(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114944
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】ひずみ解析システム、ひずみ解析方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/16 20060101AFI20230810BHJP
G16Y 20/10 20200101ALI20230810BHJP
G16Y 20/20 20200101ALI20230810BHJP
G16Y 40/20 20200101ALI20230810BHJP
G06Q 10/20 20230101ALI20230810BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20230810BHJP
E01D 22/00 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
G01B11/16 H
G16Y20/10
G16Y20/20
G16Y40/20
G06Q10/00 300
G01M99/00 Z
E01D22/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017562
(22)【出願日】2022-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 邦征
(72)【発明者】
【氏名】有馬 博人
(72)【発明者】
【氏名】北根 安雄
(72)【発明者】
【氏名】五井 良直
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 和男
(72)【発明者】
【氏名】河邊 大剛
(72)【発明者】
【氏名】織田 博孝
(72)【発明者】
【氏名】飯田 哲也
【テーマコード(参考)】
2D059
2F065
2G024
5L049
【Fターム(参考)】
2D059BB33
2D059GG39
2F065AA06
2F065BB27
2F065CC14
2F065DD06
2F065FF04
2F065JJ19
2F065JJ26
2F065QQ24
2F065QQ25
2F065QQ31
2G024AD34
2G024BA24
2G024CA04
2G024EA09
2G024FA15
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】ひずみ解析用の構造物の画像データを取得する際に、その構造物に関する情報を容易に取得する。
【解決手段】ひずみ解析システムSにおいて、撮像装置1は、二次元コード5が設けられた橋梁4を撮影して画像データを取得し、記録媒体3に記録する。ひずみ解析装置2は、記録媒体3に記録された画像データに含まれる二次元コード5の撮影画像情報に基づいて、橋梁4に関する付帯情報を取得するとともに、二次元コード5内に予め設定された複数の計測点を抽出し、抽出した各計測点間の距離を算出し、算出した各計測点間の距離に基づいて橋梁4のひずみ量を算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物を撮影して得られた前記構造物のひずみを解析するための画像データから、前記構造物に関する付帯情報を取得する付帯情報取得部と、
前記画像データに基づいて前記構造物のひずみ量を算出するひずみ量算出部と、を備え、
前記構造物には、二次元コードが設けられており、
前記付帯情報取得部は、前記画像データに含まれる前記二次元コードの撮影画像情報に基づいて前記付帯情報を取得し、
前記ひずみ量算出部は、
前記画像データに含まれる前記二次元コードの撮影画像情報から、前記二次元コード内に予め設定された複数の計測点を抽出し、
抽出した各計測点間の距離を算出し、
算出した各計測点間の距離に基づいて前記ひずみ量を算出する、ひずみ解析システム。
【請求項2】
請求項1に記載のひずみ解析システムにおいて、
前記付帯情報は、前記構造物に予め付された固有のIDと、前記構造物の種類、材質、設置場所または施工日と、前記構造物における前記二次元コードの位置と、の少なくとも一つの情報を含む、ひずみ解析システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のひずみ解析システムにおいて、
前記付帯情報に基づいて、複数の前記画像データからいずれかの画像データを選択する画像データ選択部を備え、
前記ひずみ量算出部は、前記画像データ選択部により選択された前記画像データを用いて前記構造物のひずみ量を算出する、ひずみ解析システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のひずみ解析システムにおいて、
前記ひずみ量算出部は、各計測点間の距離の経時変化を測定し、前記経時変化の測定結果に基づいて前記ひずみ量を算出する、ひずみ解析システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のひずみ解析システムにおいて、
前記ひずみ量に基づいて前記構造物の劣化状態を診断する劣化診断部を備える、ひずみ解析システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のひずみ解析システムにおいて、
前記画像データは、前記二次元コードの撮影画像情報と、所定間隔ごとに描かれた複数の目盛線を有するゲージの撮影画像情報と、を含み、
前記ひずみ量算出部は、前記ゲージの撮影画像情報に基づいて各計測点間の距離を算出する、ひずみ解析システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のひずみ解析システムにおいて、
前記画像データに含まれる前記二次元コードの撮影画像情報から前記二次元コードの変形量を求め、前記変形量に基づいて前記二次元コードを再現する二次元コード再現部を備え、
前記付帯情報取得部は、前記画像データに含まれる前記二次元コードの撮影画像情報と、前記二次元コード再現部により再現された前記二次元コードと、のいずれかに基づいて前記付帯情報を取得する、ひずみ解析システム。
【請求項8】
二次元コードが設けられた構造物を撮影して画像データを取得し、
前記画像データに含まれる前記二次元コードの撮影画像情報に基づいて、前記構造物に関する付帯情報を取得し、
前記画像データに含まれる前記二次元コードの撮影画像情報から、前記二次元コード内に予め設定された複数の計測点を抽出し、
抽出した各計測点間の距離を算出し、
算出した各計測点間の距離に基づいて前記構造物のひずみ量を算出する、ひずみ解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物のひずみを解析するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁などの構造物は、構造物自身の重量や構造物上を移動する自動車の荷重などにより静的または動的な力が作用することで、構造物を構成する部材に変形が生じることがある。そこで、構造物の変形量(ひずみ量)の時間的変化を計測することで、構造物の劣化状態を診断することが行われている。
【0003】
従来、構造物のひずみ量の計測は、構造物の計測対象位置の表面にひずみ計を設置し、そのひずみ計からの計測信号を検出することで行われるのが一般的であった。しかしながら、こうしたひずみ計を用いたひずみ量の計測方法では、構造物が晒される自然環境によってひずみ計と構造物表面との接着性能が経時劣化するため、例えば数か月程度の一定期間しか構造物へのひずみ計の設置状態を維持しておくことができず、その期間の経過後にはひずみ量を計測できないという問題がある。また、ひずみ量の計測時には、ひずみ計から出力される計測信号を伝送するケーブルや、計測信号を検出してその検出結果を収集するための計測装置、ひずみ計の電源などを相互に接続する必要があるため、準備に時間がかかるという問題もある。
【0004】
上記のような問題点を解決するため、例えば特許文献1の手法が提案されている。特許文献1には、荷重を加えた構造物を撮影装置により連続的に撮影し、得られた画像データをもとに画像計測技術を用いて構造物の変形挙動を計測して、ひずみ等の時系列の観測データを取得する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術を用いて、地理的に離れた様々な場所にそれぞれ設置された複数の構造物の劣化状態を診断する場合は、各構造物の撮影を先に実施して得られた画像データを構造物ごとに記録媒体に保存しておき、後でまとめて画像解析を行うことが効率的である。また、1つの構造物について複数箇所を撮影し、それぞれの撮影箇所での画像データを用いて劣化状態の診断を行う場合も同様である。しかしながら、こうした手順で構造物の劣化診断を行うと、撮影回数に応じて多数の画像データが保存されるため、各画像データがそれぞれどの構造物のどの箇所を撮影したものであるかを後で判別するのが困難となる恐れがある。このような不備は、撮影のたびに構造物とその撮影箇所に関する情報を画像データとともに記録しておくことで防止できるが、記録する情報を撮影者が手動で設定するには手間がかかるという問題がある。
【0007】
本発明は、上述の点を考慮してなされたものであり、その主な目的は、ひずみ解析用の構造物の画像データから、その構造物に関する情報を容易に取得することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるひずみ解析システムは、構造物を撮影して得られた前記構造物のひずみを解析するための画像データから、前記構造物に関する付帯情報を取得する付帯情報取得部と、前記画像データに基づいて前記構造物のひずみ量を算出するひずみ量算出部と、を備え、前記構造物には、二次元コードが設けられており、前記付帯情報取得部は、前記画像データに含まれる前記二次元コードの撮影画像情報に基づいて前記付帯情報を取得し、前記ひずみ量算出部は、前記画像データに含まれる前記二次元コードの撮影画像情報から、前記二次元コード内に予め設定された複数の計測点を抽出し、抽出した各計測点間の距離を算出し、算出した各計測点間の距離に基づいて前記ひずみ量を算出する。
本発明によるひずみ解析方法は、二次元コードが設けられた構造物を撮影して画像データを取得し、前記画像データに含まれる前記二次元コードの撮影画像情報に基づいて、前記構造物に関する付帯情報を取得し、前記画像データに含まれる前記二次元コードの撮影画像情報から、前記二次元コード内に予め設定された複数の計測点を抽出し、抽出した各計測点間の距離を算出し、算出した各計測点間の距離に基づいて前記構造物のひずみ量を算出する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ひずみ解析用の構造物の画像データから、その構造物に関する情報を容易に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るひずみ解析システムを含む測定系の概略を示す図。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る撮像装置の構成を示すブロック図。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係るひずみ解析装置の構成を示すブロック図。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係るひずみ解析装置において実行される付帯情報取得処理の流れを示すフローチャート。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係るひずみ解析装置において実行されるひずみ解析処理の流れを示すフローチャート。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係るひずみ解析システムを含む測定系の概略を示す図。
【
図8】本発明の第2の実施形態に係るひずみ解析装置において実行されるひずみ解析処理の流れを示すフローチャート。
【
図9】本発明の第3の実施形態に係るひずみ解析装置の構成を示すブロック図。
【
図10】本発明の第3の実施形態に係るひずみ解析装置において実行される二次元コード再現処理の流れを示すフローチャート。
【
図12】本発明の変形例に係る撮像装置の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施形態>
以下、
図1~
図6を参照して、本発明の第1の実施形態を説明する。
【0012】
(ひずみ解析システム)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るひずみ解析システムSを含む測定系の概略を示す図である。本実施形態のひずみ解析システムSは、構造物である橋梁4を解析対象としてひずみ解析を行うシステムであり、撮像装置1と、ひずみ解析装置2とを有する。
【0013】
撮像装置1は、橋梁4において所定の解析対象位置に設置されている二次元コード5を撮影し、画像データを取得する。取得した画像データは、撮像装置1に格納された記録媒体3に記録される。なお、撮像装置1が二次元コード5を撮影するときの撮影距離および画角は、撮影によって取得される画像データ内に含まれる二次元コード5の撮影画像情報がひずみ解析において必要な解像度となるように、それぞれ設定されることが好ましい。
【0014】
撮像装置1により画像データが記録された記録媒体3は、撮影終了後に撮像装置1から取り外され、ひずみ解析装置2に装着される。このときひずみ解析装置2は、二次元コード5により記述された橋梁4に関する様々な情報(以下、付帯情報と称する)を取得する。その後、ひずみ解析装置2は、記録媒体3に記録された画像データに基づいて橋梁4のひずみ量を算出し、橋梁4の劣化状態を診断する。なお、ひずみ解析装置2による処理の詳細については後述する。
【0015】
以上説明したように、本実施形態のひずみ解析システムSでは、撮像装置1とひずみ解析装置2の間における画像データの受け渡しが記録媒体3を介して行われる。すなわち、ひずみ解析システムSを用いて橋梁4の劣化診断を行う作業者は、画像データが記録された記録媒体3を撮像装置1からひずみ解析装置2へと移し替えることにより、橋梁4のひずみを解析するための画像データをひずみ解析装置2に入力することができる。したがって、ひずみ解析装置2を必ずしも橋梁4の設置場所付近に置く必要はなく、橋梁4の設置場所から離れた場所にひずみ解析装置2を設置してもよい。
【0016】
なお、
図1ではひずみ解析システムSとして、橋梁4を解析対象としてひずみ解析を行うシステムを説明したが、橋梁4以外の他の構造物を解析対象とすることも可能である。さらに、複数の構造物を解析対象とすることも可能である。すなわち、各種構造物に設置された二次元コードを撮像装置1により撮影し、得られた画像データを記録媒体3に記録するとともに、記録媒体3を撮像装置1からひずみ解析装置2へと移し替え、記録媒体3に記録された画像データをひずみ解析装置2に読み込ませることにより、橋梁4を含む様々な構造物のひずみ解析を行うひずみ解析システムSを実現できる。
【0017】
また、
図1では橋梁4において解析対象位置が1箇所のみ設定されており、この解析対象位置に設置された二次元コード5を撮像装置1により撮影する様子を示しているが、橋梁4において解析対象位置が複数箇所設けられてもよい。すなわち、本実施形態のひずみ解析システムSは、橋梁4の複数箇所にそれぞれ設置された二次元コード5を撮像装置1により撮影することで、各二次元コード5の設置位置を解析対象位置として、橋梁4のひずみ解析を行うことができる。
【0018】
(撮像装置の構成)
図2は、本発明の第1の実施形態に係る撮像装置1の構成を示すブロック図である。撮像装置1は、プロセッサ11と、メモリ12と、光学部13と、撮像部14と、記録媒体インタフェース部15と、操作部16と、を有する。
【0019】
プロセッサ11は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、PLD(Programmable Logic Device)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などを用いて構成される演算処理装置である。メモリ12は、プロセッサ11の主記憶装置として作用する。プロセッサ11は、メモリ12と協働して所定のプログラムを実行することで、撮像制御部111と、記録制御部112と、の各機能部を実現することができる。
【0020】
光学部13は、複数のレンズを組み合わせて構成され、撮像装置1が撮影を行う被写体の像を撮像部14上に結像する。撮像部14は、例えばCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を用いて構成され、光学部13により結像された被写体像を撮像して、被写体の撮影画像情報を含む画像データを生成する。記録媒体インタフェース部15は、撮像装置1内に記録媒体3を格納し、プロセッサ11の制御に応じて、記録媒体3へのデータの読み書きを行う。操作部16は、スイッチやタッチパネル等の各種操作部材を用いて構成され、撮像装置1を所持する作業者から入力される各種操作を受け付けて、その操作内容をプロセッサ11に出力する。
【0021】
撮像制御部111は、光学部13や撮像部14の動作を制御し、撮像装置1に撮影を実行させる。記録制御部112は、記録媒体インタフェース部15を介して、記録媒体3からのデータの読み出しや、記録媒体3へのデータの書き込みを制御する。この記録制御部112の制御により、画像データ31が記録媒体3に記録される。
【0022】
画像データ31は、撮像装置1が二次元コード5を含んだ橋梁4の部分を被写体として撮影することによって取得されたデータであり、二次元コード5の撮影画像情報を含む。なお、撮影日時や各種撮影条件等の情報を画像データ31に含めてもよい。例えば、画像データ31がビットマップやJPEG等の画像ファイルである場合は、当該画像ファイルの作成日時として、撮影日時の情報を画像データ31に含めて記録することができる。あるいは、Exif(Exchangeable image file format)情報等の周知のメタデータにより、撮影日時や各種撮影条件等の情報を画像データ31に含めることもできる。
【0023】
撮像装置1は、橋梁4について上記のようにして取得した画像データ31を、記録制御部112により記録媒体3に記録する。また、橋梁4以外の他の構造物についても、同様にして画像データ31を取得し、記録媒体3に記録する。
【0024】
(ひずみ解析装置の構成)
図3は、本発明の第1の実施形態に係るひずみ解析装置2の構成を示すブロック図である。ひずみ解析装置2は、プロセッサ21と、メモリ22と、ストレージ23と、記録媒体インタフェース部25と、入出力部26と、を有する。
【0025】
プロセッサ21は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、PLD(Programmable Logic Device)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などを用いて構成される演算処理装置である。メモリ22は、プロセッサ21の主記憶装置として作用する。プロセッサ21は、メモリ22と協働して所定のプログラムを実行することで、付帯情報取得部211と、画像データ選択部212と、ひずみ量算出部213と、劣化診断部214と、の各機能部を実現することができる。ストレージ23は、プロセッサ21の補助記憶装置として作用する。
【0026】
記録媒体インタフェース部25は、記録媒体3と接続され、プロセッサ21の制御に応じて、記録媒体3へのデータの読み書きを行う。入出力部26は、マウス、キーボード、タッチパネル等の各種操作部材や各種表示装置を用いて構成され、ひずみ解析装置2を用いて解析処理を行う作業者から入力される各種操作を受け付けてその操作内容をプロセッサ21に出力するとともに、解析処理結果を作業者に提示する。
【0027】
付帯情報取得部211は、記録媒体3に記録された画像データ31に含まれる二次元コード5を読み取ることで、橋梁4に関する付帯情報32を取得する。取得した付帯情報32は、画像データ31と互いに関連付けて記録媒体3に記録される。なお、付帯情報32を記録媒体3に記録せず、メモリ22に一時的に記録したり、ストレージ23に記録したりしてもよい。付帯情報32は、付帯情報取得部211が画像データ31に含まれる二次元コード5の撮影画像情報から二次元コード5を読み取ることで取得した橋梁4に関する情報であり、例えば橋梁4に予め付された固有のID、橋梁4が属する構造物の種類、橋梁4に用いられている部材の材質、橋梁4の設置場所や施工日、橋梁4における二次元コード5の位置などの情報を含む。なお、ひずみ解析装置2において画像データ31を用いて橋梁4の劣化状態を診断する際に、画像データ31がどの構造物を撮影したものであるかを判別するのに有用な情報であれば、上記以外の情報を二次元コード5に記載し、付帯情報32として用いてもよい。また、画像データ31から撮影日時や各種撮影条件等の情報を取得し、これらの情報を付帯情報32に含めてもよい。
【0028】
画像データ選択部212は、付帯情報取得部211により取得された付帯情報32に基づいて、記録媒体3に記録された画像データ31の選択を行う。撮像装置1によって橋梁4を含む様々な構造物の画像データ31が記録媒体3に記録されている場合、作業者が入出力部26を用いて解析対象とする構造物を指定すると、画像データ選択部212は、付帯情報32に基づいて、複数の画像データ31から当該構造物の画像データ31を選択する。これにより、作業者は解析対象とする構造物を指定するだけで、その構造物のひずみ解析において必要な画像データ31を記録媒体3内で容易に特定し、ひずみ解析装置2に読み込ませることができる。
【0029】
ひずみ量算出部213は、記録媒体3に記録された画像データ31に基づいて、構造物である橋梁4のひずみ量を算出する。なお、ひずみ量算出部213によるひずみ量算出方法の詳細については後述する。
【0030】
劣化診断部214は、ひずみ量算出部213により算出されたひずみ量に基づいて橋梁4の劣化状態を診断する。劣化診断部214による劣化状態の診断結果は、入出力部26により出力されて作業者に提示される。
【0031】
(二次元コードの例)
図4は、橋梁4に設置される二次元コード5の例を示す図である。二次元コード5は、所定間隔ごとに設けられた複数の要素点51を組み合わせて構成される。各要素点51は、例えば橋梁4を構成する鋼等の金属部材を彫金加工することにより、橋梁4と一体的に形成されている。なお、橋梁4と一体的に形成されていれば、彫金加工以外の手法、例えば塗装や印刷などにより二次元コード5を形成してもよい。また、撮像装置1により二次元コード5を容易に識別可能な状態で撮影できれば、例えば透明の保護フィルムを二次元コード5の上に貼り付けるなどの手法により、二次元コード5を保護してもよい。このようにすれば、橋梁4が自然環境に晒されることで二次元コード5が経時劣化して識別困難となるのを抑制することができる。
【0032】
図4に示した二次元コード5の配置パターンは、あくまで一例であり、これ以外にも任意の配置パターンとすることができる。ここで、二次元コード5の配置パターンは、付帯情報32を表す文字情報を所定の変換法則に従って変換することにより決定される。この変換法則は、周知の二次元コード規格で規定されたものを利用可能である。付帯情報取得部211では、二次元コード5の配置パターンを定める際に利用した二次元コード規格を用いて、二次元コード5の撮影画像情報から付帯情報32を読み取ることができる。
【0033】
(ひずみ解析装置の処理)
図5は、本発明の第1の実施形態に係るひずみ解析装置2において実行される付帯情報取得処理の流れを示すフローチャートである。ひずみ解析装置2のプロセッサ21は、画像データ31が記録された記録媒体3が記録媒体インタフェース部25に接続されると、
図5のフローチャートに示す付帯情報取得処理を実行する。
【0034】
ステップS11では、記録媒体3に記録されている画像データ31のいずれかを選択する。以下では、橋梁4において二次元コード5が設置されている部分を被写体として作業者が撮像装置1の撮影操作を行うことにより、橋梁4のひずみを解析するための画像データ31が取得されて記録媒体3に記録されるとともに、橋梁4の他の部分や他の構造物についても同様の画像データ31が記録媒体3に記録されており、これらの画像データ31の中で二次元コード5を撮影した画像データ31がステップS11において選択された場合を説明する。この場合、選択された画像データ31には前述のように、二次元コード5の撮影画像情報が含まれる。
【0035】
ステップS12では、付帯情報取得部211により、ステップS11で選択した画像データ31から二次元コード5を読み取る。ここでは、周知の二次元コード規格に従って、画像データ31に含まれる二次元コード5の撮影画像情報から二次元コード5に記載された文字情報を読み取ることにより、橋梁4に関する付帯情報32を取得する。
【0036】
ステップS13では、ステップS12で取得した付帯情報32を記録媒体3に、あるいはメモリ22やストレージ23に記録する。
【0037】
ステップS14では、記録媒体3に記録されているすべての画像データ31をステップS11において選択済みであるか否かを判定する。すべての画像データ31を選択済みであり、各画像データ31に対して付帯情報32を取得および記録済みである場合は、
図5のフローチャートに示す付帯情報取得処理を終了する。一方、未選択の画像データ31が存在する場合はステップS11に戻り、ステップS11において未選択の画像データ31のいずれかを選択した後、ステップS12とステップS13の処理を繰り返す。これにより、各画像データ31について付帯情報32を取得することができる。
【0038】
図6は、本発明の第1の実施形態に係るひずみ解析装置2において実行されるひずみ解析処理の流れを示すフローチャートである。本実施形態において、ひずみ解析装置2のプロセッサ21は、
図5のフローチャートで説明した付帯情報取得処理を実行済みの状態で、作業者が入出力部26を用いてひずみ解析処理の実行をひずみ解析装置2に指示すると、
図6のフローチャートに示すひずみ解析処理を実行する。
【0039】
ステップS21では、作業者の指示に応じて、記録媒体3に画像データ31が記録された様々な構造物の中から、解析対象とする構造物を選択する。以下では、解析対象とする構造物として、二次元コード5が設置された
図1の橋梁4が選択されたものとする。
【0040】
ステップS22では、画像データ選択部212により、記録媒体3に記録された様々な構造物の画像データ31の中から、ステップS21で選択された構造物に対応する画像データ31を選択する。ここでは、前述の付帯情報取得処理により各画像データ31に対して取得された付帯情報32をそれぞれ参照し、どの付帯情報32が解析対象に選択された構造物である橋梁4に関する情報を表しているかを特定する。このとき、橋梁4に関する情報を表す付帯情報32を画像データ選択部212が自動的に特定してもよいし、あるいは、各付帯情報32の内容を入出力部26において表示することで作業者に提示し、その中でどの付帯情報32が橋梁4に関する情報を表しているかを作業者が選択するようにしてもよい。そして、特定した付帯情報32に対応する画像データ31を、橋梁4に設置された二次元コード5の撮影画像情報を含む画像データ31として選択する。これにより、記録媒体3に記録された様々な構造物の画像データ31の中から、以降の処理対象とする画像データ31を選択することができる。
【0041】
ステップS23では、ひずみ量算出部213により、ステップS22で選択した画像データ31に含まれる二次元コード5の撮影画像情報から、橋梁4のひずみ計測に用いる計測点を抽出する。ここでは、二次元コード5を構成する複数の要素点51のうち、二次元コード5内で予め設定された位置にそれぞれ存在する所定数の要素点51を、橋梁4のひずみ計測用の計測点として抽出する。例えば、二次元コード5の四隅や中心に存在する要素点51などを、ひずみ計測用の計測点として抽出することができる。
【0042】
ステップS24では、ひずみ量算出部213により、ステップS23で抽出した各計測点間の距離を算出する。ここでは、例えば画像上の各計測点間の長さを求めて実空間上の距離に変換することで、各計測点間の距離を算出することができる。ただし、本実施形態では実空間上の距離の基準となる情報が撮影画像情報内に存在しないため、撮影距離が分からなければ各計測点間の距離の絶対値を正しく求めることができない。したがって、ここで算出される各計測点間の距離は、撮影位置を一定とした場合の相対的なものであり、実空間上の絶対的な距離を表すものではない。あるいは、画像上の各計測点間の長さを実空間上の距離に変換せずにそのまま用いて、以降の処理を行ってもよい。
【0043】
ステップS25では、ひずみ量算出部213により、ステップS24で算出した各計測点間の距離の経時変化を測定する。例えば、橋梁4を含む様々な構造物について、過去に所定期間ごとに算出した計測点間の距離をひずみ解析装置2において構造物ごと、計測点ごとに記憶しておき、その距離を時系列順に並べてそれぞれの差分を算出することにより、計測点間の距離の経時変化を測定する。このとき、過去の計測点間の距離を統計処理した上で経時変化を測定してもよい。あるいは、例えばデジタル画像相関(DIC)法などの周知の手法を用いてもよい。
【0044】
ステップS26では、劣化診断部214により、ステップS25で算出した計測点間の距離の経時変化に基づいて、二次元コード5のひずみ量、すなわち橋梁4において二次元コード5が設けられている部分のひずみ量を算出する。ここでは、例えば各計測点間の距離の変化量を元の変化前の距離で除することにより、ひずみ量を算出することができる。
【0045】
ステップS27では、劣化診断部214により、ステップS26で得られたひずみ量の算出結果に基づいて、橋梁4の劣化状態を診断する。ここでは例えば、ひずみ量の大きさが所定のしきい値以上である場合や、ひずみ量が急激に上昇している場合などに、橋梁4が劣化状態にあると診断することができる。このとき、構造物の種類に応じて劣化状態と判断するしきい値を変化させてもよい。これ以外にも、ひずみ量の算出結果を用いて任意の方法により、橋梁4を含む様々な構造物の劣化診断を行うことができる。
【0046】
ステップS28では、ステップS27で実施した劣化状態の診断結果を出力する。例えば、劣化状態の診断結果を示す所定の画面を入出力部26において表示することで作業者に提示したり、ひずみ解析装置2から外部へ送信したりすることで、劣化状態の診断結果を出力することができる。
【0047】
ステップS28の処理を実行したら、
図6のフローチャートに示すひずみ解析処理を終了する。
【0048】
以上説明した本発明の第1の実施形態によれば、以下のような作用効果を奏する。
【0049】
(1)ひずみ解析システムSは、構造物である橋梁4を撮影して得られた橋梁4のひずみを解析するための画像データ31から、橋梁4に関する付帯情報32を取得する付帯情報取得部211と、画像データ31に基づいて橋梁4のひずみ量を算出するひずみ量算出部213と、を備える。橋梁4には、二次元コード5が設けられており、付帯情報取得部211は、画像データ31に含まれる二次元コード5の撮影画像情報に基づいて付帯情報32を取得する(ステップS12)。ひずみ量算出部213は、画像データ31に含まれる二次元コード5の撮影画像情報から、二次元コード5内に予め設定された複数の計測点を抽出し(ステップS23)、抽出した各計測点間の距離を算出し(ステップS24)、算出した各計測点間の距離に基づいてひずみ量を算出する(ステップS25)。このようにしたので、ひずみ解析用の構造物の画像データ31から、その構造物に関する情報を付帯情報32として容易に取得することができる。
【0050】
(2)付帯情報32は、橋梁4に予め付された固有のIDと、橋梁4の種類、材質、設置場所または施工日と、橋梁4における二次元コード5の位置と、の少なくとも一つの情報を含むことができる。このようにすれば、画像データ31が橋梁4を含む様々な構造物のうちどの構造物を撮影したものであるかを、付帯情報32から容易に判別することができる。
【0051】
(3)ひずみ解析システムSは、付帯情報32に基づいて、記録媒体3に記録された複数の画像データ31からいずれかの画像データ31を選択する(ステップS22)画像データ選択部212を備える。ひずみ量算出部213は、画像データ選択部212により選択された画像データ31を用いて橋梁4のひずみ量を算出する。このようにしたので、橋梁4を含む様々な構造物の画像データ31が記録媒体3に記録されている場合であっても、ひずみ量の算出に用いる画像データ31を確実に選択することができる。
【0052】
(4)ひずみ量算出部213は、各計測点間の距離の経時変化を測定し(ステップS25)、この経時変化の測定結果に基づいてひずみ量を算出する(ステップS26)。このようにしたので、経時変化によって生じた橋梁4のひずみ量を正確に求めることができる。
【0053】
(5)ひずみ解析システムSは、ひずみ量に基づいて橋梁4の劣化状態を診断する(ステップS27)劣化診断部214を備える。このようにしたので、橋梁4のひずみ量から橋梁4が劣化状態にあるか否かを適切に診断することができる。
【0054】
<第2の実施形態>
以下、
図7~
図8を参照して、本発明の第2の実施形態を説明する。本実施形態では、二次元コード5を撮影する際に、二次元コード5に含まれる計測点間の距離の基準となるゲージを併せて撮影する例を説明する。
【0055】
図7は、本発明の第2の実施形態に係るひずみ解析システムSを含む測定系の概略を示す図である。本実施形態では、第1の実施形態と同様のひずみ解析システムSを用いて、構造物である橋梁4を解析対象としてひずみ解析を行う。
【0056】
本実施形態において、撮像装置1は、橋梁4において所定の解析対象位置に設置されている二次元コード5を撮影し、画像データ31を取得する。このとき作業者は、二次元コード5の付近に、所定間隔ごとに描かれた複数の目盛線を有するゲージ6を保持した状態で、撮像装置1を用いて二次元コード5の撮影を行う。これにより、記録媒体3には、二次元コード5の撮影画像情報とゲージ6の撮影画像情報とを含む画像データ31が記録される。
【0057】
上記の画像データ31が記録された記録媒体3は、第1の実施形態と同様に、撮影終了後に撮像装置1から取り外され、ひずみ解析装置2に装着される。ひずみ解析装置2は、記録媒体3に記録された画像データ31に基づいて橋梁4のひずみ量を算出し、橋梁4の劣化状態を診断する。
【0058】
前述の第1の実施形態のように、二次元コード5に含まれる複数の要素点51のいずれかをひずみ計測用の計測点として用いた場合、実空間上の距離の基準となる情報が撮影画像情報内に存在しないため、これだけでは各計測点間の距離の絶対値を決定することができない。そのため、第1の実施形態では、撮像装置1を一定の位置に固定した状態で所定の時間間隔ごとに複数回の撮影を行い、それぞれの撮影で得られた画像データ31同士の間で計測点間の距離の変化を測定することにより、ひずみ量を求める必要がある。このような事情から、第1の実施形態では、例えば10分程度の短時間で複数回の撮影を行い、その時間内における計測点間の距離の変化からひずみ量を算出する場合に適している。
【0059】
一方、第2の実施形態では、二次元コード5とともにゲージ6を撮影することにより、ゲージ6の各目盛線間での既知の長さを基準として、二次元コード5中の各計測点間の距離の絶対値が求められる。そのため、撮像装置1を一定の位置に固定した状態や、撮影のたびに撮像装置1を厳密に同じ位置に設置した状態で撮影を行わなくても、所定の時間間隔ごとの撮影で得られた各画像データ31同士の計測点間の絶対的な距離の変化から、ひずみ量を求めることができる。したがって、第2の実施形態は、撮像装置1を任意の位置に設置して、第1の実施形態よりも長時間、例えば1年間隔で撮影を行い、その時間内における計測点間の距離の変化からひずみ量を算出する場合に適している。
【0060】
図8は、本発明の第2の実施形態に係るひずみ解析装置2において実行されるひずみ解析処理の流れを示すフローチャートである。本実施形態において、ひずみ解析装置2のプロセッサ21は、第1の実施形態で説明した付帯情報取得処理を実行済みの状態で、作業者が入出力部26を用いてひずみ解析処理の実行をひずみ解析装置2に指示すると、
図8のフローチャートに示すひずみ解析処理を実行する。
【0061】
なお、
図8のフローチャートにおいて、第1の実施形態で説明した
図6のフローチャートと同じ処理を行う部分には、同一のステップ番号を付している。以下では、
図6のフローチャートと異なる部分について説明し、それ以外は説明を省略する。
【0062】
ステップS23の処理を実施した後、ステップS24Aでは、ひずみ量算出部213により、ステップS22で選択した画像データ31に含まれるゲージ6の撮影画像情報に基づいて、ステップS23で抽出した各計測点間の距離を算出する。ここでは、ゲージ6の各目盛線が既知の所定間隔ごとに描かれていることを利用して、各計測点間の距離を算出する。これにより、第1の実施形態と比較して、各計測点間の距離を正確に算出することが可能となる。
【0063】
ステップS24Aの処理を実施した後、ステップS25以降では、
図6のフローチャートと同様の処理を行う。
【0064】
以上説明した本発明の第2の実施形態によれば、画像データ31は、二次元コード5の撮影画像情報と、所定間隔ごとに描かれた複数の目盛線を有するゲージ6の撮影画像情報とを含み、ひずみ量算出部213は、ゲージ6の撮影画像情報に基づいて各計測点間の距離を算出する(ステップS24A)。このようにしたので、各計測点間の距離を正確に算出することができる。
【0065】
<第3の実施形態>
以下、
図9~
図10を参照して、本発明の第3の実施形態を説明する。本実施形態では、二次元コード5の変形により画像データ31から二次元コード5を読み取ることができず、そのため付帯情報32を取得できなかった場合に、二次元コード5の変形量を算出し、その算出結果に基づいて二次元コード5を再現し、付帯情報32を取得する例を説明する。なお、ここでいう二次元コード5を読み取ることができない場合とは、橋梁4のひずみによる二次元コード5の変形量が大きく、そのため二次元コード5を正常に読み取れない場合である。これ以外にも、例えば二次元コード5の部分的または全体的な汚れ、変色、消失等が原因で二次元コード5を正常に読み取れない場合もあるが、このような場合には本実施形態を適用しても二次元コード5を再現できず、したがって付帯情報32を取得することはできない。
【0066】
図9は、本発明の第3の実施形態に係るひずみ解析装置2Bの構成を示すブロック図である。本実施形態では、ひずみ解析システムSにおいて、ひずみ解析装置2に替えてひずみ解析装置2Bが備えられる。
【0067】
ひずみ解析装置2Bは、第1の実施形態で説明したひずみ解析装置2と同様の構成を有している。ひずみ解析装置2Bにおけるプロセッサ21は、メモリ22と協働して所定のプログラムを実行することで、前述の付帯情報取得部211、画像データ選択部212、ひずみ量算出部213および劣化診断部214に加えて、さらに二次元コード再現部215の各機能部を実現することができる。
【0068】
二次元コード再現部215は画像データ31に含まれる二次元コード5の撮影画像情報から二次元コード5の変形量を求め、この変形量に基づいて二次元コード5を再現する。なお、二次元コード再現部215による二次元コード5の再現方法の詳細については後述する。
【0069】
二次元コード再現部215により二次元コード5が再現されると、付帯情報取得部211は、その二次元コード5を読み取ることで付帯情報32を取得する。こうして再現後の二次元コード5から付帯情報取得部211により取得された付帯情報32は、他の付帯情報32と同様に、記録媒体インタフェース部25を介して、画像データ31と関連付けて記録媒体3に記録されるか、あるいはメモリ22やストレージ23に記録される。
【0070】
図10は、本発明の第3の実施形態に係るひずみ解析装置2Bにおいて実行される二次元コード再現処理の流れを示すフローチャートである。ひずみ解析装置2Bのプロセッサ21は、前述の付帯情報取得処理により関連する付帯情報32が取得できなかった画像データ31が存在する場合に、
図10のフローチャートに示す二次元コード再現処理を実行する。
【0071】
ステップS31では、二次元コード再現部215により、画像データ31に撮影画像情報が含まれている二次元コード5の変形量を算出する。ここでは、画像データ31から基準点を複数抽出し、この複数の基準点の位置関係に基づいて、二次元コード5の変形量を算出する。具体的には、まず、画像データ31において二次元コード5内で所定位置にあるいくつかの要素点51、例えば3~4個の要素点51を、二次元コード5の変形量を求めるための基準点として抽出する。例えば
図4の二次元コード5において、4つの角部(四隅)にそれぞれ位置する各要素点51や、右上、左下、右下の3つの角部にそれぞれ位置する特徴的な要素点51のパターン(以下、「特徴パターン」と称する)、すなわち、矩形状に並べて配列された各要素点51と、これらにより囲まれた9つの要素点51とからなる3つの特徴パターンのうち、特定の位置にある各要素点51などを、基準点として抽出する。これらの基準点は、二次元コード5が大幅に変形したとしても、通常は撮影画像内でその位置を特定できる。したがって、抽出した各基準点の配置と、予め記憶された元の変形前の二次元コード5における各基準点の配置とを比較し、その差分を求めることにより、二次元コード5の変形量を算出することができる。
【0072】
ステップS32では、二次元コード再現部215により、ステップS31で算出した変形量に基づいて、画像データ31の逆変換処理を行う。ここでは、画像データ31における二次元コード5の変形量が0となり、二次元コード5に含まれる各要素点51の位置が元の位置となるように、二次元コード5全体を変形させて各要素点51の位置を移動させる。具体的には、例えば上記のように4つの角部(四隅)の各要素点51を基準点として抽出した場合は、これらの配置が元の正方形となるように、また、3つの特徴パターン内の各要素点51を基準点として抽出した場合は、これらの配置が元の二等辺三角形となるように、読み取れなかった二次元コード5を含む撮影画像全体を変形させる。これにより、二次元コード5を元の状態へと再現することができる。
【0073】
ステップS33では、付帯情報取得部211により、ステップS32で逆変換処理を行った画像データ31から二次元コード5を読み取る。ここでは、周知の二次元コード規格に従って、逆変換処理後の画像データ31に含まれる二次元コード5の撮影画像情報から二次元コード5に記載された文字情報を読み取ることにより、橋梁4に関する付帯情報32を取得する。
【0074】
ステップS34では、ステップS31で二次元コード5の変形量を取得した画像データ31と関連付けて、ステップS33で取得した付帯情報32を記録媒体3に記録するか、あるいはメモリ22やストレージ23に記録する。
【0075】
ステップS34の処理を実行したら、
図10のフローチャートに示す二次元コード再現処理を終了する。
【0076】
以上説明した本発明の第3の実施形態によれば、ひずみ解析システムSは、画像データ31に含まれる二次元コード5の撮影画像情報から二次元コード5の変形量を求め(ステップS31)、この変形量に基づいて二次元コード5を再現する(ステップS32)二次元コード再現部215を備える。付帯情報取得部211は、画像データ31に含まれる二次元コード5の撮影画像情報と、二次元コード再現部215により再現された二次元コード5と、のいずれかに基づいて付帯情報32を取得する(ステップS12,S33)。このようにしたので、例えば二次元コード5が設けられた橋梁4のひずみ量が大きいなどの理由で、撮像装置1において画像データ31から二次元コード5を読み取ることができず、そのため付帯情報32を取得できなかった場合でも、ひずみ解析装置2Bおいて、ひずみ量の算出結果から二次元コード5を再現し、付帯情報32を取得することができる。
【0077】
(二次元コードの変形例)
図11は、二次元コード5の変形例を示す図である。二次元コード5は、例えば
図11に示すように、大きさの異なる要素点51,52と直線53を組み合わせて構成してもよい。要素点52は、読み取り時に二次元コード5の位置や向きを判別するためのパターンであり、
図4の例では複数の要素点51を組み合わせて一つのパターンを構成していたものを、
図11の例では要素点52単体でパターンを構成するようにしている。
【0078】
なお、
図4や
図11に示した二次元コード5に限らず、任意の方法で構成された二次元コードを用いて付帯情報32を記述することが可能である。
【0079】
(ひずみ解析システムの変形例)
上記の各実施形態では、ひずみ解析システムSにおいて、ひずみ解析装置2,2Bが付帯情報取得部211を備えており、この付帯情報取得部211を用いることでひずみ解析装置2,2Bが画像データ31から付帯情報32を取得する例を説明したが、撮像装置1において付帯情報32を取得し、画像データ31とともに記録媒体3に記録するようにしてもよい。
【0080】
図12は、本発明の変形例に係る撮像装置1Cの構成を示すブロック図である。本変形例では、ひずみ解析システムSにおいて、撮像装置1に替えて撮像装置1Cが備えられる。
【0081】
撮像装置1Cは、第1の実施形態で説明した撮像装置1と同様の構成を有している。撮像装置1Cにおけるプロセッサ11は、メモリ12と協働して所定のプログラムを実行することで、前述の撮像制御部111および記録制御部112に加えて、さらに付帯情報取得部113の各機能部を実現することができる。
【0082】
付帯情報取得部113は、第1の実施形態で説明したひずみ解析装置2の付帯情報取得部211と同様に、画像データ31に含まれる二次元コード5を読み取ることで、橋梁4に関する付帯情報32を取得する。記録制御部112は、付帯情報取得部113により取得された付帯情報32を、記録媒体インタフェース部15を介して、画像データ31と互いに関連付けて記録媒体3に記録する。これにより、撮像装置1Cにおいて画像データ31とともに付帯情報32が取得され、記録媒体3に記録される。なお、本変形例では撮像装置1Cにより付帯情報32が取得されるため、ひずみ解析装置2において付帯情報取得部211が備えられていなくてもよい。
【0083】
本変形例によれば、撮像装置1Cは、構造物である橋梁4を撮影して画像データ31を取得する撮像部14と、画像データ31から橋梁4に関する付帯情報32を取得する付帯情報取得部113と、画像データ31および付帯情報32を互いに関連付けて記録媒体3に記録する記録制御部112と、を備える。橋梁4には、二次元コード5が設けられており、付帯情報取得部113は、画像データ31に含まれる二次元コード5の撮影画像情報に基づいて付帯情報32を取得する。このようにしたので、ひずみ解析装置2に付帯情報取得部211を設けなくても、付帯情報32を取得可能なひずみ解析システムSを実現できる。
【0084】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で、任意の構成要素を用いて実施可能である。
【0085】
上記の実施形態や変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。また、上記では種々の実施形態や変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0086】
S:ひずみ解析システム、1,1C:撮像装置、2,2B:ひずみ解析装置、3:記録媒体、4:橋梁、5:二次元コード、6:ゲージ、11:プロセッサ、12:メモリ、13:光学部、14:撮像部、15:記録媒体インタフェース部、16:操作部、21:プロセッサ、22:メモリ、23:ストレージ、24:記録媒体インタフェース部、26:入出力部、31:画像データ、32:付帯情報、111:撮像制御部、112:記録制御部、113:付帯情報取得部、211:付帯情報取得部、212:画像データ選択部、213:ひずみ量算出部、214:劣化診断部、215:二次元コード再現部