式切削工具の一部を破断して示す斜視断面図であり、作業用工具を締結部材に係止した状態を表している。
図5図5は、クランプ駒、第二ネジ部材及び規制部材を示す分解斜視図である。
図6図6は、クランプ駒、第二ネジ部材及び規制部材を示す斜視図であり、クランプ駒に対して第二ネジ部材が開放位置にある状態を表している。
図7図7は、クランプ駒、第二ネジ部材及び規制部材を示す斜視図であり、クランプ駒に対して第二ネジ部材が締結位置にある状態を表している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態の刃先交換式切削工具1について、図面を参照して説明する。本実施形態の刃先交換式切削工具1は、旋削加工(ターニング)に用いられる刃先交換式バイトなどの刃先交換式旋削工具であり、図示しない旋盤などの工作機械の刃物台等に着脱可能に装着される。なお本実施形態では、刃先交換式切削工具1を単に切削工具や工具などと呼ぶ場合がある。
【0024】
図1図4に示すように、刃先交換式切削工具1は、ホルダ10と、切削インサート20と、クランプ駒30と、締結部材70と、規制部材60と、作業用工具100と、を備える。ホルダ10は、切削インサート20が取り付けられるインサート取付座12と、締結部材70が螺着される雌ネジ孔11と、を有する。締結部材70は、雌ネジ孔11に螺着する第一ネジ部材40と、第一ネジ部材40に螺着する第二ネジ部材50と、を有する。
【0025】
〔方向の定義〕
本実施形態では、雌ネジ孔11の中心軸Cが延びる方向を、中心軸方向と呼ぶ。図3及び図4に示すように、中心軸方向において、クランプ駒30と第一ネジ部材40とは、互いに異なる位置に配置される。中心軸方向のうち、クランプ駒30から第一ネジ部材40へ向かう方向を中心軸方向の一方側と呼び、第一ネジ部材40からクランプ駒30へ向かう方向を中心軸方向の他方側と呼ぶ。なお中心軸方向は、上下方向と言い換えてもよい。このため、中心軸方向の一方側を下側と呼び、中心軸方向の他方側を上側と呼ぶ場合がある。
【0026】
中心軸Cと直交する方向を径方向と呼ぶ。径方向のうち、中心軸Cに近づく方向を径方向内側と呼び、中心軸Cから離れる方向を径方向外側と呼ぶ。
中心軸C回りに周回する方向を周方向と呼ぶ。中心軸C回りの周方向のうち、所定方向を周方向一方側(+θ側)と呼び、所定方向とは反対側を周方向他方側(-θ側)と呼ぶ。本実施形態では、中心軸方向に沿って切削工具を上側から見て、周方向一方側(+θ側)が時計回りの方向であり、周方向他方側(-θ側)が反時計回りの方向である。
【0027】
図1に示すように、ホルダ10は、一方向に延びる略角柱状である。本実施形態では、ホルダ10の工具中心軸(図示省略)が延びる方向(つまり前記一方向)を、工具軸方向と呼ぶ。ホルダ10の工具軸方向の両端部である第1端部及び第2端部のうち、第1端部には、インサート取付座12が形成される。工具軸方向のうち、第1端部から第2端部へ向かう方向を工具後端側と呼び、第2端部から第1端部へ向かう方向を工具先端側と呼ぶ。
【0028】
〔ホルダ〕
ホルダ10は、例えば鋼材等の金属製である。図1図4に示すように、ホルダ10は、インサート取付座12と、雌ネジ孔11と、傾斜面17と、係止溝15と、横孔16と、を有する。
【0029】
インサート取付座12は、ホルダ10の第1端部つまり工具先端側の端部に配置され、ホルダ10の上面、先端面及び側面に開口する。インサート取付座12は、ホルダ10の上面、先端面及び側面から窪む凹状である。インサート取付座12は、切削インサート20を受け入れ可能な凹所である。インサート取付座12は、例えば、略多角形凹状であり、本実施形態では略四角形凹状である。
インサート取付座12は、切削インサート20の裏面と接触する底面と、切削インサート20の外側面と接触する複数(本実施形態では2つ)の壁面と、を有する。
【0030】
またインサート取付座12は、シート部材12bを有する。本実施形態ではシート部材12bが、四角形板状である。シート部材12bは、インサート取付座12の底面を構成する。詳しくは、シート部材12bの一対の板面のうち、上側を向く一方の板面(上面)が、インサート取付座12の底面とされる。
【0031】
雌ネジ孔11は、ホルダ10の第1端部(ホルダ先端部)に配置される。雌ネジ孔11は、インサート取付座12の工具後端側に隣り合って配置される。雌ネジ孔11は、ホルダ10を中心軸方向に貫通する。雌ネジ孔11は、クランプ駒30の下側に配置される。雌ネジ孔11は、中心軸方向から見て、クランプ駒30と重なる。雌ネジ孔11は、開口部13と、ホルダ雌ネジ14と、を有する。
【0032】
開口部13は、雌ネジ孔11の上端部に配置され、上側に開口する。すなわち、開口部13は、雌ネジ孔11の中心軸方向の両端部に位置する上側開口部及び下側開口部のうち、上側開口部に相当する。開口部13は、クランプ駒30に向けて開口する。開口部13は、中心軸Cを中心とする円孔状である。
【0033】
ホルダ雌ネジ14は、雌ネジ孔11の内周面に形成される。ホルダ雌ネジ14は、開口部13よりも下側に配置される。本実施形態では、ホルダ雌ネジ14が、雌ネジ孔11のうち開口部13以外の部分(上端部以外の部分)を構成する。ホルダ雌ネジ14は、中心軸C回りの周方向一方側(+θ側)へ向かうに従い、中心軸方向においてクランプ駒30から離れるように螺旋状に延びている。すなわち、ホルダ雌ネジ14は、中心軸Cを中心とする螺旋状の雌ネジであり、周方向一方側へ向かうに従い下側に向けて延びる。本実施形態では、ホルダ雌ネジ14が、いわゆる右ネジ(正ネジ)である。
【0034】
傾斜面17は、ホルダ10の第1端部に配置される。傾斜面17は、雌ネジ孔11の工具後端側に隣り合って配置される。傾斜面17は、ホルダ10の上面に配置される。傾斜面17は、工具後端側へ向かうに従い下側に位置する傾斜した平面状である。
【0035】
係止溝15は、ホルダ10の第1端部に配置される。係止溝15は、雌ネジ孔11の工具後端側に隣り合って配置される。係止溝15は、工具を上側から見た上面視で、雌ネジ孔11を間に挟んでインサート取付座12とは反対側に配置される。係止溝15は、ホルダ10の上面から下側に窪み、中心軸Cと直交する径方向に延びる溝状である。係止溝15の少なくとも一部は、傾斜面17に配置される。
【0036】
図4に示すように、横孔16は、中心軸Cに交差する方向から雌ネジ孔11に向かって延びる。本実施形態では、横孔16が、中心軸Cと直交する径方向に延びる。横孔16の両端部は、ホルダ10の外面と、雌ネジ孔11とに開口する。本実施形態では、横孔16が、ホルダ10の側面と、雌ネジ孔11の開口部13とに開口する。横孔16は、横孔16の内周面に雌ネジ部16aを有する。
【0037】
〔切削インサート〕
切削インサート20は、例えば、超硬合金製、PCD(多結晶ダイヤモンド)製、cBN(立方晶窒化ホウ素)製、サーメット製、セラミック製等である。切削インサート20は、ホルダ10よりも硬度が高い硬質焼結体である。切削インサート20は、インサート取付座12に着脱可能に取り付けられる。
【0038】
図1図4に示すように、切削インサート20は、インサート中心軸Aを中心とする板状である。切削インサート20は、例えば多角形板状等であり、本実施形態では四角形板状である。切削インサート20は、例えば、ISO規格に準ずる菱形インサート等である。切削インサート20は、複数のコーナ部を有する。本実施形態の切削インサート20は、表裏反転対称形状であり、いわゆる両面タイプである。ただしこれに限らず、切削インサート20は、いわゆる片面タイプであってもよい。
【0039】
切削インサート20は、インサート中心軸Aが延びる方向であるインサート軸方向を向く表面及び裏面と、インサート中心軸Aと直交する方向であるインサート径方向の外側を向き、表面と裏面とに接続される外側面と、少なくとも表面と外側面とが接続される稜線部に配置される切刃22と、貫通孔21と、を有する。
【0040】
切刃22は、切削インサート20のコーナ部に配置される。本実施形態では切刃22が、インサート径方向の外側に向けて凸となるV字状をなす。切刃22は、凸曲線状のコーナ刃と、コーナ刃の両端部に接続される直線状の一対の直線刃と、を有する。
【0041】
貫通孔21は、切削インサート20の上面視において、切削インサート20の中央部に配置される。貫通孔21は、切削インサート20をインサート軸方向に貫通し、表面及び裏面に開口する。貫通孔21は、インサート中心軸Aを中心とする円孔状である。
【0042】
〔クランプ駒〕
クランプ駒30は、ホルダ10の第1端部の上面に配置される。クランプ駒30は、切削インサート20をインサート取付座12に固定する。クランプ駒30は、中心軸Cと垂直な方向に広がる略板状をなす。クランプ駒30は、駒本体31と、スライド面35と、係止部32と、突出部33と、長孔34と、を有する。
【0043】
駒本体31は、切削インサート20の貫通孔21からホルダ10の係止溝15にかけて延びる厚肉板状をなしている。すなわち、駒本体31は、径方向に延びる。駒本体31の工具先端側の端部(先端部)は、切削インサート20の表面の上側に配置される。駒本体31の工具後端側の端部(後端部)は、傾斜面17及び係止溝15の上側に配置される。駒本体31のうち先端部と後端部との間に位置する中間部は、雌ネジ孔11の上側に配置される。
【0044】
スライド面35は、駒本体31の後端部に配置され、下側を向く。スライド面35は、工具後端側へ向かうに従い下側に位置する傾斜した平面状である。スライド面35は、ホルダ10の傾斜面17と摺動可能に接触する。
【0045】
係止部32は、駒本体31の後端部に配置される。係止部32は、駒本体31の下面から下側に突出する。係止部32は、中心軸方向に延びる柱状である。係止部32の少なくとも一部は、スライド面35に配置される。係止部32は、ホルダ10の係止溝15に挿入される。係止部32は、係止溝15内を、係止溝15が延びる方向つまり径方向に沿って移動可能である。
【0046】
突出部33は、駒本体31の先端部に配置される。突出部33は、駒本体31の下面から下側に突出する。突出部33は、中心軸方向に延びる柱状である。突出部33は、切削インサート20の貫通孔21に挿入される。突出部33の外周面は、貫通孔21の内周面と接触する。具体的に、突出部33は、貫通孔21の内周面のうち中心軸C側の端部(中心軸Cと直交する径方向の内側の端部)と接触する。
また、駒本体31の下面のうち突出部33の周囲に位置する部分は、切削インサート20の表面に上側から接触する。
【0047】
長孔34は、駒本体31を上下方向に貫通する。すなわち、長孔34は、クランプ駒30を中心軸方向に貫通する。長孔34は、中心軸方向から見て、雌ネジ孔11と重なる。長孔34は、中心軸方向から見て、中心軸Cに直交する方向つまり径方向に延びる。具体的に、長孔34の形状は、切削工具を上側から見た上面視で、前記径方向のうち所定の径方向を長軸とする長円形をなす。本実施形態では長孔34の長軸が、工具の上面視において、切削インサート20の貫通孔21とホルダ10の係止溝15とを結ぶ仮想直線(図示省略)に沿って延びる。
【0048】
〔締結部材〕
締結部材70は、クランプ駒30をホルダ10に締結する。締結部材70は、クランプ駒30を介して、切削インサート20をインサート取付座12に締結する。締結部材70は、中心軸方向に延びる円筒状をなす第一ネジ部材40と、第一ネジ部材40の内部に挿入される第二ネジ部材50と、を有する。
【0049】
第一ネジ部材40は、雌ネジ孔11の内部に挿入される。第一ネジ部材40は、中心軸Cを中心とする有底の円筒状である。第一ネジ部材40は、中心軸方向に延びる。第一ネジ部材40は、円筒部41と、第一雄ネジ43と、第一雌ネジ44と、円盤部42と、を有する。
【0050】
円筒部41は、中心軸Cを中心とする円筒状をなし、中心軸方向に延びる。円筒部41の外周面には、第一雄ネジ43が形成されている。すなわち、第一雄ネジ43は、第一ネジ部材40の外周面に配置される。
【0051】
第一雄ネジ43は、中心軸C回りの周方向一方側(+θ側)へ向かうに従い、中心軸方向においてクランプ駒30から離れるように螺旋状に延びている。すなわち、第一雄ネジ43は、中心軸Cを中心とする螺旋状の雄ネジであり、周方向一方側へ向かうに従い下側に向けて延びる。本実施形態では、第一雄ネジ43が、いわゆる右ネジ(正ネジ)である。
【0052】
第一雄ネジ43は、雌ネジ孔11に形成されたホルダ雌ネジ14と螺着する。すなわち、第一雄ネジ43及びホルダ雌ネジ14の各ネジが延びる螺旋の向きは互いに同一であり、かつ、各ネジのネジピッチは互いに同一である。本実施形態では、第一雄ネジ43とホルダ雌ネジ14の各ネジが、例えば、M6×P1.75等である。
【0053】
円筒部41の内周面には、第一雌ネジ44が形成されている。すなわち、第一雌ネジ44は、第一ネジ部材40の内周面に配置される。第一雌ネジ44は、中心軸C回りの周方向一方側(+θ側)へ向かうに従い、中心軸方向においてクランプ駒30に近づくように螺旋状に延びている。すなわち、第一雌ネジ44は、中心軸Cを中心とする螺旋状の雌ネジであり、周方向一方側へ向かうに従い上側に向けて延びる。言い換えると、第一雌ネジ44は、周方向他方側(-θ側)へ向かうに従い下側に向けて延びる。本実施形態では、第一雌ネジ44が、いわゆる左ネジ(逆ネジ)である。
【0054】
円盤部42は、円筒部41の下端部に接続される。本実施形態では円盤部42が、円筒部41と一体に形成されている。円盤部42は、中心軸Cと垂直な方向に広がる円板状である。円盤部42は、係合孔45を有する。
【0055】
係合孔45は、円盤部42の中心軸C上つまり中央部に位置する。係合孔45は、中心軸方向に延びる。本実施形態では係合孔45が、円盤部42を中心軸方向に貫通する。係合孔45は、中心軸Cと垂直な断面の形状が、例えば多角形や星形等である。係合孔45は、作業用工具100と係合可能な非円形状のキー孔等である。
【0056】
第二ネジ部材50は、中心軸Cを中心とする略円筒状である。第二ネジ部材50は、中心軸方向に延びる。第二ネジ部材50は、その少なくとも下端部を含む下側部分が第一ネジ部材40の内部に挿入される。第二ネジ部材50の上側部分は、第一ネジ部材40よりも上側に突出する。第二ネジ部材50の上端部は、雌ネジ孔11よりも上側に配置され、第二ネジ部材50の上端部以外の部分は、雌ネジ孔11内に配置される。本実施形態では、第二ネジ部材50の中心軸方向の寸法が、第一ネジ部材40の中心軸方向の寸法よりも大きい。
【0057】
図5に示すように、第二ネジ部材50は、第二ネジ部材本体51と、第一フランジ部52と、第二フランジ部53と、第二雄ネジ54と、係合部55と、貫通孔56と、を有する。
【0058】
第二ネジ部材本体51は、中心軸Cを中心とする略円筒状である。第二ネジ部材本体51は、中心軸方向に延びる。
【0059】
第一フランジ部52は、第二ネジ部材本体51の中心軸方向の上端部に配置される。第一フランジ部52は、第二ネジ部材本体51の上端部から径方向外側に張り出している。第一フランジ部52は、中心軸方向から見た上面視で、中心軸Cを中心として径方向に延びる長円形をなす。本実施形態では、中心軸方向から見て、第一フランジ部52の長円形が、クランプ駒30の長孔34の長円形と相似する形状とされており、かつ、第一フランジ部52の長円形は、長孔34の長円形よりも僅かに寸法が小さい。すなわち、図5及び図6に示すように、第一フランジ部52は、長孔34を中心軸方向に通過可能な形状及び寸法を有している。
【0060】
詳しくは、中心軸方向から見て、第一フランジ部52の長円形の長軸と、長孔34の長円形の長軸とが略平行に配置された状態において、第一フランジ部52は、長孔34を中心軸方向に通過可能である。本実施形態では、第一フランジ部52が長孔34を中心軸方向に通過可能な状態を、第二ネジ部材50が「開放位置」にあるという。
【0061】
また、図7に示すように、クランプ駒30に対して第二ネジ部材50を開放位置から中心軸C回りに90°回動させた状態では、第一フランジ部52は、クランプ駒30に対して、中心軸方向において雌ネジ孔11とは反対側から接触可能である。
【0062】
詳しくは、中心軸方向から見て、第一フランジ部52の長円形の長軸と、長孔34の長円形の長軸とが略直交するように配置された状態において、第一フランジ部52は、駒本体31のうち長孔34の周囲に位置する部分に対して、中心軸方向の上側から接触可能である。本実施形態では、第一フランジ部52が長孔34を中心軸方向に通過不能な状態、すなわち、中心軸方向から見て第一フランジ部52とクランプ駒30とが重なる状態(第一フランジ部52が中心軸方向からクランプ駒30に接触可能な状態)を、第二ネジ部材50が「締結位置」にあるという。
第二ネジ部材50は、開放位置と締結位置との間で中心軸C回りに回動可能である。
【0063】
図5に示すように、第二フランジ部53は、第一フランジ部52から下側に離れて配置される。第二フランジ部53は、第二ネジ部材本体51から径方向外側に張り出している。本実施形態では、第二フランジ部53が、中心軸Cを中心とする略円筒状をなす。中心軸方向から見て、第二フランジ部53の外径寸法は、長孔34の長円形の短軸方向の寸法よりも大きい。このため、第二フランジ部53は、クランプ駒30に対して、中心軸方向において雌ネジ孔11側から接触可能である。詳しくは、第二フランジ部53は、駒本体31のうち長孔34の周囲に位置する部分に対して、中心軸方向の下側から接触可能である。
【0064】
第二雄ネジ54は、第二フランジ部53よりも下側に配置される。第二雄ネジ54は、第二ネジ部材本体51の外周面のうち下側部分に配置される。すなわち、第二雄ネジ54は、第二ネジ部材50の外周面に配置される。
【0065】
第二雄ネジ54は、中心軸C回りの周方向一方側(+θ側)へ向かうに従い、中心軸方向においてクランプ駒30に近づくように螺旋状に延びている。すなわち、第二雄ネジ54は、中心軸Cを中心とする螺旋状の雄ネジであり、周方向一方側へ向かうに従い上側に向けて延びる。言い換えると、第二雄ネジ54は、周方向他方側(-θ側)へ向かうに従い下側に向けて延びる。本実施形態では、第二雄ネジ54が、いわゆる左ネジ(逆ネジ)である。
【0066】
図3及び図4に示すように、第二雄ネジ54は、第一ネジ部材40に形成された第一雌ネジ44と螺着する。すなわち、第二雄ネジ54及び第一雌ネジ44の各ネジが延びる螺旋の向きは互いに同一であり、かつ、各ネジのネジピッチは互いに同一である。本実施形態では、第二雄ネジ54と第一雌ネジ44の各ネジが、例えば、M4×P1.25等である。
【0067】
本実施形態においては、第一雄ネジ43とホルダ雌ネジ14の各ネジのネジピッチ(一例としてP=1.75mm)が、第二雄ネジ54と第一雌ネジ44の各ネジのネジピッチ(一例としてP=1.25mm)よりも大きい。
【0068】
図5に示すように、係合部55は、中心軸方向において、第一フランジ部52と第二雄ネジ54との間に配置される。本実施形態では係合部55が、第二フランジ部53の周方向の一部に配置される。係合部55は、第二フランジ部53の外周面から径方向内側に窪み、中心軸方向に延びる溝状である。係合部55は、径方向と垂直な方向に広がる平坦面を有する。この平坦面は、係合部55の溝底面を構成しており、径方向外側を向く。
図4に示すように、締結部材70を雌ネジ孔11に取り付け、第二ネジ部材50を締結位置としたときに、係合部55は、径方向においてホルダ10の横孔16と対向する。
【0069】
貫通孔56は、第二ネジ部材本体51を上下方向に貫通する。すなわち貫通孔56は、第二ネジ部材50を中心軸方向に貫通する。貫通孔56は、中心軸Cを中心とする円孔状であり、中心軸方向に延びる。貫通孔56は、第一ネジ部材40の係合孔45の上側に配置される。貫通孔56は、中心軸方向から見て係合孔45と重なる。
【0070】
〔規制部材〕
規制部材60は、ホルダ10の横孔16に挿入される。規制部材60は、ホルダ10に設けられ、締結部材70の一部(本実施形態では係合部55)と接触する。図4及び図5に示すように、規制部材60は、略円柱状である。規制部材60の中心軸は、中心軸Cと交差する方向に延びる。本実施形態では規制部材60の中心軸が、中心軸Cと直交する径方向に延びる。規制部材60は、例えばイモネジ等である。規制部材60は、雄ネジ部61と、接触部62と、を有する。
【0071】
雄ネジ部61は、規制部材60の外周面のうち、中心軸Cと直交する径方向の内端部以外の部分に配置される。言い換えると、雄ネジ部61は、規制部材60の中心軸に沿う方向において、規制部材60の先端部以外の部分に配置される。雄ネジ部61は、横孔16の雌ネジ部16aと螺着する。
【0072】
作業者が、図示しない六角レンチ等のレンチ工具を、規制部材60の後端面に開口する六角穴等の穴に係止し、レンチ工具で規制部材60を回転させることにより、雌ネジ部16aに対する雄ネジ部61のねじ込み量を変化させることができる。これにより、規制部材60は、横孔16内を径方向に進退可能である。
【0073】
接触部62は、規制部材60の径方向の内端部に配置される。言い換えると、接触部62は、規制部材60の中心軸に沿う方向において、規制部材60の先端部に配置される。接触部62は、径方向に延びる柱状であり、本実施形態では円柱状である。接触部62の先端面は、例えば、円形の平面状である。接触部62の先端面は、第二ネジ部材50の係合部55の平坦面と接触する。すなわち、接触部62の先端部は、係合部55と接触する。これにより、係合部55には、規制部材60の先端部が係合する。
【0074】
図4及び図7に示すように、係合部55に規制部材60が係合した状態において、第二ネジ部材50は雌ネジ孔11に対して、中心軸方向の所定範囲での移動については許容され、かつ、中心軸C回りの回転については規制されている。言い換えると、規制部材60は、第二ネジ部材50の中心軸C回りの回転を規制しつつ、中心軸方向の移動を許容する。
【0075】
〔作業用工具〕
図4に示すように、本実施形態の刃先交換式切削工具1は、締結部材70を操作するための作業用工具100を備えている。作業用工具100は、例えばレンチ工具等である。このため、刃先交換式切削工具1は、作業用工具付き刃先交換式切削工具1と言い換えてもよい。作業用工具100は、係合軸101と、操作部102と、を有する。
【0076】
係合軸101は、中心軸Cを中心とする柱状であり、中心軸方向に延びる。係合軸101は、雌ネジ孔11に挿入される部分と、雌ネジ孔11から中心軸方向に突出する部分と、を有する。係合軸101のうち少なくとも下端部は、中心軸Cと垂直な断面の形状が非円形状とされる。係合軸101の下端部の断面形状は、例えば、多角形や星形等である。
【0077】
係合軸101の下端部は、第一ネジ部材40の係合孔45に中心軸方向から挿入される。係合軸101の下端部と係合孔45とは、中心軸方向に相対移動可能とされ、かつ、中心軸C回りへの相対回転については規制された状態で、互いに係合する。本実施形態では、係合軸101の下端部以外の部分が、円柱状である。
【0078】
操作部102は、係合軸101と接続され、係合軸101よりも径方向外側に突出する。本実施形態では操作部102が、係合軸101から径方向外側に延びる板状である。操作部102の一対の板面は、周方向を向く。作業者が操作部102を中心軸C回りの周方向に回転させることで、係合軸101を介して第一ネジ部材40に高い回転トルクを付与することができ、第一ネジ部材40を容易に回転させることができる。
【0079】
なおこれに限らず、特に図示しないが、操作部102は、例えば、ドライバー工具の柄形状などを有していてもよい。この場合、作業者が操作部102を把持及び回転操作しやすいように、操作部102の外径寸法は、係合軸101の外径寸法よりも大きくされる。また操作部102の外周面には、適宜、滑り止め形状等が付与される。
【0080】
図4に示すように、係合軸101と係合孔45とが係合した状態で、作業者が操作部102を操作し、第一ネジ部材40を周方向に回転させることで、第一ネジ部材40はネジ14,43の作用により中心軸方向に移動させられる。また、第一ネジ部材40が周方向に回転させられることで、第一ネジ部材40と螺着する第二ネジ部材50が、規制部材60によって周方向の回転を規制された状態のまま、ネジ44,54の作用により中心軸方向に移動させられる。
【0081】
〔切削インサートの着脱方法〕
次に、切削インサート20をホルダ10に取り付ける方法及びホルダ10から取り外す方法について、すなわち切削インサート20の着脱方法について説明する。
【0082】
まず、切削インサート20をホルダ10(のインサート取付座12)に取り付ける方法について、説明する。
クランプ駒30をホルダ10から取り外した状態で、ホルダ10の雌ネジ孔11に締結部材70を挿入(螺着)し、インサート取付座12に切削インサート20を配置する。
【0083】
次に、図5に示すように、第二ネジ部材50を開放位置とする。詳しくは、工具上面視において、第一フランジ部52の長円形の長軸と、クランプ駒30の長孔34の長円形の長軸とを同じ向きに合わせて配置する。この状態から、図6に示すように、長孔34内に第一フランジ部52を挿通させる。
また図3に示すように、クランプ駒30の突出部33を切削インサート20の貫通孔21に挿入し、クランプ駒30の係止部32をホルダ10の係止溝15に挿入する。
【0084】
次に、図6に示す開放位置の第二ネジ部材50を、中心軸C回りに回動させて(本実施形態では90°回動させて)、図7に示すように、第二ネジ部材50を締結位置とする。詳しくは、工具上面視において、第一フランジ部52の長円形の長軸と、長孔34の長円形の長軸とを互いに交差(本実施形態では直交)させて配置する。
この状態から、規制部材60を図示しないレンチ工具により横孔16内にねじ込んで、規制部材60の接触部62と第二ネジ部材50の係合部55とを係合させる。
【0085】
次に、図4に示すように、作業用工具100の係合軸101を、第二ネジ部材50の貫通孔56内に上側から挿通し、係合軸101の下端部と、第一ネジ部材40の係合孔45とを係合させる。
【0086】
この状態から、作業者が操作部102を中心軸C回りの周方向一方側(+θ側)に回転させると、第一ネジ部材40が周方向一方側に回転することで、右ネジ(正ネジ)であるネジ14,43の作用により、第一ネジ部材40が雌ネジ孔11に対して中心軸方向の下側に移動する。
また、規制部材60によって中心軸C回りへの回転が規制された第二ネジ部材50は、第一ネジ部材40が周方向一方側に回転することで、左ネジ(逆ネジ)であるネジ44,54の作用により、第一ネジ部材40に対して中心軸方向の下側に移動する。
【0087】
詳しくは、作業用工具100を中心軸C回りの周方向一方側に一回転させると、第二ネジ部材50は、ネジ14,43のネジピッチ(本実施形態ではP=1.75mm)と、ネジ44,54のネジピッチ(本実施形態ではP=1.25mm)との和(本実施形態では3mm)の分だけ、雌ネジ孔11に対して中心軸方向の下側に移動させられる。
【0088】
作業者が、作業用工具100を周方向一方側(+θ側)へ回動させていく過程において、第二ネジ部材50の第一フランジ部52は、クランプ駒30に対して上側から接触する。さらに作業者が作業用工具100を周方向一方側へ回動させていくと、第一フランジ部52によって、クランプ駒30が下側に押圧される。これにより、クランプ駒30は下側に移動させられる。またこのとき、ホルダ10の傾斜面17とクランプ駒30のスライド面35とが摺接することで、クランプ駒30は、工具後端側にも移動させられる。
【0089】
クランプ駒30がこのように移動させられることで、駒本体31は、その下面により切削インサート20の表面を下側に向けて押圧する。また、クランプ駒30の突出部33は、切削インサート20の貫通孔21を、工具後端側に向けて押圧する。
【0090】
したがって、切削インサート20は、クランプ駒30により下側に押圧されつつ、工具後端側にも引き込まれて、インサート取付座12に締結される。このような切削インサート20のクランプ方法は、2方向へのクランプであり、いわゆるダブルクランプと呼ばれる。
【0091】
このようにして、切削インサート20をインサート取付座12に取り付け、固定することができる。切削インサート20をホルダ10に固定したら、係合軸101を係合孔45及び貫通孔56から抜き出して、作業用工具100を切削工具から取り外す。
作業用工具100を取り外した後、切削インサート20の切刃22により、図示しない被削材を旋削加工(切削加工)する。
【0092】
また、上述とは逆の手順により、切削インサート20をホルダ10(のインサート取付座12)から取り外すことができる。
切削インサート20を取り外す際には、まず、図4に示すように、作業用工具100の係合軸101を、第二ネジ部材50の貫通孔56内に上側から挿通し、係合軸101の下端部と、第一ネジ部材40の係合孔45とを係合させる。
【0093】
この状態から、作業者が操作部102を中心軸C回りの周方向他方側(-θ側)に回転させると、第一ネジ部材40が周方向他方側に回転することで、右ネジ(正ネジ)であるネジ14,43の作用により、第一ネジ部材40が雌ネジ孔11に対して中心軸方向の上側に移動する。
また、規制部材60によって中心軸C回りへの回転が規制された第二ネジ部材50は、第一ネジ部材40が周方向他方側に回転することで、左ネジ(逆ネジ)であるネジ44,54の作用により、第一ネジ部材40に対して中心軸方向の上側に移動する。
【0094】
詳しくは、作業用工具100を中心軸C回りの周方向他方側に一回転させると、第二ネジ部材50は、ネジ14,43のネジピッチ(本実施形態ではP=1.75mm)と、ネジ44,54のネジピッチ(本実施形態ではP=1.25mm)との和(本実施形態では3mm)の分だけ、雌ネジ孔11に対して中心軸方向の上側に移動させられる。
【0095】
作業者が、作業用工具100を周方向他方側(-θ側)へ回動させていく過程において、第二ネジ部材50の第二フランジ部53は、クランプ駒30に対して下側から接触する。詳しくは、第二フランジ部53の上端面が、駒本体31の下面のうち長孔34の周囲に位置する部分に対して、下側から接触する。さらに作業者が作業用工具100を周方向他方側へ回動させていくと、第二フランジ部53によってクランプ駒30が上側に押し上げられる。
【0096】
このようにして、クランプ駒30による切削インサート20の下側へ向けた押圧力が解除される。また、クランプ駒30による切削インサート20の工具後端側へ向けた引き込み力も解除される。
次いで、係合軸101を係合孔45及び貫通孔56から抜き出し、作業用工具100を切削工具から取り外す。
【0097】
次に、図示しないレンチ工具により、規制部材60をその中心軸回りに回転させて、横孔16内で径方向外側に後退させることで、規制部材60の接触部62と、第二ネジ部材50の係合部55との係合を解除させる。
【0098】
次に、図7に示す締結位置の第二ネジ部材50を、中心軸C回りに回動させて(本実施形態では90°回動させて)、図6に示すように、第二ネジ部材50を開放位置とする。詳しくは、工具上面視において、第一フランジ部52の長円形の長軸と、長孔34の長円形の長軸とが互いに平行となるように配置する。
これにより、図5に示すように、長孔34が第一フランジ部52を通過可能となり、クランプ駒30及び切削インサート20をホルダ10から取り外すことができる。
【0099】
〔本実施形態による作用効果〕
以上説明した本実施形態の刃先交換式切削工具1によれば、作業者が作業用工具100により、第一ネジ部材40を中心軸C回りに例えば1回転させた場合に、第二ネジ部材50は、ホルダ雌ネジ14及び第一雄ネジ43のネジピッチ(第1ネジピッチ)と、第一雌ネジ44及び第二雄ネジ54のネジピッチ(第2ネジピッチ)との和(合計ネジピッチ)だけ、ホルダ10の雌ネジ孔11に沿って中心軸方向に移動する。
このため、作業用工具100を回転操作する回転量を少なく抑えつつ、第二ネジ部材50でクランプ駒30を押圧でき、クランプ駒30を介して切削インサート20をインサート取付座12に押圧固定できる。
【0100】
詳しくは、例えば本実施形態と異なり、従来のように単一のクランプねじを用いてクランプ駒をホルダに締結する場合と比べて、本実施形態によれば、作業用工具100を中心軸C回りに回転させる回転数や回転角度を小さく抑えつつ、締結部材70によってクランプ駒30をホルダ10に締結できる。
【0101】
したがって本実施形態によれば、切削インサート20をホルダ10に着脱する際の作業性がよい。切削インサート20の着脱作業が容易にかつ短時間で完了するため、刃先交換式切削工具1を使用する際の作業性をさらに向上させることができる。また、着脱作業が容易となることで、より安定した取り付け精度で切削インサート20をホルダ10に固定できる。
【0102】
また本実施形態では、第二ネジ部材50が、開放位置と締結位置との間で中心軸C回りに回動可能である。
この場合、第二ネジ部材50を開放位置とすることで、クランプ駒30の長孔34に第一フランジ部52を挿通させることができ、クランプ駒30を容易に着脱することが可能となる。また、第二ネジ部材50を締結位置とした場合には、中心軸方向から見て、第一フランジ部52が、長孔34の延びる方向と交差する方向に延びて、クランプ駒30と重なり合う。これにより、第一フランジ部52によってクランプ駒30を安定して押圧することができる。その結果、クランプ駒30によって切削インサート20をホルダ10に対してより安定的に固定することができる。
【0103】
また本実施形態では、第二ネジ部材50が、クランプ駒30に対して中心軸方向の雌ネジ孔11側から接触可能な第二フランジ部53を有する。
この場合、クランプ駒30をホルダ10から取り外す際に、第二フランジ部53が雌ネジ孔11側(下側)からクランプ駒30に接触することで、クランプ駒30をホルダ10から離間する方向に押圧できる。このため、クランプ駒30をより簡単にホルダ10から取り外すことができる。
【0104】
また本実施形態では、第一ネジ部材40の円盤部42が、作業用工具100と係合可能な係合孔45を有する。
この場合、第一ネジ部材40の係合孔45に作業用工具100を係合させて中心軸C回りに回転させることで、容易かつ迅速に第一ネジ部材40を回転させることができる。その結果、切削インサート20を交換する際などの作業性をさらに向上させることができる。
【0105】
また本実施形態では、第二ネジ部材50が貫通孔56を有し、貫通孔56は、中心軸方向から見て係合孔45と重なる。
この場合、第二ネジ部材50の貫通孔56を通して、係合孔45に作業用工具100を係合させることができる。このため、作業者が、ホルダ10のクランプ駒30側(上側)から、作業用工具100によって第一ネジ部材40を回転操作することが可能となり、より作業性が高められる。
【0106】
また本実施形態では、ホルダ10の横孔16に規制部材60が挿入され、規制部材60の先端部(径方向内側の端部)が、第二ネジ部材50の係合部55と係合する。
この場合、シンプルな構造により、第二ネジ部材50の中心軸C回りの回転を安定して規制できる。
【0107】
〔本発明に含まれるその他の構成〕
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0108】
前述の実施形態では、第一雄ネジ43とホルダ雌ネジ14の各ネジのネジピッチ(第1ネジピッチ)が、第二雄ネジ54と第一雌ネジ44の各ネジのネジピッチ(第2ネジピッチ)よりも大きい例を挙げたが、これに限らない。すなわち、第一雄ネジ43とホルダ雌ネジ14の各ネジのネジピッチ(第1ネジピッチ)が、第二雄ネジ54と第一雌ネジ44の各ネジのネジピッチ(第2ネジピッチ)よりも小さくてもよい。あるいは、第1ネジピッチと第2ネジピッチとが、互いに同一であってもよい。
【0109】
前述の実施形態では、中心軸方向に沿って切削工具を上側から見て、周方向一方側(+θ側)が時計回りの方向であり、周方向他方側(-θ側)が反時計回りの方向である例を挙げたが、これに限らない。
すなわち、中心軸方向に沿って切削工具を上側から見て、周方向一方側が反時計回りの方向であり、周方向他方側が時計回りの方向であってもよい。この場合、ホルダ雌ネジ14及び第一雄ネジ43が左ネジ(逆ネジ)とされ、第一雌ネジ44及び第二雄ネジ54が右ネジ(正ネジ)とされることで、前述の実施形態と同様の作用効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の刃先交換式切削工具によれば、切削インサートをホルダに着脱する際の作業性がよい。したがって、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0111】
1…刃先交換式切削工具
10…ホルダ
11…雌ネジ孔
12…インサート取付座
13…開口部
14…ホルダ雌ネジ
16…横孔
20…切削インサート
56…貫通孔
30…クランプ駒
34…長孔
40…第一ネジ部材
41…円筒部
42…円盤部
43…第一雄ネジ
44…第一雌ネジ
45…係合孔
50…第二ネジ部材
52…第一フランジ部
53…第二フランジ部
54…第二雄ネジ
55…係合部
60…規制部材
70…締結部材
100…作業用工具
C…中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7