(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114925
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】電線および差込プラグ
(51)【国際特許分類】
H05F 3/02 20060101AFI20230810BHJP
H01R 13/66 20060101ALI20230810BHJP
H01B 9/00 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
H05F3/02 A
H01R13/66
H01B9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017524
(22)【出願日】2022-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】518289140
【氏名又は名称】久野 雅哉
(74)【代理人】
【識別番号】100129573
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 博正
(72)【発明者】
【氏名】久野 雅哉
【テーマコード(参考)】
5E021
5G067
【Fターム(参考)】
5E021FA03
5E021FA14
5E021FB07
5E021FB21
5E021FC19
5E021MA02
5E021MA09
5E021MB08
5G067DA02
(57)【要約】
【課題】接地電位を、より簡単に、より確実に、大地の電位により近づける。
【解決手段】本発明の電線は、音声を再生するか若しくは録音するまたは画像を再生するか若しくは録画する電気機器に商用電源から単相の交流の電力を伝達する電線であって、一方の端部が商用電源の電圧線に接続され、他方の端部が電気機器に接続される第1の絶縁電線と、一方の端部が商用電源の中性線に接続され、他方の端部が電気機器に接続される第2の絶縁電線と、一方の端部が商用電源の接地線に接続され、他方の端部が電気機器に接続される第3の絶縁電線と、一方の端部が第1の絶縁電線の一方の端部に接続されていて、他方の端部が第1の絶縁電線の他方の端部に接続されている第4の絶縁電線と、第4の絶縁電線の一方の端部側で第4の絶縁電線に直列に接続されている抵抗器とを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声を再生するか若しくは録音するまたは画像を再生するか若しくは録画する電気機器に商用電源から単相の交流の電力を伝達する電線において、
一方の端部が前記商用電源の電圧線に接続され、他方の端部が前記電気機器に接続される第1の絶縁電線と、
一方の端部が前記商用電源の中性線に接続され、他方の端部が前記電気機器に接続される第2の絶縁電線と、
一方の端部が前記商用電源の接地線に接続され、他方の端部が前記電気機器に接続される第3の絶縁電線と、
一方の端部が前記第1の絶縁電線の一方の端部に接続されていて、他方の端部が前記第1の絶縁電線の他方の端部に接続されている第4の絶縁電線と、
前記第4の絶縁電線の一方の端部側で前記第4の絶縁電線に直列に接続されている第1の抵抗器と
を含む電線。
【請求項2】
請求項1に記載の電線において、
前記第4の絶縁電線の一方の端部側で前記第1の抵抗器と前記第4の絶縁電線とに直列に接続されている第1のコンデンサをさらに含む電線。
【請求項3】
請求項2に記載の電線において、
前記第4の絶縁電線の一方の端部側で前記第1の抵抗器と前記第1のコンデンサと前記第4の絶縁電線とに直列に接続されている第1のインダクタをさらに含む電線。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電線において、
前記第1の絶縁電線の一方の端部、前記第2の絶縁電線の一方の端部、前記第3の絶縁電線の一方の端部および前記第4の絶縁電線の一方の端部が接続されている差込プラグをさらに含む電線。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電線において、
一方の端部が前記第2の絶縁電線の一方の端部に接続されていて、他方の端部が前記第2の絶縁電線の他方の端部に接続されている第5の絶縁電線と、
前記第5の絶縁電線の一方の端部側で前記第5の絶縁電線に直列に接続されている第2の抵抗器と
をさらに含む電線。
【請求項6】
請求項5に記載の電線において、
前記第5の絶縁電線の一方の端部側で前記第2の抵抗器と前記第5の絶縁電線とに直列に接続されている第2のコンデンサをさらに含む電線。
【請求項7】
請求項6に記載の電線において、
前記第5の絶縁電線の一方の端部側で前記第2の抵抗器と前記第2のコンデンサと前記第5の絶縁電線とに直列に接続されている第2のインダクタをさらに含む電線。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電線が接続されている電気機器。
【請求項9】
商用電源の単相の交流の電力を供給するプラグ受けに差し込まれる差込プラグにおいて、
前記プラグ受けに差し込まれた場合、前記商用電源の電圧線に接続される第1の刃と、
前記プラグ受けに差し込まれた場合、前記商用電源の中性線に接続される第2の刃と、
前記プラグ受けに差し込まれた場合、前記商用電源の接地線に接続される接地極と、
第1の電線を接続するための第1の端子であって、前記第1の刃に接続されている第1の端子と、
第2の電線を接続するための第2の端子であって、前記第2の刃に接続されている第2の端子と、
第3の電線を接続するための第3の端子であって、前記接地極に接続されている第3の端子と、
一方の端子が前記第1の端子に接続されている第1の抵抗器と、
第4の電線を接続するための第4の端子であって、前記第1の抵抗器の他方の端子に接続されている第4の端子と
を含む差込プラグ。
【請求項10】
請求項9に記載の差込プラグにおいて、
前記第1の端子と前記第4の端子との間に、前記第1の抵抗器と直列に接続されている第1のコンデンサをさらに含む差込プラグ。
【請求項11】
請求項9または請求項10のいずれか1項に記載の差込プラグにおいて、
一方の端子が前記第2の端子に接続されている第2の抵抗器と、
第5の電線を接続するための第5の端子であって、前記第2の抵抗器の他方の端子に接続されている第5の端子と
をさらに含む差込プラグ。
【請求項12】
請求項11に記載の差込プラグにおいて、
前記第2の端子と前記第5の端子との間に、前記第2の抵抗器と直列に接続されている第2のコンデンサをさらに含む差込プラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電線および差込プラグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、感電を防止するために、電気機器を接地することが行われている。この場合、アース棒を地中に埋めることで、電気機器の筐体に漏電したときでも、漏電電流を地中に逃がすことで、電気機器の筐体を大地と同電位に保ち、感電を防止するものである。このような専用接地は、直流を流す回路として設けられる。
【0003】
音声を再生する音響機器や画像を再生して表示する映像機器においても、接地が重要であることはよく知られている。
【0004】
従来、オフィス、家庭などで、一般商用電源に接続されて動作する電子機器から発生する不要な電磁波を抑圧する電磁波妨害抑圧装置であって、商用電源の単相電源における接地電位のニュートラル側(中性線)と活電部のホット側(活性線)とを自動的に判別する極性判別手段と、極性判別手段により判別した単相電源のニュートラル側と単相電源に接続されて動作する電子機器の接地側の導電部又は導電性の筐体とをコンデンサ及び抵抗器で接続する接地点接続手段とを有する電磁波妨害抑圧装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、一方の端部が交流の商用電源のラインに接続され、他方の端部が機器の電源に接続される第1の配線と、一方の端部が商用電源のニュートラルに接続され、他方の端部が機器の電源に接続される第2の配線と、一方の端部が開放され、他方の端部が機器のアースに接続される第3の配線とで商用電源を機器に接続し、接地する接地回路において、一方の端子が第2の配線に接続されている第1のコンデンサと、一方の端子が第3の配線の一方の端部側に接続されている第2のコンデンサと、一方の端子が第3の配線の他方の端部側に接続されている第3のコンデンサとを設け、第1のコンデンサの他方の端子、第2のコンデンサの他方の端子および第3のコンデンサの他方の端子を接続するようにしたものもある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-262455号公報
【特許文献2】特開2020-27754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本来、音声を再生するか若しくは録音するまたは画像を再生するか若しくは録画する電気機器は、接地電位を、0Vである大地の電位であるとして設計および開発されている。
【0008】
しかしながら、実際に測定してみると、音声を再生するか若しくは録音するまたは画像を再生するか若しくは録画する電気機器のそれぞれには、固有の接地電位が生じている。音声を再生するか若しくは録音するまたは画像を再生するか若しくは録画する電気機器の接地電位は、機器の設計(動作)の基本となる0Vである大地の電位にならない。
【0009】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、接地電位を、より簡単に、より確実に、大地の電位により近づけることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の側面の電線は、音声を再生するか若しくは録音するまたは画像を再生するか若しくは録画する電気機器に商用電源から単相の交流の電力を伝達する電線であって、一方の端部が商用電源の電圧線に接続され、他方の端部が電気機器に接続される第1の絶縁電線と、一方の端部が商用電源の中性線に接続され、他方の端部が電気機器に接続される第2の絶縁電線と、一方の端部が商用電源の接地線に接続され、他方の端部が電気機器に接続される第3の絶縁電線と、一方の端部が第1の絶縁電線の一方の端部に接続されていて、他方の端部が第1の絶縁電線の他方の端部に接続されている第4の絶縁電線と、第4の絶縁電線の一方の端部側で第4の絶縁電線に直列に接続されている第1の抵抗器とを含む。
【0011】
第4の絶縁電線の一方の端部側で第1の抵抗器と第4の絶縁電線とに直列に接続されている第1のコンデンサをさらに設けることができる。
【0012】
第4の絶縁電線の一方の端部側で第1の抵抗器と第1のコンデンサと第4の絶縁電線とに直列に接続されている第1のインダクタをさらに設けることができる。
【0013】
第1の絶縁電線の一方の端部、第2の絶縁電線の一方の端部、第3の絶縁電線の一方の端部および第4の絶縁電線の一方の端部が接続されている差込プラグをさらに設けることができる。
【0014】
一方の端部が第2の絶縁電線の一方の端部に接続されていて、他方の端部が第2の絶縁電線の他方の端部に接続されている第5の絶縁電線と、第5の絶縁電線の一方の端部側で第5の絶縁電線に直列に接続されている第2の抵抗器とをさらに設けることができる。
【0015】
第5の絶縁電線の一方の端部側で第2の抵抗器と第5の絶縁電線とに直列に接続されている第2のコンデンサをさらに設けることができる。
【0016】
第5の絶縁電線の一方の端部側で第2の抵抗器と第2のコンデンサと第5の絶縁電線とに直列に接続されている第2のインダクタをさらに設けることができる。
【0017】
電気機器に電線を接続することができる。
【0018】
本発明の第2の側面の差込プラグは、商用電源の単相の交流の電力を供給するプラグ受けに差し込まれる差込プラグであって、プラグ受けに差し込まれた場合、商用電源の電圧線に接続される第1の刃と、プラグ受けに差し込まれた場合、商用電源の中性線に接続される第2の刃と、プラグ受けに差し込まれた場合、商用電源の接地線に接続される接地極と、第1の電線を接続するための第1の端子であって、第1の刃に接続されている第1の端子と、第2の電線を接続するための第2の端子であって、第2の刃に接続されている第2の端子と、第3の電線を接続するための第3の端子であって、接地極に接続されている第3の端子と、一方の端子が第1の端子に接続されている第1の抵抗器と、第4の電線を接続するための第4の端子であって、第1の抵抗器の他方の端子に接続されている第4の端子とを含む。
【0019】
第1の端子と第4の端子との間に、第1の抵抗器と直列に接続されている第1のコンデンサをさらに設けることができる。
【0020】
一方の端子が第2の端子に接続されている第2の抵抗器と、第5の電線を接続するための第5の端子であって、第2の抵抗器の他方の端子に接続されている第5の端子とをさらに設けることができる。
【0021】
第2の端子と第5の端子との間に、第2の抵抗器と直列に接続されている第2のコンデンサをさらに設けることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、接地電位を、より簡単に、より確実に、大地の電位により近づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施の形態の電線を含む音声再生システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】電源コード11の構成の例を示す回路図である。
【
図3】電源コード11を用いた電気機器の接地電位を測定した結果の例を示す図である。
【
図4】電源コード101の構成の例を示す回路図である。
【
図5】電源コード101を用いた場合の商用電源から印加される電圧の波形と、抵抗器71に印加される電圧の波形と、抵抗器71およびコンデンサ121に印加される電圧の波形とを示す図である。
【
図6】電源コード11を用いたメインアンプリファイアの歪率を測定した結果の例を示す図である。
【
図7】電源コード201の構成の例を示す回路図である。
【
図8】
図8は、差込プラグ301の構成の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、本発明の構成要件と、発明の詳細な説明に記載の実施の形態との対応関係を例示すると、次のようになる。この記載は、本発明をサポートする実施の形態が、発明の詳細な説明に記載されていることを確認するためのものである。従って、発明の詳細な説明中には記載されているが、本発明の構成要件に対応する実施の形態として、ここには記載されていない実施の形態があったとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件に対応するものではないことを意味するものではない。逆に、実施の形態が構成要件に対応するものとしてここに記載されていたとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件以外の構成要件には対応しないものであることを意味するものでもない。
【0025】
本発明の第1の側面の電線は、音声を再生するか若しくは録音するまたは画像を再生するか若しくは録画する電気機器に商用電源から単相の交流の電力を伝達する電線であって、一方の端部が前記商用電源の電圧線に接続され、他方の端部が前記電気機器に接続される第1の絶縁電線(例えば、
図2の電線61)と、一方の端部が前記商用電源の中性線に接続され、他方の端部が前記電気機器に接続される第2の絶縁電線(例えば、
図2の電線62)と、一方の端部が前記商用電源の接地線に接続され、他方の端部が前記電気機器に接続される第3の絶縁電線(例えば、
図2の電線63)と、一方の端部が前記第1の絶縁電線の一方の端部に接続されていて、他方の端部が前記第1の絶縁電線の他方の端部に接続されている第4の絶縁電線(例えば、
図2の電線64)と、前記第4の絶縁電線の一方の端部側で前記第4の絶縁電線に直列に接続されている第1の抵抗器(例えば、
図2の抵抗器71)とを含む。
【0026】
本発明の第2の側面の差込プラグは、商用電源の単相の交流の電力を供給するプラグ受けに差し込まれる差込プラグであって、前記プラグ受けに差し込まれた場合、前記商用電源の電圧線に接続される第1の刃(例えば、
図8の平刃311)と、前記プラグ受けに差し込まれた場合、前記商用電源の中性線に接続される第2の刃(例えば、
図8の平刃312)と、前記プラグ受けに差し込まれた場合、前記商用電源の接地線に接続される接地極(例えば、
図8の接地極313)と、第1の電線を接続するための第1の端子であって、前記第1の刃に接続されている第1の端子(例えば、
図8の端子321)と、第2の電線を接続するための第2の端子であって、前記第2の刃に接続されている第2の端子(例えば、
図8の端子322)と、第3の電線を接続するための第3の端子であって、前記接地極に接続されている第3の端子(例えば、
図8の端子323)と、一方の端子が前記第1の端子に接続されている第1の抵抗器(例えば、
図8の抵抗器331)と、第4の電線を接続するための第4の端子であって、前記第1の抵抗器の他方の端子に接続されている第4の端子(例えば、
図8の端子324)とを含む。
【0027】
以下、
図1乃至
図8を参照して、本発明の実施の形態の電線および差込プラグを説明する。
【0028】
図1は、本発明の実施の形態の電線を含む音声再生システムの構成を示すブロック図である。
図1に示される音声再生システムは、テーブルタップ13、再生装置21、増幅装置22並びにラウドスピーカ23-1および23-2からなる。テーブルタップ13は、マルチタップまたはパワータップなどとも称される、可搬形コンセントであり、交流の商用電源を分岐接続する。テーブルタップ13、再生装置21および増幅装置22には、それぞれ、電源コード11-1乃至電源コード11-3が接続されていて、電源コード11-1乃至電源コード11-3により図示せぬコンセントから交流の商用電源が供給される。
【0029】
電源コード11-3の一方の端部は、テーブルタップ13に接続されている。電源コード11-3の他方の端部には、差込プラグ12-3が接続されている。テーブルタップ13は、差込プラグ12-3が図示せぬコンセントのプラグ受けに差し込まれると、テーブルタップ13のプラグ受けに交流の商用電源を供給する。
【0030】
電源コード11-1は、一方の端部に接続されている差込プラグ12-1をテーブルタップ13のプラグ受けに差し込み、他方の端部を再生装置21に接続することで、テーブルタップ13を介して、交流の商用電源を再生装置21に供給する。電源コード11-2は、一方の端部に接続されている差込プラグ12-2をテーブルタップ13のプラグ受けに差し込み、他方の端部を増幅装置22に接続することで、テーブルタップ13を介して、交流の商用電源を増幅装置22に供給する。なお、電源コード11-1または電源コード11-2の他方の端部は、再生装置21または増幅装置22に直接接続するようにしても、コネクタおよびAC(alternating current)インレットソケットを介して接続するようにしてもよい。また、電源コード11-1または電源コード11-2は、再生装置21または増幅装置22に内蔵するようにしてもよい。例えば、電源コード11-1または電源コード11-2は、再生装置21または増幅装置22において、ACインレットソケットから機器の電源またはACアウトレットまでを接続するようにしてもよい。
【0031】
再生装置21は、音声を再生し、増幅装置22に音声信号を出力する。例えば、再生装置21は、コンパクトディスクプレーヤである。増幅装置22は、再生装置21からの音声信号の信号レベルおよび電力を増幅する。例えば、増幅装置22は、音響機器である、いわゆるプリメインアンプリファイアである。増幅装置22は、ラウドスピーカ23-1および23-2を駆動して、図示せぬ信号ケーブルを介して再生装置21から供給される音声信号に応じた音声をラウドスピーカ23-1および23-2に放音させる。
【0032】
このように、電源コード11-1乃至11-3は、音声を再生する電気機器に商用電源から単相の交流の電力を伝達する。なお、電源コード11-1乃至11-3は、オーディオレコーダなどの音声を録音する電気機器に商用電源から単相の交流の電力を伝達することもできる。また、同様に、電源コード11-1乃至11-3は、テレビ受像機、テレビモニタ、ビデオディスクプレイヤまたはビデオレコーダなどの画像を再生するか若しくは録画する電気機器に商用電源から単相の交流の電力を伝達することもできる。
【0033】
以下、電源コード11-1乃至11-3を個々に区別する必要がない場合、単に、電源コード11と称する。また、以下、差込プラグ12-1乃至12-3を個々に区別する必要がない場合、単に、差込プラグ12と称する。
【0034】
以下、音声を再生するかまたは録音する電気機器を音響機器と称する。また、以下、画像を再生するかまたは録画する電気機器を映像機器と称する。
【0035】
図2は、本発明の実施の形態の電線の一例である電源コード11の構成の例を示す回路図である。電源コード11は、電力を供給する目的で用いられる電線である。電源コード11は、音響機器または映像機器に商用電源から単相の交流の電力を伝達する。
【0036】
例えば、電源コード11は、絶縁電線を更に保護被覆で覆ったケーブルとすることができる。
【0037】
電源コード11は、差込プラグ12、コネクタ41、絶縁電線61、絶縁電線62、絶縁電線63、絶縁電線64、絶縁電線65、抵抗器71および抵抗器72を含み構成されている。絶縁電線61、絶縁電線62、絶縁電線63、絶縁電線64および絶縁電線65のそれぞれの一方の端部は、差込プラグ12に接続されている。差込プラグ12には、電線に接続するための端子81、端子82および端子83が設けられている。端子81は、差込プラグ12がプラグ受けに差し込まれた場合、商用電源の電圧線に接続される刃に接続されている。端子82は、差込プラグ12がプラグ受けに差し込まれた場合、商用電源の中性線に接続される刃に接続されている。端子83は、差込プラグ12がプラグ受けに差し込まれた場合、商用電源の接地線に接続される刃に接続されている。
【0038】
なお、商用電源の電圧線は、電圧が印加される線であり、いわゆる非接地線であり、ラインまたはライブなどとも称される。商用電源の中性線は、基準電位となる電線であり、ニュートラルなどとも称される。商用電源の接地線は、分電盤にあるアース端子などを経て、地面に埋められる接地極用接地棒までを結ぶ線であり、アースなどとも称される。
【0039】
コネクタ41は、再生装置21または増幅装置22などの音響機器などに設けられているACインレットソケットに差し込んで接続するための、電源用のプラグ状のコネクタである。なお、ACインレットソケットは、商用電源を音響機器または映像機器などの電気機器に供給するための受け口状の接合部である。コネクタ41が、ACインレットソケットに差し込まれると、ACインレットソケットの刃のそれぞれが、コネクタ41の刃受のそれぞれに差し込まれて接続される。
【0040】
コネクタ41には、電線に接続するための端子91、端子92および端子93が設けられている。端子91は、コネクタ41の刃受のうち、商用電源の電圧線に接続される刃受に接続されている。端子92は、コネクタ41の刃受のうち、商用電源の中性線に接続される刃受に接続されている。端子93は、コネクタ41の刃受のうち、商用電源の接地線に接続される刃受に接続されている。
【0041】
絶縁電線61、絶縁電線62、絶縁電線63、絶縁電線64および絶縁電線65は、それぞれ、軟銅などの導体の芯線をビニルや塩化ビニルなどの絶縁体で被覆した電線である。絶縁電線61、絶縁電線62、絶縁電線63、絶縁電線64および絶縁電線65は、同じ長さとされている。例えば、電源コード11がケーブルである場合、絶縁電線61、絶縁電線62、絶縁電線63、絶縁電線64および絶縁電線65のそれぞれは、電源コード11のシースに被覆されている絶縁電線とすることができる。
【0042】
絶縁電線61の一方の端部は、差込プラグ12の端子81に接続されている。絶縁電線62の一方の端部は、差込プラグ12の端子82に接続されている。絶縁電線63の一方の端部は、差込プラグ12の端子83に接続されている。
【0043】
絶縁電線61の他方の端部は、コネクタ41の端子91に接続されている。絶縁電線62の他方の端部は、コネクタ41の端子92に接続されている。絶縁電線63の他方の端部は、コネクタ41の端子93に接続されている。
【0044】
絶縁電線64の一方の端部は、絶縁電線61の一方の端部に接続されている。絶縁電線64の他方の端部は、絶縁電線61の他方の端部に接続されている。すなわち、絶縁電線64は、絶縁電線61と並列に接続されている。
【0045】
抵抗器71は、電気的な抵抗を有する、いわゆる電気抵抗素子である。抵抗器71の抵抗値は、1Ω乃至10KΩである。抵抗器71は、絶縁電線64の途中に、絶縁電線64に直列に接続されている。すなわち、抵抗器71の一方の端子は、絶縁電線64の部分のうち、差込プラグ12側の部分に接続され、抵抗器71の他方の端子は、絶縁電線64の部分のうち、コネクタ41側の部分に接続されている。また、抵抗器71は、絶縁電線64の一方の端部側で絶縁電線64に直列に接続されている。言い換えれば、抵抗器71は、絶縁電線64の中央より差込プラグ12により近い部分で絶縁電線64に直列に接続されている。抵抗器71は、差込プラグ12により近い側で絶縁電線64に直列に接続されているとも言える。
【0046】
抵抗器72は、電気的な抵抗を有する、いわゆる電気抵抗素子である。抵抗器72の抵抗値は、1Ω乃至10KΩである。抵抗器72の抵抗値は、抵抗器71の抵抗値と同じであっても、異なっていてもよい。抵抗器72は、絶縁電線65の途中に、絶縁電線65に直列に接続されている。すなわち、抵抗器72の一方の端子は、絶縁電線65の部分のうち、差込プラグ12側の部分に接続され、抵抗器72の他方の端子は、絶縁電線65の部分のうち、コネクタ41側の部分に接続されている。また、抵抗器72は、絶縁電線64の一方の端部側で絶縁電線64に直列に接続されている。言い換えれば、抵抗器72は、絶縁電線65の中央より差込プラグ12により近い部分で絶縁電線65に直列に接続されている。抵抗器72は、差込プラグ12により近い側で絶縁電線64に直列に接続されているとも言える。
【0047】
図3は、電源コード11を用いた音響機器の接地電位を測定した結果の例を示す図である。接地電位を測定する機器は、大地アースに接続していない。音響機器の接地電位は、単独で接地した大地アースを基準にして、測定器を交流レンジとして、測定された。
図3に示される3つの電圧の値は、1時間の間隔をあけて測定された。なお、大地アースを基準にした音響機器または映像機器の接地電位は、接続される音響機器または映像機器の種類、商用電源に接続されている他の電気機器の負荷など商用電源の状態、天候、湿度などでも変化する。
【0048】
図3(A)に示されるように、従来のコードを使用して商用電源を供給した場合、大地アースに対する、コンパクトディスク(CD)プレーヤAである音響機器の接地電位の測定値は、それぞれ、26.2V、27.1Vおよび27.2Vであり、接地電位の測定値の平均値は、26.8Vであった。
【0049】
これに対して、
図3(A)に示されるように、電源コード11を使用して商用電源を供給した場合、大地アースに対する、コンパクトディスクプレーヤAである音響機器の接地電位の測定値は、それぞれ、24.8V、24.1Vおよび23.9Vであり、接地電位の測定値の平均値は、24.3Vであった。
【0050】
図3(A)に示されるように、従来のコードを使用して商用電源を供給した場合、大地アースに対する、プリアンプリファイアAである音響機器の接地電位の測定値は、それぞれ、31.3V、31.9Vおよび31.1Vであり、接地電位の測定値の平均値は、31.4Vであった。
【0051】
これに対して、
図3(A)に示されるように、電源コード11を使用して商用電源を供給した場合、大地アースに対する、プリアンプリファイアAである音響機器の接地電位の測定値は、それぞれ、24.6V、24.4Vおよび25.1Vであり、接地電位の測定値の平均値は、24.7Vであった。
【0052】
図3(A)に示されるように、従来のコードを使用して商用電源を供給した場合、大地アースに対する、メインアンプリファイアAである音響機器の接地電位の測定値は、それぞれ、57.8V、60.3Vおよび58.2Vであり、接地電位の測定値の平均値は、58.8Vであった。
【0053】
これに対して、
図3(A)に示されるように、電源コード11を使用して商用電源を供給した場合、大地アースに対する、メインアンプリファイアAである音響機器の接地電位の測定値は、それぞれ、39.3V、38.8Vおよび37.9Vであり、接地電位の測定値の平均値は、38.7Vであった。
【0054】
図3(A)に示されるように、従来のコードを使用して商用電源を供給し、コンパクトディスクプレーヤA、プリアンプリファイアAおよびメインアンプリファイアAを信号ケーブルで接続して、ラウドスピーカから放音させた場合、大地アースに対する、コンパクトディスクプレーヤA、プリアンプリファイアAおよびメインアンプリファイアAの接地電位の測定値は、それぞれ、32.1V、33.4Vおよび32.9Vであり、接地電位の測定値の平均値は、32.8Vであった。
【0055】
これに対して、
図3(A)に示されるように、電源コード11を使用して商用電源を供給し、コンパクトディスクプレーヤA、プリアンプリファイアAおよびメインアンプリファイアAを信号ケーブルで接続して、ラウドスピーカから放音させた場合、大地アースに対する、コンパクトディスクプレーヤA、プリアンプリファイアAおよびメインアンプリファイアAの接地電位の測定値は、それぞれ、24.9V、25.6Vおよび24.8Vであり、接地電位の測定値の平均値は、25.1Vであった。
【0056】
図3(B)に示されるように、従来のコードを使用して商用電源を供給した場合、大地アースに対する、コンパクトディスクプレーヤAである音響機器の接地電位の測定値は、それぞれ、27.8V、27.1Vおよび26.8Vであり、接地電位の測定値の平均値は、27.2Vであった。
【0057】
これに対して、
図3(B)に示されるように、電源コード11を使用して商用電源を供給した場合、大地アースに対する、コンパクトディスクプレーヤAである音響機器の接地電位の測定値は、それぞれ、25.1V、25.3Vおよび24.4Vであり、接地電位の測定値の平均値は、24.9Vであった。
【0058】
図3(B)に示されるように、従来のコードを使用して商用電源を供給した場合、大地アースに対する、プリアンプリファイアBである音響機器の接地電位の測定値は、それぞれ、38.2V、38.9Vおよび39.5Vであり、接地電位の測定値の平均値は、38.9Vであった。
【0059】
これに対して、
図3(B)に示されるように、電源コード11を使用して商用電源を供給した場合、大地アースに対する、プリアンプリファイアBである音響機器の接地電位の測定値は、それぞれ、32.7V、31.7Vおよび32.1Vであり、接地電位の測定値の平均値は、32.2Vであった。
【0060】
図3(B)に示されるように、従来のコードを使用して商用電源を供給した場合、大地アースに対する、メインアンプリファイアBである音響機器の接地電位の測定値は、それぞれ、29.9V、30.7Vおよび31.2Vであり、接地電位の測定値の平均値は、30.6Vであった。
【0061】
これに対して、
図3(B)に示されるように、電源コード11を使用して商用電源を供給した場合、大地アースに対する、メインアンプリファイアBである音響機器の接地電位の測定値は、それぞれ、26.3V、27.2Vおよび26.6Vであり、接地電位の測定値の平均値は、26.7Vであった。
【0062】
図3(B)に示されるように、従来のコードを使用して商用電源を供給し、コンパクトディスクプレーヤA、プリアンプリファイアBおよびメインアンプリファイアBを信号ケーブルで接続して、ラウドスピーカから放音させた場合、大地アースに対する、コンパクトディスクプレーヤA、プリアンプリファイアAおよびメインアンプリファイアAの接地電位の測定値は、それぞれ、33.5V、33.9Vおよび34.2Vであり、接地電位の測定値の平均値は、33.9Vであった。
【0063】
これに対して、
図3(B)に示されるように、電源コード11を使用して商用電源を供給し、コンパクトディスクプレーヤA、プリアンプリファイアBおよびメインアンプリファイアBを信号ケーブルで接続して、ラウドスピーカから放音させた場合、大地アースに対する、コンパクトディスクプレーヤA、プリアンプリファイアAおよびメインアンプリファイアAの接地電位の測定値は、それぞれ、27.0V、26.8Vおよび26.5Vであり、接地電位の測定値の平均値は、26.8Vであった。
【0064】
このように、音響機器単独であっても、音響機器を信号ケーブルで接続しても、従来のコードの場合に比較して、電源コード11を用いた音響機器の接地電位は、低くなり、大地の電位により近づく。
【0065】
図3には、音声を再生する音響機器の場合の接地電位の測定結果を示したが、オーディオレコーダである音声を録音する音響機器およびテレビ受像機、ビデオディスクプレイヤまたはビデオレコーダである画像を再生するかまたは録画する映像機器においても同様の結果が得られた。
【0066】
図4は、本発明の実施の形態の電線の他の例である電源コード101の構成の例を示す回路図である。
図2に示す場合と同様の部分には、同一の符号を付してありその説明は省略する。電源コード101は、電力を供給する目的で用いられる電線である。電源コード101は、音響機器または映像機器に商用電源から単相の交流の電力を伝達する。
【0067】
例えば、電源コード101は、絶縁電線を更に保護被覆で覆ったケーブルとすることができる。
【0068】
電源コード101は、差込プラグ12、コネクタ41、絶縁電線61、絶縁電線62、絶縁電線63、絶縁電線64、絶縁電線65、抵抗器71、抵抗器72、コンデンサ121およびコンデンサ122を含み構成されている。
【0069】
コンデンサ121は、電荷を蓄えたり、放出したりする電気的な受動素子である。コンデンサ121は、キャパシタとも称される。コンデンサ121は、所定の静電容量とされている。例えば、コンデンサ121の静電容量は、0.01μF乃至1μFとされている。コンデンサ121は、絶縁電線64の途中に、抵抗器71および絶縁電線64に直列に接続されている。すなわち、コンデンサ121の一方の端子は、抵抗器71の他方の端子に接続され、コンデンサ121の他方の端子は、絶縁電線64の部分のうち、コネクタ41側の部分に接続されている。また、コンデンサ121は、絶縁電線64の一方の端部側で抵抗器71と絶縁電線64とに直列に接続されている。言い換えれば、コンデンサ121は、絶縁電線64の中央より差込プラグ12により近い部分で抵抗器71と絶縁電線64とに直列に接続されている。コンデンサ121は、差込プラグ12により近い側で抵抗器71と絶縁電線64とに直列に接続されているとも言える。
【0070】
コンデンサ122は、電荷を蓄えたり、放出したりする電気的な受動素子である。コンデンサ122は、キャパシタとも称される。コンデンサ122は、所定の静電容量とされている。例えば、コンデンサ122の静電容量は、0.01μF乃至1μFとされている。コンデンサ122の静電容量は、コンデンサ121の静電容量と同じであっても、異なっていてもよい。コンデンサ122は、絶縁電線65の途中に、抵抗器72および絶縁電線65に直列に接続されている。すなわち、コンデンサ122の一方の端子は、抵抗器72の他方の端子に接続され、コンデンサ122の他方の端子は、絶縁電線65の部分のうち、コネクタ41側の部分に接続されている。また、コンデンサ122は、絶縁電線65の一方の端部側で抵抗器72と絶縁電線65とに直列に接続されている。言い換えれば、コンデンサ122は、絶縁電線65の中央より差込プラグ12により近い部分で抵抗器72と絶縁電線65とに直列に接続されている。コンデンサ122は、差込プラグ12により近い側で抵抗器72と絶縁電線65とに直列に接続されているとも言える。
【0071】
一例として、従来のコードを使用して商用電源を供給した場合、半導体式プリアンプリファイアの接地電位の測定値が27.3Vであったのに対して、電源コード101を使用して商用電源を供給した場合、半導体式プリアンプリファイアの接地電位の測定値は、19.1Vであった。また、他の例では、従来のコードを使用して商用電源を供給した場合、半導体式プリアンプリファイアの接地電位の測定値が39.6Vであったのに対して、電源コード101を使用して商用電源を供給した場合、半導体式プリアンプリファイアの接地電位の測定値は、33.2Vであった。
【0072】
図5は、電源コード101を用いた場合の商用電源から印加される電圧の波形と、抵抗器71に印加される電圧の波形と、抵抗器71およびコンデンサ121に印加される電圧の波形とを示す図である。
【0073】
図5(A)に示される、グラフAは、商用電源から印加される電圧の波形を示し、グラフBは、抵抗器71に印加される電圧の波形を示す。なお、グラフAの縦軸のスケールと、グラフBの縦軸のスケールとは異なっている。
【0074】
図5(B)に示される、グラフAは、商用電源から印加される電圧の波形を示し、グラフCは、直列に接続されている抵抗器71およびコンデンサ121に印加される電圧、すなわち、抵抗器71の端子のうちの差込プラグ12側の端子とコンデンサ121の端子のうちのコネクタ41側の端子との間の電圧の波形を示す。なお、グラフBの縦軸のスケールと、グラフCの縦軸のスケールとは同じである。
【0075】
グラフBに示されるように、絶縁電線64には、6乃至8mVの電圧を生じさせる電荷が流入している。すなわち、絶縁電線64には、微小な電流が流入している。
【0076】
つまり、通常、商用電源から音響機器または映像機器に電力を伝達する電源コードには、商用電源から音響機器または映像機器に向かって電流が流れるが、音響機器または映像機器が発生させた不要な電流も流れて、音響機器または映像機器の接地電位を引き上げていると考えられる。
【0077】
グラフBおよびグラフCから、コンデンサ121により、絶縁電線64に流入した電荷を吸収して、絶縁電線64に生じさせる電荷による電圧を0.15mV乃至0.2mV(1/30乃至1/50)に減衰させて、抵抗器71が負荷となって電荷によるエネルギを吸収していると考えられる。
【0078】
絶縁電線64に流入する電荷または微小な電流は、音響機器または映像機器の電源からの整流ノイズと考えられる。
【0079】
差込プラグ12は、商用電源と接続されるので、柱上トランスと電気的につながり、コネクタ41は、音響機器または映像機器と接続されるので、通常、音響機器または映像機器の電源部のトランスと電気的につながると考えられる。そうすると、電源コード11または電源コード101は、柱上トランスと電源部のトランスと接続することになる。
【0080】
音響機器または映像機器の電源部のトランスの2次側では、音響機器または映像機器の負荷によって、正弦波の電圧が、所定のタイミングでオンオフされる。また、音響機器または映像機器が、時間的に変動する信号を生成したり、時間的に変動する負荷を駆動したりすると、音響機器または映像機器の電源部の負荷は時間的に変動することになる。このように、音響機器または映像機器の電源部のトランスの2次側の電流に高い周波数の成分が生じると、電気機器の電源部のトランスの1次側に、音響機器または映像機器側から商用電源側に流れる電流であって、高い周波数の成分を含む電流が流れると考えられる。例えば、このような高い周波数の成分を含む電流が整流ノイズになる。
【0081】
このように、音響機器または映像機器においては、機器内部で不要な微小電流が電源部に発生していると考えられる。
【0082】
従来のコードで音響機器または映像機器に商用電源を供給すると、従来のコードの抵抗値は10mΩから20mΩ程度であり、コードの芯線の導体で柱上トランスと音響機器または映像機器の電源部のトランスと接続するだけなので、整流ノイズを減衰または吸収させることはできない。
【0083】
一方、電源コード11または電源コード101で音響機器または映像機器に商用電源を供給すると、抵抗器71若しくは抵抗器71およびコンデンサ121または抵抗器72若しくは抵抗器72およびコンデンサ122が、音響機器または映像機器の電源からの整流ノイズを減衰および吸収するので、音響機器または映像機器の電源で生じて、音響機器または映像機器の電源に戻ってしまう整流ノイズが減り、これにより、音響機器または映像機器の接地電位が低下すると考えられる。
【0084】
また、絶縁電線64または絶縁電線65の部分のうち、差込プラグ12により近い側の部分に、抵抗器71若しくは抵抗器71およびコンデンサ121または抵抗器72若しくは抵抗器72およびコンデンサ122を直列に接続すると、抵抗器71若しくは抵抗器71およびコンデンサ121または抵抗器72若しくは抵抗器72およびコンデンサ122を、絶縁電線64または絶縁電線65の部分のうち、コネクタ41により近い側の部分に直列に接続した場合、または絶縁電線64または絶縁電線65の中央部に直列に接続した場合に比較して、音響機器または映像機器の接地電位がより下がることが実験で確認できた。
【0085】
コネクタ41から抵抗器71若しくは抵抗器71およびコンデンサ121または抵抗器72若しくは抵抗器72およびコンデンサ122までの絶縁電線64または絶縁電線65の部分が整流ノイズによる電荷を溜めて、この電荷によるノイズを抵抗器71若しくは抵抗器71およびコンデンサ121または抵抗器72若しくは抵抗器72およびコンデンサ122がより効率的に減衰または吸収するものと考えられる。
【0086】
このように、本発明の電線は、音響機器または映像機器で発生する不要な電流を吸収する機能を持たせることで、音響機器または映像機器の接地電位を大地の電位により近づけるものである。
【0087】
図6は、電源コード11を用いたメインアンプリファイアの歪率を測定した結果の例を示す図である。
図6(A)は、メインアンプリファイアに、従来のコードを使用して商用電源を供給して、振幅が1Vで周波数が1KHzのサイン波を入力した場合の、出力の波形をFFT(Fast Fourier Transform)分析した結果を示す図である。
図6(B)は、メインアンプリファイアに、電源コード101を使用して商用電源を供給して、振幅が1Vで周波数が1KHzのサイン波を入力した場合の、出力の波形をFFT分析した結果を示す図である。
【0088】
従来のコードを使用して商用電源を供給した場合、全高調波歪率が、1.00%であったのに対して、電源コード101を使用して商用電源を供給した場合、全高調波歪率は、0.98%であった。また、電源コード101を使用して商用電源を供給した場合、2次高調波歪みも低減していることが確認できた。
【0089】
図6(A)の点線の丸で示す部分に示されるように、立ち上がりと立ち下がりにおいて、歪成分がより多く出ていることがわかる。
【0090】
電源コード101を使用することで、全高調波歪率が低下したのは、接地電位が低下したことによるものと考えられる。
【0091】
図7は、本発明の実施の形態の電線のさらに他の例である電源コード201の構成の例を示す回路図である。
図4に示す場合と同様の部分には、同一の符号を付してありその説明は省略する。電源コード201は、電力を供給する目的で用いられる電線である。電源コード201は、音響機器または映像機器に商用電源から単相の交流の電力を伝達する。
【0092】
例えば、電源コード201は、絶縁電線を更に保護被覆で覆ったケーブルとすることができる。
【0093】
電源コード201は、差込プラグ12、コネクタ41、絶縁電線61、絶縁電線62、絶縁電線63、絶縁電線64、絶縁電線65、抵抗器71、抵抗器72、コンデンサ121、コンデンサ122、インダクタ221およびインダクタ222を含み構成されている。
【0094】
インダクタ221は、流れる電流によって形成される磁場にエネルギを蓄える電気的な受動素子である。インダクタ221は、所定のインダクタンスとされている。例えば、インダクタ221のインダクタンスは、0.01H乃至1Hとされている。インダクタ221は、絶縁電線64の途中に、抵抗器71とコンデンサ121と絶縁電線64とに直列に接続されている。すなわち、インダクタ221の一方の端子は、絶縁電線64の部分のうち、差込プラグ12側の部分に接続され、インダクタ221の他方の端子は、抵抗器71の一方の端子に接続されている。また、インダクタ221は、絶縁電線64の一方の端部側で抵抗器71とコンデンサ121と絶縁電線64とに直列に接続されている。言い換えれば、インダクタ221は、絶縁電線64の中央より差込プラグ12により近い部分で抵抗器71とコンデンサ121と絶縁電線64とに直列に接続されている。インダクタ221は、差込プラグ12により近い側で抵抗器71とコンデンサ121と絶縁電線64とに直列に接続されているとも言える。
【0095】
インダクタ222は、流れる電流によって形成される磁場にエネルギを蓄える電気的な受動素子である。インダクタ222は、所定のインダクタンスとされている。例えば、インダクタ222のインダクタンスは、0.01H乃至1Hとされている。インダクタ222のインダクタンスは、インダクタ221のインダクタンスと同じであっても、異なっていてもよい。インダクタ222は、絶縁電線65の途中に、抵抗器72とコンデンサ122と絶縁電線65とに直列に接続されている。すなわち、インダクタ222の一方の端子は、絶縁電線65の部分のうち、差込プラグ12側の部分に接続され、インダクタ222の他方の端子は、抵抗器72の一方の端子に接続されている。また、インダクタ222は、絶縁電線65の一方の端部側で抵抗器72とコンデンサ122と絶縁電線65とに直列に接続されている。言い換えれば、インダクタ222は、絶縁電線65の中央より差込プラグ12により近い部分で抵抗器72とコンデンサ122と絶縁電線65とに直列に接続されている。インダクタ222は、差込プラグ12により近い側で抵抗器72とコンデンサ122と絶縁電線65とに直列に接続されているとも言える。
【0096】
このように、電源コード11、電源コード101または電源コード201によれば、音声を再生するか若しくは録音するまたは画像を再生するか若しくは録画する電気機器の接地電位を、より簡単に、より確実に、大地の電位により近づけることができる。
【0097】
いわゆる、オーディオ用またはオーディオビジュアル用の電源コードは、接点や線材に高価な貴金属が用いられているが、電源コード11、電源コード101または電源コード201は、高価な材料を必要とせず、より簡単に、より安価に作成できる。
【0098】
また、一般的なオーディオ用またはオーディオビジュアル用の電源コードに比較して、より細めの線材で同等以上の機能および性能が得られるので、屈曲性に優れた使い勝手の良いコードとすることができる。新品時に必要な慣らし時間も、より短時間で終了する。
【0099】
次に、差込プラグ301について説明する。
図8は、差込プラグ301の構成の例を示す図である。
図8(A)は、差込プラグ301の水平方向の断面の構成を示す平面断面図である。
図8(B)は、差込プラグ301の垂直方向の断面の構成を示す側面断面図である。
図8(C)は、
図8(B)におけるAA‘線で示される断面の構成を示す背面断面図である。
【0100】
なお、
図8(A)乃至
図8(C)のそれぞれにおいて、差込プラグ301がプラグ受けに差し込まれる方向を前後の方向としてX軸で図示し、上下の方向としてZ軸で図示し、左右の方向としてY軸で図示する。
【0101】
差込プラグ301に、所定の本数の絶縁電線を接続することで、電源コード101と同様の構成の電源コードを得ることができる。差込プラグ301は、商用電源の単相の交流の電力を供給するプラグ受けに抜き差しされて使用される。
【0102】
差込プラグ301は、ボディ305、平刃311、平刃312、接地極313、端子321、端子322、端子323、端子324、端子325、抵抗器331、抵抗器332、コンデンサ341およびコンデンサ342を含み構成されている。ボディ305は、平刃311、平刃312、接地極313、端子321、端子322、端子323、端子324、端子325、抵抗器331、抵抗器332、コンデンサ341およびコンデンサ342を支える筐体である。
【0103】
平刃311は、差込プラグ301が商用電源の単相の交流の電力を供給するプラグ受けに差し込まれた場合、商用電源の電圧線に接続される。平刃312は、差込プラグ301が商用電源の単相の交流の電力を供給するプラグ受けに差し込まれた場合、商用電源の中性線に接続される。接地極313は、差込プラグ301が商用電源の単相の交流の電力を供給するプラグ受けに差し込まれた場合、商用電源の接地線に接続される。
【0104】
端子321、端子322、端子323、端子324および端子325は、それぞれ、電線を電気的および機械的に接続するための端子である。例えば、端子321、端子322、端子323、端子324および端子325は、それぞれ、ねじ式端子、電線の芯線(導体)を差し込むと自動的に接続される構造のねじなし端子、刃型の端子などとすることができる。
【0105】
端子321は、平刃311に接続されている。端子321は、商用電源の電圧線に接続する電線351を接続するための端子である。端子322は、平刃312に接続されている。端子322は、商用電源の中性線に接続する電線352を接続するための端子である。端子323は、接地極313に接続されている。端子323は、商用電源の接地線に接続する電線353を接続するための端子である。
【0106】
端子324は、商用電源の電圧線に接続する電線354を接続するための端子である。なお、電線354の端部のうち、端子324に接続されていない側の端部は、電線351の端部のうち、端子321に接続されていない側の端部に接続される。
【0107】
端子325は、商用電源の中性線に接続する電線355を接続するための端子である。なお、電線355の端部のうち、端子325に接続されていない側の端部は、電線352の端部のうち、端子322に接続されていない側の端部に接続される。
【0108】
抵抗器331および抵抗器332は、それぞれ、電気的な抵抗を有する、いわゆる電気抵抗素子である。抵抗器331および抵抗器332の抵抗値は、それぞれ、1Ω乃至10KΩである。なお、抵抗器332の抵抗値は、抵抗器331の抵抗値と同じであっても、異なっていてもよい。
【0109】
コンデンサ341およびコンデンサ342は、それぞれ、電荷を蓄えたり、放出したりする電気的な受動素子である。コンデンサ341およびコンデンサ342は、それぞれ、キャパシタとも称される。コンデンサ341およびコンデンサ342の静電容量は、それぞれ、0.01μF乃至1μFとされている。なお、コンデンサ342の静電容量は、コンデンサ341の静電容量と同じであっても、異なっていてもよい。
【0110】
抵抗器331の一方の端子は、端子321に接続されている。抵抗器331の他方の端子は、コンデンサ341の一方の端子に接続されている。コンデンサ341の他方の端子は、端子324に接続されている。すなわち、抵抗器331およびコンデンサ341は、端子321と端子324との間に、直列に接続されている。抵抗器332の一方の端子は、端子322に接続されている。抵抗器332の他方の端子は、コンデンサ342の一方の端子に接続されている。コンデンサ342の他方の端子は、端子325に接続されている。すなわち、抵抗器332およびコンデンサ342は、端子322と端子325との間に、直列に接続されている。
【0111】
なお、コンデンサ341を省略して、抵抗器331の他方の端子を端子324に接続するようにしてもよい。また、コンデンサ342を省略して、抵抗器332の他方の端子を端子325に接続するようにしてもよい。
【0112】
また、差込プラグ301は、引掛形または抜止形など他の形式とするようにしてもよい。
【0113】
さらに、端子321と端子324との間に、抵抗器331およびコンデンサ341に加えて、インダクタを抵抗器331およびコンデンサ341に直列に接続するようにしてもよい。また、端子322と端子325との間に、抵抗器332およびコンデンサ342に加えて、インダクタを抵抗器332およびコンデンサ342に直列に接続するようにしてもよい。
【0114】
このように、電源コード11は、音声を再生するか若しくは録音するまたは画像を再生するか若しくは録画する電気機器に商用電源から単相の交流の電力を伝達する。絶縁電線61の一方の端部は、商用電源の電圧線に接続され、絶縁電線61の他方の端部は、電気機器に接続される。絶縁電線62の一方の端部は、商用電源の中性線に接続され、絶縁電線62の他方の端部は、電気機器に接続される。絶縁電線63の一方の端部は、商用電源の接地線に接続され、絶縁電線63の他方の端部は、電気機器に接続される。絶縁電線64の一方の端部は、絶縁電線61の一方の端部に接続されていて、絶縁電線64の他方の端部は、絶縁電線61の他方の端部に接続されている。抵抗器71は、絶縁電線64の一方の端部側で絶縁電線64に直列に接続されている。
【0115】
コンデンサ121は、絶縁電線64の一方の端部側で抵抗器71と絶縁電線64とに直列に接続されている。
【0116】
インダクタ221は、絶縁電線64の一方の端部側で抵抗器71とコンデンサ121と絶縁電線64とに直列に接続されている。
【0117】
差込プラグ12は、絶縁電線61の一方の端部、絶縁電線62の一方の端部、絶縁電線63の一方の端部および絶縁電線64の一方の端部が接続されている。
【0118】
絶縁電線65の一方の端部は、絶縁電線62の一方の端部に接続されていて、絶縁電線65の他方の端部は、絶縁電線62の他方の端部に接続されている。抵抗器72は、絶縁電線65の一方の端部側で絶縁電線65に直列に接続されている。
【0119】
コンデンサ122は、絶縁電線65の一方の端部側で抵抗器72と絶縁電線65とに直列に接続されている。
【0120】
インダクタ222は、絶縁電線65の一方の端部側で抵抗器72とコンデンサ122と絶縁電線65とに直列に接続されている。
【0121】
電気機器に電源コード11を接続することができる。
【0122】
差込プラグ301は、商用電源の単相の交流の電力を供給するプラグ受けに差し込まれる差込プラグである。平刃311は、差込プラグ301がプラグ受けに差し込まれた場合、商用電源の電圧線に接続される。平刃312は、差込プラグ301がプラグ受けに差し込まれた場合、商用電源の中性線に接続される。接地極313は、差込プラグ301がプラグ受けに差し込まれた場合、商用電源の接地線に接続される。端子321は、電線351を接続するための端子であって、平刃311に接続されている。端子322は、電線352を接続するための端子であって、平刃312に接続されている。端子323は、電線353を接続するための端子であって、接地極313に接続されている。抵抗器331の一方の端子は、端子321に接続されている。端子324は、電線354を接続するための端子であって、抵抗器331の他方の端子に接続されている。
【0123】
端子321と端子324との間に、抵抗器331と直列に接続されているコンデンサ341をさらに設けることができる。
【0124】
抵抗器332の一方の端子は、端子322に接続されている。端子325は、電線355を接続するための端子であって、抵抗器332の他方の端子に接続されている。
【0125】
端子322と端子325との間に、抵抗器332と直列に接続されているコンデンサ342をさらに設けることができる。
【0126】
また、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0127】
11,11-1乃至11-3,101および201 電源コード, 12,12-1乃至12-3および301 差込プラグ, 41 コネクタ, 61乃至65 縁電線,71および72 抵抗器, 81乃至83および91乃至93 端子, 121および122 コンデンサ, 221および222 インダクタ, 305 ボディ, 311および312 平刃, 313 接地極, 321乃至325 端子, 331および332 抵抗器, 341および342 コンデンサ