(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114947
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】果実の皮剥き器
(51)【国際特許分類】
A23N 7/08 20060101AFI20230810BHJP
【FI】
A23N7/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017566
(22)【出願日】2022-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】302020838
【氏名又は名称】鈴木 利昭
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 利昭
【テーマコード(参考)】
4B061
【Fターム(参考)】
4B061AA01
4B061AA08
4B061AA10
4B061BA11
4B061CB02
(57)【要約】
【課題】原価低減の問題、設置場所の問題、清掃と保管に手間がかかる問題を解消できる皮剥き器を提供する。
【解決手段】皮剥き器1の器体3を容器4とこの蓋5で成る形にし、円形インロー部で摺動回転させる。蓋5の固定フォーク6に果実2を突き刺し容器4と蓋5を合わせ、両手23で掴み蓋5を回転させれば果実2が回転する。(容器4に自在フォーク7を設けても可。)
蓋5の縁のウォーム歯車13が同様に回転し、係合する傘歯車14と共にピーラー刃10が駆動する。これらの駆動手段でピーラー刃10を周面に移送し螺旋状に表皮を剥く。
両手23で容器4と蓋5を掴み皮剥き操作をするのでテーブルへの設置、ハンドル軸支持構造は不要。清掃は器体3に水等を入れ、振り動かすことで処理可能。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心として回転する果実(2)にピーラー刃(10)を圧接して皮剥きを行う皮剥き器(1)であって、器体(3)である容器(4)と蓋(5)は互いに円形インローで嵌り合い、前記円形インローで互いに摺動回転させられ、蓋(5)には先端が器体(3)の内側に向く様に固定された固定フォーク(6)を設け、固定フォーク(6)で果実(2)を突き刺し器体(3)中央に支持できる様にし、又は固定フォーク(6)と共に回転自在に容器(4)に枢着し先端が器体(3)の中心を向く自在フォーク(7)を設け、両フォーク(6・7)で果実(2)の対称的な点(茎根と頭部等)から果実(2)を突き刺し器体(3)中央に支持できる様にし、回転車(8)が容器(4)内側に回転自在に枢着され、ピーラー刃(10)の腕(9)を回転車(8)に結合し、ピーラー刃(10)が果実(2)に押し当てられる様に腕(9)は回転車(8)との間にバネを介在させる機構と腕(9)に節を設けバネを介在させる機構と腕(9)が弾性体で成る機構の少なくとも一つの機構を持ち、回転車(8)を回転させる駆動手段を持つことを特徴とする果実の皮剥き器(1)。
【請求項2】
前記駆動手段は、蓋(5)の縁部には内側にウォーム歯車(ネジ状の歯車)(13)が形設し、回転車(8)には傘歯車(14)が形設し、両歯車(13・14)が係合し、蓋(5)の回転が回転車(8)の回転へ伝動する駆動手段であることを特徴とする請求項1に記載の果実の皮剥き器(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、林檎、梨等ほぼ球形の果実を軸周りに回転しながら、その表皮を剥くための皮剥き器に関する。
【背景技術】
【0002】
林檎、梨等ほぼ球形の果実の皮を剥く手動の皮剥き器で、果実のほぼ中心を通る回転軸の片側、又は両側にフォークを突き刺して果実を回転させて、この表面にピーラー刃を圧接して、果実の表皮を剥く技術があった。台湾専利公告第265591号「新型果物皮剥き機」(
図9)の技術を採用したものは良く普及している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】台湾専利公告第265591号「新型果物皮むき機」
【特許文献2】実公昭61-815号「皮むき器」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この技術の皮剥き機16では、下記の問題があることに気が付いた。
【0005】
図9に示す様に、皮剥き機16の機体を固定し、ハンドル17を回し各部に伝動する仕組みになっている為、機体は据え付け構造18とハンドル17、ハンドル支持構造22、ハンドル回転からピーラー刃10の回転へ減速して駆動させる6つもの各種歯車19、歯車軸支持構造20を含む分の原価に問題があり、製作し提供するにはそれに見合った価格となる。
【0006】
使用時ではテーブル等の設置場所が必要になる問題がある。
【0007】
食材を扱う皮剥き機16として、清潔を保つため清掃が欠かせないが、果実の汁が果実の皮剥き時に飛散し、周囲を汚すと共に、皮剥き機16自身が汚れる。糖分が多い汁を放置すれば、ネバネバした汚れになり、さらにホコリ、害虫、菌まで寄せ付け不潔である。皮剥き機16の清掃は機体や各刃や他の部位の表面形状に沿わせて汚れを拭うことを行わねばならず、ピーラー刃10やフォーク刃21による裂傷に注意しながらの神経を使う細かい手間のかかる作業になる問題がある。
【0008】
皮剥き機16の保管は、清潔を保つことと不用意に触り各刃への接触による裂傷を避ける注意が必要になり、箱入れやカバーで覆う等の対策が強いられ手間のかかる作業になることも問題である。
【0009】
この皮剥き機16を食品加工業や飲食業で使うには重宝されているが、一般家庭では上記問題のため普及しづらくなっている。
【0010】
そこで、本発明は、据え付け構造とハンドルをなくし、歯車を少なくし、原価の問題、設置場所の問題、清掃と保管に手間がかかる問題を解消できる皮剥き器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は上記問題について思考したところ、果実の皮剥き機について、下記(1)~(5)を含む構成とすることにより上記問題を解決できることを見いだし、本発明の果実の皮剥き器を完成した。
【0012】
(1)皮剥き器1の器体3を1個の果実2を入れる容器4と蓋5から成る形にする。容器4と蓋5は互いに円形インローで嵌り合い、円形インローで互いに摺動回転させることが可能である。
【0013】
(2)蓋5には固定フォーク6を先端が器体3の中心に向く様に固定されてある。従って、果実2の中心に向かって蓋5の固定フォーク6を突き刺し、蓋5を手で掴み手動で容器4に対して回転させれば果実2が回転する。また、回転自在に容器4に枢着し果実2に突き刺す自在フォーク7を設けると、蓋5の固定フォーク6と共に果実2の対称的な点(茎根と頭部等)から突き刺しができ、果実2の回転軸24をより安定させることができる。
【0014】
(3)ピーラー刃10が器体3中央の果実2に押し当てる様に腕9は回転車8との間にバネ11を介在させる機構や、腕9に節を設けバネ11を介在させる機構や、腕9が弾性体で成る機構を持つ。
【0015】
(4)ピーラー刃10の腕9を結合した回転車8が回転自在に容器4に枢着されており、ピーラー刃10は果実表面を移動可能になっている。
【0016】
(5)ピーラー刃10を移送させる駆動手段を備えている。この駆動手段は、実公昭61-815号「皮むき器」の考案を採用した駆動手段、すなわち、ピーラー刃10に果実2と圧接する位置に摺動方向より所定の角度で傾いた案内突起12を着けることにより、皮剥きの際果実2の移動に対して相対的に進行する案内突起12の作用によりピーラー刃10を所定の送りピッチずつ移送させる駆動手段でも良く、又は、本発明請求項2の駆動手段、すなわち、蓋5の縁部には内側にウォーム歯車(ネジ状の歯車)13が形設し、回転車8には傘歯車14が形設し、両歯車13・14が係合し、蓋5の回転がピーラー刃10の回転へ伝動し、ピーラー刃10を所定の送りピッチずつ移送させる駆動手段でも良く、又は、同様にピーラー刃10を移送させる他の駆動手段でも良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、据え付け構造とハンドル及びハンドル軸支持構造、歯車と歯車軸支持構造の削減の分の原価を低減でき、設置場所の問題、清掃と保管に手間がかかる問題を解消できる皮剥き器を提供できる。この皮剥き器は一般家庭でも重宝なものになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の果実の皮剥き器の実施方法を示した、器体の一部を破断した説明図である。(実施例1)
【
図2】本発明の果実の皮剥き器の実施方法を示した、ピーラー刃部の案内突起の説明図である。(実施例1)
【
図3】本発明の果実の皮剥き器の実施方法を示した、器体の一部を破断した説明図である。(実施例2)
【
図4】本発明の果実の皮剥き器の実施方法を示した、ウォーム歯車と傘歯車の係合部分で、器体の一部を破断した説明図である。(実施例2)
【
図5】本発明の果実の皮剥き器の実施方法を示した、皮剥き器の器体を容器と蓋に分けた時の写真である。
【
図6】本発明の果実の皮剥き器で果実の皮を剥く時の写真である。
【
図7】本発明の果実の皮剥き器の器体内に水を入れ清掃する時の写真である。
【
図8】本発明の果実の皮剥き器で果実の皮を剥いた後、器体を容器と蓋に分けた時の写真である。
【
図9】特許文献1「新型果物皮むき機」の側視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
皮剥き器1の器体3を1個の果実2を余裕で入れられる容器4と蓋5から成る形にする。容器4と蓋5は互いに嵌り合った円形インローの軌道に沿って回転軸24で摺動回転させることが可能である。容器4と蓋5は手で掴みやすい形状が望ましい。
【0020】
蓋5には固定フォーク6が先端が器体3の中心に向く様に固定され、果実2の芯部に突き刺すと、果実2は器体3中央に支持され、蓋5と共に回転する。回転自在に容器4に枢着し、先端が器体3の中心を向く自在フォーク7を設けると、蓋5の固定フォーク6と共に果実2の対称的な点(茎根と頭部等)から突き刺しでき、果実2の回転軸24をより安定させることができる。フォークの軸は摺動軌道の回転軸24に一致する様に設けることが望ましい。
【0021】
容器4に回転自在に枢着された回転車8を回転させる駆動手段を持ち、ピーラー刃10の腕9を回転車8に結合し、ピーラー刃10が器体3中央の果実2に押し当てられる様に、腕9は回転車8との間にバネ11を介在させる機構や腕9に節を設けバネ11を介在させる機構や腕9が弾性体で成る機構を持つ。
【0022】
回転車8の回転駆動手段は、請求項2の駆動手段を採用すれば、蓋5の縁部は内側にウォーム歯車(ネジ状の歯車)13が形設し、回転車8には傘歯車14が形設し、両歯車13・14が係合し、蓋5の回転がピーラー刃10の回転へ伝動が可能にする。
【0023】
回転車8と容器4の枢着部の容器4側に回転台15を設け、この枢着部と蓋5の縁が干渉しない様に、またウォーム歯車13と傘歯車14が上手く係合する様にすると良い。
【0024】
一般に、ウォーム歯車13の様に円筒の内側にウォーム歯車を内歯車として加工すること、ウォーム歯車と傘歯車を対にすることは異例であり、精密伝動部品として確立された歯面の局面形状はないと思われるが、本発明では両歯が噛み合い伝動すれば良い。本技術の記述の係合とはこの様な意味である。
【0025】
ピーラー刃10は半回転すれば、果実2の茎根から頭部へ移動するので、傘歯車14は半回転伝動する様に歯が構成されていれば良く、必ずしも全週に渡る歯の形設は必要ではない。
【実施例0026】
図1は、本発明の皮剥き器の実施例1の図であって、器体3である容器4と蓋5はそれぞれ中空の球を真ん中で半分に割った形状で果実2が1個余裕を持ち入れられる大きさにする。
【0027】
蓋5の縁の内側に容器4の縁が円形インローで嵌り合った状態で摺動回転させられる。
【0028】
蓋5には固定フォーク6を先端が器体3の中心に向く様に、且つ、固定フォーク6の軸は摺動回転の回転軸24に一致する様に固定され、果実2を突き刺し器体3中央に支持できる。
【0029】
回転車8が容器4内側に回転自在に枢着され、ピーラー刃10の腕9回転車8に結合される。
【0030】
ピーラー刃10が器体3中央の果実2に押し当てられる様に、腕9には蝶着でなる節を設け、ねじりバネ11を掛ける。
【0031】
果実2の中心に向かって蓋5の固定フォーク6を突き刺し、容器4に蓋5を合わせ、
図6に示す様に、両方の手23で容器4及び蓋5を掴み、蓋5を容器4に対して回転すると、果実2も蓋5と共に回転する。
【0032】
回転する果実2とピーラー刃10との圧接と摺動で果実2の周面の皮を剥く。ピーラー刃10の駆動手段は、実公昭61-815号「皮むき器」に習い、
図2に示す様に、ピーラー刃10に果実2と圧接する位置に摺動方向より所定の角度で傾いた案内突起12を着けることにより、ピーラー刃10と果実2との摺動の案内となり、果実2が一周した時にピーラー刃10は所定の幅だけ次の周面に移送し、皮剥きを続け果実2の表皮のほぼ全体を剥く。
【0033】
皮剥き後は
図8に示す様に、容器4から蓋5を開け、剥離した皮を取り出しフォークに差し込まれた果実2を引き出す。
【0034】
容器4と蓋5を左右の手23・23で掴んで皮剥き作業をするので、テーブル等器体3の設置場所を必要としない。実施例1では歯車は使用しない。
【0035】
果実2の汁で汚れた器体3には溶液や水等の液を入れ、
図7に示す様に、器体3を閉じ、振り動かすと汚れが液内にはぎ取られるので、この液を排出すると器体3の内側の面及び各刃、各部位が清掃される。清掃後の保管は容器4に蓋5を合わせておけば器体3の中を清潔に保つことができ、不用意に刃に触り怪我をすることもない。
容器4には自在フォーク7を備え、先端が器体3の中心に向く様に、且つ自在フォーク7の回転軸は摺動回転の回転軸24に一致する様に回転自在に容器4に枢着する。蓋5の固定フォーク6と共に果実2の対称的な点(茎根と頭部)から突き刺し、容器4・蓋5を合わせ閉じるので果実2の回転軸24を実施例1より安定に器体3中央に支持できる。
回転車8と容器4との枢着部の容器4側に回転台15を設け、この枢着部と蓋5の縁が干渉しない様に、またウォーム歯車13と傘歯車14が上手く係合する様に設定する。
ウォーム歯車(ネジ状の歯車)13は1条ネジ、傘歯車14の歯数は20に設定した。よって、果実2の皮の剥き初めから剥き終わりまでに果実2は10回回転し、傘歯車14及びピーラー刃10が0.5回回転し、ピーラー刃10は果実2の茎根から頭部へ移動する。