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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114878
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】インクジェット塗装方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/26 20060101AFI20230810BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20230810BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
B05D1/26 Z
B05D1/36 Z
B05D3/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017447
(22)【出願日】2022-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000157083
【氏名又は名称】トヨタ自動車東日本株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】丸山 けい子
(72)【発明者】
【氏名】小澤 将平
【テーマコード(参考)】
4D075
【Fターム(参考)】
4D075AC06
4D075AC09
4D075AC88
4D075AC91
4D075AE02
4D075AE04
4D075CA47
4D075CA48
4D075CB37
4D075DC12
4D075EA05
4D075EA33
(57)【要約】
【課題】ワークに対し所定の色の幅広のパターンを塗装する際に、ワークに干渉することなく、少ない走査回数で所望のパターン幅とパターン厚とを得ることのできるインクジェットノズルヘッド及び塗布装置を提供する。
【解決手段】ニードル弁22の移動によりノズル孔Nを開閉可能なインクジェットノズルを用い、前記インクジェットノズルに所定の圧力で供給された塗料をワーク面に対し吐出するインクジェット塗装方法であって、前記ニードル弁の弁開量を第1の弁開量として塗料を吐出し、第1の塗膜を形成する工程と、前記第1の塗膜の終端部において、前記ニードル弁の弁開量を第1の弁開量よりも短い第2の弁開量として塗料を吐出し、第2の塗膜を形成する工程と、を備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニードル弁の移動によりノズル孔を開閉可能なインクジェットノズルを用い、前記インクジェットノズルに所定の圧力で供給された塗料をワーク面に対し吐出するインクジェット塗装方法であって、
前記ニードル弁の弁開量を第1の弁開量として塗料を吐出し、第1の塗膜を形成する工程と、
前記第1の塗膜の終端部において、前記ニードル弁の弁開量を第1の弁開量よりも小さい第2の弁開量としてミスト状の塗料を吐出し、第2の塗膜を形成する工程と、
を備えることを特徴とするインクジェット塗装方法。
【請求項2】
前記第1の塗膜の終端部において、前記ニードル弁の弁開量を第1の弁開量よりも小さい第2の弁開量としてミスト状の塗料を吐出し、第2の塗膜を形成する工程において、
前記ノズル孔とワーク面との距離を、前記第1の塗膜を形成する際のノズル孔とワーク面との距離よりも長い距離から、ワーク面に対し塗料を吐出することを特徴とする請求項1に記載されたインクジェット塗装方法。
【請求項3】
前記第1の塗膜の終端部において、前記ニードル弁の弁開量を第1の弁開量よりも小さい第2の弁開量としてミスト状の塗料を吐出し、第2の塗膜を形成する工程において、
前記ニードル弁の開時間を、前記第1の塗膜を形成する際のニードル弁の開時間から漸減させ、前記第2の塗膜の膜厚を漸減させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載されたインクジェット塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット塗装方法に関し、例えば2トーンの塗装において、境界部の塗装に用いるインクジェット塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の製造工程において、例えば車体の表面(ワーク面)に2色の塗装(2トーン塗装と称する)を施す場合、スプレーガンによる塗装では霧状に塗料が噴霧されるため、自動車の車体にマスキング処理を施し、その上からスプレーガンによる塗装を行って、境界線を出していた。
【0003】
しかしながら、車体にマスキング処理を施し、塗装後にそれを除去する作業が煩わしく、作業効率が低下するという課題があった。
そのような課題に対し、噴霧幅の狭い(液滴直進性が高い)インクジェットノズルを用いることにより、マスキング処理を行わずに境界線を出す方法が注目されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-195936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、インクジェット塗装は、エアブラシ塗装やベル塗装よりも同面積に対する塗装に時間を要することが知見されている。そのため、図9に示すように、ワークWに対する2トーン塗装において、サイクルタイムの短縮のために、一方の色の塗装領域Arは、他の色との境界部Ar1をインクジェット塗装により行い、それに隣接する塗装領域Ar2は、例えばエアブラシ塗装により行い、塗装領域Ar2に隣接する塗装領域Ar3は、例えばベル塗装により行っている。
【0006】
しかしながら、図10に示すように、インクジェット塗装により形成された塗膜M1のインク粒子k1は、規則的に粒立ちして配置される一方、エアブラシ塗装により形成された塗膜M2のインク粒子k2は、不規則に配置される。そのため、インクジェット塗装とエアブラシ塗装との隣接部M3は、同色インクであっても色味が異なって見えるという課題があった。
また、図11のようにインクジェット塗膜M1の膜厚を徐々に漸減させて、その上にエアブラシ塗膜M2を形成しても、隣接部M3において階段状の段差が筋状に見えて見栄えが悪くなるという課題があった。
【0007】
本発明は、前記した点に着目してなされたものであり、ワーク面に対しインクジェット塗装を行う際に、他の塗装方法による同色の塗膜との隣接部において、塗装の見た目変化を無くして、見栄えを向上することができるインクジェット塗装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題を解決するために、本発明に係るインクジェット塗装方法は、ニードル弁の移動によりノズル孔を開閉可能なインクジェットノズルを用い、前記インクジェットノズルに所定の圧力で供給された塗料をワーク面に対し吐出するインクジェット塗装方法であって、前記ニードル弁の弁開量を第1の弁開量として塗料を吐出し、第1の塗膜を形成する工程と、前記第1の塗膜の終端部において、前記ニードル弁の弁開量を第1の弁開量よりも小さい第2の弁開量としてミスト状の塗料を吐出し、第2の塗膜を形成する工程と、を備えることに特徴を有する。
【0009】
尚、前記第1の塗膜の終端部において、前記ニードル弁の弁開量を第1の弁開量よりも短い第2の弁開量としてミスト状の塗料を吐出し、第2の塗膜を形成する工程において、前記ノズル孔とワーク面との距離を、前記第1の塗膜を形成する際のノズル孔とワーク面との距離よりも長い距離から、ワーク面に対し塗料を吐出することが望ましい。
また、前記第1の塗膜の終端部において、前記ニードル弁の弁開量を第1の弁開量よりも短い第2の弁開量としてミスト状の塗料を吐出し、第2の塗膜を形成する工程において、前記ニードル弁の開時間を、前記第1の塗膜を形成する際のニードル弁の開時間から漸減させ、前記第2の塗膜の膜厚を漸減させることが望ましい。
【0010】
このような構成によれば、前記第1の塗膜の終端部において、前記ニードル弁の弁開量を第1の弁開量よりも短い第2の弁開量として塗料を吐出し、第2の塗膜を形成することによって、エアブラシ塗装やベル塗装と同様に塗料液滴の径がミスト状になされる。それにより、従来のインクジェット塗装における液滴の粒立ちを無くすことができる。
また、前記第2の塗膜の形成において、ノズル孔から塗布面までの距離をより長くすることで、液滴直進性を低下させ、エアブラシ塗装やベル塗装と同様に、塗料粒子が不規則に配置されるため、従来のインクジェット塗装のような粒子配置の規則性を無くすことができる。
更に、前記第2の塗膜の形成において、インクジェット塗装の終端部の膜厚が漸減して形成されていれば、インクジェット塗装による塗膜とエアブラシ塗装などの他の塗装方法による塗膜との隣接部の見た目の変化をなだらかにすることができる。
その結果、インクジェット塗装による塗膜とエアブラシ塗装などの他の塗装方法による塗膜との隣接部において、塗装の見た目変化を無くして、見栄えを向上することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ワーク面に対しインクジェット塗装を行う際に、他の塗装方法による同色の塗膜との隣接部において、塗装の見た目変化を無くして、見栄えを向上することができるインクジェット塗装方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本実施の形態に係るインクジェット塗装方法が適用される塗布装置の全体構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、インクジェットノズルヘッドの斜視図である。
図3図3は、図2のインクジェットノズルヘッドが備えるヘッドアレイの前面に形成された吐出口の配置を示す模式図である。
図4図4(a)、(b)は、図2のインクジェットノズルヘッドが備えるノズル本体の断面図である。
図5図5は、インクジェットノズルヘッドを一走査した場合の塗布状態を模式的に示す平面図である。
図6図6は、インクジェットノズルヘッドを往復移動させて複数走査を行う際の軌跡を示す平面図である。
図7図7は、ワーク面とノズルとの位置関係を示す断面図である。
図8図8は、ワーク面とノズルとの距離を示す断面図である。
図9図9は、ワーク面の塗装領域を示す斜視図である。
図10図10は、従来のインクジェット塗装膜とエアブラシ塗装膜との隣接部における塗料粒のイメージを示す側面図である。
図11図11は、従来のインクジェット塗装膜とエアブラシ塗装膜との隣接部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明にかかるインクジェット塗装方法の実施の形態につき、図面に基づいて説明する。本実施の形態に係るインクジェット塗装方法は、例えば自動車製造ラインにおける塗布装置に適用され、例えば(他色の塗装との境界線を有する)2トーン塗装のために塗料を吐出するものである。より具体的には、図9に示したワークWの境界部Ar1に塗装を行うものである。
【0014】
図1は、本実施の形態に係るインクジェット塗装方法が適用される塗布装置の全体構成の一例を示すブロック図である。
図1に示す塗布装置1は、インクジェットノズルヘッド10と、これを先端に取り付けたロボットアーム2と、ロボットアーム2を駆動制御するロボットコントローラ3とを備える。ロボットアーム2は、6軸の多関節ロボットであり、ワークが曲面であっても、ワークに対し常に所定の距離にインクジェットノズルヘッド10を配置することができるようになっている。また、インクジェットノズルヘッド10は、ロボットアーム2によってワークに対し平行方向に移動しながら塗布(走査)を行うことが可能となされている。
【0015】
インクジェットノズルヘッド10には、マニホールド4によって分岐された複数のホース11(11a~11d)が接続されている。このうちホース11a~11cは、インクジェットノズルヘッド10への塗料供給路となり、ホース11dはインクジェットノズルヘッド10からの塗料回収路となる。
また、マニホールド4の分岐点側には、1本のホース12の一端が接続され、ホース12の他端は、塗料を切り替えるカラーチェンジバルブ5に接続されている。
【0016】
また、カラーチェンジバルブ5は、複数のホース13と1本のホース14によって塗料循環供給装置6に接続されている。複数のホース13は塗料色ごとに塗料循環供給装置6からカラーチェンジバルブ5への塗料供給路として用いられ、ホース14はカラーチェンジバルブ5から塗料循環供給装置6への塗料回収路として用いられる。
また、塗料循環供給装置6に対してはエア盤7によってバルブへの加圧制御がなされるように構成されている。
【0017】
また、インクジェットノズルヘッド10は、後述する複数のノズル本体17を備えるが、これら複数のノズル本体17は、インクジェットコントローラ8によって開弁、閉弁の駆動制御がなされる。
前記インクジェットコントローラ8と前記ロボットコントローラ3とは、塗装条件が設定されるPC(パーソナルコンピュータ)9において実行されるプログラムによって動作制御されるように構成されている。
【0018】
図2は、インクジェットノズルヘッド10の斜視図である。
図2に示すようにインクジェットノズルヘッド10は、前面に複数の吐出口20(20a~20m)が形成された直方体状のヘッドアレイ15と、ヘッドアレイ15の後面側に装着される複数(13個)のノズル本体17(17a~17m)と、ヘッドアレイ15に対しノズル本体17を後方より押さえて固定するためのコ字状のノズルストッパ18とを備える。
【0019】
前記ヘッドアレイ15の上面には、3つのホースジョイント16a~16cが設けられ、それぞれホース11a~11cが連結可能となっている。
また、ヘッドアレイ15下面には、1つの排出用ジョイント19が設けられ、ホース11dが連結可能となっている。
【0020】
即ち、塗料循環供給装置6から供給される塗料は、カラーチェンジバルブ5により所望色が選択されてマニホールド4に送られ、インクジェットノズルヘッド10に供給されて吐出され、吐出されない回収塗料はマニホールド4からカラーチェンジバルブ5を通って塗料循環供給装置6に循環するように構成されている。
尚、塗色を変更する際には、排出用ジョイント19から洗浄液(シンナー)を供給することで、ヘッドアレイ15、マニホールド4、カラーチェンジバルブ5、及びそれらを繋ぐホース内の洗浄を行うことができる構成とされている。
【0021】
図3にヘッドアレイ15の前面に形成された吐出口20a~20mの配置関係を示す。図示するように吐出口20a~20mの中心位置にそれぞれノズル孔N1~N13が配置される。そのうち、ノズル孔N12、N13は走査方向に平行な直線L1上に配置されるが、ノズル孔N1からN11の位置は走査方向に対し所定角度(直線状に)傾斜した直線に沿って配列されている。
【0022】
図3において、最下位のノズル孔N1の位置は直線L1から所定距離(例えば2.75mm)下方の走査方向に平行な直線L2上に位置する。このようにノズル孔N1~N13の位置をずらして配置することによって、1走査におけるパターン幅を大きくする構成となっている。
【0023】
また、ノズル本体17(17a~17m)の構成は特に限定されるものではないが、例えば、図4(a)、(b)に示すように公知の構成(例えば特許第4123897号に開示された構成)を採用することができる。
ノズル本体17は、前面に設けられたノズル孔Nと、ノズル孔Nに塗料を供給する塗料室21と、塗料室21において先端にてノズル孔Nを閉鎖または開放するニードル弁22と、ニードル弁22の後方に配置される可動鉄心23とを備える。
更にノズル本体17は、前記可動鉄心23に対向しバネ材26を介して設けられる固定鉄心24と、磁力により前記可動鉄心23をノズル軸方向に沿って移動させる電磁ソレノイド25とを備える。
【0024】
即ち、前記ニードル弁22のノズル孔Nに対する閉弁と開弁の動作は、可動鉄心23と、バネ材26と、固定鉄心24と、電磁ソレノイド25とからなる駆動機構により駆動される。この駆動機構は収容空間27に収容され、そこに塗料室21の塗料が流出しないようにするため、ニードル弁22を囲うように弾性体隔膜28が設けられ、塗料室21の塗料には塗料供給口30を介して圧力Pが加えられている。
【0025】
また、加圧された塗料が弾性体隔膜28とニードル弁22の間から洩れ出すのを防ぐために収容空間27の中の気体または液体に対し、加圧通路31を介して塗料にかけられた圧力と同程度の圧力Pが加えられている。
【0026】
このようなノズル本体17によれば、電磁ソレノイド25に電流を流さなければ、バネ材26の付勢力により可動鉄心23とニードル弁22とが前方に押し出され、図4(a)に示すようにノズル孔Nが閉じられる。このとき、塗料供給口30から供給される塗料は、ノズル孔Nから吐出されず塗料排出口32より排出される。
一方、電磁ソレノイド25に電流を流すと、図4(b)に示すように固定鉄心24に可動鉄心23が吸着され、それによりニードル弁22が後方に下がってノズル孔Nが開かれ、圧力Pにより塗料が吐出されることになる。ニードル弁22の開弁量の調整は、電磁ソレノイド25に電流を流す時間によりなされる。ノズル孔Nからの塗料液滴の吐出速度は7000~12000mm/sである。
【0027】
続いて、塗布装置1におけるインクジェットノズルヘッド10を用いた塗布動作について説明する。
ロボットコントローラ3によるロボットアーム2の駆動制御と、インクジェットコントローラ8によるノズル本体17の駆動制御を同期させ、インクジェットノズルヘッド10を図5に示す矢印方向に走査した場合、ノズル孔N1からノズル孔N13まで所定の線幅(本実施形態では0.5mmとする)で塗布がなされ、第1の塗膜M1(図7参照)が形成開始される。
【0028】
このとき目的の膜厚(例えば15μm)を形成するため、ニードル弁22の弁開量(第1の弁開量)が例えば30μmとされ、それにより塗料液滴の径が例えば500μmとされる。尚、弁開量とは、ニードル弁22とノズル孔Nとの間の軸方向の距離である。また、ノズル孔Nにおける塗料液滴の吐出速度が12000mm/sとされ、図8に示すノズル孔Nから塗布面までの距離dは例えば20mmとされて液滴直進性が維持される。
【0029】
全てのノズル孔Nから同じタイミングで塗料の吐出がなされるが、初回の走査におけるノズル孔N1~N6からの吐出時間は例えば8μm/走査とされ、ノズル孔N7~N12からの吐出時間は、その2倍の16μm/走査とされ、ノズル孔N13からの吐出時間は8μm/走査とされる。
【0030】
ノズル孔N12、N13はパターン幅方向の位置が同じ(オフセットなし)であり、その他のノズル孔N1~N12はパターン幅方向のオフセット寸法が例えば0.25mmに形成されている。そのため、図示するようにノズル孔N1~N12までは隣り合うノズル孔間においてパターン幅方向に0.25mmずつ重なった状態で塗布される。その結果、ノズル孔N1~N13からの吐出による1走査後のパターン幅は、3.0mmとなる。ここで、ノズル孔N12とノズル孔N13との間は、走査方向に直交する方向にオフセットされていないため(走査方向に平行な直線に沿って配置されるため)、一走査後の塗布膜端部に段差が形成されず、塗布後の境界線を明確に出すことができる。
【0031】
また、塗布装置1において、インクジェットノズルヘッド10を1走査したパターン幅は3mmであるため、よりパターン幅を大きくしたい場合には、図6に矢印で移動方向を示すようにインクジェットノズルヘッド10を往復移動させた複数の走査を行うことができる。
このとき直前の走査による塗布面の上に走査方向に直交する方向(パターン幅方向)に所定のオフセット寸法(本実施形態では1.5mm)を空けて走査を行い、その際に前記オフセット寸法に基づきノズル孔N1~N12の吐出時間に差をつけることで、均一な膜厚で幅広のパターンを形成することができる(2回目以降の走査ではノズル孔N13からの吐出は不要)。
【0032】
2回目の走査以降は、ノズル孔N1~N12のみから吐出がなされ、それらの吐出量が全て8μm/走査とされる。そして、走査方向の直交方向(パターン幅方向)に1.5mmのオフセットがなされ、それにより直前の走査のノズル孔N1~N6による塗布膜上に重ね塗りがなされる。その結果、重ね塗りされた部分は、塗布膜の目標値(15μm)を満たすことができる。
【0033】
また、このインクジェットノズルヘッド10の走査を繰り返し、インクジェット塗装の終端が近づくと(例えば終端から手前15mmの位置に達すると)、ニードル弁22の弁開量(第2の弁開量)が例えば24μm以下と、より小さくされ、それによりエアブラシ塗装やベル塗装と同様に塗料液滴の径が例えば300μm以下と小さくなりミスト状にされる。
【0034】
また、図7に示すようにノズル孔Nから塗布面までの距離dを例えば68mm以上80mm以下の、より長い距離にして、液滴直進性を低下させる。これによりエアブラシ塗装やベル塗装と同様に、塗料粒子が不規則に配置されることになる。
【0035】
また、ニードル弁22の開時間が例えば35μsまで漸減され、1回の吐出量を漸減させる。これにより図7に示すようにインクジェット塗装の終端部に向けて塗装膜厚が1μmまで漸減される(例えば幅15mmの漸減部(第2の塗膜)M4が形成される)。
このようにしてインクジェット塗装の終了後(図9の境界部Ar1)、図7に示す塗膜の漸減部M4の上から、例えばエアブラシ塗装により図9の塗装領域Ar2に塗膜M2が形成されることになる。
【0036】
以上のように本実施の形態によれば、前記漸減部M4においては、インクジェット塗装の終端部は膜厚が漸減して形成されているため、インクジェット塗装により塗膜M1とエアブラシ塗装などの他の塗装方法による塗膜M2との隣接部M3の見た目の変化をなだらかにすることができる。
特に、エアブラシ塗装やベル塗装と同様に塗料液滴の径がミスト状になされるので、従来のインクジェット塗装における液滴の粒立ちを無くすことができる。
更に、ノズル孔Nから塗布面までの距離dをより長くすることで、液滴直進性を低下させ、エアブラシ塗装やベル塗装と同様に、塗料粒子が不規則に配置されるため、従来のインクジェット塗装のような粒子配置の規則性を無くすことができる。
その結果、インクジェット塗装による塗膜M1とエアブラシ塗装などの他の塗装方法による塗膜M2との隣接部M3において、塗装の見た目変化を無くして、見栄えを向上することができる。
【0037】
尚、前記した実施の形態においては、インクジェットノズルヘッド10に13個のノズル孔Nを設けた構成としたが、本発明にあっては、その数を限定するものではない。
また、前記実施の形態においては、一列に配置された複数のノズル孔Nのうち、一端側の2つのノズル孔Nは、走査方向に平行な直線に沿って配置したが、本発明にあっては、この例に限定されるものではなく、配列された複数のノズル孔の一端側において3つ以上のノズル孔を走査方向に平行な直線に沿って配置してもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 塗布装置
2 ロボットアーム
3 ロボットコントローラ(ロボット制御部)
4 マニホールド(塗料供給手段)
5 カラーチェンジバルブ(塗料供給手段)
6 塗料循環供給装置(塗料供給手段)
7 エア盤(塗料供給手段)
8 インクジェットコントローラ(ノズル制御部)
9 PC
10 インクジェットノズルヘッド
11 ホース
12 ホース
13 ホース
14 ホース
17 ノズル本体
22 ニードル弁
20 吐出口
N ノズル孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11