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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114942
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】車両用ドアハンドル装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 77/04 20140101AFI20230810BHJP
   E05B 85/18 20140101ALI20230810BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
E05B77/04
E05B85/18 D
B60J5/04 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017560
(22)【出願日】2022-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳留 尚希
(72)【発明者】
【氏名】金子 健一郎
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250JJ32
2E250LL01
2E250PP12
(57)【要約】
【課題】簡易な構造で車両ドアの意図しない開放を防止すること。
【解決手段】車両用ドアハンドル装置は、車両ドアの内方側に格納され、車両ドアの外方側からドア開口を通じて操作可能であり、基準位置から所定解除位置まで操作された場合に車両ドアのラッチを解除するラッチ解除ハンドルと、開口を開閉可能であり、閉位置から開位置までドア内方へ移動する板状のパネルカバーと、を備える。ラッチ解除ハンドルの基準位置と所定解除位置との間の移動軌跡と、パネルカバーの閉位置と開位置との間の移動軌跡と、は互いに重なり合う範囲を有する。ラッチ解除ハンドルの基準位置から所定解除位置への移動方向と、パネルカバーの閉位置から開位置への移動方向と、は相対する方向である。ラッチ解除ハンドルは、パネルカバーが閉位置近傍の上記の重なり合う範囲に位置する状態では、基準位置側から所定解除位置に至る前にパネルカバーとの干渉により位置規制される。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ドアの内方側に格納され、前記車両ドアの外方側から前記車両ドアに設けられた開口を通じて操作可能であり、基準位置から所定解除位置まで操作された場合に前記車両ドアのラッチを解除するラッチ解除ハンドルと、
前記開口を開閉可能であり、前記開口を閉じる閉位置から前記開口を開放する開位置まで前記車両ドアの内方へ移動する板状のパネルカバーと、
を備え、
前記ラッチ解除ハンドルの前記基準位置と前記所定解除位置との間の移動軌跡と、前記パネルカバーの前記閉位置と前記開位置との間の移動軌跡と、は互いに重なり合う範囲を有し、
前記ラッチ解除ハンドルの前記基準位置から前記所定解除位置への移動方向と、前記パネルカバーの前記閉位置から前記開位置への移動方向と、は相対する方向であり、
前記ラッチ解除ハンドルは、前記パネルカバーが前記閉位置近傍の前記重なり合う範囲に位置する状態では、前記基準位置側から前記所定解除位置に至る前に前記パネルカバーとの干渉により位置規制される、車両用ドアハンドル装置。
【請求項2】
前記パネルカバーは、前記開口を閉塞可能な閉塞部と、前記ラッチ解除ハンドルに干渉し得る干渉部と、を有し、
前記干渉部は、前記パネルカバーの外縁部から前記車両ドアの内方へ突出している、請求項1に記載された車両用ドアハンドル装置。
【請求項3】
前記パネルカバーを前記閉位置と前記開位置との間で移動させる駆動装置を備え、
前記駆動装置は、回転駆動される回転駆動軸と、一端部が前記回転駆動軸に接続されかつ他端部が前記パネルカバーに接続されるアームと、を有する、請求項1又は2に記載された車両用ドアハンドル装置。
【請求項4】
前記アームは、前記パネルカバーが前記閉位置に位置する状態で重心が前記回転駆動軸の軸心のドア内外方向位置よりも前記車両ドアの内方側に位置するように形成されている、請求項3に記載された車両用ドアハンドル装置。
【請求項5】
前記駆動装置は、前記回転駆動軸に連結され、前記回転駆動軸を回転駆動する電動アクチュエータを有する、請求項3又は4に記載された車両用ドアハンドル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される車両用ドアハンドル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、操作ハンドルが操作者により所定解除位置まで操作された場合に車両ドアのラッチを解除する車両用ドアハンドル装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1記載の車両用ドアハンドル装置は、慣性ストッパを備えている。慣性ストッパは、車両に側方衝突が生じた際に負荷される力により待機位置から規制位置まで回転する部材である。慣性ストッパは、車両ドアに固定されたハンドルベースに設けられている。慣性ストッパは、規制位置まで回転すると、操作ハンドルが所定解除位置に至る前に操作ハンドルの作動を規制する。このため、車両側突時の慣性力が生じても、慣性ストッパとの当接により操作ハンドルが所定解除位置に至るまで移動するのを防止することができ、車両ドアが意図せずに開放されるのを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-125612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の車両ドア側に設けられた慣性ストッパは、車両ドアの意図しない開放を防止するための専用部品であるので、上記の車両用ドアハンドル装置では、コストアップが招来すると共に、構造が複雑になってしまう。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、簡易な構造で車両ドアの意図しない開放を防止することが可能な車両用ドアハンドル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、車両ドアの内方側に格納され、前記車両ドアの外方側から前記車両ドアに設けられた開口を通じて操作可能であり、基準位置から所定解除位置まで操作された場合に前記車両ドアのラッチを解除するラッチ解除ハンドルと、前記開口を開閉可能であり、前記開口を閉じる閉位置から前記開口を開放する開位置まで前記車両ドアの内方へ移動する板状のパネルカバーと、を備え、前記ラッチ解除ハンドルの前記基準位置と前記所定解除位置との間の移動軌跡と、前記パネルカバーの前記閉位置と前記開位置との間の移動軌跡と、は互いに重なり合う範囲を有し、前記ラッチ解除ハンドルの前記基準位置から前記所定解除位置への移動方向と、前記パネルカバーの前記閉位置から前記開位置への移動方向と、は相対する方向であり、前記ラッチ解除ハンドルは、前記パネルカバーが前記閉位置近傍の前記重なり合う範囲に位置する状態では、前記基準位置側から前記所定解除位置に至る前に前記パネルカバーとの干渉により位置規制される、車両用ドアハンドル装置である。
【0007】
この構成によれば、簡易な構造で車両ドアの意図しない開放を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用ドアハンドル装置をドア外方側から見た正面図である。
図2】実施形態の車両用ドアハンドル装置をドア内方側から見た斜視図である。
図3】実施形態の車両用ドアハンドル装置の開閉状態を表したドア外方側からの斜視図である。
図4】実施形態の車両用ドアハンドル装置(但し、ベース部材のアッパ部材が取り外されている状態)をドア内方側から見た斜視図である。
図5図1に示すV-V断面図である。
図6】実施形態の車両用ドアハンドル装置の要部をドア内方側から見た斜視図である。
図7】実施形態の車両用ドアハンドル装置の要部をドア外方側から見た斜視図である。
図8】実施形態の車両用ドアハンドル装置(但し、パネルカバーが開位置に位置する状態)を所定箇所で切断した際の断面斜視図である。
図9】実施形態の車両用ドアハンドル装置(但し、パネルカバー(尚、一部の部品が取り外されている)が開位置に位置する状態)を所定箇所で切断した際の断面斜視図である。
図10】実施形態の車両用ドアハンドル装置の通常開閉動作を説明するための断面図である。
図11】実施形態の車両用ドアハンドル装置の通常開閉動作を説明するためのドア内方側からの斜視図である。
図12】実施形態の車両用ドアハンドル装置における車両ドアにドア内方への衝撃荷重が入力された際のドア閉位置状態でのラッチ解除ハンドルの位置規制を説明するための断面図である。
図13】実施形態の車両用ドアハンドル装置における車両ドアにドア外方への衝撃荷重が入力された際のドア閉位置状態でのラッチ解除ハンドルの位置規制を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る車両用ドアハンドル装置の具体的な実施形態について説明する。
本施形態の車両用ドアハンドル装置1は、車両に設けられた車両ドア2のラッチを制御する装置である。車両用ドアハンドル装置1は、車両ドア2に設けられたラッチ解除ハンドルに対して所定操作が行われることにより車両ドア2のラッチを解除する。
【0010】
車両ドア2は、車体に対して開閉可能なドアである。車両ドア2は、車両乗員が乗降する乗降ドア、荷物が出し入れされるリアドア、エンジンルームなどを開閉するボンネット、又は給油口や充電口を開閉するドア蓋などである。車両ドア2は、車体に対して閉じられた状態で車両用ドアハンドル装置1によりラッチされると共に、所定操作によりラッチ解除されて車体に対して開放されることが可能である。尚、車両ドア2は、ラッチされている状態で、ロック装置(図示せず)により施錠(ロック)されると共に、所定のロック解除操作により解錠(アンロック)されることが可能であってよい。また、各図においては、車両ドア2の一部が示されている。
【0011】
尚、車両ドア2は、特に開閉可能なウィンドウを内蔵する乗降ドアであるときは、車内側のインナパネル(図示せず)と、車外側のアウタパネル2aと、インナパネルとアウタパネル2aとに挟まれる隙間空間2bと、を有するものであってよい。この隙間空間2bには、車両用ドアハンドル装置1が収容される。
【0012】
以下、車両ドア2は、アウタパネル2a及び隙間空間2bを有する乗降ドアであるものとし、車体左右の側部に設けられているものとする。そして、便宜上、車体に取り付けられた車両ドア2が広がる面に直交する方向を内外方向と、その車両ドア2が広がる面のうち水平方向に延びる方向を前後方向と、それぞれ称す。また、基準となる部品や部位よりも車両ドア2の内方側をドア内方側と、外方側をドア外方側と、前方側をドア前方側と、後方側をドア後方側と、それぞれ称す。
【0013】
車両用ドアハンドル装置1は、車両に設けられた車両ドア2ごとに設けられている。尚、車両用ドアハンドル装置1は、例えば車両ドア2が車両における複数の乗降ドアに適用されるときは、各車両ドア2に対して共通の形状乃至構造を有するものであってもよいし、また、車体左右の車両ドア2に対して対称の形状乃至構造を有するものであってもよい。
【0014】
車両用ドアハンドル装置1は、図1図5に示す如く、ベース部材10と、ラッチ解除ハンドル20と、パネルカバー30と、駆動装置40と、を備えている。
【0015】
ベース部材10は、車両用ドアハンドル装置1を構成するラッチ解除ハンドル20及びパネルカバー30を収容すると共に、駆動装置40の一部を収容する部材である。ベース部材10は、インナパネルとアウタパネル2aとの間の隙間空間2bに対応した大きさに形成されており、その隙間空間2bに収容されている。ベース部材10は、アウタパネル2aの裏面側に取り付け固定される。この取付固定は、例えばボルト締結や溶接などにより行われる。ベース部材10は、直方体形状に形成されており、ロア部材11と、アッパ部材12と、を有している。
【0016】
ロア部材11は、ラッチ解除ハンドル20及びパネルカバー30を収容する収容空間13を形成する収容ボックスである。ロア部材11は、図5に示す如く、底壁11aと、底壁11aの四辺から立設する四つの側壁11bと、を有している。底壁11a及び各側壁11bはそれぞれ、矩形状に形成されている。底壁11aと四つの側壁11bとは、収容空間13を形成している。収容空間13は、ラッチ解除ハンドル20及びパネルカバー30がそれぞれ所定の軌跡で移動できるのに必要十分な大きさ(容量)を有している。
【0017】
底壁11aは、アウタパネル2aの裏面に対向している。四つの側壁11bのうち二つの側壁11bは、それぞれ上下方向に向いており、互いに対向している。また、残り二つの側壁11bは、それぞれ前後方向に向いており、互いに対向している。ロア部材11における収容空間13を挟んで底壁11aと対向するドア内方側の部分は、開口している。
【0018】
アッパ部材12は、ロア部材11のドア内方側の開口を閉塞するカバー部材である。アッパ部材12は、略板状に形成されている。アッパ部材12は、ロア部材11に取り付け固定されている。アッパ部材12とロア部材11との取付固定は、例えばボルト締結や溶接などにより行われる。アッパ部材12は、板状のカバー板部12aと、カバー板部12aのドア外方側の面からドア外方へ突出する側壁12b(図5及び図7参照)と、を有している。側壁12bは、一対設けられており、カバー板部12aの前後方向に離れた箇所に互いに平行になるように配置されている。
【0019】
車両ドア2(具体的には、アウタパネル2a)は、隙間空間2bを車両ドア2のドア外方側に露出させる開口2dを有している。ベース部材10は、車両ドア2の開口2d近傍に配置される。ロア部材11の底壁11aは、ベース部材10の収容空間13をベース部材10の外方側に露出させる開口11cを有している。ロア部材11の開口11cは、アウタパネル2aの開口2dと略同じ大きさに形成されている。開口2d,11cの大きさは、操作者の手を挿入できる大きさである。ロア部材11ひいてはベース部材10は、底壁11aの開口11cがアウタパネル2aの開口2dに連通するようにアウタパネル2aの裏面側に取り付け固定される。ベース部材10の収容空間13は、車両ドア2のドア外方側に露出されることが可能である。
【0020】
ラッチ解除ハンドル20は、車両ドア2が閉じられているときに車両ドア2のラッチを解除する入力操作(以下、ラッチ解除操作と称す。)が行われる操作部である。ラッチ解除ハンドル20は、車両外側の操作者によりラッチ解除操作されることが可能である。ラッチ解除ハンドル20のラッチ解除操作が行われると、車両ドア2の車体に対するラッチが解除されて車両ドア2が開放される。
【0021】
ラッチ解除ハンドル20は、ベース部材10の収容空間13に収容されており、具体的には、収容空間13内において開口11cよりも上方に配置されている。ラッチ解除ハンドル20は、ハンドル状に形成されており、前後方向に延びている。ラッチ解除ハンドル20は、ベース部材10(具体的には、ロア部材11の前後二つの側壁11b側)に回動可能に支持されている。ラッチ解除ハンドル20は、水平な軸を中心にして回動することが可能である。ラッチ解除ハンドル20は、ロア部材11の側壁11bとアッパ部材12の側壁12bとに挟まれて支持されている。ラッチ解除ハンドル20は、ハンドル本体部21と、一対の回動軸22と、を有している。
【0022】
ハンドル本体部21は、操作者の手により触れられて回動操作(ラッチ解除操作)される操作部位である。ハンドル本体部21は、板状に形成されている。ハンドル本体部21は、前後方向に延びている。回動軸22は、回動軸22の自転によりハンドル本体部21をロア部材11に対して回動させる軸部位である。回動軸22は、円柱状又は円筒状に形成されている。回動軸22は、ハンドル本体部21の前後方向側の端部に一体に設けられている。一対の回動軸22のうちドア前方側の回動軸22は、前方向に突出している。ドア後方側の回動軸22は、後方向に突出している。一対の回動軸22は、軸心の延びる方向が互いに一致するように配置されている。
【0023】
ロア部材11における前後二つの側壁11bにはそれぞれ、半円状の支持孔11dが設けられている。また、アッパ部材12における前後二つの側壁12bにはそれぞれ、半円状の支持孔12dが設けられている。ロア部材11の支持孔11dとアッパ部材12の支持孔12dとは、アッパ部材12がロア部材11に取り付け固定された状態で、回動軸22を支持する一つの円形支持孔を形成する。前後二つの回動軸22はそれぞれ、ロア部材11の支持孔11dとアッパ部材12の支持孔12dとに嵌った状態でベース部材10に回動可能に支持される。
【0024】
ラッチ解除ハンドル20は、図5に示す如く、ハンドル本体部21が回動軸22から径方向外方へ延びるように構成されている。ラッチ解除ハンドル20は、例えばトーションスプリングなどの付勢部材によりハンドル本体部21がラッチ解除位置からラッチ位置に向けて回動するように付勢されている。尚、この付勢方向は、回動軸22を中心にして図5における右回り方向である。ラッチ解除ハンドル20は、付勢部材の付勢力に抗してラッチ位置からラッチ解除位置に向けて回動操作(ラッチ解除操作)されることが可能である。尚、この回動操作方向は、回動軸22を中心にして図5における左回り方向である。
【0025】
ラッチ解除ハンドル20は、ハンドル本体部21の径方向先端部が操作者によりラッチ位置から回動軸22を中心にしてドア外方側(尚、車外の操作者にとって手前側)に引かれることによりラッチ解除操作される。
【0026】
回動軸22は、収容空間13内のドア外方側に配置されている。一対の回動軸22のうちの一方は、ドアラッチ装置(図示せず)に接続されている。上記のラッチ位置は、ドアラッチ装置により車両ドア2のラッチが実行される位置のことである。上記のラッチ解除位置は、ドアラッチ装置により車両ドア2のラッチが解除される位置のことである。
【0027】
ハンドル本体部21は、ラッチ位置では、回動軸22から斜め下方(具体的には、ドア内方かつ下方)に延びる(図5に示す状態)。ハンドル本体部21がラッチ位置で回動軸22の軸心を通る鉛直線に対してなす角度は、0°を超えかつ90°未満であって、操作者が手を開口2d,11cを通して収容空間13に差し込んでハンドル本体部21をラッチ解除操作し易くなるように例えば45°に設定されている。
【0028】
また、ハンドル本体部21は、ラッチ解除位置では、回動軸22から略下方に延びる。ハンドル本体部21がラッチ解除位置で回動軸22の軸心を通る鉛直線に対してなす角度は、ラッチ位置でなす角度に比べて小さくなるように設定されている。ラッチ解除ハンドル20がラッチ位置からラッチ解除位置に向けて移動する過程においては、ラッチ解除位置の直前で、ハンドル本体部21の径方向先端部がドア外方へ移動する。
【0029】
パネルカバー30は、ベース部材10の開口11c及び車両ドア2の開口2dを開閉させる部材である。パネルカバー30は、全体的に開口2d,11cよりも大きくなるように板状に形成されている。パネルカバー30は、収容空間13に収容されており、開口11cと略同じ高さ位置に配置されている。パネルカバー30は、開口2d,11cを閉塞することが可能であると共に、収容空間13内において内外方向に直線移動することが可能である。パネルカバー30は、開口2d,11cを閉じる閉位置と開口2d,11cを開放する開位置との間で直線移動する。具体的には、パネルカバー30は、閉位置から開位置に向けて移動する際は、ドア内方へ直線移動すると共に、開位置から閉位置に向けて移動する際は、ドア外方へ直線移動する(図3(A)~(C)参照)。
【0030】
収容空間13内において、ラッチ解除ハンドル20がラッチ位置とラッチ解除位置との間で移動する移動軌跡と、パネルカバー30が閉位置と開位置との間で移動する移動軌跡と、は互いに重なり合う範囲を有している。このため、ラッチ解除ハンドル20とパネルカバー30とは互いに干渉する事態が生じ得る。
【0031】
上記の互いに重なり合う範囲は、ラッチ解除ハンドル20の移動軌跡の一部に限られると共に、パネルカバー30の移動軌跡の一部に限られる。具体的には、ラッチ解除ハンドル20のラッチ解除位置を含むラッチ解除位置近傍の移動領域とパネルカバー30の閉位置を含む閉位置近傍の移動領域とは、互いに重なり合う。すなわち、ラッチ解除ハンドル20がラッチ解除位置近傍に位置しかつパネルカバー30が閉位置近傍に位置するときは、ラッチ解除ハンドル20とパネルカバー30とが互いに干渉し得る。一方、パネルカバー30の開位置を含む開位置近傍の移動領域は、ラッチ解除ハンドル20の移動領域とは重なり合っていない。すなわち、パネルカバー30が開位置近傍に位置するときは、ラッチ解除ハンドル20とパネルカバー30との干渉が生じない。尚、ラッチ解除ハンドル20とパネルカバー30とを互いに干渉させるタイミングは後述する。
【0032】
ラッチ解除ハンドル20がラッチ位置に位置している状態では、パネルカバー30が閉位置と開位置との間で移動する過程で、ラッチ解除ハンドル20とパネルカバー30とが干渉することは無い。また、パネルカバー30が開位置に位置している状態では、ラッチ解除ハンドル20がラッチ位置とラッチ解除位置との間で移動する過程で、ラッチ解除ハンドル20とパネルカバー30とが干渉することは無い。
【0033】
パネルカバー30は、閉塞部31と、フランジ部32と、干渉部33と、ガイド部34(図6図8参照)と、を有している。閉塞部31は、開口2d,11cを閉塞可能な部位である。閉塞部31は、パネルカバー30のドア外方側の部分に設けられている。閉塞部31は、開口2d,11cの大きさ(面積)に対応した大きさ(面積)と、アウタパネル2aにおける開口2d近傍の内外方向厚さと底壁11aにおける開口11c近傍の内外方向厚さとの加算値に対応した厚さと、を有している。パネルカバー30が閉位置に位置するとき、閉塞部31のドア外方側の表面は、アウタパネル2aの表面と面一になる。
【0034】
フランジ部32は、閉塞部31から外側に板状に広がる部位である。フランジ部32は、閉塞部31を囲うように全周に亘って設けられている。フランジ部32は、パネルカバー30の外縁部をなしている。フランジ部32は、ベース部材10のロア部材11の底壁11a及びアッパ部材12のカバー板部12aに対向して配置されている。フランジ部32は、パネルカバー30が閉位置に位置する状態でロア部材11の底壁11aに当接してパネルカバー30の位置規制を行う。尚、フランジ部32と底壁11aとの間には、収容空間13のシール性を確保するためのOリングなどのシール部材が配置されていてもよい。
【0035】
フランジ部32は、ベース部材10の収容空間13の下側領域に対応した大きさに形成されており、収容空間13の下側領域に配置されている。フランジ部32の外縁は、パネルカバー30の移動時にベース部材10の収容空間13内においてロア部材11の側壁11bの内面に沿って摺動するようにドア内外方向にガイドされる。尚、収容空間13の上側領域には、ラッチ解除ハンドル20及び後述の駆動装置40のアーム42が配置される。
【0036】
ガイド部34は、ドア内外方向に直線移動するパネルカバー30をガイドする部位である。ガイド部34は、フランジ部32の前方側端部及び後方側端部それぞれに設けられている。前方側のガイド部34は、フランジ部32の前方側端部から前方へ突出している。また、後方側のガイド部34は、フランジ部32の後方側端部から後方へ突出している。二つのガイド部34は、ロア部材11の前後二つの側壁11bそれぞれに設けられたガイド溝11fに嵌っており、パネルカバー30の移動時にそのガイド溝11fに沿ってドア内外方向にガイドされる。
【0037】
上記の閉塞部31は、フランジ部32からドア外方へ突出している。フランジ部32からの閉塞部31の突出長は、閉塞部31の厚さ分に相当し、アウタパネル2aにおける開口2d近傍の内外方向厚さと底壁11aにおける開口11c近傍の内外方向厚さとの加算値に略一致している。閉塞部31とフランジ部32とは、ドア外方側の表面に開口2d,11cに応じた段差が形成されるように構成されている。
【0038】
干渉部33は、ラッチ解除ハンドル20に干渉し得る部位である。干渉部33は、パネルカバー30(具体的には、フランジ部32)におけるラッチ解除ハンドル20の移動軌跡内を通過し得る箇所に設けられている。干渉部33は、パネルカバー30のフランジ部32からドア内方へ突出していると共に、フランジ部32に沿って前後方向に延在している。
【0039】
干渉部33は、パネルカバー30が閉位置を含む閉位置近傍の上記した重なり合う範囲に位置する状態で、ラッチ解除ハンドル20がラッチ位置からラッチ解除位置へ向けて移動する過程でそのラッチ解除位置に至る前にラッチ解除ハンドル20に干渉してそのラッチ解除ハンドル20を位置規制する。フランジ部32からの干渉部33の突出長は、干渉部33の上記機能を実現できる大きさに設定されている。干渉部33の前後方向の長さは、ラッチ解除ハンドル20の前後方向の長さに対応している。尚、干渉部33は、前後方向に隙間なく延在していてもよいが、前後方向に隙間を空けて点在していてもよい。
【0040】
パネルカバー30は、複数の部品により構成されている。すなわち、パネルカバー30は、閉塞部31が設けられた第一部品35と、フランジ部32及び干渉部33が設けられた第二部品36と、により構成されている。パネルカバー30は、第一部品35と第二部品36とが互いに組み付けられることにより形成される。
【0041】
第一部品35は、閉塞部31に対応して板状に形成されている。第二部品36は、フランジ部32に対応して板状に形成されている。第二部品36には、閉塞部31に対応した貫通孔36aが設けられている。第一部品35は、第二部品36における貫通孔36aの周縁部に接続される。これにより、パネルカバー30が形成される。
【0042】
閉塞部31のドア外方側の表面は、パネルカバー30が閉位置に位置する状態でドア外方に露出する。そこで、第一部品35は、ドア外方側の表面の外観意匠性や視認性確保のため、アウタパネル2aと同じ素材により形成された部品、或いは、光沢若しくは艶消しなどの表面処理が施された部品であってよい。
【0043】
駆動装置40は、パネルカバー30を閉位置と開位置との間で移動させる装置である。駆動装置40は、回転駆動軸41(図7参照)と、アーム42と、電動アクチュエータ48と、を有している。
【0044】
回転駆動軸41は、回転駆動される軸体である。回転駆動軸41は、円柱状又は円筒状に形成されている。回転駆動軸41は、外部からの動力により回転駆動される。具体的には、回転駆動軸41は、電動アクチュエータ48の発生する駆動力により回転駆動される。
【0045】
アーム42は、一端部が回転駆動軸41に接続されかつ他端部がパネルカバー30に接続される腕部である。アーム42は、回転駆動軸41とパネルカバー30とを接続させ、回転駆動軸41の回転運動をパネルカバー30に伝達する。アーム42は、一端部側を中心にして回動可能である。
【0046】
アーム42は、前後に配置される一対のアーム片部42aと、一対のアーム片部42aを接続させる連結バー42bと、を有している。各アーム片部42aそれぞれにおける回転駆動軸41が接続する一端部は、円柱状又は円筒状に形成された軸部43を有している。一対のアーム片部42aの軸部43は、互いに同軸上に配置されている。
【0047】
ロア部材11における前後二つの側壁11bにはそれぞれ、半円状の支持孔11eが設けられている。また、アッパ部材12における前後二つの側壁12bにはそれぞれ、半円状の支持孔12eが設けられている。ロア部材11の支持孔11eとアッパ部材12の支持孔12eとは、アッパ部材12がロア部材11に取り付け固定された状態で、アーム片部42aの軸部43を支持する一つの円形支持孔を形成する。前後二つのアーム片部42aの軸部43はそれぞれ、ロア部材11の支持孔11eとアッパ部材12の支持孔12eに嵌った状態でベース部材10に回動可能に支持される。
【0048】
回転駆動軸41は、前後二つのアーム片部42aのうち一方のアーム片部42aの一端部に直接に接続されている。この一方のアーム片部42aが回転駆動軸41の回転駆動により回動すると、その一方のアーム片部42aに連結バー42bを介して接続された他方のアーム片部42aが回動する。すなわち、一対のアーム片部42aは、互いに一体化されて回動する。連結バー42bは、前後方向に延在している。
【0049】
アーム42(具体的には、各アーム片部42a)は、一端部から他端部にかけて屈曲又は湾曲して形成されている。具体的には、各アーム片部42aは、L字状に形成されており、軸部43側から径方向外方へ直線状に延びる第一線部44と、第一線部44の径方向外端からアーム42の他端部へ直線状に延びる第二線部45と、を有している。第一線部44の延びる方向と第二線部45の延びる方向とがなす角度は、0°を超えかつ180°未満であって、例えば90°に設定されている。
【0050】
パネルカバー30が閉位置に位置する状態では、アーム42の第一線部44は、軸部43から斜め下方(具体的には、ドア内方かつ下方)に延びている。この際、アーム42の第二線部45は、第一線部44の径方向外端から斜め下方(具体的には、ドア外方かつ下方)に延びている。また、パネルカバー30が開位置に位置する状態では、アーム42の第一線部44は、軸部43から軸部43の軸心を通る鉛直線に対して90°をなす方向(すなわち、ドア内方の水平方向)に延びている。この際、アーム42の第二線部45は、第一線部44の径方向外端から鉛直下方に延びている。
【0051】
各アーム片部42aそれぞれにおけるパネルカバー30が接続する他端部は、円柱状又は円筒状に形成された軸部46を有している。一対のアーム片部42aの軸部46は、互いに同軸上に配置されている。
【0052】
パネルカバー30は、図8及び図9に示す如く、アーム42の軸部46を支持する支持部38を有している。支持部38は、アーム42の軸部46の外形に対応した大きさに形成された支持孔である。支持部38は、軸部46のドア内外方向への移動を規制すると共に軸部46の上下方向への移動を許容するように長孔状に形成されている。支持部38の上下方向の長さは、パネルカバー30が閉位置と開位置との間で移動する過程で回動するアーム42の他端部の高さ位置変化に対応している。支持部38は、パネルカバー30の第一部品35と第二部品36とが互いに組み付けられることにより形成される。
【0053】
アーム片部42aの軸部46は、パネルカバー30に対して上下方向に相対移動することができると共に、パネルカバー30に対して軸部46を中心にして相対回転することができる。アーム42は、回転駆動軸41の回転に伴って軸部43を中心にして回動し、この回動の際に軸部46がパネルカバー30の支持部38内で上下に移動しながら回転することでパネルカバー30全体をドア内外方向に直線移動させる。すなわち、アーム42(具体的には、軸部46)及びパネルカバー30(具体的には、支持部38)は、回転駆動軸41の回転運動をパネルカバー30の直線運動に変換する機能を有する。
【0054】
アーム42は、パネルカバー30が閉位置に位置する状態でアーム42の重心が回転駆動軸41の軸心のドア内外方向位置よりもドア内方側に位置するように形成されている。この構造では、パネルカバー30が閉位置に位置する状態で、アーム42がパネルカバー30をドア外方へ押圧する力がパネルカバー30に付与される。
【0055】
電動アクチュエータ48は、回転駆動軸41を回転駆動するアクチュエータである。電動アクチュエータ48は、電力供給により作動するモータである。電動アクチュエータ48は、正転方向及び逆転方向の双方に回転可能である。電動アクチュエータ48は、回転駆動軸41及びアーム42を介してパネルカバー30を開閉動作させる。電動アクチュエータ48は、隙間空間2bに収容されており、ベース部材10に隣接して配置されている。電動アクチュエータ48は、ベース部材10に取り付けられている。電動アクチュエータ48の出力軸は、直接に或いは減速機を介して回転駆動軸41に連結されている。
【0056】
電動アクチュエータ48の回転駆動は、マイクロコンピュータを主体に構成された制御部により制御される。この制御部は、車両ドア2の開放を要求する操作が行われた場合に、パネルカバー30が閉位置から開位置に向けて移動するように電動アクチュエータ48を作動させる。尚、この要求操作は、例えば、パネルカバー30がアウタパネル2aに対して押込み操作されたこと、パネルカバー30の外面に設けられたスイッチが押下されたこと、操作者の携帯する携帯機との間で無線通信による照合が完了したこと、その携帯機に設けられたロック解除スイッチやラッチ解除スイッチが押下されたこと、又はこれらの組み合わせ操作などである。
【0057】
以下、車両用ドアハンドル装置1の動作について説明する。
まず、車両用ドアハンドル装置1の通常動作について説明する。
車両ドア2が車体に対して閉じられているときは、ラッチ解除ハンドル20がラッチ位置に位置しておりかつパネルカバー30が閉位置に位置している(図10(A)及び図11(A))。このとき、パネルカバー30のドア外方側の表面は、アウタパネル2aの表面と面一である。このため、車両ドア2の外観意匠性を確保することができる。
【0058】
また、車両ドア2の開放を要求する操作が行われると、パネルカバー30が閉位置から開位置に向けて移動するように電動アクチュエータ48が作動される。この電動アクチュエータ48の作動が行われると、回転駆動軸41が回転駆動され、アーム42が軸部43を中心にして図10に示す右回り方向に回動する。この場合、パネルカバー30は、閉位置から開位置に向けてドア内方へ直線移動する(図10(B)及び図11(B))。そして、パネルカバー30が開位置に達すると(図10(C)及び図11(C))、電動アクチュエータ48の作動が停止される。
【0059】
パネルカバー30が開位置に位置する状態では、操作者は、手を車両ドア2のドア外方側から開口2d,11cを通じて収容空間13に挿入することが可能であり、収容空間13内のラッチ解除ハンドル20を付勢部材の付勢力に抗してラッチ解除位置までラッチ解除操作することが可能である。ラッチ解除ハンドル20がラッチ位置からラッチ解除操作されてラッチ解除位置に達すると、ドアラッチ装置により車両ドア2の車体に対するラッチが解除され、そのラッチ解除状態で更に、操作者によりラッチ解除ハンドル20と一緒に車両ドア2がドア外方側に引っ張り操作されることにより車両ドア2が開放される。
【0060】
ラッチ解除ハンドル20への操作者によるラッチ解除操作が解除されると、ラッチ解除ハンドル20が付勢部材の付勢力によりラッチ位置に向けて移動する。そして、ラッチ解除ハンドル20がラッチ位置に達すると、ドアラッチ装置により車両ドア2の車体に対するラッチの実行が可能になる。そして、かかるラッチ可能な状態で車両ドア2が開放側から閉じられることにより車両ドア2が閉じた状態でラッチされる。
【0061】
また、操作者の手が収容空間13から引き抜かれた後、所定条件が成立すると、パネルカバー30が開位置から閉位置に向けて移動するように電動アクチュエータ48が作動される。この電動アクチュエータ48の作動が行われると、回転駆動軸41が回転駆動され、アーム42が軸部43を中心にして図10に示す左回り方向に回動する。この場合、パネルカバー30は、開位置から閉位置に向けてドア外方へ直線移動する(図10(B)及び図11(B))。そして、パネルカバー30が閉位置に達すると(図10(A)及び図11(A))、電動アクチュエータ48の作動が停止される。
【0062】
このように、車両用ドアハンドル装置1においては、パネルカバー30がアウタパネル2aの開口2dを閉じる閉位置からその開口2dを開放する開位置に向けてドア内方へ移動した後、ラッチ解除ハンドル20がラッチ位置からラッチ解除位置までドア外方側に引かれてラッチ解除操作されることにより、車両ドア2のラッチを解除することができる。
【0063】
かかる構成においては、ラッチ解除ハンドル20を操作して車両ドア2のラッチを解除するうえで、パネルカバー30などの部品が車両ドア2のアウタパネル2aよりもドア外方側に突出することが無い。このため、車両ドア2のラッチ解除操作時に車両ドア2の外観意匠性が損なわれるのを抑えることができる。
【0064】
また、上記の構成においては、パネルカバー30の閉位置と開位置との間の移動が収容空間13内に限定されるので、駆動装置40などに故障が生じても、車両走行中などにパネルカバー30などの部品が車両ドア2のアウタパネル2aよりもドア外方側に突出したままになることが無い。このため、駆動装置40などの故障時に車両ドア2の外観意匠性が損なわれるのを抑えることができると共に、車両走行中の空力特性が低下するのを抑えることができる。
【0065】
車両用ドアハンドル装置1において、駆動装置40のアーム42は、収容空間13に配置されており、一端部から他端部にかけて屈曲又は湾曲して形成されている。アーム42は、L字状に形成されており、パネルカバー30が閉位置に位置するときは、第一線部44が軸部43から斜め下方(具体的には、ドア内方かつ下方)に延びると共に第二線部45が第一線部44の径方向外端から斜め下方(具体的には、ドア外方かつ下方)に延びる状態になり、パネルカバー30が開位置に位置するときは、第一線部44が軸部43からドア内方の水平方向に延びると共に第二線部45が第一線部44の径方向外端から鉛直下方に延びる状態になる。
【0066】
この構成においては、パネルカバー30が閉位置と開位置との間で移動するときのアーム42の内外方向の移動範囲が小さく抑えられると共に、アーム42の一端部(具体的には、回転駆動軸41が接続する軸部43)から他端部(具体的には、パネルカバー30が接続する軸部46)までの直線距離が大きく確保される。
【0067】
このため、アーム42の内外方向の移動範囲が比較的大きな構成に比べて、収容空間13内におけるアーム42の内外方向の可動スペースを大きくする必要が無いので、ベース部材10ひいては車両用ドアハンドル装置1の小型化を図ることができる。また、アーム42の一端部から他端部までの直線距離が比較的小さな構成に比べて、パネルカバー30が閉位置と開位置との間で移動するときのアーム42の回動角度範囲を小さく抑えつつ、パネルカバー30を内外方向に移動させるトルクを確保することができるので、パネルカバー30を閉位置と開位置との間で移動させるうえでの電動アクチュエータ48の電力消費量を抑えることができる。
【0068】
ところで、ラッチ解除ハンドル20は、付勢部材によりラッチ位置側に付勢されており、ラッチ解除操作が入力されない状態ではラッチ位置に維持される。また、ラッチ解除ハンドル20は、ラッチ位置では回動軸22から斜め下方に延びている。このため、この構造では、自車両ドア2側への車両側突などでドア内方へ衝撃荷重が入力されると、その自車両ドア2のラッチ解除ハンドル20が慣性力によりラッチ解除位置側へ回動し、その自車両ドア2が意図せずにラッチ解除位置に達してラッチ解除されるおそれがある。
【0069】
これに対して、車両用ドアハンドル装置1において、ラッチ解除ハンドル20がラッチ位置とラッチ解除位置との間で移動する移動軌跡と、パネルカバー30が閉位置と開位置との間で移動する移動軌跡と、は互いに重なり合う範囲を有している。具体的には、ラッチ解除ハンドル20のラッチ解除位置近傍の領域とパネルカバー30の閉位置近傍の領域とが互いに重なり合う。このため、ラッチ解除ハンドル20とパネルカバー30とは、互いに干渉し得る。
【0070】
また、ラッチ解除ハンドル20がラッチ位置からラッチ解除位置に向けて移動する移動方向と、パネルカバー30の閉位置から開位置に向けて移動する移動方向と、は相対する方向である。具体的には、ラッチ解除ハンドル20がラッチ位置からラッチ解除位置に向けて移動する過程でのラッチ解除位置の直前には、ラッチ解除ハンドル20の径方向先端部がドア外方へ移動し、一方、パネルカバー30が閉位置から開位置に向けて移動する際には、そのパネルカバー30がドア内方へ移動する。
【0071】
上記の構成においては、パネルカバー30が閉位置を含む閉位置近傍の重なり合う範囲に位置する状態で、車両ドア2のドア内方へ衝撃荷重が入力されると、ラッチ解除ハンドル20が慣性力によりラッチ解除位置側へ移動すると共に、パネルカバー30が慣性力により閉位置へ移動し又は閉位置に位置しつつベース部材10の底壁11a側に押し付けられる。
【0072】
そして、パネルカバー30が開位置に位置している(より詳細には、パネルカバー30が移動軌跡における上記の重なり合う範囲を外れている)状態では、ラッチ解除ハンドル20がラッチ位置とラッチ解除位置との間で移動するのにラッチ解除ハンドル20とパネルカバー30とが干渉することは無い。一方、図12に示す如く、パネルカバー30が閉位置近傍の上記重なり合う範囲に位置している状態では、ラッチ解除ハンドル20がラッチ位置からラッチ解除位置に至る前にパネルカバー30の干渉部33と干渉して位置規制される。このため、パネルカバー30が閉位置近傍に位置する状態では、ラッチ解除ハンドル20が移動してもラッチ解除位置に達することは回避される。
【0073】
従って、パネルカバー30の閉位置近傍では、車両ドア2のドア内方への衝撃荷重の入力による慣性力によりラッチ解除ハンドル20がラッチ解除位置側へ移動しても、また、車両ドア2のドア外方への衝撃荷重の入力後の反動によりラッチ解除ハンドル20がラッチ解除位置側へ移動しても、車両ドア2のラッチが解除されるのを回避することができる。このため、車両ドア2の意図しない開放を防止することができる。
【0074】
更に、車両ドア2の意図しない開放を防止するうえでは、ラッチ解除ハンドル20とパネルカバー30とを互いに干渉させれば十分であるので、慣性ストッパなどの別途専用の部品などを配置することは不要である。従って、簡易な構造で、車両ドア2の意図しない開放を防止することができる。
【0075】
また、パネルカバー30は、ラッチ解除ハンドル20に干渉し得る干渉部33を有している。干渉部33は、パネルカバー30のフランジ部32からドア内方へ突出している。そして、干渉部33の突出長は、干渉部33の機能を実現できる大きさ、具体的には、パネルカバー30が閉位置に位置する状態でラッチ解除ハンドル20がラッチ解除位置に達しない大きさに設定されている。このため、干渉部33が存在しない構造に比べて、パネルカバー30が閉位置に位置する状態でのラッチ解除ハンドル20とパネルカバー30との干渉タイミングを早めることができ、ラッチ解除ハンドル20がパネルカバー30との干渉により位置規制される位置からラッチ解除位置まで移動するのに必要な移動量を大きく確保することができるので、車両ドア2の意図しない開放の防止機能を向上させることができる。
【0076】
また、干渉部33は、フランジ部32に沿って前後方向に延在している。そして、干渉部33の前後方向の長さは、ラッチ解除ハンドル20の前後方向の長さに対応している。このため、ラッチ解除ハンドル20とパネルカバー30との干渉時にラッチ解除ハンドル20とパネルカバー30とを線接触又は面接触させることができるので、ラッチ解除ハンドル20とパネルカバー30との干渉に伴う衝撃を分散させることができる。
【0077】
尚、車体左右反対側の車両ドア2側への車両側突などで自車両ドア2のドア外方へ衝撃荷重が入力された場合は、図13に示す如く、一旦、その自車両ドア2がラッチ位置から更にラッチ解除位置から離れる方向へ回動するが、その後、反動でラッチ解除位置側へ回動してラッチ解除位置に達する可能性があり、その自車両ドア2のラッチが意図せずに解除されるおそれがある。
【0078】
車両用ドアハンドル装置1において、駆動装置40は、回転駆動軸41を回転駆動する電動アクチュエータ48を有する。この構成において、回転駆動軸41は、電動アクチュエータ48による回転駆動時以外は、その電動アクチュエータ48との摩擦抵抗により回転規制される。このため、上記した車両ドア2へのドア内方への側突時及びドア外方への側突時の何れでラッチ解除ハンドル20やパネルカバー30に慣性力が加わっても、パネルカバー30が閉位置から開位置に向けて移動するのを抑えることができる。
【0079】
従って、上記した何れの側突時でも、ラッチ解除ハンドル20とパネルカバー30との干渉が生じる前にパネルカバー30が移動軌跡における上記の重なり合う範囲から外れるのを防止することができ、ラッチ解除ハンドル20がラッチ位置からラッチ解除位置に至る前に確実に上記の干渉を生じさせてラッチ解除ハンドル20の位置規制を行うことができるので、車両ドア2の意図しない開放の防止機能を向上させることができる。
【0080】
また、車両用ドアハンドル装置1において、アーム42は、一端部から他端部にかけて屈曲又は湾曲して形成されており、具体的には、L字状に形成されている。そして、アーム42は、パネルカバー30が閉位置に位置する状態でアーム42の重心が回転駆動軸41の軸心のドア内外方向位置よりもドア内方側に位置するように形成されている。この構成においては、パネルカバー30が閉位置に位置する状態で、アーム42がパネルカバー30をドア外方へ押圧する力がパネルカバー30に付与されるので、パネルカバー30(具体的には、フランジ部32)がベース部材10の底壁11aに当接する状態が確保されることとなる。
【0081】
従って、パネルカバー30に上記の押圧力が作用しない構成に比べて、車両走行中の振動などでパネルカバー30が閉位置から開位置側へ移動し易くなるのを防止することができ、車両ドア2の意図しない開放の防止機能を向上させることができる。また、パネルカバー30を閉位置に維持させるための電動アクチュエータ48の通電量を小さく抑えることができ、パネルカバー30が閉位置に位置する際の電動アクチュエータ48の電力消費量を抑えることができる。
【0082】
尚、上記の実施形態においては、ラッチ位置が特許請求の範囲に記載した「基準位置」に、ラッチ解除位置が特許請求の範囲に記載した「所定解除位置」に、それぞれ相当している。
【0083】
ところで、上記の実施形態においては、パネルカバー30が閉位置と開位置との間で直線移動するものとし、アーム42の軸部46及びパネルカバー30の支持部38が回転駆動軸41の回転運動をパネルカバー30の直線運動に変換する機能を有するものとした。しかし、本発明は、これに限定されるものではなく、パネルカバー30が閉位置と開位置との間で旋回移動するものであってもよい。
【0084】
また、上記の実施形態においては、アーム42のアーム片部42aがL字状に形成されているものとした。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、アーム片部42aがC字状に形成されていてもよく、また、L字状に形成される一方で第一線部44と第二線部45とのなす角度が90°よりも大きく或いは小さくてもよい。
【0085】
また、上記の実施形態においては、駆動装置40のアーム42が二つのアーム片部42aを有するものとし、パネルカバー30が二箇所でアーム42に接続されるものとした。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、アーム42が一つ又は三つ以上のアーム片部42aを有し、パネルカバー30が一箇所又は三箇所以上でアーム42に接続されるものとしてもよい。
【0086】
尚、本発明は、上述した実施形態や変形形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0087】
1:車両用ドアハンドル装置、2:車両ドア、2a:アウタパネル、2d:開口、10:ベース部材、20:ラッチ解除ハンドル、30:パネルカバー、31:閉塞部、32:フランジ部、33:干渉部、40:駆動装置、41:回転駆動軸、42:アーム、48:電動アクチュエータ。
図1
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