(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114958
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】CAMK2G発現を抑制する製剤及びその製剤を乾癬病の治療薬品の製造に使用する応用
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20230810BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20230810BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230810BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230810BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20230810BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20230810BHJP
A61K 31/138 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P17/06
A61P29/00
A61P43/00 111
A61P43/00 105
A61P25/02 105
A61K31/137
A61K31/138
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059742
(22)【出願日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】202210116648.X
(32)【優先日】2022-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】521557687
【氏名又は名称】孫 良丹
【氏名又は名称原語表記】SUN Liangdan
【住所又は居所原語表記】218 Jixi Road, Shushan District, Hefei City, Anhui Province 230022, China
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】孫 良丹
(72)【発明者】
【氏名】兪 亜芬
(72)【発明者】
【氏名】雍 亮
(72)【発明者】
【氏名】甄 ▲き▼
(72)【発明者】
【氏名】李 報
【テーマコード(参考)】
4C084
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084MA16
4C084MA17
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA261
4C084ZA262
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZC021
4C084ZC022
4C084ZC201
4C084ZC202
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA12
4C206FA18
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA36
4C206MA37
4C206MA83
4C206MA86
4C206NA14
4C206ZA26
4C206ZA89
4C206ZC02
(57)【要約】
【課題】本発明は、乾癬病の治療薬品の技術分野に属し、具体的に、CAMK2Gエクスプレッションを抑制する製剤及びその製剤を乾癬病の治療薬品の製造に使用する応用に関するものである。
【解決手段】本発明の製剤は皮膚の交感神経内のCAMK2Gの異常活性化によりγδT 細胞IL-17の分泌を刺激することを有効に抑制し、それにより乾癬病皮膚の部位IL-17の調節による免疫反応を減少させ、乾癬病を治療する効果を獲得することができる。また、循環システムの好中球NETsの形成を低減し、病状が厳しくなることを抑制し、免疫不全症を治療する効果を獲得することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CAMK2Gエクスプレッションを抑制する製剤を獲得した後、その製剤を乾癬病の治療薬品の製造に使用することを特徴とするCAMK2Gエクスプレッションを抑制する製剤及びその製剤を乾癬病の治療薬品の製造に使用する応用。
【請求項2】
前記CAMK2GエクスプレッションはCAMK2Gトランスクリプションと/或いはCAMK2Gトランスクリプションが実施された後のmRNA変換を含むことを特徴とする請求項1に記載の応用。
【請求項3】
CaMK2γの蛋白質活性を抑制する製剤を獲得し後、その製剤を乾癬病の治療薬品の製造に使用することを特徴とするCaMK2γの蛋白質活性を抑制する製剤及びその製剤を乾癬病の治療薬品の製造に使用する応用。
【請求項4】
γδT細胞を除去する製剤またはγδT細胞の成長を抑制する製剤を獲得し後、その製剤を乾癬病の治療薬品の製造に使用することを特徴とするγδT細胞を除去する製剤またはγδT細胞の成長を抑制する製剤及びその製剤を乾癬病の治療薬品の製造に使用する応用。
【請求項5】
前記γδT細胞は皮下γδT細胞であることを特徴とする請求項4に記載の応用。
【請求項6】
皮膚組織の交感神経の活性を除去または抑制する製剤を獲得し後、その製剤を乾癬病の治療薬品の製造に使用することを特徴とする皮膚組織の交感神経の活性を除去または抑制する製剤及びその製剤を乾癬病の治療薬品の製造に使用する応用。
【請求項7】
前記皮膚組織の交感神経の活性を除去または抑制する製剤は6-OHDAであることを特徴とする請求項6に記載の応用。
【請求項8】
皮膚中の交感神経がノルエピネフリンを分泌することを抑制する製剤を獲得した後、その製剤を乾癬病の治療薬品の製造に使用することを特徴とする皮膚中の交感神経がノルエピネフリンを分泌することを抑制する製剤及びその製剤を乾癬病の治療薬品の製造に使用する応用。
【請求項9】
皮膚中のチロシンヒドロキシラーゼの成長または増加を抑制する製剤を獲得した後、その製剤を乾癬病の治療薬品の製造に使用することを特徴とする皮膚中のチロシンヒドロキシラーゼの成長または増加を抑制する製剤及びその製剤を乾癬病の治療薬品の製造に使用する応用。
【請求項10】
ADRB2抑制剤を乾癬病の治療薬品の製造に使用することを特徴とするADRB2抑制剤を乾癬病の治療薬品の製造に使用する応用。
【請求項11】
前記ADRB2抑制剤はICI 118551であることを特徴とする請求項10に記載の応用。
【請求項12】
p38リン酸化を抑制する製剤を獲得した後、その製剤を乾癬病の治療薬品の製造に使用することを特徴とするp38リン酸化を抑制する製剤及びその製剤を乾癬病の治療薬品の製造に使用する応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾癬病の治療薬品の技術分野に属し、具体的に、CAMK2Gエクスプレッションを抑制する製剤及びその製剤を乾癬病の治療薬品の製造に使用する応用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乾癬病(psoriasis)は、慢性炎症性皮膚病であり、免疫細胞浸潤、表皮過形成(Epidermic Hyperplasia)及びケラチン細胞(keratinocyte)の分化が異常であるという特徴を有している。以前の研究によると、ケラチン細胞と免疫細部の相互作用によりサイトカインネットワーク(cytokine network)が形成される。特に、IL-17と後続の信号カスケード(signal cascade)により乾癬病の発展が促進される。乾癬病の多遺伝子遺伝性(Polygenic inheritance)は、その病気の病因が炎症、細胞の増殖及びアポトーシス、神経心理学的要因(Neuropsychiatric factors)等のいろいろな要因に係っていることを反映する。遺伝的感受性(hereditary susceptibility)はどうして乾癬病の発展に影響を与えるか、特にどの細胞の種類が乾癬病の特異性遺伝子の変異に係っているかはまだ把握していない。従来のゲノム全体関連研究(genome-wide association study、GWAS)とmeta分析方法により乾癬病のいろいろな感受性遺伝子(susceptibility gene)を見つけた。その乾癬病の感受性遺伝子の変異の研究において、乾癬病の感受性遺伝子と疾病表現、リスク、メカニズムに関する事項を複数回言及することがある。例えば、遺伝子型表現型(Genotype phenotype)に関する研究によると、rs10852936が早期発病型乾癬病(発病年齢<40歳)に係っており、rs72474224(GJB2)は平常の乾癬病の臨床特性に係っており、rs1020760(NFKB1)は家族成員が陽性である乾癬病に係っていることが分かった。遺伝子と遺伝子の相互作用(interaction)、例えばMHC-LCEインタラクティブ(interactive)、MHC-IL12Bインタラクティブは乾癬病の発病のリスクを増加させるおそれがある。感受性遺伝子はいろいろな乾癬病共存(comorbidity)または他の免疫性疾病に係っている。例えば、乾癬病とSLEの共通感受性部位(Common susceptibility site)を研究することにより、NFKBIAとIL28RAは2つの疾病においてゲノム全体関連性(Genome-wide association)の顕著レベル(conspicuousness level)に達することが分かることができる。機能性研究によると、多数の感受性遺伝子は、特定性、適応性及び先天性免疫経路(Innate immune pathway)に係っている遺伝子の付近に位置していることが分かることができる。その遺伝子は、抗原プレゼンテーション(antigen presentation、HLA-C、ERAP1)、IL-17/23軸方向活性化(Axial activation、IL23R、IL23A、IL12B、TRAF3IP2)、先天性抗ウイルス免疫(Innate antiviral immunity)/I型インターフェロン信号(Type I interferon signal)の伝動(RNF114、IFIH1)及び肌バリア機能(Skin barrier function、LCE3B/3D)等を含む。
【0003】
乾癬病は、複雑な疾病であり、1つの要因により形成されるものでない。疾病の固有の病因及び調節メカニズム(regulation mechanism)と、いろいろな要因が各疾病において占めているウエート(weight)とを見つけることは、疾病の病因を有効に検出する基礎と先決条件である。ゲノム変異(genomic variation)は、疾病を研究する前提であり、疾病の病因を研究する重要な源流である。しかしながら、現在、いろいろな感受性遺伝子のダウンストリームメカニズム(downstream mechanism)を検出する方法は依然として少ない。遺伝子の関連分析により疾病の特徴に関する提示性情報を獲得することができるが、その提示性情報は遺伝子の機能方面の初歩的な判断にしか過ぎないものであり、タンパク、細胞動物モデル(Cellular animal model)のレベル及び組織サンプルレベル(Tissue sample level)により乾癬病中の感受性遺伝子の作用メカニズムを更に解析することにより獲得するものでない。したがって、乾癬病の発病メカニズムをはんだんすることができず、乾癬病に効く薬剤を提供することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、遺伝学(genetics)に基づいて乾癬病に多く係っている感受性部位を見つけ、多機能性技術を採用することにより、タンパク、細胞動物モデル及び組織サンプルレベルにより、乾癬病中の感受性遺伝子CAMK2Gの作用メカニズムを更に解析する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、CAMK2Gエクスプレッションを抑制する製剤及び、その製剤を乾癬病の治療薬品の製造に使用する応用を提供することにある。
【0006】
前記CAMK2GエクスプレッションはCAMK2Gトランスクリプションと/或いはCAMK2Gトランスクリプションが実施された後のmRNA変換(translation)を含む。
【0007】
本発明の実施例において、乾癬病患者の末梢血中のCAMK2Gトランスクリプションレベルは健康対照物より随分高く、乾癬病ネズミの末梢血中のCAMK2Gトランスクリプションレベルも健康対照物より高く、かつ乾癬病患者の末梢血中のCAMK2G+細胞比例は健康対照物より随分高い。
【0008】
本発明の目的は、CaMK2γの蛋白質活性(Protein activity)を抑制する製剤及び、その製剤を乾癬病の治療薬品の製造に使用する応用を更に提供することにある。
【0009】
本発明の具体的な実施例において、乾癬病ネズミの皮膚中のCaMK2γ総蛋白質のレベルとリン酸化活性蛋白質のレベルはいずれも、健康対照物より高い。すなわち、乾癬病患者のCaMK2γ総蛋白質のレベルとリン酸化の活性状態はいずれも、健康対照物より高い。
【0010】
本発明の目的は、好中球がNETsを放出することを抑制する製剤及び、その製剤を乾癬病の治療薬品の製造に使用する応用を更に提供することにある。
【0011】
本発明の実施例において、乾癬病患者の好中球のCaMK2γ平均蛍光強度(MFI)は健康対照物より随分高いが、単核細胞(monocytes、CD14+)と複数個のT細胞亜集団(cell subpopulation)はほぼ変わっていない。循環システムにおいてCaMK2γをオーバーエクスプレッションする細胞は主として、好中球である。乾癬病患者の好中球のCaMK2γ平均蛍光強度(MFI)は健康対照物より随分高いが、単核細胞(CD14+)と複数個のT細胞亜集団はほぼ変わっていない。乾癬病患者の血液の好中球中のCAMK2Gのトランスクリプションレベルは健康対照物より随分高い。
【0012】
本発明の目的は、γδT細胞を除去する製剤またはγδT細胞の成長を抑制する製剤及び、その製剤を乾癬病の治療薬品の製造に使用する応用を更に提供することにある。
【0013】
前記γδT細胞は皮下γδT細胞である。
【0014】
本発明の具体的な実施例において、IMQに処理されたWTネズミの背中の皮膚において、IL-17Aは主として、皮下γδT細胞により形成され、IL-17Aは表皮γδT細胞とαβT細胞においてエクスプレッションをほぼしない。IMQに処理されたCamk2g-/-ネズミにおいて、IL-17A+皮下γδT細胞はIMQに処理されたWTネズミよりずいぶん少ないが、IL-17A+表皮γδT細胞とIL-17A+ αβT細胞は変わっていない。
【0015】
本発明の具体的な実施例において、γδT細胞の欠陥があるネズミ(Tcrd-/-)の皮下にSALを注射する。γδT細胞がないことにより、SALが乾癬病表現と炎症浸潤(inflammatory infiltration)を促進する作用は相殺される。
【0016】
本発明の目的は、皮膚組織の交感神経の活性を除去または抑制する製剤及び、その製剤を乾癬病の治療薬品の製造に使用する応用を更に提供することにある。
【0017】
前記皮膚組織の交感神経の活性を除去または抑制する製剤は6-OHDAである。
【0018】
本発明の実施例において、皮膚組織のCaMK2γは主として、交感神経線維においてエクスプレッションをし、乾癬病患者の皮膚中のCaMK2γ+交感神経は健康の皮膚の交感神経より多い。皮膚の交感神経はIMQに誘導されたネズミ乾癬病サンプルの表現を除去するか或いは減少させる。交感神経が除去された交感神経の皮膚中のIL-17A+ γδT細胞は減少し、それは交感神経がγδT細胞を調節するとともにIL-17を形成することにより乾癬病サンプルの炎症に影響を与えることを反映する。
【0019】
本発明の具体的な実施例において、6-OHDAに誘導されたSH-SY5Y細胞が破損されることにより細胞内のTHトランスクリプションレベルは低下し、CAMK2G遺伝子がノックアウトされることによってもTHトランスクリプションレベルは低下するおそれがある。6-OHDAに誘導されたSH-SY5Y細胞が破損されることによりCAMK2Gエクスプレッションに顕著な影響を与えない。
【0020】
本発明の目的は、皮膚中の交感神経がノルエピネフリン(Norepinephrine)を分泌することを抑制する製剤及び、その製剤を乾癬病の治療薬品の製造に使用する応用を更に提供することにある。
【0021】
本発明の具体的な実施例において、皮下(hypodermic)にNEを注射することによりIMQに誘導された乾癬病サンプルの表現を増加させ、ネズミ皮膚中のIL-17A+ γδT細胞の比例を増加させる。NEを注射することはCAMK2GがないことによりIL-17A+ γδT細胞が減少することを相殺する。NEを注射した後、IMQに誘導されたWTとCamk2g-/-ネズミの皮膚厚さの不均等が消える。
【0022】
本発明の目的は、皮膚中のチロシンヒドロキシラーゼ(tyrosine hydroxylase、TH)の成長または増加を抑制する製剤及び、その製剤を乾癬病の治療薬品の製造に使用する応用を更に提供することにある。
【0023】
本発明の具体的な実施例において、THとpTHは大幅に低下することは皮膚の局部の交感神経が不活性状態(inactivation)になることを反映する。
【0024】
本発明の目的はADRB2抑制剤を乾癬病の治療薬品の製造に使用する応用を更に提供することにある。
【0025】
前記ADRB2抑制剤はICI 118551である。
【0026】
本発明の具体的な実施例において、ICIを注射することによりネズミの乾癬病表現(phenotype)は低下し、IMQに誘導されたネズミの皮膚にICIを注射することにより皮膚のγδT-17細胞の比例を低減する。
【0027】
本発明の目的は、p38リン酸化を抑制する製剤及び、その製剤を乾癬病の治療薬品の製造に使用する応用を更に提供することにある。
【0028】
本発明の具体的な実施例において、SAL処理によりIMQに誘導された皮膚中のp38の活性化を増強し、ICI処理の抑制作用が証明される。Camk2g-/-ネズミの皮膚中のp38リン酸化が抑制され、NEを注射することによりp38リン酸化を増加させるとともに回復させる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の実施例において、本発明の製剤は皮膚の交感神経内のCAMK2Gの異常活性化によりγδT 細胞IL-17の分泌を刺激することを有効に抑制し、それにより乾癬病皮膚の部位IL-17の調節による免疫反応を減少させ、乾癬病を治療する効果を獲得することができる。また、循環システムの好中球NETsの形成を低減し、病状が厳しくなることを抑制し、免疫不全症(Immunodeficiency disease)を治療する効果を獲得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施例に係る設計を示す流れ図である。
【
図2A】乾癬病患者の末梢血中のCAMK2Gトランスクリプションレベルを示す図である。
【
図2B】乾癬病患者の末梢血中のCAMK2G+細胞比例を示す図である。
【
図2C】乾癬病ネズミの末梢血中のCamk2gトランスクリプションレベルを示す図である。
【
図2D】乾癬病ネズミの皮膚中のCaMK2γの総蛋白質のレベルとリン酸化活性蛋白質のレベルを示す図である。
【
図3A】CaMK2γが皮膚神経においてエクスプレッションをすることを示す図である。
【
図3B】乾癬病患者の皮膚中のCaMK2γ+交感神経の状況を示す図である。
【
図4A】循環システムにおいてCaMK2γをオーバーエクスプレッションする細胞の状況を示す図である。
【
図4B】乾癬病患者の好中球のCaMK2γの平均蛍光強度(MFI)を示す図である。
【
図4C】乾癬病患者の血液の好中球のCAMK2Gのトランスクリプションレベルを示す図である。
【
図4D】乾癬病患者の血液の好中球のCaMK2γ総蛋白質のレベルとリン酸化の活性状態を示す図である。
【
図5A】Camk2g
-/-ネズミの皮膚セクションのH&E染色を示す図である。
【
図5B】Camk2g
-/-ネズミのPASI評価結果を示す図である。
【
図5C】乾癬病皮膚病変中の炎症浸潤細胞のフロー分類方法を示す図である。
【
図5D】IMQに誘導されたCamk2g
-/-ネズミの背中の皮膚の炎症浸潤細胞の状況を示す図である。
【
図5E】Camk2g
-/-ネズミの皮膚のマーカー炎症因子遺伝子のエクスプレッション状況を示す図である。
【
図6A】フロー検査によりIMQ処理後のWTネズミの背中の皮膚においてIL-17Aが細胞をエクスプレッションすることを測定することを示す図である。
【
図6B】フローサイトメトリーによりいろいろなネズミモデルの細胞状況を分析することを示す図である。
【
図6C】IMQに処理されるCamk2g
-/-ネズミのIL-17A+皮下γδT細胞の状況を示す図である。
【
図6D】IMQに処理されるCamk2g
-/-ネズミのIL-17A+皮下γδT細胞の状況を示す図である。
【
図6E】IMQに処理されるCamk2g
-/-ネズミのIL-17A+ αβT細胞の状況を示す図である。
【
図7A】IMQ処理が実施されるCamk2g
-/-ネズミの皮膚のTHリン酸化の状況を示す図である。
【
図7B】IMQ処理後のCamk2g
-/-ネズミの皮膚中のノルアドレナリン(NE)のレベルを示す図である。
【
図7C】IMQ処理後のCamk2g
-/-ネズミの皮膚中のドーパミンのレベルを示す図である。
【
図7D】皮下にNEを注射することとIMQでネズミ乾癬病サンプルの表現を誘導する実験を示す流れ図である。
【
図7E】皮下にNEを注射したネズミ皮膚中のIL-17A+ γδT細胞の比例を示す流れ図である。
【
図7F】皮下にNEを注射したネズミと、CAMK2GがないことによりIL-17A+ γδT細胞の変化状況を示す図である。
【
図7G】皮下にNEを注射した後、IMQの誘導によりWTネズミとCamk2g
-/-ネズミの皮膚の厚さが厚くなることを示す図である。
【
図8A】IMQ処理前にネズミの皮下に6-OHDAを注射することを示す図である。
【
図8B】免疫蛍光方法により皮下に6-OHDAを注射したネズミの皮膚組織の交感神経の分布を獲得した後、その分布を示す図である。
【
図8C】western blot測定方法により皮下に6-OHDAを注射したネズミのTHとpTHエクスプレッション状況を獲得した後、その状況を示す図である。
【
図8D】皮下に6-OHDAを注射するネズミの皮膚の表現を示す図である。
【
図8E】皮下に6-OHDAを注射したネズミの乾癬病サンプルの表現を示す図である。
【
図8F】皮下に6-OHDAを注射したネズミの皮膚中のIL-17A+ γδT細胞の状況を示す図である。
【
図8G】皮下に6-OHDAを注射したネズミの皮膚中のNE状況を示す図である。
【
図9A】6-OHDAに誘導されるSH-SY5Y細胞の破損と細胞内のTHトランスクリプションレベルを示す図である。
【
図9B】6-OHDAに誘導されたSH-SY5Y細胞の破損によりCAMK2Gエクスプレッションに影響を与えることを示す図である。
【
図9C】6-OHDAに誘導されるSH-SY5Y細胞の破損によりCAMK2Gの総蛋白質とリン酸化レベルに影響を与えることを示す図である。
【
図10A】IMQに誘導される乾癬病ネズミの皮膚組織のRNA測定の状況を示す図である。
【
図10B】乾癬病患者の皮膚病変と健康対照物の皮膚に対して免疫組織化学分析を実施してえた結果を示す図である。
【
図10C】IL-17をエクスプレッションする細胞がβ2-ARをエクスプレッションすることを示す図である。
【
図10D】IMQ処理によりネズミ皮膚中のβ2-AR+ T細胞の比例が変化することを示す図である。
【
図11A】IMQに誘導されるネズミの皮下にSALを注射することを示す図である。
【
図11B】SALを注射しかつIMQに誘導されるネズミの皮膚の状況を示す図である。
【
図11C】SALを注射しかつIMQに誘導されるネズミの背中の皮膚の厚さ、紅斑及びスケールを示す図である。
【
図11D】SALを注射しかつIMQに誘導されるネズミのIL-17Aの形成を示す図である。
【
図12A】ICIを注射しかつIMQに誘導されるネズミに対して実験をすることを示す流れ図である。
【
図12B】ICIを注射しかつIMQに誘導されるネズミの皮膚の状況を示す図である。
【
図12C】ICIを注射しかつIMQに誘導されるネズミの背中の皮膚の厚さ、紅斑及びスケールを示す図である。
【
図12D】ICIを注射しかつIMQに誘導されるネズミのγδT-17細胞の比例を示す図である。
【
図13A】γδT細胞の欠陥があるネズミ(Tcrd
-/-)の皮下にSALを注射した後の皮膚の表現を示す図である。
【
図13B】γδT細胞の欠陥があるネズミ(Tcrd
-/-)の皮下にSALを注射した後、好中球性顆粒球(neutrophilic granulocyte)の比例を示す図である。
【
図13C】γδT細胞の欠陥があるネズミ(Tcrd
-/-)の皮下にSALを注射した後、単核細胞の比例を示す図である。
【
図13D】γδT細胞の欠陥があるネズミ(Tcrd
-/-)の皮下にSALを注射した後、αβT細胞がIL-17Aを形成することを示す図である。
【
図14A】PMAとイオノマイシン(Ion)が一緒に刺激することによりT細胞の炎症前サイトカインが形成される状況を示す図である。
【
図14B】ICIの刺激することによりT細胞の炎症前サイトカインが形成される状況を示す図である。
【
図15A】PMA/イオノにより活性化されたJurkat T細胞において、p38、ERK及びJNKの活性化状況を示す図である。
【
図15B】SAL処理を実施した後、IMQに誘導される皮膚中のp38の活性化状況を示す図である。
【
図15C】SAL処理を実施した後、IMQに誘導される皮膚中のp38の活性化状況を示す図である。
【
図15D】IMQ処理が実施されるWTネズミのp38の活性化状況を示す図である。
【
図16A】PMAに活性化されるHL-60細胞において、CaMKII-IN1とKN93がMPO、エラスターゼ及びPAD4のエクスプレッションを抑制することを示す図である。
【
図16B】CaMK2γの活性と細胞内のROSが抑制される状況を示す図である。
【
図16C】CaMK2γの活性とNCF1、NCF2及びNOX2のmRNAレベルが抑制されることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施例により本発明の技術的事項を詳細に説明するが、下記実施例は本発明の例示にしか過ぎないものであるため、本発明は下記実施例の構成にのみ限定されない。この技術分野の技術者は本発明の要旨を逸脱しない範囲内において設計の改良、変更等をすることができ、それらがあっても本発明に含まれることは勿論である。
【0032】
本発明の実施例において、
図1に示される流れ図により実験を実施する。
【0033】
本発明の実施例において、IMQはイミキモド(imiquimod)を指し、IMQはTollライクレセプター(Toll-like receptor、TLR)7、8のアゴニスト(agonist)である。
【0034】
本発明の実施例において、「アゴニスト」という用語は、ある生物活性物質(biological active substance)のレセプターと結合され、その活性物質の作用を示す物質または薬品を指す。
【0035】
本発明の実施例において、「拮抗質(antagonist)」という用語は、レセプターと結合されたが、固有活性(intrinsic activity)を具備しないクラスI物質(Class I substance)である。拮抗質は競争拮抗質(Competitive antagonist)と非競争拮抗質(noncompetitive antagonist)に分けられる。
【0036】
本発明の実施例において、「PMA」と「イオノマイシン(Ion)」はジャーカット細胞(Jurkat cell)の活性化に用いられ、活性化されるジャーカット細胞のみが炎症因子(inflammatory factor)をオーバーエクスプレッション(over expression)することができる。
【0037】
本発明の実施例において、「CaMK2γ」はCAMK2G遺伝子がエクスプレッション(expression)する蛋白質プロダクツ(protein products)の一種である。
【0038】
本発明の実施例において、「CAMK2G+細胞」はCAMK2G蛋白質をエクスプレッションする細胞である。
【0039】
本発明の実施例において、「IMQがCamk2g-/-乾癬病ネズミモデルを誘導(induce)する」ということはIMQに誘導されるCAMK2G遺伝子がネズミをノックアウト(knockout)することを指す。「IMQが誘導した野生ネズミモデル」ということはIMQに誘導される野生ネズミを指す。
【0040】
実施例1
感受性遺伝子CAMK2Gの乾癬病中のエクスプレッションを検出
【0041】
本発明の実施例において、感受性遺伝子(susceptibility gene)CAMK2Gと乾癬病のエクスプレッションの関連性を検出するため、乾癬病患者と乾癬病ネズミの血液と皮膚組織においてCAMK2Gのエクスプレッション状況をそれぞれ検出する。RT-qPCRとフロー検査(Flow detection)の結果によると、乾癬病患者の末梢血(peripheral blood)中のCAMK2Gトランスクリプションレベル(transcription level)は健康対照物より随分高く(
図2A)、乾癬病患者の末梢血中のCAMK2G+細胞比例は健康対照物より随分高く(
図2B)、かつ乾癬病ネズミの末梢血中のCAMK2Gトランスクリプションレベルも健康対照物より高い(
図2C)ことがわかることができる。
【0042】
従来の技術文献によると、CAMKIIγは多いCa2+が調節する信号経路(signal pathway)において第二クーリエ(courier)の役割をする。細胞内のCa2+が平常のレベルになっているとき、自身の抑制作用により休眠状態を維持し、細胞内のCa2+のレベルが増加するとき、自身のリン酸化により抑制状態を解除する。Thr287部位のリン酸化はCaMK2γの活性化形式である。
【0043】
現在、リン酸化CaMK2γ特異性を有している抗体が少ないが、ネズミ皮膚RNA-seq結果によると、CaMK2γは皮膚組織においてCAMKII家族のエクスプレッションレベル(expression level)が最も高い成員である。したがって、本発明の実施例において、Phospho-CaMKII (Thr287)抗体により皮膚組織の活性CaMK2γレベルを測定する。Western blot測定によると、乾癬病ネズミの皮膚中のCaMK2γの総蛋白質(Total Protein)のレベルとリン酸化活性蛋白質(Active protein)のレベルがいずれも健康対照物より高い(
図2D)ことがわかることができる。
【0044】
実施例2
皮膚組織中のCaMK2γのエクスプレッションを確定
【0045】
本発明の実施例において、CAMK2Gが皮膚組織の神経細胞(nerve cell)においてオーバーエクスプレッションをするかを検証するため、健康対照物と乾癬病患者の皮膚サンプルに対してCaMK2γ(赤色)とパンニューロンマーカー(pan-neuronal marker)β3-tubulin(緑色)のCO染色(CO staining)を実施する。免疫蛍光の結果によると、CaMK2γは皮膚神経においてエクスプレッションをするが、神経細胞はいずれもCaMK2γ陽性であるものでない(
図3A)。すなわち、CaMKII家族成員は神経細胞においてオーバーエクスプレッションをし、皮膚神経は交感神経(Sympathetic)と多種の知覚神経線維(Sensory nerve fibers)で構成される。
【0046】
本発明の実施例において、交感神経線維(Sympathetic fiber)のチロシンヒドロキシラーゼ(tyrosine hydroxylase、TH)(緑色)とCaMK2γ(赤色)を識別することにより免疫蛍光CO染色(Immunofluorescence CO staining)を実施する。その結果により、皮膚組織のCaMK2γは主として、交感神経線維内にエクスプレッションされており、乾癬病患者の皮膚中のCaMK2γ+交感神経(Sympathetic nerves)は健康の皮膚より多いことがわかる(
図3B)。
【0047】
実施例3
循環システム中のCaMK2γのエクスプレッションを確定
【0048】
本発明の実施例において、フローサイトメトリー(flow cytometry)により患者の末梢血CD16+CD66b+好中球(neutrocyte)と非好中球(Non neutrophil)CD16+CD66b-細胞、CD16-CD66b-細胞中のCaMK2γの平均蛍光強度(mean fluorescence intensity、MFI)を比較する。その結果によると、循環システムにおいてCaMK2γをオーバーエクスプレッションする細胞は主として、好中球である(
図4A)。
【0049】
本発明の実施例において、CaMK2γが乾癬病患者の末梢血中の複数の常用の免疫細胞(immune cell)において変化することを更に測定するため、患者と健康対照物の末梢血のいろいろな免疫細胞亜集団に対してフローサイトメトリー分析をする。その結果によると、乾癬病患者の好中球のCaMK2γの平均蛍光強度(MFI)は健康対照物よりずいぶん高いが、単核細胞(monocytes、CD14+)と複数個のT細胞亜集団(cell subpopulation)はほぼ変わっていない(
図4B)。
【0050】
本発明の実施例において、乾癬病患者の循環システムにおいて好中球内のCAMK2Gエクスプレッションが変化することを更に測定するため、磁気ビーズ選別(magnetic bead sorting)方法により、乾癬病患者と健康対照物の血液において高純度の好中球をそれぞれ選別する。RT-qPCR測定によると、乾癬病患者の血液の好中球のCAMK2Gのトランスクリプションレベルは健康対照物より随分高い(P=0.0079)(
図4C)。Western blot測定によると、乾癬病患者のCaMK2γ総蛋白質のレベルとリン酸化の活性状態はいずれも、健康対照物より高いことが分かることができる(
図4D)。
【0051】
実施例4
IMQに誘導されたCamk2g-/-乾癬病ネズミモデルを形成する
【0052】
本発明の実施例において、乾癬病中のCAMK2Gの作用メカニズムを更に研究するため、IMQに誘導されたCamk2g-/-乾癬病ネズミモデルを形成する。
【0053】
本発明の実施例において、IMQに誘導されたCamk2g-/-乾癬病ネズミモデルを形成するステップは、7歳のWT(n=5)またはCamk2g-/-ネズミ(n=5)の背中の毛を剃ることにより、サイズが2cm×2cmである背中の皮膚を露出させるステップを含む。62.5mgのIMQ乳化性ペースト(emulsifiable paste)または対照品(placebo)VASをネズミの露出皮膚に均等に塗布し、それを4日間続けるとともに毎日PASI評価を実施する。5日目はネズミに対してユーサネイジア(euthanasia)を実施した後、ネズミの皮膚、脾臓及び血液を取って測定する。
【0054】
本発明の実施例において、皮膚組織は、10%のフォルマリン(Formalin)で固定させ、パラフィン包埋(paraffin embedding)を実施し、4μmのセクション(section)を獲得した後、H&E染色を実施する。
【0055】
本発明の実施例において、H&E染色の画像はバーチカル顕微鏡(vertical microscope)(Olympus BX53)により10倍に拡大して獲得するものである。
【0056】
本発明の実施例において、ネズミモデルの炎症を評価する方法は臨床PASI評価方法により発明した客観的評価システムである。紅斑(erythema)、スケール及び厚さの増加を0~4で評価することができる。0は病症がないことを反映し、1は病症が軽いことを反映し、2は病症が中度であることを反映し、3は病症が明確であることを反映し、4は病症が厳しいことを反映する。紅斑の強度を表示するスコアカード(scorecard)により紅斑の程度を評価することができる。総合的な評価(紅斑+スケール+厚さの増加)を、炎症の程度を表す数値にすることができる(0~12で評価する)。
【0057】
皮膚セクションのH&E染色とPASI評価結果により、IMQに誘導されたCamk2g
-/-ネズミモデルとIMQに誘導された野生ネズミを比較してみると、Camk2g
-/-ネズミの乾癬病サンプルの表現が大幅に低下することが分かることができる。それは、ネズミの背中の皮膚厚さが減少し、紅斑とスケールが減少することを反映する(
図5A、
図5B)。
【0058】
本発明の実施例において、特定の標識抗体(Labeled antibody)により分離後のネズミの免疫細胞を分類する。単核細胞と好中球は乾癬病皮膚病変(skin lesions)中の炎症浸潤細胞(Inflammatory infiltrating cells)である(
図5C)。フロー検査の結果によると、IMQに誘導されたCamk2g
-/-ネズミの背中の皮膚の炎症浸潤が大幅に減少することが分かることができる(
図5D)。
【0059】
本発明の実施例において、皮膚免疫細胞を分離することは、皮膚を充分にカットするステップと、消化酵素(digestive enzyme)において37℃の温度と225rpmの回転速度により消化を1.5h実施するステップと、消化を30分更に実施する。消化酵素は、1.2gのBSA(Biofoxx、4240GR100)、0.12gの1型コラゲナーゼ(Collagenase type 1)(Sigma、C0130-5G)、0.06gの4型コラゲナーゼ(Worthington、LS004189)及び0.06gのヒアルロニダーゼ(hyaluronidase)(Sigma、H3506-5G)を30mlのDMEM(HyClone、SH30022.01)に溶解させた後、1mg/mlであるDNase(Yuanye、S10073)を150μl添加することにより獲得することができる。消化が終わると、細胞懸濁液(suspension)を70-μmのフィルターで濾過する。細胞懸濁液を温度が4℃でありかつ回転速度が2000rpmである遠心分離(centrifugation)装置に送入して8minの遠心分離を実施した後、スーパーネイト(supernate)を除去することにより細胞粒子を収集する。細胞は容量が6mlでありかつ濃度が40%であるリンパ細胞(lymphocyte)分離液体(5.4mlのPercoll(GE Healthcare、17-0891-09)+520μl Hank‘s Solution(Beyotime、C0219)+44μl 2×Hepes Buffer(Solarbio、H1080-100)+8.946ml PBS)に浮かんでいる。つぎに、容量が6mlでありかつ濃度が80%であるリンパ細胞分離液体(5.4ml Percoll+520μl Hank‘s Solution+44μl 2×Hepes Buffer+1.491ml PBS)を容器の内壁に沿って容器にゆっくり注ぐことにより液体を二層に分離させる。分離液体を温度が4℃でありかつ回転速度が2000rpmである遠心分離装置に送入して20minの遠心分離を実施し、遠心揚力(Centrifugal lifting force)を最小にする。遠心分離後の液体は4層に分離され、上から下への順に沿う各層はそれぞれ、40%のリンパ細胞分離液体、リンパ細胞、80%のリンパ細胞分離液体及び細胞フラグメント(fragment)である。リンパ細胞を新しい遠心管(Centrifugal tube)にゆっくり転移させた後、10mlのPBSでリンパ細胞をよく洗浄する。溶液を温度が4℃でありかつ回転速度が2000rpmである遠心分離装置により8minの遠心分離を実施した後、スーパーネイトを除去することにより細胞粒子を収集する。つぎに、各細胞膜(cell membrane)の表面抗体(Surface antibody)を1μlを取って50μlのPBSに送入することにより細胞と混合させ、室内の暗室においてインキュベーションを30min実施する。3mlのPBSで細胞を洗浄する。温度が4℃でありかつ回転速度が2000rpmである遠心分離装置により5minの遠心分離を実施した後、スーパーネイトを除去することにより細胞粒子を収集する。測定をする前、細胞の体積により細胞を300~600μlのPBSに浮かべる。細胞内抗体(intracellular antibody)を染色させる必要がある場合、細胞沈殿物に1mlの細胞透過剤(Cell Permeabilizer)(固定/浸透用高濃度液体(Invitrogen、00-5123-43):eBioscience Fixation/Perm希釈剤(Invitrogen、00-5223-56)=1:3)を直接に添加し、室内の暗室においてインキュベーションを60min実施する。50μlのPBSに適量の細胞内抗体を添加することによりそれと細胞を混合させ、室内の暗室に40min保存する。3mlのPBSで細胞を洗浄する。温度が4℃でありかつ回転速度が2000rpmである遠心分離装置により5minの遠心分離を実施した後、スーパーネイトを除去することにより細胞粒子を収集する。測定をする前、細胞の体積により細胞を300~600μlのPBSに浮かべる。
【0060】
本発明の実施例において用いる表面抗体(Surface antibody)は、CD45-FITC(eBioscience、REF11-0451-82)、CD11b PE-Cy7(BD、552850)、LY-6G-BV605(BD、563005)、Ly-6C PE(BD、560592)、CD11C PE-CF594(BD、562454)がある。
【0061】
本発明の実施例において、乾癬病と関係が密接でありかつ乾癬病皮膚病変においてエクスプレッションが高い既知の抗炎症遺伝子(pro-inflammatory genes)に対して定量のPCRを実施する。すなわち、Il17a、Il17f、Il6、Il22、IL1b及びTnfaを実施する。その結果によると、Camk2g
-/-ネズミの皮膚のマーカー遺伝子(marker gene)のエクスプレッションが大幅に低下することが分かることができる(
図5E)。
【0062】
実施例5
CaMK2γで乾癬病ネズミ皮膚中のγδT-17細胞を制御する
【0063】
好中球と単核細胞を乾癬病病変部位に集めることは乾癬病病因の特徴である。従来の技術文献によると、好中球と単核細胞は臨界効果(critical effect)のサイトカイン(cytokines)IL-17に駆動されうものである。IL-17はいろいろな細胞種類、例えばTh17細胞、Tc17細胞、γδ T-17細胞、ILC3等により放出されることができる。
【0064】
本発明の実施例において、IMQ処理後のWTネズミの背中の皮膚に対してフロー検査をする。フロー検査の結果によると、IMQ処理が実施されたWTネズミの背中の皮膚において、IL-17Aは主として皮下γδT細胞により形成され、IL-17Aは表皮γδT細胞とαβT細胞においてエクスプレッションをほぼしないことが分かることができる(
図6A)。
【0065】
本発明の実施例において、CaMK2γがIMQ処理後のネズミの皮膚中のIL-17の形成に影響を与えるかを判断するため、フローサイトメトリー分析によりIL-17+細胞がいろいろな皮膚のT細胞亜集団中の比例を分析する。その結果は
図6Bに示すとおりである。IMQに処理されるCamk2g
-/-ネズミのIL-17A+皮下γδT細胞はIMQに処理されるWTネズミよりずいぶん少なく(
図6C)、IL-17A+皮下γδT細胞とIL-17A+ αβTは変わっていない(
図6D、
図6E)。
【0066】
実施例7
皮膚のCaMK2γ+交感神経でγδT-17細胞を制御する
【0067】
従来の技術文献によると、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)は、カテコールアミン(catecholamine、ドーパミン(dopamine、DA)、ノルアドレナリン(Noradrenaline、NE)及びアドレナリン(adrenaline))の生合成(biosynthesis)中の速度制限酵素(rate-limiting enzyme)であり、皮膚中の交感神経を鑑別することに用いられる。CaMKII家族成員はニューロン集団(Neuronal population)においてTHリン酸化を刺激することによりカテコールアミンの生合成の制御に制御する。
【0068】
本発明の実施例において、Western blot測定によると、IMQ処理によりネズミの皮膚のTHリン酸化が大幅に増加するが、CAMK2GがないことによりTHリン酸化の増加が抑制されることがわかることができる(
図7A)。
【0069】
本発明の実施例において、ELISAによりネズミの皮膚中のカテコールアミンの神経伝達物質(neurotransmitter)の分泌を測定する。その結果によると、IMQ処理後のCamk2g
-/-ネズミの皮膚中のNEレベルはWTネズミより低いが、皮膚中のドーパミンが変わっていないことが分かることができる(
図7B、
図7C)。
【0070】
本発明の実施例において、皮下にNEを注射することによりIMQに誘導された乾癬病サンプルの表現を増加させ、ネズミ皮膚中のIL-17A+ γδT細胞の比例を増加させる。NEを注射することはCAMK2GがないことによりIL-17A+ γδT細胞が減少することを相殺し(
図7D、
図7E/
図7F)、交感神経は皮膚中のNEの重要な出所であることを反映する。
【0071】
本発明の実施例において、NEを注射した後、IMQに誘導されたWTとCamk2g
-/-ネズミの皮膚厚さの不均等が消える(
図7G)。それは、CaMK2γでIMQに誘導された皮膚炎症を制御することは皮膚の交換神経がNEを分泌することに係っており、皮膚中のCaMK2γ+交換神経はNEを分泌することにより一部分のγδT細胞IL-17Aの形成を調節することを反映する。
【0072】
実施例8
皮膚の交感神経の除去がネズミモデルの乾癬病表現に与える影響
【0073】
従来の技術文献によると、6-ヒドロキシドパミン(6-hydroxydopamine、6-OHDA)は、カテコールアミン作動性ニューロン(catecholaminergic neurons)の選択的神経毒(Selective neurotoxin)であり、交感神経の除去に用いられる。腹腔(abdominal cavity)に6-OHDAを注射することにより、IMQに誘導される耳浮腫(ear edema)を減少させることができるが、IL-17Aの形成に影響を与えない。その原因は心血管効果(cardiovascular effects)と/或いは全身性交感神経の除去により生ずる全身性免疫障害(Systemic immune disorder)にある。
【0074】
本発明の実施例において、皮膚の局部の交感神経を切除することにより乾癬病ネズミに与える影響を観察するため、IMQ処理前にネズミの皮下に6-OHDAを注射する(
図8A)。免疫蛍光とwestern blot測定の結果によると、THとpTH(副甲状腺ホルモン、parathyroid hormone)が大幅に低下することが分かることができ、それは皮膚の局部の交感神経不活性状態になることを反映する(
図8B、
図8C)。後続の研究によると、皮膚の局部の交感神経が除去されることによりIMQに誘導されたネズミの乾癬病サンプルの表現が減少することが分かることができる(
図8D、
図8E)。交感神経が除去される皮膚中のIL-17A+ γδT細胞が減少することは、皮膚の交感神経がγδT細胞を調節することによりIL-17の形成を調節しかつ乾癬病サンプルの皮膚の炎症に影響を与えることを反映する(
図8F)。交感神経が除去される皮膚中のNEが減少することは、交感神経がNEを分泌することによりγδT細胞IL-17の形成を調節することを反映する(
図8G)。
【0075】
実施例9
CAMK2G遺伝子がノックアウトされることにより6-OHDAが破損されたSH-SY5Y細胞に与える影響
【0076】
本発明の実施例において、CaMK2γが交感神経内のTHのエクスプレッションに直接に影響を与えるかを更に測定するため、RNAi方法によりヒト神経芽細胞(human neuroblastoma cells、SH-SY5Y)内のCAMK2Gをノックダウン(knock-down)する。SH-SY5Yは分化程度が低い腫瘤細胞であり、SH-SY5Yとドーパミン作動性ニューロン(dopaminergic neuron)の形状、生理及び生化学的機能(Biochemical function)は類似しており、SH-SY5Yとドーパミン作動性ニューロンはエクスプレッションTHを構成することができる。qPCR測定の結果によると、6-OHDAに誘導されるSH-SY5Y細胞の破損により細胞内のTHトランスクリプションレベルが低下し、CAMK2G遺伝子がノックアウトされることによってもTHトランスクリプションレベルが低下することが分かることができる(
図9A)。6-OHDAに誘導されたSH-SY5Y細胞の破損によりCAMK2Gエクスプレッションに顕著な影響を与えない(
図9B)。本発明の実施例において、Western blot測定によると、CAMK2G遺伝子をノックアウトすることによりCaMK2γの総蛋白質のレベルとpTHレベルを大幅に低減し、6-OHDAに誘導されるSH-SY5Y細胞の破損によってもCaMK2γの総蛋白質のレベルとpTHレベルを低減することができる。また、6-OHDAに誘導されるSH-SY5Y細胞の破損によりCaMKII家族の他の成員のリン酸化レベルも増加することができる(
図9C)。
【0077】
実施例10
NEレセプターの皮膚内のエクスプレッションモデル
【0078】
本発明の実施例において、IMQに誘導される乾癬病ネズミの皮膚組織に対してRNA測定(RNA-seq)を実施する。その結果によると、ADRB2 (β2-AR)は皮膚中の重要なNEレセプターエクスプレッションであることが分かることができる(
図10A)。
【0079】
本発明の実施例において、乾癬病患者の皮膚病変と健康対照物の皮膚に対して免疫組織化学分析(Immunohistochemical analysis)を実施する。その結果によると、β2-ARが皮下部位に浸潤している免疫細胞上においてエクスプレッションをすることが分かることができる(
図10B)。
【0080】
本発明の実施例において、免疫蛍光とフローサイトメトリー分析によると、IL-17をエクスプレッションする大部分の細胞はβ2-ARをエクスプレッションし(
図10C)、IMQ処理によりネズミ皮膚中のβ2-AR+ T細胞の比例が増加することが分かることができる(
図10D)。
【0081】
実施例11
β2-AR活性剤(activator)でネズミモデルの乾癬病表現を調節
【0082】
本発明の実施例において、NEがβ2-ARによりγδT-17細胞に直接に影響を与えるかを更に測定するため、IMQに誘導されるネズミの皮下にサルメテロールキナフォーテ(Salmeterol xinafoate、SAL、それは選択的ADRB2アゴニストである)を注射する。健康対照物と比較してみると、SALを注射することによりネズミの乾癬病表現は増加する。すなわち、背中の皮膚の厚さは厚くなり、紅斑とスケールは増加する(
図11B、
図11C)。IMQに誘導されたネズミの皮膚にSALを注射することによりγδT細胞がIL-17Aを形成することを促進させることができる(
図11D)。
【0083】
実施例12
β2-AR拮抗質によりネズミモデルの乾癬病表現を調節
【0084】
本発明の実施例において、IMQに誘導されるネズミの皮下にICI 118,551(ICI、それは選択的ADRB2拮抗質である)を注射する。健康対照物と比較してみると、ICIが注射されることによりネズミの乾癬病表現は低下し(
図12B、
図12C)、IMQに誘導されたネズミの皮膚にICIを注射することにより皮膚のγδT-17細胞の比例を低減する(
図12D)。
【0085】
実施例13
NE-ADRB2信号経路でγδT cells分泌IL-17を調節
【0086】
本発明の実施例において、γδT細胞の欠陥があるネズミ(Tcrd
-/-)の皮下にSALを注射する。γδT細胞がないことにより、SALが乾癬病表現と炎症浸潤を促進する作用は相殺される(
図13A、
図13B、
図13C)。SALはαβT細胞がIL-17Aを形成することに影響を与えない(
図13D)。以上のとおり、皮膚中のNEは主として皮膚交感神経により形成され、NE- ADRB2信号経路によりγδT細胞がIL-17を形成するように調節する。すなわちαβT細胞がIL-17を形成するように調節しない。
【0087】
実施例14
細胞モデルにおいてβ2-ARの免疫調節作用(immunoregulatory effect)を検証
【0088】
本発明の実施例において、ADRB2がγδT細胞の炎症反応を調節することを測定するため、サルメテロールキナフォーテ(Salmeterol xinafoate)と拮抗質 ICI 118551でJurkat細胞(永生する人のTリンパ細胞)を刺激する。PMAとイオノマイシン(Ion)が一緒に刺激する場合、高濃度のSALによりT細胞の炎症前サイトカイン(proinflammatory cytokine)IL-17A、TNF-α及びIL-22の形成を増加させる(
図14A)。逆に、ICIはサイトカインの形成を低減する(
図14B)。
【0089】
実施例15
NE-ADRB2-p38信号経路の検証
【0090】
本発明の実施例において、PMA/イオノマイシンで2hの活性化をしたJurkat T細胞において、SALで4hの刺激をすることによりp38リン酸化を大幅に増加させることができるが、ICIで4h処理することによりp38リン酸化を抑制する。しかしながら、それらはMAPK家族の2つの成員であるERKとJNKの活性化に影響を与えない。ADRB2でT細胞の活性化を調節するとき、p38リン酸化に依頼するが、ERKとJNKに依頼しない。それは、従来の技術文献に記載されている、p38リン酸化は自己免疫型関節炎(autoimmune forms of arthriti)中のTh17細胞の増殖を促進することと一致する。p38 MAPキナーゼシグナル伝達経路(Kinase signaling pathway)は末梢血免疫システム中のT細胞の活性化と分化に影響を与える。
【0091】
本発明の実施例において、PMA/イオノにより活性化されたJurkat T細胞のネズミ皮膚中のp38のレベルを更に測定した。その結果によると、p38リン酸化はIMQにより活性化される。SAL処理によりIMQに誘導された皮膚中のp38の活性化を増強することができるが、ICI処理はそれを抑制する(
図15B、
図15C)。
【0092】
本発明の実施例において、PMA/イオノにより活性化されたJurkat T細胞とIMQ処理が実施されたWTネズミを比較してみると、Camk2g
-/-ネズミの皮膚のp38リン酸化が抑制されることが分かることができる。NEを注射することによりp38リン酸化を増加させるとともに回復させる(
図15D)。
【0093】
その結果によると、CaMK2γはNE-ADRB2-p38経路を活性化することによりT細胞がIL-17を形成することを促進する。
【0094】
実施例16
CaMK2γはNAPDHオキシダーゼ・コンプレック・スサブユニット蛋白質(Oxidase complex Subunit protein)の合成を促進することにより好中球内のROSの形成を刺激し、それによりNETsの形成を調節する。
【0095】
従来の技術文献によると、IL-17を形成するT細胞は乾癬病免疫学を研究する主流になっているが、好中球は、最初の免疫システムにおいて数量が最も多い細胞であるので、乾癬病の発病と発展において注目を集めている。活性化の好中球により増強の呼吸が形成されるとともに活性酸素種(reactive oxygen species、ROS)の形成が伴い、最後にNETosisが形成される。NETosisは細胞のアポトーシス(apoptotic)及び壊死(necrosis)と異なっている好中球の死亡形式である。NETosisに伴ってNETsが形成される。NETsは、ミエロペルオキシダーゼ(myeloperoxidase、MPO)、好中球エラスターゼ(elastase、NE)及びペプチジルアルギニンダイミナーゼ(Peptidyl arginine deiminase)4 (PAD4)等のプロテアーゼ(protease)を放出する。そのプロテアーゼは炎症性メディエーター(inflammatory mediator)の加水分解活性化(Hydrolysis activation)と自己抗原(autoantigen)のNETsの形成に参与する。HL60は、骨髄腫細胞株(Myeloma Cell Line)であり、DBSOの刺激により好中球に分化される潜在力を具備している。CaMK2γはCAMK家族のHL-60細胞においてエクスプレッションレベルと活性が最も高い成員である。
【0096】
本発明の実施例において、CaMK2γが好中球内のNETsの形成に参与するかを測定するため、2種のCaMKII抑制剤であるCaMKII- IN1とKN93を用いる。その結果によると、PMAに活性化されるHL-60細胞において、CaMKII-IN1とKN93はいずれも、MPO、エラスターゼ及びPAD4の放出を抑制することが分かることができる。それは好中球内のCaMK2γ活性はNETsの形成を減少させることを反映する(
図16A)。
【0097】
本発明の実施例において、CaMK2γの活性を抑制することにより細胞内のROSの形成(
図16B)とNCF1、NCF2及びNOX2のmRNAレベルを低減する(
図16C)ことを更に発見した。前記mRNAはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(nicotinamide adenine dinucleotide phosphate、NAPDH)オキシダーゼ・コンプレックの蛋白質サブユニット(protein subunit)を形成することできる。研究によると、NAPDHオキシダーゼ・コンプレックは細胞内のROSの重要な出所であることを反映する。
【0098】
本発明の実施例の結果によると、活性化のCaMK2γはNAPDHオキシダーゼ・コンプレック・スサブユニット蛋白質の合成を促進することにより好中球内のROSの形成を刺激し、それによりNETsの形成を調節する。それは循環システム中のCAMK2γが乾癬病の発展に参与することを反映する。
【0099】
以上、本発明の好適な実施例を説明してきたが、前記実施例は、本発明の例示にしか過ぎないものであり、本発明は前記実施例の構成にのみ限定されるものでない。この技術分野の技術者は本発明の要旨を逸脱しない範囲内において設計の変更、改良等をすることができ、それらがあっても本発明の特許請求の範囲が定めた範囲に含まれることは勿論である。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CAMK2G発現を抑制する製剤を獲得した後、その製剤を乾癬病の治療薬品の製造に使用し、前記CAMK2G発現は、CAMK2G転写及び/又はCAMK2G転写が実施された後のmRNA翻訳を含み、前記CAMK2G発現を抑制する製剤によって、γδT細胞IL-17の分泌が抑制されることを特徴とするCAMK2G発現を抑制する製剤が乾癬病の治療薬品の製造における使用。
【請求項2】
前記CAMK2G発現を抑制する製剤は、CaMK2γの蛋白質活性を抑制することによって、皮膚組織の交感神経の活性を除去または抑制することを特徴とする請求項1に記載のCAMK2G発現を抑制する製剤が乾癬病の治療薬品の製造における使用。
【請求項3】
前記γδT細胞は、皮下γδT細胞であることを特徴とする請求項1に記載のCAMK2G発現を抑制する製剤が乾癬病の治療薬品の製造における使用。
【請求項4】
皮膚組織の交感神経の活性を除去または抑制するための製剤は、6-OHDAであることを特徴とする請求項2に記載のCAMK2G発現を抑制する製剤が乾癬病の治療薬品の製造における使用。
【請求項5】
前記皮膚組織の交感神経の活性を除去または抑制することは、皮膚中の交感神経がノルエピネフリンを分泌することを抑制することによって実現されることを特徴とする請求項2に記載のCAMK2G発現を抑制する製剤が乾癬病の治療薬品の製造における使用。
【請求項6】
前記皮膚組織の交感神経の活性を除去または抑制することは、皮膚中のチロシンヒドロキシラーゼの成長または増加を抑制することを含むことを特徴とする請求項2に記載のCAMK2G発現を抑制する製剤が乾癬病の治療薬品の製造における使用。
【請求項7】
前記CAMK2G発現を抑制する製剤は、ADRB2を抑制できることを特徴とする請求項1に記載のCAMK2G発現を抑制する製剤が乾癬病の治療薬品の製造における使用。
【請求項8】
前記ADRB2抑制剤は、ICI 118551であることを特徴とする請求項7に記載のCAMK2G発現を抑制する製剤が乾癬病の治療薬品の製造における使用。
【請求項9】
前記CAMK2G発現を抑制する製剤は、皮膚におけるp38リン酸化を抑制できることを特徴とする請求項1に記載のCAMK2G発現を抑制する製剤が乾癬病の治療薬品の製造における使用。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾癬病の治療薬品の技術分野に属し、具体的に、CAMK2G発現を抑制する製剤及びその製剤を乾癬病の治療薬品の製造に使用する応用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乾癬病(psoriasis)は、慢性炎症性皮膚病であり、免疫細胞浸潤、表皮過形成(Epidermic Hyperplasia)及びケラチン細胞(keratinocyte)の分化が異常であるという特徴を有している。以前の研究によると、ケラチン細胞と免疫細部の相互作用によりサイトカインネットワーク(cytokine network)が形成される。特に、IL-17と後続の信号カスケード(signal cascade)により乾癬病の発展が促進される。乾癬病の多遺伝子遺伝性(Polygenic inheritance)は、その病気の病因が炎症、細胞の増殖及びアポトーシス、神経心理学的要因(Neuropsychiatric factors)等のいろいろな要因に係っていることを反映する。遺伝的感受性(hereditary susceptibility)はどうして乾癬病の発展に影響を与えるか、特にどの細胞の種類が乾癬病の特異性遺伝子の変異に係っているかはまだ把握していない。従来のゲノム全体関連研究(genome-wide association study、GWAS)とmeta分析方法により乾癬病のいろいろな感受性遺伝子(susceptibility gene)を見つけた。その乾癬病の感受性遺伝子の変異の研究において、乾癬病の感受性遺伝子と疾病表現、リスク、メカニズムに関する事項を複数回言及することがある。例えば、遺伝子型表現型(Genotype phenotype)に関する研究によると、rs10852936が早期発病型乾癬病(発病年齢<40歳)に係っており、rs72474224(GJB2)は平常の乾癬病の臨床特性に係っており、rs1020760(NFKB1)は家族成員が陽性である乾癬病に係っていることが分かった。遺伝子と遺伝子の相互作用(interaction)、例えばMHC-LCEインタラクティブ(interactive)、MHC-IL12Bインタラクティブは乾癬病の発病のリスクを増加させるおそれがある。感受性遺伝子はいろいろな乾癬病共存(comorbidity)または他の免疫性疾病に係っている。例えば、乾癬病とSLEの共通感受性部位(Common susceptibility site)を研究することにより、NFKBIAとIL28RAは2つの疾病においてゲノム全体関連性(Genome-wide association)の顕著レベル(conspicuousness level)に達することが分かることができる。機能性研究によると、多数の感受性遺伝子は、特定性、適応性及び先天性免疫経路(Innate immune pathway)に係っている遺伝子の付近に位置していることが分かることができる。その遺伝子は、抗原プレゼンテーション(antigen presentation、HLA-C、ERAP1)、IL-17/23軸方向活性化(Axial activation、IL23R、IL23A、IL12B、TRAF3IP2)、先天性抗ウイルス免疫(Innate antiviral immunity)/I型インターフェロン信号(Type I interferon signal)の伝動(RNF114、IFIH1)及び肌バリア機能(Skin barrier function、LCE3B/3D)等を含む。
【0003】
乾癬病は、複雑な疾病であり、1つの要因により形成されるものでない。疾病の固有の病因及び調節メカニズム(regulation mechanism)と、いろいろな要因が各疾病において占めているウエート(weight)とを見つけることは、疾病の病因を有効に検出する基礎と先決条件である。ゲノム変異(genomic variation)は、疾病を研究する前提であり、疾病の病因を研究する重要な源流である。しかしながら、現在、いろいろな感受性遺伝子のダウンストリームメカニズム(downstream mechanism)を検出する方法は依然として少ない。遺伝子の関連分析により疾病の特徴に関する提示性情報を獲得することができるが、その提示性情報は遺伝子の機能方面の初歩的な判断にしか過ぎないものであり、タンパク、細胞動物モデル(Cellular animal model)のレベル及び組織サンプルレベル(Tissue sample level)により乾癬病中の感受性遺伝子の作用メカニズムを更に解析することにより獲得するものでない。したがって、乾癬病の発病メカニズムをはんだんすることができず、乾癬病に効く薬剤を提供することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、遺伝学(genetics)に基づいて乾癬病に多く係っている感受性部位を見つけ、多機能性技術を採用することにより、タンパク、細胞動物モデル及び組織サンプルレベルにより、乾癬病中の感受性遺伝子CAMK2Gの作用メカニズムを更に解析する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、CAMK2G発現を抑制する製剤及び、その製剤を乾癬病の治療薬品の製造に使用する応用を提供することにある。
【0006】
前記CAMK2G発現はCAMK2G転写と/或いはCAMK2G転写が実施された後のmRNA翻訳(translation)を含む。
【0007】
本発明の実施例において、乾癬病患者の末梢血中のCAMK2G転写レベルは健康対照物より随分高く、乾癬病ネズミの末梢血中のCAMK2G転写レベルも健康対照物より高く、かつ乾癬病患者の末梢血中のCAMK2G+細胞比例は健康対照物より随分高い。
【0008】
本発明の目的は、CaMK2γの蛋白質活性(Protein activity)を抑制する製剤及び、その製剤を乾癬病の治療薬品の製造に使用する応用を更に提供することにある。
【0009】
本発明の具体的な実施例において、乾癬病ネズミの皮膚中のCaMK2γ総蛋白質のレベルとリン酸化活性蛋白質のレベルはいずれも、健康対照物より高い。すなわち、乾癬病患者のCaMK2γ総蛋白質のレベルとリン酸化の活性状態はいずれも、健康対照物より高い。
【0010】
本発明の目的は、好中球がNETsを放出することを抑制する製剤及び、その製剤を乾癬病の治療薬品の製造に使用する応用を更に提供することにある。
【0011】
本発明の実施例において、乾癬病患者の好中球のCaMK2γ平均蛍光強度(MFI)は健康対照物より随分高いが、単核細胞(monocytes、CD14+)と複数個のT細胞亜集団(cell subpopulation)はほぼ変わっていない。循環システムにおいてCaMK2γをオーバー発現する細胞は主として、好中球である。乾癬病患者の好中球のCaMK2γ平均蛍光強度(MFI)は健康対照物より随分高いが、単核細胞(CD14+)と複数個のT細胞亜集団はほぼ変わっていない。乾癬病患者の血液の好中球中のCAMK2Gの転写レベルは健康対照物より随分高い。
【0012】
本発明の目的は、γδT細胞を除去する製剤またはγδT細胞の成長を抑制する製剤及び、その製剤を乾癬病の治療薬品の製造に使用する応用を更に提供することにある。
【0013】
前記γδT細胞は皮下γδT細胞である。
【0014】
本発明の具体的な実施例において、IMQに処理されたWTネズミの背中の皮膚において、IL-17Aは主として、皮下γδT細胞により形成され、IL-17Aは表皮γδT細胞とαβT細胞において発現をほぼしない。IMQに処理されたCamk2g-/-ネズミにおいて、IL-17A+皮下γδT細胞はIMQに処理されたWTネズミよりずいぶん少ないが、IL-17A+表皮γδT細胞とIL-17A+ αβT細胞は変わっていない。
【0015】
本発明の具体的な実施例において、γδT細胞の欠陥があるネズミ(Tcrd-/-)の皮下にSALを注射する。γδT細胞がないことにより、SALが乾癬病表現と炎症浸潤(inflammatory infiltration)を促進する作用は相殺される。
【0016】
本発明の目的は、皮膚組織の交感神経の活性を除去または抑制する製剤及び、その製剤を乾癬病の治療薬品の製造に使用する応用を更に提供することにある。
【0017】
前記皮膚組織の交感神経の活性を除去または抑制する製剤は6-OHDAである。
【0018】
本発明の実施例において、皮膚組織のCaMK2γは主として、交感神経線維において発現をし、乾癬病患者の皮膚中のCaMK2γ+交感神経は健康の皮膚の交感神経より多い。皮膚の交感神経はIMQに誘導されたネズミ乾癬病サンプルの表現を除去するか或いは減少させる。交感神経が除去された交感神経の皮膚中のIL-17A+ γδT細胞は減少し、それは交感神経がγδT細胞を調節するとともにIL-17を形成することにより乾癬病サンプルの炎症に影響を与えることを反映する。
【0019】
本発明の具体的な実施例において、6-OHDAに誘導されたSH-SY5Y細胞が破損されることにより細胞内のTH転写レベルは低下し、CAMK2G遺伝子がノックアウトされることによってもTH転写レベルは低下するおそれがある。6-OHDAに誘導されたSH-SY5Y細胞が破損されることによりCAMK2G発現に顕著な影響を与えない。
【0020】
本発明の目的は、皮膚中の交感神経がノルエピネフリン(Norepinephrine)を分泌することを抑制する製剤及び、その製剤を乾癬病の治療薬品の製造に使用する応用を更に提供することにある。
【0021】
本発明の具体的な実施例において、皮下(hypodermic)にNEを注射することによりIMQに誘導された乾癬病サンプルの表現を増加させ、ネズミ皮膚中のIL-17A+ γδT細胞の比例を増加させる。NEを注射することはCAMK2GがないことによりIL-17A+ γδT細胞が減少することを相殺する。NEを注射した後、IMQに誘導されたWTとCamk2g-/-ネズミの皮膚厚さの不均等が消える。
【0022】
本発明の目的は、皮膚中のチロシンヒドロキシラーゼ(tyrosine hydroxylase、TH)の成長または増加を抑制する製剤及び、その製剤を乾癬病の治療薬品の製造に使用する応用を更に提供することにある。
【0023】
本発明の具体的な実施例において、THとpTHは大幅に低下することは皮膚の局部の交感神経が不活性状態(inactivation)になることを反映する。
【0024】
本発明の目的はADRB2抑制剤を乾癬病の治療薬品の製造に使用する応用を更に提供することにある。
【0025】
前記ADRB2抑制剤はICI 118551である。
【0026】
本発明の具体的な実施例において、ICIを注射することによりネズミの乾癬病表現(phenotype)は低下し、IMQに誘導されたネズミの皮膚にICIを注射することにより皮膚のγδT-17細胞の比例を低減する。
【0027】
本発明の目的は、p38リン酸化を抑制する製剤及び、その製剤を乾癬病の治療薬品の製造に使用する応用を更に提供することにある。
【0028】
本発明の具体的な実施例において、SAL処理によりIMQに誘導された皮膚中のp38の活性化を増強し、ICI処理の抑制作用が証明される。Camk2g-/-ネズミの皮膚中のp38リン酸化が抑制され、NEを注射することによりp38リン酸化を増加させるとともに回復させる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の実施例において、本発明の製剤は皮膚の交感神経内のCAMK2Gの異常活性化によりγδT 細胞IL-17の分泌を刺激することを有効に抑制し、それにより乾癬病皮膚の部位IL-17の調節による免疫反応を減少させ、乾癬病を治療する効果を獲得することができる。また、循環システムの好中球NETsの形成を低減し、病状が厳しくなることを抑制し、免疫不全症(Immunodeficiency disease)を治療する効果を獲得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施例に係る設計を示す流れ図である。
【
図2A】乾癬病患者の末梢血中のCAMK2G
転写レベルを示す図である。
【
図2B】乾癬病患者の末梢血中のCAMK2G+細胞比例を示す図である。
【
図2C】乾癬病ネズミの末梢血中のCamk2g
転写レベルを示す図である。
【
図2D】乾癬病ネズミの皮膚中のCaMK2γの総蛋白質のレベルとリン酸化活性蛋白質のレベルを示す図である。
【
図3A】CaMK2γが皮膚神経において
発現をすることを示す図である。
【
図3B】乾癬病患者の皮膚中のCaMK2γ+交感神経の状況を示す図である。
【
図4A】循環システムにおいてCaMK2γをオーバー
発現する細胞の状況を示す図である。
【
図4B】乾癬病患者の好中球のCaMK2γの平均蛍光強度(MFI)を示す図である。
【
図4C】乾癬病患者の血液の好中球のCAMK2Gの
転写レベルを示す図である。
【
図4D】乾癬病患者の血液の好中球のCaMK2γ総蛋白質のレベルとリン酸化の活性状態を示す図である。
【
図5A】Camk2g
-/-ネズミの皮膚セクションのH&E染色を示す図である。
【
図5B】Camk2g
-/-ネズミのPASI評価結果を示す図である。
【
図5C】乾癬病皮膚病変中の炎症浸潤細胞のフロー分類方法を示す図である。
【
図5D】IMQに誘導されたCamk2g
-/-ネズミの背中の皮膚の炎症浸潤細胞の状況を示す図である。
【
図5E】Camk2g
-/-ネズミの皮膚のマーカー炎症因子遺伝子のエクスプレッション
発現状況を示す図である。
【
図6A】フロー検査によりIMQ処理後のWTネズミの背中の皮膚においてIL-17Aが細胞をエクスプレッション
発現することを測定することを示す図である。
【
図6B】フローサイトメトリーによりいろいろなネズミモデルの細胞状況を分析することを示す図である。
【
図6C】IMQに処理されるCamk2g
-/-ネズミのIL-17A+皮下γδT細胞の状況を示す図である。
【
図6D】IMQに処理されるCamk2g
-/-ネズミのIL-17A+皮下γδT細胞の状況を示す図である。
【
図6E】IMQに処理されるCamk2g
-/-ネズミのIL-17A+ αβT細胞の状況を示す図である。
【
図7A】IMQ処理が実施されるCamk2g
-/-ネズミの皮膚のTHリン酸化の状況を示す図である。
【
図7B】IMQ処理後のCamk2g
-/-ネズミの皮膚中のノルアドレナリン(NE)のレベルを示す図である。
【
図7C】IMQ処理後のCamk2g
-/-ネズミの皮膚中のドーパミンのレベルを示す図である。
【
図7D】皮下にNEを注射することとIMQでネズミ乾癬病サンプルの表現を誘導する実験を示す流れ図である。
【
図7E】皮下にNEを注射したネズミ皮膚中のIL-17A+ γδT細胞の比例を示す流れ図である。
【
図7F】皮下にNEを注射したネズミと、CAMK2GがないことによりIL-17A+ γδT細胞の変化状況を示す図である。
【
図7G】皮下にNEを注射した後、IMQの誘導によりWTネズミとCamk2g
-/-ネズミの皮膚の厚さが厚くなることを示す図である。
【
図8A】IMQ処理前にネズミの皮下に6-OHDAを注射することを示す図である。
【
図8B】免疫蛍光方法により皮下に6-OHDAを注射したネズミの皮膚組織の交感神経の分布を獲得した後、その分布を示す図である。
【
図8C】western blot測定方法により皮下に6-OHDAを注射したネズミのTHとpTH
発現状況を獲得した後、その状況を示す図である。
【
図8D】皮下に6-OHDAを注射するネズミの皮膚の表現を示す図である。
【
図8E】皮下に6-OHDAを注射したネズミの乾癬病サンプルの表現を示す図である。
【
図8F】皮下に6-OHDAを注射したネズミの皮膚中のIL-17A+ γδT細胞の状況を示す図である。
【
図8G】皮下に6-OHDAを注射したネズミの皮膚中のNE状況を示す図である。
【
図9A】6-OHDAに誘導されるSH-SY5Y細胞の破損と細胞内のTH
転写レベルを示す図である。
【
図9B】6-OHDAに誘導されたSH-SY5Y細胞の破損によりCAMK2G
発現に影響を与えることを示す図である。
【
図9C】6-OHDAに誘導されるSH-SY5Y細胞の破損によりCAMK2Gの総蛋白質とリン酸化レベルに影響を与えることを示す図である。
【
図10A】IMQに誘導される乾癬病ネズミの皮膚組織のRNA測定の状況を示す図である。
【
図10B】乾癬病患者の皮膚病変と健康対照物の皮膚に対して免疫組織化学分析を実施してえた結果を示す図である。
【
図10C】IL-17を
発現する細胞がβ2-ARを
発現することを示す図である。
【
図10D】IMQ処理によりネズミ皮膚中のβ2-AR+ T細胞の比例が変化することを示す図である。
【
図11A】IMQに誘導されるネズミの皮下にSALを注射することを示す図である。
【
図11B】SALを注射しかつIMQに誘導されるネズミの皮膚の状況を示す図である。
【
図11C】SALを注射しかつIMQに誘導されるネズミの背中の皮膚の厚さ、紅斑及びスケールを示す図である。
【
図11D】SALを注射しかつIMQに誘導されるネズミのIL-17Aの形成を示す図である。
【
図12A】ICIを注射しかつIMQに誘導されるネズミに対して実験をすることを示す流れ図である。
【
図12B】ICIを注射しかつIMQに誘導されるネズミの皮膚の状況を示す図である。
【
図12C】ICIを注射しかつIMQに誘導されるネズミの背中の皮膚の厚さ、紅斑及びスケールを示す図である。
【
図12D】ICIを注射しかつIMQに誘導されるネズミのγδT-17細胞の比例を示す図である。
【
図13A】γδT細胞の欠陥があるネズミ(Tcrd
-/-)の皮下にSALを注射した後の皮膚の表現を示す図である。
【
図13B】γδT細胞の欠陥があるネズミ(Tcrd
-/-)の皮下にSALを注射した後、好中球性顆粒球(neutrophilic granulocyte)の比例を示す図である。
【
図13C】γδT細胞の欠陥があるネズミ(Tcrd
-/-)の皮下にSALを注射した後、単核細胞の比例を示す図である。
【
図13D】γδT細胞の欠陥があるネズミ(Tcrd
-/-)の皮下にSALを注射した後、αβT細胞がIL-17Aを形成することを示す図である。
【
図14A】PMAとイオノマイシン(Ion)が一緒に刺激することによりT細胞の炎症前サイトカインが形成される状況を示す図である。
【
図14B】ICIの刺激することによりT細胞の炎症前サイトカインが形成される状況を示す図である。
【
図15A】PMA/イオノにより活性化されたJurkat T細胞において、p38、ERK及びJNKの活性化状況を示す図である。
【
図15B】SAL処理を実施した後、IMQに誘導される皮膚中のp38の活性化状況を示す図である。
【
図15C】SAL処理を実施した後、IMQに誘導される皮膚中のp38の活性化状況を示す図である。
【
図15D】IMQ処理が実施されるWTネズミのp38の活性化状況を示す図である。
【
図16A】PMAに活性化されるHL-60細胞において、CaMKII-IN1とKN93がMPO、エラスターゼ及びPAD4の
発現を抑制することを示す図である。
【
図16B】CaMK2γの活性と細胞内のROSが抑制される状況を示す図である。
【
図16C】CaMK2γの活性とNCF1、NCF2及びNOX2のmRNAレベルが抑制されることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施例により本発明の技術的事項を詳細に説明するが、下記実施例は本発明の例示にしか過ぎないものであるため、本発明は下記実施例の構成にのみ限定されない。この技術分野の技術者は本発明の要旨を逸脱しない範囲内において設計の改良、変更等をすることができ、それらがあっても本発明に含まれることは勿論である。
【0032】
本発明の実施例において、
図1に示される流れ図により実験を実施する。
【0033】
本発明の実施例において、IMQはイミキモド(imiquimod)を指し、IMQはTollライクレセプター(Toll-like receptor、TLR)7、8のアゴニスト(agonist)である。
【0034】
本発明の実施例において、「アゴニスト」という用語は、ある生物活性物質(biological active substance)のレセプターと結合され、その活性物質の作用を示す物質または薬品を指す。
【0035】
本発明の実施例において、「拮抗質(antagonist)」という用語は、レセプターと結合されたが、固有活性(intrinsic activity)を具備しないクラスI物質(Class I substance)である。拮抗質は競争拮抗質(Competitive antagonist)と非競争拮抗質(noncompetitive antagonist)に分けられる。
【0036】
本発明の実施例において、「PMA」と「イオノマイシン(Ion)」はジャーカット細胞(Jurkat cell)の活性化に用いられ、活性化されるジャーカット細胞のみが炎症因子(inflammatory factor)をオーバー発現(over expression)することができる。
【0037】
本発明の実施例において、「CaMK2γ」はCAMK2G遺伝子が発現(expression)する蛋白質プロダクツ(protein products)の一種である。
【0038】
本発明の実施例において、「CAMK2G+細胞」はCAMK2G蛋白質を発現する細胞である。
【0039】
本発明の実施例において、「IMQがCamk2g-/-乾癬病ネズミモデルを誘導(induce)する」ということはIMQに誘導されるCAMK2G遺伝子がネズミをノックアウト(knockout)することを指す。「IMQが誘導した野生ネズミモデル」ということはIMQに誘導される野生ネズミを指す。
【0040】
実施例1
感受性遺伝子CAMK2Gの乾癬病中の発現を検出
【0041】
本発明の実施例において、感受性遺伝子(susceptibility gene)CAMK2Gと乾癬病の
発現の関連性を検出するため、乾癬病患者と乾癬病ネズミの血液と皮膚組織においてCAMK2Gの
発現状況をそれぞれ検出する。RT-qPCRとフロー検査(Flow detection)の結果によると、乾癬病患者の末梢血(peripheral blood)中のCAMK2G
転写レベル(transcription level)は健康対照物より随分高く(
図2A)、乾癬病患者の末梢血中のCAMK2G+細胞比例は健康対照物より随分高く(
図2B)、かつ乾癬病ネズミの末梢血中のCAMK2G
転写レベルも健康対照物より高い(
図2C)ことがわかることができる。
【0042】
従来の技術文献によると、CAMKIIγは多いCa2+が調節する信号経路(signal pathway)において第二クーリエ(courier)の役割をする。細胞内のCa2+が平常のレベルになっているとき、自身の抑制作用により休眠状態を維持し、細胞内のCa2+のレベルが増加するとき、自身のリン酸化により抑制状態を解除する。Thr287部位のリン酸化はCaMK2γの活性化形式である。
【0043】
現在、リン酸化CaMK2γ特異性を有している抗体が少ないが、ネズミ皮膚RNA-seq結果によると、CaMK2γは皮膚組織においてCAMKII家族の
発現レベル(expression level)が最も高い成員である。したがって、本発明の実施例において、Phospho-CaMKII (Thr287)抗体により皮膚組織の活性CaMK2γレベルを測定する。Western blot測定によると、乾癬病ネズミの皮膚中のCaMK2γの総蛋白質(Total Protein)のレベルとリン酸化活性蛋白質(Active protein)のレベルがいずれも健康対照物より高い(
図2D)ことがわかることができる。
【0044】
実施例2
皮膚組織中のCaMK2γの発現を確定
【0045】
本発明の実施例において、CAMK2Gが皮膚組織の神経細胞(nerve cell)においてオーバー
発現をするかを検証するため、健康対照物と乾癬病患者の皮膚サンプルに対してCaMK2γ(赤色)とパンニューロンマーカー(pan-neuronal marker)β3-tubulin(緑色)のCO染色(CO staining)を実施する。免疫蛍光の結果によると、CaMK2γは皮膚神経において
発現をするが、神経細胞はいずれもCaMK2γ陽性であるものでない(
図3A)。すなわち、CaMKII家族成員は神経細胞においてオーバー
発現をし、皮膚神経は交感神経(Sympathetic)と多種の知覚神経線維(Sensory nerve fibers)で構成される。
【0046】
本発明の実施例において、交感神経線維(Sympathetic fiber)のチロシンヒドロキシラーゼ(tyrosine hydroxylase、TH)(緑色)とCaMK2γ(赤色)を識別することにより免疫蛍光CO染色(Immunofluorescence CO staining)を実施する。その結果により、皮膚組織のCaMK2γは主として、交感神経線維内に
発現されており、乾癬病患者の皮膚中のCaMK2γ+交感神経(Sympathetic nerves)は健康の皮膚より多いことがわかる(
図3B)。
【0047】
実施例3
循環システム中のCaMK2γの発現を確定
【0048】
本発明の実施例において、フローサイトメトリー(flow cytometry)により患者の末梢血CD16+CD66b+好中球(neutrocyte)と非好中球(Non neutrophil)CD16+CD66b-細胞、CD16-CD66b-細胞中のCaMK2γの平均蛍光強度(mean fluorescence intensity、MFI)を比較する。その結果によると、循環システムにおいてCaMK2γをオーバー
発現する細胞は主として、好中球である(
図4A)。
【0049】
本発明の実施例において、CaMK2γが乾癬病患者の末梢血中の複数の常用の免疫細胞(immune cell)において変化することを更に測定するため、患者と健康対照物の末梢血のいろいろな免疫細胞亜集団に対してフローサイトメトリー分析をする。その結果によると、乾癬病患者の好中球のCaMK2γの平均蛍光強度(MFI)は健康対照物よりずいぶん高いが、単核細胞(monocytes、CD14+)と複数個のT細胞亜集団(cell subpopulation)はほぼ変わっていない(
図4B)。
【0050】
本発明の実施例において、乾癬病患者の循環システムにおいて好中球内のCAMK2G
発現が変化することを更に測定するため、磁気ビーズ選別(magnetic bead sorting)方法により、乾癬病患者と健康対照物の血液において高純度の好中球をそれぞれ選別する。RT-qPCR測定によると、乾癬病患者の血液の好中球のCAMK2Gの
転写レベルは健康対照物より随分高い(P=0.0079)(
図4C)。Western blot測定によると、乾癬病患者のCaMK2γ総蛋白質のレベルとリン酸化の活性状態はいずれも、健康対照物より高いことが分かることができる(
図4D)。
【0051】
実施例4
IMQに誘導されたCamk2g-/-乾癬病ネズミモデルを形成する
【0052】
本発明の実施例において、乾癬病中のCAMK2Gの作用メカニズムを更に研究するため、IMQに誘導されたCamk2g-/-乾癬病ネズミモデルを形成する。
【0053】
本発明の実施例において、IMQに誘導されたCamk2g-/-乾癬病ネズミモデルを形成するステップは、7歳のWT(n=5)またはCamk2g-/-ネズミ(n=5)の背中の毛を剃ることにより、サイズが2cm×2cmである背中の皮膚を露出させるステップを含む。62.5mgのIMQ乳化性ペースト(emulsifiable paste)または対照品(placebo)VASをネズミの露出皮膚に均等に塗布し、それを4日間続けるとともに毎日PASI評価を実施する。5日目はネズミに対してユーサネイジア(euthanasia)を実施した後、ネズミの皮膚、脾臓及び血液を取って測定する。
【0054】
本発明の実施例において、皮膚組織は、10%のフォルマリン(Formalin)で固定させ、パラフィン包埋(paraffin embedding)を実施し、4μmのセクション(section)を獲得した後、H&E染色を実施する。
【0055】
本発明の実施例において、H&E染色の画像はバーチカル顕微鏡(vertical microscope)(Olympus BX53)により10倍に拡大して獲得するものである。
【0056】
本発明の実施例において、ネズミモデルの炎症を評価する方法は臨床PASI評価方法により発明した客観的評価システムである。紅斑(erythema)、スケール及び厚さの増加を0~4で評価することができる。0は病症がないことを反映し、1は病症が軽いことを反映し、2は病症が中度であることを反映し、3は病症が明確であることを反映し、4は病症が厳しいことを反映する。紅斑の強度を表示するスコアカード(scorecard)により紅斑の程度を評価することができる。総合的な評価(紅斑+スケール+厚さの増加)を、炎症の程度を表す数値にすることができる(0~12で評価する)。
【0057】
皮膚セクションのH&E染色とPASI評価結果により、IMQに誘導されたCamk2g
-/-ネズミモデルとIMQに誘導された野生ネズミを比較してみると、Camk2g
-/-ネズミの乾癬病サンプルの表現が大幅に低下することが分かることができる。それは、ネズミの背中の皮膚厚さが減少し、紅斑とスケールが減少することを反映する(
図5A、
図5B)。
【0058】
本発明の実施例において、特定の標識抗体(Labeled antibody)により分離後のネズミの免疫細胞を分類する。単核細胞と好中球は乾癬病皮膚病変(skin lesions)中の炎症浸潤細胞(Inflammatory infiltrating cells)である(
図5C)。フロー検査の結果によると、IMQに誘導されたCamk2g
-/-ネズミの背中の皮膚の炎症浸潤が大幅に減少することが分かることができる(
図5D)。
【0059】
本発明の実施例において、皮膚免疫細胞を分離することは、皮膚を充分にカットするステップと、消化酵素(digestive enzyme)において37℃の温度と225rpmの回転速度により消化を1.5h実施するステップと、消化を30分更に実施する。消化酵素は、1.2gのBSA(Biofoxx、4240GR100)、0.12gの1型コラゲナーゼ(Collagenase type 1)(Sigma、C0130-5G)、0.06gの4型コラゲナーゼ(Worthington、LS004189)及び0.06gのヒアルロニダーゼ(hyaluronidase)(Sigma、H3506-5G)を30mlのDMEM(HyClone、SH30022.01)に溶解させた後、1mg/mlであるDNase(Yuanye、S10073)を150μl添加することにより獲得することができる。消化が終わると、細胞懸濁液(suspension)を70-μmのフィルターで濾過する。細胞懸濁液を温度が4℃でありかつ回転速度が2000rpmである遠心分離(centrifugation)装置に送入して8minの遠心分離を実施した後、スーパーネイト(supernate)を除去することにより細胞粒子を収集する。細胞は容量が6mlでありかつ濃度が40%であるリンパ細胞(lymphocyte)分離液体(5.4mlのPercoll(GE Healthcare、17-0891-09)+520μl Hank‘s Solution(Beyotime、C0219)+44μl 2×Hepes Buffer(Solarbio、H1080-100)+8.946ml PBS)に浮かんでいる。つぎに、容量が6mlでありかつ濃度が80%であるリンパ細胞分離液体(5.4ml Percoll+520μl Hank‘s Solution+44μl 2×Hepes Buffer+1.491ml PBS)を容器の内壁に沿って容器にゆっくり注ぐことにより液体を二層に分離させる。分離液体を温度が4℃でありかつ回転速度が2000rpmである遠心分離装置に送入して20minの遠心分離を実施し、遠心揚力(Centrifugal lifting force)を最小にする。遠心分離後の液体は4層に分離され、上から下への順に沿う各層はそれぞれ、40%のリンパ細胞分離液体、リンパ細胞、80%のリンパ細胞分離液体及び細胞フラグメント(fragment)である。リンパ細胞を新しい遠心管(Centrifugal tube)にゆっくり転移させた後、10mlのPBSでリンパ細胞をよく洗浄する。溶液を温度が4℃でありかつ回転速度が2000rpmである遠心分離装置により8minの遠心分離を実施した後、スーパーネイトを除去することにより細胞粒子を収集する。つぎに、各細胞膜(cell membrane)の表面抗体(Surface antibody)を1μlを取って50μlのPBSに送入することにより細胞と混合させ、室内の暗室においてインキュベーションを30min実施する。3mlのPBSで細胞を洗浄する。温度が4℃でありかつ回転速度が2000rpmである遠心分離装置により5minの遠心分離を実施した後、スーパーネイトを除去することにより細胞粒子を収集する。測定をする前、細胞の体積により細胞を300~600μlのPBSに浮かべる。細胞内抗体(intracellular antibody)を染色させる必要がある場合、細胞沈殿物に1mlの細胞透過剤(Cell Permeabilizer)(固定/浸透用高濃度液体(Invitrogen、00-5123-43):eBioscience Fixation/Perm希釈剤(Invitrogen、00-5223-56)=1:3)を直接に添加し、室内の暗室においてインキュベーションを60min実施する。50μlのPBSに適量の細胞内抗体を添加することによりそれと細胞を混合させ、室内の暗室に40min保存する。3mlのPBSで細胞を洗浄する。温度が4℃でありかつ回転速度が2000rpmである遠心分離装置により5minの遠心分離を実施した後、スーパーネイトを除去することにより細胞粒子を収集する。測定をする前、細胞の体積により細胞を300~600μlのPBSに浮かべる。
【0060】
本発明の実施例において用いる表面抗体(Surface antibody)は、CD45-FITC(eBioscience、REF11-0451-82)、CD11b PE-Cy7(BD、552850)、LY-6G-BV605(BD、563005)、Ly-6C PE(BD、560592)、CD11C PE-CF594(BD、562454)がある。
【0061】
本発明の実施例において、乾癬病と関係が密接でありかつ乾癬病皮膚病変において
発現が高い既知の抗炎症遺伝子(pro-inflammatory genes)に対して定量のPCRを実施する。すなわち、Il17a、Il17f、Il6、Il22、IL1b及びTnfaを実施する。その結果によると、Camk2g
-/-ネズミの皮膚のマーカー遺伝子(marker gene)の
発現が大幅に低下することが分かることができる(
図5E)。
【0062】
実施例5
CaMK2γで乾癬病ネズミ皮膚中のγδT-17細胞を制御する
【0063】
好中球と単核細胞を乾癬病病変部位に集めることは乾癬病病因の特徴である。従来の技術文献によると、好中球と単核細胞は臨界効果(critical effect)のサイトカイン(cytokines)IL-17に駆動されうものである。IL-17はいろいろな細胞種類、例えばTh17細胞、Tc17細胞、γδ T-17細胞、ILC3等により放出されることができる。
【0064】
本発明の実施例において、IMQ処理後のWTネズミの背中の皮膚に対してフロー検査をする。フロー検査の結果によると、IMQ処理が実施されたWTネズミの背中の皮膚において、IL-17Aは主として皮下γδT細胞により形成され、IL-17Aは表皮γδT細胞とαβT細胞において
発現をほぼしないことが分かることができる(
図6A)。
【0065】
本発明の実施例において、CaMK2γがIMQ処理後のネズミの皮膚中のIL-17の形成に影響を与えるかを判断するため、フローサイトメトリー分析によりIL-17+細胞がいろいろな皮膚のT細胞亜集団中の比例を分析する。その結果は
図6Bに示すとおりである。IMQに処理されるCamk2g
-/-ネズミのIL-17A+皮下γδT細胞はIMQに処理されるWTネズミよりずいぶん少なく(
図6C)、IL-17A+皮下γδT細胞とIL-17A+ αβTは変わっていない(
図6D、
図6E)。
【0066】
実施例6
皮膚のCaMK2γ+交感神経でγδT-17細胞を制御する
【0067】
従来の技術文献によると、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)は、カテコールアミン(catecholamine、ドーパミン(dopamine、DA)、ノルアドレナリン(Noradrenaline、NE)及びアドレナリン(adrenaline))の生合成(biosynthesis)中の速度制限酵素(rate-limiting enzyme)であり、皮膚中の交感神経を鑑別することに用いられる。CaMKII家族成員はニューロン集団(Neuronal population)においてTHリン酸化を刺激することによりカテコールアミンの生合成の制御に制御する。
【0068】
本発明の実施例において、Western blot測定によると、IMQ処理によりネズミの皮膚のTHリン酸化が大幅に増加するが、CAMK2GがないことによりTHリン酸化の増加が抑制されることがわかることができる(
図7A)。
【0069】
本発明の実施例において、ELISAによりネズミの皮膚中のカテコールアミンの神経伝達物質(neurotransmitter)の分泌を測定する。その結果によると、IMQ処理後のCamk2g
-/-ネズミの皮膚中のNEレベルはWTネズミより低いが、皮膚中のドーパミンが変わっていないことが分かることができる(
図7B、
図7C)。
【0070】
本発明の実施例において、皮下にNEを注射することによりIMQに誘導された乾癬病サンプルの表現を増加させ、ネズミ皮膚中のIL-17A+ γδT細胞の比例を増加させる。NEを注射することはCAMK2GがないことによりIL-17A+ γδT細胞が減少することを相殺し(
図7D、
図7E/
図7F)、交感神経は皮膚中のNEの重要な出所であることを反映する。
【0071】
本発明の実施例において、NEを注射した後、IMQに誘導されたWTとCamk2g
-/-ネズミの皮膚厚さの不均等が消える(
図7G)。それは、CaMK2γでIMQに誘導された皮膚炎症を制御することは皮膚の交換神経がNEを分泌することに係っており、皮膚中のCaMK2γ+交換神経はNEを分泌することにより一部分のγδT細胞IL-17Aの形成を調節することを反映する。
【0072】
実施例7
皮膚の交感神経の除去がネズミモデルの乾癬病表現に与える影響
【0073】
従来の技術文献によると、6-ヒドロキシドパミン(6-hydroxydopamine、6-OHDA)は、カテコールアミン作動性ニューロン(catecholaminergic neurons)の選択的神経毒(Selective neurotoxin)であり、交感神経の除去に用いられる。腹腔(abdominal cavity)に6-OHDAを注射することにより、IMQに誘導される耳浮腫(ear edema)を減少させることができるが、IL-17Aの形成に影響を与えない。その原因は心血管効果(cardiovascular effects)と/或いは全身性交感神経の除去により生ずる全身性免疫障害(Systemic immune disorder)にある。
【0074】
本発明の実施例において、皮膚の局部の交感神経を切除することにより乾癬病ネズミに与える影響を観察するため、IMQ処理前にネズミの皮下に6-OHDAを注射する(
図8A)。免疫蛍光とwestern blot測定の結果によると、THとpTH(副甲状腺ホルモン、parathyroid hormone)が大幅に低下することが分かることができ、それは皮膚の局部の交感神経不活性状態になることを反映する(
図8B、
図8C)。後続の研究によると、皮膚の局部の交感神経が除去されることによりIMQに誘導されたネズミの乾癬病サンプルの表現が減少することが分かることができる(
図8D、
図8E)。交感神経が除去される皮膚中のIL-17A+ γδT細胞が減少することは、皮膚の交感神経がγδT細胞を調節することによりIL-17の形成を調節しかつ乾癬病サンプルの皮膚の炎症に影響を与えることを反映する(
図8F)。交感神経が除去される皮膚中のNEが減少することは、交感神経がNEを分泌することによりγδT細胞IL-17の形成を調節することを反映する(
図8G)。
【0075】
実施例8
CAMK2G遺伝子がノックアウトされることにより6-OHDAが破損されたSH-SY5Y細胞に与える影響
【0076】
本発明の実施例において、CaMK2γが交感神経内のTHの
発現に直接に影響を与えるかを更に測定するため、RNAi方法によりヒト神経芽細胞(human neuroblastoma cells、SH-SY5Y)内のCAMK2Gをノックダウン(knock-down)する。SH-SY5Yは分化程度が低い腫瘤細胞であり、SH-SY5Yとドーパミン作動性ニューロン(dopaminergic neuron)の形状、生理及び生化学的機能(Biochemical function)は類似しており、SH-SY5Yとドーパミン作動性ニューロンは
発現THを構成することができる。qPCR測定の結果によると、6-OHDAに誘導されるSH-SY5Y細胞の破損により細胞内のTH
転写レベルが低下し、CAMK2G遺伝子がノックアウトされることによってもTH
転写レベルが低下することが分かることができる(
図9A)。6-OHDAに誘導されたSH-SY5Y細胞の破損によりCAMK2G
発現に顕著な影響を与えない(
図9B)。本発明の実施例において、Western blot測定によると、CAMK2G遺伝子をノックアウトすることによりCaMK2γの総蛋白質のレベルとpTHレベルを大幅に低減し、6-OHDAに誘導されるSH-SY5Y細胞の破損によってもCaMK2γの総蛋白質のレベルとpTHレベルを低減することができる。また、6-OHDAに誘導されるSH-SY5Y細胞の破損によりCaMKII家族の他の成員のリン酸化レベルも増加することができる(
図9C)。
【0077】
実施例9
NEレセプターの皮膚内の発現モデル
【0078】
本発明の実施例において、IMQに誘導される乾癬病ネズミの皮膚組織に対してRNA測定(RNA-seq)を実施する。その結果によると、ADRB2 (β2-AR)は皮膚中の重要なNEレセプター
発現であることが分かることができる(
図10A)。
【0079】
本発明の実施例において、乾癬病患者の皮膚病変と健康対照物の皮膚に対して免疫組織化学分析(Immunohistochemical analysis)を実施する。その結果によると、β2-ARが皮下部位に浸潤している免疫細胞上において
発現をすることが分かることができる(
図10B)。
【0080】
本発明の実施例において、免疫蛍光とフローサイトメトリー分析によると、IL-17を
発現する大部分の細胞はβ2-ARを
発現し(
図10C)、IMQ処理によりネズミ皮膚中のβ2-AR+ T細胞の比例が増加することが分かることができる(
図10D)。
【0081】
実施例10
β2-AR活性剤(activator)でネズミモデルの乾癬病表現を調節
【0082】
本発明の実施例において、NEがβ2-ARによりγδT-17細胞に直接に影響を与えるかを更に測定するため、IMQに誘導されるネズミの皮下にサルメテロールキナフォーテ(Salmeterol xinafoate、SAL、それは選択的ADRB2アゴニストである)を注射する。健康対照物と比較してみると、SALを注射することによりネズミの乾癬病表現は増加する。すなわち、背中の皮膚の厚さは厚くなり、紅斑とスケールは増加する(
図11B、
図11C)。IMQに誘導されたネズミの皮膚にSALを注射することによりγδT細胞がIL-17Aを形成することを促進させることができる(
図11D)。
【0083】
実施例11
β2-AR拮抗質によりネズミモデルの乾癬病表現を調節
【0084】
本発明の実施例において、IMQに誘導されるネズミの皮下にICI 118,551(ICI、それは選択的ADRB2拮抗質である)を注射する。健康対照物と比較してみると、ICIが注射されることによりネズミの乾癬病表現は低下し(
図12B、
図12C)、IMQに誘導されたネズミの皮膚にICIを注射することにより皮膚のγδT-17細胞の比例を低減する(
図12D)。
【0085】
実施例12
NE-ADRB2信号経路でγδT cells分泌IL-17を調節
【0086】
本発明の実施例において、γδT細胞の欠陥があるネズミ(Tcrd
-/-)の皮下にSALを注射する。γδT細胞がないことにより、SALが乾癬病表現と炎症浸潤を促進する作用は相殺される(
図13A、
図13B、
図13C)。SALはαβT細胞がIL-17Aを形成することに影響を与えない(
図13D)。以上のとおり、皮膚中のNEは主として皮膚交感神経により形成され、NE- ADRB2信号経路によりγδT細胞がIL-17を形成するように調節する。すなわちαβT細胞がIL-17を形成するように調節しない。
【0087】
実施例13
細胞モデルにおいてβ2-ARの免疫調節作用(immunoregulatory effect)を検証
【0088】
本発明の実施例において、ADRB2がγδT細胞の炎症反応を調節することを測定するため、サルメテロールキナフォーテ(Salmeterol xinafoate)と拮抗質 ICI 118551でJurkat細胞(永生する人のTリンパ細胞)を刺激する。PMAとイオノマイシン(Ion)が一緒に刺激する場合、高濃度のSALによりT細胞の炎症前サイトカイン(proinflammatory cytokine)IL-17A、TNF-α及びIL-22の形成を増加させる(
図14A)。逆に、ICIはサイトカインの形成を低減する(
図14B)。
【0089】
実施例14
NE-ADRB2-p38信号経路の検証
【0090】
本発明の実施例において、PMA/イオノマイシンで2hの活性化をしたJurkat T細胞において、SALで4hの刺激をすることによりp38リン酸化を大幅に増加させることができるが、ICIで4h処理することによりp38リン酸化を抑制する。しかしながら、それらはMAPK家族の2つの成員であるERKとJNKの活性化に影響を与えない。ADRB2でT細胞の活性化を調節するとき、p38リン酸化に依頼するが、ERKとJNKに依頼しない。それは、従来の技術文献に記載されている、p38リン酸化は自己免疫型関節炎(autoimmune forms of arthriti)中のTh17細胞の増殖を促進することと一致する。p38 MAPキナーゼシグナル伝達経路(Kinase signaling pathway)は末梢血免疫システム中のT細胞の活性化と分化に影響を与える。
【0091】
本発明の実施例において、PMA/イオノにより活性化されたJurkat T細胞のネズミ皮膚中のp38のレベルを更に測定した。その結果によると、p38リン酸化はIMQにより活性化される。SAL処理によりIMQに誘導された皮膚中のp38の活性化を増強することができるが、ICI処理はそれを抑制する(
図15B、
図15C)。
【0092】
本発明の実施例において、PMA/イオノにより活性化されたJurkat T細胞とIMQ処理が実施されたWTネズミを比較してみると、Camk2g
-/-ネズミの皮膚のp38リン酸化が抑制されることが分かることができる。NEを注射することによりp38リン酸化を増加させるとともに回復させる(
図15D)。
【0093】
その結果によると、CaMK2γはNE-ADRB2-p38経路を活性化することによりT細胞がIL-17を形成することを促進する。
【0094】
実施例15
CaMK2γはNAPDHオキシダーゼ・コンプレック・スサブユニット蛋白質(Oxidase complex Subunit protein)の合成を促進することにより好中球内のROSの形成を刺激し、それによりNETsの形成を調節する。
【0095】
従来の技術文献によると、IL-17を形成するT細胞は乾癬病免疫学を研究する主流になっているが、好中球は、最初の免疫システムにおいて数量が最も多い細胞であるので、乾癬病の発病と発展において注目を集めている。活性化の好中球により増強の呼吸が形成されるとともに活性酸素種(reactive oxygen species、ROS)の形成が伴い、最後にNETosisが形成される。NETosisは細胞のアポトーシス(apoptotic)及び壊死(necrosis)と異なっている好中球の死亡形式である。NETosisに伴ってNETsが形成される。NETsは、ミエロペルオキシダーゼ(myeloperoxidase、MPO)、好中球エラスターゼ(elastase、NE)及びペプチジルアルギニンダイミナーゼ(Peptidyl arginine deiminase)4 (PAD4)等のプロテアーゼ(protease)を放出する。そのプロテアーゼは炎症性メディエーター(inflammatory mediator)の加水分解活性化(Hydrolysis activation)と自己抗原(autoantigen)のNETsの形成に参与する。HL60は、骨髄腫細胞株(Myeloma Cell Line)であり、DBSOの刺激により好中球に分化される潜在力を具備している。CaMK2γはCAMK家族のHL-60細胞において発現レベルと活性が最も高い成員である。
【0096】
本発明の実施例において、CaMK2γが好中球内のNETsの形成に参与するかを測定するため、2種のCaMKII抑制剤であるCaMKII- IN1とKN93を用いる。その結果によると、PMAに活性化されるHL-60細胞において、CaMKII-IN1とKN93はいずれも、MPO、エラスターゼ及びPAD4の放出を抑制することが分かることができる。それは好中球内のCaMK2γ活性はNETsの形成を減少させることを反映する(
図16A)。
【0097】
本発明の実施例において、CaMK2γの活性を抑制することにより細胞内のROSの形成(
図16B)とNCF1、NCF2及びNOX2のmRNAレベルを低減する(
図16C)ことを更に発見した。前記mRNAはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(nicotinamide adenine dinucleotide phosphate、NAPDH)オキシダーゼ・コンプレックの蛋白質サブユニット(protein subunit)を形成することできる。研究によると、NAPDHオキシダーゼ・コンプレックは細胞内のROSの重要な出所であることを反映する。
【0098】
本発明の実施例の結果によると、活性化のCaMK2γはNAPDHオキシダーゼ・コンプレック・スサブユニット蛋白質の合成を促進することにより好中球内のROSの形成を刺激し、それによりNETsの形成を調節する。それは循環システム中のCAMK2γが乾癬病の発展に参与することを反映する。
【0099】
以上、本発明の好適な実施例を説明してきたが、前記実施例は、本発明の例示にしか過ぎないものであり、本発明は前記実施例の構成にのみ限定されるものでない。この技術分野の技術者は本発明の要旨を逸脱しない範囲内において設計の変更、改良等をすることができ、それらがあっても本発明の特許請求の範囲が定めた範囲に含まれることは勿論である。