(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114933
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】配線基板及び配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/40 20060101AFI20230810BHJP
H05K 3/18 20060101ALI20230810BHJP
C25D 7/00 20060101ALI20230810BHJP
C25D 5/10 20060101ALI20230810BHJP
C25D 5/02 20060101ALI20230810BHJP
C25D 3/38 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
H05K3/40 K
H05K3/18 F
C25D7/00 J
C25D5/10
C25D5/02 B
C25D3/38 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017534
(22)【出願日】2022-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】君島 康紀
【テーマコード(参考)】
4K023
4K024
5E317
5E343
【Fターム(参考)】
4K023AA04
4K023AA19
4K023BA06
4K023BA29
4K023CA09
4K023DA07
4K024AA09
4K024AB02
4K024BA09
4K024BB11
4K024CA02
4K024CA06
5E317AA24
5E317BB02
5E317BB03
5E317BB12
5E317CC32
5E317CC33
5E317CC35
5E317GG20
5E343BB24
5E343BB71
5E343DD23
5E343DD25
5E343DD33
5E343DD43
5E343DD47
5E343DD48
5E343GG06
(57)【要約】
【課題】配線基板のビア導体の信頼性向上。
【解決手段】実施形態の配線基板の製造方法は、第1導体層22を第1絶縁層21上に形成することと、第1導体層22を覆うように第1絶縁層21上に第2絶縁層23を形成することと、第1導体層21の一部が露出するように第2絶縁層23にビアホール24を形成することと、ビアホール24内にビア導体を形成することと、第2絶縁層23の上に第2導体層14を形成することと、を含んでいる。ビア導体を形成することは、第1のめっき条件でビアホール24の底面及び側面に第1めっき膜11を、ビアホール24の底面上の部分11aと側面上の部分11bとの間に間隙部を有するように形成することと、間隙部及び第1めっき膜11の上に、第1のめっき条件と異なる第2のめっき条件で、ビアホール24を充填する第2めっき膜12を形成することと、を含んでいる。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1絶縁層と、
前記第1絶縁層の上に形成されている第1導体層と、
前記第1導体層を覆うように前記第1絶縁層の上に形成されている第2絶縁層と、
前記第2絶縁層において、前記第1導体層の一部が露出するように形成されたビアホールと、
前記ビアホールの内面及び前記第2絶縁層における前記第1絶縁層と対向する面の反対面である第1面に形成されたシード層と、
前記ビアホールの内部に形成されたビア導体と、
前記ビア導体と連結し、かつ、前記第1面に形成された第2導体層と、
を備える配線基板であって、
前記ビア導体は、前記ビアホールの底面及び側面に相互に分離して形成された第1めっき膜と、前記第1めっき膜の分離により前記第1めっき膜で覆われない前記第1めっき膜の間隙部及び前記第1めっき膜の前記ビアホールの内部を向く面の少なくとも一部を覆うように形成された第2めっき膜とを含んでいる。
【請求項2】
請求項1記載の配線基板であって、前記第1めっき膜及び前記第2めっき膜は、それぞれ電解めっき膜である。
【請求項3】
請求項2記載の配線基板であって、前記第1めっき膜及び前記第2めっき膜はそれぞれ銅を主成分として含んでいる。
【請求項4】
請求項1記載の配線基板であって、前記ビアホールの側面に形成されている前記第1めっき膜は、前記第1面上に形成されている前記第1めっき膜と連続している。
【請求項5】
請求項1記載の配線基板であって、前記ビアホールの底面に形成されている前記第1めっき膜は、中央部が隆起している。
【請求項6】
請求項1記載の配線基板であって、前記ビアホールのアスペクト比は、0.25以上、0.90以下である。
【請求項7】
請求項1記載の配線基板であって、前記ビアホールが前記第2めっき膜により充填されている。
【請求項8】
配線パターンを含む第1導体層を第1絶縁層上に形成することと、
前記第1導体層を覆うように前記第1絶縁層上に第2絶縁層を形成することと、
前記第1導体層の一部が露出するように前記第2絶縁層にビアホールを形成することと、
前記ビアホール内にビア導体を形成することと、
前記第2絶縁層の上に第2導体層を形成することと、
を含む配線基板の製造方法であって、
前記ビア導体を形成することは、
第1のめっき条件で前記ビアホールの底面及び側面に第1めっき膜を、前記底面上の部分と前記側面上の部分との間に間隙部を有するように形成することと、
前記間隙部及び前記第1めっき膜の上に、前記第1のめっき条件と異なる第2のめっき条件で、前記ビアホールを充填する第2めっき膜を形成することと、
を含んでいる。
【請求項9】
請求項8記載の配線基板の製造方法であって、前記第1めっき膜及び前記第2めっき膜は電解めっきによって形成される。
【請求項10】
請求項9記載の配線基板の製造方法であって、前記第2のめっき条件の電流密度は、前記第1のめっき条件の電流密度よりも大きい。
【請求項11】
請求項10記載の配線基板の製造方法であって、前記第2のめっき条件の電流密度は、前記第1のめっき条件の電流密度の1.2倍以上、30倍以下である。
【請求項12】
請求項9記載の配線基板の製造方法であって、前記電解めっきは、直流電流を印加することを含んでいる。
【請求項13】
請求項8記載の配線基板の製造方法であって、前記第2めっき膜は、前記間隙部において前記第1めっき膜で被覆されていない前記ビアホールの内面から析出される。
【請求項14】
請求項8記載の配線基板の製造方法であって、前記第1のめっき条件及び前記第2のめっき条件は、銅塩を含むめっき液を用いることを含んでいる。
【請求項15】
請求項14記載の配線基板の製造方法であって、前記銅塩が硫酸銅、硝酸銅、ギ酸銅及び塩化第2銅よりなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【請求項16】
請求項14記載の配線基板の製造方法であって、前記第1のめっき条件及び前記第2のめっき条件は、銅塩を含むめっき液中にめっき成長を促進するめっき促進剤を添加することを含んでいる。
【請求項17】
請求項14記載の配線基板の製造方法であって、前記第1のめっき条件及び前記第2のめっき条件は、銅塩を含むめっき液中にめっき成長を抑制するめっき抑制剤を添加することを含んでいる。
【請求項18】
請求項8記載の配線基板の製造方法であって、前記第1めっき膜を形成する前に、前記ビアホールの底面及び側面を含む内面、及び前記第2絶縁層における前記第1絶縁層と対向する面の反対面にシード層が形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板及び配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、プリント基板用銅めっきに関し、銅めっき液組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の開示では、ビアホールの底面側の内部に十分な金属を析出させることができなくなり、めっき膜にボイドや表面の凹みが生じやすくなることがある。また、電解めっきの時間が長くなることがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の配線基板は、第1絶縁層と、前記第1絶縁層の上に形成されている第1導体層と、前記第1導体層を覆うように前記第1絶縁層の上に形成されている第2絶縁層と、前記第2絶縁層において、前記第1導体層の一部が露出するように形成されたビアホールと、前記ビアホールの内面及び前記第2絶縁層における前記第1絶縁層と対向する面の反対面である第1面に形成されたシード層と、前記ビアホールの内部に形成されたビア導体と、前記ビア導体と連結し、かつ、前記第1面に形成された第2導体層と、を備えている。そして、前記ビア導体は、前記ビアホールの底面及び側面に相互に分離して形成された第1めっき膜と、前記第1めっき膜の分離により前記第1めっき膜で覆われない前記第1めっき膜の間隙部及び前記第1めっき膜の前記ビアホールの内部を向く面の少なくとも一部を覆うように形成された第2めっき膜とを含んでいる。
【0006】
本発明の配線基板の製造方法は、配線パターンを含む第1導体層を第1絶縁層上に形成することと、前記第1導体層を覆うように前記第1絶縁層上に第2絶縁層を形成することと、前記第1導体層の一部が露出するように前記第2絶縁層にビアホールを形成することと、前記ビアホール内にビア導体を形成することと、前記第2絶縁層の上に第2導体層を形成することと、を含む配線基板の製造方法であって、前記ビア導体を形成することは、第1のめっき条件で前記ビアホールの底面及び側面に第1めっき膜を、前記底面上の部分と前記側面上の部分との間に間隙部を有するように形成することと、前記間隙部及び前記第1めっき膜の上に、前記第1のめっき条件と異なる第2のめっき条件で、前記ビアホールを充填する第2めっき膜を形成することと、を含んでいる。
【0007】
本発明の実施形態によれば、信頼性の高いビア導体を有する配線基板、及びそのような配線基板を容易に製造できる配線基板の製造方法が提供されると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】本発明の一実施形態の第1めっき膜を形成する工程の断面図。
【
図1B】本発明の一実施形態の第2めっき膜を形成する工程の断面図。
【
図1D】本発明の一実施形態のビアホール内を完全に埋め込んだ状態の概略断面図。
【
図2A】本発明の実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す断面図。
【
図2B】本発明の実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す断面図。
【
図2C】本発明の実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す断面図。
【
図2D】本発明の実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す断面図。
【
図2E】本発明の実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す断面図。
【
図2F】本発明の実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態の配線基板及び配線基板の製造方法では、ビルドアップされた配線基板の絶縁層に形成されたビアホール内にボイドやディンプルなどを生じさせることなく、めっき金属を電解めっきによって埋め込んでビア導体が形成される。そこで実施形態の配線基板の製造方法におけるビア導体の形成方法がまず説明される。
【0010】
図1Aには、一実施形態の配線基板の製造方法における第1めっき膜を形成する工程の断面図が示されている。
図1Aに示されるように、ビルドアップ層の一部で第1絶縁層21の一面に第1導体層22が形成され、その第1導体層22を覆うように第2絶縁層23が形成されている。そして、第2絶縁層23に第1導体層22の一部が露出するようにビアホール24が形成されている。このビアホール24の内表面及び第2絶縁層23の第1絶縁層21と反対面である第1面23aにめっき電流給電用のシード層25が形成されている。この状態で電解めっきにより第1めっき膜11及び第2めっき膜12を含むビア導体13(
図1D参照)がビアホール24の内部に、第2導体層14(
図1D参照)が、第2絶縁層23の第1面23aの上に形成される。
【0011】
まず、
図1Aに示されるように、第2絶縁層23に形成されたビアホール24の底面すなわち、ビアホール24の形成により露出する第1導体層22の一面、ビアホール24の側壁及び第2絶縁層23の第1面23aの上方に第1めっき膜11(11a、11b、11c)が第1のめっき条件である低電流密度の電解めっきによって形成されている。低電流密度の電解めっきでは、析出するめっき金属が少ないため、めっき膜としては短時間では余り厚くならない。そのため、ビアホール24内に形成される第1めっき膜11a、11bは薄いが角部を除いてほぼ均一に形成される。しかし、ビアホール24の底面と側面の境界部である角部にはめっき金属の析出が起り難い。そのため、めっき時間が長くなければ、ビアホールの底面と側面の境界部である角部には第1めっき膜11が成長しないで底面に形成された第1めっき膜11aと側面に形成された第1めっき膜11bとの間に凹形状の間隙部が形成される。この際、第2絶縁層23の第1面23aの上方にも第1めっき膜11cが薄く形成される。
【0012】
電解めっき液には、後述されるように、めっき成長を抑制する抑制剤とめっき成長を促進する促進剤などの添加物が添加されている。これらの作用については後述されるが、その作用によって、ビアホール24の開口部の角部Cでもめっき膜が集中することなく、また、第2絶縁層23の上方の平坦部にも厚くめっき金属が析出することなく、ビアホール24の内面である底面及び側面に第1めっき膜11a、11bが形成される。
図1A~1Cでは、ビアホール24の側面の第1めっき膜11bと第2絶縁層23の上方の第1めっき膜11cとが同程度の厚さで連続して形成されているが、前述の抑制剤などの作用によって、第2絶縁層23の第1面23aの上方で析出する第1めっき膜11cはビアホール24の側面の第1めっき膜11bよりも薄くてもよい。
【0013】
具体的には、第1めっき膜11は第1のめっき条件の電解めっきによって形成される。第1のめっき条件は、例えば0.5A/dm
2以上、3A/dm
2以下程度の低電流密度で行われる。電流密度が小さいと、前述のように、析出するめっき金属の量が少なく、薄い第1めっき膜11が形成され得る。そのため、めっき時間を短くすることによって、ビアホール24の底面の角部にめっき金属が析出しない状態で第1めっき膜11a、11bの間に凹形状の間隙部(凹部)が形成され得る。この第1のめっき条件による電解めっきは、析出するめっき金属が少ないが、第1めっき膜11は薄いので、それほどめっき時間が長くなることはない。この際、ビアホール24の底面では底面の中心部ではめっき金属の析出が顕著で、
図1Aに示されるように、底面の第1めっき膜11aは中央部が隆起した形状になる。また、ビアホール24の開口部の角部Cは電流が集中しやすいが、前述の抑制剤の作用によって、角部C及び絶縁層23の第1面23aの上のめっき成長が抑制される。
【0014】
換言すると、ビアホール24の底面上の第1めっき膜11aと側面上の第1めっき膜11bとが連結しないで、その間にビアホール24の内面(シード層25)が覆われないで凹形状の間隙部が形成されるように第1のめっき条件による電解めっきが終了される。その結果、ビアホール24の側面に形成される第1めっき膜11bと第2絶縁層23の第1面23aの上に形成される第1めっき膜11cは連続して形成され得る。換言すると、底面上の第1めっき膜11aと側面上の第1めっき膜11bとは離れ過ぎず、かつ、近づき過ぎないで、両者の間に凹部が形成されるように第1めっき膜11a、11bが形成されているが、側面上の第1めっき膜11bと第2絶縁層23の第1面23aの上の第1めっき膜11cは連続して形成され得る。例えばビアホール24の径が50μm程度で、深さが30μm程度である場合に、電流密度が1A/dm2の場合、1分以上、5分以下程度が好ましい。このビアホール24のアスペクト比は0.25以上、0.90以下程度に形成され得る。
【0015】
第2めっき膜12は、ビアホール24内の底面と側面に分離して形成された第1めっき膜11a、11bの間隙部で、第1めっき膜11で覆われないビアホール24の内面(露出しているシード層25)及び第1めっき膜11のビアホール24の中心部を向く面の少なくとも一部を覆うように形成されている。具体的には、
図1Bに断面図、
図1Cに実際の走査電子顕微鏡(SEM)写真で示されるように、高電流密度の第2のめっき条件によって、ビアホール24の底面に形成された第1めっき膜11aと側面に形成された第1めっき膜11bとの凹形状の間隙部であるビアホール24の底面角部で第1めっき膜11の形成されていないシード層25上にめっき膜が優先的に成長し、ビアホール24を充填する第2めっき膜12が形成されている。
【0016】
第2のめっき条件は、例えば4A/dm2以上、15A/dm2以下程度の高電流密度の電流条件である。この高電流密度の条件で電解めっきが行われると、析出するめっき金属が多く、短時間で厚いめっき膜を得ることができる。一方で、前述のビアホール24の底面上の第1めっき膜11aと側面上の第1めっき膜11bとの間に形成された凹部はその間隔が非常に狭く、第1金属膜11a、11bの表面よりも相対的に狭い空間である。そのため、例えば電解めっき液に添加される抑制剤の吸着は非常に少なく、第1めっき膜11の表面よりも相対的に電解めっきによるめっき金属の析出が顕著になる。そのため、ビアホール24の底面の角部でシード層25の露出部に優先的に第2めっき膜12が形成される。そのため、第2のめっき条件による電解めっきにおいては、第1めっき膜11a、11bの形成されていないビアホール24の底面の角部からの成長が多い。しかし、第1めっき膜11の表面にも第2めっき膜12は成長する。
【0017】
一方、ビアホール24外の第2絶縁層23の第1面23a上や、角部Cのシード層25には、ビアホール24内よりもさらに抑制剤などの作用によって第2めっき膜12の成長が抑制されている。従って、添加される抑制剤などの添加物の作用によって、ビアホール24の底面角部の第1めっき膜11a、11bの間の凹形状の部分において、最も第2めっき膜12の成長が進み、次いで、ビアホール24の第1めっき膜の表面の成長が進み、第2絶縁層23の第1面23aの上では一番第2めっき膜12の成長が少なくなる。その結果、第2めっき膜12はビアホール24の底面側から成長し、ビアホール24の内部にボイドなどが形成されることなく、また、ビアホール24内に形成されたビア導体13の上面と第2絶縁層23上の第2導体層14(
図1D参照)の表面とをほぼ面一にすることが可能となる。
【0018】
換言すると、第1めっき膜11が形成され、その上に第2めっき膜12が高電流密度の第2のめっき条件で第2めっき膜12が形成されている。従って、
図1Dに概略断面図が、
図1Eに実際の走査電子顕微鏡(SEM)写真が示されるように、ビアホール24内にシード層25、第1めっき膜11a、11b、及び第2めっき膜12を含むビア導体13が形成される。また、第2絶縁層23の第1面23a上には、シード層25からなる金属層、第1めっき膜11c、及び第2めっき膜12を含む第2導体層14が形成される。第2導体層14は、例えばセミアディティブ法などによって、所望の配線のパターンや接続パッド、電極パッドなどの種々の導体パターンを含むように形成され得る。
【0019】
図1Dに示される例では、ビアホール24の底面の第1めっき膜11aと側面の第1めっき膜11bとの間隙部を埋め込む第2めっき膜12(
図1Bの状態)が形成された後に、第2のめっき条件の継続でビア導体13及び第2導体層14が形成されている。しかし、
図1Bの状態の後に再度第1のめっき条件、すなわち低電流密度による電解めっきを続けてもよいし、第2のめっき条件よりもさらに高電流密度など、他のめっき条件によってビアホール24内の残部を埋め込むこともできる。
【0020】
さらに、めっきの成長を抑制する抑制剤及び成長を促進する促進剤などがめっき液中に最適な割合で添加されることによって第2絶縁層23の第1面23a上のめっき膜の成長が抑制されることによって、本実施形態では、ビアホール24内の成長が促進され、
図1Dに示されるように、ビア導体13の表面と第2導体層14の表面とがほぼ面一に形成され得る。
【0021】
第1めっき膜11の下面にはめっき電流給電用のシード層25が形成されている。シード層25は、一般的には金属イオン(多くの場合錯体)と還元剤を含む化学めっき液を用いた無電解めっき(化学めっき)、スパッタリング、真空蒸着などの物理的蒸着法、又はCVDなどの化学的蒸着法などによって形成される。
【0022】
本実施形態の配線基板においては、ビア導体13及び第2導体層14が、シード層(金属層)25、第1めっき膜11及び第2めっき膜12によって形成され、第1めっき膜11がビアホール24の底面、及び側面に相互に連結しないで、その間に凹形状の間隙部が形成されている。そのため、底面に形成される第1めっき膜11aと、側面に形成される第1めっき膜11bとの間にシード層25が露出し、その上に第2めっき膜12が埋め込むように形成されている。第2めっき膜12は、ビアホール24の底面及び側面に形成された第1めっき膜11a、11b上も被覆し得るためビアホール24の底部から第2めっき膜12は埋まっている。そのため、ビアホール24内でのボイドやディンプルなどの形成が抑制され得る。すなわち、比抵抗が小さく、信頼性の高いビア導体13を含む配線基板が短時間で得られる。
【0023】
本実施形態の配線基板のビア導体13及び第2導体層14を形成するめっき液は銅塩及び酸を含む水溶液にめっき成長を抑制する抑制剤、めっき成長を促進する促進剤などの添加物が添加された銅めっき液が用いられる。銅塩としては、硫酸銅(CuSO4・5H2O)が用いられるが、硫酸銅に限らず、硝酸銅(Cu(NO3)2)、ギ酸銅(Cu(HCOO)2)、塩化第2銅(CuCl2・2H2O)などを用いることもできる。
【0024】
酸としては、硫酸(H2SO4・5H2O)が一般的に用いられるがそれに限らず、塩酸(HCl)、酢酸(CH3COOH)、フッ化ホウ素酸(HBF4)などを用いることができる。
【0025】
抑制剤は、例えば高分子の有機物などからなり、分子量が大きく移動性が小さいので、物質の拡散則に伴い、基板表面の平坦部に多く吸着し、ビアホール24内などの狭い領域には吸着し難い。従って、
図1Aに示される構造では、第2絶縁層23の第1面23a上の平坦面には抑制剤が吸着しやすい。そのため、ビアホール24内にはめっきの析出が行われるが、第2絶縁層23の第1面23a上の平坦面にはめっき金属の析出が抑制される。同じ理屈で、前述のビアホール24内に第1めっき膜11a、11bで形成された凹形状の間隙部では、ビアホール24内にある程度の抑制剤が入っているが、第1めっき膜11a、11bの間隙部には分子量の大きい抑制剤は殆ど侵入できないため、第1めっき膜11a、11bの表面よりもめっき金属の析出が促進される。その結果、
図1A~1Cに示されるように、ビアホール24内にボイドなどを生じさせることなく埋め込むビア導体13と第2絶縁層23の第1面23aの上に形成される配線などの第2導体層14を同時に電解めっきで形成しながら、ビア導体13の表面と第2導体層14の表面とをほぼ面一にすることが容易になる。なお、抑制剤は、第2絶縁層23の第1面23a上の平坦面と共にビアホール24の開口部の角部Cにも付着しやすい。そのため、この抑制剤が添加されることによって、角部Cでの局部的なめっき膜の成長も抑制され得る。
【0026】
促進剤は、塩化イオン(Cl)、塩酸(HCl)、塩化ナトリウム(NaCl)などにより形成され、めっきの析出を促進する作用をする。この促進剤は、ビアホール24の底面、側面、及び第2絶縁層23上の平面部にもほぼ一様に吸着される。めっきが進行すると、ビアホール24の内部ではめっき金属の成長に伴い、促進剤が密になる。そのため、ビアホール24の内部でのめっき速度が第2絶縁層23上の平面部よりも早くなる。一方、前述の抑制剤も添加されることによって、平坦部ではめっき金属の成長が抑制される。すなわち、この促進剤と抑制剤とが適当な比率によって添加されることにより、厚いビア導体13の表面と薄い第2導体層14の表面が均一化される。
【0027】
一般的には、これらの抑制剤と促進剤は一つのめっき液内に適度な配合で混合され、両者の効果によってビアホール24の内部に銅が充填される。ビアホール24の径や深さなどによってめっき金属の析出特性が異なるからである。
【0028】
添加剤としては、前述の抑制剤及び促進剤に限らず、平坦面に吸着されやすくビアホール24内には吸着しにくい平坦剤、結晶核の成長点に吸着して結晶の成長を抑制する光沢剤、還元剤などが添加され得る。
【0029】
前述の抑制剤が添加されることによって、ビアホール24の開口部にある角部Cや第2絶縁層23の第1面23a上では結晶の析出が抑制され得る。一方、ビアホール24の内部、さらにはビアホール24内に形成された凹部(間隙部)には抑制剤は吸着し難いため、ビアホール24の底面及び側面にめっき金属である銅が析出する。しかし、ビアホール24内が一様であれば、ビアホール24の底面の角部には相対的にめっき金属の析出はし難い。その結果、第1のめっき条件による電解めっきの時間を短時間に制御することによって、
図1Aに示されるように、ビアホール24の底面に第1めっき膜11a、側面に第1めっき膜11bが、それぞれ、互いに連結しないように形成される。この底面に形成される第1めっき膜11aと側面に形成される第1めっき膜11bは分離し、その間隙部にビアホール24内のシード層25が露出している。
【0030】
第2のめっき条件の電流密度は、第1のめっき条件の電流密度よりも大きい。具体的には、4A/dm
2以上、15A/dm
2以下が好ましい。換言すると、第1のめっき条件の電流密度の1.2倍以上、30倍以下程度であることが好ましい。その結果、第2のめっき条件による第2めっき膜12は短時間で形成される。しかも、
図1Bに示されるように、ビアホール24の底面部には、前述のように、第1金属膜11a、11bの間隙部が凹形状になっているため、その間隙部から優先的に第2めっき膜12が形成される。その結果、ボイドなどが形成されることなく
図1Dに示されるようにビアホール24内に短時間でビア導体13が形成され、第2絶縁層23の第1面23a上に第2導体層14が形成される。
【0031】
次に、一実施形態の配線基板の製造方法が、
図2A~2Fを参照して説明される。
図2A~2Fは、ビルドアップ形成された配線基板を製造する際のビア導体を形成する部分のみが示されている。
【0032】
図2Aに示されるように、配線パターンを含む第1導体層22が第1絶縁層21上に形成される。第1絶縁層21は、任意の絶縁性樹脂によって形成される。絶縁性樹脂としては、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)又はフェノール樹脂などが例示される。
図2Aの例では明示されていないが、第1絶縁層21は、ガラス繊維やアラミド繊維などで形成される芯材(補強材)を含み得る。
図2Aには示されていないが、ガラス繊維などからなる芯材を含み得る。第1絶縁層21は、さらに、シリカ(SiO
2)、アルミナ、又はムライトなどの微粒子からなる無機フィラー(図示せず)を含み得る。
【0033】
第1導体層22は、第1絶縁層21に積層された金属箔がサブトラクティブ法によるパターニングによって、所望の導体パターンを有するものでも良いし、後述する第2導体層14のようにセミアディティブ法によって形成されたものでも良い。金属としては、特に限定されず、銅又はニッケルなどの任意の金属が用いられ得る。
【0034】
図2Bに示されるように、第1導体層22を覆うように第1絶縁層21上に第2絶縁層23が形成される。具体的には、例えばフィルム状のエポキシ樹脂が、第1導体層22が形成された第1絶縁層21の上に積層され、加熱及び加圧される。その結果、第2絶縁層23が形成される。
【0035】
図2Cに示されるように、第1導体層22の一部が露出するように第2絶縁層23にビアホール24が形成される。具体的には、第2絶縁層23の下層と上層の導体層を接続するためのビア導体13を第2絶縁層23に形成するためのビアホール24が、例えば炭酸ガスレーザー光の照射などによって形成される。ビアホール24は、炭酸ガスレーザー光が第2絶縁層23の奥に進むにつれて弱くなるので、
図2Cに示されるように断面形状がテーパー形状であり、開口部より底面部で細くなる形状になる。ビアホール24の形成により露出した第1導体層22の表面がビアホール24の底面になる。
【0036】
図2Dに示されるように、ビアホール24の底面及び側面を含む内面及び第2絶縁層23の第1絶縁層21と対向する面と反対面である第1面23aにめっき電流供給用のシード層25が形成される。シード層25は、例えば無電解めっきなどの化学めっき又はスパッタリング、真空蒸着などの物理的蒸着もしくはCVDなどの化学的蒸着により形成され得る。第2絶縁層23の第1面23aやビアホール24の側面は絶縁層なので、電解めっきのための電気を流すことができない。そのため、給電用として金属皮膜がほぼ全面に形成される。このシード層25は電流を流すことができればよく、切れ目が生じない程度の薄い層で形成される。
【0037】
その後、
図2Eに示されるように、第1のめっき条件によってビアホール24の底面及び側面に、底面上の部分11aと側面上の部分11bとの間に凹形状の間隙部を有するように第1めっき膜11が形成される。すなわち、底面上の部分11aと側面上の部分11bとが相互に連結しないで、その間に凹部が形成されるように、そして、ビアホール24の底面側のシード層25の一部が被覆されないように、第1めっき膜11(11a、11b)が形成される。換言すると、この間隙部が大き過ぎず、かつ、小さ過ぎないように第1めっき膜11a、11bが形成される。従って、第1めっき膜11は薄く形成され、ビアホール24の側面に析出する第1めっき膜11bが対向する側面に析出する第1めっき膜11bと接触する恐れはなく、第1めっき膜11が形成される。前述したように、側面に析出する第1めっき膜11bが対向する側面に析出する第1めっき膜11bと接触すると、その部分よりも底面側にボイドが形成されやすくなるが、その恐れは生じないと考えられる。また、ビアホール24の底面に析出する第1めっき膜11aとビアホール24の側面に形成される第1めっき膜11bとが接触して、ビアホール24の内面が全て第1めっき膜11によって覆われると、次の第2のめっき条件によるめっき成長が底面側で十分にできなくなる恐れがあるが、その可能性も生じないと考えられる。
【0038】
第2絶縁層23の第1面23aのシード層25上には、例えば前述の抑制剤が電解めっき液に添加されることによって、拡散則により、ビアホール24の内部に比べて抑制剤が多く吸着されるのでめっき金属の析出が抑制され、ビアホール24の内部ほどはめっき膜が析出せずに薄い層として第1めっき膜11cが形成される。この第1めっき膜11cの厚さは、添加する抑制剤や促進剤などの混合割合などによって調整することができる。
【0039】
次に、
図2Fに示されるように、第2のめっき条件によってビアホール24の底面及び側面に形成された第1めっき膜11a、11bの間で第1めっき膜11によって覆われていないシード層25の部分からめっき金属(銅)の析出が始まる。前述のように、電解めっき液に添加される抑制剤は凹部などの狭い領域には吸着され難く、平坦部では比較的吸着されやすいので、第1めっき膜11の表面よりも第1めっき膜11aと11bとの間の凹形状の間隙部で、優先的にめっき金属の析出が始まる。一方、第1めっき膜11の表面にもめっき金属は成長するが、ビアホール24の底部側のめっき成長が優勢であるため、ビアホール24の底面側からめっき成長が行われ、ボイドなどが形成され難く、ビアホール24内に第2めっき膜12が短時間で形成される。
【0040】
第2のめっき条件の電流密度は第1のめっき条件の電流密度の1.2倍以上、30倍以下程度である。具体的には、4A/dm2以上、15A/dm2以下の電流密度の電流で第2めっき膜12が形成される。前述のように、第2のめっき条件で電解めっきが行われると、ビアホール24の底面に形成された第1めっき膜11aと側面に形成された第1めっき膜11bとの間の凹形状の間隙部に現れるシード層25の表面にめっき金属が析出し、その析出しためっき金属にさらに新たなめっき金属が析出することによって、めっき成長が短時間で行われる。
【0041】
この第2めっき膜12の成長速度は、前述のように、第1めっき膜11a、11bの間隙部、第1めっき膜11上、第2絶縁層23の第1面23aの順で低下していくが、第1めっき膜11上にも成長し、ビアホール24の底面側から順次めっき金属の成長が進み、ビアホール24の内部にビア導体13が埋め込まれる。
図2Eではビアホール24の側面の第1めっき膜11bと、第2絶縁層23の第1面23a上の第1めっき膜11cが連続して形成された図になっているが、その厚さは、第1面23a上では薄くなる。
【0042】
図2Fに示される例では、ビアホール24の底部に形成された第2めっき膜12に続き、そのまま第2のめっき条件で第2めっき膜の成長を続けて、ビア導体13が形成されている。しかし、前述のように、
図1Bに示されるようにビアホール24の底部が第2めっき膜12によって埋め込まれれば、第2のめっき条件が続けられなくてもよく、他のめっき条件でビアホール24の残りの部分が埋め込まれても良い。
【0043】
本実施形態の配線基板の製造方法によれば、第1のめっき条件である低電流密度の電流でビアホール24内の底面及び側面に相互に連結しないで両者間に凹部が形成され、ビアホール24の底面の角部を含む一部が覆われないように第1めっき膜11a、11bが形成される。その後ビアホール24の底面と側面に形成された第1めっき膜11a、11bの間の間隙部から第2のめっき条件である高電流密度の電流で少なくともビアホール24の底面部近傍に第2めっき膜12が形成される。そのため、第2めっき膜12はビアホール24の底面側から形成され、しかも高電流密度による電解めっきで形成されるため、ビア導体13にボイドやディンプルなどを生じさせることなく短時間でビア導体13が形成されると考えられる。
【符号の説明】
【0044】
11(11a、11b、11c) 第1めっき膜
12 第2めっき膜
13 ビア導体
14 第2導体層
21 第1絶縁層
22 第1導体層
23 第2絶縁層
23a 第1面
24 ビアホール
25 シード層(金属層)
C 角部