(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114928
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】細胞培養容器
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20230810BHJP
【FI】
C12M1/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017529
(22)【出願日】2022-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】396026710
【氏名又は名称】株式会社オプトニクス精密
(71)【出願人】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】絹田 精鎮
(72)【発明者】
【氏名】市野沢 義行
(72)【発明者】
【氏名】小林 将士
(72)【発明者】
【氏名】松阪 諭
(72)【発明者】
【氏名】古川 安津子
(72)【発明者】
【氏名】森 倫子
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA08
4B029BB01
4B029CC02
4B029GA01
4B029GB01
4B029GB04
4B029GB09
4B029HA06
(57)【要約】
【課題】細胞培養容器において、培養液を交換する際のフィルタからの細胞の浮き上がりを抑制すると共に、実用性を高める。
【解決手段】細胞培養容器10は、上方に開口部12Aを有し、細胞16の培養液22を貯留可能な容器12と、開口部12Aを通じて容器12内に配置される筒部14Aを有し、細胞16を捕捉可能なフィルタ18が筒部14Aに設けられたトレイ14と、を有し、フィルタ18の下方側で筒部14Aの内側と外側とが通じており、培養液22が行き来可能とされている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口部を有し、細胞の培養液を貯留可能な容器と、
前記開口部を通じて前記容器内に配置される筒部を有し、細胞を捕捉可能なフィルタが前記筒部に設けられたトレイと、
を有し、
前記フィルタの下方側で前記筒部の内側と外側とが通じており、前記培養液が行き来可能とされている、細胞培養容器。
【請求項2】
前記トレイは、前記筒部の外側へ延び、前記容器における前記開口部の周縁に引掛け可能とされた複数の引掛け部を有している、請求項1に記載の細胞培養容器。
【請求項3】
前記筒部における前記フィルタの下方側には、前記筒部の下端が前記容器の底に当接した状態において前記筒部の内側と外側を連通させる連通部が設けられている、請求項1又は請求項2に記載の細胞培養容器。
【請求項4】
前記容器の底には、前記筒部の下端が当接した状態において前記筒部の内側と外側を連通させる凹凸部が設けられている、請求項1又は請求項2に記載の細胞培養容器。
【請求項5】
前記フィルタの孔径が5~20μmであることを特徴とする請求項1~請求項4の何れか1項に記載の細胞培養容器。
【請求項6】
前記フィルタの電鋳金属材料がNi-Pdであることを特徴とする請求項1~請求項4の何れか1項に記載の細胞培養容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養容器に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞培養容器において、培養液を吸排パイプによりフィルタ部材の下方から吸引することによって細胞をフィルタ部材の上に吸着させて残すようにした技術が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
細胞を培養していると、細胞の代謝物質としてポリフェノール等が培養液中に生成され、これが培養の進行を阻害するため、短時間のうちに培養液を交換する必要がある。この交換の際、培養液をフィルタ部材の上方から吸引すると、分離された状態でフィルタ部材の上に載っている細胞が培養液と一緒に上方へ吸引されてフィルタ部材から剥離するため、培養を続行できなくなる恐れがあった。このため、上記した従来例では、吸排パイプにより培養液をフィルタ部材の下方から吸引することによって、細胞をフィルタ部材の上に吸着させて残すようにしていた。
【0005】
しかしながら、培養液を吸引した後、培養液を吸排パイプでフィルタ部材の下方に注入するため、この注入圧力により細胞がフィルタ部材から上方に浮き上がって剥離し、培養を続行できなくなる問題点があった。しかも、吸排パイプがフィルタ部材を貫通する複雑な構造となっており、実用性に劣る問題点があった。
【0006】
本発明は、細胞培養容器において、培養液を交換する際のフィルタからの細胞の浮き上がりを抑制すると共に、実用性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係る細胞培養容器は、上方に開口部を有し、細胞の培養液を貯留可能な容器と、前記開口部を通じて前記容器内に配置される筒部を有し、細胞を捕捉可能なフィルタが前記筒部に設けられたトレイと、を有し、前記フィルタの下方側で前記筒部の内側と外側とが通じており、前記培養液が行き来可能とされている。
【0008】
この細胞培養容器では、トレイの筒部のフィルタで細胞を捕捉しておき、該筒部を容器内に配置し、容器に供給された培養液に細胞を浸漬することにより、細胞を培養することができる。フィルタの下方側で筒部の内側と外側とが通じており、培養液が行き来可能とされているので、容器内の培養液を筒部の外側から吸引すると、筒部の内側の培養液はフィルタの下方側へ吸引されてから筒部の外側へ吸引される。したがって、培養液の交換のため容器内の培養液を吸引する際に、細胞をフィルタの上に吸着させて残すことができる。
【0009】
また、新しい培養液を容器に注入する際には、培養液を筒部の内側に注入することで、フィルタからの細胞の浮き上がりを抑制することができる。筒部の内側に注入された培養液は、フィルタを通過した後筒部の内側から外側へ流れ、容器に貯留される。これにより、細胞の培養を続行できる。
【0010】
更に、構成が簡易であるため実用性が高い。
【0011】
第2の態様は、第1の態様に係る細胞培養容器において、前記トレイが、前記筒部の外側へ延び、前記容器における前記開口部の周縁に引掛け可能とされた複数の引掛け部を有している。
【0012】
この細胞培養容器では、引掛け部を容器の開口部の周縁に引っ掛けることで、トレイの筒部を容器内に安定的に配置することができる。また、筒部を容器の底から離した状態に保持することも容易となる。これにより、筒部の内側と外側の間での培養液の行き来がより円滑となる。
【0013】
第3の態様は、第1の態様又は第2の態様に係る細胞培養容器において、前記筒部における前記フィルタの下方側に、前記筒部の下端が前記容器の底に当接した状態において前記筒部の内側と外側を連通させる連通部が設けられている。
【0014】
この細胞培養容器では、トレイの筒部におけるフィルタの下方側に連通部が設けられているので、筒部の下端が容器の底に当接した状態において、培養液が連通部を通じて筒部の内側と外側の間で行き来可能である。このため、筒部の外側からの培養液の吸引と筒部内への培養液の注入による培養液の交換が可能である。
【0015】
第4の態様は、第1の態様又は第2の態様に係る細胞培養容器において、前記容器の底に、前記筒部の下端が当接した状態において前記筒部の内側と外側を連通させる凹凸部が設けられている。
【0016】
この細胞培養容器では、容器の底に凹凸部が設けられているので、トレイにおける筒部の下端が凹凸部に当接した状態においても、培養液が凹凸部を通じて筒部の内側と外側の間で行き来可能である。このため、筒部の外側からの培養液の吸引と筒部内への培養液の注入による培養液の交換が可能である。
【0017】
第5の態様は、第1~第4の態様の何れか1態様に係る細胞培養容器において、前記フィルタの孔径が5~20μmであることを特徴としている。
【0018】
この細胞培養容器では、フィルタの孔径が5~20μmであるので、血液細胞等の体液細胞のほとんどを通過させ、末梢循環腫瘍細胞(CTC)や希少細胞等の比較的大きな細胞を捕捉することができる。
【0019】
第6の態様は、第1~第4の態様の何れか1態様に係る細胞培養容器において、前記フィルタの電鋳金属材料がNi-Pdであることを特徴としている。
【0020】
この細胞培養容器では、フィルタの電鋳金属材料としてニッケル・パラジウム(Ni-Pd)合金製を採用しているので毒性のあるニッケルが溶出しないため、細胞をフィルタの上に生きたまま長時間保持した状態で培養液を交換しながら培養することができる。
しかも、引張強さ等の機械的特性を確保しつつ、耐食性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、細胞培養容器において、培養液を交換する際のフィルタからの細胞の浮き上がりを抑制すると共に、実用性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1実施形態に係る細胞培養容器を示す分解斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る細胞培養容器を示す斜視図である。
【
図3】筒部の外側から培養液を吸引する状態を示す斜視図である。
【
図4】筒部の内側へ培養液を注入する状態を示す斜視図である。
【
図5】第1実施形態に係る細胞培養容器を示す断面図である。
【
図6】筒部の外側から培養液を吸引する状態を示す断面図である。
【
図7】培養液の吸引がほぼ終了した状態を示す断面図である。
【
図8】筒部の内側へ培養液を注入する状態を示す断面図である。
【
図9】培養液の注入が進行した状態を示す断面図である。
【
図10】第2実施形態に係る細胞培養容器において、筒部の外側から培養液を吸引する状態を示す斜視図である。
【
図11】筒部の外側から培養液を吸引する状態を示す断面図である。
【
図12】筒部の内側へ培養液を注入する状態を示す断面図である。
【
図13】第3実施形態に係る細胞培養容器において、筒部の外側から培養液を吸引する状態を示す断面図である。
【
図14】筒部の内側へ培養液を注入する状態を示す断面図である。
【
図15】第4実施形態に係る細胞培養容器を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一又は同様の構成要素であることを意味する。なお、以下に説明する実施形態において重複する説明及び符号については、省略する場合がある。また、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0024】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。
【0025】
[第1実施形態]
図1から
図9において、本実施形態に係る細胞培養容器10は、容器12と、トレイ14とを有している。
【0026】
容器12は、上方に開口部12Aを有し、細胞16の培養液22を貯留可能とされた例えば円筒形の皿である。容器12として、シャーレの下皿が用いられてもよい。容器12の材質は、細胞の培養に適したガラスや樹脂等である。容器12は透明であってもよく、半透明であってもよく、また不透明であってもよい。
【0027】
容器12は、底12Bと周壁12Cとを有している。周壁12Cの上縁は、開口部12Aの周縁12Dとなっている。つまり、開口部12Aは、周壁12Cの上方が開放されることで形成されている。なお、開口部12Aは、細胞16の培養時にはシャーレの上皿等の蓋部材で塞がれてもよい。
【0028】
トレイ14は、開口部12Aを通じて容器12内に配置される筒部14Aを有している。筒部14Aの例えば底部には、細胞16を捕捉可能なフィルタ18が設けられている。なお、図面において、細胞16の大きさは実際よりも大きく誇張して描かれている。また細胞の形状も球形に簡略化して描かれている。
【0029】
なお、
図5では筒部14Aの全体が容器12内に配置されているが、筒部14Aの高さ寸法の設定や培養液22の浮力等により、筒部14Aの上部が容器12の開口部12Aの外側に配置されてもよい。つまり、フィルタ18上の細胞16を培養液22の浸漬できるように、筒部14Aの一部が容器12内に配置されればよい。
【0030】
フィルタ18は、電鋳金属であるニッケル・パラジウム(Ni-Pd)合金製を採用している。このため毒性のあるニッケルが溶出しないので、細胞をフィルタの上に生きたまま長時間保持した状態で培養液22を交換しながら培養することができる。また、図示は省略するが、フィルタ18には、培養目的の細胞16を通過させず、非目的細胞を通過させる孔が多数形成されている。この孔には、細胞16を捕捉するための窪みが設けられていてもよい。フィルタ18の孔径は5~20μmが好ましい。
【0031】
図5から
図9に示されるように、フィルタ18の下方側では、筒部14Aが浮力により容器12の底12Bから離れることで、筒部14Aの内側と外側とが通じている。これにより、筒部14Aの内側と外側との間で培養液22が行き来可能とされている。
【0032】
筒部14Aの上縁には、径方向外側へ突出する環状のフランジ部14Bが形成されている。フランジ部14Bの突出量(幅)は、フランジ部14Bが開口部12Aを塞がない程度に設定される。これは、開口部12Aから容器12内に例えばピペット24を差し込むことができるようにするためである。
【0033】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。本実施形態に係る細胞培養容器10では、トレイ14の筒部14Aのフィルタ18で細胞16を捕捉しておき(
図1)、該筒部14Aを容器12内に配置し(
図2、
図5)、容器12に供給された培養液22に細胞16を浸漬することにより、細胞16を培養することができる。培養液22が貯留されている状態では、トレイ14が浮力により容器12の底12Bから離れることで、フィルタ18の下方側で筒部14Aの内側と外側とが通じており、培養液22が行き来可能とされている。
【0034】
なお、フィルタ18の孔径が5~20μmである場合、血液細胞等の体液細胞のほとんどを通過させ、末梢循環腫瘍細胞(CTC)や希少細胞等の比較的大きな細胞を捕捉することができる。また、フィルタの電鋳金属材料がNi-Pdである場合、引張強さ等の機械的特性を確保しつつ、耐食性を向上させることができる。
【0035】
次に、培養液22を交換する手順について説明する。
図3、
図6、
図7に示されるように、容器12内の培養液22をピペット24等により筒部14Aの外側から吸引すると、筒部14Aの内側の培養液22はフィルタ18の下方側へ吸引されてから筒部14Aの外側へ吸引される。したがって、培養液22の交換のため容器12内の培養液22を吸引する際に、細胞16をフィルタ18の上に吸着させて残すことができる。
【0036】
また、
図4、
図8、
図9に示されるように、新しい培養液22を容器12に注入する際には、培養液22を筒部14Aの内側に注入することで、フィルタ18からの細胞16の浮き上がりを抑制することができる。筒部14Aの内側に注入された培養液22は、フィルタ18を通過した後筒部14Aの内側から外側へ流れ、容器12に貯留される。これにより、細胞16の培養を続行できる。
【0037】
更に、本実施形態では、構成が簡易であるため実用性が高い。トレイ14における筒部14Aにはフランジ部14Bが設けられているので、容器12からのトレイ14の取り出しや、容器12へのトレイ14の配置も容易である。
【0038】
このように、本実施形態によれば、細胞培養容器10において、培養液22を交換する際のフィルタ18からの細胞16の浮き上がりを抑制すると共に、実用性を高めることができる。
【0039】
[第2実施形態]
図10から
図12において、本実施形態に係る細胞培養容器20では、トレイ14が、筒部14Aの外側へ延び、容器12における開口部12Aの周縁12Dに引掛け可能とされた複数の引掛け部14Cを有している。引掛け部14Cは、例えば筒部14Aの径方向外側に延びる長尺状の板状部であり、筒部14Aの周方向に均等に3本設けられている。
【0040】
引掛け部14Cの先端は、筒部14Aが容器12の中央にあるとき、開口部12Aの周縁12Dに重なる位置まで延びている。引掛け部14Cを周縁12Dに引っ掛ける、換言すれば、引掛け部14Cが周縁12Dに載るようにすることで、例えば筒部14Aが容器12の底12Bから離れた状態に保持されるようになっている。また、引掛け部14Cの先端には、例えば下方に突出する爪部14Dが形成されている。この爪部14Dが容器12の周壁12Cに引っ掛かることで、トレイ14の位置が容器12の略中央に保持されるようになっている。
【0041】
なお、引掛け部14Cを腕部、支持部等と言い換えることもできる。本実施形態では、トレイ14が、第1実施形態におけるフランジ部14Bを有していないが、該フランジ部14Bが設けられていてもよい。
【0042】
他の部分については、第1実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0043】
図10、
図11において、本実施形態に係る細胞培養容器20では、引掛け部14Cを容器12の開口部12Aの周縁12Dに引っ掛けることで、トレイ14の筒部14Aを容器12内に安定的に配置することができる。また、トレイ14の比重が大きく、第1実施形態のトレイ14では培養液22に沈んで筒部14Aの下端が容器12の底12Bに当接する場合でも、筒部14Aを容器12の底から離した状態に保持することも容易となる。これにより、筒部14Aの内側と外側の間での培養液22の行き来がより円滑となる。
【0044】
培養液22の交換の際には、筒部14Aの外側における引掛け部14Cのない部分(開口部12A)にピペット24等を差し込むことで、培養液22を吸引することができる。
図12に示されるように、新しい培養液22を容器12に注入する際には、培養液22を筒部14Aの内側に注入することで、フィルタ18からの細胞16の浮き上がりを抑制することができる。筒部14Aの内側に注入された培養液22は、フィルタ18を通過した後筒部14Aの内側から外側へ流れ、容器12に貯留される。
【0045】
引掛け部14Cを把持可能であるので、容器12からのトレイ14の取り出しや、容器12へのトレイ14の配置も容易である。
【0046】
[第3実施形態]
図13、
図14において、本実施形態に係る細胞培養容器30では、筒部14Aにおけるフィルタ18の下方側に、筒部14Aの下端が容器12の底12Bに当接した状態において筒部14Aの内側と外側を連通させる連通部の一例としての溝14Eが設けられている。
【0047】
具体的には、溝14Eは、筒部14Aの下端に設けられた凹凸形状の凹部であり、筒部14Aの内側と外側に連通している。連通部は溝14Eに限られず、筒部14Aの下端に複数の突起を設けることで、連通部を形成するようにしてもよい。
【0048】
他の部分については、第1実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0049】
図13において、本実施形態に係る細胞培養容器30では、トレイ14の筒部14Aにおけるフィルタ18の下方側に連通部としての溝14Eが設けられているので、筒部14Aの下端が容器12の底12Bに当接した状態において、培養液22が溝14Eを通じて筒部14Aの内側と外側の間で行き来可能である。このため、筒部14Aの外側からの培養液22の吸引(
図13)と筒部14A内への培養液22の注入(
図14)による培養液22の交換が可能である。
【0050】
[第4実施形態]
図15において、本実施形態に係る細胞培養容器40では、容器12の底12Bに、筒部14Aの下端が当接した状態において筒部14Aの内側と外側を連通させる凹凸部12Eが設けられている。凹凸部12Eは、例えば互いに平行な複数の突条12Fで構成されている。突条12Fがない部分は連通部12Gとなっている。
【0051】
なお、凹凸部12Eの形状は突条12Fに限られず、複数の突起で構成されていてもよい。
【0052】
他の部分については、第1実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0053】
図15において、本実施形態に係る細胞培養容器40では、容器12の底12Bに凹凸部12E、具体的には突条12Fが設けられているので、トレイ14における筒部14Aの下端が突条12Fの上に当接した状態においても、培養液22が突条12Fのない部分である連通部12Gを通じて筒部14Aの内側と外側の間で行き来可能である。このため、筒部14Aの外側からの培養液22の吸引と筒部14A内への培養液22の注入による培養液22の交換が可能である。
【0054】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明の実施形態は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0055】
上記各実施形態に構成を適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0056】
10 細胞培養容器
12 容器
12A 開口部
12B 底
12D 周縁
12E 凹凸部
14 トレイ
14A 筒部
14C 引掛け部
14E 溝(連通部)
16 細胞
18 フィルタ
20 細胞培養容器
22 培養液
30 細胞培養容器
40 細胞培養容器