(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114941
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】歯科治療椅子
(51)【国際特許分類】
A61G 15/00 20060101AFI20230810BHJP
【FI】
A61G15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017559
(22)【出願日】2022-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】502080704
【氏名又は名称】長田電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 清
【テーマコード(参考)】
4C341
【Fターム(参考)】
4C341MM11
4C341MN14
4C341MN15
(57)【要約】
【課題】レッグレストが伸縮時に患者の着衣を乱すことのない歯科治療椅子を提供する。
【解決手段】レッグレスト160が、レッグレスト本体161と、このレッグレスト本体161の前端に設けられた回転自在な回転クッション162とからなり、この回転クッション162が、レッグレスト本体161に対して伸縮自在に設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の臀部を支持するコンターシートと、該コンターシートの後端に連結されて前記患者の背中を支持する起倒自在なバックレストと、前記コンターシートの前端に連結されて前記患者の下腿後面を支持するレッグレストとを備えた歯科治療椅子であって、
前記レッグレストが、レッグレスト本体と、該レッグレスト本体の前端に設けられた回転自在な回転クッションとからなり、
前記回転クッションが、前記レッグレスト本体に対して伸縮自在に設けられていることを特徴とする歯科治療椅子。
【請求項2】
前記コンターシートが、前後方向に延伸する連結棒を裏面に有し、
前記バックレストが、前記連結棒の一端と互いに回動自在に連結し、
前記レッグレストのレッグレスト本体が、前記連結棒の他端と互いに回動自在に連結し、
前記バックレストが、起状態から倒状態に移行する動作に応じて、前記連結棒を押し込んで前方に移動させ、
該連結棒が、前記レッグレスト本体を垂下状態から前記コンターシートに対して略水平な状態に押し上げつつ、前記回転クッションを前記レッグレスト本体から突出させることを特徴とする請求項1に記載の歯科治療椅子。
【請求項3】
弾性部材が、前記レッグレスト本体と前記回転クッションとを連結していることを特徴とする請求項2に記載の歯科治療椅子。
【請求項4】
前記回転クッションが、内部にヒーターを有していることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の歯科治療椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科治療椅子に関し、より詳しくは、レッグレストが伸縮時に患者の着衣を乱すことのない歯科治療椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯科治療椅子として、患者の臀部を支持するコンターシートと患者の下腿後面を支持するレッグレストとが一体的に形成され、患者が脚を伸ばして着座するタイプのものと、コンターシートから独立したレッグレストが垂下状態とコンターシートに対して略水平な状態との間で変位可能に設けられ、患者が脚を曲げて着座するタイプのものとがある。
さらに、後者のタイプにおいては、患者の足裏を支持するフットレストをレッグレストの前端に設けたものと、患者の導入退出が容易となるようにフットレストを欠く(フットレストレスの)ものとがある。
【0003】
フットレストレスの歯科治療椅子は、特に高身長の患者の場合、レッグレストの前後方向の長さが十分でないことがあり、患者が着座姿勢から仰臥位の水平診療姿勢に移行する際に、レッグレストがふくらはぎや踵といった下腿後面を適切に支えることができない。
そのため、
図10に示す歯科治療椅子200のように、レッグレスト260の中にスライド式のフットレスト280を収納する二重構造にレッグレスト260を構成し、このフットレスト280を前後方向に伸縮自在として、フットレスト280の収納時にはフットレストレスの歯科治療椅子と同様に患者の導入退出を容易としているものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、特許文献2のデンタル椅子におけるレッグレスト装置では、油圧シリンダーのプランジャーの先端に設けたローラーにより可撓板を伸縮し得るように構成して、水平診療時に患者を安楽な姿勢に保ちながら、導入退出時における患者のデンタル椅子への乗り降りを容易としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-229855号公報(特に段落[0005]、
図4)
【特許文献2】実公昭61-6913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このように伸縮自在なレッグレスト(あるいは、レッグレスト内に収納可能なフットレスト)を有する歯科治療椅子においては、レッグレストが伸縮時に患者の靴下やダブルのズボン裾等に引っ掛かりやすく、レッグレストが患者の着衣を乱すことがあるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的の一つは、レッグレストが伸縮時に患者の着衣を乱すことのない歯科治療椅子を提供することである。
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、患者の臀部を支持するコンターシートと、該コンターシートの後端に連結されて前記患者の背中を支持する起倒自在なバックレストと、前記コンターシートの前端に連結されて前記患者の下腿後面を支持するレッグレストとを備えた歯科治療椅子であって、前記レッグレストが、レッグレスト本体と、該レッグレスト本体の前端に設けられた回転自在な回転クッションとからなり、前記回転クッションが、前記レッグレスト本体に対して伸縮自在に設けられていることにより、前述した課題を解決するものである。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載された歯科治療椅子の構成に加えて、前記コンターシートが、前後方向に延伸する連結棒を裏面に有し、前記バックレストが、前記連結棒の一端と互いに回動自在に連結し、前記レッグレストのレッグレスト本体が、前記連結棒の他端と互いに回動自在に連結し、前記バックレストが、起状態から倒状態に移行する動作に応じて、前記連結棒を押し込んで前方に移動させ、該連結棒が、前記レッグレスト本体を垂下状態から前記コンターシートに対して略水平な状態に押し上げつつ、前記回転クッションを前記レッグレスト本体から突出させることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載された歯科治療椅子の構成に加えて、弾性部材が、前記レッグレスト本体と前記回転クッションとを連結していることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載された歯科治療椅子の構成に加えて、前記回転クッションが、内部にヒーターを有していることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の歯科治療椅子は、レッグレストが、レッグレスト本体と、このレッグレスト本体の前端に設けられた回転自在な回転クッションとからなり、回転クッションが、レッグレスト本体に対して伸縮自在に、すなわち、進退自在に設けられていることにより、回転クッションが、患者の下腿後面に接触して自転しながら伸縮するため、レッグレストが伸縮する際に引っ掛かって患者の着衣を乱すのを防ぐことができる。また、回転クッションが患者の下腿後面の血行を促進することができる。
【0013】
請求項2に係る発明の歯科治療椅子によれば、請求項1に係る発明の歯科治療椅子が奏する効果に加えて、コンターシートが、前後方向に延伸する連結棒を裏面に有し、バックレストが、連結棒の一端と互いに回動自在に連結し、レッグレストのレッグレスト本体が、連結棒の他端と互いに回動自在に連結し、バックレストが、起状態から倒状態に移行する動作に応じて、連結棒を押し込んで前方に移動させ、この連結棒が、レッグレスト本体を垂下状態からコンターシートに対して略水平な状態に押し上げつつ、回転クッションをレッグレスト本体から突出させることにより、レッグレスト本体を持ち上げる機構を利用して回転クッションを突出させるため、簡易な構造で、バックレストの起倒に連動してレッグレストの変位を実現し、さらに患者の下腿後面を支持する位置の最前端まで回転クッションを突出させることができる。
【0014】
請求項3に係る発明の歯科治療椅子によれば、請求項2に係る発明の歯科治療椅子が奏する効果に加えて、弾性部材が、レッグレスト本体と回転クッションとを連結していることにより、レッグレストが垂下状態にあっても、弾性部材が回転クッションをレッグレスト本体に近い最後端位置に引っ張って保持するため、回転クッションが自重によりレッグレスト本体から突出したままとなるのを防ぐことができる。
【0015】
請求項4に係る発明の歯科治療椅子によれば、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に係る発明の歯科治療椅子が奏する効果に加えて、回転クッションが、内部にヒーターを有していることにより、ヒーターが患者の下腿後面を温めるため、回転クッションが突出している際には患者が水平診療の姿勢で身体の動きが制限されているときに特に冷えやすい足先付近の血行を促進し、回転クッションが伸縮する際、すなわち、回転クッションがレッグレスト本体に対して前方または後方に進退自在となる際には患者の下腿後面に接触しながら自転して、患者の下腿後面の血行をさらに促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施例である歯科治療椅子を搭載した歯科治療ユニットの斜視図。
【
図2】
図1に示す歯科治療椅子を搭載した歯科治療ユニットの正面図。
【
図4】
図2のIV-IVから見た歯科治療椅子の断面概要図。
【
図5】
図3のV-Vから見た歯科治療椅子の断面図。
【
図6】
図2のVI-VIから見た歯科治療椅子の断面概要図。
【
図7】本発明の一実施例である歯科治療椅子の傾倒時の断面図。
【
図8A】本発明の一実施例である歯科治療椅子の傾倒動作を説明するための断面図。
【
図8B】
図8Aに続く歯科治療椅子の傾倒動作を説明するための断面図。
【
図8C】
図8Bに続く歯科治療椅子の傾倒動作を説明するための断面図。
【
図8D】
図8Cに続く歯科治療椅子の傾倒動作を説明するための断面図。
【
図8E】
図8Dに続く歯科治療椅子の傾倒動作を説明するための断面図。
【
図9A】回転クッションのレッグレスト本体からの伸長動作を説明するための拡大断面図。
【
図9B】回転クッションのレッグレスト本体への退避動作を説明するための拡大断面図。
【
図10】従来例に係る歯科治療椅子を搭載した歯科治療ユニットの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、患者の臀部を支持するコンターシートと、このコンターシートの後端に連結されて患者の背中を支持する起倒自在なバックレストと、コンターシートの前端に連結されて前記患者の下腿後面を支持するレッグレストとを備えた歯科治療椅子であって、レッグレストが、レッグレスト本体と、このレッグレスト本体の前端に設けられた回転自在な回転クッションとからなり、回転クッションが、レッグレスト本体に対して伸縮自在に設けられ、レッグレストが伸縮する際に引っ掛かって患者の着衣を乱すのを防ぐものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであってもよい。
【0018】
例えば、本発明における歯科治療椅子の基本構成については、患者の臀部を支持するコンターシートと、このコンターシートの後端に連結されて患者の背中を支持する起倒自在なバックレストと、コンターシートの前端に連結されて患者の下腿後面を支持するレッグレストとを備えているが、これら以外に、バックレストに連結され患者の頭部を支持するヘッドレストを備えたもの、ワークテーブルが付設されたもの、あるいは、移動自在な車輪を有して床面に載置した基台に一体に組み付けられるものなどであっても何ら差し支えない。
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の歯科治療椅子に係る好適な実施例について説明する。
なお、以下の説明において、異なる図面においても同じ符号を付した構成は同様のものであるとして、その説明を省略する場合がある。
【0020】
<1.歯科治療椅子の概要>
図1は、本発明の一実施例である歯科治療椅子を搭載した歯科治療ユニットの斜視図であり、
図2は、
図1に示す歯科治療椅子を搭載した歯科治療ユニットの正面図であり、
図3は、
図1に示す歯科治療椅子の側面図であり、
図4は、
図2のIV-IVから見た歯科治療椅子の断面概要図である。
まず、
図1-4に基づいて、本発明の一実施例である歯科治療椅子を搭載した歯科治療ユニットについて説明する。
【0021】
図1-3に示すように、歯科治療ユニット10は、スピットン11と、無影灯12と、本発明の一実施例である歯科治療椅子100とから構成される。
ここで、スピットン11は、歯科治療椅子100の側方に配置され、無影灯12は、スピットン11に隣接して配置されている。
なお、図示は省略するが、歯科治療ユニット10は、本発明の一実施例である歯科治療椅子100の周辺に、種々の歯科用インスツルメントをホルダが保持するワークテーブルやフットスイッチ等を備えている。
【0022】
また、本実施例である歯科治療椅子100は、床面Gに載置される支持台110と、この支持台110に載置され患者の臀部を支持するコンターシート120と、このコンターシート120の後端に連結され患者の背中を支持するバックレスト130と、このバックレスト130に連結され患者の頭部を支持するヘッドレスト140と、コンターシート120の左端および右端にそれぞれ連結され患者の肘を支持するアームレスト150と、コンターシート120の前端に連結され患者の下腿後面を支持するレッグレスト160と、バックレスト130の倒動作に連動してレッグレスト160を変位させつつ回転クッション162を突出させる連動機構170とを備えている。
【0023】
本図では、コンターシート120の、バックレスト130に連結する後端からレッグレスト160に連結する前端に向かって、歯科治療椅子100に着座する患者の向きを基準に左右方向を定める。
また、レッグレスト160の前後方向は、垂下状態にあっては、前方が下方、後方が上方に相当する上下方向に対応する。
同様に、レッグレスト160の上下方向は、垂下状態にあっては、上方が前方、下方が後方に相当する前後方向に対応する。
【0024】
<1.1.支持台>
支持台110は、
図4に示すように、基台111と、昇降部112と、コンターシート取付ブラケット113とから構成される。
【0025】
基台111は、床面Gに直接載置されて、床下の給排水管と、および、外部の圧縮空気源と接続されている。
【0026】
昇降部112は、基台111に設置されて、コンターシート120を上下方向に昇降自在とする。
【0027】
コンターシート取付ブラケット113は、昇降部112に設けられて、コンターシート120を支持する。
【0028】
<1.2.その他の構成部材>
本実施例である歯科治療椅子100は、上記の支持台110以外に、
図1-3に示すように以下の構成部材を有する。なお、連動機構170については後述し、以下では述べない。
【0029】
コンターシート120は、患者の臀部を支持するシートであり、床面Gに対して略水平な状態にある。
【0030】
バックレスト130は、コンターシート120に対する起立角度が調整自在になっている。
【0031】
ヘッドレスト140は、バックレスト130に対する上下方向の位置が調整自在になっていると共にバックレスト130に対する起立角度が調整自在になっている。
【0032】
アームレスト150は、コンターシート120に設けて患者の肘を載置する。
【0033】
レッグレスト160は、コンターシート120に対する角度が調整自在になっている。
【0034】
<2.コンターシートの詳細>
図5は、
図3のV-Vから見た歯科治療椅子の断面図であり、
図6は、
図2のVI-VIから見た歯科治療椅子の断面概要図であり、
図7は、本発明の一実施例である歯科治療椅子の傾倒時の断面図である。なお、
図5および
図7では、昇降部の内部機構とコンターシート取付ブラケットを、他の機構の説明のため、省略している。また、
図7は、
図5と同様に、
図3のV-Vから見た歯科治療椅子の断面図であるが、歯科治療椅子が傾倒時、すなわち水平診療時のポジションである点が
図5と異なる。
次に、
図4-7に基づいて、本実施例である歯科治療椅子の構成要素であるコンターシートの詳細について説明する。
【0035】
図5に示すように、コンターシート120は、その支持構造であるベース板121と、このベース板121の後方側に設けられたコンターシート側アーム122とを備えている。
【0036】
<2.1.ベース板>
ベース板121は、
図4に示すように、支持台110のコンターシート取付ブラケット113により支持されている。
【0037】
<2.2.コンターシート側アーム>
コンターシート側アーム122は、
図5および
図7に示すように、左右方向に一定の間隔を空けて一対に設けられている。
また、一対のコンターシート側アーム122は、
図4および
図6に示すように、ベース板121の後方側に、バックレスト130の側に向かって円弧状に形成されている。
【0038】
また、
図4および
図6に示すように、一対のコンターシート側アーム122には、それぞれ、ピン穴122aが形成されている。
このピン穴122aは、円弧状の長穴で、一対のコンターシート側アーム122に沿って一定の領域に亘って開口している。
【0039】
そして、
図5-7に示すように、一対のコンターシート側アーム122には、それぞれ、一対のコンターシート側アーム122が互いに対向する側(内側)から、その反対側(外側)に向かって、一定の深さで、ガイド溝122bが形成されている。
このガイド溝122bは、ピン穴122aよりも広範囲に亘って円弧状に、ピン穴122aの全域が含まれるように形成されている。
【0040】
<3.バックレストの詳細>
次に、
図4-7に基づいて、本実施例である歯科治療椅子の構成要素であるバックレストの詳細について説明する。
【0041】
図6に示すように、バックレスト130は、バックレスト側アーム131と、回動軸132とを備えている。
【0042】
<3.1.バックレスト側アーム>
バックレスト側アーム131は、
図5および
図6に示すように、コンターシート側アーム122と連結するアーム本体131aと、このアーム本体131aを覆うカバーであるアームカバー131bとから構成される。
【0043】
アーム本体131aは、
図5および
図7に示すように、左右方向に一定の間隔を空けて一対に設けられている。
【0044】
この一対のアーム本体131aは、
図4および
図6に示すように、コンターシート120の後方に向かって、円弧状に形成されている。
また、一対のアーム本体131aは、それぞれ、
図5および
図7に示すように、一対のコンターシート側アーム122に対して内側から接している。
【0045】
アーム本体131aは、固定ピン131a1と、起倒用カムフォロア131a2とを備えている。
固定ピン131a1は、
図5に示すように、一対のアーム本体131aのそれぞれに一対に設けられ、一対のコンターシート側アーム122に形成されたピン穴122a(
図4参照)を内側から外側に向けて貫通している。
【0046】
起倒用カムフォロア131a2は、
図5および
図7に示すように、一対のアーム本体131aのそれぞれに複数一対に設けられている。
この一対の起倒用カムフォロア131a2が、一対のコンターシート側アーム122に内側から形成されたガイド溝122bに沿って、バックレスト130が起状態のときに位置するガイド溝122bの後方側から、前方側に向けて回転しながら移動すると、一対のアーム本体131aは、一対のコンターシート側アーム122の内側を案内されて前方に移動する。
このようにして、バックレスト130は、コンターシート120に対して傾倒する。
【0047】
アームカバー131bは、
図6に示すように、アーム本体131aを覆うカバーであり、アーム本体131aおよび後述する連動機構170の一部を保護するとともに、バックレスト130の外観を向上させるために設けられている。
このアームカバー131bは、
図5に示すように、一対のコンターシート側アーム122のそれぞれに形成されたピン穴122aを貫通する固定ピン131a1の先端で固定されている。
【0048】
<3.2.回動軸>
回動軸132は、
図6に示すように、一対のアーム本体131aの前方側(つまりバックレスト130が起状態のとき、一対のアーム本体131aの下方側)に設けられ、
図5に示すように、一対のアーム本体131aを左右方向に互いに連結している。
【0049】
<4.レッグレストの詳細>
次に、
図5-7に基づいて、本実施例である歯科治療椅子の構成要素であるレッグレストの詳細について説明する。
【0050】
図7に示すように、レッグレスト160は、レッグレスト本体161と、回転クッション162と、弾性部材163とから構成される。
【0051】
<4.1.レッグレスト本体>
そして、
図7に示すように、レッグレスト本体161は、カバー161aと、支持フレーム161bと、スライドレール161cと、スライド固定板161dと、リニアレール161eと、スライダー161fとを備えている。
【0052】
カバー161aは、
図5および
図6に示すように、レッグレスト本体161の裏面を覆うカバーであり、以下に詳述するレッグレスト本体161内部の各構成部材を保護するとともに、レッグレスト160の外観を向上させるために設けられている。
なお、上記の各構成部材の説明のため、
図7では、カバー161aの表示を省略している。
【0053】
支持フレーム161bは、
図7に示すように、レッグレスト本体161の支持構造であり、様々な構成部材が取り付けられている。
【0054】
スライドレール161cは、
図7に示すように、前後方向に伸縮自在に、支持フレーム161bの左右方向の両端に一対に設けられている。
【0055】
スライド固定板161dは、
図7に示すように、一対のスライドレール161cの間に設けられ、一対のスライドレール161cの伸縮に応じて前後方向に移動自在に構成されている。
【0056】
リニアレール161eは、
図7に示すように、一対のスライドレール161cの間に位置し、支持フレーム161bの前後方向に延伸して設けられている。
【0057】
スライダー161fは、
図7に示すように、リニアレール161eに沿って移動自在に、かつ、スライド固定板161dと接触可能に設けられている。
【0058】
<4.2.回転クッション>
回転クッション162は、
図7に示すように、一対のスライドレール161cに左右で支持されて、レッグレスト本体161に対して伸縮自在に、すなわち、進退自在に、レッグレスト本体161の前端に回転自在に設けられている。
この回転クッション162は、内部に図示しないヒーターを有し、患者の下腿後面を温める構成とすることもできる。
【0059】
<4.3.弾性部材>
弾性部材163は、引張ばね等により構成され、
図7に示すように、支持フレーム161bの後方側とスライド固定板161dの後端との間に一対に設けられている。
つまり、一対の弾性部材163は、一対のスライドレール161cの間に設けられたスライド固定板161dを、レッグレスト本体161の支持フレーム161bの側に引っ張りつつ、レッグレスト本体161と回転クッション162とを連結している。
【0060】
これにより、レッグレスト160が垂下状態であっても、一対のスライドレール161cに左右で支持されている回転クッション162は、レッグレスト本体161の前端に保持される。
【0061】
<5.連動機構>
次に、
図5および
図6に基づいて、本実施例である歯科治療椅子の構成要素である連動機構の詳細について説明する。
【0062】
バックレスト130の倒動作に連動してレッグレスト160を変位させつつ回転クッション162を突出させる連動機構170は、
図5に示すように、連結棒171と、支持用カムフォロア172と、油圧シリンダー173とから構成される。
【0063】
<5.1.連結棒>
連結棒171は、
図5に示すように、コンターシート120の前後方向に延伸して設けられている。
【0064】
また、連結棒171の一端は、バックレスト130の回動軸132と互いに回動自在に連結している。
そして、連結棒171の他端は、レッグレスト160のレッグレスト本体161に設けられたスライダー161fと互いに回動自在に連結している。
【0065】
<5.2.支持用カムフォロア>
支持用カムフォロア172は、
図5および
図6に示すように、コンターシート120のベース板121から垂下して設けられている。
この支持用カムフォロア172は、上下方向に一定の間隔を空けて軸支された一組のベアリングを備える。
【0066】
支持用カムフォロア172の一組のベアリングは、連結棒171を上下から挟んで、前後方向に移動可能に支持している。
【0067】
<5.3.油圧シリンダー>
油圧シリンダー173は、
図5に示すように、ロッド173aと、連結部材173bとを備えている。
【0068】
油圧シリンダー173は、
図5に示すように、連結棒171と並行して設けられ、前方側の一端でコンターシート120のベース板121と互いに回動自在に連結している。
【0069】
また、油圧シリンダー173は、
図5に示すように、後方に突出して前後方向に伸縮自在なロッド173aを有する。
このロッド134aは、油圧シリンダー173にロッド173a側から圧油が導入されると、
図5に示す矢印の方向に移動して縮むように構成されている。
【0070】
そして、油圧シリンダー173は、
図5に示すように、ロッド173aの後方側の一端に締結された連結部材173bを有する。
この連結部材173bは、バックレスト130の回動軸132と互いに回動自在に連結している。
【0071】
<5.4.連動機構を含む各構成部材の動き>
上記の構成により、油圧シリンダー173のロッド173aが縮むと、このロッド173aに締結された連結部材173bが、この連結部材173bと互いに回動自在に連結している回動軸132を前方に移動させる。
【0072】
そして、回動軸132が、この回動軸132と一端で互いに回動自在に連結している連結棒171を押し込んで前方に移動させると、この連結棒171と他端で互いに回動自在に連結しているスライダー161fが、このスライダー161fを備えたリニアレール161eごと、レッグレスト本体161を垂下状態からコンターシート120に対して略水平な状態に押し上げる。
【0073】
さらに、スライダー161fが、リニアレール161eに沿って前進し、スライド固定板161dと接触して押し込むと、スライド固定板161dの移動に応じて一対のスライドレール161cが延伸し、弾性部材(引張ばね)163の弾性力に抗して、レッグレスト本体161から回転クッション162を突出させる。
以下、上記内容と一部重複するが、歯科治療椅子100の傾倒動作と併せて、各構成部材の動きについて更に説明する。
【0074】
<6.歯科治療椅子の傾倒動作と各構成部材の動きの関係>
図8Aは、本発明の一実施例である歯科治療椅子の傾倒動作を説明するための断面図であり、
図8Bは、
図8Aに続く歯科治療椅子の傾倒動作を説明するための断面図であり、
図8Cは、
図8Bに続く歯科治療椅子の傾倒動作を説明するための断面図であり、
図8Dは、
図8Cに続く歯科治療椅子の傾倒動作を説明するための断面図であり、
図8Eは、
図8Dに続く歯科治療椅子の傾倒動作を説明するための断面図である。
図8A-8Eは、歯科治療椅子の傾倒動作を説明するために、
図2のVI-VIから見た歯科治療椅子の断面概要図である
図6を簡略化して各動作を時系列に表示したものであり、支持台、アームレスト、レッグレストのカバーといった傾倒動作と直接関係のない構成部材は省略している。
【0075】
【0076】
<6.1.バックレストが起状態のとき>
まず、
図8Aは、患者が導入退出する際の歯科治療椅子100の状態を示し、すなわち
図6が示す歯科治療椅子100と同様に、
図8Aに示す歯科治療椅子100においては、コンターシート120に対して、バックレスト130が起状態にあり、レッグレスト160が垂下状態にある。
また、回転クッション162は、レッグレスト本体161の前端に保持されている。
【0077】
<6.2.バックレストが倒動作を開始した直後>
次に、
図8Bは、
図8Aに続く、バックレスト130が倒動作を開始した直後の歯科治療椅子100の状態を示している。
【0078】
歯科治療椅子100が、
図8Aに示す状態から
図8Bに示す状態に移行するに際しては、まず、
図5に示す油圧シリンダー173のロッド173a側に圧油が導入されて、ロッド173aが矢印の方向に縮み始める。
そして、ロッド173aの後方側の一端と締結された連結部材173bは、ロッド173aの縮む方向、すなわち
図5に示す矢印の方向に向かって回動軸132を移動させる。
【0079】
回動軸132が上記のように移動すると、一対のバックレスト側アーム131に設けられた起倒用カムフォロア131a2は、
図5-7に示すように、一対のコンターシート側アーム122に形成されたガイド溝122bに沿って回転しながら案内されて前方に移動する。
そして、回動軸132は、一対のバックレスト側アーム131を左右方向に互いに連結するものであるので、起倒用カムフォロア131a2が円弧状に形成されたガイド溝122bに沿って移動すると、
図8Bに示すように、バックレスト130が倒動作を開始する。
【0080】
また、回動軸132が、上述の如く、縮み始めたロッド173aに連結部材173bを介して引っ張られて前方に移動すると、
図8Bに示すように、回動軸132と後方側の一端で互いに回動自在に連結している連結棒171は、支持用カムフォロア172によって支持されながら、前方側の他端で回動自在に連結しているスライダー161fを前方に押し込む。
そして、スライダー161fは、
図8Bに示すように、レッグレスト本体161の支持フレーム161bに設けられたリニアレール161eに沿って、支持フレーム161bの後方側に移動しつつ、リニアレール161eごと支持フレーム161bを備えたレッグレスト本体161を押し上げる。
【0081】
但し、
図8Bに示すように、スライダー161fは、リニアレール161eに沿って、支持フレーム161bの後方側に移動しているため、スライド固定板161dと接触して押し込むことはない。
【0082】
よって、スライド固定板161dの移動に応じて一対のスライドレール161cが延伸し、レッグレスト本体161から回転クッション162を突出させることは未だなく、回転クッション162は、レッグレスト本体161の前端に保持されたままである。
【0083】
<6.3.バックレストが起状態から倒状態に移行するとき>
次に、
図8Cは、
図8Bに続く、バックレスト130が倒動作を開始して以降の歯科治療椅子100の状態を示している。
【0084】
まず、
図5に示す油圧シリンダー173のロッド173aが矢印の方向に更に縮み、連結部材173bを介して、回動軸132が更に前方に移動することで、
図8Cに示すようにバックレスト130の倒動作が進行する。
【0085】
また、回動軸132と後方側の一端で連結している連結棒171が、前方側の一端で連結しているスライダー161fを前方向に更に押し込むことで、レッグレスト本体161を更に押し上げる。
【0086】
ここで、スライダー161fは、リニアレール161eに沿って、支持フレーム161bの後方側に移動した、
図8Bに示す状態のままであり、レッグレスト本体161から回転クッション162を突出させることは未だなく、回転クッション162は、レッグレスト本体161の前端に保持されたままである。
【0087】
<6.4.バックレストが倒状態に至る直前>
次に、
図8Dは、
図8Cに続く、バックレスト130が倒動作を開始して以降の歯科治療椅子100の状態を示している。
【0088】
図5に示す油圧シリンダー173のロッド173aが矢印の方向に更に縮むことで、
図8Dに示すようにバックレスト130の倒動作が更に進行する。
【0089】
また、連結棒171が、スライダー161fを前方に更に押し込むことで、レッグレスト本体161を更に押し上げる。
【0090】
そして、レッグレスト本体161が、コンターシート120に対して略水平な状態になるまで持ち上がると、今度は、スライダー161fが、リニアレール161eに沿って、支持フレーム161bの前方側に移動し始める。
但し、スライダー161fは、
図8Aに示す状態と同程度にリニアレール161eに沿って前方に移動したのみであり、スライド固定板161dと接触して押し込むには至っていないことから、回転クッション162は、レッグレスト本体161の前端に保持されたままである。
【0091】
<6.5.バックレストが倒状態に至ったとき>
最後に、
図8Eは、
図8Dに続く、倒動作を開始して以降の歯科治療椅子100の状態を示し、この状態で、患者Pは、歯科治療椅子100に横たわり、仰臥位の水平診療姿勢に置かれる。
【0092】
図5に示す油圧シリンダー173のロッド173aが矢印の方向に更に縮むことで、
図8Eに示すようにバックレスト130の倒動作が更に進行し、バックレスト130は、コンターシート120に対して略水平な倒状態になっている。
【0093】
また、連結棒171が、スライダー161fを前方向に更に押し込むことで、レッグレスト本体161を更に押し上げ、レッグレスト本体161は、コンターシート120に対して僅かに反り上がった、略水平な状態になっている。
【0094】
スライダー161fは、リニアレール161eに沿って、支持フレーム161bの前方側に更に移動し、スライド固定板161dと接触して押し込むことで、スライド固定板161dの移動に応じて一対のスライドレール161cが延伸し、レッグレスト本体161から回転クッション162を突出させる。
【0095】
そして、患者Pが実際に歯科治療椅子100に着座して、着座姿勢から仰臥位の水平診療姿勢に移行した際には、回転クッション162が、患者Pの下腿後面に接触した状態で、レッグレスト本体161から回転しながら突出して、レッグレスト本体161と共に患者Pの下腿後面を支持する。
【0096】
<7.レッグレスト本体に対する回転クッションの進退動作>
図9Aは、回転クッションのレッグレスト本体からの伸長動作を説明するための拡大断面図であり、
図9Bは、回転クッションのレッグレスト本体への退避動作を説明するための拡大断面図である。
図9Aは、バックレスト130が起状態に至ったときを示す
図8Eに基づいている。また、
図9Bは、バックレスト130が倒状態に至る直前の状態を示す
図8Dに基づいているが、ここでは、バックレスト130が倒状態から起状態に戻る過程を示すものとする。
【0097】
<7.1.回転クッションのレッグレスト本体からの伸長動作>
まず、回転クッション162は、
図9Aに白抜き矢印で示すように、レッグレスト本体161の前端の退避位置から、さらに前方に進んだ伸長位置に移動する。
回転クッション162は、退避位置から伸長位置に移動すると、レッグレスト本体161から距離Lを空けて、レッグレスト本体161と二点で、患者Pの下腿後面を支持する。
【0098】
また、回転クッション162は、退避位置から伸長位置に移動する際に、患者Pの下腿後面を、
図9Aに示す方向から見て反時計回りに回転しながら支持する。
【0099】
そのため、患者Pの着衣の一部が、患者Pの下腿後面とレッグレスト本体161との間に挟まれて固定されている状態で、回転クッション162が、退避位置から伸長位置に移動しても、患者Pの着衣の残りの一部を引き摺ることがない。
【0100】
<7.2.回転クッションのレッグレスト本体への退避動作>
次に、回転クッション162は、
図9Bに白抜き矢印で示すように、伸長位置から退避位置に移動する。
回転クッション162は、伸長位置から退避位置に移動すると、レッグレスト本体161からの距離Lがほぼゼロとなり、レッグレスト本体161と一体的に、患者Pの下腿後面を支持する。
【0101】
また、回転クッション162は、伸長位置から退避位置に移動する際に、患者Pの下腿後面を、
図9Bに示す方向から見て時計回りに回転しながら支持する。
【0102】
そのため、患者Pの着衣の一部が、患者Pの下腿後面とレッグレスト本体161との間に挟まれて固定されている状態で、回転クッション162が、伸長位置から退避位置に移動しても、患者Pの着衣の残りの一部を引き摺ることがない。
【0103】
このようにして得られた本実施例の歯科治療椅子100は、レッグレスト160が、レッグレスト本体161と、このレッグレスト本体161の前端に設けられた回転自在な回転クッション162とからなり、この回転クッション162が、レッグレスト本体161に対して伸縮自在に、すなわち、伸長位置と退避位置の間を進退自在に設けられていることにより、レッグレスト160が伸縮、すなわち、進退する際に引っ掛かって患者Pの着衣を乱すのを防ぐことができるなど、その効果は甚大である。
【0104】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
本開示の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0105】
10 … 歯科治療ユニット
11 … スピットン
12 … 無影灯
100 … 歯科治療椅子
110 … 支持台
111 … 基台
112 … 昇降部
113 … コンターシート取付ブラケット
120 … コンターシート
121 … ベース板
122 … コンターシート側アーム
122a … ピン穴
122b … ガイド溝
130 … バックレスト
131 … バックレスト側アーム
131a … アーム本体
131a1 … 固定ピン
131a2 … 起倒用カムフォロア
131b … アームカバー
132 … 回動軸
140 … ヘッドレスト
150 … アームレスト
160 … レッグレスト
161 … レッグレスト本体
161a … カバー
161b … 支持フレーム
161c … スライドレール
161d … スライド固定板
161e … リニアレール
161f … スライダー
162 … 回転クッション
163 … 弾性部材(引張ばね)
170 … 連動機構
171 … 連結棒
172 … 支持用カムフォロア
173 … 油圧シリンダー
173a … ロッド
173b … 連結部材
200 … 歯科治療椅子
260 … レッグレスト
280 … フットレスト
G … 床面
L … 距離
P … 患者