(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114904
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】エソメプラゾール含有顆粒及びそれを含む口腔内崩壊錠
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4439 20060101AFI20230810BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20230810BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20230810BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230810BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20230810BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20230810BHJP
【FI】
A61K31/4439
A61P1/04
A61K9/16
A61K47/10
A61K47/04
A61K47/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017481
(22)【出願日】2022-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000209049
【氏名又は名称】沢井製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】中道 克樹
(72)【発明者】
【氏名】金井 匡平
(72)【発明者】
【氏名】中谷 匡利
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076AA95
4C076BB05
4C076BB22
4C076CC16
4C076DD05C
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4C076DD38
4C076DD41C
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4C076EE52C
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4C076FF06
4C076FF09
4C076FF25
4C076FF36
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4C076FF68
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC39
4C086GA07
4C086GA08
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4C086MA03
4C086MA05
4C086MA41
4C086MA52
4C086MA57
4C086NA03
4C086NA10
4C086NA13
4C086ZA68
(57)【要約】
【課題】
一実施形態において、腸溶性機能とエソメプラゾールの安定性を両立したエソメプラゾール含有顆粒、又はエソメプラゾール含有顆粒を含む口腔内崩壊錠を提供する。
【解決手段】
本発明の一実施形態によると、エソメプラゾール含有顆粒は、核粒子と、エソメプラゾール含有層と、第1の腸溶層と、第2の腸溶層と、を有し、第1の腸溶層は、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン及びプロピレングリコールから選択される1つの可塑剤と、タルク、ステアリン酸塩及びラウリル硫酸ナトリウムから選択される1つの滑沢剤と、を含み、第2の腸溶層は、クエン酸トリエチル、トリアセチン及びアセチルクエン酸トリエチルから選択される1つの可塑剤と、モノステアリン酸グリセリン、ステアリン酸、カルナウバロウ、硬化油及びショ糖脂肪酸エステルから選択される1つの滑沢剤と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核粒子と、前記核粒子の表面に配置されたエソメプラゾール含有層と、前記エソメプラゾール含有層上に配置された第1の腸溶層と、前記第1の腸溶層の表面に配置された第2の腸溶層と、を有し、
前記第1の腸溶層は、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン及びプロピレングリコールから選択される1つの可塑剤と、タルク、ステアリン酸塩及びラウリル硫酸ナトリウムから選択される1つの滑沢剤と、を含み、
前記第2の腸溶層は、クエン酸トリエチル、トリアセチン及びアセチルクエン酸トリエチルから選択される1つの可塑剤と、モノステアリン酸グリセリン、ステアリン酸、カルナウバロウ、硬化油及びショ糖脂肪酸エステルから選択される1つの滑沢剤と、を含む、エソメプラゾール含有顆粒。
【請求項2】
前記第1の腸溶層は、ポリエチレングリコール又はポリオキシエチレンと、タルクと、を含み、
前記第2の腸溶層は、クエン酸トリエチルと、モノステアリン酸グリセリンと、を含む、請求項1に記載のエソメプラゾール含有顆粒。
【請求項3】
前記エソメプラゾール含有層と前記第1の腸溶層との間に配置された第1の遮断層及び第2の遮断層をさらに含む、請求項1又は2に記載のエソメプラゾール含有顆粒。
【請求項4】
前記第2の腸溶層の表面に配置されたオーバーコート層をさらに含む、請求項1乃至3の何れか一に記載のエソメプラゾール含有顆粒。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一に記載のエソメプラゾール含有顆粒と、崩壊剤と、医薬的に許容される1つ以上の添加剤と、を含むことを特徴とするエソメプラゾール含有口腔内崩壊錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、エソメプラゾール含有製剤に関する、または、本発明の一実施形態は、エソメプラゾール含有顆粒を含む口腔内崩壊錠に関する。
【背景技術】
【0002】
エソメプラゾール(Bis{5-methoxy-2-[(S)-(4-methoxy-3,5-dimethylpyridin-2-yl)methanesulfinyl]-1H-benzimidazol-1-yl}monomagnesium trihydrate)は、胃潰瘍等に効能効果を示すプロトンポンプ阻害剤である。日本国内においては、ネキシウム(登録商標)カプセル及びネキシウム(登録商標)懸濁用顆粒分包が第一三共株式会社より販売されている。エソメプラゾールは酸により分解されるため、エソメプラゾール含有製剤は、腸溶性製剤として提供される必要がある。また、エソメプラゾールは、酸以外にも、熱、光、又は湿度により分解される不安定な薬物であることが知られている。酸に対する安定性を高めた製剤として、例えば、特許文献1には、活性物質としての芯物質が、エソメプラゾールのラセミ体であるオメプラゾールを含有し、芯物質を腸溶性コーティングから分離する下がけ層が適用された、下がけ層及び腸溶性コーティング層で被覆された活性物質の芯物質を含有する経口用の腸溶性コーティング処方物が開示されている。
【0003】
一方、服用性向上等の目的から、エソメプラゾール含有製剤を高齢者や嚥下困難な患者等に飲みやすい剤形である口腔内崩壊錠とすることが望まれている。腸溶性製剤を口腔内崩壊錠とする場合、原薬含有粒子を腸溶性被覆層で被覆する必要があるが、被覆層を設けると原薬含有粒子の粒子径は大きくなり、口当たり等に問題が生じてしまう。また、口当たりを考慮して、腸溶性被覆層を薄くすると、薬物が酸性環境に接触する可能性が必然的に増加する上、打錠時の衝撃により原薬含有粒子の腸溶皮膜が多少なりとも損なわれるため、十分な薬物安定効果を得ることができない。すなわち、口腔内崩壊錠に適用可能な腸溶性顆粒とするためには、腸溶性顆粒の粒子径を小さくしてもなお、腸溶性機能の担保とエソメプラゾールの安定性向上の両方の機能が実現される必要があった。良好な薬剤放出特性を有する、口腔内崩壊錠の製造に好適なベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤の被覆微粒子として、特許文献2には、球形結晶セルロース粒子、ベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤及び微粉状クロスポビドンを含んでなる、球形結晶セルロース粒子上の薬物層、不活性中間層、及び腸溶皮膜層からなるベンズイミダゾール系プロトンポンプ阻害剤を含有する被覆微粒子が開示されている。しかしながら、特許文献2では、エソメプラゾールの安定性に関する検討は何ら開示されていない。プロトンポンプ阻害剤の中でもエソメプラゾールはとりわけ不安定な薬物であるため、製剤中の添加剤との接触によっても分解が促進される恐れがある。したがって、腸溶性機能の担保に寄与しつつ、エソメプラゾールの安定性を損なわない添加剤の組み合わせを選択する必要があるが、そのような添加剤の組み合わせは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平08-512316号公報
【特許文献2】特開2009-256344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題を解決するものであって、腸溶性機能とエソメプラゾールの安定性を両立したエソメプラゾール含有顆粒を提供することを目的の一つとする。または、一実施形態において、腸溶性機能とエソメプラゾールの安定性を両立したエソメプラゾール含有顆粒を含む口腔内崩壊錠を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態によると、核粒子と、核粒子の表面に配置されたエソメプラゾール含有層と、エソメプラゾール含有層上に配置された第1の腸溶層と、第1の腸溶層の表面に配置された第2の腸溶層と、を有し、第1の腸溶層は、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン及びプロピレングリコールから選択される1つの可塑剤と、タルク、ステアリン酸塩及びラウリル硫酸ナトリウムから選択される1つの滑沢剤と、を含み、第2の腸溶層は、クエン酸トリエチル、トリアセチン及びアセチルクエン酸トリエチルから選択される1つの可塑剤と、モノステアリン酸グリセリン、ステアリン酸、カルナウバロウ、硬化油及びショ糖脂肪酸エステルから選択される1つの滑沢剤と、を含む、エソメプラゾール含有顆粒が提供される。
【0007】
第1の腸溶層は、ポリエチレングリコール又はポリオキシエチレンと、タルクと、を含み、第2の腸溶層は、クエン酸トリエチルと、モノステアリン酸グリセリンと、を含んでもよい。
【0008】
エソメプラゾール含有層と第1の腸溶層との間に配置された第1の遮断層及び第2の遮断層をさらに含んでもよい。
【0009】
第2の腸溶層の表面に配置されたオーバーコート層をさらに含んでもよい。
【0010】
本発明の一実施形態によると、上記の何れかのエソメプラゾール含有顆粒と、崩壊剤と、医薬的に許容される1つ以上の添加剤と、を含むことを特徴とするエソメプラゾール含有口腔内崩壊錠が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施形態によると、腸溶性機能とエソメプラゾールの安定性を両立したエソメプラゾール含有顆粒が提供される。または、一実施形態によると、腸溶性機能とエソメプラゾールの安定性を両立したエソメプラゾール含有顆粒を含む口腔内崩壊錠が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(a)は本発明の一実施形態に係るエソメプラゾール含有顆粒10の断面を示す模式図であり、(b)はエソメプラゾール含有口腔内崩壊錠100の断面を示す模式図である。
【
図2】(a)は本発明の一実施例に係るエソメプラゾール含有顆粒からのエソメプラゾールの溶出率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るエソメプラゾール含有顆粒及びそれを含む口腔内崩壊錠について詳細に説明する。ただし、本発明のエソメプラゾール含有顆粒及びそれを含む口腔内崩壊錠は、以下に示す実施形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0014】
本発明者らは、腸溶性機能とエソメプラゾールの安定性を両立したエソメプラゾール含有顆粒の提供に向けて鋭意検討した結果、エソメプラゾール含有顆粒に添加する可塑剤と滑沢剤の種類と組み合わせが腸溶性機能の担保と安定性の両立に寄与していることを見いだした。意外にも、エソメプラゾールと直接接触すると安定性を損なう可塑剤と滑沢剤が、腸溶性機能の担保に寄与していたため、エソメプラゾールの安定性を損なわないよう腸溶性機能に寄与する可塑剤と滑沢剤を配置することで、腸溶性機能とエソメプラゾールの安定性を両立したエソメプラゾール含有顆粒とすることを達成した。
【0015】
図1(a)は、本発明の一実施形態に係るエソメプラゾール含有顆粒10の断面を示す模式図である。
【0016】
一実施形態において、エソメプラゾール含有顆粒10は、核粒子11、核粒子11の表面に配置されたエソメプラゾール含有層13、エソメプラゾール含有層13上に配置された第1の腸溶層17a、及び第1の腸溶層17aの表面に配置された第2の腸溶層17bを有する。また、エソメプラゾール含有顆粒10は、エソメプラゾール含有層13と第1の腸溶層17aとの間に配置された第1の遮断層15a及び第2の遮断層15bをさらに含む。第2の腸溶層の表面には、オーバーコート層19がさらに配置される。
【0017】
第1の遮断層15aは、エソメプラゾール含有層13の表面に配置され、第2の遮断層15bは、第1の遮断層15aの表面に配置される。第1の腸溶層17aは、第2の遮断層15bの表面に配置される。したがって、エソメプラゾール含有顆粒10は、核粒子11の表面にエソメプラゾール含有層13、第1の遮断層15a、第2の遮断層15b、第1の腸溶層17a、第2の腸溶層17b及びオーバーコート層19が順次積層した構造を有する。なお、本実施形態において、オーバーコート層19は、必須の構成ではなく、任意に配置可能な被膜である。また、エソメプラゾール含有顆粒10は、本発明の効果を得られる範囲で、上記の層構成に加えて、追加の層を有してもよい。
【0018】
核粒子11は、エソメプラゾール含有層13と接するため、エソメプラゾールに対して不活性な物質で構成された粒子である。「エソメプラゾールに対して不活性な物質」とは、エソメプラゾールと接触しても、エソメプラゾールの類縁物質が生成しない、又はほとんど生成しない物質である。核粒子11としては、例えば、結晶セルロース、有機ポリマー、無機塩、マンニトール、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、及び乳糖を除く糖類から選択される粒子を用いることができる。結晶セルロース粒子は、核粒子11として好ましい例である。また、エソメプラゾール含有顆粒10を含む口腔内崩壊錠の服用感の観点から、核粒子11の平均粒子径(D50)が400μm以下であることが好ましい。一実施形態において、核粒子11は、平均粒子径(D50)が50μm以上300μm以下であることが好ましい。なお、本明細書において、核粒子11の平均粒子径(D50)は、レーザー回折法により評価することとする。より具体的には、平均粒子径(D50)は、気流式分散器を用いた乾式法に基づいて測定した粒度分布における50%累積粒径である。
【0019】
エソメプラゾール含有層13は、原薬であるエソメプラゾールと、結合剤を含む。本明細書において、エソメプラゾールは、エソメプラゾールマグネシウム水和物を示す。エソメプラゾール含有層13に含まれるエソメプラゾールは、例えば、口腔内崩壊錠1錠当たり、10mg又は20mgとなるように調整可能な量であり、原薬の含有量は、エソメプラゾール含有顆粒10の全重量に対して、好ましくは5重量%以上30重量%以下である。
【0020】
また、エソメプラゾール含有層13に含まれる結合剤は、エソメプラゾールに対して不活性な物質から選択され、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、及びポリビニルアルコールから選択される1つ以上の結合剤を用いることができる。ヒドロキシプロピルセルロースは、エソメプラゾール含有層13に含まれる結合剤の好ましい例である。エソメプラゾール含有層13に含まれる結合剤は、例えば、エソメプラゾール含有顆粒10の全重量に対して、1重量%以上5重量%以下である。
【0021】
第1の遮断層15aは、エソメプラゾールの類縁物質の生成を抑制するための被膜である。第1の遮断層15aは、例えば、結合剤と、滑沢剤と、制酸剤とを含む。第1の遮断層15aに含まれる結合剤は、エソメプラゾールに対して不活性な物質から選択され、例えば、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、及びポリ酢酸ビニルから選択される1つ以上の結合剤を用いることができる。ヒプロメロースは、第1の遮断層15aに含まれる結合剤の好ましい例である。第1の遮断層15aに含まれる結合剤は、例えば、エソメプラゾール含有顆粒10の全重量に対して、1重量%以上5重量%以下である。
【0022】
また、第1の遮断層15aに含まれる滑沢剤は、例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、二酸化チタン、及び含水二酸化ケイ素から選択される1つ以上の滑沢剤を用いることができる。タルク及びステアリン酸マグネシウムは、第1の遮断層15aに含まれる滑沢剤の好ましい例である。第1の遮断層15aに含まれる滑沢剤は、例えば、エソメプラゾール含有顆粒10の全重量に対して、1重量%以上10重量%以下である。
【0023】
また、第1の遮断層15aに含まれる制酸剤は、例えば、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸塩、クエン酸塩、及びアミンから選択される1つ以上の制酸剤を用いることができる。水酸化マグネシウムは、第1の遮断層15aに含まれる制酸剤の好ましい例である。第1の遮断層15aに含まれる制酸剤は、例えば、エソメプラゾール含有顆粒10の全重量に対して、1重量%以上10重量%以下である。
【0024】
第2の遮断層15bは、エソメプラゾール色調変化を抑制するための被膜である。第2の遮断層15bは、例えば、結合剤と、滑沢剤とを含む。第2の遮断層15bに含まれる結合剤は、エソメプラゾールに対して不活性な物質から選択され、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、及びポリ酢酸ビニルから選択される1つ以上の結合剤を用いることができる。ヒドロキシプロピルセルロースは、第2の遮断層15bに含まれる結合剤の好ましい例である。第2の遮断層15bに含まれる結合剤は、例えば、エソメプラゾール含有顆粒10の全重量に対して、1重量%以上5重量%以下である。
【0025】
また、第2の遮断層15bに含まれる滑沢剤は、例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、二酸化チタン、及び含水二酸化ケイ素から選択される1つ以上の滑沢剤を用いることができる。タルク、ステアリン酸マグネシウム及び含水二酸化ケイ素は、第2の遮断層15bに含まれる滑沢剤の好ましい例である。第2の遮断層15bに含まれる滑沢剤は、例えば、エソメプラゾール含有顆粒10の全重量に対して、1重量%以上10重量%以下である。
【0026】
第1の腸溶層17aは、腸溶性を有する層であるが、第2の腸溶層17bよりもエソメプラゾール含有層13に近接して配置されるため、エソメプラゾールの安定性の向上に寄与する被膜である。第1の腸溶層17aは、例えば、腸溶性コーティング基剤と、可塑剤と、滑沢剤とを含む。また、第1の腸溶層17aには、任意の添加剤として、界面活性剤、着色剤、pH調節剤及びアルカリ化剤から選択される1つ以上の添加剤を添加することができる。
【0027】
第1の腸溶層17aに含まれる腸溶性コーティング基剤は、エソメプラゾールの安定性を損なわない添加剤から選択され、例えば、メタクリル酸コポリマー、セルロースアセトフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセトスクシネート、及びポリ酢酸ビニルフタレートから選択される1つ以上の腸溶性コーティング基剤を用いることができる。メタクリル酸コポリマーは、第1の腸溶層17aに含まれる腸溶性コーティング基剤の好ましい例である。第1の腸溶層17aに含まれる腸溶性コーティング基剤は、例えば、エソメプラゾール含有顆粒10の全重量に対して、1重量%以上25重量%以下である。
【0028】
第1の腸溶層17aに含まれる可塑剤は、エソメプラゾールの安定性を向上させる添加剤から選択され、例えば、ポリエチレングリコール(マクロゴールとも称する。)、ポリオキシエチレン及びプロピレングリコールから選択される1つ以上の可塑剤を用いることができる。ポリエチレングリコールとしては、例えば、マクロゴール200、マクロゴール300、マクロゴール400、マクロゴール600、マクロゴール1000、マクロゴール1500、マクロゴール1540、マクロゴール4000、マクロゴール6000、マクロゴール20000、及びマクロゴール35000から選択される1つ以上を用いることができる。また、ポリオキシエチレンとしては、例えば、ラウロマクロゴール、ポリエチレンオキシド、及びポリオキシエチレン(105)ポリオキシプロピレン(5)グリコールから選択される1つ以上を用いることができる。マクロゴール6000及びラウロマクロゴールは、第1の腸溶層17aに含まれる可塑剤の好ましい例である。第1の腸溶層17aに含まれる可塑剤は、例えば、エソメプラゾール含有顆粒10の全重量に対して、1重量%以上10重量%以下である。
【0029】
第1の腸溶層17aに含まれる滑沢剤は、エソメプラゾールの安定性を向上させる添加剤から選択され、例えば、タルク、ステアリン酸塩及びラウリル硫酸ナトリウムから選択される1つ以上の滑沢剤を用いることができる。タルクは、第1の腸溶層17aに含まれる滑沢剤の好ましい例である。第1の腸溶層17aに含まれる滑沢剤は、例えば、エソメプラゾール含有顆粒10の全重量に対して、1重量%以上10重量%以下である。
【0030】
第1の腸溶層17aに含まれる界面活性剤としては、例えば、ポリソルベートを用いることができる。ポリソルベートとしては、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、及びポリソルベート80から選択される1つ以上を用いることができる。ポリソルベート80は、第1の腸溶層17aに含まれる界面活性剤の好ましい例である。第1の腸溶層17aに含まれる界面活性剤は、例えば、エソメプラゾール含有顆粒10の全重量に対して、0.1重量%以上5重量%以下である。
【0031】
第1の腸溶層17aに含まれる着色剤としては、例えば、三二酸化鉄、及び黄色三二酸化鉄から選択される1つ以上の着色剤を用いることができる。また、pH調節剤としては、例えば、無水クエン酸を用いることができる。また、アルカリ化剤としては、例えば、水酸化ナトリウムを用いることができる。
【0032】
第2の腸溶層17bは、腸溶性を有する被膜であり、打錠による腸溶層の破損を防止するための被膜である。第2の腸溶層17bは、第1の腸溶層17aよりも外側に配置されるため、耐酸性が大きいことが好ましい。第2の腸溶層17bは、例えば、腸溶性コーティング基剤と、可塑剤と、滑沢剤とを含む。また、第2の腸溶層17bには、任意の添加剤として、界面活性剤、着色剤、pH調節剤及びアルカリ化剤から選択される1つ以上の添加剤を添加することができる。
【0033】
第2の腸溶層17bに含まれる腸溶性コーティング基剤は、第1の腸溶層17aに含まれる腸溶性コーティング基剤として例示した腸溶性コーティング基剤から選択することができる。メタクリル酸コポリマーは、第2の腸溶層17bに含まれる腸溶性コーティング基剤の好ましい例である。第2の腸溶層17bに含まれる腸溶性コーティング基剤は、例えば、エソメプラゾール含有顆粒10の全重量に対して、1重量%以上25重量%以下である。
【0034】
第2の腸溶層17bは、第1の腸溶層17aよりも耐酸性が大きいことが好ましく、第2の腸溶層17bに含まれる可塑剤は、例えば、クエン酸トリエチル、トリアセチン、及びアセチルクエン酸トリエチルから選択される1つの可塑剤を用いることができる。クエン酸トリエチルは、第2の腸溶層17bに含まれる可塑剤の好ましい例である。第2の腸溶層17bに含まれる可塑剤は、エソメプラゾール含有顆粒10の全重量に対して、1重量%以上10重量%以下である。
【0035】
また、耐酸性の観点から、第2の腸溶層17bに含まれる滑沢剤は、例えば、モノステアリン酸グリセリン、ステアリン酸、カルナウバロウ、硬化油、及びショ糖脂肪酸エステルから選択される1つの滑沢剤を用いることができる。モノステアリン酸グリセリンは、第2の腸溶層17bに含まれる滑沢剤の好ましい例である。第2の腸溶層17bに含まれる滑沢剤は、例えば、エソメプラゾール含有顆粒10の全重量に対して、1重量%以上10重量%以下である。
【0036】
本実施形態に係るエソメプラゾール含有顆粒10にオーバーコート層19を配置する場合、コーティング基剤として、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、乳糖、及びD-マンニトールを用いることができる。オーバーコート層19に含まれるコーティング基剤は、例えば、エソメプラゾール含有顆粒10の全重量に対して、1重量%以上10重量%以下である。
【0037】
本実施形態に係るエソメプラゾール含有顆粒10は、第1の腸溶層17aに含まれる可塑剤及び滑沢剤と、第2の腸溶層17bに含まれる可塑剤及び滑沢剤との組み合わせを最適化することにより、腸溶性機能とエソメプラゾールの安定性を両立することができる。
【0038】
[エソメプラゾール含有顆粒の製造方法]
本実施形態に係るエソメプラゾール含有顆粒10は、公知の方法を用いて製造することができる。例えば、エソメプラゾールと結合剤を精製水に懸濁させ、エソメプラゾール懸濁液を調製する。核粒子11を転動流動層造粒機に入れ、エソメプラゾール懸濁液をスプレーしてレイヤリングを行った後に、乾燥させて、エソメプラゾール含有層13を核粒子11の表面に配置した第1の顆粒を得る。
【0039】
次に、上述した結合剤、滑沢剤、及び制酸剤を精製水に懸濁させ、第1の遮断層15aのための第1のコーティング液を調製する。第1の顆粒を転動流動層造粒機に入れ、第1のコーティング液をスプレーして、コーティングを行った後に、乾燥させて、エソメプラゾール含有層13の表面に第1の遮断層15aを配置した第2の顆粒を得る。
【0040】
次に、上述した結合剤及び滑沢剤を精製水に懸濁させ、第2の遮断層15bのための第2のコーティング液を調製する。第2の顆粒を転動流動層造粒機に入れ、第2のコーティング液をスプレーして、コーティングを行った後に、乾燥させて、第1の遮断層15aの表面に第2の遮断層15bを配置した第3の顆粒を得る。
【0041】
次に、上述した腸溶性コーティング基剤、可塑剤及び滑沢剤、任意で界面活性剤、着色剤、pH調節剤及びアルカリ化剤から選択される1つ以上の添加剤を精製水に懸濁させ、第1の腸溶層17aのための第3のコーティング液を調製する。第3の顆粒を転動流動層造粒機に入れ、第3のコーティング液をスプレーして、コーティングを行った後に、乾燥させて、第2の遮断層15bの表面に第1の腸溶層17aを配置した第4の顆粒を得る。
【0042】
次に、上述した腸溶性コーティング基剤、可塑剤及び滑沢剤、任意で界面活性剤、着色剤、pH調節剤及びアルカリ化剤から選択される1つ以上の添加剤を精製水に懸濁させ、第2の腸溶層17bのための第4のコーティング液を調製する。第4の顆粒を転動流動層造粒機に入れ、第4のコーティング液をスプレーして、コーティングを行った後に、乾燥させて、第1の腸溶層17aの表面に第2の腸溶層17bを配置した第5の顆粒を得る。
【0043】
一実施形態において、第5の顆粒を篩に通して分級し、エソメプラゾール含有顆粒10とすることができる。また、第5の顆粒の表面にオーバーコート層19をさらに配置してもよい。オーバーコート層19を配置する場合、上述したコーティング基剤を精製水に溶解し、第5のコーティング液を調製する。第5の顆粒を転動流動層造粒機に入れ、第5のコーティング液をスプレーして、コーティングを行った後に、乾燥させて、第2の腸溶層17bの表面にオーバーコート層19を配置した第6の顆粒を得る。得られた顆粒を篩に通して分級し、エソメプラゾール含有顆粒10を得ることができる。
【0044】
[口腔内崩壊錠]
エソメプラゾール含有顆粒10を用いて、エソメプラゾール含有口腔内崩壊錠100を構成することができる。
図1(b)は、本発明の一実施形態に係るエソメプラゾール含有口腔内崩壊錠100の断面を示す模式図である。一実施形態において、エソメプラゾール含有口腔内崩壊錠100は、エソメプラゾール含有顆粒10と、医薬的に許容される1つ以上の添加剤101と、を含む。エソメプラゾール含有口腔内崩壊錠100に含まれるエソメプラゾールは、1錠あたり10mg又は20mgであるが、これらに限定されず、必要に応じて処方を変更することも可能である。
【0045】
エソメプラゾール含有口腔内崩壊錠100が含む医薬的に許容される添加剤としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、安定化剤、矯味剤、滑沢剤及び香料等が挙げられる。これらの添加剤から、1つ以上を選択してエソメプラゾール含有口腔内崩壊錠100を構成することができるが、口腔内で崩壊する特性を付与するために、賦形剤及び崩壊剤を含むことが好ましい。また、これらの添加剤の2種以上を組み合わせたプレミックス添加剤を含んでもよい。
【0046】
賦形剤は、例えば、糖類、糖アルコール類、デンプン類、セルロース類、カルメロース類、アラビアゴム、デキストラン、プルラン、ケイ酸塩類、リン酸塩、炭酸塩及び硫酸塩等から選択することができる。糖類としては、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、トレハロース、及びマルトース等が挙げられる。糖アルコール類としては、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、及びイソマルト等が挙げられる。また、デンプン類としては、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、及びデキストリン等が挙げられる。セルロース類としては、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。カルメロース類としては、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、及びクロスカルメロースナトリウム等が挙げられる。ケイ酸塩類としては、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウム等が挙げられる。リン酸塩としては、リン酸水素カルシウム等が挙げられる。炭酸塩としては、炭酸カルシウム、及び炭酸マグネシウム等が挙げられる。硫酸塩としては、硫酸カルシウム等が挙げられる。これらの賦形剤は、単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0047】
結合剤は、例えば、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、エチルセルロース及びメチルセルロース等のセルロース類、ポビドン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール完全けん化物、ポリビニルアルコール部分けん化物、カルボキシビニルポリマー、及びポリ塩化ビニル等のビニル系高分子物質、アミノアルキルメタクリレートコポリマー(E、RS)、メタクリル酸コポリマー(L、S、LD)、及びアクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液等のアクリル系高分子物質、ステアリルアルコール、ゼラチン、デキストリン、アラビアゴム、プルラン、マクロゴール、並びにデンプン等から選択することができる。
【0048】
崩壊剤は、例えば、カルメロース、カルメロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム及びメチルセルロース等のセルロース類、部分アルファー化デンプン及びトウモロコシデンプン等のデンプン類、クロスポビドン等から選択することができる。
【0049】
安定化剤は、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスパラギン酸、アスパラギン酸ナトリウム、アルギニン、エデト酸ナトリウム、無水クエン酸、クエン酸水和物、クエン酸ナトリウム水和物、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、ステアリン酸、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸マグネシウム等から選択することができる。
【0050】
矯味剤は、例えば、アスコルビン酸、アスパラギン酸、アスパラギン酸ナトリウム、アスパルテーム、カラメル、還元麦芽糖水アメ、グリチルリチン酸、サッカリン、サッカリンナトリウム、スクラロース、ステビア抽出精製物、精製白糖、及びメントール等から選択することができる。
【0051】
滑沢剤は、例えば、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、及びロイシン等から選択することができる。
【0052】
本実施形態に係るエソメプラゾール含有口腔内崩壊錠100は、エソメプラゾール含有顆粒10を構成する第1の腸溶層17aに含まれる可塑剤及び滑沢剤と、第2の腸溶層17bに含まれる可塑剤及び滑沢剤との組み合わせを最適化することにより、腸溶性機能とエソメプラゾールの安定性を両立することができる。
【0053】
[エソメプラゾール含有口腔内崩壊錠の製造方法]
本実施形態に係るエソメプラゾール含有口腔内崩壊錠100は、公知の方法を用いて製造することができる。例えば、エソメプラゾール含有顆粒10と、上述した医薬的に許容される1つ以上の添加剤とを、通常用いられる混合機を用いて混合し、通常用いられる打錠機で圧縮成形(打錠)することにより、エソメプラゾール含有口腔内崩壊錠100を製造することができる。
【0054】
[安定性の評価]
本明細書において、エソメプラゾール含有顆粒10又はエソメプラゾール含有口腔内崩壊錠100の安定性の評価として、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を用いてエソメプラゾールの純度を評価する。面積百分率法により、クロマトグラム上に得られたエソメプラゾール及びエソメプラゾール由来の類縁物質の各成分のピーク面積の総和を100とし、ピーク面積の比からエソメプラゾール由来の総類縁物質(%)を算出する。
【0055】
[腸溶性の評価]
本明細書において、エソメプラゾール含有顆粒10又はエソメプラゾール含有口腔内崩壊錠100の腸溶性は、第十七改正日本薬局方の溶出試験法(フロースルーセル法)に準じて、人工胃液及び人工腸液を用い評価するものとする。
【0056】
[耐酸性の評価]
本明細書において、エソメプラゾール含有顆粒10又はエソメプラゾール含有口腔内崩壊錠100の耐酸性は、第十七改正日本薬局方の溶出試験法(パドル法)に準じて、溶出性を評価する。なお、試験液として、pH5.0の薄めたMcIlvaine緩衝液を用いる。
【実施例0057】
[比較例1]
エソメプラゾール 555g、ヒドロキシプロピルセルロース(Klucel LF、Ashland) 85gを精製水 2135gに懸濁させ、エソメプラゾール懸濁液を調製した。核粒子として結晶セルロース粒子(セルフィア(登録商標)CP-102(平均粒子径106μm~212μm、旭化成株式会社) 375gを転動流動層造粒機(FD-MP-01、株式会社パウレック)に入れ、エソメプラゾール懸濁液をスプレーしてレイヤリングを行い、60℃で乾燥させて、第1の顆粒を得た。
【0058】
ヒプロメロース(TC-5(登録商標)R、信越化学工業株式会社) 50g、タルク(富士タルク株式会社) 140g、ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社) 10gを精製水 800gに懸濁させ、第1のコーティング液を調製した。上述の転動流動層造粒機を用いて、第1のコーティング液を第1の顆粒にスプレーしてコーティングを行い、57℃で乾燥させて、第2の顆粒を得た。
【0059】
ヒドロキシプロピルセルロース(Klucel LF、Ashland) 65g、タルク(富士タルク株式会社) 195g、ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社) 15gを精製水 1100gに懸濁させ、第2のコーティング液を調製した。上述の転動流動層造粒機を用いて、第2のコーティング液を第2の顆粒にスプレーしてコーティングを行い、60℃で乾燥させて、第3の顆粒を得た。
【0060】
メタクリル酸コポリマーLD(オイドラギット(登録商標)L30D-55、Evonik Roehm GmbH)1500 g、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液(オイドラギット(登録商標)NE30D、Evonik Roehm GmbH) 165g、クエン酸トリエチル(森村商事株式会社) 90g、モノステアリン酸グリセリン(理研ビタミン株式会社) 45g、ポリソルベート80(NIKKOL TO-10M、日光ケミカルズ株式会社) 18g、無水クエン酸(小松屋株式会社) 0.75g、三二酸化鉄 0.45g、黄色三二酸化鉄 0.45gを精製水 2249gに懸濁させ、第3のコーティング液を調製した。上述の転動流動層造粒機を用いて、第3のコーティング液を第3の顆粒にスプレーしてコーティングを行い、60℃で乾燥させて、第4の顆粒を得た。篩を用いて第4の顆粒を整粒し、比較例1のエソメプラゾール含有顆粒を得た。
【0061】
[実施例1]
比較例1で得た第3の顆粒を用いた。メタクリル酸コポリマーLD(オイドラギット(登録商標)L30D-55、Evonik Roehm GmbH) 750g、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液(オイドラギット(登録商標)NE30D、Evonik Roehm GmbH) 82.5g、クエン酸トリエチルに代えてマクロゴール6000(日油株式会社) 45gを用い、モノステアリン酸グリセリン(理研ビタミン株式会社) 22.5g、ポリソルベート80(NIKKOL TO-10M、日光ケミカルズ株式会社) 9g、無水クエン酸(小松屋株式会社) 0.375g、三二酸化鉄 0.225g、黄色三二酸化鉄 0.225gを精製水 1124gに懸濁させ、第3のコーティング液を調製した。上述の転動流動層造粒機を用いて、第3のコーティング液を第3の顆粒にスプレーしてコーティングを行い、60℃で乾燥させて、第1の腸溶層を有する第4の顆粒を得た。
【0062】
メタクリル酸コポリマーLD(オイドラギット(登録商標)L30D-55、Evonik Roehm GmbH) 750g、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液(オイドラギット(登録商標)NE30D、Evonik Roehm GmbH) 82.5g、クエン酸トリエチル(森村商事株式会社) 45g、モノステアリン酸グリセリン(理研ビタミン株式会社) 22.5g、ポリソルベート80(NIKKOL TO-10M、日光ケミカルズ株式会社) 9g、無水クエン酸(小松屋株式会社) 0.375g、三二酸化鉄 0.225g、黄色三二酸化鉄 0.225gを精製水 1125gに懸濁させ、第4のコーティング液を調製した。上述の転動流動層造粒機を用いて、第4のコーティング液を第4の顆粒にスプレーしてコーティングを行い、60℃で乾燥させて、第2の腸溶層を有する第5の顆粒を得た。篩を用いて第5の顆粒を整粒し、実施例1のエソメプラゾール含有顆粒を得た。
【0063】
[安定性の評価]
実施例1及び比較例1のエソメプラゾール含有顆粒を40℃、相対湿度75%の開放条件下で4週間保存した。保存前後の実施例1及び比較例1のエソメプラゾール含有顆粒について、高速液体クロマトグラフィを用いて類縁物質量を測定した。測定結果を表1に示す。
【表1】
【0064】
実施例1においては、比較例1の腸溶層の半分の量で第1の腸溶層と第2の腸溶層を形成したため、実施例1のエソメプラゾール含有顆粒と比較例1のエソメプラゾール含有顆粒の腸溶層の厚みや成分量は同じである。表1の結果より、第1の腸溶層に可塑剤としてマクロゴール6000を用いることにより、エソメプラゾールの安定性が向上することが明らかとなった。
【0065】
[腸溶性の評価]
実施例1及び比較例1のエソメプラゾール含有顆粒をそれぞれ0.15g用い、フロースルーセル法により、エソメプラゾール含有顆粒の溶出性を評価した。具体的には、溶液1にエソメプラゾール含有顆粒を入れ、流速9mL/minとして、25分間流した。続いて、流速9mL/minにて溶液2を25分間流した。続いて、流速9mL/minにて溶液3を55分間流し、溶出した。このとき、高速液体クロマトグラフィを用いてエソメプラゾールの溶出量を測定した。測定結果を
図2に示す。
【0066】
図2の結果より、腸溶層に可塑剤としてクエン酸トリエチルを含むことにより、腸溶性に優れることが明らかとなった。この結果から、実施例1のエソメプラゾール含有顆粒のように、少なくとも第2の腸溶層には、クエン酸トリエチルを含むことが腸溶性機能には必要であることが示された。
【0067】
[実施例2]
実施例2として、第1の腸溶層にマクロゴールとタルクを含み、第2の腸溶層にクエン酸トリエチルとタルクを含むエソメプラゾール含有顆粒を製造した。具体的には、比較例1で得た第1の顆粒を用い、ヒプロメロース(TC-5(登録商標)R、信越化学工業株式会社) 880g、タルク(富士タルク株式会社) 440g、ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社) 176g、水酸化マグネシウム(キョーワスイマグ、協和化学工業株式会社) 1936gを精製水 13728gに懸濁させ、第1のコーティング液を調製した。流動層造粒機を用いて、第1のコーティング液を第1の顆粒にスプレーしてコーティングを行い、70℃で乾燥させて、第2の顆粒を得た。
【0068】
ヒドロキシプロピルセルロース(Klucel LF、Ashland) 1001g、タルク(富士タルク株式会社) 3003g、含水二酸化ケイ素(カープレックス(登録商標)#80、DSL.ジャパン株式会社) 231g、を精製水 16940gに懸濁させ、第2のコーティング液を調製した。流動層造粒機を用いて、第2のコーティング液を第2の顆粒にスプレーしてコーティングを行い、70℃で乾燥させて、第3の顆粒を得た。
【0069】
メタクリル酸コポリマーLD(オイドラギット(登録商標)L30D-55、Evonik Roehm GmbH) 100mg、0.1N水酸化ナトリウム 0.1mg、マクロゴール6000(日油株式会社) 3.6mg、タルク(富士タルク株式会社) 12mg、含水二酸化ケイ素(カープレックス(登録商標)#80、DSL.ジャパン株式会社) 1.2mg、三二酸化鉄 0.03mg、黄色三二酸化鉄 0.03mgを精製水 134mgの比率にて、任意の仕込み量で懸濁させ、第3のコーティング液を調製した。流動層造粒機を用いて、第3のコーティング液を第3の顆粒にスプレーしてコーティングを行い、70℃で乾燥させて、第1の腸溶層を有する第4の顆粒を得た。
【0070】
メタクリル酸コポリマーLD(オイドラギット(登録商標)L30D-55、Evonik Roehm GmbH) 500g、クエン酸トリエチル(森村商事株式会社) 30g、タルク(富士タルク株式会社) 75gを精製水 670gに懸濁させ、第4のコーティング液を調製した。流動層造粒機を用いて、第4のコーティング液を第4の顆粒にスプレーしてコーティングを行い70℃で乾燥させて、第2の腸溶層を有する第5の顆粒を得た。篩を用いて第5の顆粒を整粒し、実施例2のエソメプラゾール含有顆粒を得た。
【0071】
[実施例3]
実施例3として、実施例2の第4の顆粒を用い、第2の腸溶層にクエン酸トリエチルに代えてラウロマクロゴールを含むエソメプラゾール含有顆粒を製造した。具体的には、メタクリル酸コポリマーLD(オイドラギット(登録商標)L30D-55、Evonik Roehm GmbH) 300g、0.1N水酸化ナトリウム 75g、含水二酸化ケイ素(カープレックス(登録商標)#80、DSL.ジャパン株式会社) 3.6g、ラウロマクロゴール(NIKKOL BL-25、日光ケミカルズ株式会社)18g、タルク(富士タルク株式会社) 36g、三二酸化鉄 0.09g、黄色三二酸化鉄 0.09gを精製水 327gに懸濁させ、第4のコーティング液を調製した。流動層造粒機を用いて、第4のコーティング液を第4の顆粒にスプレーしてコーティングを行い70℃で乾燥させて、第2の腸溶層を有する第5の顆粒を得た。篩を用いて第5の顆粒を整粒し、実施例3のエソメプラゾール含有顆粒を得た。
【0072】
[安定性の評価]
実施例2及び実施例3のエソメプラゾール含有顆粒を40℃、相対湿度75%の開放条件下で2週間保存した。保存前後の実施例2及び実施例3のエソメプラゾール含有顆粒について、高速液体クロマトグラフィを用いて類縁物質量を測定した。測定結果を表2に示す。
【表2】
【0073】
表2の結果より、第2の腸溶層に含まれる可塑剤は、エソメプラゾールの安定性にはほとんど影響しないことが明らかとなった。
【0074】
[実施例4]
実施例4として、エソメプラゾール含有顆粒を含む口腔内崩壊錠を製造し、第2の腸溶層における可塑剤が耐酸性に与える影響について検討した。具体的には、トヒドロキシプロピルセルロース(Klucel LF、Ashland) 184g、含水二酸化ケイ素(カープレックス(登録商標)#80、DSL.ジャパン株式会社) 24g、タルク(富士タルク株式会社) 528g、ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社) 16gを精製水 3008gに懸濁させ、第2のコーティング液を調製した。比較例1の第1の顆粒を流動層造粒機へ投入し、第2のコーティング液を第1の顆粒にスプレーしてコーティングを行い、乾燥させて、第3の顆粒(第1の遮断層の質量と第2の遮断層の質量の合計と等しい質量の遮断層が形成されているため、便宜上、第3の顆粒と称する。)を得た。
【0075】
実施例2と同様の方法により、第3の顆粒上に第1の腸溶層及び第2の腸溶層を形成し、第5の顆粒を得た。篩を用いて第5の顆粒を整粒し、実施例4のエソメプラゾール含有顆粒を得た。
【0076】
実施例4のエソメプラゾール含有顆粒と、乳糖水和物(Pharmatose(登録商標)200M、DEF Pharma) 56.87mg、結晶セルロース(セオラス(登録商標)KG-802、旭化成株式会社) 105.34mg、トウモロコシデンプン(xx16、日本食品化工株式会社) 88.73mg、アスパルテーム(味の素株式会社) 5.8mg、クロスポビドン(Kollidon(登録商標)CL-F、BASF) 4.4mg、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(ノイシリン(登録商標)UFL2、富士化学工業株式会社) 11.2mg、香料(ストロベリーフレーバー、高砂香料工業株式会社) 0.44mg、及びステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社) 1.4mgの比率にて、任意の仕込み量で混合し、打錠前粉末を得た。単発打錠機を用い、重量450mgとなるよう打錠前粉末を打錠し、実施例4のエソメプラゾール含有口腔内崩壊錠を得た。
【0077】
[比較例2]
比較例2として、ラウロマクロゴールを含む第2の腸溶層を有するエソメプラゾール含有顆粒を含む口腔内崩壊錠を製造し、第2の腸溶層における可塑剤が耐酸性に与える影響について実施例4と比較した。具体的には、ヒプロメロース(TC-5(登録商標)R、信越化学工業株式会社) 100g、タルク(富士タルク株式会社) 270g、ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社) 20gを精製水 1560gに懸濁させ、第1のコーティング液を調製した。比較例1の第1の顆粒を流動層造粒機へ投入し、第1のコーティング液を第1の顆粒にスプレーしてコーティングを行い、70℃で乾燥させて、第2の顆粒を得た。
【0078】
トヒドロキシプロピルセルロース(Klucel LF、Ashland) 130g、含水二酸化ケイ素(カープレックス(登録商標)#80、DSL.ジャパン株式会社) 30g、タルク(富士タルク株式会社) 390gを精製水 2200gに懸濁させ、第2のコーティング液を調製した。第2の顆粒を流動層造粒機へ投入し、第2のコーティング液を第1の顆粒にスプレーしてコーティングを行い、70℃で乾燥させて、第3の顆粒を得た。
【0079】
実施例4と同様の方法により、第3の顆粒の表面に第1の腸溶層を形成し、第4の顆粒を得た。続いて、メタクリル酸コポリマーLD(オイドラギット(登録商標)L30D-55、Evonik Roehm GmbH) 1250g、水酸化ナトリウム 1.25g、ラウロマクロゴール(NIKKOL BL-25、日光ケミカルズ株式会社) 75g、タルク(富士タルク株式会社) 187.5g、三二酸化鉄 0.375g、黄色三二酸化鉄 0.375gを精製水 1561gに懸濁させ、第4のコーティング液を調製した。流動層造粒機を用いて、第4のコーティング液を第4の顆粒にスプレーしてコーティングを行い、70℃で乾燥させて、第2の腸溶層を有する第5の顆粒を得た。篩を用いて第5の顆粒を整粒し、比較例2のエソメプラゾール含有顆粒を得た。
【0080】
比較例2のエソメプラゾール含有顆粒を用いて、実施例4と同様の方法により、比較例2のエソメプラゾール含有口腔内崩壊錠を得た。
【0081】
[耐酸性の評価]
試験液として、pH5.0の薄めたMcIlvaine緩衝液を調製した。実施例4及び比較例2のエソメプラゾール含有口腔内崩壊錠を用いて、第十七改正日本薬局方の溶出試験法(パドル法)に準じて、試験開始60分後のエソメプラゾールの溶出率を求めた。測定結果を表3に示す。
【0082】
【0083】
表3の結果より、第2の腸溶層にラウロマクロゴールを含むと、耐酸性が低下することが明らかとなった。なお、比較例2のエソメプラゾール含有口腔内崩壊錠は、遮断層のヒドロキシプロピルセルロースのグレード、及び第2の腸溶層に水酸化ナトリウム、三二酸化鉄及び黄色三二酸化鉄を含む点でも実施例4のエソメプラゾール含有口腔内崩壊錠とは異なるが、遮断層の厚みの合計は同じであり、これの差異は、エソメプラゾール含有口腔内崩壊錠における耐酸性には、影響しない。
【0084】
[実施例5]
腸溶層における滑沢剤の効果について検討するため、2つの腸溶層にモノステアリン酸グリセリンを含むエソメプラゾール含有顆粒を実施例5として製造した。具体的には、ヒドロキシプロピルセルロース(Klucel LF、Ashland) 1144g、含水二酸化ケイ素(カープレックス(登録商標)#80、DSL.ジャパン株式会社) 264g、タルク(富士タルク株式会社) 3432gを精製水 19360gに懸濁させ、第2のコーティング液を調製した。実施例2の第2の顆粒を流動層造粒機に投入し、第2のコーティング液をスプレーしてコーティングを行い、70℃で乾燥させて、第3の顆粒を得た。
【0085】
メタクリル酸コポリマーLD(オイドラギット(登録商標)L30D-55、Evonik Roehm GmbH) 20000g、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液(オイドラギット(登録商標)NE30D、Evonik Roehm GmbH) 2267g、マクロゴール6000(日油株式会社) 1200g、モノステアリン酸グリセリン(理研ビタミン株式会社) 600g、ポリソルベート80(NIKKOL TO-10M、日光ケミカルズ株式会社) 240g、含水二酸化ケイ素(カープレックス(登録商標)#80、DSL.ジャパン株式会社) 240g、無水クエン酸(小松屋株式会社) 10.0g、三二酸化鉄 6g、黄色三二酸化鉄 6gを精製水 30720gに懸濁させ、第3のコーティング液を調製した。上述の流動層造粒機を用いて、第3のコーティング液を第3の顆粒にスプレーしてコーティングを行い、70℃で乾燥させて、第1の腸溶層を有する第4の顆粒を得た。
【0086】
メタクリル酸コポリマーLD(オイドラギット(登録商標)L30D-55、Evonik Roehm GmbH) 10000g、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液(オイドラギット(登録商標)NE30D、Evonik Roehm GmbH) 1133g、クエン酸トリエチル(森村商事株式会社) 600g、モノステアリン酸グリセリン(理研ビタミン株式会社) 300g、ポリソルベート80(NIKKOL TO-10M、日光ケミカルズ株式会社) 120g、無水クエン酸(小松屋株式会社) 5.0g、三二酸化鉄 3g、黄色三二酸化鉄 3gを精製水 15360gに懸濁させ、第4のコーティング液を調製した。上述の流動層造粒機を用いて、第4のコーティング液を第4の顆粒にスプレーしてコーティングを行い、70℃で乾燥させて、第2の腸溶層を有する第5の顆粒を得た。篩を用いて第5の顆粒を整粒した。
【0087】
乳糖水和物(Pharmatose(登録商標)200M、DEF Pharma) 1318gを精製水 20600gに溶解させ、第5のコーティング液を調製した。上述の流動層造粒機を用いて、第5のコーティング液を第4の顆粒にスプレーしてコーティングを行い、70℃で乾燥させて、実施例5のエソメプラゾール含有顆粒を得た。
【0088】
[実施例6]
実施例6として、第1の腸溶層にマクロゴールとタルクを含み、第2の腸溶層にクエン酸トリエチルとタルクを含むエソメプラゾール含有顆粒を製造した。具体的には、比較例1で得た第1の顆粒を用い、ヒプロメロース(TC-5(登録商標)R、信越化学工業株式会社) 880g、タルク(富士タルク株式会社) 440g、ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社) 176g、水酸化マグネシウム(キョーワスイマグ、協和化学工業株式会社) 1936gを精製水 13728gに懸濁させ、第1のコーティング液を調製した。流動層造粒機を用いて、第1のコーティング液を第1の顆粒にスプレーしてコーティングを行い、70℃で乾燥させて、第2の顆粒を得た。
【0089】
ヒドロキシプロピルセルロース(Klucel LF、Ashland) 1001g、タルク(富士タルク株式会社) 3003g、含水二酸化ケイ素(カープレックス(登録商標)#80、DSL.ジャパン株式会社) 231g、を精製水 16940gに懸濁させ、第2のコーティング液を調製した。流動層造粒機を用いて、第2のコーティング液を第2の顆粒にスプレーしてコーティングを行い、70℃で乾燥させて、第3の顆粒を得た。
【0090】
メタクリル酸コポリマーLD(オイドラギット(登録商標)L30D-55、Evonik Roehm GmbH) 100mg、0.1N水酸化ナトリウム 0.1mg、マクロゴール6000(日油株式会社) 3.6mg、タルク(富士タルク株式会社) 12mg、含水二酸化ケイ素(カープレックス(登録商標)#80、DSL.ジャパン株式会社) 1.2mgを精製水 134mgの比率にて、任意の仕込み量で懸濁させ、第3のコーティング液を調製した。流動層造粒機を用いて、第3のコーティング液を第3の顆粒にスプレーしてコーティングを行い、70℃で乾燥させて、第1の腸溶層を有する第4の顆粒を得た。
【0091】
メタクリル酸コポリマーLD(オイドラギット(登録商標)L30D-55、Evonik Roehm GmbH) 500g、クエン酸トリエチル(森村商事株式会社) 30g、タルク(富士タルク株式会社) 75gを精製水 670gに懸濁させ、第4のコーティング液を調製した。流動層造粒機を用いて、第4のコーティング液を第4の顆粒にスプレーしてコーティングを行い70℃で乾燥させて、第2の腸溶層を有する第5の顆粒を得た。篩を用いて第5の顆粒を整粒し、実施例6のエソメプラゾール含有顆粒を得た。
【0092】
[安定性の評価]
実施例5のエソメプラゾール含有顆粒と、比較のため実施例6のエソメプラゾール含有顆粒を40℃、相対湿度75%の開放条件下で2週間保存した。保存前後の実施例5及び実施例6のエソメプラゾール含有顆粒について、高速液体クロマトグラフィを用いて類縁物質量を測定した。測定結果を表4に示す。
【表4】
【0093】
表4の結果より、腸溶層にタルクを含むことにより、エソメプラゾールの安定性がより向上することが明らかとなった。
【0094】
[実施例7]
実施例5のエソメプラゾール含有顆粒を用いて、実施例4と同様の方法により、実施例7のエソメプラゾール含有口腔内崩壊錠を得た。
【0095】
[実施例8]
実施例2のエソメプラゾール含有顆粒を用いて、実施例4と同様の方法により、実施例8のエソメプラゾール含有口腔内崩壊錠を得た。
[耐酸性の評価]
実施例4と同様に試験液を調製し、実施例7及び実施例8のエソメプラゾール含有口腔内崩壊錠を用いて、第十七改正日本薬局方の溶出試験法(パドル法)に準じて、試験開始60分後のエソメプラゾールの溶出率を求めた。測定結果を表5に示す。
【0096】
【0097】
表5の結果より、第2の腸溶層にモノステアリン酸グリセリンを含むことにより、耐酸性を維持することが明らかとなった。なお、実施例7のエソメプラゾール含有口腔内崩壊錠と実施例8のエソメプラゾール含有口腔内崩壊錠において、エソメプラゾール含有顆粒の第2の遮断層に含水二酸化ケイ素又はステアリン酸マグネシウムを含む点が異なるが、添加量が少量であることから、この差異による安定性と耐酸性への影響は軽微である。また、エソメプラゾール含有顆粒の2つの腸溶層がモノステアリン酸グリセリン又はタルクを含む点以外に組成が僅かに異なるが、腸溶性コーティング基剤の含有量が同等であることから、この差異による安定性と耐酸性への影響は軽微である。さらに、実施例8のエソメプラゾール含有口腔内崩壊錠はオーバーコート層を備えないが、オーバーコート層は、エソメプラゾール含有顆粒の流動性のみに寄与するため、安定性と耐酸性への影響は軽微である。
【0098】
[実施例9]
エソメプラゾール 555g、ヒドロキシプロピルセルロース(Klucel LF、Ashland)85gを精製水 2135gに懸濁させ、エソメプラゾール懸濁液を調製した。核粒子として結晶セルロース粒子(セルフィア(登録商標)CP-102(平均粒子径106μm~212μm、旭化成株式会社) 375gを転動流動層造粒機(FD-MP-01、株式会社パウレック)に入れ、エソメプラゾール懸濁液をスプレーしてレイヤリングを行い、60℃で乾燥させて、第1の顆粒を得た。
【0099】
ヒプロメロース(TC-5(登録商標)R、信越化学工業株式会社) 100g、タルク(富士タルク株式会社) 270g、ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社) 20gを精製水 800gに懸濁させ、第1のコーティング液を調製した。上述の転動流動層造粒機を用いて、第1のコーティング液を第1の顆粒にスプレーしてコーティングを行い、57℃で乾燥させて、第2の顆粒を得た。
【0100】
ヒドロキシプロピルセルロース(Klucel LF、Ashland) 130g、タルク(富士タルク株式会社) 390g、含水二酸化ケイ素(カープレックス(登録商標)#80、DSL.ジャパン株式会社) 30gを精製水 1100gに懸濁させ、第2のコーティング液を調製した。上述の転動流動層造粒機を用いて、第2のコーティング液を第2の顆粒にスプレーしてコーティングを行い、60℃で乾燥させて、第3の顆粒を得た。
【0101】
メタクリル酸コポリマーLD(オイドラギット(登録商標)L30D-55、Evonik Roehm GmbH) 30mg、0.1N水酸化ナトリウム 0.1mg、マクロゴール6000(日油株式会社) 6mg、タルク(富士タルク株式会社) 12mg、含水二酸化ケイ素(カープレックス(登録商標)#80、DSL.ジャパン株式会社) 1.2mg、三二酸化鉄 0.03mg、黄色三二酸化鉄 0.03mgを精製水 134mgの比率にて、任意の仕込み量で懸濁させ、第3のコーティング液を調製した。流動層造粒機を用いて、第3のコーティング液を第3の顆粒にスプレーしてコーティングを行い、70℃で乾燥させて、第1の腸溶層を有する第4の顆粒を得た。
【0102】
メタクリル酸コポリマーLD(オイドラギット(登録商標)L30D-55、Evonik Roehm GmbH) 1500g、アクリル酸エチル・メタクリル酸メタクリル酸メチルコポリマー(オイドラギット(登録商標)NE30D、Evonik Roehm GmbH) 170g、0.1N水酸化ナトリウム 5g、クエン酸トリエチル(森村商事株式会社) 300g、モノステアリン酸グリセリン(理研ビタミン株式会社) 150g、ポリソルベート80(NIKKOL TO-10M、日光ケミカルズ株式会社) 60g、三二酸化鉄 1.5g、黄色三二酸化鉄 1.5gを精製水 2010gに懸濁させ、第4のコーティング液を調製した。流動層造粒機を用いて、第4のコーティング液を第4の顆粒にスプレーしてコーティングを行い70℃で乾燥させて、第2の腸溶層を有する第5の顆粒を得た。篩を用いて第5の顆粒を整粒し、第5の顆粒を得た。
【0103】
乳糖水和物(Pharmatose(登録商標)200M、DEF Pharma) 373gを精製水 5830gに溶解させ、第6のコーティング液を調製した。上述の流動層造粒機を用いて、第6のコーティング液を第5の顆粒にスプレーしてコーティングを行い、70℃で乾燥させて、第6の顆粒を得た。
【0104】
第6の顆粒を用いて、実施例4と同様の方法により、実施例9のエソメプラゾール含有口腔内崩壊錠を得た。
【0105】
[安定性の評価]
実施例9のエソメプラゾール含有口腔内崩壊錠を40℃、相対湿度75%の開放条件下で2週間保存した。保存前後の実施例9のエソメプラゾール含有口腔内崩壊錠について、高速液体クロマトグラフィを用いて類縁物質量を測定した。測定結果を表6に示す。
【表6】
【0106】
[腸溶性の評価]
実施例9のエソメプラゾール含有口腔内崩壊錠を用い、フロースルーセル法により、エソメプラゾール含有顆粒の溶出性を評価した。具体的には、溶液1にエソメプラゾール含有口腔内崩壊錠を入れ、流速9mL/minとして、25分間流した。続いて、流速9mL/minにて溶液2を25分間流した。続いて、流速9mL/minにて溶液3を55分間流し、溶出した。このとき、高速液体クロマトグラフィを用いてエソメプラゾールの溶出率を測定した。測定結果を表7に示す。
【表7】
10 エソメプラゾール含有顆粒、11 核粒子、13 エソメプラゾール含有層、15a 第1の遮断層、15b 第2の遮断層、17a 第1の腸溶層、17b 第2の腸溶層、19 オーバーコート層